(前半から続く)
● アメリカ連銀理事
PS Apr
27, 2019
Moore
Problems for the Fed?
JEFFREY FRANKEL
ドナルド・トランプ大統領は、アメリカ連銀理事の候補を2人考えていた。Herman Cainは見送ったが、Stephen
Mooreについても倫理的な、かつ、経済事実に関しての、疑義がある。
Mooreは経済学の博士号を持たないが、それは重要ではない。アメリカ連銀は長くビジネス界からも理事を得てきた。
しかし、最大の懸念はMooreがトランプの仲間であるという疑念だ。アメリカ経済のためではなく、大統領が望むことなら、、何でもする。さらに、Mooreの金利に関する意見も、金や商品に固定した通貨制度にするという意見も、混乱を生じる。
Mooreは、景気変動を金利で拡大する政策を支持した。2007-2009年の不況に、連銀が拡大策を取ると、Mooreはハイパーインフレーションを警告して反対した。2010年に、失業率が9%を超えていたときも、インフレを高めると警告した。
その後、8年間、雇用は着実に拡大したが、アメリカ経済が過熱するリスクも高まった。しかし、Mooreは立場を変えて、連銀が過度に高い金利を取ったと攻撃した。この変身の時期は、最も説得的な理由として、トランプの当選と、その景気刺激策があるだろう。
Mooreの立場とその変身は、共和党に共通するものだ。ニクソンも、レーガンも、連銀に金融緩和を求めた。他方、民主党の3人の大統領は連銀の政策に介入しなかった。
正しい金融政策を実行するのは、独立した連銀の判断であり、金への固定制ではない。
FT April
29, 2019
What you
need to know about modern monetary theory
Gavyn Davies
NYT April
29, 2019
Don’t
Let Trump Mess With the Fed
By Steven Rattner
● スペインの極右政党VOX
FP APRIL
27, 2019
Make
Spain Great Again
BY PABLO PARDO
極右の政党、Voxは、“Hacer España Grande Otra Vez”「スペインを再び偉大にする」と唱えて、イベリア半島にトランプの言葉を輸入した。それは言葉だけではない。ポピュリストの、ナショナリストの、極右の政党は、すでにスペイン政治を再編したし、トランプ大統領やヨーロッパのポピュリストたちと多くの共通した内容を示している。
Voxがスペイン政治に登場したのは2017年10月のカタルーニャ政府による独立宣言が招いた危機においてだった。Voxのナショナリストの指導者は、繰り返し、ラホイ首相を攻撃した。
しかし今、Voxの政策綱領には、単にカタルーニャのナショナリズムを撃退するだけでなく、より野心的な運動、世界的な規模のポピュリスト運動を反映している。そのトランプ型のポピュリズムは、イデオロギーにとどまらない。2017年、トランプのホワイトハウスを築いた戦略家であるスティーブ・バノンがVoxの創立者たちの1人にあった。そしてソーシャル・メディアの利用を支援した。
バノンはVoxを、ヨーロッパで最も重要な、興味深い政党だ、と称賛し、アメリカのティー・パーティ、トランプ自身に次いで、その誕生を指摘した。
FT April
29, 2019
After
the election, Spain needs political and economic reform
Miriam González Durántez
FT April
30, 2019
Spain
needs a stable and reform-minded coalition
FT May
2, 2019
Spain’s
Socialist victors have an opportunity to resolve the Catalonia question
David Gardner
● Brexit合意案の死
FT April
28, 2019
The
European elections are a unique opportunity for Change UK
Jan Rostowski
FT April
29, 2019
Donald
Trump can deliver Britain a post-Brexit trade boost
Michael Auslin
FT April
30, 2019
Conservatives
are drawing the wrong lesson from the Brexit party
Robert Shrimsley
FT May
2, 2019
Why
Boris Johnson looms large over the Brexit endgame
George Parker in London
それは3月12日、午前11時だった。ダウニング街で希望が死んだ。
その数時間前には、テリーザ・メイが首相官邸に戻って来て、ユンカー欧州委員会議長からストラスブールでの確認を得て安堵したところであった。ついに、メイのBrexit案は庶民院を通過する支援を得たのだ。
「閣僚たちは上機嫌だった。」と思い出す。「それは通過するだろうと感じていた。」 メイ夫人の少数政権では、政権協力の相手である(アイルランド)DPUが反対を取り下げる用意をしていた。保守党内のヨーロッパ懐疑派も決定に従っただろう。そのとき、司法長官Geoffrey
