IPEの果樹園2019
今週のReview
5/13-18
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Brexitと新しい政治的断層 ・・・大企業、富裕層の改革論 ・・・インドのソーシャル・メディア選挙 ・・・米中通商合意と為替レート ・・・進歩的資本主義の再建 ・・・トランプの文化戦争 ・・・2つの5・4運動 ・・・欧州議会選挙 ・・・世界経済の低金利状態 ・・・アメリカとイランの危機 ・・・台湾民主主義とアメリカ
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy,
FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York
Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● Brexitと新しい政治的断層
FT May 6, 2019
A new
Brexit divide is driving the UK to a second vote
Robert Shrimsley
イギリス政治には新しい分断が現れている。重要な亀裂は、もはや、残留派と離脱派の間にない。それは、純粋派とプラグマティストの間にある。
Brexitがすべてを変えると信じる者と、普通の生活を取り戻すべきだと考える者。なんかBrexitを実現する道があると思う者と、それを求めない者。
保守党と労働党の指導部はBrexitを実現する道を探す。それによって支持者と議員たちを指導部に従わせることができるから。Brexitの妥協案を模索する過程に力を注ぐ。
他方で、純粋なBrexitを求める者たちと、第2の国民投票を求める残留派とが、妥協案と闘う。どちらの政党でも、残念ながら、純粋派が増えている。そして中間地帯は減少し、プラグマティストは弾圧される。
Brexitがイギリス政治の主要な分断線であることはなくなるだろう。しかし、Brexitの答えはないまま、速やかにイギリス政治を正常化する、という2大政党の願いはかなわない。
● インドのソーシャル・メディア選挙
FT May 5, 2019
India: the WhatsApp election
Madhumita
Murgia in London, Stephanie Findlay in New Delhi and Andres Schipani in São
Paulo
インドの与党BJP(Bharatiya Janata Party)は、WhatsAppを使ってヒンドゥー・ナショナリズムを広める、世界で最も先進的なデジタル政治キャンペーンを駆使している。それはモディを熱狂的に支持するボランティアの若者たちが担っている。
インドにおけるインターネット・アクセスはスマートフォンと安価なデータ通信の普及で、WhatsApp の利用者は3億人を超えている。彼らの世界最大の市場だ。
昨年10月の大統領選挙で、極右の候補者Jair Bolsonaroがブラジル大統領に選ばれたが、その選挙戦で有害なうわさや情報操作がWhatsAppに依拠して大規模に行われた。今や、インドがメッセージ・アプリによる環境変化を受け、数百万の小グループが匿名で情報を共有することが、世界最大の民主主義をどう変えるか、試されている。
これらがフェイク・ニュースの媒体になる、と警告する声が多くある。「WhatsAppは、未確認の虚偽情報、フェイクやでたらめ、などの汚水溜めになっている。」
スマートフォン利用者が増えた、ブラジル、ナイジェリア、インドのような国では、WhatsAppが主要な情報源である。それは、スペインやUKなど、ヨーロッパでも広まっている。
Facebookは2014年にWhatsAppを220億ドルで買収した。その後、Facebookグループで最も重要な通信媒体になっている。そして、利用者たちが情報操作されることに弱い立場を放置している、と批判する声が強い。特に、それは選挙において深刻だ。
● 米中通商合意と為替レート
PS May 3, 2019
Leave the Renminbi Out of
US-China Trade Talks
KENNETH ROGOFF
