IPEの果樹園2019
今週のReview
1/7-12
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マクロンvsサルヴィーニ ・・・金融市場にとってのDr. Strangelove ・・・インドの女性差別 ・・・2019年の抱負 ・・・バブルからアンチ・バブル ・・・「関税同盟」離脱の効果 ・・・グローバルな秩序に銛を撃つ ・・・トランプ再選の序幕 ・・・中国の自転車バブル崩壊 ・・・中国高成長の未来 ・・・米軍はアフガニスタンから撤退する
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign
Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project
Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 2018年の推薦図書
FP DECEMBER 26, 2018
The Books We Read in 2018
BY
FP STAFF
PS Dec 28, 2018
PS Commentators’ Best Reads in 2018
PS
EDITORS
● マクロンvsサルヴィーニ
FT December 28, 2018
Macron v Salvini: the battle over
Europe’s political future
Ben
Hall in London
まるで2人のチャンピオンによる商品を賭けた闘いだ。一方は、イタリアの副首相、ユーロ懐疑論者のサルヴィーニMatteo Salvini。今や、ヨーロッパのナショナリストを代表する。他方は、この30年で最もヨーロッパを信奉するフランス大統領マクロンEmmanuel Macronだ。野心的なEU強化案を掲げている。
5月の欧州議会選挙をにらんで、サルヴィーニはマクロンを秋から宿敵とみなしてきた。マクロンもその対決を待っていた。2人とも欧州議会に立候補しないだろうが、ヨーロッパの将来を決める戦いの先頭に立つ。
イタリアの有権者たちがサルヴィーニに対する支持は、クリスマス前に、ブリュッセルとの間で停戦に合意したことで、大きく高まった。それはEUのルールを破るイタリアの予算案に対してブリュッセルが降伏したことを意味するからだ。サルヴィーニがEUの制度と役人を攻撃する恫喝と、移民に向けた悪意の攻撃とは、彼をユーロ懐疑論者たちの陣営が称賛する指導者にし、新しいナショナリスト連合における結束の要にしている。
マクロンは、自身を、ヨーロッパに広がる1930年代のナショナリズムを止める防波堤として示す。彼は昨年の大統領選挙において、極右の指導者ル・ペンの掲げたネイティビストの脅威を退けた。彼のエネルギーとアイデアはヨーロッパ統合を支持するリベラル派の灯台となっている。
2人の衝突は避けがたい。しかし、それは真に値するものか? ユーロ支持者の中には、2人の対決とみなすことへの懸念がある。マクロンはすでに国内で高い支持を失ってしまい、その改革案は激しい抵抗に直面している。
EUの論争を、ヨーロッパ統合支持者とポピュリストとの対決にすることは、戦術として間違っている、と元イタリア首相Enrico Lettaは言う。「いわゆるポピュリスト陣営を分断する必要がある。彼らの陣営は非常に分裂しており、対決を強調することは彼らを助けることになる。彼らは敵を得ることで団結する。」
ヨーロッパのナショナリストたちの問題は、彼らの国益が衝突する傾向を持つことだ。マクロンは、サルヴィーニが彼の主要な敵となるのを避けることが重要であって、彼の敵はル・ペンである。
マクロンはメッセージを修正した。その強調点は、より強力な、「主権を持つ」ヨーロッパを創る必要、に置いている。「ウルトラ・リベラル」としてEUを批判し、ヨーロッパ統一軍の結成を要請する。「サルヴィーニは、進路を見失った社会の兆候でしかない。サルヴィーニや他のナショナリストたちを倒す最善の方法は、EUを強化する諸提案である。」
しかしマクロンの問題は、彼が掲げたユーロ改革、すなわち、銀行同盟と衝撃を吸収する予算が、敵であるナショナリストたちではなく、ヨーロッパ統合を支持する見方であるベルリンや欧州裁判所によって反対されていることだ。しかも、ともに闘うはずであったメルケルは力を失い、「黄色いベスト」運動の抵抗で経済改革を後退させ、減税要求を受け入れれば、イタリアのように、財政ルールを破るかもしれない。
サルヴィーニは欧州議会選挙でマクロンを打ちのめせると考えている。「彼の敵は私ではない。フランス国民だ。」
FT DECEMBER 30, 2018
A Macron failure would bode ill for
the EU’s future
Wolfgang
Münchau
PS Dec 31, 2018
Fifty Shades of Yellow
JEAN
PISANI-FERRY
黄色いベストとはだれなのか? 反乱の真の原因は何か? 彼らは何を求めているのか?
