IPEの果樹園2018

今週のReview

12/24-29

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イギリス議会政治の危機 ・・・反中国のコンセンサス ・・・トランプによる連邦政府閉鎖 ・・・グローバルな人口移動の管理体制 ・・・ホームレス ・・・気候変動を否定するコスト ・・・ナショナリズムの悪しき結果 ・・・BJPの敗北 ・・・グローバリゼーション4.0 ・・・米軍のシリア撤退 ・・・新興市場と住宅市場

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 イギリス議会政治の危機

The Guardian, Sat 15 Dec 2018

Crossrail reveals the depth of Britain’s north-south divide

Simon Jenkins

The Guardian, Sun 16 Dec 2018

Failed by both its major parties, betrayed Britain lurches towards the abyss

Andrew Rawnsley

シーソーは破壊された。振り子は動かない。潮流は凍結した。かつてイギリス政治を説明するのに役立った、確かなイメージが、Brexitによって混乱してしまった。

最も顕著な敗残者は超Brexit派である。彼らは「コントロール・支配力を取り戻す」と騒ぐばかりで、瀕死のメイ首相を退陣させることもできない。Brexitの妄想は、常に、少数派の中でも特別な少数派であり、今では誰もそれに入らない。

首相にとっては、彼女の糾弾者たちが敗退したことも、それが勝利を意味するわけではない。現在の地位にとどまるために、彼女は次の選挙前に辞任する、と約束した。

危機は終わらない。Brexitの妄想に憑かれた者たちはメイの合意案を支持しないだろう。政治の放火犯たちは、妥協するより自分たちの政党を燃やし、この国の経済を燃やすだろう。メイは今も、過去の失敗と不器用さがもたらした、議会内の数合わせの囚人である。

ウェストミンスターとヨーロッパ各地の首都で、メイがより良い合意を見いだせる希望はない。大陸の指導者たちは、メイを助けるために妥協する気持ちなど少しもない。

もし彼女が1月後半まで採決を延期したら、イギリスが断崖から飛び降りるリスクは急速に上昇するだろう。彼女の閣僚たちも、このような「やるか・死ぬか」の戦略を無謀と考えている。

もし政治の伝統的なシーソーが働いていたら、こうした与党の惨状は、少なくとも、明確な勝者をもたらす。野党の労働党である。1990年代のマーストリヒト条約がそうだった。労働党は次の選挙で大勝するはずだ。

しかし、歴史は繰り返さない。保守党の失敗にもかかわらず、労働党への支持は高まらない。労働党のコービン党首は、党として支持されないだけでなく、指導者の支持率もメイ首相より少ない。彼らも妄想をもてあそんでいる。自分たちが交渉すれば、EUの外にありながら、すべての利益を享受できる、というのだ。有権者はそれを信じない。

2大政党が敗北するとき、最大の損失を強いられるのはBrexitのイギリスだ。この国は破滅に向かって進んでいる。それがわかっているのに、だれにも止められない。

FT December 16, 2018

MPs must vote on Brexit and be ready for a referendum

Justine Greening

PS Dec 17, 2018

The Continuing Agony of Brexit

ROBERT SKIDELSKY

UKとアイルランド共和国とは、後者を分割する境界線を共有している。アイルランド共和国はEUにとどまり、北アイルランドはUKの一部だ。Brexitは北アイルランドをEU関税同盟の外に出すが、メイの合意案は税関のための「ハード」な境界を作らないために苦心した。

これは単に経済的な便宜ではなく、文字通り、生死の問題である。1922年、アイルランドがイギリスから独立したとき、6つのプロテスタントのカウンティがUKにとどまった。このUKに残った部分には、自由貿易と人の自由移動とが認められてきた。

不完全な独立を得たアイルランド共和国は、1999年まで、その憲法に全島の「回復」を約束していた。他方、北アイルランドの多数派であるプロテスタントたちは、ますます強くイギリスとの関係を求めた。30年間の暴力的な紛争は、双方に3600人以上の死者を出した。1988年、グッド・フライデー合意により、ユニオニストとナショナリストの権力共有が成立したのだ。

メイは、イギリスがEUを離れても、「一時的に」EUの関税同盟にとどまり、EUとの自由貿易交渉が未決である間は、北アイルランドとアイルランド共和国との境界線を開放することの「保証backstop」とした。

