(前半から続く)
● 大恐慌への道
The Guardian, Sun 23 Dec 2018
The US is on the edge of the
economic precipice – Trump may push it over
Robert
Reich
金曜日、ドナルド・トランプは述べた。「われわれは長期の政府閉鎖に対する完全な準備ができている。」 これは「われわれ」ではなく、「彼」だ。シャットダウンの責任も、彼にある。
私はビル・クリントンの政権に参加していたが、ニュート・ギングリッチが1996年に政府の資金を閉じた。長期の閉鎖は多数の政府職員を苦しめ、彼らのサービスや給与支払いを妨げた。
トランプの政府閉鎖は、経済に関する不安を高めるものだ。すでに12月の株式市場は大恐慌以来の下落を示し、2018年全体では約7兆ドルが失われた。
トランプはさらに深刻な危機を懸念させる。もし彼が政府債務額の上限引き上げに失敗した場合、アメリカ政府はその債務支払いに応じられず、デフォルトとなる。その混乱は政府閉鎖どころではないだろう。
経済は何よりも支出に依存している。アメリカの場合、その70%は消費である。ほかに、政府支出と輸出がある。輸出市場は、ヨーロッパも中国も減速し、問題がある。アメリカ政府は債務に大きく依存しており、企業と富裕層へのトランプ減税がそれを増やした。
アメリカの消費者が経済を救出する、と期待してはいけない。アメリカ人の多くは、なお、2007年12月に始まった大不況の後遺症に苦しんでいる。職に就いていても、インフレ調整すれば、賃金は停滞しているからだ。富裕層が所得のますます多くの割合を占めている。しかし、富裕層は所得のごく一部しか支出しない。
アメリカ人が所得に見合った支出で生活していない、という問題ではない。彼らの所得が制y等にもかかわらず十分に増えないのだ。そして債務が増えていく。同じ罠が、2008年や1929年の前にもあった。
1929年の大恐慌後は、多くのアメリカ人に賃金上昇をもたらすよう、新しい仕組みを政府が導入した。社会保障、失業保険、残業手当、最低賃金、雇用者には労働組合との交渉を要求した。そして最後の完全雇用プログラムと言える、第2次世界大戦が起きた。
対照的に、2007年の株価下落後は、政府が銀行を救済し、不況を避けるために十分な資金を支出した。しかし、オバマ・ケアを除いて、停滞する賃金に関する対策は何もない。
過去の崩壊の原因は、銀行危機ではなく、消費支出と総産出(生産額)との不均衡であった。拡大する不平等が、経済の崩壊をもたらしたのだ。
● Brexit国民投票
The Guardian, Sun 23 Dec 2018
Labour’s leadership is at rock
bottom – it won’t be forgiven for conniving in a rightwing Brexit
Will
Hutton
The Guardian, Mon 24 Dec 2018
Corbyn has given up on Europe. For
the good of Britain, we cannot
David Miliband
論争は新しい、潜在的に混とんとした局面に入った。投資が止まり、職場は移り、ポンドの価値は失われる。イギリスは安定性に向かう力ではなく、政治的リスクとみなされている。
それでも指導者たちは幻想を振りまいている。第1の幻想は、Brexitではなく、政府の交渉や戦術の問題である、というものだ。そうではない。政府の無能さとは関係ない。もっと構造的な問題がある。関税同盟と単一市場がもたらす、摩擦のない取引、グッド・フライデー合意、それらを失ったら、イギリスに未来はない。
第2の幻想は、メイの合意案、もしくは労働党の代替案が通過したら、Brexitの仕事を終えて、イギリスの問題を改善できる、と言う。そうではない。合意案が成立しても、生来の関係を確定するには何年も交渉しなければならない。イギリスがBrexitの作業を終えるには、Brexitを止める選択を国民に問うことだ。
