IPEの果樹園2019
今週のReview
1/14-19
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富裕層に対する高い税率 ・・・Brexitの合意案 ・・・中国とアップルの転落 ・・・民主的な選挙による改革 ・・・企業の共同経営体制 ・・・アメリカ製造業の未来 ・・・ポピュリズムは終わらない ・・・ユーロ生誕20周年 ・・・新しい米中冷戦 ・・・2019年が静かな年であるために
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign
Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project
Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 富裕層に対する高い税率
NYT Jan. 5, 2019
The Economics of Soaking the Rich
By
Paul Krugman
Alexandria
Ocasio-Cortez(AOC)が議会でどれぐらいうまくやって行けるか、私にはわからない。しかし、彼女が選ばれたことだけでも重要だ。若い、はっきりした、テレビ向きの非白人女性が入るだけでも、大きな関心が集まる。保守派は彼女に激怒した。
ある者は、AOCの文化を指摘する。大学でのダンス動画がヒステリックは反応を爆発させている。また、ある者は、AOCの知性を指摘する。右派は、彼女の「狂った」政策アイデアを非難するが、右派の正気の無さがよくわかる。
論争は、彼女が超富裕層に対する70-80%の課税を唱えていることをふくむ。これは明らかに狂っている。と彼らは言う。全くの愚か者しか、そんなことは言わない。・・・そうなのか? ノーベル経済学賞を受賞したPeter Diamondは、財政論の世界的な権威だが。また、第2次世界大戦後の35年間に、アメリカはそんな政策を採用し、歴史的に見て高成長を実現したのだが。
Diamondは、不平等の指導的な研究者であるEmmanuel Saezとの共同研究で、最適な最高税率を73%であると推定した。もっと高い税率として、オバマ政権の大統領経済諮問委員会委員長で、最高水準のマクロ経済学者であるChristina Romerは、それを80%以上と推定した。
その数字はどうやって導かれたのか? Diamond-Saezの分析は、2つの命題、限界効用逓減と、競争的市場、から導かれる。年収2万ドルの家族は、1000ドルの追加所得を得た場合、大きく改善されるだろう。他方、100万ドルの所得がある男は、追加の1000ドルを得ても、ほとんど気にしない。つまり、経済政策を考えるとき、超富裕層への影響はあまり考えなくてもよいのだ。
では、なぜ100%にしないのか? ・・・それは彼らの誘因を奪うことで、彼らの行動を変え、経済全体が損なわれるからだ。税率を抑えるのは、彼らの利益のためではない。そして、ここに競争的市場が関係する。誰もが限界生産物を報酬として得るべきだ。1000ドルを稼いで、すべてが税金として取られるなら、富裕層は働かない。彼が追加の1000ドルのためにする仕事と、歳入を増やすことが比較される。ただし、現実の市場は競争的でなく、独占やゆがみを生じているから、富裕層が独占によるレント(不労所得)を得る。競争市場の前提より、もっと高い税率が望ましい。
周知のように、共和党は富裕層に対する低税率をいつでも主張し、最高税率を下げることが経済にとって大きなプラス効果をもたらす、と考えている。こうした主張はどんな経済調査に基づくのか? ・・・そんなものはない。共和党の税制案を支持するまともな研究など存在しない。アメリカの所得に対する最高税率と経済成長率をグラフにして観れば、富裕層への低税率が高い成長率を意味しないことは明白だ。
共和党の財源案はナンセンスであり、彼らが好む「エコノミストたち」は明らかな詐欺師であり、数字をごまかすこともできない。AOCは優れたエコノミストたちが主張していることを述べているのであり、おそらく共和党のだれよりも経済学を知っている。
PS Jan 9, 2019
Too Much Gratitude?