最初の反乱の動機は明らかだ。逆進的なエネルギー税だ。しかし、なぜこれほど多くの中・下層階級の人々が、暮らしで収支が合わないと感じているのか、その理由を理解するのは難しい。
その一部は、人口学的なものだ。高齢化と単身家計が増えた。社会学的に、中産階級の所費の標準が上がり、それに比べて所得は見合っていない。また地理的に、大都市圏は良い状態だが、地方の中小都市は苦しい。前者の住宅価格は上昇し、後者では下落したからだ。
より深い意味で、中産階級は、社会契約が破棄された、と感じている。良い教育、良い職場、子供たちには高い所得、繁栄、社会的地位の上昇が期待できた。しかし、成長はあまりにもわずかで、そうした期待を実現できない。フランス全体の悲観主義が彼らの不安を強めている。
マクロンは正しい処方箋を示した。彼は成長を解き放ち、社会の移動性やアクセスを改善したいと語った。政府支出は他の先進国に比べて大きすぎるし、増税や社会支出は解決策ではない、と示した。しかし、彼は要求する変化の大きさを間違った。また、改革における公平さの要求を受け止めそこなった。政治的、社会的に、マクロンは富裕層の利益を守っている、と見なされた。
反乱の原因はフランス社会の広く根を張っている。右派も左派も、答えを示さないまま、恥知らずにこれを刺激した。黄色いベストが5月の欧州議会選挙で彼らの党派を形成するかもしれない。しかし、運動家たちには強硬派・右翼、反ユダヤ、反イスラムの傾向が強い。
フランス社会の中の、代表されていないと感じ、姿が見えない部分が、自分たちの色を、アイデンティティーを主張し始めた。問題は、彼らが政治的な声を上げるかどうか、その中身は何か である。
● 金融市場にとってのDr.
Strangelove
PS Dec 28, 2018
Trump vs. the Economy
NOURIEL
ROUBINI
金融市場は、とうとう、ドナルド・トランプがアメリカ大統領である、という事実に目覚めた。なぜ、これほど時間がかかったのか?
投資家たちは、これまで、トランプは吠えるだけで、噛みつかない、という主張を買っていた。彼が自分たちに有利な政策を取ってくれるうちは、疑わしきは罰せず、であった。減税、規制緩和、その他、企業や株主に有利な政策のことだ。また、政権内の「大人たち」が、トランプによる政策の逸脱を止める、と考えた。
こうした考えは1年目を支配したが、今や、事態が変化した。特に、この数か月だ。
金融市場が懸念するのは、中国、イタリア、ユーロ圏、新興市場の主要国であるが、なによりもトランプだ。無謀な減税によって長期金利が上昇し、経済はほぼ完全雇用の下で高揚する景気を伸ばした。インフレ目標2%を懸念する投資家たちは、最初のリスク・オフ行動を取った。
さらに、トランプは中国や、他のアメリカの主要貿易相手国と貿易戦争を強め、市場は保護主義を懸念していた。最近のアメリカは、中国に対する新冷戦にも及ぶ広範な対立を唱えている。
しかも、トランプの他の政策はスタグフレーションを導くものだ。アメリカ企業への直接投資を制限し、アメリカへの移民流入を広く規制する。他方で、政府はインフラ投資計画を示さない。トランプは、企業の雇用や投資、価格を非難し続け、ハイテク企業に行動を促す。彼らはすでに中国企業との競争で逆風に直面しているのだ。
新興市場は、アメリカの財政・金融政策がもたらした長期・短期金利の上昇と、ドル高に苦しんでいる。資本逃避やドル建債務の負担増を味わっている。一次産品価格の下落、米中貿易戦争も、彼らを苦しめる。
また、アメリカがイラン制裁を再現したことで石油価格は上昇した。政府は免除を与え、またサウジアラビアに増産を強いて、石油価格が急落した。それは消費者の利益ではあっても、アメリカのエネルギー関連企業の株価にとって有害であった。石油価格の乱高下は正しい投資や消費の決定を妨げる。
しかし何よりも、最近のアメリカと世界市場における株価の下落は、トランプの言動に反応したものだ。トランプは米中貿易戦争をフル拡大するリスクを高め、公然と連銀の金融政策を攻撃した。連銀は、トランプの脅迫に対して相対的にタカ派の姿勢を取り、中央銀行の政治的独立性を示す必要を感じたのだ。
それに続けてトランプは、メキシコ国境に無益な壁を建設する予算を拒む議会に対して、連邦政府の主要部分を閉鎖すると決定した。市場はほとんどパニックに達した。それに加えて、トランプがパウエルを解任したがっている、と報道された。クリスマス休暇の直前、ムニューシン財務長官は、やむなく、パウエル解任はない、アメリカの銀行は健全だ、と発表した。