最後の幻想は、世界がイギリスとの通商条約を待ち望んでいる、というものだ。他国には独自の利益がある。イギリスの選択肢を増やしてくれるとは思えない。21世紀のルールを決める者は3つしかいない。EUか、アメリカ、中国だ。EUを抜けたイギリスは、ルールに従うしかない。
メイの合意案が成立しない場合、合意なしの離脱は残された選択肢になrない。内閣の5人が国民投票を支持している、と伝えられている。準備を慎重にしなければならない。アイルランドが示すように、国民投票は必ずしも国民を分断しない。国民が選択肢を決定し、論争にも参加することが重要だ。
The Guardian, Mon 24 Dec 2018
What Labour can learn about Brexit
from California: think twice
David
Adler
PS Dec 26, 2018
Turning Brexit Into a Celebration of
Democracy
YANIS VAROUFAKIS
Brexit論争で、親EUのイングランド諸都市と反EUの沿岸部・北部の町が対立し、イギリスの政府、議会、連合王国、そして、が破壊されつつある。しかし、矛盾したことに、イギリスの危機と苦難は、歓迎されるべきだ。Brexitがイギリスの民主主義を強化し、長期的な諸問題を解決する力を与えるかもしれない。
UKは“People’s Debate”に投資することで、“People’s Decision”に至る。すなわち、1.イギリスの政体を改革し、イングランド議会と多元的な地方議会を創造する。2.選挙システムと国民投票の役割を決定する。3.北アイルランドに関するUK・アイルランド共同主権を含む、アイルランド問題の解決。4.移民と移動の自由。5.金融の肥大化と国全体でのグリーン投資を刺激する、経済モデルの創出。6.UKとEUの関係。
PS Dec 27, 2018
The Sum of All Brexit Fears
CHRIS
PATTEN
PS Dec 27, 2018
Is Canceling Brexit Now Inevitable?
ANATOLE KALETSKY
● イギリスのホームレス
FT December 23, 2018
For the UK homeless this Christmas
will be cruel
イギリスには慢性的にホームレスが存在する。それは次第に制御できないものになっている。
最悪の場合、人々はシェルターを完全に失ってしまう。彼らは風雨や強奪の恐怖にさらされ、段ボール箱の下で、その場しのぎのねぐらを作る。ホームレスは大都市だけでなく、地方の町にも存在する。
木曜日に、国家統計局が初めて、路上で殺害されたケースの数字を発表した。数人が襲撃された後だった。2017年、そのように殺害された者が600人近くいた。野外で眠る人の数は緩やかに増加し、今年、それはほぼ5000人という記録的な水準に達した。それでも関係機関は、その数字が過小評価であると考える。
野宿する人々は、最も目立つ現象であるが、それだけではない。慈善団体のShelterによれば、27万7000人の人が広い意味でホームレスである。2010年以来、その数字は120%も増加した。一時的な避難住宅に住む人、ホステルや、友人の家のソファーで眠る人を含む。
ホームレスは、失業者、暴力の犠牲者、麻薬中毒、精神の障害を患う人、だけでなく、仕事に就いている人でも、上昇する家賃を支払うことができない、低い賃金しか得ていない人も含む。
● ドル安とQE終結
FT December 24, 2018
Weakening dollar spells the end of
lucrative QE trades
Jan
Dehn
● なぜ連銀は金利を上げるのか
PS Dec 24, 2018
In Defense of the Fed
STEPHEN
S. ROACH
PS Dec 27, 2018
Why Is the Fed Still Raising
Interest Rates?
