前半から続く)


 Brexitの終わり

The Guardian, Mon 31 Dec 2018

Don’t expect Brexit to give us a British Alexander Hamilton

Rafael Behr

PS Dec 31, 2018

Brexit Does Not Matter

SIMON JOHNSON

イギリスの一連の外交政策と経済的決断は、ある意味で、19世紀と20世紀の初め、歴史に輪郭を決めた。最近でも、イギリスはグローバルな影響を発揮した。シティの規制緩和や、20094月のロンドンG20サミットにおける指導力がそうだ。しかし、今は違う。その政治劇と過剰なレトリックにもかかわらず、イギリスがEUを離脱しても、すなわち、Brexitは、世界にとって重要ではない。

PS Jan 3, 2019

Hard Brexit Truths

BILL EMMOTT

イギリス議会は、メイの合意案を承認するより、2つの代替策に向かうようだ。1つは国民投票のやり直し。もう1つは、Brexit強硬派の唱える、合意なしの離脱だ。

FT January 4, 2019

Brexit will test the resilience of the British economy

Chris Giles


 建設的な米中関係

The Guardian, Mon 31 Dec 2018

The Guardian view on US-China antagonism

Editorial

NYT Jan. 2, 2019

Why the World Needs America and China to Get Along

By Robert E. Rubin

米中関係の悪化は、ビジネス・リーダーたち、軍人たち、両党の政治指導者たちが示す不満や懸念から明らかだ。協力的関係は失われ、悪循環が生じている。

これは逆転されるべきだ。アメリカにおいては、より建設的な関係を築くように、自分たちの代表に要求し、政治システムは異なっても、中国においても同様の圧力が必要だ。米中の指導者は、協力することが超国家的な重要問題における自国の利益であることを認めねばならない。特に、生存の脅威である、気候変動と核兵器に関して。

単独の国家がこれらに対処することは不可能だ。既存の国際制度も不十分だ。最大の経済規模を擁する2大国が、グローバルな行動の触媒となりえる。


 インターネット

FT DECEMBER 31, 2018

The future of the four kingdoms of the internet


 「関税同盟」離脱の効果

PS Dec 31, 2018

Who Benefits from Trump’s Trade War?

KOICHI HAMADA

1950年、カナダ生まれの経済学者Jacob Vinerは、関税同盟が「貿易創出」効果だけでなく、「貿易転換」効果を生じることを説明した。関税の引き下げや貿易障壁の撤廃は、加盟諸国間の貿易を増やすと同時に、関税同盟に参加していない国との貿易を、関税同盟内の貿易に転換するのである。

主要な貿易相手国、特に中国に対する関税障壁を高めることで、アメリカはマイナスの両効果を生じるリスクを冒している。

もちろん、アメリカは完全同盟に属したわけではない。しかし、程度の差はあれ、自由貿易圏でも起きることだ。たとえば、ドナルド・トランプ大統領はTPPから離脱した。彼の「アメリカ・ファースト」政策には、現状を変えるいくつかの良い点があるとしても、政策として、そのリスクを実際的に計算しなければならない。

トランプがむき出しの、気まぐれな保護主義に向かえば、皮肉なことに「アメリカ・ファースト」はアメリカにとって深刻な損害をもたらすだろう。1930年に、1000人以上のエコノミストたちが反対した、スムート=ホーリー関税法がそうだった。関税率が歴史的な高水準に引き上げられ、アメリカの景気後退は大恐慌になった。

貿易戦争は、たとえば、日本の中国向け輸出が20174月から20183月にかけて18.3%も増大したことの理由である。財務省の統計によれば、日本の中国向け輸出は、2018年前半、4兆円を超え、世界金融危機前の2007年前半に比べて16.4%も多い。対照的に、アメリカの中国向け輸出は、8.5%減少した。

米中貿易戦争は、より開放的な貿易体制を維持する諸国、EU、インド、日本、韓国が、貿易転換効果から利益を受けることを意味する。昔から言うように、2匹の犬が骨をめぐって争えば、その骨を得るのは他の犬だ。

