IPEの果樹園2019
今週のReview
5/20-25
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トランプ政権のアメリカ ・・・米中貿易戦争 ・・・イギリス政治の渦巻き ・・・瀉血より選挙制度改革 ・・・アメリカとイランの軍事的緊張 ・・・トランプとオルバンの記念撮影 ・・・アジア社会に学ぶべきだ ・・・ドルの時代は終わるか ・・・マクロ経済政策のリバランス
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy,
FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York
Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● トランプ政権のアメリカ
NYT May 9, 2019
Trump Is Terrible for Rural America
By Paul Krugman
先月、農務省経済調査局のエコノミスト6人が同じ日に辞職した。トランプの政策をほめるような報告書を発表するよう脅されていたからだ。
アメリカの農村はトランプの重要な支持基盤だ。しかし、彼らはトランプの政策で最も損害を受けている。
トランプ主義とは何か? 2016年の選挙では、彼は共和党の伝統的な経済政策を実行するようなふりをしていた。企業と富裕層に減税し、社会福祉を削る、ということだ。1つ、大きな違いは、保護主義だった。
これら3つの政策は、すべて農村部を傷つける。
減税は農家の利益になっていない。農家は企業ではなく、富裕な者も少ないからだ。セーフティーネットの削減も農家に不利益だった。フード・スタンプや、オバマによるメディケイドの拡大をトランプがつぶそうとしているからだ。
保護主義はどうか? 農業部門は、アメリカ経済全体よりも、はるかに大きく輸出に依存している。大豆農家は、生産量の約半分を輸出する。小麦も46%だ。特に、中国は主要な輸出先だ。また、関税はドル高につながる。
農家は、トランプの政策の最大の犠牲者だ。しかし、トランプを支持している。なぜか?
1つは、文化的要因だ。農村の有権者は特に移民に敵意を持つ。また、海岸に住むエリートたちを軽蔑している。トランプは彼らの不満を操作するのだ。
それでも農村の痛みが現れると、トランプ主義者は何をするか? 1つは、真っ赤な嘘を繰り返す。もう1つは、真実を抑圧し、嘘の報告書を作ることだ。
NYT May 10, 2019
Revenge of the Coastal Elites
By Timothy Egan
NYT May 13, 2019
The Rise of the Haphazard Self
By David Brooks
文化が経済に対して均衡するような社会は健全である。それによると、資本主義的な経済システムにおいて、競争、ダイナミズム、個人の利益が強調されるが、文化は協力、安定性、深い関係を尊重する。われわれはそのような文化を必要としている。
しかし、われわれの文化は違う。資本主義の破壊的な、非人間的な側面を取り入れ、強めている。これがどれほど真実であるか、Kathryn Edin, Timothy Nelson, Andrew
Cherlin and Robert Francisによる最近の研究論文“The Tenuous
Attachments of Working-Class Men,” in The Journal of Economic Perspectivesが示している。
彼らは107人の労働者たちに詳しいインタビューを行った。
FP MAY 14, 2019
The Age of Nostalgia
BY EDOARDO
CAMPANELLA, MARTA DASSÙ
NYT May 14, 2019
President Trump, Come to Willmar
By Thomas L.
Friedman
NYT May 15, 2019
Donald Trump Is Not America
By Frank Bruni
FP MAY 15, 2019
The United States’ Problems Aren’t What You Think They Are
BY NICK
DANFORTH
PS May 16, 2019
Is America Tired of Losing Yet?
