IPEの果樹園2018
今週のReview
11/26-12/1
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イラン制裁の意味 ・・・Brexit合意案の採決 ・・・イタリア政府と欧州委員会 ・・・日本の金融政策 ・・・トランプ外交 ・・・中銀とデジタル貨幣 ・・・感謝祭 ・・・デジタル企業の分割 ・・・デジタル大企業の分割 ・・・日産のゴーン逮捕
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign
Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project
Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● イラン制裁の意味
The
Guardian, Fri 16 Nov 2018
Trump’s
economic war on Iran is doomed to failure
Richard Dalton
アメリカはイランに対する経済戦争を宣言した。国連安保理の承認したイランに関する核合意を離脱し、一方的に、世界がイランと貿易する権利を攻撃している。
この政策は、イランがアメリカ国民に対する主要な安全保障上の脅威である、と主張するものだ。それはひどい誇張であり、ポンペオ国務長官が、イランを「正常な国家の行動」に戻す、というとき、皮肉な意味になった。
アメリカこそ「正常な」国家ではないからだ。
イランに対して好戦的な姿勢を示すことに、戦略的な利益があるのか? イランは、インフレや不況に苦しんでも、政治的には安定を維持している。2020年のアメリカ大統領選挙まで、彼らはアメリカの挑発を無視し、核開発を再開することはないと思う。
しかし、ハメネイなどの政治指導者たちは決意を固めており、トランプに譲歩することはない。アメリカによるイラン制裁は、EUをはじめ、世界の支持を受けていない。
ドナルド・トランプは北朝鮮と同じ交渉による大きな成果を目指している。イランを変える、と主張する。しかし、イランが合意に向けて動くとしたら、それはアメリカが中身のある譲歩を示すとイランが期待する場合だけだ。
アメリカのイラン制裁は、イランの石油をほしがる中国、インド、トルコに、世界貿易の異なるチャネルを模索させ、将来、アメリカがドルを政治的な武器として使用することはできなくなるだろう。
誤解による軍事衝突も考えられる。あるいは、意図的な衝突もある。しかし、中東地域で再び戦争を選択するのは、再選のために良いこととは考えていないようだ。
アメリカがその姿勢を変え、すなわち、多くの要求を取り下げ、イランに対する敬意を少しは示し、現実的な条件で話し合うなら、新しい合意を得ることも可能だろう。すなわち、アメリカは制裁を本当に解除し、イランはミサイルの距離やタイプを制限する。それは中東におけるいくつかの和平と米軍の撤退も可能にする。
しかし、現在のアメリカのアプローチには成功の見込みがない。同盟諸国はアメリカを支持せず、イランへの要求が多すぎる。
FT
November 16, 2018
Europe
trips up over plan to beat Washington sanctions on Iran
John Dizard
FP
NOVEMBER 16, 2018
China and
the EU Are Growing Sick of U.S. Financial Power
BY ELIZABETH ROSENBERG, EDOARDO SARAVALLE
トランプ政権がイラン制裁に関して、イランと取引する他国の銀行や企業をドルのネットワークから切り離して制裁する、と示した。これに対して、イランとの核合意を維持したい欧州委員会のユンカー委員長は、ドルに代わる国際金融システムを作る必要を唱えた。
EUの委員長やイタリア首相がドルを批判しても、それで国際金融システムが転換することはないだろう。しかし、中国など、新興経済がドルから離脱するなら、話は異なってくる。ロンドンは、人民元やロシア・ルーブルとの金融取引を取り込むことに熱心であり、新興諸国との関係でアメリカの方針と分裂する可能性がある。
● イギリスの子どもと緊縮策
The
Guardian, Fri 16 Nov 2018
The
British state has given up on the children who need it most
Gary Younge
● Brexit合意案の採決
SPIEGEL
ONLINE 11/16/2018
The
Brewing Storm
Chaos
Erupts in London Over Brexit Deal
By Peter Müller and Jörg Schindler
FP
NOVEMBER 16, 2018
The Brexit
Deal Won’t Destroy Britain
BY
VERNON BOGDANOR
たとえEUとの合意が議会で拒否されても、食料や医薬品が山積みになることはない。ドーバーやフォークストーンに20マイルもトラックが行列することもない。UKが分裂することもないだろう。実際、Brexitはスコットランドの独立を起こりにくくした。
もしスコットランドが独立すれば、主要な市場であるイギリスとの間に多くの非関税障壁が生じる。もしスコットランドがポンドを使用するなら、そのためにUKに対する財政負担を交渉しなければならない。またスコットランドがEUに加盟するには、財政赤字のGDP比3&ルールを守らねばならない。それは現在、8%に近い。スコットランドが、ギリシャやスペインのような厳しい緊縮策を採用することはないだろう。