FT January 2, 2019

Only nimble investors can tackle the US-China trade war threat

Karen Ward

FT January 3, 2019

The trade war with America is a strategic gift for China

Keyu Jin


 グローバルな秩序に銛を撃つ

NYT Dec. 31, 2018

Japan: Stop Slaughtering Whales

By The Editorial Board

世界市民として多くの点で尊敬される日本が、捕鯨に関しては異常な部外者である。ほとんどの諸国が放棄した野蛮で、不必要な、海洋に生息する偉大な哺乳類の生存を脅かす産業を、日本文化の一部として続けている。国際捕鯨委員会から離脱する、という政治的な決定を、政府は再考すべきである。

FT January 3, 2019

Shinzo Abe’s harpoon hits the wrong target

Philip Stephens

日本はルールに依拠したグローバル秩序に銛を撃ち込んだ。西側の友好諸国がクリスマスを祝っているとき、その報告が行われた、安倍政権は、日本が国際捕鯨委員会IWCを離脱する、と述べたのだ。日本は、クジラを保護するグローバルな規範を否定し、ノルウェーやアイスランドと同じように、商業捕鯨を続ける。

この決定は、20世紀後半、種の絶滅に至る狩猟や捕獲を止めさせた野生動物保護の団体や諸国から抗議行動を誘発する。しかし、安倍は考えるのだろう。トランプのアメリカ・ファースト、ナショナリズムの台頭、権威主義の広まる時代に、多国間組織が支持する海洋をめぐるリベラルな国際秩序も、彼の一突きで、すぐに消滅するだろう、と。

日本の関係者には、離脱で国際紛争が鎮静化する、と考える者もいる。日本の捕鯨船は、「調査」というIWCの抜け穴を利用して、南氷洋で捕鯨を続けてきた。今や、捕鯨船は日本の領海にしか行かない。ロシアの海軍が国際的な海域でウクライナの船舶を攻撃しているのに、わずかな日本の捕鯨船など、保護団体を除いて、だれも気にしないだろう、と。

昨年秋の国連総会で、トランプは利己的なナショナリズムを称賛し、それが何であれ、「グローバリズム」を非難した。

しかし、日本はグローバル秩序を信念として支持し、国際的な法の支配を堅固に守る国であった。IWCからの離脱について、菅官房長官は、「意見の異なる諸国と共存する」ことを求めるのは不可能だから、と説明した。その立場は、本質的に、気候変動についてトランプが示したものと同じである。トランプは、アメリカとパリ協定参加諸国とは、地球温暖化についての意見が異なる、と主張して、パリ協定を離脱した。同じ意味で、WTOから離脱すると脅し、イラン核合意を否定する。

安倍は、トランプと同じ、アラカルト式の国際主義を求めている。日本はルールに依拠したシステムに全面的に賛成するが、その規範は日本が好むものでなければならない。もちろん、同じことを中国が主張するのは受け入れない。中国は南シナ海で、近隣諸国との紛争を国際的なルールによって解決するのを拒んでいる。

好きな道だけ走る旅では、システム全体がすぐに行き詰る。ルールに依拠したシステムは、すべての者が、国際規範と自国の好みが対立する不便さに比べて、全体的な利益の方が十分に大きい、と認める場合だけ機能する。国家主権を共有する目的は、行動力を高めることだ。

ドイツのメルケル首相は新年のメッセージでこれを語った。国益と国際社会の利益はグローバルな問題に直面したときに一致する、と。その例として、気候変動、国際テロ、管理されない移民、を挙げた。彼女は、海洋の生態系を保護することも支持するだろう。

日本が商業捕鯨を続ける必要はない。タンパク源として、地域産業や雇用として、捕鯨は重要ではなくなっている。しかし、トランプと同様、安倍にとっても選挙が重要だ。捕鯨の村は自民党の支持基盤であり、日本のナショナリストたちは捕鯨を神聖化する。首相は捕鯨を、国家主権の勲章にしてしまった。

大国はいつも国際主義に保険をかける。現在のシステムが生き残るには、大国に続く支配的諸国の支持が欠かせない。その中でもドイツと日本だ。今年のG20サミットで議長を務める安倍は、この点を強調するだろうが、クジラを射る銛は安倍の信頼性を傷つけた。


