IPEの果樹園2019

今週のReview

1/21-26

***************************** 

独裁者は非常事態を好む ・・・無邪気で、知的な限界を持った、ペテン師たち ・・・短期移民労働政策 ・・・日本は鯨を保護し、捕鯨を続ける ・・・中国経済の減速と資本移動 ・・・民主党指導部は左派に向かう ・・・グローバル通貨システムの混乱 ・・・ユーロ生誕20

長いReview

****************************** 

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 独裁者は非常事態を好む

NYT Jan. 12, 2019

Why Autocrats Love Emergencies

By Steven Levitsky and Daniel Ziblatt

独裁者たち、専制的指導者たちは、1930年代のGetúlio Vargasから、1970年代のIndira Gandhi and Ferdinand Marcos、現在のVladimir Putin and Recep Tayyip Erdoganまで、非常事態を好む。本当のものであれ、工作されたものであれ。非常事態を利用して拡大した権力を得るからだ。ドナルド・トランプが権力の乱用を危機によって正当化するという懸念がある。

家族ビジネスや軍隊は、命令すればよいかもしれない。しかし、民主主義には交渉と譲歩が求められる。後退は避けられず、勝利は常に一部でしかない。大統領たちは、その主要な政策目標を諦めた。

専制的な考え方の指導者は、反対に、民主的な政治に耐え難い不満を感じる。ギブ・アンド・テイクの技巧や感覚を欠いている。彼らは批判されることや妥協を極端に嫌う。立法過程のわずらわしさに我慢ならない。独裁者になる指導者は、大統領制の民主主義にあるチェック・アンド・バンスを拘束衣と感じる。こうした憲法の制約を回避することが、危機によって可能になる。

国家の非常事態では、第1に、支持率が高まる。第2に、反対派が沈黙する。第3に、正常な憲法による制約が緩和される。

それは民主的な思考の大統領、南北戦争のリンカーンや、第2次世界大戦のルーズベルトでもそうだった。しかし、独裁思考の指導者においては、致命的な変化となる。1933年、国会放火事件で独裁者となったヒトラーがそうだ。ほかにも、毛沢東主義者の反乱と経済危機に直面した、1992年、ペルーのフジモリ。一連の爆破テロについて、チェチェンのテロリストの犯行と疑われたが、反対派を弾圧して権力基盤を固めた、1999年、ロシアのプーチン。同じく、2015年、連続したテロ事件と、2016年の軍事クーデタ失敗を利用して権力を強化した、トルコのエルドアン。

クリントンやH.W.ブッシュと違って、トランプは国境の壁を建設する計画を諦めない。議会が必要な予算を認めなかったため、彼は政府を強制的に閉鎖した。それでも壁が建設できないとき、彼は既存の議会を迂回して、まだそれを宣言していないが、非常事態を捏造するだろう。これが、反対する議会に対する、独裁者のやり方だ。トランプは、ますます、ロナルド・レーガンではなく、フェルディナンド・マルコスに近づいている。

そして恐ろしい問題が提起される。合法的な手続きを無視して非常事態を捏造するような大統領が、本当の安全保障上の危機に直面した場合、どのような行動を取るのか?


 無邪気で、知的な限界を持った、ペテン師たち

The Guardian, Fri 11 Jan 2019

Labour must back a people’s vote before the clock runs out

Timothy Garton Ash

これから数週間のうちに、イギリスは厳しい2者択一を迎える。それはテリーザ・メイの、私の合意を取るか、合意なしか、ではない。ジェレミー・コービンの説得力を欠いた選択、彼女の悪いBrexitか、彼のずっと良いBrexitか、でもない。真の選択肢は、目を閉じたままのBrexitか、民主的な中断か、である。

「中断timeout」で私が意味するのは、第2の国民投票に至るまでじっくり民主的に議論する時間のことだ。第2の国民投票において我々は決定する。現在知っていることすべてに基づき、2016年のBrexitを支持した国民投票から生じた深刻な諸問題にどのように対処するべきか、われわれはどのような国になりたいのか、EUの内か外か、そのためにはどちらが良いのか? そのためになら、われわれの仲間として、EU50条の離脱期限を延長し、必要な時間をくれるだろう。