PETER
SINGER
Michael Bloombergは、母校Johns
Hopkins大学への奨学金として、かつてない18億ドルの寄付を行った。
しかし、その学費は高すぎる。そして、ニュージョージ―の公立大学に寄付したHank Rowan、中東欧の大学に寄付したGeorge Soros、アフリカの初等教育に寄付すること、マラリアの撲滅基金に寄付するほうがよい。
● Brexitの合意案
The Guardian, Sun 6 Jan 2019
‘Managed no deal’? That’s just more
Brexit snake oil
Anand
Menon and Jonathan Portes
合意なしの離脱は、管理された「合意なしの離脱」である、とBrexit推進派は主張している。これもまた詐欺の繰り返しである。
The Guardian, Tue 8 Jan 2019
The Guardian view on Brexit: the
government has failed – it’s time to go back to the people
Editorial
FT January 8, 2019
Norway-style Brexit would allow UK
to shape rules on finance
Nicky
Morgan
The Guardian, Wed 9 Jan 2019
Brexit proved our economy is broken,
but our leaders still have no clue how to fix it
Aditya
Chakrabortty
GDPの成長に執着するのではなく、人々が経済に何を求めているのか、直接、尋ねてみるべきだ。地方と都市の間で、またロンドン内部でも、富裕層と庶民の間で、成長は非常に不平等に分配されている。
この数十年間に行われた、民営化、労働組合潰し、住宅市場の資産膨張、福祉国家の解体、生まれた土地による機械の不平等を固定してしまう、再分配の廃止。われわれはこうしてここに至った。
調査によれば、人々が求めるのは、食料、水、緊急医療、国民皆保険、快適な住宅、まともな賃金を得られる職場、無償の義務教育制度。逆に、安価な航空券や高速鉄道、ヒースロー空港の拡張、など望まない。
これを称して、「この国の多くの人々は、反資本主義的だ」というのは、この調査に関わったBrexit推進派の本音である。
The Guardian, Thu 10 Jan 2019
Trump and the Brexiters must own the
mess they lied us into
Gary
Younge
3年前に、私は12年間暮らしたアメリカからイギリスにもどった。そしてすぐにガスのメーターを盗まれた。新しいメーターが届いたとき、私はそれに「盗むな」と書いた。そして私は思い出した。シカゴで、私の暮らした通りに、the Boys and Girls club(児童・生徒の育成団体)があった。その窓に“Stop killing people.”と書いたポスターがあった。言うまでもないことを、注意することがある。
イギリス議会は、メイの合意案の採決を延期し、新しい条件も得られないし、採決して承認される見込みもない。しかし議会は、もし来週の火曜日に合意案が否決されたら、3日以内に首相に修正案を求める、というのだ。時間の無駄である。何も変わらないのだから。
その6時間後に、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、民主党指導者たちとの話し合いから抜けた。彼らが国境の壁を建設する予算を拒否したので、連邦政府の一部閉鎖を続ける決意を示したのだ。閉鎖は3週目に入る。世論調査で、ほとんどのアメリカ人は壁を支持していない。政府閉鎖についてトランプを責めている。国政とリアリティー・ショーの区別がつかない大統領を民主党は非難した。
新しい年が大西洋の政治的マヒ状態で始まった。Brexitは蒸発して、Brexitでなくなった。何であれ合意するとしたら、まったくBrexitではない。アメリカでは、壁の建設費をメキシコ人が払うことはないし、アメリカ人もそうだ。裸の王様を見ても、もはやニュースにならない。
反対する人々は、Brexitでもトランプでも、長い間に形成された不満や偏見を、火を吐くような言葉、悪質な嘘で刺激して、勢いを増し、変化ではなく騒音をもたらした。彼らがこの事態を生み出したのではなく、継承し、利用したのだ。アメリカの共和党も、イギリスの保守党も、すでにジェスチャー・ポリティクスの中毒だった。
両者とも、議論にではなく、僅差で投票に勝った。その勝利はすべての予想に反し、彼ら自身も予想していなかった。グローバルには、ドイツからブラジルまで、右派ポピュリストの台頭という文脈で理解された。またローカルには、金融危機後の政治や選挙に関する組み換えとしてではなく、イデオロギーの攻撃として誤解された。しかし、ボリス・ジョンソンはマーガレット・サッチャーではないし、スティーブ・バノンはミルトン・フリードマンではない。大西洋の両岸で右派ポピュリズムが大いに議論されたが、彼らへの支持がいかに少なかったかを思い出すべきだ。