 トランプ再選の序幕

NYT Dec. 31, 2018

Why Trump Reigns as King Cyrus

By Katherine Stewart

2018年、中間選挙の1か月前に、多くの映画館で“The Trump Prophecy”を上映していた。それは元消防士の物語で、彼は2011年に、ドナルド・トランプは大統領に選出されるだろう、と神が語ったという。

映画において、神の現れる光に中で、彼は昏倒する。そして聖書を取り上げ、イザヤ書の第45章を開ける。それはキュロス王が神によって油を注がれる箇所だ。

キュロスはBC6世紀に生まれ、ペルシャの初代国王となった。聖書は、バビロンに捕囚されたユダヤ人を解放したキュロスを称えている。キュロスは、信者以外が神によって指名され、目的を達成する船になるモデルである。

エヴァンジェリカル・キリスト教徒が、これほど不完全な男を支持するパラドックスは、われわれがキリスト教ナショナリズムの現実に追いついていないことを示す。現在のキリスト教ナショナリストたちは、憲法やアメリカ建国の父以上に、神が示す王を求めている。キュロスのような王が偉大であることは、キリスト教ナショナリストたちにとって、法に従わないことを意味する。王が法である。偏執狂的時代には、それが指導者の理想である。

彼らは、トランプが民を神の土地に導く奇蹟である、と考える。トランプに逆らうことは、神に逆らうことだ。キリスト教ナショナリスト運動の核心は、権威主義的、偏執的、家父長的だ。それは文化戦争ではなく、民主主義への直接の攻撃だ。

PS Jan 3, 2019

America’s New Democracy Movement

LAURA TYSON, LENNY MENDONCA

FT January 4, 2019

Macron’s cautionary tale for US Democrats

Edward Luce

西側で最悪の支持されていない指導者という不名誉は、エマニュエル・マクロンのものだ。彼の支持率はドナルド・トランプの半分しかない。

多くの人の希望では、西側の指導力がマクロンの細い肩にかかっていた。現実には、西側の運命を決めるのはアメリカンにおける2020年の選挙だ。民主党員たちは、だれを候補者に決めるかが歴史的な選択であると知っている。フランス大統領の支持率急落は、警告のサインである。

民主党員たちは2008年にバラク・オバマを見出して、恋に落ちた。オバマはマクロンの初期のファンであった。フランスのオバマとたとえられた。

現在、アメリカで同じような人気を持つのはオルークBeto O’Rourkeだ。テキサスのリベラル派で、専門職の民主党員から熱狂的に支持されている。オバマの当選に働いた多くの若者もそうだ。もしオバマランドで予備選があれば、彼が見事に大統領候補となるだろう。

しかし、マクロンの苦境、そして、オバマの遺産が消滅する現状は、民主党員たちに再考を求める。マクロンは政治のアウトサイダーとして選挙戦を戦い、インサイダーとして統治した。希望や変革は選挙戦で素晴らしい言葉だが、政権を執れば、すべての者の希望は実現できない。選択することで、勝者と敗者が生まれる。人民の1人であった彼は、今や、「富裕層の友」と見られている。

民主党がだれを選んでも、マクロンと共通する点は、敵にひどく嫌われることだ。アメリカの理想主義者を求める声がある。ビル・クリントンやバラク・オバマは理想に訴えた。しかし、アメリカの問題は深刻だ。左右の物語において、拡大する不平等と富裕層の政治支配が重視されている。敗者なしに、これを変えることはできない。左右の統一という主張でオバマは当選した。しかし、その遺産がトランプだった。

マクロンは修辞に多くを捧げる。「ヨーロッパのルネッサンス」、フランス大統領の地位をローマ神話のジュピターにたとえた。しかし、雄弁家であるほど、その魅力には高いリスクがある。

ウォール街もシリコンバレーもウォレンElizabeth Warrenの反トラスト政策を好まない。しかし、そこには2つの利点がある。1.あまりにも不公平な社会において、ラディカルな解決策は支持される。2.トランプは際限ないほど社会を分断する候補だ。


