IPEの果樹園2019

今週のReview

1/21-26

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資本主義・企業の価値を見直す ・・・カール・シュミット ・・・国際政治の混乱 ・・・独裁者は非常事態を好む ・・・無邪気で、知的な限界を持った、ペテン師たち ・・・EU政治の混乱 ・・・短期移民労働政策 ・・・日本は鯨を保護し、捕鯨を続ける ・・・中国経済の減速と資本移動 ・・・民主党指導部は左派に向かう ・・・グローバル通貨システムの混乱 ・・・21世紀の福祉国家 ・・・アメリカ中東外交の混乱 ・・・ハイテク大企業の市場支配力 ・・・ユーロ生誕20年 ・・・

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 資本主義・企業の価値を見直す

NYT Jan. 10, 2019

The Remoralization of the Market

By David Brooks

経済ポピュリズムがにわかに蔓延している。右派Tucker Carlson、左派Bernie Sanders and Elizabeth Warren、ともに、部族的な感情論をまき散らす。世界は、われわれと奴ら(銀行家)に分割され、複雑な問題が単純化される。

しかし、経済ポピュリズムも、自由市場原理主義も、間違っている。私はそのどちらでもない、第3の理解を示したい。

話は1970年代にさかのぼる。アメリカ経済は病気であった。企業は赤字で、それでも組合は強欲で、税率は高すぎ、規制は厳しすぎた。経済のダイナミズムを取り戻す必要があった。1978年、ジミー・カーターが個人や企業の税率を下げる法案に署名した。テッド・ケネディが航空・トラック輸送の規制緩和を模索した。それらをロナルド・レーガンがさらに推進した。

それは基本的にうまくいった。この40年間、アメリカ経済は好調だった。しかし、文化が変化した。経済的繁栄の中で、われわれは経済以外の優先すべき目標を、すべて捨ててしまったのだ。例えば、企業が顕著な例である。かつて企業は多くの利益関係者を束ねていた。今では、株主価値の最大化だけである。投資家の要求に応じるため、労働者も地域社会も、コスト削減の犠牲にする。

右派の自由市場原理主義と左派の道徳的な相対主義は、最悪の組み合わせであった。法的に許されるなら、何であれ金儲けが正しい。ヘッジファンドのマネージャーたちが数十億ドルの給与をもらうのも、Appleが知的財産をアイルランドの子会社に移転し、アメリカで支払う税金を回避するのも。2012年だけで、その額は90億ドルだ。

ポピュリストたちは永久に2008年の金融危機の世界に住んでいる。彼らの核心が証明された事件だ。しかし、資本主義システムはその後、1900万人の雇用を生み出し、賃金も今や上昇している。資本主義を道徳的に規範に埋め込み、良い社会の一部にする必要がある。良い経済の運営を問うのではなく、もっと、良い社会とは何か、良い人間であるとは何か、問うべきだ。

FT January 14, 2019

Prosperity, by Colin Mayer

Review by Andrew Hill

GEJack Welchが広めた、株主価値の最大化だけを追求することが企業の目的だ、という過度の単純な概念が支配的になった。しかし、それが最も支持されていたアメリカやイギリスでも、反対する考えが現れている。グローバルな課税回避や企業重役たちの高級は、企業組織に対する信頼を大きく損なってしまった。Colin Mayerは、企業や資本主義の価値を固く信じる研究者だが、その本来の意味を回復させることを唱えている。

PS Jan 14, 2019

Let’s Get Real About Purpose

MARIANA MAZZUCATO


 カール・シュミット

FT January 11, 2019

Liberalism’s most brilliant enemy is back in vogue

Gideon Rachman

ナチズムの敗北前、「第3帝国」最高の法学者という名声を得ていたことが、シュミットCarl Schmittの考えを人々から遠ざけた。今、世界各地でシュミットの理論が注目されている。ポピュリズムの研究者Jan-Werner Müllerは、シュミットを「20世紀の最も明晰な、リベラリズムの反対派」と呼んだ。

