IPEの果樹園2019

今週のReview

4/22-27

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アメリカは壊れてしまうか? ・・・独仏によるEUという間違い ・・・正統派の貿易理論 ・・・ネタニヤフの勝利と移民 ・・・多国籍企業とグローバル課税 ・・・カルトとソーシャル・メディアの政治空間 ・・・ウクライナ大統領選挙

長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 アメリカは壊れてしまうか?

FP APRIL 12, 2019

If You Bowl Alone, You Can’t Fight Together

BY ELISABETH BRAW

アメリカの地方においては、ボランティアで救急のために自動車を運転する者が極端に不足している、という。それは単に医療の問題だけではない。国家安全保障の問題である。われわれの社会が、かつて、依拠したボランティア精神と協力が失われていることを、この現象は教えている。

市民社会に対する攻撃が起きたとき、国家がそれに反撃できなければ、われわれは個人として敗北するだろう。現在、西側各国はハイブリッドな、姿を見せない、攻撃の標的となっている。もしわれわれが独りでボーリングを楽しむような社会になれば、救急の自動車を出したり、その他もコミュニティ活動に参加したりしないなら、攻撃を受けた社会は崩壊する。

昨年の春、スウェーデンの市民非常事態局(MSB)が冊子を発行して話題になった。そのタイトルには、明白に、「もし危機や戦争が起きたら」と書かれている。非常事態に向けた対処法を、すべての国が準備するべきだ。もしインターネットが映らなければ、日常生活は止まってしまう。2017年、ロシアのハッカーはアメリカのいくつかの公共事業ネットワークに侵入した。

危機において住民たちの行動が効果的に組織されなければ、社会ダーウィニズムと無政府状態が支配するだろう。

NYT April 14, 2019

Is America Becoming an Oligarchy?

By Michael Tomasky

2020年の大統領選挙に向けて、予備選に立候補したPete Buttigiegが最近、テレビで答えた。「もちろん、私は資本家a capitalistだ。アメリカは資本主義的社会a capitalist societyである。しかし」と、彼は続けた。「民主的な資本主義democratic capitalismであるべきだ。」

資本主義には民主的な規制が必要だ、と彼は考えたのだ。それがなければこの国の繁栄はすべてのものに行き渡らない。「民主主義のない資本主義がどんなものか知りたければ、ロシアを見ればよく分かる。」 「それはクローニー・キャピタリズム(仲間内だけの資本主義)、オリガーキー(寡頭体制)である。」

FP APRIL 16, 2019

The United States Will Be Shocked by Its Future

BY STEPHEN M. WALT

われわれは一歩下がって、世界がどれほど大きく変化したか、あるいは、変化しなかったか、を考えるほうが良いだろう。

わずか500年という、人類史においては瞬くほどの時間をさかのぼれば、ヨーロッパ人はようやく南北アメリカが存在することを知った。政治は全くのローカルなもので、経済成長は世界のどこでも何世紀にわたりほんの穏やかなものだった。現在の80億に比べて、世界には5億人しか人類はいなかった。

およそ200年前に、中国は世界経済の3分の1を占め、ヨーロッパ全体で約25%だった。アメリカは2%ほど。その後、ヨーロッパは産業革命で離陸し、1900年までに世界経済の40%と、世界最強の軍事力を得た。中国は10%に落ち、アメリカは急速に大陸を横断して、100年で世界最大の経済、そして大国になった。日本も明治維新で離陸し、アジアをその支配下に置き始めた。

ヨーロッパ、アメリカ、ソ連、中国の変化を見るなら、2つのことが目立っている。1.毛沢東の死後、中国は市場を受け入れて離陸した。今や、世界第2の経済大国だ。2.人類の存在は地球環境を変えた。WWFによれば、哺乳類、鳥、虫、爬虫類、両生類は、1970年以降、その数が平均で60%も減少した。