北アイルランドも、UKを抜けて、アイルランド共和国に統合することはないだろう。1998年のグッド・フライデー合意では、住民の多数が共和国との統合を支持するまで、UKにとどまる、ということになっている。北アイルランドでBrexit後に共和国との統合を支持するのは、カソリックの少数派、住民の21%でしかない。
過去の6人の保守党の首相がヨーロッパ問題で辞任した。メイも保守党内で強まる辞任要求に直面している。しかし、保守党も労働党も、Brexitに関して深く分裂している。それは、ノルウェー案(EEAを形成して単一市場に参加するが、その代わり、人の自由移動と財源分担を認める)とカナダ案(EUとの自由貿易協定だけで、関税同盟や単一市場には属さない)との違いとして表現されることもある。
また、保守党の一部と労働党の多数が2度目の国民投票を求めている。他の野党も、同様に、人民の評決、を支持する。
こうした分裂状態の議会がメイの合意案を承認するか、予想できない。しかし、たとえ否決されても、それは総選挙になることを意味しない。
NYT Nov.
16, 2018
The Men
Who Want to Push Britain Off a Cliff
By Jenni Russell
FT
November 17, 2018
Theresa
May takes Brexit battle to Eurosceptics
George Parker and Laura Hughes in London
FT
November 17, 2018
To calm
the Brexit storm, we must listen to the UK’s views again
Gordon Brown
FT
November 17, 2018
Brexit
crunch time: May steels herself for a hard sell
George Parker and Alex Barker
FT
November 17, 2018
Theresa
May must change course on her deal to leave the bloc
Camilla Cavendish
The
Guardian, Sat 17 Nov 2018
Europe’s
door is still open – but Britain will have to move fast
Timothy
Garton Ash
イギリスが運命に苦悩し続ける中で、私はブリュッセルにいて他のEU諸国がBrexitをどう考えているのか観察していた。そして、真の選択肢は2つある、と分かった。ヨーロッパのドアはまだ開かれている。
われわれが2度目の国民投票でEUにとどまると決めれば、それは許されるだろう。5月後半のヨーロッパ議会選挙の前が好ましい。あるいは、ヨーロッパ諸国は3月29日にイギリスが離脱することを望む。他のすべてのことは後で決め、EUは自分たちの大問題に取り組みたい。
4億5000万人の意見を一般化することは不可能だが、指導者や代表たちの間には明確なコンセンサスがある。彼らはBrexitの騒動に長くかかわって飽き飽きし、イギリスの非現実的な姿勢に呆れている。
もしあなたが隣にいて、ドイツ人がフランス人に、あるいは、ポーランド人がイタリア人に話すのを聴けば、まるでBrexitはすでに起きたように思うはずだ。彼らが考える時間は、ユーロ圏、イタリア、トランプ、通商問題、メルケル後のドイツ、自国のポピュリストたち、そして迫ってきたヨーロッパ議会選挙に占められている。
「ベルリンでは、Brexitはおそらく10番目の検討事項だ」、とある外交官は語る。外交や安全保障のような、かつてイギリスが重要な役割を担った分野でも、その影響力は破滅的な低下を示している。ヘリコプターが空から消えたように。
イギリス外交はEUを分断して支配する試みを続けたが、27加盟諸国の統一は強化された。アイルランドは、長い歴史においてはじめて、イギリスの外交交渉に拒否権を持った。EUの交渉力は例外的な強さを持った。なぜなら、イギリスは銃を自分の頭に当てて「良い条件を示さなければ、撃つぞ」と言うからだ。メルケルが繰り返し明言したように、EUから離脱したイギリスは、EU加盟諸国のどの国よりも弱くなる。
イギリスが離脱したほうが、フランス、ドイツなど、中枢諸国で連邦化に向けて動きやすい、という声もある。また他の元外交官は言った。「イギリス人は外がどれほど寒いか実感するべきだ。そして10年後に、降参して再加盟を申請するのだ。」
ヨーロッパの隣人たちのほとんどは、さまざまな程度の後悔と、イギリスがともに進むことへの望みを示す。非常に少数だが、北欧やイギリスと緊密な関係を持つ人々は、イギリスの離脱に強い不安を感じている。さまざまな意見は、合意のない、混乱した離脱を避ける、というコンセンサスに収れんする。この点、メルケルは、離脱合意が再交渉を許さないものであることを強調した。それは、メイの合意案をイギリス議会が承認するよう支持する、という意味だ。
ますます多くのイギリス人、すべての党派、すべての通りにおいて、第2の国民投票こそ望まし道だ、と求めている。EUは、議会がそれを認めれば、50条による期限を延長して、その時間を与えるだろう。再び僅差の投票結果となり、イギリス政治が混乱する懸念があるとしても、そのリスクを取るべきだ。
われわれは人民の投票によって向きを変え、EUにとどまる。あるいは、メイが交渉した合意を呑んで、離脱後の不幸な生活を始める。
The
Guardian, Sat 17 Nov 2018
The
people’s vote: why didn’t we heed the lesson of 1979?