シュミットは議会制民主主義に反対し、権威主義的指導者が法律を決める権力を支持した。彼は、1933年、国会放火事件後、ヒトラーが民主主義を停止し、非常大権を得ることを法的に支持する意見を書いた。「長いナイフの夜」事件でナチ党員が敵を殺害したとき、シュミットはその殺人を正当化する悪名高いエッセーを書いた。反ユダヤ主義者として、ドイツの学会からユダヤ人を追放し、ドイツの法律からユダヤ的な要素を取り除く会議を開催した。

それにもかかわらず、現代の反リベラル派は、シュミットの著作を称賛する。彼は権力の分割や人権思想を軽蔑した。政治の基本は、「友」と「敵」とを区別することだ。リベラル派の人類愛など偽善である、と考えた。

シュミットによれば、法の支配は非常事態宣言によって停止される。「主権とは、非常事態に決断する者のことだ。」 ドイツのAfDは、メルケルが国際法を停止して難民流入を阻止すべきだった、と主張する。トルコ、エジプト、中国でも、政府が法的権利を否定し、その破壊的な結果が示されている。そうした国で、シュミットは権威主義思想家によって注目されている。

ロシアのナショナリスト思想家Alexander Duginは、シュミットの「大空間」論を称賛する。それは「弾力的な超国家によって統治されるべき、巨大な地政学的塊」である。皮肉なことに、それはナチスがロシア侵攻を正当化した「生存権」論である。

こうしたシュミットの思想を、その行動を切り離して、リベラリズムの「優れた批判家」と評価するのは、リベラルな姿勢が行き過ぎた寛容さになっている。


 国際政治の混乱

FT January 11, 2019

Trump, May And the art of political brinkmanship

Tim Harford

危機を煽って破滅を準備し、交渉を有利にするBrinkmanshipは、政治の旧い手法である。1956年、アメリカのダレスJohn Foster Dulles国務長官は「核兵器」で北ベトナムを脅した。今、イギリスではメイ首相が、保守党内部のBrexit強硬派を「Brexit中止」で脅し、EUBrexit穏健派を「合意なしBrexit」で脅している。アメリカではトランプ大統領が、壁の建設費を含む予算案を認めない民主党主導の議会を「連邦政府閉鎖」で脅している。

この戦術が成功する条件は、破局が来ることを相手が信用することである。そのために示す選択肢は3つある。1.破滅に向かう自動装置。2.完全な「狂人」。3.「偶発事故」のリスク。

PS Jan 14, 2019

The Transatlantic Leadership Void

ANA PALACIO

大西洋の安全保障は、船長の居ない幽霊船のようである。何かに衝突するか、燃料が尽きて墜落するまで、自動操縦で飛んでいる。

かつて、キッシンジャー国務長官は述べた。「ヨーロッパに電話したいとき、私は誰にかければよいのか?」 同じ問いを、今は大西洋の反対側が出すだろう。

NYT Jan. 17, 2019

The Rudderless West

By Bret Stephens

西側は国際秩序の舵を失った。

19908月、ジョージ・HW・ブッシュはアスペンでマーガレット・サッチャーと会った。それはサダム・フセインのクウェート侵攻直後であった。2人はイラクのあからさまな攻撃を許さないと決意し、許さなかった。これが西側の行動の仕方と考えられたものであった。

今や、アメリカもイギリスも自身の国を統治することができない。世界秩序の形など、考える余裕はない。テリーザ・メイは、サッチャーと、その性別と所属する政党以外、何も似ていない。ドナルド・トランプは、ブッシュと、その性別と所属する政党以外、何も似ていない。政府を破壊し、閣僚たちを頻繁に入れ替え、国民を激しく分断し、信頼されない、馬鹿にされた超大国になった。

政治を動かす基本要素は、部族主義、ポピュリズム、権威主義、ソーシャルメディアの下水管だ。


 独裁者は非常事態を好む

SPIEGEL ONLINE 01/11/2019

German Foreign Minister Maas

'Trump Could Hardly Have Chosen a Worse Moment'