ジョン・ケリー主席補佐官、ジェイムズ・マティス国防長官が辞任したことも、市場の不安につながった。ホワイトハウスに残った経済ナショナリストとタカ派の外交顧問だけが、トランプの思い付きに助言するのだ。中国との全面的な地政学的対立、グローバリゼーションの逆転、いたるところでサプライチェーンが切断される。ZTEやファーウェイの事件もそうだ。ヨーロッパが経済的、政治的に動揺するときに、トランプはEUやNATOの団結を損なう。国内では、ロシア疑惑のモラー特別検察官が、ダモクレスの剣となってトランプを脅かす。
トランプは金融市場にとってのDr. Strangeloveである。スタンリー・キューブリックの古典的映画に登場した狂人と同様、トランプも経済的な相互確証破壊を愛している。市場は、今や、金融危機と世界不況が迫ってくることを知った。
FT DECEMBER 30, 2018
Regional US central bankers turn
their focus to Main Street
Rana
Foroohar
NYT Jan. 1, 2019
The Trump Tax Cut: Even Worse Than
You’ve Heard
By
Paul Krugman
FP JANUARY 1, 2019
Welcome to the World’s Least Ugly
Economy
BY
MICHAEL HIRSH
● インドの女性差別
NYT Dec. 28, 2018
India’s Newest War for Independence
By
Jyoti Thottam
Celine
Minjは1933年、インド中部の森林地帯にある村で生まれた。幼い頃は上に苦しみ、少女として、彼女は重荷とみなされた。学校へ行かせてもらうために、彼女は家族を説得して闘った。授業料を補うために、建設現場で石を運んだ。1947年、インドがイギリスの支配を脱したとき、14歳のCelineは家を逃げ出し、何百マイルも列車で旅して、教会系の新しい病院の玄関にたどり着いた。初めは清掃婦として働き、その後は看護を学んで、1月に私が彼女と会ったとき、インド国営石油会社の看護婦として、長い経歴を終え、引退したところであった。
インドの女性や少女たちに関する残酷なニュースは多い。2018年は、もう1つの暴力が加わったように思う。カーストの威力を信じ、極端なヒンドゥー・ナショナリズムのイデオロギーに刺激されて、男たちが少女に暴力を振るった。
しかし、インドの女性たちに希望となるニュースもあった。女性ジャーナリストたち、修道女たち、信者たち、Bollywoodのスターたちでさえ、ハラスメントに対して行動し、責任を追及した。
インド大反乱やガンディーの独立闘争に加えて、われわれは第3の闘い、インドの女性たちがその権利を確立するために闘っているのを目撃している。下層カーストや、Minj女史のような少数部族の周辺化された人々が、闘いに加わった。インド憲法はジェンダー、カースト、宗教による差別を禁じているが、実際には無視されている。
闘いは容易でないし、長い時間を要するだろう。しかし、勝利することは可能だ。
「私は決意した。」と彼女は言った。「そして、ついに私は成し遂げた。」
The Guardian, Thu 3 Jan 2019
Indian women just did a remarkable
thing – they formed a wall of protest
Snigdha
Poonam
The Guardian, Thu 3 Jan 2019
The Guardian view on India’s temple
dispute: faith and politics
Editorial
ヒンドゥー今日の寺に女性が入れるように認める最高裁の決定が、女性たちの運動を支援した。インドの政治家たちは、これを国内の社会改革に向けて組織するべきだ。
● 2019年の抱負
FT December 29, 2018
Forecasting the world in 2019
ドナルド・トランプとBrexit、保護主義とポピュリズムの時代は予測が困難なのか? われわれは、昨年の20の質問について、9つを間違った。ドナルド・トランプに対する弾劾が始まると予測し、メキシコ大統領選挙で間違った候補を支持した。ユーロ圏の予算が実現すると予測して間違い、ワールドカップの優勝国も間違った。
予測ゲームを始めよう。以下に20の質問(そしてFTの予測)を用意した。Happy
2019!
