IPEの果樹園2019

今週のReview

5/6-11

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民主主義という統治 ・・・米中対立の深刻化 ・・・天皇制 ・・・良い職場を創る ・・・トランプ外交の思想 ・・・ユーロ圏を改革せよ ・・・コミュニティの復活 ・・・欧州議会選挙の意味するもの ・・・ディストピアの大統領

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 民主主義という統治

The Guardian, Fri 26 Apr 2019

To rage against Donald Trump’s state visit to the UK is simply childish

Simon Jenkins

われわれはどうしたのか?

アメリカ大統領が、6月に、イギリスを公式訪問する。それは、民主主義国家同士の国賓であり、戦争の勝利を記念するためだ。20万人の群衆がロンドンに集まって、彼を罵倒するまともな目的はまったく思いつかない。

私は、メイがトランプを招来すると考えた動機について、何も知らない。しかし、彼女は招待したのだ。国賓とはそういうものだ。エリザベス女王が、ルーマニアのチャウシェスクや、ジンバブエのムガベ、ザイールのモブツにあいさつしたことを思えば、トランプなど天使のようなものだ。

イギリスはアメリカと深い絆で結ばれている。歴史、通商、文化、教育がそうだ。ワシントンの現在の指導者は、大西洋の両岸で、人々を困惑させ、さらには憤慨もさせているだろう。しかじ、それはイギリスが招く国賓に対して子どもじみた抗議をする理由にならない。

民主主義の機能が壊れていると思うと、人々は自分たちを表現することを熱望する。スーダンから、パリや、ロンドンのオックスフォード・サーカスまで、都市を埋める群衆はその力を示そうとする。政治は、一種のお祭りに近い。Brexitであれ、地球温暖化であれ、トランプであれ、刺激に反応する。私は催涙ガスより、議場の奇抜なドレスが好きだ。しかし、そのような行動に何の成果もないのであれば、それは他者を犠牲にする身勝手な振る舞いでしかない。

今は議会政府の美徳を訴えるのがむつかしい時期かもしれない。しかし、そうした制度こそが、正式な民主主義と、「強権的な、ルールを破壊する指導者」との間にある、重要な違いである。西側でも、ますます多くの民衆がそのような指導者を求めている。

気候変動と闘うため、非常にコストのかかる、劇的な政策を採用したいなら、議論に勝つことによってのみ採用できる。イギリスは石炭の使用を減らし、カーボン・フットプリントも減らした。他方、その他の世界では倍増した。もしもっと減らしたいなら、若者たちはモスクワ、ムンバイ、北京で交通を遮断するべきだ。

恐怖の政治は、憎悪の政治と同様に、理性を抑圧し、感情に支配される。政策綱領なしに、議論に勝つことはできない。討論の場を放棄することは、常に、危険なことだ。それは反動を招く。

私はドナルド・トランプが世界の調和に対する脅威だと思うから、彼の支持者たちの偏見を助長することは望まない。私はイギリスがEUと緊密な関係を保ってほしいと思うから、Brexit推進者が、大都市に住むエリートたちの欠陥、とみなすようなことは望まない。若者たちは、気候変動を非難するために、ロンドンの労働者たちに経済制裁を科すべきではない。

気候変動は「地球への脅威」ではない。現在のライフスタイルに対する脅威なのだ。それは十分に議論を尽くすべきだが、直接行動は議論ではない。

The Guardian, Fri 26 Apr 2019

Farage and Extinction Rebellion: two politics of protest, only one has a future

Gary Younge

新しいBrexit党の指導者、ナイジェル・ファラージがClacton桟橋で演説するのを観ながら、私はMichael Rosenの詩を思い出した。ファシズムは派手なドレスを着て現れるのではない。

「ファシズムは友達としてやってくる。

あなたの名誉を取り戻す。

あなたに誇りを感じさせる。

あなたの住宅を守り、

あなたの職場を守る。

近隣地区を洗浄する。

あなたはかつてどれほど偉大であったかを思い出す。」

ここで重要な点は、侮辱することではない。Brexit党の集会参加者に共通する社会的背景、修辞的な魅力、政治的方向性を、最も正確に描いていることだ。彼らは、フランスのル・ペン、イタリアのサルヴィーニ、アメリカのトランプの集会に参加する人々と同じだ。高齢の、田舎や、都市の外の、地方の人々、そして、白人だ。富裕層も、貧困層も、その慢性的な不満を共有する。