500年でも、富とパワーのシフト、政治的態度や環境の変化は、甚大であった。その多くが全く予想外である。

1978年の世界を考えるだけでも、それは我々が今見ている世界と全く違う。2つのドイツがあり、ワルシャワ条約機構もあった。アメリカではなく、ソ連がアフガニスタンに侵攻した。北朝鮮もパキスタンも核兵器を持たなかった。アメリカとソ連は5万発以上持っていた。UKEU6年前に加盟していた。しかし、ヨーロッパのすべての国は通貨と国境警備を保持していた。ゲイのセックスは多くの国で違法であり、どこでも結婚できなかった。日本経済は破竹の勢いで成長し、ハーヴァード大学の教授たちは、日本がNo.1になる、という本を書いた。米軍はヨーロッパに20万人もいたが、中東にはほとんどいなかった。南アフリカにはアパルトヘイトがあった。まだパソコンも、携帯電話も、インターネット、SpotifyFacebooke-メール、コンパクト・ディスクCDもなかった。


 独仏によるEUという間違い

FT April 14, 2019

We have reached the end of the Franco-German love-in

Wolfgang Münchau

先週の欧州理事会はBrexitに関する議論が占めた。しかし、独仏関係に亀裂が生じたと、後に、記憶されるかもしれない。

長期の延期を支持するドイツの求めた多数意見を、マクロンは拒んだ。メルケルを取り巻くブリュッセルの顧問たちは、マクロンの妨害に怒りを表した。なぜか?

マクロンは、ユーロ圏の改革を試みたが、メルケルはそのほとんどを避けてきたからだ。マクロンが大統領になった当時は、フランスと緊密な関係を好む顧問が彼の周りを固めていた。ドイツ社会民主党の元党首Martin Schulzは彼の理想的なパートナーであった。しかし、その後の選挙で彼は失脚した。他方、メルケルの後継者とみなされるAKKAnnegret Kramp-Karrenbauer)は、そのエッセーでフランスの政治エリートを驚嘆させた。

彼女はフランスに国連安保理の常任国の放棄すること、そして、航空輸送機の共同開発を求めたのだ。それゆえフランスから見て、問題はメルケルではなく、次の時代、AKKの考え方である。これまで独仏関係は2国間で深く結び付いてきた。しかし、将来には不安がある。

もしトランプがヨーロッパの自動車に高い関税を課した場合、ドイツは自由貿易の取引を望むだろう。しかし、マクロンはこれに抵抗する。フランスの農業は、もしヨーロッパ市場がアメリカの農産物に開放されれば、苦しむことになる。貿易に関して、独仏の利益は全く反対だ。

また、マクロンは欧州委員会の委員長候補にManfred Weberを支持しないだろう。Weberはオルバンの長期に及ぶ支持者だから。

最大の問題は次のユーロ危機が起きることだ。ECBの捨て身の防衛策はもう取れない。しかし、グローバル経済の同時原則が起きつつある。イタリアの政府債務危機は迫ってくる。その債務を組み替えるなら、ドイツよりも大きな債権者であるフランスは、ユーロ圏の改革を求める。共同の政府債務処理、財政ルールの見直し、などだ。こうした考えは、ドイツにおいてタブーとなっている。

マクロン、もしくは彼の後継者は、ユーロ圏の改革か、解体か、ドイツに迫ることになる。


 正統派の貿易理論

FP APRIL 13, 2019

The Dangers of Trade Orthodoxy

BY JONATHAN SCHLEFER

正統派の貿易理論では、すべての国が国境を越えて静かに市場を拡大し、利益を得る。現実には、貿易がしばしば、その反対の結果をもたらす。市場競争は激化し、不平等が拡大する。雇用をもたらすと称賛されるが、貿易はアメリカの諸州において100万人の製造業雇用を奪い、彼らの怒りはドナルド・トランプを大統領に導いた。

他方、発展途上国では、貿易が多くの貧しい諸国に輸出部門への世界需要をもたらした。しかし、この場合も、多くの痛みを生み出した。1994年、NAFTA成立後も、メキシコからアメリカへの非合法移民は増加した。2000年までに、480万人がアメリカに非公式な形で住んでいた。