Coxが投げた爆弾が破裂した。
Coxは、外交的な美辞麗句を除けば、何も変わっていない、と述べた。メイのBrexit案では、イギリスが永久にEUの関税同盟にとどまるだろう、と。その数時間後、メイの合意案は149票の大差で否決された。それから保守党とその指導者はBrexitの大渦に巻き込まれる。
このカオスを創りだした張本人の1人である元外相ボリス・ジョンソンが、次の主張になるのか、それはBrexit後のすべての論争にかかわる。ジョンソンは顕著なヨーロッパ懐疑論者であり、2016年、ヨーロッパの統一に向かう動きを、ナポレオンとヒトラーの思想に比べて、ヨーロッパの指導者たちを怒り狂わせた。
FT May
2, 2019
Brexit
makes the case for an independent Scotland
Philip Stephens
FP MAY
2, 2019
Brexit
Is Killing the Special Relationship
BY STEPHEN PADUANO
● ユーロ圏を改革せよ
FT April
28, 2019
The
unbreakable, unsustainable eurozone
Wolfgang Münchau
ユーロ圏は、今、解体不可能で、同時に、持続不可能である。この2つが心地よく同居している。しかし、不況が来れば、その対立が明白になる。
不況に対して指導者たちは改革を唱えるだろうが、それは空想だ。あれほどの危機においても、改革しなかったのだから。中途半端な銀行同盟と欧州安定化メカニズム(ESM)ができても、ユーロ圏は決して強化されていない。
2010年から2015年の危機をユーロ圏が生き延びたのは、2つの決定があったからだ。それはいずれもECBのドラギ総裁が指導したものであった。2012年夏、彼は、ヨーロッパの単一通貨が解体するのを阻止するために、「ECBは何でもする」と約束した。その後、2015年3月、ユーロ圏の政府債券をECBが購入した。しかし、それができたのは幸運だった。ユーロ圏が2014年にディスインフレに入ったからだ。
ECBは、将来の危機に対して、同じような行動をとれない。その理由が3つある。1.ドラギは10月に退任する。2.ECBの政府債購入には限界がある。3.ECBの金利引き下げはもう限界だ。
ECBが構想する能力と意志を書いているとき、ユーロ圏の改革をするしかない。いま議論しているような財政を支援する若干の融資枠を尽かすることではない。私はすでに、ユーロ圏の安定性ためには、財政統合は必要ない、と結論した。必要な条件は、資本市場の統一と、単一の政府資産、ユーロ債の発行である。
それは一部の国にとって政治的なタブーである。特にドイツがそうだ。しかし、ユーロ債市場がなければ、解体不可能で、同時に、持続不可能であることは長期において矛盾する。金融市場の担保となり、銀行は各国の政府債券からユーロ債の保有に代える。ユーロの国際的な利用も拡大する。
安全な資産がなければ、ユーロ圏の危機は続く。次は、おそらくイタリアだ。生産性の上昇が低く、財政赤字が多く、債務累積は膨大だ。この組み合わせは持続不可能だ。イタリアの債務再編が必要だろう。しかし、政府にも、銀行にも、制度にも、その準備がない。むしろ、並行通貨の発行や暗号通貨の利用、など、あいまいな形のユーロ圏離脱になるかもしれない。
PS Apr
29, 2019
When
Facts Change, Change the Pact
JEAN PISANI-FERRY
EUの「安定と成長のための協定Stability
and Growth Pact」は、加盟国に財政のルールを求めているが、皇帝の新しい衣服のようだ。誰もそれが見えないけれど、公に皇帝が裸であるとは言わない。この顕著な沈黙は、政治にも経済にも良くないものだ。
このルールは絶望的に複雑である。誰もまともに理解できない。さらに、この協定ができた時点と今では、経済条件が全く異なっている。特に、20年前に比べて、金利が壊滅した。こうした状況では、財政赤字を増やすことで刺激策を採用するのは当然だ。GDP比3%では制約がきつすぎる。
EUは、ルールを改革して、政府支出と公共投資とを区別し、その目標を決めるべきだ。たとえば、端子排出の抑制や、雇用、生産の改善だ。
NYT April
29, 2019
Europe’s
Crisis of Integration
By Ian Kershaw
ヨーロッパのアイデンティティを探す必要はない。市民はそれぞれの国に帰属し、その国がヨーロッパの共通原則、すなわち、平和、自由、多元主義敵民主主義、法の支配を守るだろう。その約束は物質的な生活水準の改善が支えているから。そして、超国家的な紐帯や協力が可能な分野ではどこでも、それを強化するだろう。
FT April
30
ECB
should build links with national capitals to combat meddling
Claire Jones in Frankfurt
FT May
1, 2019
Germany’s
economy needs a spring clean
VOX 01
May 2019
Euro
area architecture: What reforms are still needed, and why
Agnès Bénassy-Quéré, Markus K Brunnermeier,