彼らの安易なレトリックは、堅い現実に跳ね返された。経済的にも、外交、政治、戦略においても、彼らは限界に達したように見える。彼らは同盟する者も、支持者も見つからないだろう。しかし、彼らはまだ、もっと大きなダメージをもたらすことができる。特に、トランプだ。彼が非常事態に「するぞ」という脅迫は、その絶望的な意味を示している。彼らには何を築く意図も持たず、破壊によって存在を示す。
重要な問題は、これら2つの失敗をどのように扱うかだ。彼らは裏切りだと言う。
左派は、こうした主張に単に反撃するのではなく、取り込むべきだ。トランプと
Brexitは、政治・経済危機の産物である。左派は、過去を嘆くより、未来に答えを出すべきだ。彼らの嘆きは現実に由来する。そのすべてが事実や、合理的で、まともな、一貫性ある主張ではないが、彼らが苦痛を感じていることは変わらない。われわれも、この混乱から逃れることはできない。
The Guardian, Thu 10 Jan 2019
It’s not perfect, but Norway plus
may be Labour’s least worst option
Owen
Jones
The Guardian, Thu 10 Jan 2019
The Guardian view on the Brexit
endgame: talking at, not with, each other
Editorial
FT January 10, 2019
Brexit is the certain route to a
divided Britain
Philip
Stephens
イギリスのEU加盟に関する2度目の国民投票に反対する、よく聞く議論は、まるで説得力がない。問題を蒸し返すことは「分断を強める」というのだ。合意しても、しなくても、障害物をドーバー海峡の向こうに投げ捨てるのが早ければ早いほど、国民の統一精神を早く取り戻せる、と。
現実には、2016年の決定を再考することが、Brexitは国民を分断した、という意味で、分断を強めるものだろう。国民投票は、民主主義の実践ではなく、粗雑な多数支配だ。リベラルな民主主義の制度と規範は、少数派の権利を守るために存在する。国民投票はそれらを尊重しない。
UKを構成する2つの国民nationsは、すなわち、イングランドとウェールズは、EU離脱の支持が多数を占めた。スコットランドと北アイルランドは、残留を望む者が多数であった。4つすべての国民に、人口論的なあらゆる基準で、意見は分裂していた。
イングランドの大都市、特にロンドンは、ヨーロッパを支持する者が多数派であった。しかし彼らは、地方の都市や町、田舎の離脱派に負けた。イギリスのいたるところで、若者たちは大きな差によってEU残留を支持した。離脱によって、若者たちはその将来を変えられた。大卒の豊かな人々は、残留を強く支持した。そのような優位を持たない人たちは離脱派が多かった。
2年半たつが、どちらかといえば、分断は深まっている。左派と右派という伝統的な分割線は、Brexit論争の分断によって打ち消された。世論調査は、残留派が勝つに足る人々が意見を変えたことを示している。
メイ首相の合意案を、来週、議会は採決する。EU離脱のコストと結果が現れるのには今後数年がかかるだろう。Brexitは、一回だけの事件ではなく、プロセスである。緊密に縫い合わされた糸をほどくのは容易でない。論争は10年にも及ぶだろう。
むしろ亀裂が広がるだろう。UKの統一が犠牲となる。スコットランドがUKに占める特別な地位は、EUにおけるイギリスの位置と並ぶ。Brexitは、この配置を根本から変えた。Brexit推進派が「グローバル・ブリテン」を提唱したことは、まったくナンセンスであり、ヨーロッパから離脱した小イングランド国家へ向かう。
アウトサイダーにドアを閉める以外、「主権を取り戻す」意味とは何か? ヨーロッパの単一市場・関税同盟からの離脱は、保護主義に向かう行動だ。
Brexitは、イングランド・ナショナリズムである。それはUKや「帝国」の「ブリティッシュネス」を拒む。スコットランドの住民投票が再び行われれば、彼らは必ずイングランドではなくヨーロッパを選ぶ。
メイは議会の多数を得るためにDUPの票を必要とした。しかし、アイルランド国境の問題は、DUPが首相のBrexit交渉を身代金として得たことを示したし、他方、DUPやUK統一派が、北アイルランドの世論とは食い違っていることを示した。人口変化はますますアイルランド統一に向かう。
メイのBrexit計画は崩壊するだろう。何が起こるか、まったくわからない。Brexit強硬派は、自分たちが議会主権の守護者であると自称する。しかし、彼らは下院議長の提案に反対する。彼らは、「人民」(すなわち、憤慨するナショナリストたち)が、2016年の国民投票の結果を翻そうとする議員たちを脅すために、街頭デモに出るだろう、と囁いている。最後は、イギリス議会が群衆の威嚇に従うのか?