Will
Brexit be stopped?
Yes
Will
Jeremy Corbyn become UK prime minister?
No
Will
France’s Emmanuel Macron get his reforms back on track after the gilets jaunes
protests?
Yes
Will
populists make big gains in European Parliament elections?
Yes
Will
the Democrats attempt to impeach President Donald Trump?
Yes
Will
the trade truce hold between Donald Trump and China’s Xi Jinping?
No
Will
Russia escalate military action against Ukraine?
No
Will
there be a new financial crisis?
No
Will
Narendra Modi still be prime minister after India’s parliamentary polls?
Yes
Will
the disputes in the South China Sea blow up?
No
Will
Jair Bolsonaro boost Brazilian economic growth?
Yes
Will
Saudi Crown Prince Mohammed bin Salman survive the aftermath of the killing of
Jamal Khashoggi?
Yes
Will
the S&P 500 finish 2019 above 3,000?
No
Will
Ethiopia’s prime minister be able to maintain the momentum of one of Africa’s
most striking transformations?
Yes
Will
Brent crude end the year below $60 a barrel?
Yes
Will
Uber achieve the biggest IPO in history?
No
Will
Mark Zuckerberg step down as chairman of Facebook?
No
Will
the US yield curve invert?
Yes
Will
Huawei lose its foothold outside China?
No
Will
the Nissan-Renault alliance survive without Carlos Ghosn?
Yes
FP DECEMBER 31, 2018
My Top 10 Foreign-Policy Wish List
for 2019
BY
STEPHEN M. WALT
2019年における10の願いと抱負。
1.イエメン戦争が終わる。
2.Brexitの大失策を解決する。それはチーズで潜水艦を作る試みだ、という風刺家Hugo Rifkindに賛成だ。
3.民主主義的な制度を強化する。「指導力」に頼る政治、「強権指導者」が多くの国で支持されている。そして、どこでも指導者たちは無能であるとわかった。Paul Ryan, Theresa May,
Boris Johnson, David Cameron, François Hollande, Emmanuel Macron, Jacob
Rees-Mogg, Donald Trump, George W. Bush, Betsy DeVos, etc.