Henrik Enderlein, Emmanuel Farhi, Marcel Fratzscher, Clemens Fuest,
Pierre-Olivier Gourinchas, Philippe Martin, Jean Pisani-Ferry, Hélène Rey,
Isabel Schnabel, Nicolas Véron, Beatrice Weder di Mauro, Jeromin Zettelmeyer
2018年1月の、フランスとドイツの政府に向けた、われわれのユーロ改革案は、リスク・シェアリングと市場規律を強化するものだった。欧州預金保険(EDIS)や欧州失業再保険は、リスクに見合った保険のプレミアを求め、最初の負担が国家レベルにあることで、実際に、規律を強化するだろう。セーフティーネットを強化することで、自己破壊的な緊縮策ではなく、秩序正しい債務再編を行うことができる。
われわれはまた、銀行が自国の国債だけ保有しすぎることを抑える「集中課金」や、景気悪化に対して財政刺激策を取るための財政ルールの改革を提案した。
しかし、その後の改革は進んでいない。ユーロ圏の景気は下降すると予想される。ECBが行動する余地はもうない。ユーロ圏の政策手段を拡大しておくべきだ。
特に、単一市場の実現を加速し、銀行同盟、資本市場同盟、研究開発投資の統一、を実現する。新しい産業政策が、欧州の市場競争を妨げることなく、強化されるべきだ。
FT May
2, 2019
Steve
Bannon’s alt-right academy — and one village’s fight to stop it
Hannah Roberts in Anagni, Italy
PS May
2, 2019
The
Rorschach Test of Notre Dame
SŁAWOMIR SIERAKOWSKI
PS May
2, 2019
The
Commercial Case for EU Solidarity
JOSCHKA FISCHER
PS May
2, 2019
Fight
Corruption to Reclaim Europe’s Soul
GUY VERHOFSTADT
NYT May
2, 2019
Why Is Socialism
Coming Back in Germany?
By Jochen Bittner
ドイツにおいても「社会主義」が復活している。社会民主党の青年部の指導者Kevin
Kühnertは、集団主義を説く。
しかし、東ドイツが示したように、生産手段の国有化は失敗だった。「社会主義」が復活したのは、1989年のベルリンの壁崩壊と、2001年の9・11テロによって見失われた、中国のWTO加盟があったからだ。
欧米は過剰な市場自由化に酔い、中国が急速に世界経済を作り変えていることを気付くのが遅れた。その反省を「社会主義」に求めても、間違った答えしか出てこない。
● ゴルディロック経済
PS Apr
29, 2019
Goldilocks
Growth
ANATOLE KALETSKY
不況になるという不安は間違いだった。市場のジェット・コースターは、後からなら説明できる。今や、非合理的なパニックを恐れることなく、記録的な好況がさらに長期に及ぶだろう。
金融危機後に広まった2つの見方は間違っていた。「長期停滞」論と、デフレを「ニュー・ノーマル」とする懸念だ。それはグローバル経済の変化によって説明できる。今や、中国とその他の新興経済がグローバル経済の半分以上を占めている。彼らの成長が続いているのだ。
ウォール街は「ゴルディロック経済」を楽しんでいる。それは、おとぎ話に出てくる「熱過ぎず、冷たすぎない」理想の状態だ。しかし、投資家も、エコノミストも、中央銀行も、誤解している。株価は上昇しているのに、債券利回りは低下している。これは矛盾だ。
かつて景気が良ければ、利潤が増えて株価が上昇し、同時に、インフレになって利回りも高くなった。金融危機の後、この2つの関係が崩れた。大幅に金融緩和しても、インフレは起きない。グローバリゼーション、技術革新、人口減少、労働組合の現象、など、その理由が何であれ、この関係は政治的ショックとともに終わるだろう。
トランプの貿易戦争か、イラン石油に対する制裁かもしれない。
PS Apr
29, 2019
Balancing
Growth and Structural Adjustment in China
YU YONGDING
PS Apr
29, 2019
My Best
Growth Forecast Ever
ROBERT J. BARRO
FP MAY
1, 2019
‘We Need
a New Vision in Development’
BY MICHAEL HIRSH
● エルドアン
FP APRIL
29, 2019
Erdogan
Is Writing Checks the Turkish Economy Can’t Cash
BY CHRIS MILLER
● コミュニティの復活
FT April
30
Investment
alone cannot save distressed communities
Raghuram Rajan
たとえ成長する国、成長する地域でも、多くのコミュニティが見捨てられている。衰退地域の“opportunity
zones”はコミュニティの復活に成功するか?