ANNE O. KRUEGER
● 米中貿易戦争
The Guardian, Fri 10 May 2019
The Guardian view on US-China trade wars: don’t let them get
started
Editorial
FT May 10, 2019
China has overestimated Trump’s desperation to do a deal
Jamil
Anderlini, Asia Editor
PS May 10, 2019
The Real Victims of China’s Trade Patterns
JAYATI GHOSH
西側、特にトランプのアメリカは中国の貿易黒字を問題にする。しかし、アジアの発展途上諸国にとっては別の不均衡が問題だ。
これまで中国は、アジアの発展途上諸国との間で貿易が均衡していた。それは原料やエネルギー、その他の中間財を、大規模に輸入したからだ。中国からの需要は、こうした諸国にとって交易条件を改善し、中国向け輸出が成長のエンジンとなった。
しかし、2011年以降、アジアの発展途上諸国からの、中国の輸入は停滞し、輸出が増え続けた。世界金融危機後、中国からの輸入のシェアが15%にまで高まり、貿易不均衡が拡大している。
中国の貿易パターンが変化し、アジアに対しても製造消費財からハイテク製品に比重を移すと、貿易不均衡が拡大するだけでなく、技術や付加価値面でも中国との不均衡が拡大してしまう。すでに、インドとの貿易がそうだ。
アジアの発展途上諸国がそれに対処するのはむつかしい。中国の方が、生産多様化や生産性上昇が早いからだ。一帯一路が、こうした不均衡の拡大にとって有効な対策になるのか、政治的な影響も含めて、重大な意味を持つ。
FP MAY 10, 2019
Donald Trump and Swine Fever Are Creating an Economic Crisis
BY LAURIE
GARRETT
FP MAY 10, 2019
Trump’s ‘Madman Theory’ of Trade with China
BY KEITH
JOHNSON
NYT May 11, 2019
Killing the Pax Americana
By Paul Krugman
トランプは貿易政策について、たった1つでも正しいことを言っていない。関税の効果も、貿易不均衡の理由も、理解していない。彼のゼロサム的発想は、われわれが過去200年間学んできたことに反している。
しかし、トランプに対する批判も、2つの点で間違っている、あるいは、少なくとも誇張している。
短期的には、関税とは税金である。マクロ経済的な効果についてはそれで十分だ。しかし、その額はGDPに比べてごく小さい。その意味で、貿易戦争から世界不況になる、という主張は間違っている。貿易赤字を減らすには、中国だけでなく、ヨーロッパにも貿易戦争を唱えるだろうが、まだそうなっていない。
また、報復があることも指摘される。アメリカにとって、それは単なる課税よりも、利益になる。アメリカのような大国では、ドル高や、交易条件の改善が起きるからだ。そして、比較優位の理論がある。
しかし、貿易政策は、単なる経済学ではなく、民主主義や平和の問題である。特に、EUはそれを示している。それはフランスとドイツが再び戦争をしないための合意であった。また、EUは常に民主化を求めた。
この考え方は、第2次世界大戦後の貿易体制を構想したコーデル・ハル国務長官のものであった。彼は、諸国民間の通商取引が増えることで、平和が促進できる、と考えたのだ。多国間の合意、一方的な行動を制限するルールは、パックス・アメリカーナの最初からあった。IMFやNATOと並んで、戦後秩序の一部である。
トランプは貿易戦争を唱え、外国の独裁者たちと親しく交流し、逆に、同盟諸国を尊敬しない。しかし、中国も民主主義ではない、と言うだろう。
トランプは、事実上、われわれすべてに戦いを挑んでいる。彼がしていることは、残されたパックス・アメリカーナを破壊することだ。
アメリカの経済支配は時代を経て弱くなったが、それは他の世界が豊かになったからだ。国際秩序を平和的に維持することは可能だと思う。民主的な諸大国が協力すればよい。概ね、アメリカとEUの善意の共同支配が、世界の貿易システムを支えるだろう。
しかし、今は望みが少ない。なぜなら、Brexitとトランプだけでなく、EUの中で、オルバンのような政治指導者をうまく扱えないからだ。
FT May 13, 2019
America is the revisionist power on trade
Gideon Rachman
アメリカと中国は、既存の世界秩序に不満である。アメリカのトランプ大統領は、それがアメリカに不利で、中国の台頭を助けた、と考えている。他方、中国の習近平主席は、それがアメリカの政治・経済支配と結びついており、アメリカがアジア・太平洋地域で支配的国家であることを支えている、と考える。
アメリカは、経済秩序を転換し、地政学的地位を維持したい。中国は、世界貿易を維持したまま、地政学的な地位を転換したい。習近平は、中国がグローバルな大国になる、という願いを明言するようになった。
両者の違いは、Graham Allisonが「ツキディデスの罠」と呼んだ状態に似ている。しかし、貿易戦争は、現実に戦争になるわけではない。中国は、経済システムの本質を維持しながら台頭するために、譲歩するだろうか?
