IPEの果樹園2019

今週のReview

4/29-5/4

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資本主義の改革・・・台湾大統領選挙 ・・・Brexit後のガバナンス ・・・国際経済政策協調のゲーム論 ・・・ポピュリズムと政治の転換 ・・・一帯一路と都市の連鎖 ・・・令和の時代 ・・・道化師の大統領 ・・・グローバリゼーションと右派・左派のポピュリズム

長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 資本主義の改革

PS Apr 19, 2019

Capitalism’s Great Reckoning

JAMES K. GALBRAITH

Paul Collier, The Future of Capitalism: Facing the New Anxieties, Harper, New York; Allen Lane, London, 2018.

Collierの本は、「道徳的国家」を要請するものだ。そこにおいては、相互的な支援と規制が制度化されている。社会民主主義政党が急速に消滅し、強硬なエスノ・ナショナリズムが勃興する時代に、懐古的、大胆な意見である。

Collierによれば、資本主義の楽園にも2つの悪魔が住む。1つは、ベンタム主義者、官僚支配的功利主義のグローバリストである。もう1つは、ロールズ主義者、犠牲者グループのアイデンティティを限定する者たちである。Collierは不平等の増大する社会を、アイデンティティ形成と自尊心を、コミュニティから、所得、資産、専門的階層の地位へと、シフトさせた思考実験で示す。

Collierの階段の一番上は、超級・グローバル・エリートだ。ローカル、リジョナル、ナショナルなアイデンティティを超越する。ダボスの世界経済フォーラムに集まるような人々だ。下層には、ローカルなコミュニティ、あるいは、国民として世界を見る人々がいる。取り残された、不幸だと感じる彼らはそのアイデンティティをエスニシティや文化に求め、他者と対立するようになる。

Collierの提案は、19世紀アメリカのエコノミスト、ヘンリー・ジョージが示した土地に対する「単一税」である。ただしCollierは、シリコンバレー、ウォール街、ロンドン・シティに代表される、グローバリゼーションのハブに住む高所得者たちを課税対象とみている。それらは、間違いなく、金融化された情報技術資本主義のもたらしたゆがみである。

Collierは、株主価値最大化を批判し、企業の強欲を正当化する同様の原理を攻撃する。Collierの意見では、ICIImperial Chemical Industries)の時代、旧式の住宅建設組合や、トヨタに始まる品質管理革命に戻るべきである。

J.K.ガルブレイスが「拮抗力」の考えを示したことを思い出してほしい。ドイツ、日本、韓国など、多くの国で、ガルブレイスの「新産業国家」の考えが、ミルトン・フリードマンの利潤第一の教理を倒しつつある。

Branko Milanovic, Capitalism, Alone: The Future of the System That Rules the World, Belknap Press, Cambridge, 2019 (forthcoming).

われわれは、リベラルなメリトクラシー社会と、政治的な権威主義体制との間で、選択する未来を迎えている。

Milanovicには、不平等を是正する多くのアイデアがある。公共財・サービス(教育を含む)、社会保険への支出を彼は好む。相続税、贈与税をもっと活用して、世襲・資本家の王朝化を抑えるべきだ。アメリカにおける非営利部門の拡大は、課税を免れるため、富裕層の寄付によって生じている。

社会主義者は慈善活動に懐疑的だ。Milanovicも、道義的な免罪符にすることには厳しい目を向けるが、大学、病院、文化施設を育てる資金の流れを生んだのは事実だ。

Milanovicが見るように、中国の権威主義的資本主義とアメリカのリベラル資本主義とが、新しい冷戦となっている。しかし、中国の物理学者が、ある国際会議で、「権威主義的」ではなく、「政治的」資本主義と呼ぶよう提案した。彼の意見では、真の「権威主義者」は、小資本家のボス、オーナー型中小企業主である。また民主主義では、投票ではなく、お金の方が重要である。中国のシステムでは、銀行家や寄付者より、科学者、エンジニアのような、専門家の意見が優先される。その政策決定は「政治的」である。