米中の通商合意は、グローバルな景気変動を強めるのか、あるいは、次のアジア金融危機に向かう火種となるのか? もし合意は、言われているようなものとして、中国の為替レート体制を切り刻んで、時代遅れの、極端に固定した為替レートを強いるなら、その答えはYesだろう。
人民元の為替レートをUSドルに対して安定化するということは、中国の通貨当局にアメリカと合わせて金利を変更するか、あるいは、為替レートへの圧力を避けるために資本規制することを求める。しかし、中国経済は、要するに、あまりにも巨大で、グローバル化しており、小国・開放経済にふさわしい、そのような為替レート政策を守ることはできない。
さらに、人民元をドルに対して安定化するアプローチは、中国とアメリカの景気変動がめったに一致しないのだから、意味がない。景気が悪化するなら、住宅部門の過剰な投資、地方政府の債務依存がある中で、中国は必ずむつかしい政治問題に直面する。そのとき、中国人民銀行は、為替レートを維持することにこだわらず、金融緩和する必要がある。
しかし、人民元の為替レートを人為的に安くしている、という主張は有害であり、そもそも間違いだ。それは、中国が独立した金融政策を取るため、為替レートのより大きな弾力性を認める、という正しい改革に反している。
人民元レートが安すぎる、と批判したのは、中国製品の競争力が低賃金によるものだと認めない、アメリカ側の発想が間違っていた。また近年、中国当局は、人民元レートの減価を抑えるために、市場圧力より高く維持する介入を行っている。急激な資本流出を恐れているからだ。
経常収支の不均衡に関するトランプ政権の理解も間違いだ。それは国内貯蓄と国内投資の差額であるから、もし2国間で中国に対する経常収支赤字が減っても、国内不均衡がそのままなら、アメリカは他のアジアの国、たとえば、ベトナムに対して大幅な赤字となるだろう。
中国をグローバルな通商ルールに従うよう圧力をかけるのは、世界全体によって重要なことだ。しかし、その金融政策の自立性を損なうなら、それはアメリカ政府の交渉チームがパワーを誇示したとしても、その愚かさの証拠でしかない。
● 進歩的資本主義の再建
PS May 6, 2019
Why
Capitalism Needs Populism
RAGHURAM G. RAJAN
アメリカで大企業が攻撃されている。アマゾンはニューヨークの新本社計画を撤回し、共和党上院議員Lindsey
Grahamは、Facebookの市場における競争相手がないことに懸念を示し、民主党上院議員Elizabeth
Warrenは、その分割を求めた。またWarrenは、企業の執行委員会の40%は労働者が占める法制化を語った。
自由市場の国、アメリカで、そのような提案は場違いだ。しかし、論争は本物だ。アメリカ史における資本主義批判は、経済権力の集中とその政治的影響力に反対する闘いとして存在した。少数の企業が経済を支配すれば、彼らは必然的に国家の統制手段を使って団結し、民間と政府のエリートたちが「神聖ならざる同盟」を創りだす。
それはロシアで起きていることだ。ロシアの民主主義や資本主義は名ばかりだ。採取産業や銀行業はオリーガーキーたちが完全に支配し、クレムリンと結託して、いかなる経済・政治競争も許さない。それはまさに、アメリカのアイゼンハワー大統領が1961年に退任演説で懸念した「軍産複合体」だ。
すでに多くのアメリカ産業が少数の「スーパースター」企業によって支配されている。「民主的社会主義者」やポピュリスト的な抵抗運動が、アイゼンハワーの警告を引き継いでいる。しかしロシアと違って、アメリカのスーパースター企業が強力であるのは、彼らが非常に生産的であるからだ。それゆえ、彼らを破壊するのではなく、慎重に改造しなければならない。
資本主義を競争的に保つよう、政府に圧力をかけるべきだ。普通の市民たちが、コミュニティーにおいて、民主的に組織することだ。アメリカでは、19世紀後半のポピュリスト運動、20世紀前半の改革運動が、鉄道や銀行のような、重要産業における独占に反対して現れた。1890年、シャーマン反トラスト法、1933年、グラス=スティーガル法のような法制度は、(間接的だが)その成果であった。
現在、最も良い職場は、スーパースター企業にあり、少数の有名大学卒業生が占めている。中小企業は成長する道を支配的企業によって阻まれ、小都市や、巨大都市の周辺部から、経済活動が失われている。その結果、ポピュリズムが再現している。