他のすべてのこと、すなわち、メイの合意案、合意なし離脱、関税同盟、ノルウェー・プラス、カナダ・プラス、共通市場2.0、あなたの好きな呼び名で良いが、すべては目を閉じたままのBrexitの亜種である。こうした様々なBrexitでは、われわれがEUを離脱した後、Brexitの本当の意味が、長い交渉の中で決まることになる。そして、外に出た以上、あなたは外である。交渉の立場は、現在よりも、もっとずっと弱いだろう。

そのような条件で労働党が権力を握っても、表通りをトーリーの狩猟が走った後で、馬の糞を拾い集める清掃人でしかないだろう。議会の周囲には妄想が漂う。もう「Brexitをしてしまえ」、そのあと、さっさとわれわれの問題に取り組んでくれ。住宅とか、医療とか、教育とか。しかし、Brexit10年かかっても終わらない。もっともソフトなBrexitでさえ、その経済コストは公共サービスのわずかな財源をさらに奪う。最も打撃を受けるのは、労働者階級なのだ。

50条の離脱期限をわれわれだけで延期できる、というのも妄想だ。そうではない。EU加盟諸国、27か国の同意が必要である。彼らは、交渉をするためだけに、期限を延長しない、と繰り返し表明してきた。ロンドンが、EU残留を選択肢として含む、国民投票か総選挙を決めた場合は、その時間を待つだろう。

労働党のコービンは、なお、労働党を支持すれば、もっと良いBrexit案を交渉できる、という。しかし、有権者の多数は、人種差別的なエリートによって貧困状態に苦しんでいるのだ。

メイの合意案は否決され、その後、労働党の提出する不信任案も否決されるだろう。メイがブリュッセルから得るのはバックストップの確認だけだろう。労働党は、保守党政権がEUよりも優れた労働者の権利の保護者である、とは信じない。ここがコービンの正念場だ。もし彼が左派のBrexit推進という本能を克服できたら、議会の超党派を率いてBrexit問題を国民に問い直せるだろう。もっと十分な準備をした国民投票である。政府が議会の意思を尊重するか、そうでなければ、議会がこの過程を指導する。1つの有益な副産物として、政権の過大な権限を抑え、議会と行政府とのより現代的、民主的なバランスを実現するだろう。

2の国民投票は、最初の結果を否定することではない。それは、ブレア派や大都市、リベラル・エリートが、だまされた国民に正しい答えを出すまで再投票させる、という意味ではない。これは、おそらく市民集会を含む、もっとはるかに大きな過程の一部である。Brexitを支持した投票に向けた、積極的な民主的反応である。

この過程では、われわれとEUの関係に関する問題と同じくらい、なぜBrexitが支持されたか、Brexit投票の大義を理解することが問題になる。新しい「人民の投票」は、イギリスの未来を問うものだ。労働党は、真の2者択一が、目を閉じたままのBrexitか、民主的な中断か、であることを理解し、後者がこの国にとって、またEU全体にとって、最善のものだと支持することだ。それはまた、労働党員や支持者たちに歓迎され、保守党を分裂させるだろう。

NYT Jan. 17, 2019

The Malign Incompetence of the British Ruling Class

By Pankaj Mishra

1947年、インド帝国から、混乱の中でイギリス人は離脱した。多くの者と同じく、小説家Paul Scottはショックを受けた。1世紀以上もインドを支配したイギリス人が、あまりにも急いで、無慈悲な形で撤退したことは、分断と無政府状態に責任がある、と主張した。

イギリスのEU離脱は、この国の支配者たちが道徳的な基準を放棄する、もう1つの例である。Brexit推進派は、帝国主義時代の強さや自給体制の幻想を振りまいた。そして繰り返し、自分たちの傲慢、愚昧、無能な姿を示した。

イギリスエリートたちのエゴイスティックで破壊的な行動に、現代の多くの人が驚いている。しかし、70年前に、インドから大混乱の脱出劇を示したとき、それはすでに明らかだった。

最後のインド総督、マウントバッテンLouis Mountbattenは、海軍では“Master of Disaster”と呼んで侮辱していたが、アジア・アフリカの帝国領土の支配者を供給する小さな上・中流階級に属していた。右派の歴史家Andrew Robertsは、彼を「無邪気で、知的な限界を持った、ペテン師」と呼んだ。イギリスの政治的惨事は、その私立教育システム、パブリック・スクールによって利益を受けた男たちによるものだ。