MARTIN FELDSTEIN
連邦公開市場委員会(FOMC)は、12月初め、全会一致で短期金利の4分の1%引き上げを決めた。これは12か月間で4度目の引き上げだった。FOMCは、2019年に2度の引き上げを予定していると発表した。
批判者は、経済成長が減速し、インフレは目標の2%を切っているのに、以前の計画に従って金融引き締めを続けるのはおかしい、と言う。
適切な金利水準を決定するのは、変化し続けるさまざまな考えをバランスすることだ。今月とさらに2019年の金利を引き上げるFOMCの事情は、3つある。
第1に、現在の実質金利水準は低すぎる。消費者物価指数が2%で上昇したことから、実質金利は今回の金利引き上げ前にはマイナス、今でもほとんどゼロである。
実質ゼロ金利というのは、極度なデフレ状態であれば適切であるが、年率3%以上でGDPが増大し、失業率が例外的に低い3.7%である経済には、適切でない。連銀の推定によると、持続可能な失業率の水準は4.4%である。
極端に低い実質金利は多くの問題を生じる。企業は過剰な債務を負う。銀行は質の低い借り手にも、条件を低くして融資を増やす。証券投資家は、株価を持続不可能な水準に押し上げる。政府は、累積した国債への利払いが少ないために、さらに多くの国債発行に依存しようとする。
第2に、将来、不況が来るときに金利を引き下げるためには、今、より高い金利水準に戻しておく必要がある。現在の景気拡大期間は114か月に及び、第2次世界大戦後、最長のものになっている。多くの警告サインが現れている。株価下落、住宅市場の軟調、ヨーロッパ主要市場の減速、アメリカ輸出の不透明性。この2年以内に次の不況が始まるだろう。
過去3回の不況期には、連銀が政策金利を、5%、4.8%、5.3%、引き下げた。現在の2%水準からでは、わずか2%の引き下げでゼロに達する。マイナス金利はむつかしく、銀行・保険業に弊害も予想される。
第3に、FOMCは実質金利を「中立」の水準に戻したい。中立な金利とは、総需要に対してデフレにもインフレにも働かない金利だ。それはインフレ率から単純に導けないし、複雑な経済モデルで推定しなければならない。パウエル議長たちは、その値を厳密に室ことは困難だ、と強調した。
私見では、近年、その値が大幅に低下し、連銀など、中央銀行の政策はそれを反映している。それは、およそ2%だろう。つまり、現在の実質0%の金利は、伝統的な中立の水準に戻るために、なお切り上げを必要とする。
最近の決定は、残念ながら、少なすぎるし、遅すぎるのだ。
FT December 28, 2018
Expect more turbulence from Trump’s
Fed fight
Gillian
Tett
● トランプによる株価下落
FP DECEMBER 26, 2018
Investors are Jittery and the Reason
is Trump
BY
MICHAEL HIRSH
ドナルド・トランプ大統領が12月の株価下落について連銀のパウエル議長を責めるのは、完全に間違っているわけではない。専門家たちは、the Wall Street Journalも含めて、クリスマス前に「金融引き締めを一休みせよ」と求めた。
問題は、トランプがパウエルを責めたことではなく、彼が経済について何も理解していないことだ。先週、トランプはパウエルを解任することを示唆した。パウエル使命についてムニューシン財務長官に不快感を示した。ムニューシンは、銀行には十分な流動性と資本がある、と公言した。
しかし、ムニューシンのコメントは市場に不安を与えるだけだった。2008年の銀行危機や大不況を思い出させたからだ。そして、最も深刻な問題は、自由世界のリーダーは、市場の動きや基本的な経済学を理解しているのか? ということだ。
「現実と彼らの経験不足とが、トランプ政権の行動に制約となり始めた」と、Adam Posen(the
Peterson Institute for International Economics)は言う。「現実とは、貿易はビジネスにとって(そしてアメリカ経済にとって)良いことであり、連銀が法的に独立しているのは良いことであり、外国人排斥のために国境の壁を築くのは実現不可能だ、ということだ。」
「同様に、政府と市場との関係を知らない者たちだけが、危機がないときに危機管理会議を開く。また、連邦政府の閉鎖を長引かせるような信用の破壊を良い考えだと言う。市場は彼らを無能であると見る。」
トランプの演説やTweetから見て、彼は保護主義を、中国やカナダ、EUの市場開放を求める道具としてではなく、原理として信奉している。もちろん、現在の株価下落には多くの理由がある。おそらく、それらはトランプとあまり関係ない。Kenneth Rogoff(Harvard
University)は、株価下落の理由として、「天安門事件以来、中国が経験した最悪の成長減速が始まったようだ」と指摘した。トランプの貿易戦争より、中国指導者の誰かが責められる。そして、連銀議長だ。
トランプは自分の役割を何も知らない。そして、投資家たちが間違っている、と言うのだ。「途方もない買いのチャンスだ。」 2009年3月に、バラク・オバマが記者会見で同じことを言った。その1週間後に市場は底を打って、10年の上昇を始めたのだ。しかし、トランプは違う。事態が思い通りにいかないとき、彼は誰でも他の者を責める。
彼の政権にはもはや、タフで、経験のある、政策立案者がいない。James MattisもJohn
Kellyも失った。
FT December 28, 2018
Three key takeaways from a volatile
year for 2019
Mohamed
El-Erian
株式から債券への投資の移転を促すには、十分な条件がない。利回りは低く、今後、QEの逆転で、債券価格も下落する。