正しい対応は、革命ではなくリバランス(再調整)だ。反トラスト規制のように、資本主義は上からの改革を必要とする。また、草の根の改革運動による政策要求も重要だ。そして、荒廃したコミュニティーを再生し、市場経済に生きる人々の信頼を取り戻す。
ポピュリストたちの批判をよく聴くべきだ。それは活力ある市場と民主主義にとって欠かせない。
● トランプの文化戦争
FT May 6, 2019
Donald
Trump is updating America’s historic ruthlessness
Gideon Rachman
ドナルド・トランプは多くのばかげた、途方もないことを言うから、すべてを思い出すことはむつかしい。その中で1つ、特に記憶しているのは、アメリカ軍がイラクを占領した後、「われわれが石油を保持し続けるべきだった」と繰り返し述べたことだ。
ワシントンのエスタブリッシュメントにとって、それもトランプの失言だった。タカ派の中でも特に強硬なタカ派であったチェイニー元副大統領でも、イラク侵攻を占領戦争とは決して言わなかった。しかし、トランプは巧妙に論争を広めているのだ。これが彼の哲学と有権者へのアピールに役立つ、と彼は直感した。
多くのアメリカ人が自分たちのパワーと生活水準は低下しているという不安を抱いているとき、トランプはアメリカの無慈悲さを回復するよう訴える。彼には「政治的な正しさ」など存在しない。「アメリカを再び偉大にする(MAGA)」というスローガンの意味は、アメリカが1番であることを強いる無慈悲さの復活だ。
トランプは大統領執務室の壁にアンドリュー・ジャクソン大統領の肖像画をかけている。ジャクソンはかつて、アメリカ建国の偉人として尊敬されたが、より新しい歴史家たちは、ネイティブ・アメリカンを土地から排除するために、そのジェノサイドを彼が助けたと非難している。トランプは、ジャクソンを称えることで、アメリカの西部征服が示す無慈悲さを称えるのだ。
それはまた、アメリカ国内の文化戦争を意味する。ジャクソンや、南北戦争の南軍司令官で奴隷の所有者、Robert
E. Leeを称えることで、トランプはアメリカの右翼が望むことを語っている。彼らにとって、アメリカの歴史には謝罪することなど1つもない。
これは歴史の論争ではない。政治の、現代の論争だ。トランプの挑発は、左派の、特に大学の左派知識人がアメリカ史の醜い側面をより明確に攻撃する姿勢を、意識している。トランプと進歩的左派とは、奇妙な形で意見が一致する。アメリカ国民は野蛮で無慈悲な行動によって建国した、と主張する。その違いは、左派がアメリカ史の修正を求め、トランプと彼の支持者たちはアメリカ史のすべてを、無慈悲さも含めて、称賛することだ。トランプの考えでは、アメリカがイスラム国や、あるいは、ロシアや中国という、無慈悲な敵と対決するときに、軟弱であることは破滅を意味する。
しかし、どれほど無慈悲であるのを許すか? 人種の隔離を支持し、奴隷制を支持し、敵とみなす者には天然痘をばらまくのか? それはないだろう。
トランプが有権者に示す約束は疑わしい。それは「偉大さ」ではなく、国内の分断と騒乱を促す主張である。ロシアのインターネット情報操作は、しばしば、文化戦争を刺激した。
リベラルな価値に背を向けたことは、アメリカを弱めた。もし中国との戦いが単に経済力だけであるなら、アメリカは負けるだろう。中国の経済規模は、購買力平価でアメリカを超えている。軍備に関して、核兵器ならロシアはアメリカに匹敵し、戦艦なら中国はアメリカよりも多い。
中国やロシアがアメリカを恐れるのは、アイデアの戦いだ。権威主義的支配者たちは、個人や政治の自由、人権、法の支配、といったアメリカのモデルが示す魅力を恐れる。
アメリカはかつて「自由世界の指導者」であった。しかし、トランプは違う。彼は独裁者にあこがれ、リベラルな価値を侮辱する。
● 2つの5・4運動
PS May 6, 2019
China’s
Path Not Taken
IAN BURUMA
今月は、中国の近代史におけるもっとも重要な文化・政治的事件から100周年である。1919年5月4日、北京の学生と知識人たちは大衆抗議デモを行った。「封建主義」の打倒と、政治的自由を要求した。1世紀を経て、共産党独裁体制もこれを祝福する。しかし、5月4日は、もう1つの抗議、1989年4月から6月の天安門を意味するが、それは公式に言及されない。