もし地域の指導者が育つなら、彼らは自分自身の力で成長するだろう。お金を出すことは重要だが、それがコミュニティを復活させるものでなければならない。たとえば、学校が荒廃するところでは若者が流出している。ローカルなカレッジや職業訓練校に奨学金を出すことは有効だ。移民のビザ発行にも、衰退するコミュニティで暮らす条件を付ける。
アマゾンの本店を、ニューヨーク、クイーンズ地区に誘致する計画は、失敗したケースだ。それは様々な優遇策を示したが、地域のコミュニティと連携できなかった。
シカゴでは、まず、犯罪を減少させることに取り組んだ。それがビジネス誘致のカギだったから。住民と警察は協力し、集中的に街頭での犯罪を減らすことに成功した。そのコミュニティからは、他の犯罪もなくなった。
FT May
1, 2019
The
politics of hope against the politics of fear
Martin Wolf
カリスマ的指導者は、政治に幻滅した人々の支持を得る。その中には独裁者になるが、多くは悪人である。中道右派・左派の政治家、その支持者たちは、こうした政治家にどう対応すればよいのか?
彼らは大きな闘争の中にあることを知らねばならない。金融危機と、その事後処理は、エリートたちの信頼を根こそぎにした。ジョナサン・スウィフトが描いたように、嘘は大空を翔るが、真実は地を這って進む。リベラルな民主主義は戦争も冷戦も生き延びた。しかし、繁栄を分かち合うことが安定化のカギだ。それを失えば、すべてが失われる。特に、民主主義の信念が損なわれている今は。
希望を回復するには、10の注意が必要だ。
1.指導力。民主主義的政治とは、票を買うだけでなく、人びとを説得することでもある。トランプは政治家として実績がなく、なんの能力も示していなかった。しかし、支持者を集めるのがうまかった。彼は物語がうまいのだ。物語のない政治家は敗北する。
2.政策能力。能力のない政治家は、短期ではそれほどでもないが、長期では必ず失敗する。右派でも左派でも、反対を叫ぶデマゴーグたちだ。能力は必要ない。中道の政治家たちは、自分たちがしていることを理解していなければならない。
3.市民権。民主主義とは市民たちのコミュニティである。市民が最も重要だ、という考えこそ、コミュニティの基礎である。福祉国家も、経済への参加も、外国人にも参加できるが、それは公平で、政治的に受け入れ可能なものでなければならない。
4.包摂。不平等は政策の結果である。可処分所得の差が開くのは是正するべきだ。
5.経済改革。社会が経済的に繁栄し、包摂するように、企業に正しく課税する。レントには課税し、競争を促す。
6.地域コミュニティ。権限と財源をローカルなコミュニティに与え、再生を促す。
7.公共サービス。人々は課税されるのを嫌うが、政治家は公共サービスと必要な課税を支持するべきだ。リバタリアンの最小国家では民主主義が機能しない。
8.グローバリゼーションとグローバルな協力。孤立した国はない。アイデア、資源、人、財、サービスが国境を超える。これは以前よりも重要になった。グローバル公共財にとっては協力が欠かせない。
9.先を読む。われわれの世界は長期的な変動期にある。気候変動、AIの普及、アジアの興隆、など。優れた政府は先を読む。中国もそうだ。
10.複雑であること。単純な答えはない。かつてHL
Menckenは述べた。「すべての複雑な問題には、明快で、単純な、間違った答えがあるものだ。」 カリスマ指導者が示すものはこれである。専門家の助言は間違うし、テクノクラートの評価は低い。怒りと気まぐれの政治は必ず失敗する。政治は、リアリズムに依拠した希望を必要とする。
PS May
1, 2019
The
World’s Next Big Growth Challenge
MICHAEL SPENCE
PS May
1, 2019
How to
Rebuild America’s Economic Foundations
JONATHAN GRUBER , SIMON JOHNSON
FT May
2, 2019
US
declining interest in history presents risk to democracy
Edward Luce
アメリカは、今、歴史を消し去りつつある。歴史を先行するアメリカの学生は、すでに低かった2008年の水準から、3分の1以上も減った。
歴史のことをより学んだ市民が強い社会を創る。われわれは歴史に興味をなくしたが、歴史はわれわれを見ている。
● 欧州議会選挙の意味するもの
NYT May
1, 2019
What Do Europeans
Really Want?