イギリス議会は、離脱と残留とに分断されている。それは与党・保守党と野党・労働党の内部にもある。残留派は3つだ。イギリスの労働者を守るEU「ソーシャル・マーケット」を支持する左派、Brexitの経済コストを懸念するビジネス・金融界、ヨーロッパ政治統合に果たすイギリスの建設的な役割を信じる理想主義者、である。離脱派も3つある。自由な企業を窒息させる「超国家」としてブリュッセルを拒むサッチャー派、グローバルな自由貿易システムの一部であるイギリスを支持する者、文化的アイデンティティを守り、外国人を排除する「取り残された人々」だ。

メイの解散と選挙で、多数を失った保守党は、合意案を成立させる議席を得る見込みがない。保守党内の分裂、労働党やスコットランド国民党など、野党からの支持を計算できないからだ。成立しない場合、第2の国民投票 “people’s vote” という声が高まる。しかし、人民に何を尋ねるのか? 第1回の投票と同じ結果になるかもしれない。2回目の投票で残留派が勝利する場合、激しい怨恨が何年にもわたってイギリス政治を動揺させるだろう。

われわれは1月の採決がメイの合意案を成立させるよう願うしかない。

FT December 18, 2018

Is Britain heading towards a second Brexit referendum?

George Parker, Political Editor

FT December 18, 2018

No-deal dreamers could force a Brexit rethink

Robert Shrimsley

FP DECEMBER 18, 2018

Brexit Is Destroying Britain’s Constitution

BY GARVAN WALSHE

The Guardian, Wed 19 Dec 2018

This epic fight in parliament could lead to a new, better democracy

Martin Kettle

FT December 19, 2018

Brexit Britain has imported a political virus from the Middle East

Roula Khalaf

保守党議員によってメイ首相の不信任決議案が投票される日に、世界で最も機能しない国家の地位を争うレバノンが、テムズ川を見渡すロンドンの会場で、ロードショーを行っていた。1人の官僚はスピーチの予定があったのに現れず、もう1人も出たり入ったりしていた。皮肉な情景は誰にも明らかだ。

レバノンのSaad Haririハリリ首相は、政治的争いにより新内閣の成立に数か月を要したが、不確かな運命によろめく、もう1つの政府、すなわち、イギリスに支援を求めていたのだ。

私は長い間、レバノンとイギリスの政治を比較する衝動を抑えてきた。レバノンは私が去った国であり、イギリスは日々を送る国である。レバノンのユニークなところは、シリアとイスラエルに挟まれた位置にあり、イランとサウジアラビアの間でフットボールのように扱われ、今も、15年に及んだ内戦の遺産を、終結から25年経っても、ぬぐいきれないことだ。中東の混乱の中で、レバノンは謎である。さまざまな宗派が重なり合って、紛争の重層構造を作りながら、ヒズボラという政党が、自ら武装して、だれが首相や大統領であるかに関わらず、この国を支配している。

他方、20年前に私を受け入れてくれたイギリスは、安定性と文明生活の理想であった。政治的な対立がどれほど高まっても、秩序ある、しばしば頑強な、議会の論争を経て、イギリス式の合理的なやり方で解決した。政治家たちが互いに情念を尽くして憎み合いながら、銃撃や迫撃砲を発射することで、敵対者を葬ることはない。そのことに慣れるまで、私は時間を要した。

しかし、この2年間、Brexitがイギリスの政治家たちを戦争する諸部族に変え、社会をリメイナーズ(残留派)とリーバーズ(離脱派)とに分断した。この国も中東のウィルスに感染したのではないか、と私は疑っている。

さらに、Brexitの核心にある、主権の問題は、レバノンが1940年代にフランスの支配から独立して以来、多大の苦労を味わいつつ格闘してきたことだ。主権を相対的なものとみなし、近隣諸国の利害を考慮するしかない小さな国、レバノンと違って、EUの内であれ、外であれ、UKは自信をもって主権を前提している、と私は予想していた。

しかし、イギリスのBrexit派は、レバノンのような低開発国から、不幸な態度を輸入してしまった。すなわち、真っ赤な嘘やいい加減な話を信じて、暗闇に飛び込むことを求められた有権者たちを、あからさまに侮辱するような態度である。元外相のボリス・ジョンソンが示した無頓着さは、特に、機会主義を政治の本性とするレバノンにふさわしい。

他方で、両国の類似はここで終わる。私は最近のメイ首相のスタミナ、同じメッセージを執拗に繰り返し、議員たちの心を変える試みには、強い印象を受けた。あれほどの自制心を持った政治家を、私は何十年間もレバノン政界で観たことがない。

