IPEの果樹園2018

今週のReview

12/3-8

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中国の社会統制モデル ・・・Brexit合意案の採決に向けて ・・・米中貿易紛争の取引 ・・・アフリカの脅威 ・・・金融政策とインフレ、保護主義 ・・・第1次世界大戦と「黄色いベスト」 ・・・大不況の理由と対策 ・・・ロシアのアゾフ海支配 ・・・社会科学者 ロナルド・ドーア ・・・グローバル・ガバナンスのための課税 ・・・年金制度改革 ・・・ホーム・故郷・母国

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 中国の社会統制モデル

The Guardian, Fri 23 Nov 2018

The Chinese export we really should be worried about: repression

Simon Tisdall

今週、香港で、民主化運動の指導的な活動家の裁判があった。中国が、習近平主席の下で、政治的多元主義や大衆の反政府的見解を、その最後の痕跡まで取り除くため、いかに恐ろしい事態を生じているか、その最新の例である。中国における弾圧の話は、悲しいことに、新しい話ではない。しかし、西側が過小評価していることは、その社会管理体制が共産党のみの独裁体制を拡大し、事実上、習近平たった1人の独裁を強化していることだ。

中国には、かつて一度も、善良かつ開明的な支配があらわれなかった。毛沢東ほどではないとしても、鄧小平でさえ1989年の天安門広場における弾圧をおこなった。胡錦濤は外交的に「平和的な台頭“peaceful rise”」を唱えたが、2013年にトップの地位を得た習近平に至って、再び、無慈悲で、執拗な、中国のパワーと影響力をグローバルに拡大する野心を明確にした。

習の中国式専制体制は、あらゆる即席の独裁者たちに魅力的モデルとなっている。ムハマド・ビン・サルマン、エルドアン、ドゥテルテと習との違いは、その全体的な組織と権力が個人に集中していることである。習は、政治局、軍、国家安全保障委員会、行政官僚において反対派を追放し、権力を固めた。市民グループ、メディア、インターネット、宗教や学術の機関でも、強い統制を行っている。習の超ナショナリストの思想は憲法に組み込まれた。

その負の側面は、香港の民主派裁判、ウィグルのイスラム教徒に対する「再教育プログラム」、チベットの占領とその後のエスニックや信仰に及ぶ抹殺、などが示している。それらについて習は謝罪することがない。かつて中国の指導者も国際的な非難を懸念したが、習は、利己的な西側の諸政府が中国に介入する心配はない、と知っているからだ。

個人や企業を評価する「社会クレジットシステム」という実験を広め、インターポールの中国人長官を身柄拘束し、台湾の独立を要求した映画祭受賞者がいたことでテレビ放送を停止した。1兆ドル規模の、64か国に及ぶ「一帯一路」で、ユーラシアの貿易からインフラ、開発を指導する。それはインド太平洋、アフリカ、ラテンアメリカにも広がる。同時に、軍事力を整備し、ミサイル、宇宙開発、AIやサイバー戦闘能力も高めている。南シナ海、東シナ海で物理的な支配を固め、台湾を国際社会から追放し、孤立させる。パプアニューギニアのAPECではアメリカとの対立が鮮明になった。

西側政府の期待に反して、中国は成長し、繁栄しても、その行動を変えなかった。民主主義を受け入れることもなかった。習の権力確立は逆の方向を示すものだ。最近、元オーストラリア首相のKevin Ruddが明確に警告した。「中国は、現在のリベラルな国際秩序が前提する諸価値を受け入れない。それらは中国の国内政治秩序と相いれない。」 それゆえ中国を変えるのではなく、世界を変える、と習近平は決意した。

習は、国内の組織的な弾圧、海外における経済的支配を目指すだけでなく、政治やガバナンス、社会管理体制に関するスターリン主義的な考えを、発展途上の、従属的な諸国に輸出しようとしている。中国の台頭は、資金やパワーの問題だけでなく、21世紀に民主主義的価値が生き残ることに挑戦しており、旧民主主義諸国は敗北しつつある。

FT November 26, 2018

EU moves to protect interests against predatory China

Philippe Le Corre

NYT Nov. 27, 2018

Will Taiwan Be the First Domino to Fall to China?