議会制民主主義が、有権者は1度だけ「正しい」決断を行い、その考えを変えたりしない、というデマゴギーの犠牲になる。2度目の国民投票でBrexitが生じた亀裂のすべてを閉じると考えるのは愚かであるが、UK分裂を回避できるかもしれない。
FT January 10, 2019
How Remainers should handle . . . remaining
Simon
Kuper
● 中国とアップルの転落
FT January 5, 2019
Super-rich once again dig down into
the dark heart of London
Edwin
Heathcote
The Guardian, Sun 6 Jan 2019
Apple and China’s problems show that
today’s titans may not rule the world tomorrow
Will
Hutton
われわれの心象風景は過去に起きたことで形成される。
2つの趨勢がだれにも止められないように見える。1つは、中国の驚異的な成長だ。その話では、確実に、中国が世界第2の経済大国になる。中国の成長、そして、それが支えるアジアの成長に参加することが、Brexit推進派の主張な論点である。動脈硬化のヨーロッパを棄てて、アジアの繁栄を歓迎しよう。たとえ、それが良くても未熟な民主主義、最悪の場合は独裁政府であっても、気にしない。
第2に、アメリカ西海岸のハイテク大企業、アップルやアマゾンこそ、この宇宙の新しい驚きである。彼らは情報処理・データ主導の経済において成功し、価値を高め続けている。昨年、両社の市場価値は1兆ドルを超えた。構造転換をもたらす技術革新に最初に手を付ける者が21世紀の巨人となり、株式市場も、社会変化も主導する。
しかし先週、この2つの趨勢に重大な変化が生じた。アップルの収益予想が、この17年間で初めて、しかも大幅に、下回るだろうと公表した。CEOのTim Cookは、それを中国市場における販売不振で説明した。中国人の消費が減っている。アップルの株価は急落し、わずか数か月で4000億ドルの価値が失われた。
中国経済に長期的に続いてきた諸問題が、この大陸を包んでいる。わずか8年前の中国は、12%の成長を、金融危機と世界不況に対抗する政府の大規模な刺激策で、政府支援型経済として成功していた。しかし、それ以降、公式の成長率は低下し続けており、今では半分の6%、株価も昨年は25%下落した。中国の消費者は景気後退を予感しているのだ。
債務と輸出で成長を操作する国家管理型の経済も限界に達する。中国の債務水準は、信用できない政府統計によっても、GDPの3倍に近づいている。これは30年前に、日本で不況を引き起こした問題だ。もし中国が輸出で成長を維持しようとすれば、世界中の市場で他国の輸出を追い出すことになる。経済的にも、政治的にも、起こりそうにない事態だ。
中国共産党は正当性の危機を生じつつある。もし成長率が6%を下回れば(非公式な統計では2018年に2%を下回った)、雇用が創出されず、共産党の能力が疑われる。過去の指導者たちは、改革の加速とインフラ投資で、迅速に成長を回復できた。
こうした選択肢は習近平にない。インフラ投資のリターンは債務累積を正当化するほど高くない。経済自由化は共産党の支配と対立する。政府が支援するハイテク技術開発と、社会管理体制を強化している。権力を維持するために、台湾海峡で限定的な軍事衝突を起こすかもしれない。
アップルのiPhoneが驚異的に売れる状態も、共産党が管理する中国経済の高成長も、永久に続くことはない。
● 民主的な選挙による改革
FT January 7, 2019
Sudan’s protesters show an
unprecedented resolve
Yousra
Elbagir
PS Jan 7, 2019
How Democracy Is Won
ANWAR
IBRAHIM
マレーシアは、選挙によって腐敗した政権を倒し、改革を進める、新しい連立政権が成立した。
それ以前の政権は、民主的な選挙が、選挙区の「封建制」によって支えられていた。候補者の能力を関係なく、与党UNMO候補を支持することが選挙区の利益になる、とされたからだ。しかし、余りにも深刻な政治腐敗、1MDBに代表されるような、汚職によって、有権者は反政府の改革派に関心を示すようになった。
弾圧されていた改革派Parti Keadilan Rakyat (PKR)の幹部として、獄中にいた自分を、92歳のマハティールが訪問したとき、改革運動は限界を超えたのだ。
FT January 9, 2019
Congo’s voters have earned the
world’s support
David
Pilling
PS Jan 9, 2019
Can Tunisia’s Democracy Survive?