懐古趣味のにおいがするだろう。もうすぐDデイ(ノルマンディー上陸作戦)の記念日だ。「私たちは誇り高い国民だ。」と、ある女性は私に語った。「われわれは戦う国民だ。侮辱されるつもりはない。」

彼らは正しい。問題は、彼らが求めた主権の回復を、議会が実現できないことだ。彼らが民主主義で闘い取ったことだ。しかし、議会はそれを尊重せず、むしろ問題の一部になった。彼らは裏切られたことで硬化した。すべての政党、政治階級、エスタブリッシュメント、議会が、彼らを裏切った。

EUとの関係だけでは狭すぎる。Brexitはあまりにも制限されており、われわれが直面する課題をゆがめている。政治は、Brexitの信条に対して、もっと有効な、楽観的な方針を対置するべきだ。

ファラージが海岸の町で聴衆を集めているとき、ロンドン中心部では環境保護を求める抗議に人々が集まっていた。気候変動についての行動を起こさない政府に2週間抗議した後、環境保護団体「絶滅への反逆(Extinction RebellionEX)」は道路封鎖を解くと宣言した。「ロンドン、地方、UK諸国民のコミュニティ、そして国際的にも、真実が語られるべきだ。」

BrexitEXには類似した性格がある。彼らは政治システムが壊れており、政治階級が自分たちを困難に陥らせたと考える。現状は受け入れられず、ラディカルな行動が必要だ。改善する力はシステムの外から来るだろう。しかし、類似点はそこで終わる。

EXには、異なる世界観の初期の表現がみられる。地球温暖化に各国ごとの対策は無意味だ。国境に壁を築いても、他国の排出したCO2は防げない。彼らは地球を救うグローバルな運動の一部である。外国人も人間とみなし、諸国民の合意や同盟を可能な解決策に基本的に必要だと考える。

EXは、かつてのブラック・ライブズ・マター(黒人の命も重要だ)、オキュパイ・ウォール・ストリート(ウォール街占拠運動)、反戦運動と同様、人類愛と国際的連帯を中心に据えた、グローバルな政治運動である。

われらの友人、ナイジェルはどうか。Brexitの推進は、いかなる世界観にも反するものだ。地球のその他の問題から手を引き、独立こそがすべてだ。ファラージは波の向こうを指して群衆に語った。「北海と呼ばれる海だが、その半分はわれわれのものだ。オランダ人にも、デンマーク人にも、だれにも渡さない。われわれのものであり、生得の権利だ。」

海について、EX参加者はあなたに言うだろう。それはわれわれすべてのものだ。ファラージは、魚が海を泳いで通ることを許す。しかし、人が食料や仕事を求めることを禁じ、勇気ある難民たちが波を超えることを禁じる。

PS Apr 26, 2019

Protesting in the Digital Age

NGAIRE WOODS

選挙と住民投票が、人々の統治される仕方について発言する、たった2つの方法だった。抗議活動は別だ。だから、ほとんど民主主義において、人々は集会の権利や自由な発言を保障されている。

確かに、大規模な抗議活動は問題を議論するように求め、国民の関心を集める。しかし、たとえ民主主義であっても、大勢が集まるだけでは、しばしば政府を動かすには不十分である。2003年に、英米では大規模な反戦デモが行われたが、両国のイラク進攻を阻止できなかった。2011年のウォール街占拠運動は、世界中で900都市に及んだが、何の目標も達成できなかった。2017年から2019年の女性たちの行進Women’s Marchesもそうだ。

明確な指導部がないことは、その欠陥の一部である。ソーシャル・メディアが現れる前は、指導部が人々に、カネと時間、つながりを費やすだけの価値があることを確信させる必要があった。対照的に、今では、すべてが非常に弾力的で、効果的に行えるから、しばしば、人々を明確な、達成可能な目標に動員する指導者がいなくてもよい。

アルジェリアとスーダンで最近成功した大衆抗議デモは、支配体制側の一部にも連携が拡大することも重要さを証明した。抗議デモと軍隊との、起こりそうにない連携は、両国で政変が起きた決定的な要因であった。