By Yi-Zheng Lian

NYT Nov. 28, 2018

Mind Control in China Has a Very Long History

By James Leibold


 Brexit合意案の採決に向けて

FT November 23, 2018

Ukip’s transformation into a far-right party is complete

Sebastian Payne

イギリス独立党UKIPを覚えていますか? ファラージュに率いられたヨーロッパ嫌いの群衆です。

Gerard Battenが党首となり、UKIPははるかに醜い姿に変身した。犯罪者であり、the English Defence League元指導者、反イスラム同盟 Pegidaのイギリス支部の、Tommy Robinsonを党に招き入れた。

Brattenの下で、UKIPはオルトライトの「ソーシャル・メディア活動家」、InfoWarsの編集者、さまざまな陰謀論者を歓迎してきた。

新しいUKIPは重要である。その回復をもたらす危険な状況が存在するからだ。カオスは過激派に機会をもたらし、イギリスが3月のEU離脱において非常な混乱を生じる可能性がある。

FT November 24, 2018

There is still the Norway-style alternative to May’s Brexit deal

Camilla Cavendish

The Guardian, Sat 24 Nov 2018

The scheming Brexit libertarians spin delusions that are trapping us all

Nick Cohen

The Guardian, Sun 25 Nov 2018

The Guardian view on May’s Brexit deal: a sobering moment for Britain

メイとEUとの取引が苦労の末にやっと終わった。EUの指導者たちはこの合意を承認したが、メイが議会をうまく通過させると信じている者はいない。

ブリュッセルでEU27か国の首脳たちが示したのは悲嘆であった。「悲しい日だ」、「祝福される日ではない」、さらに「悲劇だ」と、メルケルは述べた。政治の中で、首相の表明が高揚感を示すのは当然だ。メイは、説得的ではないが、イギリスの将来について、楽観で満たされている、と主張した。しかし、過去数週間は、イギリスの損失であった。いかなるBrexitもイギリスの利益にならない。

現実に直面したBrexit派の人々の反応は、帝国後の幻滅を強めるものだった。彼らは名を、自国を売った、と責める。ジブラルタルをめぐる最後の論争もそうだ。EUはスペインを支持した。今後、イギリスは、アメリカ、中国、その他の国と交渉しなければならない。

メイはBrexit派にむなしい希望を与え、時期尚早な形で50条を発動し、無思慮なレッドラインを設けた。彼女がいまだに、財源を自国の、例えば国民健康保険に支出する、と述べることは恥ずべきことだ。

イギリス国民の多くは、これ以上の時間をBrexitについて浪費することを望まない。しかし、離脱派と残留派がメイの解決策を嫌うという点だけで一致するのは、何の前進にもならない。Brexit派は、管理された「合意なしの離脱」という代替案を提示し、われわれに安全ベルトをきつく締めて崖から飛び降りるように促す。残留派の閣僚は、議会で否決されることで、メイがもっとソフトなBrexitに向かう、と期待する。アイルランドのDUPはノルウェー型の合意を支持し、共感を呼んでいる。第2の国民投票を主張する運動が、国民や政治家の間で勢いを増している。Brexitは経済的、政治的な破局であり、国民の分断を鎮めるのではなく、火に油を注ぐものだ。

愚行は進むにつれてその激しさを増した。しかし、終幕はなお見えていない。

The Observer, Sun 25 Nov 2018

The Observer view on Brexit and the future of Europe

FT November 25, 2018

The security and defence threat posed by May’s Brexit deal

Richard Dearlove

The Guardian, Mon 26 Nov 2018

Get on with it? No, May’s Brexit plan was a disaster from day one

Polly Toynbee

下院での演説、国民への手紙で、テリーザ・メイは極めて不正直であった。牧師の忠実な娘であるが、彼女の案が議会で承認された場合、この国が失うものについて、彼女は知っていながら、真実を語らなかった。あらゆる方面から攻撃される彼女に、国民は同情して、彼女の支持率は上がっている。しかし、彼女はBrexitについてのすべての選択肢を示していないし、首相になって以来、かつて示したことがない。