 中国の自転車バブル崩壊

FP DECEMBER 31, 2018

The Rise and Fall of China’s Cycling Empires

BY FRANKIE HUANG

1990年代後半まで、中国は自転車の天国だった。日常生活に自転車は欠かせず、1970年代には自転車が結婚の条件だった。毎朝、北京の通りを自転車が流れる万里の長城となった。1995-2002年、政府の自転車削減政策は、自動車産業の育成と公共輸送システムに投資した。SARSの流行が、公共輸送システムから自動車への転換を促した。今や中国の大都市では、世界最悪の交通渋滞が生じている。

自転車をシェアするアプリは、渋滞を解消すると期待された。この3年で、数百万台の自転車が民間部門によって中国の通りを埋めるようになった。しかし今、企業は倒産し、使用されない自転車が墓場のように堆積し、デポジットの返金を求める起こった利用者たちが行列している。

他のハイテク・バブルと同様、自転車熱も急激に高まって、消滅した。幻想と、間違った予測と、大企業の支配力によって、利潤を生まないアイデアが維持されたのだ。

FT January 2, 2019

Uber and Lyft’s valuations expose the gig economy to scrutiny

Sarah O’Connor

FT January 3, 2019

What anthropologists can teach tech titans

Gillian Tett

アマゾンが新しい本社をニューヨーク(Long Island City, Queens)に置くと発表した。企業の幹部たちは、この決定が地元住民を喜ばせる、と思っていただろう。ニューヨーク市長Bill de Blasioはそうだ。

しかし地元住民は、市のエリートとは違う反応を示した。高給与の新しい職場を歓迎するより、一部の住民はアマゾンを排除するコミュニティ会合を組織した。

企業はどう反応するべきか? 通常は、コミュニティの「慈善」プロジェクトに寄付し、何人か政治ロビイストを雇う。あるいは、別のアイデアもある。ベゾスJeff Bezosは、他のハイテク企業幹部を誘って、人類学者を雇うのだ。

シリコンバレーの指導者たちは、コンピューター・プログラムやアルゴリズムで莫大な富を得た。対照的に、人類学者たちは、地上の人々を観察して、人間の条件を研究する。人類学が19世紀に誕生したとき、その対象はいわゆる「原始的な」文化であった。例えば、アマゾンのジャングルに住む部族だ。それは21世紀のアマゾンの倉庫とは大きく異なっている。

しかし最近、人類学者たちは、遠くのジャングルより、近代の西側社会を観察している。最も顕著な点は、人類学者が、先入観なしに、通常は誰も語らないような部分も含めて、文化のすべての側面を忍耐強く観察することだ。他の者の目を通して世界を観て、文化のさまざまなパターンを理解する。

アウトサイダーにはインサイダーに見えないものが見える。その逆も正しい。これこそハイテク大企業の経営者たちが必要とするものだ。彼らはその技術革新が社会全体にもたらす結果を評価しそこなった。批判者は、彼らが強欲で、傲慢で、邪悪である、という。しかし、問題は彼らの視野狭窄にある、と私は思う。

2008年の金融崩壊前にウォール街が冒されていた問題と少し似ている。エリートは賢慮億によって、隔離されたゲットーに閉じ籠る。

数年前から、Intel and Xeroxのような企業は、製品デザインに人類学者の意見を聞いていたが、Facebook, Uber, Spotify and Googleも、最近、同じことを始めた。彼らの「部族」がもつ偏見や特性を理解する視点を得る用意は、まだない。

人類学者のように考えるよう、ベゾスらに助言しよう。人類学者を雇うのは、政治ロビイストの軍団を雇うよりずっと安いし、問題も起こさない。

NYT Jan. 3, 2019

Is This the End of the Age of Apple?

By Kara Swisher


 中国高成長の未来

FT January 1, 2019

The future might not belong to China

Martin Wolf

この40年間の中国の成長は著しい。専制国家の中国が、今後は世界の支配的な大国になるのか? そうとは限らない。

1980年代の日本の台頭を恐れ、1956年にはソ連のフルシチョフ第1書記が「お前たちを葬ってやる」と予言したが、それは典型的な3つの間違いによって生じた幻想だった。1.最近の過去を未来に延長した。2.急速な経済成長が無限に続くと仮定した。3.集権的な意志決定が、経済・政治の競争システムより優れていると考えた。