Interview Conducted By Christiane Hoffmann and Christoph Schult

NYT Jan. 12, 2019

Trump’s Five Craziest Arguments About the Shutdown

By Nicholas Kristof

NYT Jan. 12, 2019

Why Autocrats Love Emergencies

By Steven Levitsky and Daniel Ziblatt

独裁者たち、専制的指導者たちは、1930年代のGetúlio Vargasから、1970年代のIndira Gandhi and Ferdinand Marcos、現在のVladimir Putin and Recep Tayyip Erdoganまで、非常事態を好む。本当のものであれ、工作されたものであれ。非常事態を利用して拡大した権力を得るからだ。ドナルド・トランプが権力の乱用を危機によって正当化するという懸念がある。

家族ビジネスや軍隊は、命令すればよいかもしれない。しかし、民主主義には交渉と譲歩が求められる。後退は避けられず、勝利は常に一部でしかない。大統領たちは、その主要な政策目標を諦めた。

専制的な考え方の指導者は、反対に、民主的な政治に耐え難い不満を感じる。ギブ・アンド・テイクの技巧や感覚を欠いている。彼らは批判されることや妥協を極端に嫌う。立法過程のわずらわしさに我慢ならない。独裁者になる指導者は、大統領制の民主主義にあるチェック・アンド・バンスを拘束衣と感じる。こうした憲法の制約を回避することが、危機によって可能になる。

国家の非常事態では、第1に、支持率が高まる。第2に、反対派が沈黙する。第3に、正常な憲法による制約が緩和される。

それは民主的な思考の大統領、南北戦争のリンカーンや、第2次世界大戦のルーズベルトでもそうだった。しかし、独裁思考の指導者においては、致命的な変化となる。1933年、国会放火事件で独裁者となったヒトラーがそうだ。ほかにも、毛沢東主義者の反乱と経済危機に直面した、1992年、ペルーのフジモリ。一連の爆破テロについて、チェチェンのテロリストの犯行と疑われたが、反対派を弾圧して権力基盤を固めた、1999年、ロシアのプーチン。同じく、2015年、連続したテロ事件と、2016年の軍事クーデタ失敗を利用して権力を強化した、トルコのエルドアン。

クリントンやH.W.ブッシュと違って、トランプは国境の壁を建設する計画を諦めない。議会が必要な予算を認めなかったため、彼は政府を強制的に閉鎖した。それでも壁が建設できないとき、彼は既存の議会を迂回して、まだそれを宣言していないが、非常事態を捏造するだろう。これが、反対する議会に対する、独裁者のやり方だ。トランプは、ますます、ロナルド・レーガンではなく、フェルディナンド・マルコスに近づいている。

そして恐ろしい問題が提起される。合法的な手続きを無視して非常事態を捏造するような大統領が、本当の安全保障上の危機に直面した場合、どのような行動を取るのか?

NYT Jan. 13, 2019

What’s the Best Way to Dump Trump?

By Michael Tomasky

FT January 16, 2019

Time for America to embrace the class struggle

Janan Ganesh

アイデンティと階級のどちらが政治を動かすべきか?

FP JANUARY 16, 2019

Trump Can’t Do That. Can He?

BY ROBBIE GRAMER

FT January 17, 2019

The unpalatable truth about Trump’s embrace of the Russian bear

Edward Luce

PS Jan 17, 2019

The Trump Administration’s Farewell to Aims

CARL BILDT


 無邪気で、知的な限界を持った、ペテン師たち

The Guardian, Fri 11 Jan 2019

Brexit disaster looms. Can MPs unite quickly enough to save us?

Jonathan Freedland

The Guardian, Fri 11 Jan 2019

Labour must back a people’s vote before the clock runs out

Timothy Garton Ash

これから数週間のうちに、イギリスは厳しい2者択一を迎える。それはテリーザ・メイの、私の合意を取るか、合意なしか、ではない。ジェレミー・コービンの説得力を欠いた選択、彼女の悪いBrexitか、彼のずっと良いBrexitか、でもない。真の選択肢は、目を閉じたままのBrexitか、民主的な中断か、である。

「中断timeout」で私が意味するのは、第2の国民投票に至るまでじっくり民主的に議論する時間のことだ。第2の国民投票において我々は決定する。現在知っていることすべてに基づき、2016年のBrexitを支持した国民投票から生じた深刻な諸問題にどのように対処するべきか、われわれはどのような国になりたいのか、EUの内か外か、そのためにはどちらが良いのか? そのためになら、われわれの仲間として、EU50条の離脱期限を延長し、必要な時間をくれるだろう。