彼女はこれを国民的な妥協として示す。国民への手紙で、「離脱や残留というラベルを影響に外そう」と呼びかけている。「私はこの案が国全体として再生と和解の瞬間になることを望む」と。その偽善には息が止まるほどだ。彼女の取引はそのどちらでもない。それはハードBrexitである。EUにおけるわれわれの優れた地位を棄てて、われわれをコントロールできない、地図のない運命に向かわせるのだ。その条件は何もわからない。

FT November 26, 2018

This Brexit deal is the best available

Wolfgang Münchau

UKは異なるBrexit後の関係を結べただろう。完全な関税同盟、もしくは、しばしば誤解されているノルウェー・モデルだ。単一市場のアクセスを得て、EFTAに参加する。しかし、イギリス議会はEU離脱の特別な条件に合意した。

交渉の反対側から見れば、EUの誰もが喜んでいるわけではない。これは「カナダ・プラス」の選択肢だ。かつてEUが決して合意しないと述べた。EUとの大幅な自由貿易、EUとの緊密な同盟関係、しかし、EU司法に従わず、独自の移民政策を持つ。EUはアイルランド国境でも妥協した。

FT November 26, 2018

Why Theresa May’s Brexit deal deserves support

Gideon Rachman

何か月も、政治家や評論家は首相を激しく攻撃してきた。しかし、世論調査では、イギリス国民がメイ首相を見る目は温かいものになっている。その理由は簡単だ。この数週間、メイが示した姿勢は、イギリス人が称賛するときに語るものだったからだ。頑強さ、実用主義、打撃から立ち直る力。彼女は戦時中にマグカップに書かれていたスローガンを思い出させた。「冷静であれ。そして、日々の暮らしを続けよ。」

メイのスタイルは、この合意案を示している。それは、何が可能であるかを現実的に評価して、プラグマティックに妥協した案である。もし議員たちがメイと同じくらい冷静であれば、彼らはこの案を拒んで未来をでたらめな運命に委ねるより、議会で承認するだろう。拒否した後のカオスから魔法のように良い結果が現れると期待するのは愚かである。

離脱と残留の双方の強硬派が激怒している。しかし、それはメイが中間の道を選択したからだ。このBrexit案はイギリスの誰にも喜ばれないが、すべての立場に良いところを示している。それは、国民投票の結果を尊重し、離脱派の主要な要求を実現している。特に、移民政策に関して「コントロールを取り戻す」。またビジネス界の意見を聞き、できる限り貿易を摩擦のない形にして、経済的痛みを最小化する。そして強い圧力を受けながら、Brexit後のイギリスが外交・安全保障でヨーロッパに最も緊密な国になるよう、メイは交渉した。

中間の道を選択することは、この激しく分裂した国を再び1つにする試みである。この点こそ、私が最も重視することだ。私は残留派として、EU離脱により重要なものを失うと考えている。しかし、EU加盟よりも重要なものは、政治的安定性と社会の冷静さという、この国の伝統だ。私の記憶するいかなる事件にもまして、Brexitはそれを損なった。

The Guardian, Tue 27 Nov 2018

The seismic shock of Brexit will change the UK’s politics for ever

Rafael Behr

FT November 27, 2018

Only the ‘Norway Plus’ plan can save Brexit

Nick Boles

The Guardian, Wed 28 Nov 2018

Forget the people’s vote, parliament should ditch Brexit

Steve Richards

どうすればわれわれはこの悪夢のようなBrexit英雄伝説から抜け出して、意味のある結論に速やかに達することができるのか? リスボン条約50条による離脱手続きを取り消し、Brexitを止めることだ。