中国の群を抜く高成長は、もうすぐ終わる。独立の調査機関Capital Economicsはそう考える(“Long-Term Global Economic Outlook”)。生産性のキャッチアップは、政治システムの制約があるために、続かない。需要の拡大は、消費に依存しており、中国の所得分配を大きく変えねばならない。

むしろ、インドが高成長の時代に入るだろう。

PS Jan 2, 2019

A Makeover for Chinese Macroeconomic Policy

YU YONGDING

PS Jan 2, 2019

China’s Malign Secrecy

RICARDO HAUSMANN

一帯一路のような、中国の国際開発金融は汚職の温床であり、経済を膨張させた後、経済の(そして、ときには政治の)二日酔い状態が待っている。

NYT Jan. 2, 2019

China’s Gulag for Muslims

By Mustafa Akyol


 米軍はアフガニスタンから撤退する

NYT Jan. 1, 2019

Time to Get Out of Afghanistan

By Robert D. Kaplan

世界のどこよりも、カンボジアほどアメリカ帝国の衰退を示している国はない。タリバンの軍事的に勝利する見込みは全くないし、自立した民主主義をこのセル可能性も小さい。この事実を、ワシントンの政策コミュニティは決して受け入れようとしなかった。

多くのアメリカ兵は鋼鉄で強化されたコンクリート壁の後ろに隠れている。彼らは、彼らが守るはずの住民から、自分たちを守っている。ワシントンでは政府もメディアもアフガニスタンのことを議論しない。彼らも自分たちの壁の後ろに、羞恥と不満を抱えたまま、隠れている。

中国、パキスタン、イラン、インドは、隣国のアフガニスタンでエネルギーや鉱山の開発を競っている。しかし、アメリカは年間450億ドルの軍事費を支出しながら、この国の将来の商業から利益を受けることがない。アフガニスタンは、地理、歴史、文化、エスニックと党派の意識によって支配されている。部族集団、軍閥、麻薬売買のマフィア型のネットワークが国土の大部分を支配する。「アメリカの資金は盗まれているだけでなく、タリバンや軍閥に人を供給するために役立っている。」

最初は行ではなかった。2003年のイラク進攻とその後の軍事。開発政策が失敗だった。アメリカはあまりにもカブールの選挙にだけ重点を置き、地方のインフラ再建を軽視したのだ。アメリカの特別顧問Zalmay Khalilzadは外交的な解決を求めている。アメリカ軍が撤退し、その後もカブールの政治的基礎がすぐに崩壊しないことだ。

アメリカが残留するほんとうの理由は、1975年のサイゴン陥落である。軍の関係者たちは、今も、そのトラウマから逃れられない。アフガニスタンのカオスがテロリストの温床になる、という不安もある。次の911を恐れるのだ。

アメリカが去れば、アフガニスタンは中国、パキスタン、ロシア、インド、イランによって支配されるだろう。しかし、今はアメリカ軍が安全保障を負担し、彼らが利益を得ている。アメリカが去れば、この混乱も彼らが引き受けるだけだ。彼らには、資源や国際テロなど、安定化を負担する理由がある。

アメリカにHenry Kissinger, Richard Holbrooke, James Baker III or George Shultzのような優れた外交官がいたら、アフガニスタンを含む国際和平の会議を開くだろう。しかし、政権からマティスも去った今、それは不可能だ。

米軍は緩やかにアフガニスタンから撤退するべきだ。

PS Jan 2, 2019

Trump’s Syria Withdrawal is a Chance for Peace

JEFFREY D. SACHS

The Guardian, Thu 3 Jan 2019

Donald Trump has a point – the world should start solving its own problems

Simon Jenkins

PS Jan 3, 2019

America’s Overdue Middle East Withdrawal

RAMESH THAKUR


 ユーロ誕生20周年

FT January 2, 2019

Challenging times lie ahead for the eurozone


 ブロックチェーンと中央銀行

FT January 2, 2019

The Fed should seize blockchain’s potential

Eswar Prasad

ビットコインの価格が暴落し、非合法な取引との関係が疑われている。莫大な電力を消費することも問題だ。しかし、中央銀行はブロックチェーンの技術を研究し、新しい金融システムの可能性にも積極的に取り組むべきだ。