By Ivan Krastev
もしあなたが主要な新聞を読み、政治指導者の話を聴いていたら、欧州議会選挙は、有権者たちが激しく分断されて、運命的な選択に向けて準備している、と思うだろう。よく聞くことだが、この選挙は一種の国民投票である。
極右にとって、それは移民(そのEUの政策失敗)に関する国民投票だ。進歩的な親欧州派は、EUの生き残りをかけた国民投票とみなす。極右の戦略家たちは、ドナルド・トランプが勝利した2016年の選挙をまねようとし、他方、親欧州派はマクロンがル・ペンに勝った2017年のフランス大統領選挙をまねようとする。双方が1つの点では一致している。われわれはポピュリスト・ナショナリストの集団と、欧州派の集団との、戦いに直面している。
このどれもが間違いだ。選挙前夜の雰囲気を描くニュース・メディアは、現実と大きくかけ離れている。
状況はもっと希望に満ちている、というのではない。確かに、ポーランドでは、有権者が深く分断されている。ポピュリスト・ナショナリストの政府側と、それに反対する戦時の敵陣営のように。しかし、その他の国では、有権者は態度を決めていない。
ヨーロッパ市民の圧倒的多数が変化を求めているが、それを満たす方針はあまりにも異なっている。例えば、オランダでは、3月の地方選挙で、反移民の極右政党が躍進した。しかし、同じ月に、スロヴァキアは、多年にわたり負け知らずのポピュリスト支配が行われていたが、大統領にリベラルな女性を選んだ。どちらの投票も現状に対する反対であった。オランダの主要政党は現状維持派とみなされたが、スロヴァキアではポピュリスト支配が現状だった。
現在起きていることは、主流派から周辺派閥への移行ではなく、有権者がすべての方向へ分解しているのだ。絶え間なくイデオロギーの境界線を越える、2019年版の欧州移民危機である。しかし、有権者の移民は、帰還する率が劇的に高まっているようだ。反政府の政党に投票しようと考えている人々の半数以上が、投票の変更を考えている、という。
この選挙はほぼ全体に不確実さを示している。しかし、有権者を統合する何かが存在するようだ。
1688年、スイスの心理学者が新しい病気に「ノスタルジア」と名付けた。自分の国へ戻りたいと熱望することから生じる憂鬱が、その主な兆候である。しばしば幻聴や幻視に苦しむ。ヨーロッパは今、慢性的なノスタルジアに脅かされている。有権者たちは、怒り、混乱し、ノスタルジックになっている。多くの者が、昨日の世界の方が、今の世界よりも良かった、と感じている。彼らは子供たちが今よりももっと悪くなることを恐れるが、どうすればそれを阻止できるかわからない。
欧州市民は、昨日の世界の方がよかった、と信じて団結している。しかし、黄金時代がいつか、という点では分裂している。反移民政党は、エスニック的な同質性を示す諸国から成る世界を夢想するが、それが本当にあったかどうか、気にしない。左派の多くは、欧州統合の特徴であった進歩主義を懐かしむ。
欧州の有権者は、変化への願いと、過去への郷愁に、分裂している。EUを信じる者と、国民国家を信じる者が、対立しているのではない。最大多数は、EUも国民国家も疑っている。すなわち、今は昨日より悪いと思う者と、今は明日より悪いと思うものと。
欧州議会選挙は、この病気を悪化させる。それは大陸が後ろ向きのうつ状態を悪化させるか、あるいは、将来に向けた、回復の最初のステージを示す。
● ディストピアの大統領
FT April
30
The EU
should back the fight against Ukraine’s oligarchs
Willem Aldershoff
PS Apr
30, 2019
Ukraine
Sends in the Clown
NINA L. KHRUSHCHEVA
2000年の最初の10年、アメリカの野心的な政権を描いたテレビ番組The West Wingが皆に好まれていた。地域全体や宗教を敵にすることなく、テロリズムと闘い、法の支配を犯すことを拒み、国の最善の利益のために決定を下した。この番組に登場する、Martin
Sheenの演じた冷静な大統領が、カウボーイ風のジョージ・W・ブッシュ大統領と、入れ替わってほしいと思う者が多かった。あるいは、その戦争好きの副大統領、ディック・チェイニーと。
ある意味で、それがウクライナで起きたことだ。コメディアンのゼレンスキーVolodymyr