中国は、日本がアメリカの圧力で1985年に受け入れたプラザ合意を特に注目している。多くの中国人は、それがアメリカによる日本の台頭を阻んだ具体的ケースである。トランプ政権は、同様のジレンマに直面している。
トランプは、いまだに習近平との「友好的な関係」を頼っているように見える。しかし、第1次世界大戦の前にも、ドイツの皇帝ヴィルヘルムとロシアのニコライは友人であった。しかし、それは戦争を防ぐことができなかった。
FP MAY 13, 2019
Beijing’s Propaganda Is Playing the Trade War Safe
BY LAUREN
TEIXEIRA
PS May 14, 2019
Why the US and China See Negotiations Differently
SHANG-JIN WEI
PS May 14, 2019
Is Trump’s Trade War with China a Civilizational Conflict?
MINXIN PEI
YaleGlobal, Tuesday, May 14, 2019
A Trade Love Triangle
Xueying Zhang
FT May 16, 2019
Trade is just an opening shot in a wider US-China conflict
Philip Stephens
NYT May 16, 2019
What’s Our China Endgame?
By Bret
Stephens
1977年1月、ロナルド・レーガンは語った。「ソ連に対するアメリカ外交の私の見解は単純だ。」・・・「われわれは勝利する。彼らは敗北する。」 レーガンが大統領になる4年前のことだ。
今、アメリカは中国との貿易戦争、そして、おそらくは新しい冷戦に入る。われわれがこの戦争をどのように終わるのか、考えておくべきだ。
それはレーガンのような終わり方にはならない。
ソ連とその衛星諸国は、国家テロの機関であり、階級憎悪のイデオロギーに依拠し、その国民が望むものではなかった。それは常に砂上の楼閣house of cardsでしかなかった。中国は違う。それは体制としてあり、国民や文明としてある。しかも、これら3つは固く結び付いている。それはどこかに向けて変化するだろうが、単に崩壊するようなことはない。
それはドナルド・トランプが考えるような終わり方でもない。
大統領は、「貿易戦争は良いことだ。勝つのは容易だ。」と述べた。われわれはそれを見ている。彼は、民主主義国であれば耐えられないような経済的損害を、中国人民に与えるよう、独裁者たちの意志を試した。たとえワシントンと北京が新しい条件に合意するとしても、その戦略上の対抗関係は何も変わらない。
● イギリス政治の渦巻き
FT May 10, 2019
Nigel Farage, changing British history from the margins
Sebastian Payne
and George Parker
彼はイギリス政治から忘れ去られた人間だった。しかし、今週、ピーターバラで演説すると、熱狂的支持者が1500人も集まった。人々は、ヨーロッパの歴史を変え、イギリスのエリートたちを失神するほど怒らせた、この人物の名を呼んだ。「ナイジェル! ナイジェル! ナイジェル!」
2013年、当時のDavid Cameronキャメロン首相が、イギリスのEU加盟に関する国民投票を行う、と発表した時、保守党議員たちは、これでNigel Farageナイジェル・ファラージの脅迫は無効になる、と喜んだ。しかし、ファラージは知っていた。「奴らは私の舞台に立つのだ。」
6年後、キャメロンは去り、保守党はバラバラになったが、ファラージは残っている。彼は保守党を完全に破壊すると決めたのだ。
その人物を、嫌悪する者も、称賛する者もある。しかし、その影響は誰でも認めている。ある保守党の幹部は言った。「彼は、トニー・ブレア以来、最も影響力のある政治家だ。もしかすると、マーガレット・サッチャー以来。」 また、親ヨーロッパの自由民主党の元指導者Nick Cleggクレッグは、「イギリスの、反欧州、反移民をまとめる人物が求められていたのは明らかだ」と述べて、ファラージを重視する。
ファラージの政治的情熱とは、保守党を破壊すること、イギリスの2大政党を完全に打倒する発射台になることだった。その夢が実現するかもしれない。
The Guardian, Sat 11 May 2019
Farage, Rees-Mogg, Claire Fox... Britain is seduced by politicians
who are ‘characters’
Nick Cohen
The Guardian, Sun 12 May 2019
The zeitgeist has shifted. Now the left is fizzing with ideas for a