 中国の水素エネルギー開発

FT January 2, 2019

Hydrogen power: China backs fuel cell technology

Henry Sanderson in Yunfu, Guangdong

中国の地方政府と、中央政府の「中国製造2025」は、水素エネルギーへの転換を推進している。燃料電池の技術開発や、電気分解による水素の生成、そして貯蔵や運搬に関わるインフラ投資だ。それは、これまでの産業政策と同様に、莫大な補助金によって急速に進んでいる。

太陽光発電や電気自動車で、中国政府は成功してきた。しかし、燃料電池は、バッテリーの改善によるコストや充電速度の改善に比べて、競争で負けると考えられている。しかし、トラックやバス、船舶や列車のような大型の輸送システムには、燃料電池が利用可能かもしれない。しかも、補助金がなくなっても、中国の市場規模は巨大であるから、生産コストを下げることができる、と期待する。しかも、バッテリーの生産に希少金属が必要であることは、中国政府に安全保障のリスクを懸念させる。

水素を、化石燃料ではなく、再生可能エネルギーで発電した電力によって電気分解すれば、地球温暖化や大気汚染も解決できる。その場合、電力のコストやエネルギーの変換効率が問題になるが、中国には以前の産業政策で築かれた莫大な再生エネルギーをもたらしている過剰生産能力がある。政府の大気汚染削減に、政治的な答えが求められている。


 北朝鮮

FT January 2, 2019

Signs of North Korea’s progress in a New Year message

Jongsoo Lee


 ヴェルサイユ条約

FT January 3, 2019

The danger of unchecked power and other lessons from Versailles

Simon Kuper

ヴェルサイユ条約を結んだ3人の指導者たちは、助言に耳を貸さず、原始的な国際協調を実現しようとした。アメリカのWoodrow Wilson大統領、イギリスとフランスの首相たちDavid Lloyd George and Georges Clemenceauだ。

1次世界大戦に勝利した諸国は、平和に向けた何の準備もしていなかった。しかし、3つの帝国が崩壊し、ドイツは敗北した結果、突如として、世界の国境線を書き換えたのだ。ドイツやロシア革命政府はいなかった。イタリアと日本の政府は無視された。

3人の指導者には、交渉の焦点も、時間も、知識もなかった。最終的に決まったヴェルサイユ条約は、ドイツに意見を述べつ余地もなく、押し付けられた。イギリス人たちがすぐに気づいたように、その条件はあまりにも苛烈であった。そうなった理由の1つは、交渉結果を管理する、永続的な国際機関がなかったことだ。

現在、プーチン、習近平、トランプもまた、国際機関を軽視している。


 エチオピアの連邦主義

NYT Jan. 3, 2019

The Trouble With Ethiopia’s Ethnic Federalism

By Mahmood Mamdani


 

FP JANUARY 3, 2019

Walls Don’t Work

BY PAMELA KYLE CROSSLEY

歴史上、すべての隔離壁は失敗に終わった。しかし、いくらか良いことも実現した。中国の万里の長城は、北部からの侵入を阻み、のちには、壁の材料が壊されて取引された。

トランプの壁はどうか? 壁は多くの欠陥を助長する。

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The Economist December 22nd 2018

The uses of nostalgia

Country of the year: Ovation nation

The making of Americans: Elsewhere, in Queens

Patronage: The new Medicis

Municipal limits: Less than the sum of their parts

(コメント) 新興国の追い上げや、AI、ロボットの革新により、西側全体に多くの人が「衰退」のイメージを持ち、かつてのダイナミックな成長や地位の上昇を懐古することで政治に影響が及びます。ナショナリズム、排外主義、人種差別。次の時代を支える社会の統合原理は見えません。

2018年の優れた政治・国家主体は、マレーシア、エチオピアを抑えて、アルメニアです。その改革を知りませんでした。

特集記事の中では、芸術家や個人の才能を市場で富に転換する新しいメカニズムが発見されたかもしれないこと、また、アメリカの地方政治がこれほど複雑で、行ってみれば、EUやアフリカ、イラクにも劣らない行政区画の混乱を示していることに驚きます。しかも、記事は改革の展望も示します。