ソーシャル・メディアは、一般に、そのような連携を生じない。デジタル・プラットフォームは群衆の不満を容易に集め、オンラインで強めるが、連携を築くよりも、分極化を生じやすい。

抗議が成功するには効果的な指導体制が必要だ。彼らは街頭から「権力に真実を告げる」以上のことをする。


 反イスラム

FT April 26, 2019

Anti-Muslim prejudice puts secular societies in a bind

Camilla Cavendish


 米中対立の深刻化

FT April 26, 2019

How to meet the challenge of China

Geoffrey Owen

52年前、フランスのJean-Jacques Servan-Schreiberが『アメリカの挑戦』という本を書いて、大きな注目を集めた。彼は、ヨーロッパの産業がGMやフォードのようなアメリカの大企業に圧倒されてしまう、と警告したのだ。ヨーロッパの大企業を急いで育てなければ、ヨーロッパはアメリカの技術的な奴隷状態になる、と主張した。

今、国家によって所有され、あるいは、支援を受けた中国の大企業が、ヨーロッパ企業を超える財源と競争力を持ったという不安がある。フアウェイのようなハイテク通信企業が安全保障において脅威になる。

ヨーロッパの対応はどうあるべきか?

テリーザ・メイはフアウェイが第5世代ネットワークに、コア部分を除いて、参加するのを許す決定をした。それは、どうやって中国企業を政府が排除するのか、保護主義に向かわないか、という疑問を生む。

ドイツの経済大臣Peter Altmaierは、ナショナリスティックな産業政策を発表した。中国の侵略を防ぐために、ナショナルな、ヨーロッパ規模の、チャンピオン企業を育成する、という。そして企業合併Siemens and Alstomを強く支持した。

EUは競争力政策の視点から、この合併に反対している。企業グループの市場支配力が大きくなりすぎて、高価格をもたらす、という理由だ。しかし、Altmaierは、ヨーロッパ域内の競争だけでなく、もっと国際競争を重視するべきだ、と主張する。

思い出しておくべきだが、Servan-Schreiberの示した診断と処方箋はほぼ完全に間違いだった。競争の脅威は、アメリカではなく、日本から来たのであり、ナショナル・チャンピオン企業を創る試みは失敗に終わった。

中国からの脅威に対して、いくつかの対応がありうる。WTOを強化すること、EU単一市場の完成を加速すること。ドイツやイギリスが示すように、国内への直接投資を精査し、妨げるような制度化が進んでいる。しかし、企業買収を管理する過程には政治介入の危険がある。

PS Apr 26, 2019

The Road to War with China

ANN LEE

過去2年間、アメリカの外交エリートたちは、ますます、中国を単なる競争相手ではなく、ソ連に匹敵する敵とみなすようになった。反中国の言葉は以前もあったが、トランプ政権が大幅に拡大している。

こうした中国批判は、中国が何をするかと関係なく、強い敵意を示す。1980年代と90年代には、経済的に強くなった日本を、アメリカの国家安全保障に対する脅威とみなすことがあった。しかし、日本は民主主義国家で、人権に対する違反を責められてはいなかった。

こうしたアプローチの前提は、共和党にも民主党にも支持されている。アメリカは、いかなるコストを支払ってでもグローバルな優位を維持しなければならない、というのだ。アメリカのエリートたちは、「リベラル・ヘゲモニー」の大戦略を唱えている。

アメリカが中国に対して冷戦思考を取ることは重大な失策になるだろう。それは、貿易を損ない、軍事的な競争を刺激して、世界経済に甚大な損害をもたらす。台頭する中国と戦争になる、という「ツキディデスの罠」が幽霊となってさまようからだ。

PS Apr 26, 2019

America’s False Narrative on China

STEPHEN S. ROACH

中国叩きはアメリカ中に広がっている。かつてないほどのアピールになっている。中国がアメリカン・ドリームを脅かしている、と主張する。このような問題解決の仕方は深刻な結果をもたらす。非難の応酬。報復合戦。安全保障の威嚇とエスカレーション。新しい冷戦。軍事衝突のうわさ。

貿易赤字も、知的財産の窃盗も、スーパー301条による調査も、すべて勝手な言いがかりだ。何の証拠もない。産業政策は、日本も、ドイツも、フランスもやったことだし、アメリカもそうだった。

最後は、通貨操作という非難だ。しかし、2004年後半以来、人民元は、貿易額でウェイトを付けた通貨価値評価において、50%も増価してきた。

ワシントンは、事実も、分析も、その結論も間違っている。アメリカ国民は、それでも、あまりに容易に騙されてしまう。もっと客観的で、正直な分析を行うべきだ。しかし、時間のかかる、困難な解決策を実行するより、スケープゴートを見つけるほうが簡単だ。

NYT April 26, 2019

Is China the World’s Loan Shark?