エコノミストの抽象化は、現実の決定過程をとらえていない。米中の違いで重要なことは、共産主義革命を経た中国では、土地が国家によって収容されたことだ。それは地方政府の資産となった。その結果、中国の都市や地方は豊かである。競争してインフラ整備し、公共サービスを拡大している。他方、中央政府は比較的小さい。中国は、その歴史において、すでにリカードやスミス、ヘンリー・ジョージの考えを実現している。

対照的にアメリカは、多くの者の目から見て、グローバルな覇権国から略奪国家に変わったようだ。偏狭なエリートの野心、競争における衰退から生じる不安は、その地位を維持するために、金融、技術、軍事の力に頼っている。こうしたパワーの源泉は、ニューヨーク、カリフォルニア、ワシントンDCの広域圏など、少数の超富裕地帯、安全保障国家の首都に偏っている。アメリカの他の土地は見捨てられるのだ。

こう見ると、将来、権威主義的、政治的な資本主義に対して、リベラルな資本主義が勝利することは確かなことではない。むしろ資本主義の運命は、少なくともアメリカやヨーロッパで、本来の「共和主義者」と「民主主義者」の高い価値観が復活するときまで、平和が維持されることにかかっている。

その時こそ、Collierが切望する「道徳的国家」への前進が起こるだろう。

NYT April 19, 2019

Progressive Capitalism Is Not an Oxymoron

By Joseph E. Stiglitz

失業率は1960年代以来最低だが、アメリカ経済は市民たちを裏切った。過去30年間、90%の国民の生活水準は、停滞もしくは低下した。先進諸国中で、最高水準の不平等と、最低水準の機会しかないのであれば、それは当然だ。若いアメリカ人の将来は、その親の所得と教育が決めてしまう。

もっと違うアメリカがあるはずだ。進歩的な資本主義。それは矛盾した表現ではない。われわれは市場のパワーを社会のために奉仕する形に変えることができる。

1980年代、ロナルド・レーガンの規制「改革」が、過度の市場を規制する政府の力を削った。経済を活性化する、といったが、実際は逆に、成長が減速した。

進歩的資本主義は、何が成長や社会的な福祉を改善するか、その理解に依拠している。18世紀後半に生活水準が改善し始めたのは、2つの理由による。科学の発展(自然科学の知識を生産性や寿命の改善に使った)と、社会組織の発展(法の支配、民主主義、権力のチェック・アンド・バランス)だ。

その両者にとって基本となるのは真実の評価・検証だ。トランプの大統領任期は、社会にとって深刻かつ長期の危険を及ぼすだろう。経済と社会の支柱を破壊する。

われわれは国富の真の源泉が人民の創造力と革新性であることを忘れてしまった。人は富を大きくすることでも、富を奪うこと(たとえば市場支配や情報の優位を悪用して)でも、豊かになれる。われわれは苦しい労働によって得た富と、略奪した富(レント・シーキング)とを、混同している。あまりにも多くの才能ある若者たちが、あまりにも短期間で豊かになることを目指してしまう。

経済政策がこうしたディストピアを助長した。市場はますます集中し、競争しなくなった。市場は真空に存在していない。それはルールや規制によって構造化されている。そのルールや規制を創るのは政治だ。金融の規制緩和で、銀行は過度のリスクを取り、富を搾取するようになった。

多くのエコノミストは、発展途上国との貿易がアメリカ人の賃金、特に、スキルのない人々の賃金を下げ、職場を破壊すると知っている。われわれはもっと、貿易によって影響を受ける労働者たちを助けるべきだった。しかし企業が反対した。労働市場の弱さが彼らの賃金コストを下げ、海外の低賃金ビジネスを増やした。