smarter economy
Will Hutton
われわれの見る世界は変化している。しかも、加速している。気候変動からフード・バンクまで。共通の資源を守る共通の反応が求められる。
影の内閣の首相John McDonnellは、ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)やユニバーサル・クレジットで、不平等、不確実性、債務、ストレス、ロボット、種の絶滅、ポピュリズムやネオ・ファシズムの台頭、など、この時代の諸問題を解決すると主張する。しかし、わたしはまだユニバーサル・ベーシック・インカムが解決策になるとは思えない。
われわれは、あまりにも長い間、企業が消費者の嗜好に自由に反応して価値をもたらす、という神話とともに生きていた。それは間違いだ。市場はうまく資源を配分できないし、単独で価値を創ることもない。むしろ価値を破壊する。
金融システムは、所有を担保に融資する。その結果、資産価格にバブルが生じる。急速に成長する企業にも融資は足りない。木曜日、the Progressive Economic Forumは、金融システムを批判する報告書を発行した。金融も、労働現場も、EUも、改革が必要だ。
そのためには、われわれは残留派の党であるべきだ。
The Guardian, Sun 12 May 2019
Both Labour and the Tories have gone awol on Brexit
Matthew
d’Ancona
The Guardian, Thu 16 May 2019
The political landscapes of Brexit Britain and Weimar Germany are
scarily similar
Martin Kettle
特別展を開催しているベルリンのドイツ歴史博物館に入ると、すぐに恐ろしい説明が目に入る。
「リベラルな民主主義を、もはや当然と思えない。・・・権威主義的な諸政党が、民主主義の長い伝統がある諸国でも強くなっている。・・・リベラルな民主主義に対する大衆の信頼は、ドイツでも弱まりつつあるようだ。」
ワイマール共和国は、敗戦の混乱の中で創られたが、議会制民主主義による政府を目指す、ドイツで最初の持続的な試みだった。それはナチスによる権力獲得で1933年に破壊された。今では、ワイマール時代はハイパーインフレーションと性文化の浸透と、しばしば、同義語である。しかし、ベルリンの際立ったキャバレーや無価値になった銀行券を思い出す以上の意味がある。それは代表制の、リベラルな民主主義に対するナショナリズム、レイシズム、暴力、ポピュリズムがおよぼす、究極のストレス・テストであった。
ワイマールの議会制度は、諸政党が協力して妥協するように求めていた。しかし、それは起きなかった。左派も右派も、互いを非難し合った。最後は、中道右派がヒトラーとの同盟を受け入れた。ワイマールは、国民的な裏切りの物語に支配され、強い独裁者への誘惑、人種差別主義の、他者を恐れる、非リベラルな政府の形態に魅了された。政治家の暗殺を含む、政治的暴力こそが、1920年代の混乱の源だった。
現代との厳密な対比はできない。しかし、Brexitがもたらしたイギリス政治の状況と、無視できないほど、重なる部分が多い。ワイマールのように、ここでも議会を超えた政治が重要になり、左右の政党が協力できない。国民投票が実現しなかった国民の信頼を、政党も生み出せない。中道右派の勢力は、極右の偏見の多くにおびえ、ますます共有し始めている。
国民への裏切りが語られ、「ルールを破る強い指導者」を求め、さまざまなレイシズムが増えている。政治的な暗殺(やはり極右による)、政治家への暴力による公然の脅迫、議員たちは安全ではないという警告。
少なくともワイマール共和国では、特に、1922年に外相Walther
Rathenauが暗殺されたとき、共和国を支持する大規模な抗議デモが行われた。だが、Brexitのイギリスでは、議会政治を支持するデモはない。議会への侮辱が当たり前だ。代表制民主主義は見捨てられつつある。
1世紀前のドイツで、議会を見捨てた人々は恐ろしい結末を知った。
SPIEGEL ONLINE 05/16/2019
Brexit Party Leader Nigel Farage
'We Want Fundamental Political Change'
Interview
Conducted by Jörg Schindler
FT May 17, 2019
‘Global Britain’ is an illusion because distance has not died
Martin Wolf
● 貨幣の未来
FT May 10, 2019
Prize-winning essays on the future of money