FT November 28, 2018

Theresa May’s imperfect deal will ease the Brexit uncertainty

Carolyn Fairbairn

SPIEGEL ONLINE 11/28/2018

Isle of Madness

A Series of Miscalculations Has Brought Britain to the Brink

By Peter Müller and Jörg Schindler

Brexitは、イギリスがかつての栄光を唱えることを許した。しかし、その指導者たちは混乱した仕方で破滅に向かった。最初から間違った前提で始まった。UKEU離脱は、失策と誤算の積み重ねであった。

失策1Brexitは簡単Child's Playだ。

失策2:守ることのできない限界を決めた。

失策3:政権基盤を強化するために議会を解散した。

失策4:ヨーロッパを分断できる。

失策5:アイルランド国境は重要でない。

The Guardian, Thu 29 Nov 2018

Another referendum would be hell, but Carney is clear: Brexit is worse

Polly Toynbee

FT November 29, 2018

Theresa May’s Brexit deal deserves conditional support

FT November 29, 2018

Jeremy Corbyn and Theresa May in a historic Brexit debate

Henry Mance

FT November 29, 2018

Why Donald Trump wants Theresa May to fail on Brexit

Edward Luce

トランプはメイの合意案が失敗することを望んでいる。トランプは、メイの敵であるファラージュやボリス・ジョンソンと同じイデオロギーの持ち主だ、アメリカ・ファーストは、EUを分解し、イギリスも孤立するとき、最も効果的であるからだ。

FT November 30, 2018

Britain’s overseas influence requires a Brexit rethink

David Miliband


 米中貿易紛争の取引

PS Nov 23, 2018

An Agenda for Resolving the US-China Conflict

STEPHEN S. ROACH

ブエノスアイレスのG20でドナルド・トランプと習近平の会談が米中間の紛争を解決するよう願っている。あるいは、貿易戦争が激化し、冷戦、さらには軍事衝突も起きかねない。

アメリカでの話とは逆に、この問題は世界の2大国間で貿易不均衡が拡大した、ということではない。両側を苦しめるようなマクロ経済の不均衡が拡大しているのだ。中国は貯蓄が大きすぎるし、アメリカは貯蓄が小さすぎる。それは多国間の貿易不均衡をもたらし、米中2国間では解決できない。

2017年、アメリカの商品貿易は102か国に対して赤字である。2016年、中国は169か国に対して貿易黒字である。赤字国や過剰貯蓄国が多角的な不均衡の一部を減らすと、他の貿易相手国すべてに配分される。アメリカは輸入品のコストが上昇し、それは消費者に増税したに等しい。中国は他の諸国に対する輸出を増やす。

これは古典的な共棲の闘争である。中国は輸出需要と成長をアメリカ市場に長く頼ってきたし、アメリカは中国からの安価な輸入品によって、所得の制約下で消費者がやりくりしてきた。また、アメリカ財務省証券の最大の購入者である中国に、アメリカ政府の赤字の融資を頼ってきた。さらにアメリカにとって3番目の市場、しかも急速に拡大する輸出市場として、アメリカ企業はますます中国を重視している。

共棲の枠組みでは、協力した解決策や妥協が重要である。個人間の関係としては、経済的共棲は不安定であり、究極においては破壊的である。一方がコースを変えると、他方は侮辱されたと感じ、攻撃する。

この場合、中国が変化した側だ。製造業からサービスへと成長モデルを転換し、輸出から国内消費、輸入された技術から自国での技術革新へと転換した。同時に、中国は過剰貯蓄から貯蓄の吸収国へと変化しつつある。アメリカの赤字を埋めることは少なくなる。

不幸にして、アメリカはこの相手国によるルールの変化を脅威と感じている。トランプの行動は以前の大統領に比べて攻撃的だが、その感覚は超党派の合意である。

脅迫と反撃とがエスカレートするとき、妥協が必要である。米中首脳会談で、対立を新しく制度化することは世界の2大国にとって戦略的な挑戦である。4つの分野が重要になるだろう。