われわれは悪循環にある。不平等は、政治システムを変え、それは規制緩和やさらなる不平等をもたらす。国家が市場を社会に奉仕させる役割を認識することから始めねばならない。搾取を行えないように競争を強く促し、企業とそこで働く労働者、その顧客との関係を是正するために、われわれは規制しなければならない。

よりダイナミックで、平等な経済を実現できるだろう。薬物中毒の危機や2008年の金融危機も避けることができただろう。アメリカ人はもっと自分たちの制度に大きな信頼を持てただろう。

市場には提供できないものがある。失業するかもしれないし、事故にあって身体が不自由になるかもしれない。さまざまなリスクに対して保険が必要だ。管理コストを抑えた形で年金を支給するべきだ。インフレも抑えるべきだ。十分なインフラ、すべての者のための教育、基礎研究に必要な投資が行われるべきだ。

進歩的資本主義は新しい社会契約に依拠している。アメリカ人の多くが再び中産階級の暮らしを実現できるだろう。ネオリベラリズムは、規制から解放された資本主義がすべての者に繁栄をもたらす、という幻想だった。しかし多くのスキャンダル、多くの不正行為を見ればわかるだろう。もっぱら利潤追求が社会を豊かにすると称賛する社会、搾取と富の創造とを区別しない社会は、多くの者を不幸にする。


 台湾大統領選挙

FP APRIL 19, 2019

The Billionaire and the Mayor Disrupting Taiwan’s Elections

BY CHIU-TI JANSEN

台湾、高雄市の、国民党(KMT)候補から選出されたHan Kuo-yu市長は、アメリカで熱狂的な群衆の出迎えを受けた。2020年の台湾大統領選挙に向けた支持率トップにある。

同様に止まらない勢いを示す、推定資産76億ドルの、台湾で最も裕福な男、Terry Gouが国民党の大統領候補者として名乗りを上げた。

Gouはドナルド・トランプと個人的な関係を保ち、その選挙術から学んでいる。Gouは、201811月の高雄市長選挙から大きな刺激を受けた。もしGouHanが国民党候補として大統領選挙に勝利すれば、台湾と中国との関係、そしてアメリカとの関係に重要な意味を持つだろう。しかし、GouHanの複雑なダイナミズムは、民進党(DPP)の現職大統領にKMTの復活を阻むチャンスを与えるだろうか?

2人とも、中国との関係強化を主張している。しかし、緊密な経済関係は政治的な介入を招くという警告がすでに流れている。祭英文政権は、HanGouの姿勢を、台湾を中国に売った、と批判している。またGouのコミュニケーション・スタイルがKMTのエスタブリッシュメントと軋轢を生じるだろう。

台湾は、中国にドアを閉ざしても、世界にドアを閉ざしても、得るところがない。KMTの候補が誰であろうと、統一か独立か、関与か離反か、といった二元論的、非生産的反対ではなく、中国との交流を拡大することと、台湾の民主的なアイデンティティを保持することの間に、道を探すだろう。


 Brexit後のガバナンス

FT April 22, 2019

Brexit has a chance to kick-start a period of radical change

John Thornhill

Brexitはイギリスの政治家にとって貴重な機会である。残されたエネルギーをUKの運営に関する改善に充てるべきだ。このガバナンス危機から、21世紀にふさわしい政治制度を創りだし、イギリスの持続的な優位をもたらす可能性がある。

成功した企業家であるIan Hogarthは、the Institute for Innovation and Public Purposeの客員教授に指名されたが、AIが政治経済に与える影響に関して興味深い見解を示した。

「国民国家は地理的領域において恐るべき独占力を持っている。防衛から福祉国家にまで責任を持ち、税制と社会的セーフティーネットを維持している。」・・・「これらのすべてがマシーン・ラーニングに挑戦を受け、妥協するようになる、と私は思う。」


 国際経済政策協調のゲーム論

PS Apr 22, 2019

The International Economic Policy Game

KOICHI HAMADA

比較的最近まで、ゲーム理論は国際関係の専門家の関心をひかなかった。しかし今、多くの者が政治的アクターの行動や意思決定を戦略的に分析することから優れた情報を得ている。各プレーヤーは独立に行動しているのではなく、他のプレーヤーの反応を考えて行動している。