複雑な社会を統治するのが難しいのはわかるが、著名な指導者たちの特技がしばしば自爆することであると知る。指導者たちの劣化は明らかだ。他方で、権威主義的な粗銅者たちは良い結果を出した。しかし、成功の条件は、指導者たちの周りに権限を集めることだ、と考えるとしたら、それは間違いだろう。間違った個人に権力が行使されるのを、民主的制度は防いでいる。ジャーナリストたちや真実を告げる者を保護し、民主主義の「ソフトなガードレール」に敬意を払うよう願う。
NYT Dec. 31, 2018
2019: The Year of the Wolves
By
David Brooks
Willa
Catherの小説“My Antonia”に、2人のロシア人農夫Peter and Pavelが登場する。彼らはネブラスカの平原に移住してきた。死の間際に、Pavelは、なぜ彼らが移住したかを話す。
はるか前に、ロシアで、2人は友人の結婚式で新郎の介添人であった。披露宴は深夜に及び、ようやく7つのそりに分かれて雪の中を宿に向かった。しかし、彼らがそりを走らせるうちに、数百の影が追ってくる。突然、周囲から狼の咆哮があがった。
そりを引く馬は駆けたが、狼たちは襲撃し、転覆したそりから落ちた人々は狼の餌食となった。Peter and Pavelはそりの先頭に立って、新郎と新婦を乗せていた。そりを引く馬の1頭が明らかに消耗し、今にも倒れそうだった。荷を軽くする必要があった。Pavelは新郎に向いて、花嫁を棄てるように求めた。Pavelは、それを拒む新郎と争い、新郎と新婦を共に狼の群れに投げ落とす。
Peter
and Pavelは生き延びたが、汚名を帯びた。新郎新婦を狼の餌食にした怪物として生きるより、新世界へ移住するしかなかった。
この物語はわれわれに、文明の外皮がいかに薄いものかを教えている。深刻なストレスや危機の瞬間に、善良な人々がどれほど変わるか、恐怖がこみ上げ、闘いが支配すれば、そして血の付いた牙や爪が、人々を変えることを思い出す。
2019年が始まるとき、この物語は特に重要だ。狼たちの年である。野蛮な、かつて考えられなかったことが起きるだろう。
政府は分裂し、政党はかつてないほど対立している。トランプの多くのスキャンダルについて捜査が進む。もしわれわれが健全な社会に暮らしているなら、起訴や公聴会、裁判は、真剣に扱われ、冷静に処理されるだろう。だれもが自制して、問題を司法システムに委ねる。
しかし、われわれは健全な社会に暮らしていないし、大統領は健全でない。トランプは制度の権威を認めず、それを理解することも、尊重することもない。彼の主張はわかっている。反エスタブリシュメント、反制度の左右の党派が、数十年間、主張してきたことだ。エスタブリシュメントは腐敗している。ゲームはいんちきだ。エリートたちは皆をだましている。
議会の指導者たちは選択を迫られる。憲法に忠誠を尽くすのか、党に忠誠を尽くすのか? 国民よりも党を優先すれば、この危機も政治劇の1つでしかない。トランプに投票した人々は、その犯罪の証拠を見ても、気にしない。これは政治ショーなのだ。
アメリカも破たん国家の1つであることがわかるだろう。善良な人々は屈服し、狼たちが自由に弱者を餌食にする。
NYT Dec. 31, 2018
Hope for a Green New Year
By
Paul Krugman
民主党が下院で多数を握っても、正直に言えば、何も新しい法律を成立させることはできないだろう。重要な法案で超党派の合意ができるとは思わない。
しかし、民主党は政策論争を無視してはいけない。逆に、この2年間を、彼らが2021年に権力を握るとき、実現すべき政策の構想を組み立てる時間にすべきだ。今の政策スローガンは、いわゆる、グリーン・ニュー・ディールthe Green New Dealだ。・・・それは本当に良い考えなのか?
そうだ。しかし、重要なことは、スローガンだけでなく、その細部をよく考えることだ。気候変動を抑えるために、積極的な行動を起こす。支持すべきは、マイナス面ではない。すなわち、投資と補助金であって、炭素税ではない。
エコノミストなら、汚染に価格を付けるべきだ、と知っている。経済学の基礎で学ぶように、炭素税は包括的な誘因となる。しかし、炭素税は税であるから、人びとが進んで払いたがらない。重要なことは、理想を追求するより、有権者に支持されることだ。少なくとも、その導入に際して。
アメリカの温暖化ガスの多くは、発電所と輸送システムから発生する。発電所には、石炭ではなく再生可能エネルギーに転換すること、輸送システムでは電気自動車に転換することを促すべきだ。税控除や煩雑でない規制によって、それは実現できる。エネルギー転換を促す技術とインフラに投資を増やすべきだ。
転換が特定の人々にコストを強いるだろう。5万3000人が石炭産業で雇用されている。化石燃料の関連企業は利潤が悪化する。彼らは新しい分野で雇用される必要がある。民主党の政策で彼らの状況を大きく改善し、敗者よりも、多くの勝者を生み出すことだ。
NYT Dec. 31, 2018
1919: The Year of the Crack-Up
By
Ted Widmer
The Guardian, Tue 1 Jan 2019
If we must look to the past, let’s
make it 1989 – a year of transformation
John
Harris
未来に何が起こるのだろうか?