David Cameronは保守党内の強硬派を孤立させるために、この国の将来を国民投票の賭けに出した。機会主義者のBoris Johnsonは、首相の座を得るためにBrexitのバンドワゴンに飛び乗り、Winston Churchillを気取っていた。シルクハットの好きな、レトロのJacob Rees-Moggは、自分の資金管理会社がEUに事務所を移しているのに、熱烈なEU攻撃をおこなった。これがイギリスの「無邪気で、知的な限界を持った、ペテン師」である政治階級だ。

イギリスエリートの機関紙であるThe Economistでさえ、「専門知識よりも威嚇」によって政界を生きる「オックスフォードのお仲間」を嘆いた。Brexitは、イギリス的「仲間政治」が最終的にたどり着いたワーテルローである、と。

しかし、イギリスの歴史を論じる彼らには、大英帝国の破滅的離脱戦略である分離が、自分たちの国にやってきた、というのがより正しいだろう。それは、グロテスクなほどに皮肉な形で、1921年の分離、最初に植民地化したアイルランドに引いた国境だ。それこそが帝国の夢を追うBrexit推進派の最大の躓きの石となっている。さらにイギリスは、自身の分離に直面する。もしイギリスの求めるBrexitが実現すれば、スコットランドのナショナリストたちは再び独立を要求する。

Brexit推進派の悪意ある無能さは、1947年、イギリスがインドを離脱する間に正確に示されたものだ。衝撃的なほど、彼らは準備不足だった。イギリス政府は19486月にインドは独立する、と公表していたが、19476月の最初の週に、秩序、マウントバッテンが、1947815日に限力の意向を行う、と主張した。7月に、訪れたこともない国の新しい国境線を引くため、法律家Cyril Radcliffeが指名された。彼の分離計画は、実質的に、数百万人への死刑宣告であったが、最高の叙勲を彼にもたらした。

Radcliffeの国境線がもたらした100万人におよぶ死者、誘拐され、強姦された、数え切れない多くの女性たち、世界最大の難民の移動は、Brexitのいかなる世紀末的シナリオをも超える、広大な大虐殺である。多くの帝国の犯罪は、最初、その地政学的なパワーに依拠し、その後は、文化的な威信に依拠して行われた。キプロスからマレーシア、パレスチナから南アフリカ、これらの多くの歴史的実例が、イギリス人エリートの好む、勇敢で、賢明で、慈悲深いイメージに反している。

無能なイギリスのエリートたちに、アジア・アフリカの数百・数千万人が苦しんだ。その分離がイギリス本国にやってきた。


 短期移民労働政策

FT January 15, 2019

Britain’s blue-collar immigration plan is a superficial fix

Sarah O’Connor

高齢化する諸国はゆっくりと増大する高齢人口に苦闘している。高齢者を世話する労働者が必要だ。しかし、企業は労働力不足を訴える。ロボットはまだ助けにならない。政治家たちの直面する難問とは、経済が必要とする移民を、市民たちが進んで受け入れるような形で、どのように導入するか? である。

先月、ドイツと日本は低熟練労働者に対する門戸を開く法律を成立させた。UKも、Brexit後のブルーカラー移民労働者に対する政策を、企業や国民の声を聴いて、模索してきた。政府は、「低リスク」諸国(特定していない)から、低熟練職を望む者に対して、一時ビザを販売する。その政策では、低熟練の雇用を12か月だけ許す。その後、12か月のクーリング・オフ期間を置かねばならない。家族を連れてくることや、社会給付を受けることはできない。

そのようなケチな条件でUKに来て働きたい者がいるのか、という問題とは別に、どの国を「低リスク」国に含めるのか、という問題がある。賃金格差が大きいほど、人々は望んで来るだろう。この政策の長所は、Brexit後も労働移民がなくならないこと、ビザが雇用主に固定されないことだ。それはビジネスにとって、経済の変化に柔軟に応じ、また、労働者にとって、湾岸諸国で起きているような搾取を避ける点で意味がある。