● トルコの和平
YaleGlobal, Thursday, December 27,
2018
Recalling Turkey’s Peace Process
Ronay
Bakan
● アフリカ
FT December 27, 2018
Five things that shook Africa in
2018
David
Pilling
● 気候変動対策
FT December 27, 2018
Money managers: the new warriors of
climate change
Anjli
Raval and Attracta Mooney in London
PS Dec 27, 2018
Carbon Taxes at the Barricades
ADAIR TURNER
「黄色いベスト」運動は、気候変動と闘う政策に反対しているのではない。デモの参加者たちは、ディーゼルよりも航空機燃料への税を高くするよう求めている。気候変動に反対するなら、そのコストをもっとも追わないものに犠牲を求めて進めるべきだ、と。
マクロンの政策は、どのような形で炭素税引き上げを試みてはいけないか、その見本である。所得分配への影響、より広い政治経済的条件への配慮がもっと必要だった。
1.炭素税がもたらすメリットを、すべての市民に見えるものにする。2.所得分配への効果、公平さの認識に対して、特に配慮する。3.炭素税を引き上げていく過程では、浮動的な一次産品価格に配慮し、その移行を慎重に管理する。
PS Dec 27, 2018
Politics, Economics, and Carbon in
2019
MICHAEL
J. BOSKIN
NYT Dec. 27, 2018
Forget the Carbon Tax for Now
By
Justin Gillis
● マクロンの後退
PS Dec 27, 2018
The Center Left and Globalization
KEMAL
DERVIŞ, CAROLINE CONROY
マクロンは、フランスを改革し、EUを改革する、と約束して当選した。しかし、今、その最大の危機に直面している。
EUのルールに従い、予算赤字をGDPの3%以内に抑えなければならない。同時に、新しい技術のもたらす混乱を吸収するのに十分な社会保障システムを近代化する必要がある。それらは政治的に困難だ。
マクロンの支持票の3分の2は中道左派が与えた。彼には2つの道があった。1つは中道右派の改革、労働市場・税制・投資政策を変えて、フランスを「資本主義的」グローバリゼーションに「適応」させる。もう1つは左派的国際主義のあいまいな道である。中産階級を支援し、技術革新やビジネス・モデルの破壊的効果を吸収する従来の政策を更新する。Dani
Rodrikが以前から主張してきたように、グローバリゼーションを維持するには、より大きな国家が必要なのだ。
しかし、インサイダーを強く保護するフランスの労働組合を改革し、だれもが職を得やすくすること、国有鉄道システムを見直す改革は、マクロンの左派的な支持基盤を失わせた。次第に、彼の改革は富裕層の利益に一致するようになった。国民の70%が「黄色いベルト」運動を支持し、マクロンは後退を強いられた。
マクロンは中道左派の路線にもどればよいのか? そうではない。所得や資産の不平等、環境の持続可能性、民主主義に関して、左派の改革案はまだグローバリゼーションへの準備がなされていない。ネオリベラリズムに反対して、新しい社会契約を求めている。
特に、左派は国内の再分配政策に焦点を当てるだけでは、闘いに勝てないだろう。技術革新とグローバル・ネットワークは逆転不可能だ。減速させることは可能だが、その結果は、将来、経済の競争力が失われる。正しい選択は前進すること、同時に、すべての市民を支援し、失った者たちに補償する、社会福祉を改革することだ。
そのためにも、政府間で協力し、社会保障システムの維持に必要な財源を奪うような、低税率を認める権限を国際規制しなければならない。革新的なアイデアを、国内・国際レベルで広めるべきだ。
技術革新はすべての者に利益をもたらす。そのためには破壊的な効果を管理する指導力が必要だ。それを欠くなら、20世紀の破滅と世界戦争を再現するだろう。マクロンはその先駆けである。
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The Economist December 15th 2018
How the
super-rich invest
Brexit: Very
rocky
France:
Surrender, or tactical retreat
Democratic
Republic of Congo: The Kremlin-style charade in Kinshasa
Charlemagne:
Road ahead closed
The Reserve
Bank of India: Exit on Mint Street
(コメント) 超富裕層の投資は、金融機関やヘッジファンドに頼らず、急速に自分たちの家産管財人、パーソナル・オフィスによって、独自の基準で行われるようになる、と予想します。それが金融市場に与える影響は、長期安定的な投資に向かう、と好意的に描かれます。
イギリス、フランス、ドイツ、イタリアのヨーロッパ主要諸国がますます深刻な政治経済混乱を示す中で、EUの前進に必要な「政治的取引”a
grand bargain”」は可能なのか? その構想は、これまでの経験から導けるとしても、民主的なプロセスを実現する政治的能力が失われています。
コンゴ民主共和国のカビラや、インド準備銀行を締め上げるモディが、EUの手本となる日も来るのでしょうか?