Estelle McCool,
Sofia Comper-Cavanna and Utkarsh Dandanayak
● 瀉血より選挙制度改革
YaleGlobal, Friday, May 10, 2019
Stop the Bloodletting in Politics
Frances McCall
Rosenbluth and Ian Shapiro
古代の医療として瀉血はさまざまな方法で行われた。その目的は、ある種の血液を取り除いて、それにより「悪い気質」を切り離し、病気を治すことだった。多くの患者は生き延びたが、瀉血が役立った者はいない。
政治も独自の瀉血治療を行う。医療と違って、瀉血は今も続いている。世界中の民主主義で、大衆の不満を鎮めるために、政府を民衆に近づけようとする。国民投票、住民投票、比例代表、その他。それらに共通する目的は、政治家を有権者の要求に一致させることだ。有権者の怒りが増すだけであれば、それは分権化が必要となる。
アメリカの選挙は地方州に偏って議員を多く出している、という問題に対して、(人口の多い選挙区で)定数を増やすことが主張される。しかし、この治療は事態を悪化させる。複数の当選者が出る選挙制度では、議会の多数を得るために、各政党が多くの選挙区で複数の候補者を出す。そのため、有権者が候補を選ぶとき、政党の政策綱領が重要でなくなってしまう。
それは、党派性を薄め、超党派で法律を作るから、良いことではないか? 妥協の悪と、穏健化の善を、混同してはならない。政党の違いがなくなるような妥協は間違いだ。単なる票集め、政治家たちの取引になる。妥協が最終目的になれば、あとで妥協を有利にするため、より極端な立場を示すことになる。妥協の予想が穏健化を否定し、極端な主張を強める。
有権者は、選挙区や州の利益になるものを選ぶが、それは国益にならないだろう。最悪の場合、政治は何の意味も持たなくなる。
われわれに必要なものは強い政党だ。多くの有権者に支持されるような政策を提案する動機を持ち、候補者たちはその政策綱領を支持する動機を持つ。
アメリカの政党はすでに弱い。候補者たちは、同じ政党の候補者と予備選挙を戦うために莫大な金を使う。選挙では個人的な利点を宣伝するために金を使う。しかし、政策綱領を示す政党がしっかりしている国では、イギリスやドイツのように、選挙に金がかからない。強い政党があるほど、選挙における金の影響は低下する。
患者を殺すことなく、アメリカの選挙制度を改善することは可能だ。上院は、人口の多い州(California, Texas, Florida and New York)を分割して小さくする。Puerto Rico and the District of Columbiaを州として認める。下院は、独立した選挙区整理委員会が、各選挙区をできるだけ各地区全体のまとまりを包括するように決める。
議員たちは、長期的に、最も多くの人々にアピールするような政策を提案する者を、政党指導者に選ぶ動機を持つ。そうすれば議会は、われわれが望むもの、すなわち、銃規制、他の発展した民主主義国家と協力するような環境政策、機能し、手に入るような医療保険、K-12教育制度改革、を実現するだろう。
● アメリカとイランの軍事的緊張
SPIEGEL ONLINE 05/10/2019
Rising Tensions
Trump's Iran Escalation Poses a Threat for Germany
By DER SPIEGEL
Staff
アメリカとイランの緊張は増すが、ドイツ政府にはワシントンから説明がない。トランプはハンガリーのオルバンを招いて会談するが、メルケルが訪問してハーヴァード大学で演説しても、トランプは会わずにゴルフをしている。
NYT May 10, 2019
Can Anyone Save the Iran Nuclear Deal?
By Ariane
Tabatabai
イラン核合意を救えるのはヨーロッパだ。トランプ政権は、ヨーロッパに選択を迫っている。ヨーロッパは、イランとの核合意を維持したいが、最大の市場であるアメリカに反対することも望まない。
イランは合意を維持したいと考えている。しかしアメリカは、イランと取引する企業には制裁する、と脅している。もしヨーロッパがイランと経済取引を失えば、核合意を守るイランの側の利益もなくなる。
イランのロウハニ大統領は、アメリカの参加しない核合意に向けた交渉に参加することを、ヨーロッパに求めた。そこでヨーロッパは、アメリカの制裁を受けない形で、ヨーロッパ企業がイランに輸出できる道を創るべきだ。最初は、人道支援物資やイランの経済的ライフラインに限定されるだろう。しかし、それによって協力の意志を示せる。
ヨーロッパは、アメリカとイランの関係がエスカレートするのを避けるように、双方の連絡を仲介するべきだ。ロウハニは、この合意をイラン経済復活の成果にしたいと願っている。しかし、国内では強硬派によって批判されている。