また、メイ首相は闘争でたとえ敗れても、自宅に帰って散歩を楽しむことができる。残念ながら、レバノンではそうではない。1年前、ハリリ首相の主要な支援者であるサウジアラビアが彼を疑い、リヤドに呼び寄せ、拘束した。その後、彼はオウムのようにテレビでサウジの主張を繰り返した。

完全な独立が不可能な国家ではこうしたことが起きる。幸い、イギリスでは、EUの中でも外でも、こうしたことが起きないのだろう。

FP DECEMBER 19, 2018

Clap Your Hands If You Believe in Brexit

BY ROBERT SAUNDERS

YaleGlobal, Thursday, December 20, 2018

Brexit Math

Jolyon Howorth

The Guardian, Thu 20 Dec 2018

There’s a national emergency all right – but it isn’t Brexit

Aditya Chakrabortty

FT December 20, 2018

Brexit Britain should follow Canada’s lead

Philip Stephens

FT December 21, 2018

One thing about Brexit is certain — no one knows anything

Henry Mance

NYT Dec. 20, 2018

I’m an Expert on Negotiations, and I Have Some Advice for Theresa May

By Deepak Malhotra

交渉の専門家としてメイ首相に助言したい。

彼女は初期に2つの重要な失敗を犯した。第1に、自分の政治問題にばかり注目し、EUの不安や制約を真剣に取り上げなかった。第2に、事実を無視した「ハードBrexit」を信じる群衆に冷静さを求めず、それを煽って自分も仲間になった。

しかし、首相が交渉を成功させるのはまだ可能である。そのためには、派閥の代表ではなく、対立の調停者になるべきだ。

あまりにも複雑で、制約が大きいために、たとえ1つでも皆が取引できる点があれば、さまざまな集団は幸運である、という交渉がある。温暖化防止策、イスラエルとパレスチナの紛争、シリア内戦。こうした交渉では、あなたは要求リストを持って入るだけでは交渉できない。調停者の姿を取り、災厄を回避するために、すべての側に、困難な、しかし必要な妥協を求めるのだ。

妥協を求める基本を教えよう。

1.交渉の詰め方を考えよ。Brexit強硬派はメイの合意案を支持しない。彼らは合意なしの離脱を選ぶ。その場合、メイは「合意なし」より「2度目の国民投票」を選ぶ。

2.正直であれ。メイは合意案が「完ぺき」ではないと認めるべきだ。北アイルランドの「安全策」は望まない。しかし、EUも望まないから、真の脅威ではない。回避策を練るべきだ。

3.正直に示すことで、交渉力を得る。合意案を支持しないなら、「2度目の国民投票」が起きる。保守党の議員たちはそれを避けたい。

4.メイの合意案を支持しない保守党議員は、現実のBrexitを観た有権者たちに対して「2度目の国民投票」をすれば、メイの最も好まない選択肢、「合意なし」の離脱、は回避できることを知っている。彼らが妥協するだろう。


 イタリア

FT December 16, 2018

Italy: pinning the blame on Brussels

Miles Johnson in Rome


 ECB

FT December 16, 2018

The eurozone risks sleepwalking into a downturn

Wolfgang Münchau

先週、ヨーロッパ裁判所が、量的緩和について重要な判決意を出した。裁判所はECBによる政府債券購入プログラム(QE)を正当と認めたのだ。

ドイツのユーロ懐疑論者は、ECBは財政移転の道具だ、と告発してきた。彼らはユーロ圏のガバンスを政治的・法的に非難する運動を続けるだろう。今のところは成功していないが。

ドラギMario Draghi総裁が言うように、QEECBの重要な政策手段に入った。他方で、2.1兆ユーロのユーロ圏政府債を、ECBが資産として保有していることも重大な事実だ。しかも、QEにもかかわらず、ECB2%のインフレ目標を達成できていない。QEは、新規の資産購入を終える、と発表した。

本当に悪いニュースは、経済が早期に悪化するかもしれない、ということだ。世界成長は減速し、株式市場は弱気、トランプ大統領はヨーロッパの自動車に関税を課す。ハードなBrexitが起きるかもしれない。もしこれらが重なれば、世界金融危機にも匹敵する衝撃になるだろう。

強力な金融緩和の余地はなく、EUの指導者たちが不況に対抗する財政政策の協調をすることもない。2012年、2015年にユーロ圏を救ったドラギはもうその地位を去る。ユーロ圏は、官僚や政治家は否定するが、日本型デフレのシナリオに入ったのかもしれない。

ECBQEを進め、さらに購入プログラムを拡大するのか? 企業の株式を買い、投資を助ける。売れ残ったディーゼル車を買う。しかし、ECBがイタリアのファッション産業の株式を購入するとしたら、ドイツの反応は? マイナス金利をドイツの貯蓄にもたらすときの反応は?