By Deborah Brautigam

FP APRIL 26, 2019

China Gets a British Bedfellow

BY KEITH JOHNSON

FP APRIL 27, 2019

THE MANUFACTURER’S DILEMMA

BY ELISABETH BRAW

iPhoneはカリフォルニアの優れた技術が生み出した者と思いだろうが、その内側にはアメリカ以外の生産者が多くの部品を供給し、中国で組み立てて完成している。企業にとって、中国の部品を多く利用し、中国に組み立て工場を持つことには利益があるが、国家安全保障の問題を複雑にしている。もし、サプライ・チェーンを使って脅威を与えることができたら、どのように対応するのか?

脅威を防ぐことも、敵を確認することも、難しい。

FT April 28, 2019

China, the US and trade in a dog-eat-dog world

Edward Luce

中国がアメリカから大豆を多く買うとか、知的財産を盗んだと認めるような合意が成立するとき、株式市場はそれを歓迎して買いが増えるだろう。しかし、それは第3国にとってどのような意味があるのか? 世界経済がどうなるのを促すのか? 株式市場は短期思考である。

米中の合意は、WTOを無視することになる。それはトランプの「アメリカ第1」が意味することだが、中国の協力を得たものだ。世界経済は、1.より不確実になる。2.法の支配は失われ、貿易は武器となる。3.世界政治はリベラルな開放体制ではなく、アメリカの推進したルールに依拠した世界から、中国経済の影響が増す世界になる。

アメリカはWTOIMF、世界銀行、国連に依拠して、そのルールに違反する中国の行動を交渉で是正することが正しい。もしトランプがそうしたルールや国際機関を弱めるなら、安定した生態系は失われ、小さな生き物はすべて強い生き物のえさとなる。

FT April 29, 2019

The global risks of a US-China deal

Neena Shenai

FT April 30

The true cost of signing up with Huawei

Charles Parton

SPIEGEL ONLINE 04/30/2019

The China Question

Time to Find a New Approach to Beijing

By Bernhard Zand

PS Apr 30, 2019

The Coming Technological Cold War

MANUEL MUÑIZ

FP MAY 1, 2019

China’s Belt and Road Partners Aren’t Fools

BY JACOB MARDELL

PS May 2, 2019

China’s Selective Memory

DENISE Y. HO

今年は、中国のナショナリズムが誕生した1919年の54運動から100年だ。また、中国政府は記念しないが、同じ北京で民主化を求める学生たちが武力弾圧された事件から30年だ。

FT May 3, 2019

China grapples with its BRI lending binge

Gillian Tett


 温暖化対策

PS Apr 27, 2019

Can Capitalism Beat Climate Change?

ADAIR TURNER

企業についても明確な方針と示せば、市場はそれを判断する。

FT April 29, 2019

Attenborough, Gates and the battle between optimism and pessimism

Gideon Rachman

われわれは最良の時代を生きているのか? あるいは、破滅の時代か?

2David Attenborough and Bill Gatesがそれを代表している。今年の初め、私は同じ日にダヴォスで会った。前者は地球環境の破壊を描いたドキュメンタリーをBBCで制作した。後者は貧困が大幅に減ったことを祝福する。

地球温暖化は進むだろう。最後には、技術革新がそれを解決する。しかし、温暖化が破局をもたらすのに、間に合わないようだ。

PS Apr 29, 2019

Can the Sahel’s Coming Crisis Be Averted?