政府はまた、市民が受け入れ可能な条件を重視している。そのために、移民労働者は、学校など、地方のサービス給付を受けず、長期滞在することを許されない。しかし、低熟練労働者を1年後に強制的に帰国させることは、彼らの統合化を不可能にする。コミュニティやブルーカラーの職場は、土地の習慣を知らない、根付くことも、英語を学ぶこともない、移民たちの絶え間ない渦巻きを経験するだろう。

国民はどちらを望むのか? こうした事態はすでに起きている。世論調査によれば、移民たちが「根付いて統合化する」ことと、数年働くと「根付かずに帰国する」ことの、前者を支持する者が約60%、後者が約40%である。また、政府は一時ビザを実施しても強制できず、多くの移民が影の経済に残留する、と多くの者が疑っている。

雇用主は、12か月ごとに新しいスタッフを雇うのは頭痛でしかなく、訓練にも投資しないだろう。これは生産性にマイナスの政策だ。スタッフの補充を仲介機関に大きく依存する。仲介機関が労働者を拘束し、労働者にビザを給付する代価を要求するかもしれない。監督機関のチェックを実施するスタッフは、100万人を派遣する約18000の機関に対して、14人しかいない。

低熟練移民労働者に関する困難なトレード・オフは、政治の成熟を求めている。政府の表面的な解決策は、すべての者をなだめる試みだが、だれにも機能しない。


 日本は鯨を保護し、捕鯨を続ける

NYT Jan. 11, 2019

Japan Is Committed to the Conservation of Whales’

Takeshi Osuga (press secretary of the Ministry of Foreign Affairs of Japan)

1に、日本は鯨の保護を約束して、それを守っている。IWCが確立した科学的方法でクジラの捕獲数を制限している。

2に、日本の捕鯨は国際法に照らして合法である。捕鯨は日本の排他的経済水域に限られる。日本は1986年の「モラトリアム」、30年間の捕鯨禁止、を守ってきたが、政治的な動機によってモラトリアムが永久化されたと判断し、IWCを離脱することに決めた。

3に、捕鯨は日本の文化の一部である。これは、ノルウェー、アイスランド、デンマーク、そして、アメリカとカナダの先住民にも共通する。日本だけを非難するのは公平ではない。日本の決定を、「短期的な政治利益」を目指す「ナショナリストの政治家たち」に結びつけるのは不当である。


 中国経済の減速と資本移動

FT January 15, 2019

Xi Jinping’s turn away from the market puts Chinese growth at risk

Nicholas Lardy

アメリカがくしゃみをすれば、カナダは風邪をひく、と言われた。今や、中国がくしゃみをすれば、その弱さが世界に感染する、と多くのエコノミストたちは懸念する。

中国の諸問題は、1.国内需要が減っている、2.経済の成熟化、3.アメリカとの関税戦争、などの要因によって起きている。たとえアメリカとの貿易紛争が解消しても、グローバルな経済成長の機関車という役割はおわるだろう。それは習近平主席が、中国の35年におよぶ方針、市場志向の改革を逆転したからだ。

鄧小平の下で1978年に始まった市場志向の改革は、民間経済の繁栄を許した。その後の経済成長、雇用、輸出に民間企業が特に重要な役割を果たしてきた。しかし、習近平が2012年に峡湾党書記長になってから、この方針は概ね放棄され、反汚職キャンペーンが強調された。そして産業政策や国有企業が重視されるようになった。

国有企業は、その5分の2以上が大幅な赤字を出しており、銀行融資を増やし続けている。習は、特定分野で、国家による大企業の合併を進めてきた。それは競争を弱め、技術革新の動機を奪い、コストが膨張している。長期的な趨勢は逆転し、民間企業による投資が近年では減少した。

米中の貿易摩擦に関わらず、共産党支配のために、国有部門を維持するという習の方針は、成長を減速させ、世界に重大な結果をもたらす。


 民主党指導部は左派に向かう

FT January 14, 2019

The Clinton-Obama era ends as US Democrats seek a radical new voice

Edward Luce

注意して聞けば、わかるだろう。民主党の指導部は世代交代に向かっている。民主党を選挙のかつ、ウォール街にも支持される政党に変えた時代は終わった。不平等よりもグローバル市場を歓迎した世代から、もっと大胆な政治表現を好む世代へ。