金融改革をする政治的意志はなく、金融手段を使い果たして、今、不況がやってくる。

PS Dec 17, 2018

The Eurozone’s Solidarity Fallacy

JÜRGEN STARK


 反中国のコンセンサス

FT December 17, 2018

America, China and the art of confrontation

Gideon Rachman

NYT Dec. 17, 2018

How to Make the Trade War Even Worse

By Jennifer A. Hillman

FT December 20, 2018

America’s future is Asian, not Hispanic

Janan Ganesh

FT December 20, 2018

The new era of US-China decoupling

Edward Luce

今年、最も驚くべき会合は、アメリカで反中国のコンセンサスが形成されたことだ。それはドナルド・トランプのホワイトハウス、共和党、民主党の議会、ビジネス、労働組合、グローバリスト、ポピュリストに広まった。アメリカはおよそあらゆることで戦争しているが、中国に関する不安で統一した。

新しいワシントン・コンセンサスに支持されたトランプは、習近平に「中国製造2025」を解体するよう求めている。

40年間、収れんを進めてきた米中関係が、分解し始めた。両国は1979年の国交正常化以後、中国の国際舞台への登場をアメリカが保証してきた。1989年の天安門事件、1996年の台湾海峡における緊張、といった一時的停滞はあったが、アメリカは中国が次第に開放的な、そして、権威主義的な姿勢を抑えた、パートナーになると信じた。

バラク・オバマが、重要な諸問題を協力して解決する非公式な「G2」を試みたが、中国は今、オバマが大統領になったときよりも、開放度や自由において後退している。

ファーウェイ幹部の開放の条件として、トランプ大統領が中国に貿易問題での譲歩を求めた。グローバリゼーションの正常なルールは捨てられたのだ。こうした不確実性ほど、ビジネスが嫌うものはない。その結果は2つだ。

1.経済的な関与の後退。中国によるアメリカへの投資は、急激な増大を数年続けたが、2018年は4分の1に減った。中国の技術戦略は、買収より、輸入代替に転換し、マイクロチップ、航空機、ロボットを国産化するだろう。

2.その他の諸国は、アメリカと中国の間で、喜べない選択を迫られる。日本やシンガポールは、両国に接近してリスクをヘッジするだろうが、ロシアのように中国を選択する国もある。

かつてリチャード・ニクソンは中国をソ連の軌道から切り離した。この劇的な転換が、冷戦におけるアメリカの勝利に役立った。トランプは、ニクソンの逆を、開始しつつある。

NYT Dec. 20, 2018

China Is Willing to Make a Deal

By Eswar Prasad

中国の政府関係者や学者、企業家たちは、成長の減速を懸念している。また、市場改革が後退していることにも関心がある。

トランプ政権が中国に加える改革に向けた圧力は、それが中国側の支持を得るときには、アメリカの勝利や世界経済の成長にとってプラスになるだろう。


 日銀

FT December 17, 2018

Japan’s inflation target is still remarkably elusive

日銀は成功したのか、失敗したのか? 失業率は驚くほど低い。その意味では、成功した。しかし、インフレ率は目標の2%よりもずっと低い。金融引き締めの時期ではない。しかし、追加の政策には困るだろう。

日銀がGDP100%に相当する金融拡大を行っても、インフレへの影響はなかった。これを説明することはまだできていない。経済が加熱したわけではない。ドルに対して円が増価した。インフレ期待はゼロ近辺にとどまっている。

これほど消費の少ない国で、消費税を引き上げるのは間違った考えだ。もっと他の何か、配当や投資に支出されない企業の利潤に課税する方がはるかに良い。あるいは、「ヘリコプター・マネー」が必要がもしれない。

政府がデフレ脱出のために日銀と協力するべきだ。

FT December 20, 2018

SoftBank mobile IPO flop a lesson for Japanese investors

Leo Lewis

SoftBankの新規株式公開は、初日に14.5%の下落となった。90億ドルの市場価値が失われた。


 企業の評価

FT December 17, 2018

Wake up world and embrace the impact revolution

Ronald Cohen

社会的価値や環境保護を企業価値に繁栄することは可能だ。


 EUの危機

SPIEGEL ONLINE 12/17/2018

Yellow Vests Protests

If Macron Fails, Europe Fails

A Commentary by Henrik Enderlein

FT December 18, 2018

Emmanuel Macron’s European ambitions are hobbled by troubles at home

Tony Barber

PS Dec 18, 2018

Overestimating the EU Economy

MOHAMED A. EL-ERIAN

NYT Dec. 18, 2018

The End of Europe?