WTOは今も、1817年、デービッド・リカードが示したウィン・ウィン型貿易論を崇拝している。そこでは、イギリスも、ポルトガルも、より少ない労働力で輸出する財を生産する。両国とも、より効率的に生産し、より多くを得ることができる。保護主義的関税は、港を岩で埋める行為にたとえられる。

リカード・モデルは重要な真実をとらえているが、それが実現するにはそのすべての前提を満たさねばならない。リカードは、貿易に代えて、工場が外国に移動できるとは考えなかった。貿易は均衡し、両国は完全雇用を実現する。貿易は工業の発展経路に影響しない。リカードは、怠惰な富裕層が農地を独占して、労働者の消費する小麦の価格を引き上げている、と考え、穀物輸入の自由化を支持した。それは労働者の生活を楽にし、産業資本家に多くの利潤をもたらし、それが経済発展を加速する、と。

アメリカの財務長官Alexander Hamiltonは、イギリス帝国の成功、いわゆる産業政策の重要性を知っていた。国立銀行を設立し、インフラ建設を行い、関税によってアメリカ産業を外国の競争から守った。南北戦争から第1次世界大戦までに、アメリカは周辺国から世界大国になったが、平均関税率は40-50%に維持していた。現代の中国の発展もそうだ。中国政府は、国有銀行から製造業に融資し、しばしば国有企業を通じて、インフラ建設のブームを起こした。輸出財が安価に、輸入財が高価になるように、通貨価値を操作した。政府はあらゆる商品を購入し、外国企業の知的財産を利用できるようにした。

貿易が雇用に及ぼす影響は、第1次世界大戦後に選挙権が拡大するまで、政治的に注目されなかった。1937年に、ジョーン・ロビンソンは、保護主義によって雇用を増やす政策に関して考察した。ロビンソンの懸念は、ブレトンウッズ会議で、ケインズが推進した世界経済秩序では扱われなかった。貿易戦争が世界不況とファシズムにつながったことをすべての国が記憶していたからだ。トランプのように、個別の国が経済ルールを変えて、雇用に影響することは考えられていなかった。

関税によって貿易赤字を維持することはできない。それは赤字を維持する国際的な資金の移転が必要だから。ブレトンウッズ会議では、貿易の拡大と、不均衡の回避が目指された。IMFがこの資金移動を監視した。IMFは、赤字国に融資するが、その経済が過熱しないように、輸入超過をもたらす政府支出の抑制を求めた。同時に、貿易黒字を累積する国にも、問題の是正を求めた。IMFは黒字国通貨の交換や黒字国の輸出を止めることも認めた。

この視点は、第2次世界大戦後、アメリカ大統領の姿勢によって、黒字国については何も言わない形に変えられた。しかし、1960年代から、アメリカが貿易赤字になってから、元の姿勢を回復する。他方、フランスはアメリカの「覇権」を非難し、日本やドイツは主要な黒字国となった。

今や、政治家たちはリカードの貿易論を信じていないようだ。一方では、完全な市場を想像し、他方で、貿易戦争から本当に戦争を招く事態を想像する。通貨価値の大幅な過小評価、過大評価を防ぐべきだが、合意はむつかしい。各国の政策を超えて、グローバル市場はますます安価なコストの立地を求めて圧力を強める。公平な所得分配や、完全雇用の達成は脅かされたままだ。


 ネタニヤフの勝利と移民

PS Apr 15, 2019

The Roots of Right-Wing Dominance in Israel

SHLOMO AVINERI

ネタニヤフはこの選挙で5度目の首相となった。これは彼にとっても、右派のリクードにとっても目覚ましい勝利だ。

トランプは明らかに彼の勝利に手を貸した。イラン核合意から離脱し、エルサレムへアメリカ大使館を移設し、選挙直前、ゴラン高原にイスラエルの主権が及ぶと承認した。

また、ネタニヤフがトランプ流の選挙術を駆使したことも非難された。本物あるいは想像上の敵に対する恐怖と憎しみを煽り、新聞を軽蔑し、司法システムを攻撃した。イスラエル経済の成長や低インフレ、記録的な低失業率も、有利な条件だった。