TONY BLAIR


 天皇制

PS Apr 26, 2019

Japan’s Global Emperor Exits the Stage

AKIRA IRIYE

天皇昭仁は退位する。1989年から30年間、天皇として地位を保った。その父、天皇裕仁の時代は、内外に混乱を経てきた。

昭仁の時代は、かつて、帝国と独立国家の時代から、ますます多くの主権国家に人々が帰属する時代であった。人々は、次第に、国家以外の属性によって自己を定義するようになった。われわれは、まだ「世界市民」ではないが、よりグローバルな存在になった。

日本の天皇も例外ではない。

日本は遅れて近代国家の仲間に入り、その後、大国となった。1910年に朝鮮を併合し、その後の20年間、アジアで軍事的な拡大を遂げた。しかし、アメリカと戦争し、ソ連も日本の敵に加わって、グローバルな紛争の一部になったアジア・太平洋戦争が1941年に終結した。

当時、昭仁は10代の若者であったが、その人生は劇的に、予想しない変化を迎えた。マッカーサーのアメリカ占領統治下で、天皇裕仁は退位も、戦争犯罪も、求められなかった。裕仁は神から人となり、日本政治で象徴として役割を担った。

若い皇太子昭仁は、アメリカ人女性Elizabeth Viningの教育を受けた。彼女はクエーカー教徒であった。それは昭仁が天皇となるとき、世界に向けた準備となった。というのも、20世紀後半までに、世界は国民国家ではなく、もっと超国家的な繋がりや関心によって動くようになったからだ。

昭仁は、妻の美智子とともに、環境問題や人権のために国内、世界で、次第に積極的に活動するようになった。

FT May 1, 2019

Naruhito set to be Japan’s first modern monarch

Robin Harding in Tokyo

NYT May 1, 2019

How to Abdicate a Throne? The Akihito Way.

By Takeshi Hara

FP MAY 1, 2019

The Ancient Rites of the World’s First Postmodern Society

BY MICHAEL AUSLIN

現代世界の多くと違って、日本は多くの伝統を必死に保持し続けている。しばしば世界最初のポストモダン社会と言われるが、現実にはモダニティと伝統とが併存し、ときには不安な、しかし概ね、名状しがたい調和を形成している。おそらく、この安定性こそが、過去30年間の落とし穴を避けて、日本が進むのを助けてきたのだ。昭仁が天皇となったときに、1980年代の日本のバブルがはじけた。

天皇は、日本でなにも重要な役割を果たしていないように見える。しかし、天皇制への支持は深く存在し、日本の枠組みの中の扱いがむつかしい脅威である。ある日本の研究者は述べた。「もし天皇がいなければ、日本とは何か?」

政治と宗教との違いは、他の分野でも問われている。

この国は内向きになっている、という不安を示すものもいる。安倍首相の下で保守化する、と。しかし、戦後も、バブル後も、そして、日本は米中が優位を争い、どちらが勝つにしても、日本は要するに快適だった。それは皇室があるからだ。過去と、いかなる未来とも結びつけ、日本人のアイデンティティと、おそらく、永久に偉大さの神髄を示してくれる。

FP MAY 2, 2019

Japan and South Korea’s History Wars Are About to Get Ugly

BY J. BERKSHIRE MILLER


 良い職場を創る

PS Apr 26, 2019

Where Do Good Jobs Come From?

DARON ACEMOGLU

世界中のメーデーでは、今、数年前に比べて、ラディカルな政策が求められている。例えば、アメリカでは、最高税率の引き上げ、資産課税、単一者支払い医療保険single-payer health care(政府による保険料の徴収と支払い)などだ。

しかし、優先目標を正しく選択しなければ、改革は社会や政治の分断を強めてしまう。

最優先すべきは、高賃金の職場を創ることだ。この目標に向けて政策担当者たちはすべてのアプローチを変える。技術、規制、課税から、教育、社会プログラムまで。歴史的には、純粋に再分配で繁栄を分かち合った社会はない。十分な賃金を支払う職場を創ることから、繁栄は実現する。人々に目的と生きる意味を与えるのは、良い職場であって、再分配ではない。

良い職場を作るには、技術革新が労働者の需要を増やす必要がある。良い職場は自由市場から自然に生まれるのではない。むしろ、労働者を保護し、その力を高める労働市場の制度、教育システムへの潤沢な資金提供、効果的な社会的セーフティーネットが必要だ。