1.市場アクセス。米中2国間投資条約が重要だ。2.貯蓄。双方が責任あるマクロ経済的な調整を実行する。アメリカは、関税ではなく、貯蓄を増やすことで貿易赤字を減らせる。中国は貯蓄をもっと社会保障に投資するべきだ。3.サイバー・セキュリティ。米中はグローバルなサイバー合意を指導できる。4.米中対話。常設機関を設けて、主要な政策課題で協力することが生産的である。

FT November 25, 2018

Our common prosperity demands co-operation on trade

Zhang Jun

PS Nov 26, 2018

Why a US-China Tariff Ceasefire Is Coming Soon

ANATOLE KALETSKY

今週、ブエノスアイレスのG20でアメリカのトランプ大統領と中国の習近平主席が会談することは、世界経済と金融市場の運命の分かれ道とみなされている。しかし、たとえサミットで合意が成立しなくても、米中貿易戦争は沈静化に向かうだろう。それには4つの理由がある。

1.矛盾するようだが、アメリカ政府のレトリックは国内の雇用から、中国の封じ込めを唱える反中国の主張、アメリカのヘゲモニーを脅かす中国の技術力を阻止する主張に転換したことだ。中国の習近平は、こうした冷戦2.0に対して敗北することができない。しかも、中国経済を減速してきたのは、貿易戦争ではなく、習近平自身が命じた銀行や地方政府の金融健全化、住宅バブルの鎮静化によるものであったから、こうしたアメリカの主張に対抗して国内経済を刺激する余地は十分にある。

2.トランプの政治的計算が変化した。2020年の大統領選挙前に米中貿易戦争で「大きな勝利」を上げるには、速やかに習と取引する必要がある。貿易戦争の第2段階は、有権者に不評で、アメリカ経済へのダメージが大きい。ケインズ主義が示すように、完全雇用のアメリカ経済が関税を引き上げると、国内雇用が増えるのではなく、物価の上昇や高金利を招く。

3.北朝鮮、メキシコ国境の壁、NAFTA再交渉といった、これまでのトランプ外交が示すように、トランプは攻撃的なレトリックを重ねて戦争の瀬戸際まで危機を煽り、そのあと、突如として戦術的な譲歩を示して交渉する。「大声で叫んで、白旗を掲げる」というスタイルは、矛盾し、不正直だが、トランプにとっては大成功であった。アメリカの国益にはならないが。G20で取引するか、あるいは、ブエノスアイレスで決裂した後、新たに関税を引き上げ、数週間か、数か月後に、首脳会談を開いて「大勝利として退却する」。

4.この停戦は、明らかに、中国にとって受け入れ可能で、トランプも満足する。習近平は、貿易不均衡の大きさ、知的財産法、アメリカ企業・金融機関への市場開放で、譲歩できる。中国封じ込め論が強調するような産業や技術開発への補助金については、2050年の中国の目標であり、トランプは2020年に起きることしか関心がない。

PS Nov 27, 2018

The US and China Are the Closest of Enemies

MARK LEONARD

FP NOVEMBER 28, 2018

The Pieces Are in Place for a Grand Bargain With China

BY KEVIN LU

FP NOVEMBER 28, 2018

Xi and Trump Should Swallow Their Pride and Join the TPP

BY JAMES MCGREGOR

米中の指導者は第1次世界大戦から何を学ぶのか?

米中が平和的に共存するために、部分的な改革を重ねることが、唯一、成功への路である。その対話の枠組みはTTPが望ましい。オバマが残した多角的な貿易自由化の枠組みである。トランプは破棄したが、日本など、アジア諸国がこれを維持している。G20の米中会談で、TPPに参加することを議論するのが良い。今や中国はアジア貿易の中心勢力であり、米中が参加するTPPの役割は全く異なる。

FP NOVEMBER 28, 2018

Trump’s China Policy Is a Triumph

BY GREG AUTRY

FP NOVEMBER 29, 2018

Will Trump Hit Pause on the Trade War With China?