しかし、彼に有利な、より深い趨勢があった。ユダヤ人国家として、リベラルで社会民主主義的な性格は、20世紀前半の建国期において確立された。シオニストの指導者たちは、ユダヤ人の社会正義に対する自主的決定により、非宗教的な国家を理念とした。この理念は、特に、1948年以降の大規模な移民流入によっても、イスラエルを、ユダヤ人の民主的国家、とした。

この世界観はもはや多くの国民に支持されていない。貧しい、戦闘に沈む、65万人の小国は、今や繁栄する800万人の国家になった。この人工的変化は、国家の社会構造と政治を徐々に、かつ、決定的に転換した。

1980年代後半から、10万人の移民が旧ソ連から流入した。彼らはイスラエルの科学、技術、文化、音楽を豊かにした。しかし、その政治的姿勢はソ連支配下で暮らした数十年を反映していた。多くは世俗的(深い信仰心を持たず)で、階層的な秩序の強い国家を好んだ。よそ者や敵(ここではアラブ人)に対して容赦しなかった。「プーチンの下で暮らしたくないが、プーチンのような指導者を好む。」

労働党の穏健な社会民主的エートスやキブツは、彼らにとってボルシェビズムやソビエト時代のコルホーズを思い出させた。彼らの多くは、パレスチナ人の自決権を認める左派より、ネタニヤフの厳格なナショナリズムを好んだ。

同様に、北アフリカや中東からの初期の移民は、世俗的、平等主義的な労働党のエートスが、深いところで、彼らの宗教性や父権主義的な価値観と矛盾することに気付いた。彼らの多くは、アラブ人の多数派による弾圧を記憶している。リクードの最初の首相Menachem Beginは、こうした移民たちの持つ、左派エスタブリッシュメントに対する不満を、リクードへの政治的支持に転換した。

今も、旧ソ連からの移民たちはリクード支持者の岩盤である。ネタニヤフが去っても、彼らは右派連立政権を維持するだろう。しかし、イスラエルがハンガリーのような「非リベラルの民主主義」になることはない。その民主的な構造と規範は残っているからだ。それが大きく弱体化したことは確かである。

ネタニヤフ政権に対する野党の力は拮抗している。しかし野党は、リクードに変わる一貫した対案を示さねばならない。中道から極右に及ぶ右派連合も決して1つではない。


 多国籍企業とグローバル課税

PS Apr 15, 2019

How to Tax a Multinational

JAYATI GHOSH

多国籍企業MNCsはこれまで世界経済のルールを使って税の支払いを最小化してきた。ときには、まったく支払わなかった。しかし今、the Independent Commission for the Reform of International Corporate Taxation (ICRICT)が多国籍企業に対する統一税制を主張している。その実現に向かう兆候が現れている。

MNCsに対して20-25%の、グローバルな最低実効税率を課すべきだ、それが実現すれば、税率の低い国に利潤を移転するトランスファー・プライシングの企業財務からの動機は大きく抑制される。また、諸国間でMNCsによる投資を誘致するための、「底辺へ向かう競争」が終わる。

こうしたグローバルな税収は、いくつかの要因によって諸国間で分配される。すなわち、企業の売り上げ、雇用、デジタル・ユーザーの数、など。その活動や知的財産を所有する国を選択することで、MNCsがそれを決めることはなくなる。

政府が失っている税収の規模は途方もない。IMFの推定では、OECD諸国が毎年、4000億ドルの税収を失っている。MNCsの租税回避行動は、貿易統計をゆがめている。知的財産のような、無形資産の取引で、リアルな経済活動と関係ない、「幽霊貿易trade flows」が起きるからだ。こうした行動はデジタル企業に顕著である。


 気候変動と政治行動

NYT April 18, 2019

How Climate Became Germany’s New Culture War

By Anna Sauerbrey

ドイツでは、難民の数が減少し、ポピュリスト運動の争点が、次第に、環境問題に移っている。環境規制に批判的な自由党の指導者は「自動車に関する文化戦争」と呼んだ。

すでに難民に関する開放政策は転換された。地球温暖化、温室効果ガスの排出規制、都市生活における移動の問題、ミツバチの死滅、・・・人々は環境政策とその結果を日常生活において感じ始めた。