2次世界大戦後のアメリカの繁栄を支えた制度もそうだった。そこには3つの柱があった。第1に、ビジネスは、労働生産性を高める技術を開発する。それは賃金を引き上げ、労働者への需要を増やす。政府は教育・研究を支援し、ハイテク設備の主要な購入者となる。

2に、政府はビジネスの環境を設定する。最低賃金、労働現場の安全基準、その他、労働市場と製品市場の規制を行う。規制は雇用を妨げる、という非難は間違いだ。むしろ好循環を生む。労働コストの引き下げより、企業は生産過程の合理化と近代化に向かう。製品市場の競争は維持され、労働者の雇用より高利潤をため込む企業の独占価格を、政府が牽制するのを助ける。

3に、政府は教育へのアクセスを拡大する。教育・研究への支援は増税を必要とするが、わずかな増税で成長をもたらす決定的な違いを実現できるだろう。

北欧諸国では、繁栄を共有するために、再分配ではなく、政策の政策と、労働者の集団的交渉力による、高賃金職の創造が重要だった。

アメリカで、1947-1987年の民間部門における賃金は年平均2.5%で上昇したが、1987年以後、急激に減速し、2000年以降は停止した。この停止は、生産性上昇の低下と一致し、投資は、高賃金の新しい職場を創るより、自動化に向かうようになっていた。

労働者保護は着実に弱められ、多くの部門で市場の集中が進んだ。政府は以前のような技術革新への支援をやめた。2015年までに、政府の研究開発支援は、1960年代のGDP1.9%から、お。7%まで低下した。

AIとロボットが普及すれば、高賃金職が失われる、と言う者が多い。しかし、そうではない。技術は労働者を職場から追い出すためにも、労働者の生産性を高めるためにも、利用できる。それを決めるのはわれわれの選択である。

政府は、民間部門が自動化にだけ関心を向けることがないように介入するべきだ。アメリカでは、資本所得を優遇している税制を改めることから始めるべきだ。自動化への投資ではなく、生産性を高める労働者の雇用に対して、企業の税負担を減らす。

技術革新と、雇用促進、独占の排除、税制改革が必要だ。戦後の諸制度を再建するのは、人間だけにできる仕事である。

FT April 29, 2019

The Knowledge Economy by Roberto Mangabeira Unger

Review by Martin Sandbu


 トランプ外交の思想

NYT April 26, 2019

Trump’s North Korea Fiasco

By Bret Stephens

FP APRIL 26, 2019

America Isn’t as Powerful as It Thinks It Is

BY STEPHEN M. WALT

アメリカはどれくらい強力なのか? アメリカは唯一の超大国であり、敵国にも、同盟国にも、中立国にも、その意志を強制できる。たとえ彼らが、アメリカの政策を愚劣な、危険な、自国の利益に反すると考えても。あるいは、アメリカのパワーには明らかな、重大な限界があり、それゆえ、目標を選択するには、より戦略的な、選別を行い、それを追求する。

トランプ政権は最初の立場を取る。特に、ジョン・ボルトンが安全保障担当大統領補佐官、マイク・ポンペオが国務長官として、外交を動かすようになってから。彼らは、ジョージ・W・ブッシュの第1期政権でディック・チェイニー副大統領とネオコンザーバティブが外交を支配した時代の、ユニラテラリズムを復活させた。

ブッシュの上級顧問(Karl Roveといわれる)がジャーナリストに語った。「われわれは今や帝国だ。われわれが行動するとき、われわれが現実を創りだす。」 妥協や同盟構築は弱小国や宥和策の発想だ。2003年にチェイニー自身が述べたそうだ。「われわれは邪悪な者と交渉しない。それを叩き潰す。」

最も重要なことは、このアプローチが目標の間でトレード・オフを認めないことだ。もしアメリカが全能であれば、中国がイランの石油を輸入すれば制裁を科し、それが通商交渉に影響することはない。また、トルコに制裁を科しても、ロシアと接近することを懸念する必要もない。もしヨーロッパがそれほどNATOとアメリカの軍事力に頼っているなら、彼らは何度も侮辱されることを耐えるし、中国に対するアメリカの敵対政策に従う。エジプト、イスラエル、サウジアラビアとなんでも一致して行動することにマイナス面は何もなく、イランとの関係が悪化することや、戦争になることもない。