By Thomas L. Friedman

2次世界大戦後、リベラルなグローバル秩序が、歴史のいかなる時代よりも、世界中により多くの自由と繁栄を広めた。その秩序には2つの支柱があった。アメリカとEUである。

しかし、これら2つの自由市場、自由な移民、自由なアイデアの中心地が、今や、地方や郊外を超えて、大規模な白人労働者と不安を抱える中産階級の反抗によって混乱している。彼らは一般に、グローバリゼーションや、移民流入や、技術変化によって利益を受けていない。それらはロンドン、パリ、サンフランシスコのようなスーパースター都市、多文化住民の地位を高めても、その利益とは無関係な多くの人々がいる。

技術変化とグローバリゼーションが加速する世界で、多くの移民が彼らの中央から離れた社会に入ってきた。長期に凍結された社会が変化を被ったのだ。平均的な仕事が、もはや、平均的な中産階級の暮らしを維持する平均的な賃金をもたらさない。人々のアンカーとなってきたさまざまなものが同時に破壊され、皆がソーシャル・ネットワークでその空隙を満たし始めた。

「黄色いベスト」運動に参加した、62歳の学校教師は言う。「マクロンはわれわれのルイ16世だ。われわれは彼がどうなるか知っている。ギロチンで処刑されるのだ。」

Le MondeのライターであるAlain Frachonは述べた。マクロンは、「革命の国、フランスではなく、シンガポールを統治していると考えたのだ。」 またアメリカの外交専門家Michael Mandelbaumは言う。「フランスには今、支持者のいない指導者と、指導者のいない反対運動がある。」

フランスの外交アナリストDominique Moïsiは言う。多くの理由で、人々は北京を向いている。「UKは自殺し、フランスの暴動はフランスを越えて重大な影響を及ぼす。もしマクロンがヨーロッパの最後の防衛に失敗すれば、それはヨーロッパの終わりである。」

PS Dec 20, 2018

The Yellow Vests Are Here to Stay

SŁAWOMIR SIERAKOWSKI

誰が改革のコストを支払うのか?


 プーチン

NYT Dec. 17, 2018

Yo, Putin

By The Editorial Board


 トランプによる連邦政府閉鎖

NYT Dec. 17, 2018

Chaos? A Trump Specialty

By Michelle Cottle

議会とトランプ大統領とが国境の壁の建設費50億ドルに関して妥協しなければ、週末には連邦政府が閉鎖される。しかし民主党議員たちは、トランプの愚策に1ペニーでも支払うくらいなら、足の爪でもかじる方がましだ、と考えている。

もし連邦政府が閉鎖されたら、その責任は110%、大統領にある。議会は珍しく超党派で、トランプが彼らに何も他の選択肢を示さない、と批判している。通常は、双方のチームが政府の閉鎖を避けるための妥協を図る。トランプは共和党が妥協することを不可能にした。先週の火曜日、民主党の議会指導者たちも加わったテレビ会議で、トランプは、政府の機能を停止させることを「私は喜んで引き受ける」と述べた。「私はそのことで君を責めない。」と、トランプは上院の民主党指導者Chuck Schumerに告げた。

民主党の指導者たちは喜んだが、共和党議員たちは危機を回避するために何もできないことを嘆いた。「誰も、これが何を意味するか、どうしたらよいか、わからないのだ。」と数週間後に引退する議員はThe Timesに語った。

トランプは政府閉鎖を歓迎することで、議会両派の議員たちが降参し、混乱が自分たちの制御できるものではない、と主張する自由を与えた。議事堂周辺の雰囲気は、非常事態や行動への切迫したものではなく、宿命論に近い。

トランプはドラマのすべてを支配している。チキン・ゲームだ。彼にとって交渉とは、そして人生はすべて、終わりのない神経戦である。政府閉鎖はトランプにとって肥沃な大地である。なぜならトランプは、ここで政治のエスタブリシュメントと対決できるからだ。彼は、議会が協力しない、彼の思い通りに事態を動かせない、と繰り返し発言してきた。政府をカオスに投げ込むという脅し、すなわち、休暇にしてしまい、あるいは、何万もの労働者たちに給与を支払わないことで、彼はカタルシスを味わい、議員たちの生活を彼がどれほど苦しいものにできるか示すのだ。