他のすべてのこと、すなわち、メイの合意案、合意なし離脱、関税同盟、ノルウェー・プラス、カナダ・プラス、共通市場2.0、あなたの好きな呼び名で良いが、すべては目を閉じたままのBrexitの亜種である。こうした様々なBrexitでは、われわれがEUを離脱した後、Brexitの本当の意味が、長い交渉の中で決まることになる。そして、外に出た以上、あなたは外である。交渉の立場は、現在よりも、もっとずっと弱いだろう。

そのような条件で労働党が権力を握っても、表通りをトーリーの狩猟が走った後で、馬の糞を拾い集める清掃人でしかないだろう。議会の周囲には妄想が漂う。もう「Brexitをしてしまえ」、そのあと、さっさとわれわれの問題に取り組んでくれ。住宅とか、医療とか、教育とか。しかし、Brexit10年かかっても終わらない。もっともソフトなBrexitでさえ、その経済コストは公共サービスのわずかな財源をさらに奪う。最も打撃を受けるのは、労働者階級なのだ。

50条の離脱期限をわれわれだけで延期できる、というのも妄想だ。そうではない。EU加盟諸国、27か国の同意が必要である。彼らは、交渉をするためだけに、期限を延長しない、と繰り返し表明してきた。ロンドンが、EU残留を選択肢として含む、国民投票か総選挙を決めた場合は、その時間を待つだろう。

労働党のコービンは、なお、労働党を支持すれば、もっと良いBrexit案を交渉できる、という。しかし、有権者の多数は、人種差別的なエリートによって貧困状態に苦しんでいるのだ。

メイの合意案は否決され、その後、労働党の提出する不信任案も否決されるだろう。メイがブリュッセルから得るのはバックストップの確認だけだろう。労働党は、保守党政権がEUよりも優れた労働者の権利の保護者である、とは信じない。ここがコービンの正念場だ。もし彼が左派のBrexit推進という本能を克服できたら、議会の超党派を率いてBrexit問題を国民に問い直せるだろう。もっと十分な準備をした国民投票である。政府が議会の意思を尊重するか、そうでなければ、議会がこの過程を指導する。1つの有益な副産物として、政権の過大な権限を抑え、議会と行政府とのより現代的、民主的なバランスを実現するだろう。

2の国民投票は、最初の結果を否定することではない。それは、ブレア派や大都市、リベラル・エリートが、だまされた国民に正しい答えを出すまで再投票させる、という意味ではない。これは、おそらく市民集会を含む、もっとはるかに大きな過程の一部である。Brexitを支持した投票に向けた、積極的な民主的反応である。

この過程では、われわれとEUの関係に関する問題と同じくらい、なぜBrexitが支持されたか、Brexit投票の大義を理解することが問題になる。新しい「人民の投票」は、イギリスの未来を問うものだ。労働党は、真の2者択一が、目を閉じたままのBrexitか、民主的な中断か、であることを理解し、後者がこの国にとって、またEU全体にとって、最善のものだと支持することだ。それはまた、労働党員や支持者たちに歓迎され、保守党を分裂させるだろう。

SPIEGEL ONLINE 01/11/2019

Former Brexit Minister David Davis

'We Should Not Be Afraid of No Deal'

Interview Conducted By Jörg Schindler

VOX 11 January 2019

Breaking the Brexit impasse: Achieving a fair, legitimate and democratic outcome

Toke Aidt, Jagjit Chadha, Hamid Sabourian

The Guardian, Sun 13 Jan 2019

Out of the Brexit nightmare must emerge a more robust democracy

Andrew Rawnsley

FT January 13, 2019

The EU should kill off the UK’s chance of delaying Brexit

Wolfgang Münchau

FT January 13, 2019

Brexit brinkmanship: playing chicken over Theresa May’s deal

George Parker and James Blitz in London

The Guardian, Mon 14 Jan 2019

This is only the end of the beginning of our Brexit civil war

Polly Toynbee

だれも、もうすぐ終わる、とは思わない。これは単なる終わりの始まりである。Brexit内戦は1世代続くだろう。終わりは見えず、和解の見通しはなく、解決策も持たずに、無数の投票が行われる。奇蹟的な「結末」を示す、という者もいるが、そんな話を聞くことはない。奇蹟は起きない。詐欺師の売りつける政治的「修復策」を無視するのが良い。