それは間違いだ、という証拠が増えている。

他国をいじめるアプローチが外交の成果を生まない強力な理由が存在する。第1に、たとえはるかに弱い国でも強国の脅しに屈することを嫌悪する。その理由は、いったん、脅しに屈して強制されるなら、強国の要求には際限がないからだ。さらに、トランプの要求は相手に譲歩を促すものではない。また、トランプは嘘つきで、気まぐれだ。

2に、すべての者に嫌がらせをするのでは、同盟を組むことがむつかしくなる。第3に、他者の気まぐれに依存することを嫌う。特に、その他者が利己的で、間違いを犯しやすい、自分以外の利益を軽蔑する者であれば。

当然、他国はアメリカのレバレッジを制限するような行動をとるだろう。特に、ワシントンが同盟国や敵国に制裁するとき使用している、制度的ネットワークの外側で、金融取引の仕組みを促進することだ。トランプ政権の強権的な戦術は、諸国や企業をアメリカが始動するグローバル金融システムでなるべく取引せず、独自の仕組みを創りだす。

最後に、嫌がらせは、本来の利益が対立している敵の間でも緊密な関係を生じやすい。また、潜在的な同盟諸国が距離を取るようになる。

われわれが目撃しているのは、現代の地政学の競合するロジックが現実の世界で検証される過程である。第1の見方では、アメリカのパワーは減少していないし、さまざまな優位によって、アメリカは野心的な、秩序を作り変える外交を追求できる。それはコストを要さず、ほぼ確実に成功するだろう。

2の見方では、アメリカが強力で、特別な優位を持つが、そのパワーには限界がある。優先目標を決めて、トレード・オフを最小化し、多くの問題で他国と協力するべきだ。他国が惨めな降伏を受け入れないし、効果的で、持続する国際合意には、たとえ敵とでも、妥協する必要がある。

FP APRIL 26, 2019

Loving Dictators Is as American as Apple Pie

BY STEVEN A. COOK

FP APRIL 26, 2019

What Putin Said to Kim

BY FP EDITORS

プーチンが金正恩との会談について記者会見を行った。彼によれば、2人が会談で話し合った最も重要な点は、力によるルールではなく、国際法による支配をもたらすことが、朝鮮半島の様々な問題を解決する、ということだ。

・・・ロシアと北朝鮮との2国間関係、制裁、国連、アメリカとの関係、そして、もちろん、朝鮮半島の非核化、である。

YaleGlobal, Tuesday, April 30, 2019

Unblocking the North Korea Nuclear Impasse

Bennett Ramberg

FP MAY 2, 2019

The Slip That Revealed the Real Trump Doctrine

BY PAUL MUSGRAVE

アメリカ外交における「トランプ・ドクトリン」を示すために、国務省のKiron Skinnerは中国との関係を重視する。アメリカ外交は、かつて、ケナンがソ連を敵として評価したような、中国に対する根本的見直しを行った。

Anne-Marie Slaughterは、それをハンチントンの『文明の衝突』に見出す。トランプ政権にとって中国は、アメリカと全く異なる文明である。中間や妥協はない。そのような理解は、必要以上に攻撃的な外交政策を展開するだろう。その結果は、文明そのものを脅かす。


 アルゼンチン

FT April 27, 2019

Argentina’s century bond caught in dash for exit

Colby Smith in New York

2017年、投資家たちはアルゼンチンの歴史の1コマに歓喜した。100年満期のドル建債券だ。わずか2年で、記録的な規模のIMF融資プログラムの後、投資家たちは100年債を投げ売りした。

少し前は、マクリ大統領が改革に成功すると信じていた。しかし、563億ドルのIMF融資を受けたが、アルゼンチン経済の収縮は止まらない。インフレは年率で55%に近く、通貨ペソは今年だけでもドルに対して16%減価した。

マクリの採用した徐々に構造改革する計画は、昨年の通貨危機を引き起こし、その意味で、成功しなかった。しかし、アルゼンチン経済には回復の力がある、と考える者もいる。財政のプライマリー・バランスは黒字になり、貿易収支は記録的な黒字だ。


 イングランド銀行

FT April 27, 2019

Wanted: a new ‘superhero’ at the Bank of England

Chris Giles in London


(後半へ続く)