YOUSSEF
CHERIF
FP JANUARY 9, 2019
This Is the Uprising Sudan’s
Genocidal Dictator Always Feared
BY
NESRINE MALIK
FP JANUARY 9, 2019
African Leaders Must Act to Stop
Electoral Fraud in Congo
BY
MICHELLE D. GAVIN
FT January 10, 2019
Nigeria faces rising violence in
2019
Feargal
O’Connell
FT January 10, 2019
Libya: the battle for peace in a
failing state
Andrew
England in London and Heba Saleh in Cairo
FT January 10, 2019
Congo’s election result is no
victory for Joseph Kabila
David
Pilling, Africa Editor
● 企業の共同経営体制
NYT Jan. 6, 2019
Workers on Corporate Boards?
Germany’s Had Them for Decades
By
Susan R. Holmberg
1970年代後半、クライスラーが破産を免れるために、連邦政府から融資を受けたとき、労働組合がそれを支援した。経営幹部は、組合が1名の代表を17名の経営陣に入れるのを認めた。しかし、経営陣の給与決定に反対しても、それを変えることができず、結局、組合代表は辞任した。「共同経営」のアイデアは、その後、アメリカですたれた。
現在の金ぴか時代に、企業幹部は典型的な労働者の300倍以上も給与を得ているため、このアイデアが再び注目されている。マサチューセッツ州のElizabeth Warren上院議員は、大統領候補に名乗りを上げたとき、その政策案に、経営陣のポストの5分の2を労働組合に与える項目を入れた。同様の提案は他からも出ている。
これらは、会社は誰のためのものか、を再考することを意味し、以前からある問題だ。アメリカ企業もかつては、株主だけでなく、労働者、顧客、国民の利益に奉仕した。また、ドイツでは、ヨーロッパで最強の「共同決定」モデルが繁栄している。ドイツの法律は、大企業の最高経営責任者の半数を労働者が決めるように定めている。そこでは高度な戦略的決定を行う。労働者たちは職場会議も選出し、残業やレイオフなど、日々の決定を行っている。
共同決定はビジネスにとって良いことか? それは断言できない。企業の成長や利潤を約束するわけではない。しかし、ドイツの労働者たちは、共同決定の下で、強固な労働組合を維持し、給与の決定や失業の抑制に成功している。
「共同決定」は、民主主義によく似ている、と政治学者Stephen J. Silviaは述べた。それは経済成果によって評価されるのではなく、公的な問題に関する発言権を持つことで重視される。人々は、労働においても発言権を持つべきだ。
NYT Jan. 7, 2019
Elizabeth Warren and Her Party of
Ideas
By
Paul Krugman
PS Jan 8, 2019
The Left’s Choice
DANI
RODRIK
労働組合やイデオロギーの衰退で、左派の行動は限られている。しかし、今も、左派にできることは多くある。
再分配だけでは成長と政治的支持は取り戻せない。生産性の低い分野を生産性の高い経済に統合するべきだ。すなわち、低熟練の労働者、中小・零細企業、衰退地域である。そのための公共財の供給には、積極的な企業や新技術との協力関係が必要だ。
労働市場のバランスを回復するために、さまざまな法律や制度改革が可能である。また、今も社会にとって大きなリスクをもたらし、生産的な投資を促さない銀行業には、十分な資本と厳しい規制が必要だ。それを実現するには、政治が独自に行動すべきであり、金融ビジネスのロビー活動ではなく、庶民に高い投票率をもたらす選挙を実施することだ。
● アメリカ製造業の未来
FT January 7, 2019
US-China: farmers count the cost of
the trade war
Gregory
Meyer in Reserve, Louisiana