Ian
Jack
FT
November 18, 2018
Market
pressure will not save the Brexit deal
Wolfgang
Münchau
資本市場は政治的な事件の方向を変えることがある。しかし、多くの場合はそうではない。市場のパニックが、2008年の金融危機において、アメリカ議会に不良資産の救済プログラムを承認させた。その4年後、スクリーンが示す相場の急落により、ECBのマリオ・ドラギ総裁は、ユーロ圏諸国の債券市場を守るために「何でもする」と表明した。しかし、これらは重大な例外である。
為替市場を除けば、金融市場から見て、Brexitは今のところ重大な事件ではない。もしあなたが、テリーザ・メイのように、金融市場が議会に圧力をかけて、離脱協定を承認する、と思うなら、あなたは間違っている。
もし承認されないなら、法的には、合意なしの離脱が起きるのであって、第2の国民投票ではない。ではなぜ、金融市場は合意なしのBrexitを全く心配しないのか? 2008年、2012年には、金融システムのメルトダウンを恐れた投資家たちがパニックを起こした。
合意なしのBrexitはそれと異なる。諸国人や企業にとって摩擦を高めるとしても、金融市場にとっては、コストが小さい。UKやEUが混乱を最小限に抑える対応を採るのは明らかだ。ある種のコストに対して、その利益が相殺することもある。規制は減り、税率は下がり、ポンドは安くなって輸出を助ける。それらの純効果を計算することは不可能だ。
私の予想では、メイ首相とそのチームは離脱合意を成立させるだろう。それは多くの人々が嫌煙したことに比べれば、ずっとましに結果である。
FT
November 19, 2018
The EU has
nothing to celebrate in Britain’s Brexit plight
The
Guardian, Mon 19 Nov 2018
The
Guardian view on Brexit chaos: a threat to break up Britain
Editorial
FT
November 19, 2018
In praise
of Theresa May, a serious leader in an age of pygmies
Sebastian
Payne
テリーザ・メイを称賛しないのはますます困難になってきた。首相はイギリス史の困難な瞬間にあって、避けられないEU離脱交渉を進め、同時に、保守党内部の反対派を抑える必要がある。最高の指導者であっても難しいだろう。しかし、メイはしばしば、弱い、寝返った指導者と非難されながら、前進し続けている。指導者として挑戦を受けるかもしれないが、政治的な泡沫の外に立って、この国の難局を切り抜ける唯一の大人である、という評価が高まりつつある。
メイがイギリス産業界の多数の支持を得たのは大きな成果である。その合意案を国民に説得する姿勢も印象的であった。先週、彼女は分裂状態の閣議を5時間かけて説得し、記者会見を開き、下院で3時間の質疑、地域の保守党支部とラジオ・電話会議を行った。イギリス産業連盟年次総会で支持を訴えたことに始まる彼女のスタミナは称賛に値する。
メイの生き残りをかけた武器は、かつてサッチャーが好んだ議論、TINA、すなわち「他に選択肢はない」である。労働党のコービンも、保守党内部のBrexit強硬派や不信任を唱える声も、メイの合意案に代わる具体策を何も持たない。
これは、メイが特に優れた首相である、という意味ではない。彼女はメディアをうまく使えず、最初に示したレッド・ラインで経済的利益を守ることがむつかしくなり、国民の期待をコントロールできず、2017年の解散は失敗だった。彼女の閣僚指名もまずかった。国内的な成果もない。
しかし、メイの合意案が成立する機は熟した。出発点が、人の移動の自由を終わらせる、ということなら、これは達成できる最善の合意だ。メイは、多くのイギリス人が求めるBrexitについて、重要な、正しい計算を行った。国境を厳しく管理し、EUへの財源移転を終わらせ、自分たちの生活を「コントロールする」少し大きな力を得る。
FP
NOVEMBER 19, 2018
Will the
Tories Sacrifice Theresa May to Survive?