BY KEITH JOHNSON


 アフリカの脅威

PS Nov 23, 2018

The African Threat

DAMBISA MOYO

10年前、国際援助政策では、アフリカが世界の問題児であり、偉大な運命に従う大陸ではなかった。数年後、国家の失敗は冷笑と絶望を生んだ。アフリカは、グローバルな経済秩序に対する最大の脅威のいくつかをもたらす大陸になった。

機会の実現から、リスクの緩和に焦点が移った。しかし、世界のアフリカに対する関与と支援は不十分であった。早晩、アフリカの問題はグローバルなものになるだろう。

経済理論はアフリカが急速に成長することを示唆している。中国、インド、アメリカ合衆国、日本、ヨーロッパのほとんどを合わせたほど大きな大陸だ。世界の耕作可能な土地で、まだ耕されていない60%を含んでいる。ダイヤモンドの53%、プラチナの75%を埋蔵する。アフリカ諸国は銅や鉄鉱石の主要生産地である。世界の鉱物資源の約3分の1はアフリカが支配する。

アフリカ人口の中央値は19.5歳である。アフリカの人口は世界で最も若く、最も急速に増大しており、インドや中国にも勝る。

しかし、繁栄と長期成長をもたらす潜在力の実現は阻まれてきた。資源管理の失敗、腐敗した、あるいは間違った投資配分、革新不足、近視眼的な指導者、成長戦略の採用に対する抵抗、地域を超えた協力の失敗。集団的な組織化ができなかった。病気、戦争、持続する貧困がアフリカを苦しめた。

国際社会は、歴史的に、さまざまな戦略でアフリカに関与した。植民地主義、アメリカによる開発計画。1970年代に成長が失われると、IMFと世界銀行は安定化と「構造調整」プログラムを通じてアフリカの貿易と民間部門を促し、国家の経済的役割を抑制した。しかし、その成果は乏しかった。1990年代、ワシントン・コンセンサスを経て、2000年に入った10年には債務の免除、そして、中国からの投資に期待した。

各時代の楽観は失敗に終わり、西側の関与と投資は次第に減少した。確かに、自国における経済問題の理由に、西側がアフリカを放棄することは、無責任であり、深刻な危険をもたらす。伝染病、テロ、大規模移民の源泉として、アフリカはすでにグローバルな安定性を脅かしている。その脅威は気候変動によって強まるだろう。

アフリカの経済成長を刺激する諸条件は、同時に、世界的な伝染病の爆発的感染をもたらす実験室となる。かつてスペイン風邪は、わずか2年で、第1次世界大戦の戦死者の5倍の命を奪った。

暴力をもたらす過激派は、特殊な環境、特殊な条件で拡大する。腐敗した政府、内戦、国家の諸制度が崩壊している地域に、過激派は引き寄せられる。

アフリカの境界線は穴だらけだ。大規模な移民がアフリカで生じている。2017年、アフリカが世界に押し出した移民は3700万人であった。かつてヨーロッパから5000万人が移民として流出したが、それは1815-1930年の1世紀以上をかけて起きた。

気候変動は、伝染病、テロ、大規模移民を増加させるだけでなく、安全保障のリスクとなる。それは世界の危険地帯における政治不安を増幅する、強力な「脅威の乗数」なのだ。

アフリカに対する建設的な関与を再建するべきだ。もし成功すれば、世界経済は大きな報酬を得るだろう。利用されていない資源を得ること、活用されていない女性労働力の存在、中国が今や世界経済の15%、グローバルな成長の30%をもたらすように、アフリカが将来、同様の役割を果たすだろう。

関与の放棄は、歴史が教えるように、しばしば破滅をもたらす。第1次世界大戦の後、ドイツに連合諸国が犯したリスクを思い出すべきだ。西側はワイマール共和国に関与せず、腐敗、政治不安、ハイパーインフレーション、そして過激派が支持を拡大した。同じ条件をアフリカは、今、経験している。