もし合意が失われれば、アメリカは軍事力によって核開発計画を破壊しようとするだろう。
FP MAY 10, 2019
‘We May Be Moving Toward a Military
Confrontation’
BY LARA
SELIGMAN
FP MAY 13, 2019
Iran Still Doesn’t Want an Escalation
BY ANISEH
BASSIRI TABRIZI
FT May 14, 2019
Iran’s metals trade funds weapons development
Peter Navarro
NYT May 14, 2019
It’s Time for the Leaders of Saudi Arabia and Iran to Talk
By Hossein
Mousavian and Abdulaziz Sager
私たちは市民として、2国の外交官として、これを書く。イランとサウジアラビアは、何十年間も代理戦争と冷たい関係を過ごしたが、この地域に持続的な平和の新しい基礎を据える時期が来た、と私たちは確信する。
私たちはどちらも、夢見る理想家ではない。互いを信頼しない、タカ派のリアリストである。双方の政府幹部には不信感が共有されている。しかし同時に、それぞれの政府が巻き込まれている権力をめぐる争いが、破滅的な結果をもたらす危機を生じていることもわかっている。たとえば、イエメン、シリア、レバノン、バーレーン、イラクだ。私たちは互いを非難し合うが、その結果を合わせれば、統治する人民の信頼を失い、資源と人命を失うという意味で、コストが大きい。それらは、地域を引き裂くよりも、新しい中東を建設するために費やすべきであった、と合意する。
今や、対話のときだ。歴史的に紛争が続く地域で、外交のための条件が熟している。
The Guardian, Wed 15 May 2019
With Bolton whispering in Trump’s ear, war with Iran is no longer
unthinkable
Owen Jones
FT May 15, 2019
Iran and the US risk igniting the Middle East tinderbox
David Gardner
NYT May 15, 2019
How to Stop the March to War With Iran
By Wendy R.
Sherman
戦争は不可避ではない。トランプ大統領は、選挙戦で米軍を自国に戻すと主張したのであり、中東に数万員を派遣すると約束したのではない。中東の戦争は、これまでに学んだように、迅速に終わるものではないし、目的を達成することもない。
戦争を回避する最善の策は、イランと対話することだ。捕虜の交換で、重要なコミュニケーションのチャンネルを開く。しかし、指導者の階段は、イランの核合意をアメリカが認める場合だけ可能である。残念ながら、トランプは認めない。
幸い、議会、同盟国、その他の介入で、破滅的な戦争を避けることができる。超党派で、政権の戦争計画に関する聴聞会を開くことだ。
議会や上院はまた、大統領がイランと戦争を始める権限を問うべきだ。国民は、その過程で、ブッシュ大統領がサダム・フセインとの戦争を正当化した時の論争を思い出すだろう。
中東の平和を促す、もっと静かな方法もある。議会は、アメリカ、ヨーロッパ、中東の、学者、オピニオンリーダーを呼んで、対話の場を設けるべきだ。政府の代表も加わることができるし、紛争に向かうエスカレーションを抑える。
議会はまた、軍事行動よりも外交圧力と国際合意による非核化の方が望ましいことを示すために、イランとの核合意を結んだ、フランス、ドイツ、イギリスの外務大臣、防衛大臣を呼ぶことだ。
最後に、アメリカや世界のニュース・メディアが、イランに関して行われている事実を正しく伝えるべきだ。
それでも、イランの体制転換を唱えるボルトンと、選挙戦を有利にすると計算したトランプ大統領が、戦争を始めるかもしれない。しかし、イランとの戦争は、アメリカの安全保障を損ない、経済を損ない、世界におけるアメリカの地位を損なう。
FP MAY 15, 2019
The Hidden Sources of Iranian Strength
BY NARGES
BAJOGHLI
FP MAY 15, 2019
U.S. Hard-line Stance on Iran Rattles Allies
BY LARA
SELIGMAN, ROBBIE GRAMER
● トランプとオルバンの記念撮影
PS May 10, 2019
Mr. Orbán Goes to Washington
ANNE-MARIE
SLAUGHTER , MELISSA HOOPER