EUの窒素酸化物規制により、ドイツのいくつかの大都市で旧いディーゼルエンジンの自動車を禁止する。昨年、発表されたこの政策に対して、激しい論争が起きた。肺の専門家がEUの規制の有効性に疑問を示すと、AfDがこれを取り上げて称賛したのだ。

ドイツ人は自動車を愛する。自動車は国民的な独創性、優れた工業力を示すシンボルだ。人々に旧式の自動車を処分するよう求めたベルリン市政府の担当議員は、「カー・ヘイター」、「環境コミュニスト」とソーシャル・メディアにおいて非難された。

環境問題がなぜ難民問題に代わってポピュリストの論争に現れたのか。1.政府は地球の健康を理由に市民すべてに犠牲を求めた。ポピュリストは、科学を疑い、「政治的な正しさ」を拒否し、規制に反対して自由な市場を支持する。主流の保守派がこれに同調した。

移民問題も、環境問題も、その人の世界観を問う。グローバルで倫理的な目標を掲げる政策が市民たちに与える利益は抽象的であり、他方、コストはすぐに実感できる。保守派や伝統主義者は、環境政策を、都市リベラル派エリートたちの文化帝国主義だ、と感じる。

移民論争はドイツを分断した。その結果、公平な移民政策がドイツやヨーロッパにおいて実現するのはむつかしくなっている。同じ失敗を環境問題でも犯すのか?

論争における過度の攻撃を避けるべきだ。そして、双方が痛みを感じる真実を受け入れる。左派は、環境政策によって生じるドイツ市民の痛みを補償しなければならない。保守派は、人々の不満を政治的に利用してはならない。


 カルトとソーシャル・メディアの政治空間

FT April 18, 2019

Of Notre Dame burning and signs of the times

Izabella Kaminska

聖金曜日の前、多くのカトリック信者のコミュニティでは前兆を感じて目が覚めるだろう。ノートルダム大聖堂の火災は、900年の文化遺産が焼けた以上の意味を持つ。

それは聖月曜日に起きた。火災は世界の現状と何をすべきかについての神聖なメッセージだ。もしあなたが伝統的な奇跡の実践を信じるカトリックでないなら、このような解釈を受け入れないだろう。たとえ信者でも、それは非科学的で意味がない、と言うかもしれない。その通りだ。

しかし、また、まったく間違っているかもしれない。同じ考えが信仰の神秘的な光の中で、FacebookWeiboのような、メディア全体に広がっていることを、見失っている。

経験的な証拠と無関係な、専門的なメディアによって否定された、しかし、オンライン・ネットワークで拡散する、こうした考えが過去数年の政治世界を大きく変えた。それは今のところ選挙においてだ。旧来の、強力な信仰のシステムと、新しい情報の時代とが融合するとき、何が起きるだろうか?

インターネットは膨大な宗教の孵化器である。カルトとして無視すること、それがどのように機能し、政治操作がどのような優位を得るか無視するのは、最悪の行動だ

ファティマ(1916-17年、ポルトガルの町ファティマにおける「聖母出現」の幻視)のカルトがそれを示している。子供たちの前に現れたマリアは、第1次世界大戦の終結を祈るように求め、その後、彼女の失敗でロシアに共産主義が広まることを告げた。10月革命が始まる数週間前に、ファティマの7万人の群衆の前で太陽が踊りだす。

この甚大な影響力を持つカルト的信仰は、ファティマから発して、ロシアとカトリック教会との関係に及ぶ。信者たちはマリアの予言を、グローバルな共産主義の拡大と国民国家の死滅と結びつけ、現代のグローバリゼーションに見る。ウラジミール・プーチンは、ファティマ信仰の偉大な指導者として現れるだろう。ロシアをキリスト教の下に捧げたのだ。

重要なのは、インターネット上には根拠のない主張が満ちていることだ。パリを占拠する黄色いベストの抗議、ヨーロッパ各地のポピュリスト運動、こうした事態の中で、大火災は特別な意味を持つ。証明できない何ものかを信じようとする、多くの人々がいる。