PS Jan 7, 2019
The Future of Free Trade
MICHAEL
FROMAN
NYT Jan. 7, 2019
American Companies Need Chinese
Consumers
By
Weijian Shan
PS Jan 9, 2019
Why American Firms and Households
Need China
SHANG-JIN
WEI
FT January 10, 2019
The ‘China shock’ has not been as
bad as Donald Trump thinks
Gillian
Tett
アメリカの有権者たちに、近年、製造業で起きたことを尋ねれば、恐怖について、「大虐殺」について話すだろう。ドナルド・トランプは、中国企業との競争がアメリカ企業と職場を「殺した」と主張して、権力を握った。
しかし、中国との競争がアメリカ産業にもたらした影響をもっと正確に描こうと思うなら、先週末にアトランタであった、アメリカ経済学会の資料を見るべきだ。データに依拠して、論争を整理するときであり、それは焦点を製造業からサービス業に移すだろう。
確かに、トランプの主張には事実の裏付けがある。この数十年で、アメリカの伝統的な製造業は雇用を大幅に減らした。その最も厳しい衰退を示す地域と産業は、中国との競争にさらされていた。しかし、エコノミストたちTeresa Fort, Justin
Pierce and Peter Schottは、アメリカ企業がコスト削減のために労働者をロボットに代替した、と語った(ロボットか、貿易か、というのは正確に区別するのが難しい)。
この過程は、しばしば、トランプが言うような深刻な痛み、経済的「大虐殺」を生じている。家族は崩壊し、薬物依存、子供の貧困が増えている。「チャイナ・ショック」は住宅価格を介して全土に影響を強める。
しかし、ここには大きな見落としがある。もしくは、希望の光だ。トランプは、いわゆる製造業の職場が縮小する一方で、「製造業企業」に起きたことを理解しない。
1977-2012年に、「製造業企業」の「工場労働者」は2000万人弱からほぼ1000万人へ半減した。しかし、「製造業企業」の「非製造業工場」で雇用が1300万人から2300万人に増えたのだ。それはデザインやITの職場である。中国企業との競争によって、アメリカの「製造業グループ」は静かに構造転換(リエンジニアリング)したのだ。
それは旧式の「製造業」労働者にとって楽しいことではないだろう。新しいサービス部門の雇用が生まれないのは、アメリカ南部・中西部の貧しい地域である。そして、経済的苦痛と有権者の憤慨が、トランプの支持票を生んだ。アメリカ「製造業」の労働者を助けたいなら、彼はもっとサービス雇用を増やす話をすべきである。それがアメリカ「製造業」の未来なのだ。
PS Jan 10, 2019
What Next for Global Trade?
PINELOPI
KOUJIANOU GOLDBERG
PS Jan 10, 2019
Whither the Chinese Consumer?
JIM
O'NEILL
● ポピュリズムは終わらない
FT January 7, 2019
Populism faces its darkest hour
Gideon
Rachman
今年はポピュリズムが破裂する年になるのか? Brexitもトランプも、2016年にはエスタブリシュメントを打破したが、2019年には矛盾をさらけ出し、間違った考えは悪い結果しかもたらさない、ということがますます明らかになる。
しかし、ポピュリズムのブームが終わった、と主張するのは早すぎる。それには3つの理由がある。1.経済的・文化的な力はそのままだ。移民、経済不安、文化的保守主義。2.左右のポピュリズムについて、今年は左派が勢力を伸ばす。たとえば、イギリスでジェレミー・コービンが権力を握る。アメリカでは民主党の大統領候補争いで左派ポピュリストたちが支持を広げている。3.ポピュリズムはグローバルな現象となった。特に、ブラジルとイタリアのポピュリストが権力を得た。
正統派の権力者たちは、マクロンのような古い正統的な反撃だけでは、ポピュリストに勝てないだろう。ポピュリズムは終わらない。
PS Jan 10, 2019
The New Old Populism
SEBASTIÁN
EDWARDS
(後半へ続く)