5月4日に何が起きたのか? 抗議の表向きの理由は、ヴェルサイユ条約の一部として、ドイツの領土が日本に移されたことだ。それは中国の愛国心にとって衝撃となり、国民の弱さと腐敗の典型的な表現であった。それはヨーロッパの啓蒙主義に似ていた。5・4運動は、自由恋愛、実験精神、フェミニズム、社会主義、教育改革、など、多くのものを意味した。5・4運動の2つのシンボルは、1989年に天安門広場で自由の女神に似た像が称えたように、「科学」と「民主主義」であった。
5・4運動を始めたのは北京大学の学生たちだった。
北京大学の学長Cai Yuanpei蔡元培は、知的自由、世界市民主義、寛容、を求めた。マルクス主義者の革命家Chen Duxiu陳独秀は、後に共産党を指導し、毛沢東に排除された。大学で最も著名な思想家Hu Shih胡適は、アメリカの思想家ジョン・デューイをモデルとし、言語改革を唱えていた。
学生たちも、ラディカルな運動家と穏健派との間で分裂していた。最終的に、中五億はリベラルな方向へ進まなかった。Chiang
Kai-shek蒋介石の国民党と共産党は、1920年代、30年代に内戦を続けたが、日本の野蛮な占領と戦争の後、1949年、共産党が勝利した。
政府による5・4運動の記念式典では抑えられた、よりリベラルな、寛容な、オープンな思考は、最初、革命運動の中で強かった。運動に参加した最大の文学者、Lu Xun魯迅は、その自由な精神を、共産主義革命の10年以上前に死んでいなければ、確実に、毛沢東によって弾圧されただろう。政府の記念式典では、彼も言及されなかった。
同様の分裂状態が1989年の5月にもあった。学生たちの抗議活動は暴力を避けていたが、社会・政治改革を交渉するよう政府に求める者と、民主革命を求めて、それが実現するまで行動する者がいた。事態は、共産党の指導者たちが学生の要求を拒んで、広場の選挙をやめなければ厳しい弾圧を警告したことで急変した。一部はキャンパスに戻って静かに抗議を続け、他は死を覚悟しても民主化をあきらめなかった。6月4日、弾圧が行われた。
悲劇的な近代史を知るなら、中国にはリベラルな民主主義を受け入れる準備がない、あるいは、それがふさわしくない、と考える者も中国の内外にいる。教育を受けた中国人の多くは、民主主義は必ずカオスや暴力に至る、と言う。共産党の公式イデオロギーを信じていない人々も、一等毒性体制を支持すると言う。
それゆえ、5・4運動のリベラルな潮流があったことを忘れてはならない。Lu Xun魯迅の著作、Cai Yuanpei蔡元培の主張、より新しいLiu Xiaobo劉暁波がノーベル賞を得たことも、中国には異なる可能性が豊富に存在することを示している。
● 米中貿易戦争
FT May 6, 2019
Donald
Trump’s latest China tariff threat is just bluster
Edward Luce
アメリカ大統領は、貿易戦争に勝つのは容易だ、と述べた。現実には、通常、はるかに複雑だ。日曜日、彼は中国からの輸入品に対する関税を引き上げる、と脅した。100人を超す中国からの通商交渉チームがワシントンに来る2日前だ。
今や、中国チームは来ないか、来ても少数だろう。強制されて交渉するのを好む国はない。ましてや、中国は新興のグローバル大国である。
中国は、貿易戦争のエスカレーションを恐れて合意した、という意味の、メイツを失うことは避けねばならない。他方、トランプは「最大限の圧力」と気まぐれな要求とを繰り返す。それは、金正恩が良く知っている。
しかし、アメリカと中国との違いはおそらく溶けることがない。トランプは習の「中国製造2025」をやめさせたい。それは、2025年までに、10の分野で中国は西側に追いつき、2030年までに、人工知能を中国が支配する、という政策だ。単なる経済目標ではなく、習近平の認めた国家安全保障戦略、中国のグローバル大国を目指す計画だ。
トランプは、中国が国有企業への補助金カットを薄めたことに憤慨した。北京は、貿易不均衡を減らす大豆の追加購入には応じるが、国家戦略を変えるつもりはない。
トランプが圧力を最大化したのには、2つの理由がある。1.アメリカの成長は強く、株式市場も堅調だ。連銀のパウエル議長が進める金融引き締めにイライラしたが、連銀は姿勢を変えた。2.中国との貿易赤字をなくすことがトランプの評価に結びついている。多くのエコノミストたちは、その目標は達成できないし、望ましくもない、と言うが。しかも、トランプが中国製品に課す関税を支払うのは、アメリカの消費者だ。