 ウクライナ大統領選挙

NYT April 18, 2019

Maybe We’ll Be Better Off With a Clown as President

By Alisa Sopova

「約束はしない。言い訳もしない。」 それがゼレンスキーの唯一の政治メッセージである。彼はコメディアンから、もうすぐ、ヨーロッパの大国の1つを指導するだろう。この結果はばかばかしいように見えるが、1つのチャンスである。

Ze」というブランドで、ソーシャル・メディアへの投稿と、全国展開するコメディーの舞台だけで、彼は選挙活動を行った。中身のあるメッセージより、愚弄と嘲笑を発信した。まともな候補ではなく、単なる道化師ではないか、という非難に対して、ゼレンスキーは誇り高く肯定した。インスタグラムには、赤鼻をつけた自撮りのビデオを載せた。

彼の反抗は勝利につながった。現在のウクライナに関して何か言うより、沈黙するほうが良い。ここは政府に対する信頼が最も低い国である。

2004年のオレンジ革命から、すべての党派の政治家たちが汚職をなくす、ウクライナを共産主義からの移行の混乱から抜け出させる、と約束した。あまりにも多くのウソ、失敗、失望があった後で、そのような約束はひどいでたらめだ。

政府は、ロシアとの戦争が続いていることを理由に、ジャーナリストたちの調査を弾圧し、言論を統制した。何か言えば、ロシアに近すぎる、西側に近すぎる、ナショナリストだ、愛国心がない、と非難される。

こうした状況では、ゼレンスキーの空欄は彼の資産である。人々は何でも好きなことを書く。今、人々が望むことは、ポロシェンコを罰することだ。彼は2014年のスローガン、「新しい生活」を約束して、守らなかった。汚職、貧困、不平等、汚い政治にまみれた旧いウクライナに戻ったのだ。

ポロシェンコの選挙スローガンは非常に保守的だ。「軍隊、言語、信仰」である。それは国民のアイデンティティである。ポロシェンコの傲慢さは選挙によって罰せられた。

ゼレンスキーの支持者は、しばしば、テレビ番組と混同している、と非難される。しかし、番組はウクライナの庶民が味わっていることを示している。有権者はフィクションが実現すると思うからではなく、彼らのあからさまな自画像を認めているのだ。風刺は単に政治家や富豪についてだけでなく、駐車場を得るために官僚に胡麻をする隣人や、毛皮のコートを買いたいから夫に賄賂を受け取るよう求める妻を描いている。

Zeは、単純に、国民投票やクラウドソーシングなどで、なんでも国民に尋ねる、と語った。そのような約束だけが、政府は自分たちのものだと国民に信じさせる。この選挙は、より透明なガバナンス、より大きな政治参加に向けた機会である。

民主主義は大統領の権力をチェックする。新しい大統領に対しても、経験不足や、政治的な姿勢のあいまいさ、富豪Ihor V. Kolomoiskyとの関係をチェックしなければならない。コメディアンを大統領に選んだ国民は、1つの機会を得たのだ。

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The Economist April 6th 2019

Redesigning life

The Brexit negotiations: A step in the right direction

Algeria: So begins the real battle

European banhs: The land on the living dead

Chinese mobility: Great wheels of China

Banyan: Older than hills

Bello: Blaming the conquistadors

Bagehot: Metamorphosis

Ukraine: Send in the clown

Charlemagne: Europe’s other migration crisis

(コメント) 生命をDNAレベルで改造する技術が確立され、さまざまな分野に利用が拡大するとき、それは人類が火を手に入れたり、産業革命を起こしたり、インターネットやAIを普及させる以上に、根本的な変化をもたらす、と予想されています。計り知れない利益と、まった予期せぬ大災厄をもたらす何かを実現しつつあるわけです。戦争に利用され、人間を改造することにも。

Banyanの視点は、歴史的に見て、文明、帝国、国家、を扱います。実際には、歴史は政治的に利用され、カンボジアの首相が独裁的な性格を強め、中国は共産党の支配と同一視し、インドではモディ首相がヒンドゥー至上主義と結託することで政権を得ました。