人間行動は競争と協力とからなるが、そのどちらが優れているかは条件次第である。例えば貿易において、自由競争はパレート最適をもたらす。しかし、もし政府が自国企業に優位を与えるような介入をすれば、競争は問題になる。ドナルド・トランプ大統領が中国に対して関税を引き上げたことがそうだ。かつてアメリカは、同様に、1930年のスムート=ホーリー関税法を成立させた。その結果は、報復関税と世界恐慌の悪化であった。

貿易においては、われわれは経済主体間で競争しても、政府間では協力することが望ましい。WTOはそのためにある。アメリカ政府はWTOを利用して、中国の通商政策がゆがみをもたらしている場合に、これを是正させるのが正しい。

変動レート制では、ある国が金融緩和することで、非協力的な政策が有利である。国際金本位制が放棄され、ブレトンウッズ体制はまだ成立していない1930年代、エストニアのエコノミスト、Ragnar Nurkseは、そのような競争的な切り下げを「近隣窮乏化」と批判した。

しかしBarry Eichengreen and Jeffrey D. Sachsが示したように、世界恐慌から諸国が回復したのは、金本位制を破棄し、デフレ的金融政策をやめ、通貨が減価するのを許した後だった。各国が自国のマクロ経済を安定化する限り、非協力的な金融政策は世界全体にとっても好ましいのだ。変動レート制では、各国に及ぼすマイナス効果を、自国の金融政策を調整することで回避できる。

こうして、レッセフェール・アプローチが金融政策ゲームを支配する。トランプ政権は日本の金融緩和を批判するが、日本の政策は近隣窮乏化ではなく、超低インフレにおけるマクロ経済の安定化が目的である。

競争と協力の正しいバランスを決めることはむつかしい。ゲーム論は政治家にとって有益な評価手段である。


 ポピュリズムと政治の転換

VOX 20 April 2019

Populism: Roots, consequences, and counter strategy

Karl Aiginger

ポピュリズムを定義するのは容易でない。しかし、その効果は明白だ。リベラルな民主主義、多元主義、人権、アイデアの交流を否定する。移民を阻止するためにEU拡大に反対し、ユーロを解体し、人道主義や気候変動に関する国際合意から離脱することを求める。

ポピュリズムを広める3つの主張がある。1.社会問題を過度に単純化し、悲観的に描く。2.普通の、有徳な市民のグループと、腐敗した、自己本位の、社会を支配する経済もしくは文化的なマイノリティを対比する。3.多元主義、グローバリゼーション、国際協調は間違った、有害な主張だと宣伝する。遠隔地、非キリスト教圏の国から、移民が流入するという不安は、現在のポピュリズムを拡大した。かつて、左派ポピュリズムが示したような、被抑圧者の解放というイメージはない。

ポピュリズムには関連する4つの起源がある。1.経済的な起源、所得の停滞や失業、個人・地域の不平等。2.文化的な起源、リベラルな諸価値の支配。保守的価値の復活を願う。3.不安と不確実さ。経済、文化、技術の急速な変化を恐れる。4.政策の失敗。構造変化や技術変化、グローバリゼーションの敗者。制度への不信感。

ポピュリスト政党の支持者は、低所得層と中産階級である。所得水準や教育水準が上がるほど、支持者は減少する。製造業のブルーカラー、低スキル労働者、地方の高齢者に支持者が多い。

ポピュリスト政党が連立政権に参加すると、政策のアジェンダを変更し、しばしば経済問題は悪化する。その後、期待された成果がないと、外部に敵を作る。投票手続きを変更し、「強権指導者」が憲法を変え、司法やメディアに介入し、ヨーロッパのルールを無視する。EU離脱を脅迫の道具に使う。1国で解決できないような問題も含めて、政策決定を再ナショナル化する。