2次世界大戦後、ドイツは債務を負わず、アメリカが再建を支援した。国際貿易を回復させ、ナショナリストの過激派が広まるのを防いだ。それは、EUの中心として現在のドイツに実現している。同じ経験を、アフリカについて無視してはならない。アフリカにとっても、投資こそが長期的な解決策である。

PS Nov 23, 2018

Uniting Africa for Power

TONY BLAIR

FT November 26, 2018

African countries should demand loans are made in local currencies

Vera Songwe

アフリカの債務負担は深刻だ。ドルに頼って資金調達する限り、アフリカはアメリカの金利上昇に巻き込まれる。債務を自国通貨建てで負い、自国経済の条件に合った金融政策を決めるべきだ。

FT November 28, 2018

We all collude in exploiting commodity-rich nations

David Pilling

アフリカが貧しいのは、世界に多くの資源や農産物を供給しながら、その加工は豊かな諸国と国際ビジネスによって行われているからだ。腐敗した政治家支配者や国際ビジネスは貿易から生じた利益をアフリカの人民と分かち合わない。アフリカの人々は奴隷として、アメリカやカリブ海諸国で砂糖栽培を強いられたが、西側は今も、彼らを世界貿易のための鉱山や農場で働かせている。権力の構造は本質において何も変わっていない。

PS Nov 29, 2018

The Feminization of African Politics

FATIMA AL ANSAR , SHONA BEZANSON


 金融政策とインフレ、保護主義

PS Nov 23, 2018

Silent Inflation

ROBERT J. SHILLER

インフレ率は、たとえ数%でも資産価格に大きな影響をもたらす。インフレは経済を実際以上に強く見せる。中央銀行の示すインフレ目標は、間違った安定性の印象を与える。

PS Nov 26, 2018

A Trade War is No Reason to Ease Monetary Policy

JEFFREY FRANKEL

貿易に対する混乱の拡大により、経済成長にマイナスの影響が予測される。それは連銀が緩やかに金利を引き上げる動きを止めるべきだ、ということになるのか?

その答えは、Noだ。金融政策は愚かな通商政策のダメージを緩和できない。

米中間の貿易紛争は、アメリカが中国からの輸入2500億ドルに対する関税率を10%から、さらに25%に引き上げる、と予告した。しかし、個別の経済セクターにとっては重大な効果があるとしても、4半期GDPに対する影響は比較的小さい。それは製造業や農業に比べて、サービスの割合が高いからだ。

貿易戦争が拡大し、深まる中で、世界の成長予測は引き下げられた。しかし、ドイツの経済が縮小したのは多くの理由によるもので、貿易摩擦だけではない。アメリカでは好景気の最終局面で減税を行ったが、その効果は急速に失われる。

昨年の経験が示すのは、トランプの保護主義がアメリカの貿易バランスを悪化させている、ということだ。関税は予想されたように輸入を減らすが、輸出についてもマイナスの効果が大きい。これは予測されたことだ。関税によって貿易相手国の成長が減速すれば、アメリカの輸出も減る。中国、その他の国は関税に報復する。完全雇用のアメリカで行われた減税で追加の支出は輸入に向かい、赤字予算が増大して、ドル高、輸出競争力の低下につながる。

評論家たちは、成長減速は金融緩和を求めている、と言うが、保護主義は物価を引き上げ、金融引き締めを促す。貿易収支が悪化したことはサプライ・ショックである。巧みな金融政策で緩和できるのはデマンド・ショックである。サプライ・ショックには何の効果もない。金融政策の刺激は、(トランプの求めている)人為的な景気拡大の長期化でしかなく、その結果はインフレの加速だ。

アメリカでは小さくても、現在のUKにとって貿易の影響は非常に大きい。Brexitによるマイナスの影響が明白に現れていないのは、イングランド銀行の金融緩和があったからだ。しかし、2016年の国民投票はサプライ・ショックではなかった。混乱を懸念して投資が減少した、など、デマンド・ショックに対して金融緩和が効いたのだ。