いずれにせよ、トランプの戦略には先がない。中国は要求に応えないだろう。どうなるのか? 金正恩が知っている。
習は、いくつか大きな約束をするが、その細部はもやもやしたままであろう。細部についてはマーラ・ラーゴの別荘で封印する。トランプを軟化させるには、それで十分だ。
● 世界経済の低金利状態
FT May 8, 2019
How our
low inflation world was made
Martin
Wolf
驚くことに、2009年以前に、イングランド銀行が銀行への短期金利を2%より下にしたことは1度もなかった。ナポレオン戦争や、2度の世界大戦、大不況に対して金利を大幅に下げたが、今では10年もほとんどゼロの水準にとどまっている。アメリカ連銀、ECB、日銀もそうだ。
Ray
Dalioは最近の著書(Principles
for Navigating Big Debt Crises)で、その背後のロジックを描いた。自国通貨で債券を発行できる諸国では、過剰な信用拡大の後に、金融危機を政府が管理した。大量倒産と需要の大幅な落ち込みを回避して、調整を数年にわたって行ったのだ。それは「美しい債務削減」であった。
それには4つの要素が結びついた。1.緊縮策、2.債務組み換え、あるいは、デフォルト。3.中央銀行による「紙幣の増刷」、4.所得・資産の移転。重要なことは、長期金利が所得の名目成長率よりも低く維持されることだ。
しかし、それは政治的には不人気であった。金融危機の損失を分担することは、危機後の弱い回復と並んで、国民の怒りを高めた。
われわれはどこにいるのか? 1.成熟経済において、金融部門、また、家計の債務は、所得に対して相対的に減少した。しかし、政府と非金融部門はそうではない。2.大西洋圏の債務削減ショックは、他の地域、特に中国で、債務の膨張を生じた。3.金融危機に陥った諸国の所得水準は、まだ危機前の水準に達していない。4.左右のポピュリスト政治家が躍進した。これらすべては過去の金融危機にも見られた。
● アメリカとイランの危機
FT May 8, 2019
Risks
rise of an accidental war in the Middle East
David Gardner
軍事部隊を中東に派遣するというアメリカの決定は、トランプ大統領の国家安全保障顧問であるジョン・ボルトンにより、「イランの体制に向けた、明確な、誤解のない警告」である、と述べた。アメリカやその同盟諸国に対するいかなる攻撃も「容赦ない軍事力」で報復される、という。
しかし、アメリカが差し迫った、イランンを憤慨させる、攻撃をするのか、その明確な情報はない。
サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)は、シーア派の地帯に脅かされる地域のスンニ派を支援する。しかし、世界のこの部分では、すべての行動に同様に、反対する行動が生じる。
中東では多くの危険な部品が動いている。首脳たちの行動を信じる多くの過激なアクターが存在する。そして、アメリカにはトランプという突発的な行動をとる大統領がいる。
アメリカとイランが戦争を始めなくても、偶発的な事件から戦争が始まるだろう。
● 台湾民主主義とアメリカ
FP MAY 9, 2019
Taiwan’s
Self-Made Democracy Still Needs U.S. Partnership
BY TSAI ING-WEN(祭英文the
President of Taiwan)
1979年4月10日、台湾関係法が署名された。その1か月前にアメリカ議会を通過した。1979年1月、カーター大統領は中華人民共和国と公式の関係を持ち、同時に、中華民国・台湾との関係を断つ決定をしたからだ。
当時、台湾は民主主義ではなく、人口1700万人、1人当たりGDPが1958ドルであり、冷戦の嵐に瞬くロウソクの火のようであった。
台湾関係法は、アメリカが西太平洋の平和、安全、安定性に関与する権限を与えている。アメリカは台湾を包摂し、強制に抗する十分な防衛力を持つよう保証している。