FT April 24, 2019

The age of the elected despot is here

Martin Wolf

モッブ(群衆)に襲われるプラトンは、彼を保護する指導者を描いた。しかし、そのような指導者は「真の人民」を保護する。その敵は、外国人、マイノリティ、反逆者のエリートたちである。その政治はパラノイア型である。政策が失敗すれば「秘密国家」や内外の敵を責める。

ポピュリストにふさわしい男は、ナルシストで精神異常者である。Steven Levitsky and Daniel Ziblattによれば、民主主義を倒すために彼がすることは3つだ。1.レフェリーを掌握する。裁判官、税務署、研究所、警察。2.敵対者とメディアを弾圧し、無力化する。3.選挙のルールを変える。そのために、反対派の不当さを激しく主張し、情報は「偽物だ」と繰り返す。

不当な世界において権力者が自分たちの側にあることを強く望む人々は、そのような指導者を信頼する。民主主義の複雑な制度と規範が信頼を失い始めると、そのようなことが起きる。発展途上国と民主的制度の確立された先進国との違いは消滅する。人間は、カリスマにあこがれる。

前任者の大きな失策があった(ブラジル)とか、国民的な屈辱を受けた国(ロシア)では、そのような独裁者が選挙で登場する。しかし、アメリカはどうか? なぜトランプは当選したのか?

1に、彼を支持した有権者には不安と怒りが強かった。金融危機、文化的な変化、など、長期的な経済の悪化が影響した。第2に、エリートたちはその感情を利用した。大幅減税や規制緩和が彼らの目的だった。それはアメリカ南部でエリートが用いた戦略だが、今やアメリカ全体でも、富裕層が独裁者を利用した。

共和国が維持されるには、希望をもたらす政治を示すことができる、われわれの善良な性格を刺激する、指導者が必要だ。


 一帯一路と都市の連鎖

FT April 25, 2019

China needs to make BRI more transparent and predictable

James Crabtree

BRIが欠陥を乗り越えて前進するには、3つの点が重要だ。1.債務に関する問題が起きた場合の処理を明確にする。2.融資の全体に関する情報を公開し、透明性を高める。3.様々な機関がばらばらに行っている事業と融資を、組織として整理する。

批判に応えて、習近平はBRIを「協力のためのオープンなプラットフォーム」として提示した。そのような改革は、北京にとっての地政学的な道具としてBRIの制約を意味するが、経済的な信用を高め、債務問題の処理を効率的に行うことでコストを抑える。中国経済の減速や経常収支の黒字が縮小する中で、制度化は重要な意味を持つ。


 令和の時代

FT April 23, 2019

A new era requires an optimistic new model in Japan

Gideon Rachman

日本は、令和の時代にも多くの課題を抱えている。特に、報復の感覚を持つかもしれない中国が台頭することは、人口減少とともに、日本人の悲観論を強めている。

日本がそのダイナミズムを回復し、アジアの強力な民主主義国家として繁栄することは重要だ。もし中国の台頭が、世界の次の秩序を築くのであれば、それはまずアジアを制覇しなければならず、その最大の物理的・政治的な障壁となるのが日本である。

人口減少や実質GDPの現象は、日本が世界最大の債務/GDP比率を持つことから、エコノミストたちを不安にする。

安倍の政治的なルーツは保守派であり、自衛隊をアメリカ軍とともに戦争に参加できるような法改正、防衛費の増額、そして、憲法改正を目指している。しかし、彼は同時に、現代のナショナリストがインターナショナリストとして同盟を築く必要を理解するほど十分に知的な指導者である。

日本の令和における挑戦が始まる。


 道化師の大統領

The Guardian, Tue 23 Apr 2019

Comedy is a tool, a trick – Ukraine will soon see that running a country is no joke