David Davis “no deal” では、「われわれは390億ポンドの債務を持ったまま、好きなことに支出できる」という。またNo-dealer Dominic Raabは、UKはブリュッセルの嫌がらせに屈しない、という。そしてWTOルールを主張するが、何の前進にもならない。彼らはEUの失敗を責めるだけだ。買える物が何もないソ連時代に、老婦人たちがバッグをもって行列に並ぶようなものだ。

ノルウェー・オプションはどうか? 文明的な北欧諸国の仲間に入るのは魅力的だ。単一市場、自由移動、そして、恐らくは関税同盟も。残留派たちは喜ぶ。EEAEftaというのは、将来の静かな復帰の可能性も含めて、EUの周縁に位置する快適さがある。しかし、EUはノルウェーとの合意を他のケースに当てはめない。リヒテンシュタインも、アイスランドも、小国だ。ノルウェーの大使が言ったことは、Brexit推進派と同じだった。EUの司法システムや規制に従いながら、決定には参加できない。なぜイギリスは財政負担を取り戻せるのに、離脱するのか?

メイの合意案は可能な妥協策である。しかし、それは目を閉じたまま離脱することだ。現状よりも大幅に悪くなる。EUという発言力を失い、単に貧しくなるだけでなく、より弱くなる。イギリス単独で、気候変動、グローバル企業、中国、プーチン、トランプに対処する必要がある。Brexit推進派は、シンガポール的な未来を唱える。税金は少なく、競争は盛んで、関税も政府介入もない。しかし彼らが尊敬するエコノミストは正直だ。完全な市場自由化は、イギリスの農業も製造業も破壊するだろう。

EUは、この制御不能な国との交渉を始めるより、まず統一した要求を待つだろう。議会が承認したものだ。ドーバー海峡の向こうからBrexit推進派はEUを侮辱し続けている。Brexitの本当の意味や、「人民の意志」を裏切ったという非難を続けている。メイが「われわれの貴重な同盟」と呼んだものが解体し、スコットランドや、おそらく北アイルランドが、政治的な地獄となったUKより、相対的に平和で繁栄したEUに残ることを好む。

人民に、何を望むのか、きくべきだろう。確かに、国民投票はもう1つの地獄だ。投票しても終わらない。たとえ残留派が勝っても、騒動は続く。Brexit強硬派は保守党を分裂させ、騒乱を企てる。Nigel Farage Brexitのために武装をすることを要求し、Boris Johnson は「影の国家」がBrexitを阻止したという陰謀論を振りまき、Chris Graylingno-Brexitは騒乱を意味する、という。どのようなBrexitも彼らにとって十分ではない。

人民の決定に委ねよう。議会が騒乱を鎮められないのだから。しかし、残念ながら、ヨーロッパを叩く論争をイギリス人はやめない。

FT January 14, 2019

Brexiters’ delusions on trade die hard

Gideon Rachman

EU離脱によってイギリスは貿易交渉の自由を得る、と離脱派は主張してきた。しかし、それはむつかしい。トランプがBrexitを支持するのは確かだが、彼はこれまでになかった保護主義的な大統領である。イスラム教徒の入国を拒み、メキシコ国境に壁を築くと約束した。カナダを見てもわかるように、イギリスとの歴史的な友好関係を重視することはないだろう。アメリカとの合意を得るには、さまざまなアメリカの利益と妥協を強いられる。

キャメロンは中国との関係を称賛したが、今や安全保障の懸念と衝突している。メイの「グローバル・ブリテン」構想は、経済と安全保障との間で分裂しつつある。インドとの関係はどうか。インドにも多くの分野で特殊な要求がある。例えば、UKの労働ビザ規制を緩和する、という要求だ。ある政府職員は、インドにとってチャーチルはヒトラーと同じくらい悪い、と語った。イギリス統治下の1943-44年、ベンガル飢饉で数百万人が死亡したからだ。