冷戦の中で、台湾が民主主義の理想の国を目指すとは、だれも予想しなかった。しかし、台湾民衆は権威主義的体制からの民主化を実現し、活気ある民主主義国家として、1996年、最初の大統領選挙を行った。4年後には、異なる政党へ、平和的な政権交代を行った。2016年には、最初の女性大統領を選び、議会には多くの女性議員を送った。
台湾は、また、援助を受ける国から、ハイテク工業国家となり、人的資本、ルールに依拠した市場、健全な司法制度において抜きんでた国となった。
20世紀における民主主義の前進において、40年間、アメリカ議会の承認した台湾関係法は重大な基礎を与えてきた。我が国とアメリカのパートナーシップは、第2次世界大戦後のルールに依拠した秩序への挑戦に対して、これまで以上に重要である。
われわれは権威主義体制に決して屈することはない。友人たちとともに、未来の世代に、開放的で、自由なインド太平洋、さらにそれを越えて、より良い世界を残すため、私は闘い続ける。
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The Economist April 27th 2019
Technology and security:
The right call on Huawei
Indonesia’s election: Us
and them
Identity politics in India:
Vote terror
Banyan: Cross-strait love
and hate
Global infrastructure:
Seeds of suspicion
Panama’s election: Miffed,
but moderate
Sudan: The struggle
continues
Ukraine: Ready for prime
time?
Bosnia: Hanging together
Monarchy: Sovereign
immunity
Oil markets: Crude
tactics
Argentina’s economy: The
price of desperation
Trade deal: Much to
report
Free exchange: A hot mess
(コメント) 興味深い記事が多くありました。各地の選挙は、軍事介入後も含めて、その土地の安定化に役立つのか、インドネシア、インド、台湾、パナマ、スーダン、ウクライナ、アルゼンチンを観て、大いに考えてみるべきです。
第5世代通信システムの導入、グローバルなインフラ整備、国際石油市場、通貨・金融市場、それらにおける米中対立も記事にあります。
トランプ政権が激しく恐喝してまとめさせた、NAFTAに代わるUSITCは、どれほど成果を上げているのか? 経済全体において評価する分析が進んでいます。同等に、アルゼンチンのインフレ鎮静化にIMFが関わり、地球温暖化と温暖化ガスの排出抑制だけでなく、その大気中からの除去、環境エンジニアリングに関しても、グローバルな政治経済と制度化の時代が意識されます。
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IPEの想像力 5/13/19
私たちは、もはや、アメリカの外交・安全保障に頼ることに安心できない、と認めるべきだ。
もし中国がWTOやIMFを介した交渉で解決を目指すなら、米中貿易摩擦では、アメリカではなく、中国を支持することが正しい。同様に、トランプ政権は環境問題を軽視・否定している。環境問題や地球温暖化対策、電気自動車、脱化石燃料、AIや5G通信システムにおいても、中国と協力することが正しい。
確かに、Huaweiの情報通信ネットワークに、中国政府や軍が情報提供を求める懸念はあるだろう。ネットワークに参加する国が、明確な形で、情報を守るルールと監督機関を置くことが正しい。それは、アメリカやロシアなど、多くの国の諜報活動についても言える。ソーシャル・メディア対策、インターネット犯罪、遺伝子操作、動物や人間の感染症、種の絶滅、など、多極化する世界で優れたルールを示し、普及させる国と、私たちも協力し、信頼することが正しい。
もしトランプが、軍事的威嚇と挑発を繰り返し、サウジアラビアやイスラエルとともに、イランとの戦争を始めたら、日本はそれに参加するのか? アメリカによる核の傘を失うことはできないから?