Belloは、メキシコ大統領はスペイン人の制服について謝罪を求めたこと、Bagehotは、イギリスの離脱強硬派が保守党を完全にポピュリスト政党に転換してしまったこと、Charlemagneは、ウクライナからの移民流出は、最も改革に燃えた、ヨーロッパと民主主義を支持する、高等教育を受けた若者たちであり、腐敗し、分裂したウクライナに帰国せず、ポーランドで暮らしています。

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IPEの想像力 4/15/19

家族や仲間であることは重要です。人が、生産的に社会とかかわり、地球環境問題に及ぶ課題を意識し、政策がもたらす生活の変化を、政治が議論してくれているなら、老いて生きることも楽しく、子供たちの未来を待ち望む気持ちになるでしょう。

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私の母も、高齢者支援のシステムにより、介護サービスを受けることがあります。町中に、銀行やコンビニと同じくらい、介護施設、介護サービスのステーションがあります。いつも気持ち良い挨拶を交わして、若い介護スタッフが、自動車で家まで迎えに来てくれます。

しかし、もし彼らが、もっとほかの分野で働けたら、日本の経済活動は一気に活性化するのではないか、と思いました。介護が重要であることはもちろんですが、ますます多くの若者が介護に吸収されるなら、日本は「高齢化」という最も深刻な社会的衰退に向かうと思います。

また、防衛・治安の問題を市民11人に教えるパンフレットをスウェーデン政府が配った、という論説にも注目しました。そういえば、日本でもミサイルの警報が出たとか、出ないとか、一時、北朝鮮のミサイル発射が政界を揺さぶりました。その結果、私たちは何かを学んだのでしょうか? 巨額のイージス・アショアをアメリカからにわかに購入する(そして貿易黒字の言い訳にもする)計画だけが、私の記憶に残りました。

通勤電車に乗るたび、乗客のマナーを細かく注意する放送に、ある意味、感心します。車内では電話で話してはいけない。お年寄りや体の不自由な方に席を譲ってあげてほしい。大きな荷物を持ち込んで、他の乗客の迷惑になってもいけない。背中に負った大きなリュックが周りの乗客に不便や不快を与えることに配慮し、体の前で持つようにしてほしい。・・・

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労働生産性の伸びが低いことは、イギリスにとって懸念すべきことだ、とM.ウルフは指摘します。しかも、イギリスにはもっと多くの問題が同時に起きています。Brexitはその加速器でした。すなわち、アイデンティティ危機、議会での論争や政党が機能しない、政治の枠組み・ルールが崩れている、なにより、指導力が失われた、と。

日本は、確かに、外観としてイギリスのような混乱を示していません。しかし、どうなのか?

The Economistの記事は、高齢化だから生産性は上昇しない、というのを間違いだと指摘しました。高齢化でも、ITAI・ロボット、デジタル化、など、積極的な技術革新を導入して投資する国もある。それを怠れば、当然、労働生産性は伸びないのです。

移民労働者もそうでしょう。せっかく移民労働者が日本に働きに来ても、さまざまな制限を付けて、彼ら・彼女らが高い生産性(そして賃金)を実現するのを阻んでいます。そう。介護職の若者たちと同じです。

彼・彼女たちが、新しい職を得て、次々に技能や知識を得ることで、労働市場や労働組織、産業構造が変化し、活性化します。そのとき、もはや日本は「高齢化」や「超高齢化」を労働生産性が低い理由にはしないはずです。

差別やハラスメントが問題になることもあります。11人が、学校や職場をもっと移動できたら、ハラスメントを習慣とするような職場は消滅すると思います。

安倍首相の自民党政権が長期に及んだことは、外国から見て、不思議な、尊敬されることかもしれません。欧米を訪問すれば、安倍首相は、指導者として自信を示すことができるのでしょう。それは、プーチンやネタニヤフの自信と似ています。

しかし、日本は課題に応えているか? だれが首相であれ、この国の為政者に問いたいです。

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