それでもBrexit推進派は虹の向こうに宝物が埋まっていると信じている。停滞するヨーロッパより、もっとダイナミックな世界とつながることが望ましい、と。しかし、EUが強大な統一市場を形成したから、日本、韓国、カナダと取引できた。もしBrexit推進派が新しい市場を開放したいなら、EUにとどまってそうするべきだ。

The Guardian, Tue 15 Jan 2019

After this staggering defeat for May, our country is left lost and adrift

Jonathan Freedland

FT January 15, 2019

May’s best course after a Brexit thumping

Robert Shrimsley

FP JANUARY 15, 2019

A Very British Thrashing

BY OWEN MATTHEWS

FP JANUARY 15, 2019

The Beginning of the End of Britain’s Brexit Fantasy

BY MICHAEL HIRSH, KEITH JOHNSON

FT January 16, 2019

Theresa May’s Brexit plan defeated by 230 votes

George Parker and Laura Hughes in London and Michael Peel in Brussels

FT January 16, 2019

Theresa May’s speech could not persuade the unpersuadable

Sam Leith

PS Jan 16, 2019

Run Down the Brexit Clock

YANIS VAROUFAKIS

NYT Jan. 16, 2019

Britain Races Toward a Cliff. Time to Slow Down.

By The Editorial Board

NYT Jan. 16, 2019

What to Expect When You’re Expecting Brexit

By Paul Krugman

Brexitはどうなるのか? 神のみぞ知る ・・・神様でさえも確かなことは言えないだろう。

問題は、合理的なアクターが少ないことだ。Brexit推進派の幻想については多くのことが書かれてきた。しかし、また、ユーロ官僚たちの幻想にもっと注目するべきだ。彼らは、イギリスをあたかもギリシャのように扱った。屈服するようにいじめたのだ。2016年に、EUがわずかなそぶりを示すだけでも、残留派が勝っただろう。わずかな柔軟さを示すだけでも、もっとソフトな合意案が可決できただろう。しかし、彼らが示したのは傲慢さだった。

今や、EU官僚たちはメイの合意案があまりに大敗したことに衝撃を受けたようだ。無秩序な離脱が壊れやすいユーロ圏にも大きなダメージになる、と理解しただろうか? それはないだろう。

しかし、彼らが数か月前に考えていた短期リスクより、現在、もっと大きなリスクが現れた。明らかに、EU-UK貿易はEU経済にとって、UK経済ほど大きなインパクトを持たない。しかし、ハードBrexitが起きた場合、それによる減速は2011-2012年のユーロ危機以来、最悪のものだ。当時、「何でもする」というドラギの金融的介入が危機を終息させた。今、すでにマイナス金利のECBに、同じことを期待できない。

それは容易に回避できることだ。ただ政治的理由がそれを阻んでいる。

FP JANUARY 16, 2019

Theresa May Stays, But Only in Name

BY OWEN MATTHEWS

The Guardian, Thu 17 Jan 2019

On Saturday the UK turns remain. Parliament must force a second referendum

Polly Toynbee

FT January 17, 2019

Theresa May must put country before party to fix Brexit

FT January 17, 2019

Conservative party may now be heading for a major split

Sebastian Payne

メイ首相が修正案を出すためにソフトBrexitを進めれば、保守党内の強硬派は従わず、イギリス政治の右派が再編される可能性が高まっている。

SPIEGEL ONLINE 01/17/2019

May's Brexit Debacle

Britain Finally Confronts Reality

A Commentary By Markus Becker

NYT Jan. 17, 2019

The Malign Incompetence of the British Ruling Class

By Pankaj Mishra

1947年、インド帝国から、混乱の中でイギリス人は離脱した。多くの者と同じく、小説家Paul Scottはショックを受けた。1世紀以上もインドを支配したイギリス人が、あまりにも急いで、無慈悲な形で撤退したことは、分断と無政府状態に責任がある、と主張した。