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中国は、対米貿易黒字が大きく、輸入に対する関税で対抗することができない。しかし、トランプの関税を支払うのは、もっぱらアメリカの消費者だ。貿易・通商政策に関する交渉が、為替レートや金融政策、補助金や輸出促進システム、商慣行、輸入を促す国内ルールの改正まで、拡大しつつある。それは1980年代後半の日本を見ているようだ。
アメリカが中国に促しているのは、貿易戦争から、為替レート・通貨戦争、外貨準備・金融政策戦争、管理貿易・ブロック化に向かうG2世界なのか? 日本はそれに反対するべきだ。
イランに対する制裁を国際金融システムによって強いることは、ドルによる国際決済システムからの離脱、多極化、SDRによるIMFの口座間決済システムへ、中国だけでなく、トルコやヨーロッパを向かわせる。日本の企業や銀行も、ドルからの離脱を準備するのが正しい。
アメリカの軍事力や核の傘を失うことは、ヨーロッパのような地域安全保障の制度化と交渉メカニズムを鍛える必要を示している。トランプ政権がそれを求めている。アメリカとの2国間安全保障同盟から、地域安全保障システムへ、日本も進むことが正しい。
アメリカによる国際秩序ではなく、アジアにおける中国を盟主とした秩序に従うのか? 貿易、証券投資、企業の直接投資、移民・難民、情報・通信・治安、など、日本が中国との対話を積み重ねることで、双方の合意を形成することになるだろう。中国には中国の、「権力=秩序の正統性」が、求められるはずだから。
それは、必ずしも、リベラルな民主主義のモデル、人権・民主化・法の支配、宗教・思想信条・表現の自由、ではないだろう。地球のすべての生活を1つのモデルに縛ることはできない。その土地にふさわしい、共同生活の道徳理念、家族や地域社会を再建するメカニズムを求める。
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習近平体制がたどった、権力の歴史的な構造を考えることは重要だ。高い成長率を政治的な正統性に代える時代は終わった。中国にとっても、日はまた沈む。中国経済の構造的転換、インフラ投資や債務膨張、人口の高齢化や労働力の減少、地域格差・所得格差に応じた、多様な政策、都市中産階級の発言力を吸収できる政治システムが求められる。
アメリカとの摩擦と構造協議、国際協調に乗り出した日本の1980年代を、中国はバブル崩壊なしに、制度改革、革新的な政策で、独自に進む意欲を示している。私たちは、中国の姿勢を称え、協力することが正しい。
同時に、中国は独自の民主化を、基本的な社会的価値を、ナショナリズムを、多様な社会システムの安定化として実現するべきだろう。中国は、少数派や政府批判の権利を認め、他国との平和的な共存を目指し、国際的な支持を得るのが正しい。
そのような世界は可能だと思う。もし中国が、明確に、台湾との再統一を平和的に実現する、香港の民主主義や、西域、チベットなどで、少数民族の権利を尊重するという方針を示せば、アジアは中国とともにあるだろう。
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