2020年の民主党大統領硬派がだれであれ、新しいニュー・ディールを求める党の過激化を示すだろう。

彼らはドナルド・トランプに感謝するべきだ。彼が、民主党指導部の温めてきた、システムに対して慎重な考え方を吹き飛ばした。トランプは、エスタブリシュメントを倒すために武器を取り、その勝利を得る手本を示した。トランプは不平等を悪化させたが、それを生み出したわけではない。

民主党の候補者がだれになるかは重要だが、党の重心が移ったことに意味がある。「すべての者に医療保険を」、「グリーン・ニュー・ディールを」、公的な選挙資金を、そして、もっと高い税率を。29歳の社会主義者、最年少議員、Alexandria Ocasio-Cortezへの注目度は高い。70%の所得税率を主張する彼女を、クリントン政権の財務長官であったサマーズLawrence Summersが支持した。サマーズは1990年代のワシントン・コンセンサスを体現した人物だが、ケインズと同様に、事実が変われば姿勢を変える。

アメリカの左派がアイデアの工場になりつつある。数十年間で初めて、アメリカの知的なエネルギーが左派に生じた。それは1930年代のF.D.ルーズベルトなのか、1972年のマクガバンGeorge McGovernなのか。どちらが正しいにせよ、クリントン=オバマの時代は終わった。新しい時代が始まりつつある。


 グローバル通貨システムの混乱

FT January 14, 2019

Cracks are opening in the global monetary system

Russell Napier

多くの投資家が景気循環のどの段階にあるかを心配するうちに、グローバルな通貨システムが崩壊しつある。初めはそっと静かに、しかし最後には鐘を叩くように。初めは、株式市場で投資家が損をする。最後には、ブレトンウッズ体制の最後、国際金本位制の最後と同様、資産価格が暴落する。

アジア経済危機で、通貨システムは応急処置を施された。多くの国が自国通貨の増価を抑える介入を行った。1999-2014年に、約10兆ドルが外貨準備に加わり、アメリカの財務省証券を購入した。外国の中央銀行による保有率が、1995年の13%から、2014年の3分の1に増えた。

グローバルな貯蓄は民間部門に回った。他方、中央銀行は10兆ドルの資産を増やした。グローバルな投資家たちにとって、リスクのないグローバルな低金利と、中国など、新興市場の通貨供給増で高まった成長率、という、これ以上は願ってもない世界だった。

その後、外貨準備の増大は終わった。アメリカ政府の赤字を埋める仕事は、外国の中央銀行から、貯蓄家たちにもどった。むしろ外国の中央銀行もアメリカ連銀も財務省証券を売った。この貯蓄の構造変化は、トランプ減税で強まった。これは、貯蓄家たちが他の資産を売るか、貯蓄を増やして応じることを意味した。資産価格が下落し、成長にもマイナスだ。

低成長、低インフレ、低資産価格、キャッシュ・フローの減少が、支払い不能を増やす。非金融部門の債務がGDPに対するグローバルな比率は234%である。これは、2007年、先の金融危機直前の210を超えている。この10年間、債務の増大が広義の貨幣増大や名目GDPの増大を超えていた。中央銀行は金融安定性を犠牲にして成長を買ったのだ。

世界の外貨準備が低成長となることの他の側面は、為替レートを目標に通貨供給する体制の終わりだ。その問題は中国で強く示されている。平和な時代ではかつてない債務/GDP比率の急速な上昇が終わった。経済はギアを落とす。その調整コストはデフレや債務のデフォルトになるだろう。おそらく中国は変動レート制に移行し、その債務をインフレで減らす自由を得ようとする。中国の為替レート調整が現在のグローバルな通貨システムを破壊する。

その重大な結果は、ユーロ圏の解体だ。5月の欧州議会選挙では、極右と極左の議席が増えると予想される。彼らは主権を自分たちの議会に取り戻し、単一通貨を破壊する。グローバルな通貨システムの破壊はユーロ圏諸国の資本規制で始まる。

投資家たちは、ユーロ圏が崩壊する中で、所有権を懸念する。明ス主義と法の支配が概ね維持されるUKは、ヨーロッパの投資家たちに安全な避難所を提供するだろう。投資家たちは「人民の、人民による、人民のための政府」が生き延びるとは信じていない。