Zelenskyは、人気あるテレビ番組Servant
of the Peopleの、調印から大統領になる主人公を演じていた。しかし、これは理想的な話では全くない。ウクライナ人にとってはあまりにもなじみ深い、ゆがんだ現実の新しい例である。ウクライナで政治を決めるのは、指導者ではなく、俳優たちだ。
近年、カリスマ的で、政治と無関係な人物が政治権力を得るのは、珍しくない。不動産開発業者で、リアリティ・テレビ番組の司会者でもある、ドナルド・トランプがその顕著な例だ。Austria,
Hungary, Italy, Russia、その他で、俳優たちがポピュリストの言葉を使って、エリートに無視された普通の人々の支持を得てきた。2016年のアメリカ大統領選挙でトランプが勝ったとき、私はハクスリーAldous
Huxleyの『素晴らしい新世界Brave
New World』を思い出した。それは、無知と、無意味な娯楽への欲望で、人間性が破壊される未来を描いていた。
ウクライナは兆候であって、実験室ではない。ハクスリーのディストピアにますます似てくる世界では、経験ある、正直な、強いが思いやりのある、カリスマ的で、しかも、真剣な、政治指導者は少なくなる。そして、われわれは道化師たちに支配される危険が高まっている。
FT May
3, 2019
Ukraine’s
politics of the absurd
Frederick Studemann
● ヴェネズエラ
FP APRIL
30, 2019
Guaidó’s
Make or Break Moment
BY MICHAEL ALBERTUS
FT May
2, 2019
US
commitment to regime change in Venezuela tested
Aime Williams in Washington
FT May
2, 2019
Nicolás
Maduro’s hold on power is starting to slip away
FP MAY
2, 2019
Venezuela
Is at a ‘Tipping Point’
BY LARA SELIGMAN
● メイド・イン・アフリカ
FT May
1, 2019
Africa
will be the new China
Basil El-Baz
私は予言したい。大胆な予言だ。50年以内に、「メイド・イン・アフリカ」は、衣服、タオル、テレビなど、今、イギリスのどこにでも売っている「メイド・イン・チャイナ」と同じくらい、どこでも売られているだろう。いや、私はさらに予言したい。アフリカの製品は、今の中国企業の製品の多くを、市場から一掃するだろう、と。
アフリカ製品は、海上輸送により、わずか15日でヨーロッパ市場に届く。中国は不利だ。
● インド選挙とSNS
PS May
1, 2019
India’s
New Social Media Politics
SHASHI THAROOR
● ベルルスコーニ
FT May
2, 2019
The
irresistible return of Italy’s elderly tycoons
Rachel Sanderson in Milan
● UK労働市場
FT May
2, 2019
Foreign
cleaners expose lack of protection in UK labour market
Robert Wright and Camilla Hodgson in London
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The
Economist April 20th 2019
Crops and climate change: Time to see the blight
Cambodia’s economy: Fast and loose
Immigration: Let them past
Bell: Lessons from the amauta
Finland: The populists hit back
Charlemagne: Diplomatic baggage
Overthrowing despots: The putsch option
China’s GDP: Growth in train
Free exchange: Hitting the big time