Jack Bernhardt

最も大げさに言えば、私は風刺がマーガレット・サッチャーを倒したと思う。ツイッターに、ERGBrexitをキャンセルした、と書くだろう。先週末までは、コメディーが世界を変える、というのは仮定の話だった。しかし、日曜日、ゼレンスキーがウクライナ大統領になったのは本当だ。

敵の最悪の点や偽善を攻撃するうえで、コメディーは有益な武器になる。しかし、武器はしょせん武器でしかない。政治家兼コメディアンは、未来のためのビジョンを創ることに関心がない。前にあるものはなんでもバカにするのだ。ゼレンスキーの約束はすべて、皮肉に彩られており、誰かがそれに挑戦すれば、「単なるジョークだよ」と否定するだろう。

コメディアンの政治家は空っぽの容器でしかない。Ihor Kolomoiskyが彼に見返りを求めないとは考えられない。政治家としてのコメディアンは、単なる腐敗の新しい上着である。

確かにコメディーが世界を変える。すべてのものに冷笑を詰め込み、希望を空っぽの笑いに代える。


 グローバリゼーションと右派・左派のポピュリズム

FP APRIL 25, 2019

The Next Backlash Is Going to Be Against Technology’

BY KEITH JOHNSON

Foreign Policy: あなたは新著Straight Talk on Tradeでグローバル経済の健全さを回復するべきだと主張した。開放経済と国民主権とをバランスするにはどうすればよいのか?

Dani Rodrik: 1945年から1980年代まで、ブレトンウッズのルールは、そのような世界であった。グローバリゼーションは進んだが、国境の中には、諸国が自国経済を管理する十分な余地があった。

アメリカとヨーロッパ、中国が深い経済統合を許すような市場経済モデルに、中国も収れんすると仮定するのではなく、むしろ中国の経済モデルは異なったままであることをわれわれは認めるべきだ。同じように、中国は、アメリカや西欧が中国や発展途上国との貿易に懸念を持つのが正当なことであり、自国の社会的枠組みや独自の技術体系を保護する権利があることを認めるべきだ。

FP: しかし、リベラリズムと重商主義の対立はどうなるのか?

DR: 根本的な、構造的問題は存在するが、それは必ずしもリベラリズムと重商主義の対立ではない。すべての経済がその両方を持っており、ミックスの仕方が異なっている。アメリカ経済をリベラルな経済の模範とするのは間違いだ。それらの混合経済は実践を通じて変化しており、世界経済は必然的に異なる混合経済の併存したものである。単一のルールによってグローバルな経済が諸国の適用を求めるというより、各国が問題を解決するより大きな自由を許すことで、グローバリゼーションが健全かつ持続可能になるのだ。

FP: 既存の市場経済を改革できるのか?

DR: われわれは資本主義の諸制度を改革しなければならない時点に来ている。福祉国家は限界に達している。物の生産方法が変化しなければならない。企業に生産をゆだねて、その後に介入するのではなく、生産そのものを再編し、生産性を改善する政策だ。

FP: 大きな変化のためには、不平等をどうするのか?

DR: 技術革新に対する反動が起きると思う。労働市場を悪化させるということで、グローバリゼーションに反対したが、AI、自動化、デジタル技術にも反対するだろう。

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The Economist April 13th 2019

Independence Day

The South China Sea: When love breaks down

Italy: A posse of patriots

France: The great debate

Charlemagne: A Machiavellian moment

The European Central Bank: Succession questions

Buttonwood: The diversification illusion

Free exchange: Monetary targets

(コメント) 中央銀行の金融政策が、政治からの独立性も含めて、信頼を失い、ポピュリスト政治家の道具になる危険が増しています。トランプはすでに、連銀理事の2つの空席を、十分な金融政策の知識も経験もない人物で埋めました。

1970年代のインフレが、政治家のインフレ加速による選挙戦術を封じ込めるものであるとしても、中央銀行の独立性は、インフレ目標とともに、金融政策を支配する金融専門家たちの護身術に変わったのか、と思います。イタリアのポピュリストが財政規律やECBに挑み、フランスのマクロンはユーロ圏改革の前にポピュリスト的な直接民主主義につまづき、ECB総裁人事は政治論争に向かいます。トランプだけは、ドルの時代を終わらせる破壊王を名乗って、人気を博しそうです。

中央銀行はその基盤を何に求めるのか?