 ユーロ生誕20

FT January 16, 2019

Marking the euro at 20: the eurozone is doomed to succeed

Martin Wolf

人と同じく、20歳は熱病に苦しむ思春期を経て、成熟する年齢だ。しかし、その経験があまりにも困難なものであれば、重大な問題を感じるだろう。それは次の4つだ。

1に、ユーロは意味のある考えだったのか? 先月のMario Draghiの講演は、その合理的根拠を明快に説明した。すなわち、単一通貨無しに、深く統合した単一市場を維持することはできない、と。「もし企業が生産性を高める投資をしても、他国における競争的切下げという『近隣窮乏化』によって、その利益の一部を失うなら、単一市場への支持が損なわれる。」

しかし、ユーロは明らかに非常に危険な状態だ。共通の金融政策が累積的な乖離を進めてきた。高インフレ(そしてブーム)の国には実質的な低金利、その逆には逆の政策だから。これほど異なった経済制度と行動を取る諸国が一緒に繋がると、特に政治過程が共有されていないなら、ユーロは人々を協力させるより、反目させる。

2に、ユーロの経済パフォーマンスはどうか? 確かに、大きなショックや苦痛の大きな分裂を生き延びた。しかし、それは分裂(もしくは1国の離脱)するコストがあまりにも大きくて、だれもが恐れたからだ。また、深刻な危機の中では、政治家たちが必要な行動を取った。20127月にドラギが約束したように、ECBは中央銀行にできる非常時の手段を行使した。こうした緊急融資枠を設定するべきだ。

しかし、生き残ったやり方はまずかった。危機の対処に時間がかかり過ぎた。その深い傷は、脆弱な諸国に深い、長く続く、経済・社会・政治的な影響を残した。生活水準は収れんせず、むしろ乖離した。ユーロ圏内の銀行融資は崩壊し、余りにも低いインフレがコストの格差を調整するのを難しくした。危機に陥った諸国は、緊縮策を強いられ、しかも、ドイツやオランダなどが出す黒字のせいで、ユーロ圏は危機後の調整の大部分を外部化した。

3に、ユーロ圏は将来も生き残るのか? おそらく。住民の4分の3がユーロを支持している。しかし、生き残る最大の理由は、解体するコストが大きいことだ。ユーロが崩壊すれば、EUも維持できない。EUは常に経済統合を基盤としてきたからだ。

最後に、どのように生き残るのか? Grosは「大陸規模の労働市場改革は進んでいる」という。現在、成人労働者の労働力率はアメリカよりも高い。最も厳しい危機を経験した国でも失業率は減少しつつある。

しかし、ユーロ圏は「最適通貨同盟」ではないし、そうならないだろう。いかなる意味でも、連邦制は目標に入っていない。根本的な政治問題、すなわち、ユーロ圏の政策責任と、各国の政治的説明責任との不統一、はこの先も続く。必要な変化は、「十分に良い」同盟である。リスクは、国境を超える民間投資が担う。それゆえ、銀行同盟と金融市場同盟が重要である。より容易、勝つ、受け入れ可能な形で、債務を再編するべきだ。少なくとも、マクロ経済政策の調整は対照的でなければならない。

より長く、健康に生きるには、実質的な改革を進めることだ。

******************************** 

The Economist January 5th 2019

The Trump Show, season two

The euro at 20: EUR not safe yet

Brazil: A dangerous populist, with some good ideas

The euro at 20: Undercooked union

The king of Thailand: A royal pain

Banyan: Wailing whalers prevail

Childhood: The generation game

(コメント) ユーロ圏に関する整理は的確な中身です。ユーロは改革の正しい方向を示しているとしても、政治的な合意は不足しており、困難が続くのです。

むしろ、2つの記事が面白いです。ブラジルのポピュリスト政権に正しい社会保障システム改革の思想があること。幼年時代がいかに大きく変わったか。

軍政下でタイの王位が継承される過程の異様さは、日本の皇室を連想させます。また、日本がIWCを抜けたことを支持する記事にも注目します。

****************************** 

IPEの想像力 1/21/19

ニュースに絶句しました。

「バーで高額注文→つけ膨らむと風俗店に紹介 容疑で逮捕」朝日新聞デジタル2019116日、気弱そうな女性と疑似恋愛、性風俗店にスカウト」読売新聞20190117

四条河原町など、京都の繁華街で、地方出身のおとなしそうな女子学生を狙い、イケメン男子学生が「ナンパ」する。恋愛関係と思わせて、職場の上司に紹介するから、と祇園のバーに連れて行き、高額のお酒を注文させる。多額の債務を負った女性は、返済できないと、風俗店で売春させる。しかも、その報酬から上前をはねて、彼女たちが働く限り報酬を受け続ける。・・・これは、ヤクザの手口ではないか? 闇ビジネスのマニュアルと同じなのか?