(コメント) 地球温暖化が農業にとって有利である土地もあるわけです。遺伝子操作による新しい作物が普及するかもしれませんが、それは温暖化と新しい感染症によって絶滅を引き起こすかもしれません。
中国の慎重な移民政策の変更、ラテンアメリカの「社会主義革命」を支えた思想家、フィンランドの政治を変えるポピュリストの躍進、EU外交というものが形成できない国々の異なる歴史。
アルジェリアとスーダンで独裁者が権力を失ったけれど、それが民主的な政治体制をもたらすことはなさそうだ、という記事を、興味深く読みました。また、なぜ人口の多い国が繁栄し、支配しないのか、数百年を基準に考える記事も面白いです。上海の地下鉄建設だけでなく、中国のインフラ投資の規模に驚きます。
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IPEの想像力 5/6/19
ヨーロッパでも、アメリカでも、政治は大変動期を迎えています。
政治や社会のグローバリゼーション、・・・インターネットやAI、ロボットの普及と産業の移転・構造変化、・・・労働市場の再編・消滅、流動化・短期化、・・・中国や新興経済の拡大、世界の貿易・投資の新循環・・・地球温暖化と海面上昇、沿岸都市の消滅、農業や生物種の変化、・・・アフリカなどの人口増加と富裕地域への人口流入、豊かな諸国の高齢化、人口減少、移民・難民問題。
****
欧州議会選挙は、ポピュリスト・ナショナリストの政治集団と、親EU・市民社会派の政治集団が対抗する、と思っていました。しかし、そうではない、とIvan
Krastevは考えます。旧来の政治イデオロギー、政策枠組みが信用を失い、有権者は漂流しているのです。政治集団そのものが、移民のような有権者の心を捉えるために姿を変えつつあります。
日本はどうか? と質問されました。日本でも、旧来の保守党と社会党は消滅し、政策枠組みも消滅した、と思います。しかも、20年早く。欧米が世界金融危機で主要な政党とイデオロギーを解体し始めたように、日本もバブル崩壊と中国・北朝鮮脅威論で旧政治を解体したわけです。自民党の伝統的な派閥闘争も、社会党も消滅しました。
もし自民党が右翼的に再編されて復活(あるいは、名前だけ借りた別物に変異)していなければ、また、民主党の政権交代が、東日本大震災や原発事故を超えて、権力基盤を確立していたら、日本政治は根本的に変貌し、自民党・安倍長期政権もなかったでしょう。そのとき、フランスのル・ペンとマクロンの大統領選挙が、日本では、維新の会と立憲民主党の対立になっていたかもしれません。
もしドイツで、1930年代に、保守党や資本家たちがナチスに向かわず、社会民主党が民主的選挙によって社会主義の政策を実現していたら、第2次世界大戦はなかったかもしれません。そして、冷戦や封じ込め戦略がなければ、あるいは、たとえアメリカがソ連の社会主義体制を葬りたいと願っても、スターリンではなく、もっと穏健な指導者が、ドイツやヨーロッパの社会民主党政権と協力関係を深めていたら、冷戦やスターリンの支配体制は誕生しなかったかもしれません。
今、アメリカが、その民主的な制度にもかかわらず、トランプを指導者に決めたことが、歴史的に重大な転換点となるかもしれない、と思いました。
****
あらゆる方向に政治が分解・離散し、さまざまな党派を横断して渡り歩く、民主主義の流動化がこれからも続きそうです。政党やイデオロギーが、具体的な形で、有権者の願いをかなえる政策枠組みに結びつかねばなりません。ポピュリストに悪用されず、こうした流動化が政治を変えるのを促すには、もっと政治が機能する仕組みを、政治以外の分野でも工夫し続けることです。
人類は、自分たちの利益のために、地球の在り方を変えてしまいました。生物種の減少や、遺伝子操作によって生まれた生物の未来に、温暖化による影響で予期せぬ感染症が、人類を含む、さまざまな生物種に及ぶ危機を生じます。
地球の水を、人類はすべての人々と、そして、生態系のすべての生き物と分かち合わねばなりません。さらに、海は誰のものか? 土は誰のものか? ポピュリスト、ナショナリスト、ファシストは、どのように答えるのか? コメディアンやテレビ番組の司会者に投票するとしたら、政治の未来は、地球と人類がともに滅ぶディストピアです。
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