イギリスが実際にEUを離脱する20193月は、そうではない。UKEUは、恐らく合意し、あるいは、より望ましいが起きそうにない2度目の国民投票で離脱を取りやめるかもしれない。しかし、もしイギリスが、チャネル海峡で取引を開放する取極めなしに、結びつきは「粉砕」するなら、金融政策でGDPを維持することは不可能だ、とカーニー総裁は語った。

アメリカでもイギリスでも、他の諸国でも、通商政策は実質所得を減らしている。金融政策でその効果を相殺することはできない。有権者だけがそれを阻止できる。

FT November 26, 2018

An interest rate rise would take the froth out of the US economy

Elga Bartsch

FT November 30, 2018

Donald Trump’s attack on the Federal Reserve is just a distraction

Gillian Tett


 第1次世界大戦と「黄色いベスト」

PS Nov 23, 2018

The Lost Lessons of World War I

DOMINIQUE MOISI

1次世界大戦が終結して100年経った。しかし、独仏の和解は、ヨーロッパでさらに次の戦争と破滅的な結果を経てから、達成されたのだ。

2012年の著書(The Sleepwalkers)でChristopher Clarkが示したように、意図的な黙認、甚だしい自己満足、強固なこだわり、それらが結び付いて、ヨーロッパの指導者たちを戦争に向かわせた。そのとき、工業化と輸送革命の成果は戦争に適用されたのだ。

2次世界大戦の勃発は、ナショナリズムの広がりを容認した結果であった。フランス首相クレマンソーが、たとえば、ナショナリスト的な、強烈な反ドイツ感情を示した。そのような行動は、アメリカの支援で戦争に勝ったとしても、平和を実現するものではなかった。

しかし、現在のトランプ大統領はクレマンソーに非常に似ている。戦争に至る事件の連鎖が再現しつつある。そのリスクは、燃料に対する環境税を提案する政府に抗議する「黄色いベスト」の運動にも示されている。

抗議デモの参加者たちは、フランス革命の精神を実践している、と思うのだろう。しかし、彼らは1930年代の再生に向かっているのであり、極右や武闘派の活動を促している。「エリートたち」による遠くからの支配に対する、どのような理由や制度にも反対する感情は、ポピュリストのデマゴーグに利用される。

ナショナリズムやポピュリズムを受け入れた西側の姿は、われわれが噴火口の淵に立つことを意味している。

FP NOVEMBER 26, 2018

Les Misérables vs. Macron

BY ROBERT ZARETSKY

NYT Nov. 28, 2018

France’s New Protest Movement Is Tailor Made for the Macron Era

By Agnès C. Poirier


 日産のガバナンス

FT November 24, 2018

Nissan and Renault’s collision course over Ghosn

Leo Lewis and Kana Inagaki in Tokyo and Peter Campbell in London

FT November 27, 2018

Gulf between Renault and Nissan widens after Ghosn arrest

David Keohane in Paris and Peter Campbell in London

ルノーは今も闇の中にいる。ゴーン逮捕から1週間がたっても、フランス自動車グループは経営汗ルで会長の嫌疑と証拠に関する詳しい説明を何も受けていない。ルノーと日産の20年に及ぶ提携関係にも緊張が生じている。

FT November 30, 2018

Ghosn’s fall exposes poor governance at Nissan


 イタリアとユーロ

NYT Nov. 24, 2018

What an Italian Donkey’s Fate Tells Us About the Future of Europe

By Lucia Rubinelli


 メキシコとブラジル

FT November 25, 2018

Mexico: Amlo’s ‘people power’ rattles the markets

Jude Webber in Mexico City

YaleGlobal, Tuesday, November 27, 2018

Bolsonaro’s Impact on Global Markets

Claudia Ribeiro P. Nunes and Pedro D. Peralta


(後半へ続く)