混乱をもたらす戦闘の雄たけびと暴論は、今なお、トランプの重要なブランドである。彼は幼児をあやすようなわけにはいかない。残り2年間は、政治にとって永久に近い。

今や彼はタフ・ガイの演技を楽しむことができる。彼が何を破壊しても、オルタナティブ・ファクトを提供し、勝利を叫ぶに違いない。このクリスマス休暇は、いつものように、彼のためにある。

NYT Dec. 20, 2018

Elizabeth Warren, Trumpian of the Left

By Bret Stephens


 グローバルな人口移動の管理体制

FP DECEMBER 17, 2018Pay to Stay?

Why U.S. aid to Central America has not eased the flow of migrants.

BY MAYA AVERBUCH, SARAH KINOSIAN

YaleGlobal, Tuesday, December 18, 2018

Migration: A Case for Stay and Build

Chandran Nair

戦争を逃れた数百人の難民を積んで、貨物船は港にゆっくりと近づいた。管理当局は難民たちを発見し、その上陸を拒んだ。国際的な人道危機は、絶望した難民たちが自分たちの船を沈めたことでようやく解決した。これは現在のイタリアやギリシャの話ではない。パナマ船籍のthe Skyluck号は、1979年初め、ベトナムから2000人の難民を運んできた。ベトナム難民は多くの国に向かったが、現代のヨーロッパやアメリカが難民に直面したように、難しい問題となった。インドネシアやフィリピンのような貧しい国には難民キャンプが生まれ、香港、シンガポール、マレーシアのような豊かな国は国際的な非難にさらされた。

数十年の後に、南シナ海には難民危機が存在しない。むしろ人々はベトナムやカンボジアのダイナミックな経済にもどってくる。難民の受入れは道徳的な行為だが、人々が流出する根本的な理由を解消しない。殺到するボート・ピープルの「解決」とは、安定した、意味のある政府がベトナムに誕生し、それ自身が成長や発展の基礎を提供することである。

国家の建設は困難な作業である。特に、戦争や植民地化で、破壊や略奪が起きた後では、難しい。豊かな諸国にある機会を、短期的には、より安全な機会とみなすのは理解できる。しかし多くの移民は、移住が外国における後悔の人生に至ること、孤立と差別から同課は不可能、もしくは、好ましくないものになることを知る。

Brain drain(頭脳流出)” and “brawn drain(労働者の流出)、すなわち、高い能力のある身体や訓練を受けた技能がある人々を失うことは、発展途上地域にとって明らかに損失だ。しかも、エンジニアや医者、その他の専門職に適した人々は、オーストラリア、ドイツ、UK、アメリカで、店舗の管理や家内の介護、タクシー運転手として働いている。彼らが味わう苦痛は、自国の破滅的な状況をさらに悪化させる。

世界はグローバルな人口移動の管理体制を改善しなければならない。発展途上諸国の機会を改善し、外国の軍による悲劇的な介入を避け、紛争を解消することだ。国境を閉鎖することは、それが管理の強化であれ、物理的な壁の建設であれ、答えにならない。熟練を有する、能力の高い人々は、自国にとどまって再建を助けるべきだ。

The Guardian, Wed 19 Dec 2018

Immigration and asylum


 ホームレス

FT December 18, 2018

Working but homeless: a tale from England’s housing crisis

Sarah O’Connor in Tunbridge Wells

Ryan Russellは、きれいな白い壁、小さな、暖かい部屋で、窓のそばのシングルベッドに頭を突っ込んだ。外は、ロンドンの南に45マイル離れたTunbridge Wellsの家並だ。冬の淡い陽光が降り注ぐ。22歳の彼は、ベッドに座って、突然、ベッドが自分にとって小さすぎると思う。そして顔全体で大きくにやりと笑う。彼の足はベッドから出てしまうだろう。

廊下を挟んだ部屋には、もう少し年老いて見える、23歳のJosh Chantlerが、窓際に立って、外を眺めている。

2人の男性は、和解ホームレスのためにあるYMCAのホステルに泊まっている。個々が彼らの新しい家だ。こうした若者たちがこの家にたどり着く過程を知ることは、イングランドで、雇用が増えている今でも、ホームレスが増大している問題について多くを教えてくれる。


(後半へ続く)