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IPEの想像力 4/29/19

Brexitやトランプが宣言した新しい時代に、令和の日本が加わります。

各地のガバナンスが参加した政治経済秩序のグローバルな競争は、権力をめぐる代表制=民主主義を改革し、市場=資本主義を改革する。社会を映す2つの光源が移動します。

「資本主義」が、金融ビジネスによって、そして、グローバル・デジタル大企業によって、市場を通じて利益をため込むシステムを埋め込まれたからこそ、ポピュリストたちは「権威主義的指導者」に頼って対抗し、あるいは、「社会主義」による改革を唱えるのです。

極端な金融緩和に頼って、この種の資本主義を延命するより、現実に合わせた「社会主義」を導入することは可能だ、と思います。すなわち、現代の社会主義とは、おそらく、こういうものです。

1.金融資産市場をシグナルとして利用しながら、実物経済からは分離する。・・・金融ギャンブルが偏った社会的価値観を広めることなく、市場の評価メカニズムとして、その能力を正しく評価する仕組みに育てること。

2.土地を共有財産にする。さらに、デジタル・データも。・・・地代やレントとして、私的所有制が富と権力の私物化、階級制度や王朝支配に向かわないように、資源は社会が共有する。

3.労働機会を積極的に見直し、多くの分野で分業を廃止する。・・・能力に応じて専門職が人材を集めることと、貧しい諸国の搾取工場や人身売買、ロボットやAIに競争を強いられ、学ぶ機会、働く機会を失い、社会的な隔離に苦しむ人々が増えることを、同じ「分業」とは呼ばない。それぞれにふさわしい労働者の社会的配置をアレンジする。

4ITAI、ロボット、薬品、遺伝子操作、など、技術革新の普及とその利益を社会的にプールし、分配する。・・・技術革新の利用を積極的に推進できるには、その社会的影響を制度によって吸収し、利益を還元する。

5. 教育、福祉、社会資本に投資する。・・・豊かな社会で、投資機会が地理的、時間的に偏ることなく、社会的な合意によって、供給能力に見合う公共投資を長期的に行う。

6.老人たちは医療や年金、住居を含めて、ベーシック・インカムに転換する。・・・高齢化は楽しい。高齢化は豊かな社会の実質的な水準、政治社会の姿である。老人たちの参加を促し、家族や個人に押し付けない。

7.遺産相続は、社会が許容する範囲で、透明な信託基金のみとする。

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令和になっても、現実は何1つ変わるわけではありません。しかし1つの家族が新しい世代に引き継がれ、そのことで国民の意識を集中し、さまざまな問題を考え直す機会にしよう、と決めるのが元号制度であるとしたら、それを天皇か、宗教指導者、もしかしたら、Brexitや道化師が担うとしても、その評価を決めるのは国民の側の意識改革なのです。

雅子皇后が、現代において挑戦する女性のフロンティアにいたことを、さまざまな番組が紹介しています。ハーヴァード大学、オックスフォード大学でグローバル・ガバナンスを学んだ1人の女性が、皇室に入り、いよいよ、日本の保守層により政治的道具として天皇制が利用された時代から、この家族は完全に解放されるのかもしれません。

対中・対米外交が均衡を失い、目標を放棄したアベノミクス、迷走する消費税引き上げ・ポイント還元・電子マネー決済・幼児教育無償化、軍備増強や憲法改正を唱える長期・安倍政権が(すべての権力の末期がそうであるように)内政・外交に亀裂を生じる局面に入るでしょう。そのとき皇室の彼女は、日本に何を観るのだろうか、と思います。

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