イギリスのEU離脱は、この国の支配者たちが道徳的な基準を放棄する、もう1つの例である。Brexit推進派は、帝国主義時代の強さや自給体制の幻想を振りまいた。そして繰り返し、自分たちの傲慢、愚昧、無能な姿を示した。

イギリスエリートたちのエゴイスティックで破壊的な行動に、現代の多くの人が驚いている。しかし、70年前に、インドから大混乱の脱出劇を示したとき、それはすでに明らかだった。

最後のインド総督、マウントバッテンLouis Mountbattenは、海軍では“Master of Disaster”と呼んで侮辱していたが、アジア・アフリカの帝国領土の支配者を供給する小さな上・中流階級に属していた。右派の歴史家Andrew Robertsは、彼を「無邪気で、知的な限界を持った、ペテン師」と呼んだ。イギリスの政治的惨事は、その私立教育システム、パブリック・スクールによって利益を受けた男たちによるものだ。

David Cameronは保守党内の強硬派を孤立させるために、この国の将来を国民投票の賭けに出した。機会主義者のBoris Johnsonは、首相の座を得るためにBrexitのバンドワゴンに飛び乗り、Winston Churchillを気取っていた。シルクハットの好きな、レトロのJacob Rees-Moggは、自分の資金管理会社がEUに事務所を移しているのに、熱烈なEU攻撃をおこなった。これがイギリスの「無邪気で、知的な限界を持った、ペテン師」である政治階級だ。

イギリスエリートの機関紙であるThe Economistでさえ、「専門知識よりも威嚇」によって政界を生きる「オックスフォードのお仲間」を嘆いた。Brexitは、イギリス的「仲間政治」が最終的にたどり着いたワーテルローである、と。

しかし、イギリスの歴史を論じる彼らには、大英帝国の破滅的離脱戦略である分離が、自分たちの国にやってきた、というのがより正しいだろう。それは、グロテスクなほどに皮肉な形で、1921年の分離、最初に植民地化したアイルランドに引いた国境だ。それこそが帝国の夢を追うBrexit推進派の最大の躓きの石となっている。さらにイギリスは、自身の分離に直面する。もしイギリスの求めるBrexitが実現すれば、スコットランドのナショナリストたちは再び独立を要求する。

Brexit推進派の悪意ある無能さは、1947年、イギリスがインドを離脱する間に正確に示されたものだ。衝撃的なほど、彼らは準備不足だった。イギリス政府は19486月にインドは独立する、と公表していたが、19476月の最初の週に、秩序、マウントバッテンが、1947815日に限力の意向を行う、と主張した。7月に、訪れたこともない国の新しい国境線を引くため、法律家Cyril Radcliffeが指名された。彼の分離計画は、実質的に、数百万人への死刑宣告であったが、最高の叙勲を彼にもたらした。

Radcliffeの国境線がもたらした100万人におよぶ死者、誘拐され、強姦された、数え切れない多くの女性たち、世界最大の難民の移動は、Brexitのいかなる世紀末的シナリオをも超える、広大な大虐殺である。多くの帝国の犯罪は、最初、その地政学的なパワーに依拠し、その後は、文化的な威信に依拠して行われた。キプロスからマレーシア、パレスチナから南アフリカ、これらの多くの歴史的実例が、イギリス人エリートの好む、勇敢で、賢明で、慈悲深いイメージに反している。

無能なイギリスのエリートたちに、アジア・アフリカの数百・数千万人が苦しんだ。その分離がイギリス本国にやってきた。

FP JANUARY 17, 2019

The Maybot and the Marxist

BY GARVAN WALSHE


 EU政治の混乱

PS Jan 11, 2019

Will the Rule of Law Hold?