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IPEの想像力 12/31/18
12月30日
探検バクモン、スペシャル「平成遺産審議委員会」を観ました。
車イスのラグビーを観ました。
東京リボーンの録画を、少しだけ観ました。
12月31日
教育番組の国際賞・日本賞。イギリスの難病(動静脈奇形)に苦しむ少女が「マイ・ライフ」をネットに投稿し、多くの励ましを受ける。他方、オランダのスマホとアプリに依存する若者たちを描く「#タグ付けされた世界」。
紅白歌合戦を、母と、少し観ました。つまらない。騒がしい。
辻井伸行のピアノ演奏を中心とした番組を観ました。
1月1日
熊野古道の紹介の一部を観ました。他に、山歩きや登山を観ることはできませんでした。
駅伝やラグビーを観ました。
土井善晴の美食探訪を観ました。
ドキュメント72時間を観ました。特に、東京タワー。
1月2日
箱根駅伝を観ました。
録画で「相棒」を観て、がっかりしました。
1月2日・3日
録画した「孤独のグルメ」を観ました。京都、銀閣寺、グジを使った土鍋のご飯です。
箱根駅伝2日目。途中、自分もランニング。ブックオフまで行って、恩田陸の『ライオンハート』を買いました。
作家という天職の言葉が創り出す世界に驚嘆しました。今、2つだけ読みました。
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「不思議だ。」
「人生に絶望した自分と、未来からやってきたという少女と、こんなに大勢の群衆とが、同じものを待ちながら同じ稲妻の光を見ている。同じ一瞬の光に照らし出されている。これは、はたから見たら奇妙な光景ではないだろうか。この1日は、この切り取られた場面は、遠い未来から見たらどういう意味を持つのだろうか。」
共産主義の妖怪ではなく、トランプの亡霊におびえて下落する世界の株式市場を、私たちも観ています。この小説が描くような戦場においても、大勢の人たちがトランプの政治ショーを見ているのではないか。
「もうすぐ、あの男がドイツの首相になるわ。」
「ドイツはどんどんヨーロッパを飲み込んでいく。だれにも止められない。みんな手をこまねいている。」
「ねえ、エリザベス、もういいだろう。おまえの話し上手はよくわかったよ。みんな本気にしてるじゃないか。もう帰ろう。」
2019年も、中国の脅威について、繰り返し、警告する政治家が増えるのでしょう。しかし、小説に現れたこの少女は、警告しているのではなく、未来を知っているのです。そのことをわかってもらうために、自分がエドワードの愛するエリザベスであると信じてもらうために、話し続けます。
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2人は、長く互いの夢の中に現れるだけの恋人です。そして、さまざまな時代に、わずかな時をいっしょに過ごす。
「なぜきみと僕なんだろう?」
「わからないわ。」
「でも、わたしはあなたで良かったわ。いつもあなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。いつもいつも。会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚えるのよ。」
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戦場となった国においても、飢餓の土地においても、金融危機の国、多くの難民を乗せた船、内戦と虐殺が続く土地、ポピュリストの政治家が煽動する群衆の傍、差別に苦しむ農村部の集落、バブルに翻弄される社会、大国が掲げる正義と、蹂躙される周辺地域、超近代兵器と情報戦を駆使した新しい「安全保障」。
さまざまな土地で、多くのエドワードとエリザベスは再会し、また時代の波に消えていきます。しかし、こうした2人の輝くような愛情があるから、世界は存在し続けることができる、その逆ではない、と思いました。
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