5月13日、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、ハンガリーのViktor Orbánオルバン首相を迎える。トランプはハンガリーを、中国やロシアとの緊密な関係から引き離そうとしている、と観る者もいる。
しかし、どうだろうか。
トランプは、国内政治に対応した「取引」を結ぶことの執着し、独裁者にあこがれている。それが意味するのは、トランプの最終目標は、中距離ミサイルと天然ガスをハンガリーに売ることだろう。
2月、ポンぺオ国務長官がトランプ政権として初めてハンガリーを訪れたが、オルバンは民主主義体制を解体し始めていた。ポンぺオは何も求めなかった。ポンぺオは、ウクライナとNATOの対話を最重視すると明言したが、ハンガリーはそれに反対し続けている。明らかに、プーチンを喜ばせるためだ。
ハンガリーは繰り返しアメリカに反する行動をとったが、それでもトランプはオルバンとの直接会談を受け入れた。それはおそらくオルバンがトランプのモデルであるからだ。民主的に選ばれて、民主主義に対する責任を無視する指導者だ。政権を執ってから、オルバンは、裁判所から新聞まで、権力へのチェック機構をすべて破壊してきた。「キリスト教の価値」を理由に、イスラム教徒や移民を攻撃し、ユダヤ人迫害を容認し、ジョージ・ソロスを常に標的として利用した。トランプの思想を支えたスティーブ・バノンが、オルバンを「真の愛国者にして真の英雄」と呼んだのも当然だ。
アメリカはドイツに次ぐ援助を行っているから、オルバンに対して外交圧力をかけることができるはずだ。独立したメディアや人権擁護団体に対する援助を行うことも重要だ。しかし、サウジアラビアに対するトランプの姿勢を見るなら、そのような対応は取りそうにない。アメリカ外交の原則を示すより、国益を犠牲にしても、トランプはハンガリーとの取引を好む。
人口1000万位も満たない小国に対して、アメリカは無視するほうが良い、と思うだろう。しかし、ハンガリーは戦略上の要所である。トランプ政権がハンガリーをどのように扱うかは、国益、地政学、人権、民主主義の擁護を、内外において、どのように扱うか、アメリカの姿勢を示すからだ。
FT May 14, 2019
Trump’s Orban boost lands another blow on Europe
Edward Luce
スティーブ・バノンはかつてビクトル・オルバンを「トランプ以前のトランプ」と呼んだ。月曜日、ハンガリーの首相は大統領執務室において最大限の歓待を受けた。ドナルド・トランプは、2人の関係が深い敬意に根ざすことを明確にした。それはトランプが、ドイツ、フランス、イギリス、カナダ、その他の同盟諸国を代表する仲間たちに示す、空疎な関係とは対照的だ。トランプは、まさに称賛する意味で、オルバンを「非リベラルな」強権指導者と呼ぶ。
オルバンは非常に尊敬すべき指導者である、とトランプは語った。「あなたはキリスト教コミュニティーから見て偉大であった。あなたは(非キリスト教徒の移民たちを)まさに阻止したのだ。」
もうすぐ欧州議会選挙が始まる。トランプはどのような政党がヨーロッパで彼と信念を共有するか、明確なメッセージを送ったのだ。彼らはその優位を生かすだろう。イギリスのBrexit党を指導するファラージ。マクロンと接戦を演じるRassemblement
Nationalのマリーヌ・ル・ペン。イタリアにおけるほとんどの議席を得るであろう北部同盟のサルヴィーニ。トランプとオルバンとの会談は非常に有益であった、とバノンはFTに語った。「来週、各地の主権回復政党が指導的な地位を占めれば、われわれはヨーロッパの覚醒を見るだろう。」
トランプが、これまで3世代にわたって続いたアメリカの大西洋政策を破壊したことは、どれほど強調しても足りないほど重要だ。マーシャル・プランでヨーロッパ諸国が援助の配分を共同で決めるように求めて以来、アメリカ政府はヨーロッパの協力を促した。EUを支持する意味で、ジョージ・W・ブッシュもオバマも、オルバンがワシントンに来たとき、面談することを拒んだ。トランプは、その姿勢を全く逆転したのだ。
トランプがブダペストに送ったハンガリー大使David Cornsteinは雑誌the Atlantic Monthlyに、語った。トランプはハンガリーの指導者をねたんでいる。「私はあなたに言うが、もし大統領が25年か30年も統治できるとしたら、トランプはオルバンが得ている条件を喜んで得たはずだ。残念だが、それはできないのだ。」
政治の潮流は多くの点で変化しつつある。今やマクロンは、ル・ペンのネオ・ファシスト政党に劣る。イタリアはトランプ支持のポピュリストたちによって運営され、ファラージはイギリスで上げ潮に乗っている。オルバンはヨーロッパ全体に影響力を広げる国民指導者である。トランプはモラー特別検察官の捜査を乗り切った。再選への準備が進む。
トランプとオルバンの記念撮影は、世界のポピュリストたちに激励となった。
(後半へ続く)