LESZEK BALCEROWICZ

The Guardian, Sun 13 Jan 2019

Angst, grief, pain: Europe is in turmoil as extremists form new alliances

Simon Tisdall

マクロンとメルケルは、トランプや東欧のナショナリズムに反対し、リベラルな国際秩序が今も生きていることを示そうとした。しかし、これはまた、欧州における独仏枢軸の復活を意味する。

イタリアのSalviniは、ただちに、反移民、反イスラムの、EU懐疑主義者、ハンガリーのViktor Orbánに賛同する。欧州議会選挙は、われわれの陣営と彼らの陣営の闘いになるだろう。ポピュリズムがピークを過ぎた、というのは、幻想だ。移民は今も、トロイの木馬である。アイデンティ、有限な資源、コミュニティ、文化、主権が議論される。エスタブリシュメント、政府は問題を解決できなかった。

各国の右派ポピュリストたちが参加するうねりとなって、Salvini“new blood, new strength, new energy”を求めている。

FT January 14, 2019

Emmanuel Macron’s public consultation is a high-risk strategy

Ben Hall

PS Jan 14, 2019

The World Needs Europe

JEAN-CLAUDE JUNCKER

PS Jan 15, 2019

Rhymes from Central Europe

ROBERT SKIDELSKY

CEU(the Central European University)は、ブダペストからウィーンに教育施設を移転する、と発表した。ハンガリーのオルバンViktor Orbán首相は、事実上、CEUを閉鎖したのだ。それはオルバンの好みの標的、ソロスGeorge Sorosが創設した大学である。

オルバンは、ハンガリー生まれでナチスの占領とホロコーストを生き延びたソロスを、「非合法な移民を使ってヨーロッパ文明を破壊しようとしている」と攻撃する。しばしば引用されるように、作家Mark Twainは「歴史は繰り返さないが、しばしば、韻を踏む」と述べた。悲しいことに、われわれは歴史を知らない世代だ。ハンガリーだけでなく、近年の混乱は数十年前の思想に由来し、歴史の韻を踏んでいる。Norman Stoneの注目すべき新著Hungary: A Short Historyは、歴史を知らないことへの警告となっている。

それは、西側に決して「キャッチ・アップ」したことのない国の、それゆえ、ナショナリストを乗り越えた冷静な時代を決して「受け入れた」ことのない国の、歴史である。工業化による近代化の影響は、常に、国境、宗教、言語、ナショナリティによって圧倒された。

ハンガリーは、国家を得る前から民族性を意識していた。その階級構造は、東欧において典型的なものだが、ドイツ人の地主、ユダヤ人の商人と金融階級、そして「その土地に生まれた」農民たちであった。ハンガリーの言語は19世紀にできたが、それ以前は農民と聖職者が話した。ハンガリーの国民性は登場したのが遅く、また、挫折を繰り返したため、ヨーロッパのアイデンティと和解しなかった。また、ドイツのように、自分たちがもたらした破滅によるナショナリズムの幻滅を知らない。

16世紀と17世紀のカソリックの王国はイスラムとプロテスタンティズムによって領土を奪われ、消滅した。オスマントルコ、オーストリー=ハンガリー二重王国、ウッドロー・ウィルソンの「民族自決」原則、しかし、多くのハンガリー人がルーマニア、チェコスロバキア、ユーゴスラビアに残されたままだった。

ハンガリーは1920-1944年に独裁者の支配を経験し、ヒトラーに従った。1945年以降は、名目的な独立を得たが、ソ連に隷属する「人民民主主義」であった。1989年、主権を回復し、2004年にはEUに加盟したのだ。こうした状況の変化にもかかわらず、それを打生き延びるユダヤ人がいたことは、反ユダヤ主義の陰謀論につながった。

ヨーロッパ各地に起きた、正確には再現した「非リベラルの民主制」は、進歩の物語を否定する。科学の進歩と違って、古代の確信や偏見は甦り、容易にリベラルな信念を圧倒する。異なる国家を理解するには、特に、その歴史を知ることが重要である。

Brexitもそうだ。

The Guardian, Thu 17 Jan 2019

Only a rupture with the EU will alter the failed status quo

Larry Elliott

PS Jan 17, 2019

A Murder in Gdańsk

SŁAWOMIR SIERAKOWSKI

NYT Jan. 17, 2019

Germany’s China Problem

By Anna Sauerbrey

貿易相手としての中国の重要性と、安全保障におけるアメリカのパートナシップを、ドイツは両方とも維持してきた。それが難しくなっている。ドイツの選択は、EUを強化することだ。しかし、西欧、中欧、東欧をまとめることは、ドイツ外交にとって難問だ。


(後半へ続く)