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IPEの想像力 1/7/19

式年祭のニュース。昭和天皇の武蔵陵に現在の天皇が参拝しました。

庶民としては、法要のようなものかな、と思いますが、こうした式典が神格化を準備している、あるいは、事実上の神道や神社関係者による天皇家の利用ではないか、と思いました。

公人と私人、神と人、血縁による地位の固定化は、生身の天皇やその家族を政治的に憲法が利用し続けている点で、とても不幸なシステムだと思いました。そして、彼・彼女たちの苦悩や不満の爆発が心配です。

カルロス・ゴーン元会長の初めての出廷が予定される拘置理由の開示。憲法で保障された権利を行使する、と肯定的に描かれます。しかし、告発や疑いがあるから、捜査のために拘置できる、というのは、よほどの凶悪犯か、被疑者を隔離する理由が必要だと思いました。

ゴーン疑惑の全体像は、日本企業や経営者への疑いにつながります。また、政治家と司法の関係、検察・警察システムについても、ポピュリストたちの攻撃姿勢に、油を注いで火をつける要因となるでしょう。

朝日新聞の記事がパソコン画面に通知されました。「去りゆくひと、死んでゆく島 老いる日本はどこに向かう」。その内容は、不安の指摘が多すぎると思います。ノスタルジアによって現実を観ることで、悲しい、苦しい姿を描きます。

高齢化し、孤独を味わう、地方に取り残された人々を描く・・・ とはいえ、地方の姿を積極的に組み替えて、精神的に豊かな、経済的にも余裕のある暮らしを、描く努力が大切です。

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「グローバルな秩序に銛を撃つ」をゼミ生たちに読んでもらい、議論しました。しかし、なかなか話は飛躍しません。

日本人は鯨を食べる。でも、食べない国があるのは仕方ない。終わり。

1つ伸びた議論は、欧米人も牛や豚は食べる。何が違うのか? 哺乳類だから?

クジラやイルカを捕えて食肉にしてはならない。では、ワニやサメはいいのか? マグロも希少生物だから? サケのように養殖できればいいのか? 哺乳類でも、牛や豚は食べてもいいのか? 魚、貝、鶏はどうか? 米や麦など、植物ならいいのか? 果実というのは、そもそも種を運んでもらうためだから? 言葉を話さないし(多分)?

人類は繁殖して地球全域に拡大し、多くの生物種を絶滅させました。文明のあとには森林伐採と自然破壊が残ります。地球温暖化や砂漠化が、今は、そうかもしれません。

その意味では、日本政府は国際捕鯨委員会で主張する余地があったはずです。グローバルな秩序の背後には、思想があり、それを実現するパワーがあります。異なる視点であっても、共通の思想を鍛錬して、制度に体現しなければ、アラカルト式の国際秩序は大国の秩序と変わりません。それは、強者の支配するジャングルの秩序、小国にとっての無秩序です。

野生動物に対する保護は、奴隷解放や、黒人の市民権運動、人種差別・女性差別の撤廃、LGBT、#MeeToo運動、などと関係があるでしょう。

私は、最後に「狼たちの年」を読みました。(しかし、彼・彼女たちは聴いていません。)

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The Economistのクリスマス・新年記念号に、ニューヨーク、Queens地区の変貌が描かれています。また、アメリカの連邦政府と、全く異なる複雑な行政区と異なる規制や、それを利用する企業、やたらに多くの学校、警察、病院、人々はその間を移住し、格差を拡大します。アメリカは、なるほど、グローバリゼーションの実験室だと思います。

エコノミストは社会科学の王様か、静かな歯医者か。Tettのコラムとアイファ・オングの本(『《アジア》、例外としての新自由主義』)を読んで、むしろ人類学者による社会科学の統合を想像しました。

オングは唱えます。「東アジアという環境と接合する新自由主義的形態は、ローカルな文化的感性と国家的アイデンティティとの間に、しばしば緊張をもたらす。・・・新自由主義による例外化」(それはオングの言う各地の権力がグローバリゼーションを引き込む仕掛けです)が生じる突然変異の文脈を調査する・・・」

2019年、「狼たちの年」に、天皇、ゴーン、高齢化する島々、それらをつなぐ「グローバルな秩序」を失わないために政治が「銛を撃つ」としたら、思考を鍛え、多くの新しい言説を重ねる必要があります。

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