Brexit推進派は、帝国と戦争と、ウィンストン・チャーチルやマーガレット・サッチャーに体現される、イングランドの天分を組み合わせた、幻想の合成物に執着している。アメリカでは、ドナルド・トランプが、自動車工場や炭鉱で働く筋肉質の労働者とすてきな孤立主義との時代を振り返っている。The Economistが最近号で指摘したように、ヨーロッパもアメリカも、政治は「懐古趣味の乱舞」に埋め尽くされている。それは、多くの西側の市民たちが、深刻な、明白な衰退の感覚を振り払えないからだ。
しかし、2019年は今とは全く逆の出来事が噴出した年から30年目である。それは、現在の分極化し、怨嗟に染まる雰囲気とはかけ離れた、楽観主義、未来への信頼、人間性を共有している感覚であった。1848年,1945年,1968年と同様に重大な、1989年の諸事件は、一つずつ取り上げられ、祝福されるだろう。
1989年は、概ね、ソビエト共産主義の時代の中東欧諸国に広がった、平和的な諸革命の年であった。そこでは人間性を阻んでいた権力の壁が、魔法のように消え去った。何が起きたかを知りたければ、1989年12月21日のチャウシェスクNicolae
Ceaușescu、ルーマニアの独裁者に起きたことを観ればよい。自分たちの集団的な力を突如として完全に理解した群衆を、彼は弾圧することに失敗し、自分の最期を悟ったのだ。
その6か月前に、同じ反抗の精神は北京にもあふれていた。その結果は天安門広場における虐殺であった。事件は世界にもう1つの鮮明なイメージを与えた。一人の男が、今も名前がわからないが、戦車隊の前に立ちふさがって、不可能なことを試みた。1989年の開放精神を体現し、同時に、それがいかに容易に吹き消されたか、を表現している。
Alexandra
Richieのベルリン史は、1989年のドイツの首都を描くが、東から西へ、歩いた人々の驚きを伝えている。「歓喜の群衆があふれた。ある者は寝間着で、スリッパのままだった。だれもが、これは人生を変える瞬間であると知っていた。・・・Radio Sender Freies
Berlinは、最初の夜だけで、5万人以上が西ベルリンに行った、という。」
イギリスでは、1988年夏から、マンチェスターの広大なクラブthe Haciendaに、電子音楽と興奮が渦巻いていた。共同オーナーのTony Wilsonは、「誰でも連れてきてほしい。どんな人でもここへ来れば、大好きになる。人間は喜びや幸せ、興奮を好むのだ。」 イギリスのダンスホールと旧共産主義体制の諸国とを結び付けることが、どれほど突飛に見えても、それらは明白であった。1980年代には、社会的分断、核武装の狂気、果てしない闘争があった。1990年の末までに、ネルソン・マンデラは解放され、サッチャーは失脚した。その7年後に、ニュー・レイバーがポップカルチャー時代の楽観を取り込み、政権を執った。それは1989年の精神であった。
しかし、ブレアが示したように、1989年の精神は傲慢につながった。1989年夏に、アメリカのFrancis
Fukuyamaがリベラリズムの最終的な勝利を宣言した。現実世界では、粗野な自由市場経済学が新しく自由化された東欧諸国に適用され、その怨嗟は今も残っている。バルカン諸国の悲劇は1989年のユーフォリアが間違っていることを示したが、経済政策を決めた同じ傲慢さが、イラク戦争にも至った。呪われた「リベラルな国際介入」の適用である。
今や、ポーランドとハンガリーはノスタルジアによるポピュリズムであり、ロシアではプーチンが1989年以降の西側による侮辱に復讐し、ソビエト時代の威信を回復しようとしている。強権指導者とナショナリズムの発散に向かう時代を生きるわれわれは、1989年の群衆の解放的な性格を失い、オンライン型のモッブに変わってしまった。
宴会は終わった。歴史は加速する。トランプ、Brexit、新しいポピュリズムは、世界がどれほど変化したかを示す。1989年が示したように、すべてが再び変化するだろう。デマゴーグとその追従者たちも、彼らのチャウシェスクの瞬間を迎える。今も、壁は倒れるしかない。
FT January 2, 2019
The new year could mark the
beginning of a new(ish) century
Frederick
Studemann
● バブルからアンチ・バブル
NYT Dec. 29, 2018
When the Bubble Bursts, Consider the
Anti-Bubble
By
Ruchir Sharma
ハイテク・バブルが終わった。次はどうなるのか?