その犯罪者も、被害者も、大学キャンパスで「学ぶ」はずだった若者たちです。犯罪行為が、キャンパスを舞台に使って広がったに等しい、と思います。学生である、という身分、サークルやゼミで飲みに行く、会話よりもラインで交流し、短いメッセージに一喜一憂する。

風俗・売買春、詐欺、暴力、脅迫、賭博、薬物・ドラッグ、強姦・・・ こうした悪行や不道徳を、闇の世界、関わってはならない犯罪集団として、市民生活から排除・隔離してきた時代、そういう社会が、およそ20年も前に、終わったようです。漫画、写真雑誌、ゲーム、そして何よりインターネット。

テレビや映画の中で、闇の世界が日常として描かれ、両者が混じる恐怖や緊張感が「作品」として存在していたと思います。それらが、一種、異様なスピードでミックスし、逆転したのかもしれません。ゲームの世界を楽しみ、夢中になるとき、殺戮や犯罪が、犠牲者を獲物としてしか見ない、価値判断は、ゲームで獲得されたポイントや、効果的な稼ぎ方の間の比較でしかない。

****

子どもは未来の社会です。未来に向けた人類の理想でもあると私は思います。世界中で、富裕化と都市化、少子化、高齢化が進む衝撃は、「幼年期」の本質、そして、人間や社会の本質を根本的に変えてしまいました。

The Economistの特集記事が、ちょうど、それを示しています。

「私が子供のころ、私たちはいつも外で、一日中、友達と遊んでいた。互いの家を出たり入ったりして、ポケットにはサンドイッチを。自分たちの楽しみがあった。親たちは朝から晩まで見なかった。われわれには物が無かったけれど、好きなように行き来し、多くの冒険があった。」

これがおよそ30年前の豊かな国にあったことだ、と記事は述べます。しかし、今は、工業化し、都市化して、子供の数が減りました。コミュニティは失われ、両親はしばしば離婚し、モザイク状の家族を子供は渡り歩きます。混雑し、危険な都市環境で、親は少数の、おそらく1人の子どもを、家政婦や養育施設に頼って育てます。中国の中産階級も含めて、裕福な両親が子供に投資し続けています。

子どもは一日中、屋内で、ゲームを楽しむ。そのほうが親も安心する。スマホを与えられて、ネットのゲームを楽しみ、親は所在を確認できる。子供は大人とばかり話をし、ネットの情報で価値観や社会規範を知る。親たちは競って子供の教育に投資し、子供の将来を自分よりも豊かな条件にしようと決意している。そして、朝から晩まで、さまざまなレッスンや施設の間を子供は行き来する。

****

私が考えていたのは、定年後の暮らしでした。「幼年期」と同じように、「老年期」も大きく変わったはずです。健康であれば、気力や体力がある限り、私は働きたいと思います。もちろん、楽しく、のんびりと。でも、懸命に。60歳から70歳の間に「老人宣言」をすれば、すべての資産はコミュニティに帰属し、住宅から食事まで、コミュニティの示すオプションを選んで暮らす、という世界を夢想しました。そして、老人たちの職場も開拓します。

憲法前文を書く。NHK未来塾を観ました。専門家たちの解説ではなく、学生たちの志や文書の力に感銘を受けます。・・・憲法の2つのタイプ。「広場」と「目標を掲げる組織体」 ・・・憲法は専門家たちが書くだろう。しかし、国民が支持しなければ、憲法ではない。僕たちには「想像」という方法がある。

タイの王室が軍政下の王位継承をめぐって、不人気な皇太子と不人気な政府との軋轢を生じているようです。日本でも、憲法と皇室の問題が、日本の保守政治をあぶり出します。平成の天皇が示した「老人宣言」の方が、もっと関心を集めるべきではないでしょうか。

******************************