投資家たちは、バブルを生むだけでなく、アンチ・バブルを生み出す。バブルは、新しいものに興奮し、激しい取引と、異常なスピードで株価を上昇させる、マニアによって定義される。それは経済や企業の成長によっては正当化できない水準まで株価を引き上げてしまう。アンチ・バブルはその逆である。関心がもたれていなかった分野の目を向け、取引は少なく、堅実な成長にもかかわらず、株価は低い水準で停滞する。
投資家たちはハイテク株に魅了されていた。アップルとアマゾンは1兆ドルを超える価値があり、アップルの価格で、東南アジア3大国(インドネシア、マレーシア、フィリピン)のすべての企業を買収できた。これは異常である。
歴史的に見て、株式市場の利回りが最大である企業は、最大の成長率を示す経済にあった。しかし、近年の傾向はそれと異なる。最高の利回りは、台湾のような低成長の国にある。最低の利回りは、高成長のフィリピンだ。その理由は、台湾がハイテク産業に優れており、フィリピンはそうではないからだ。
このハイテク・バブルは崩壊し始めた。1980年代の日本もそうだった。当時、日本は次の経済超大国になるはずだった。しかし、日本のGDPは世界の15%でしかないときに、世界全体の株式投資のおよそ半分近くを吸収していた。アメリカは、ほとんど2倍の経済規模と、成長する経済であったが、日本の影から脱け出そうともがいていた。アメリカは、その時代のアンチ・バブルであった。しかし、80年代の終わりに、日本のバブルは弾け、アメリカが舞台の中央にもどった。
再びアンチ・バブルのムードである。インドネシア、マレーシア、フィリピンの1日の株式取引額は、合計でも10億ドルに及ばないが、アップルだけで約60億ドルだ。ポーランドやメキシコも、アンチ・バブルの国である。投資先として魅力がないとしても、その株価が安いこと、そして休暇先としては良い国だ。
● トランプ外交
NYT Dec. 30, 2018
Why Trump Should Listen to the Old
Guard
By
Carol Giacomo
FP JANUARY 2, 2019
Trump’s Foreign Policy Is Here to
Stay
BY
JAMES TRAUB
● アメリカの内政
NYT Dec. 30, 2018
Spread the Digital Wealth
By
Ro Khanna
21世紀のアメリカにとって重要な問題は、内陸部の都市や、地方のコミュニティで、非白人のコミュニティを含む、人々がデジタル革命に参加できるか、ということだ。すべてのアメリカ人はハイテクの熱心な消費者であるが、多くの者は、ハイテク経済で創造的な仕事を果たす機会がない。
次の10年で、職場の60%が彼らの仕事の3分の2をAIによって自動化される。多くの伝統的産業がデジタル化する。われわれは既存のコミュニティ・カレッジ、大学に投資して、取り残された土地の人々にハイテク分野の雇用を増やす必要がある。連邦政府は企業にその誘因を与えるべきだ。雇用の10%を地方に向けるよう求めてはどうか。
NYT Jan. 3, 2019
Elizabeth Warren Wants to Stop
Inequality Before It Starts
By
Steven K. Vogel
(後半へ続く)