BY GARVAN WALSHE
The
Guardian, Tue 20 Nov 2018
Here’s
what it would take to make Theresa May’s Brexit deal work
Henry Newman
The
Guardian, Wed 21 Nov 2018
Britain
will go back into the European club. History proves it
Simon
Jenkins
イギリスは何度もヨーロッパを離脱し、再び戻った。ヨーロッパに背を向けて、しばしばそうであるように、再び振り向いた。今もその繰り返しである。
古代のブリタニア地方は、410年に帝国の解体で離脱を強いられるまで、400年間もローマ帝国の堅固な一部として存在した。200年後に、教会会議で1つの同盟、ローマ・カトリックにもどる。1534年、ヘンリー8世がイギリス宗教改革で同盟から国教会を分離する。
1704年、ホイッグ党はスペイン継承戦争に参加し、ルイ14世と戦う。しかし、ユトレヒト条約後、トーリーは方針を転換して、ハノーバー朝はヨーロッパを去る。ウォルポールやピットはヨーロッパの戦場から離脱したことを誇る。それはナポレオンとの戦争まで続いた。トラファルガー、ワーテルローで勝利した。1815年のウィーン会議で、イギリスは「ヨーロッパの協調」を築き、大陸における紛争の平和的な解決を求める。しかし、すぐに関心を失い、友好的な「その他の世界」と貿易すること、すなわち、帝国の建設に集中する。クリミア戦争には加わるが、ビスマルクの台頭は放置した。
歴史の教訓は明白に示されている。離脱の決断は必ず転換されるのだ。いつか、何らかの形で。ドーバー海峡に障害を築く試みは、余りにもコストがかかり、不便であるから、再加入への大義となる。
EUは何かもっと限定された存在になるだろう。1925年、ロカルノ条約の崩壊で「ヨーロッパの協調」は解体し、戦争に向かった。NATOは、その代わりに存在する。ロシアなどからの軍事的脅威が高まる中で、イギリスも完全な形で参加したEUが必要となるだろう。
もっとありそうなシナリオは、ヨーロッパ自体が分裂し、変化し続けることだ。経済空間として、ヨーロッパはその諸国の政治、経済、文化が変化することに応じて調整された。EUはあまりにも変化に応じず、溶解するだろう。ヨーロッパの大きな和解Westphalia,
Utrecht, Vienna, Versailles, Yaltaは、すべて2世代以上続かなかった。
歴史は、EUが新しい神聖ローマ帝国になることを示唆している。帝国の歴史家たちは神聖ローマ帝国を非難したが、その弱さこそが強みであった。だれの脅威にもならず、それはドイツの帝国でありながら、加盟する領邦の自律性を守った。多層的な、家、教会、コミュニティ、領土、地方から成る帝国だった。神聖ローマ帝国は、ナポレオンとビスマルクに攻撃されるまで、1000年にわたって平和を維持した。
そのような同盟になれば、いつかイギリスは喜んで再加盟するだろう。
好むと好まざるとにかかわらず、グローバリゼーションが諸国家の隣国とのバリケードを取り除く。和解し、貿易しなければならない。地理は、歴史を決める独裁者だ。
FP
NOVEMBER 21, 2018
Divorced,
But Still Living Together
BY
OWEN MATTHEWS
FT
November 22, 2018
The Brexit
road to Britain’s collapse
Philip
Stephens
2016年にEU離脱を決めてから、イギリスのエネルギーと目標、国際的影響力は枯渇してきた。多くの人が気づかぬまま、それは突然に終わる。
保守党内のメイに対する不信任案の模索、野党労働党のコービン党首がEUやアメリカ帝国主義に示す嫌悪、そういったことは、笑いを誘うほど愚かになる。
国民投票がUKの同盟を破壊した。その中にあるコミュニティが分裂した。メイの合意案は良くない。その理由は、合意がEU加盟国としての大きな優位を犠牲にして、中身のない「コントロールの奪還」を果たすからだ。もし「コントロール」が、国益を実現するための能力を意味するいなら、Brexitはそれを弱める。
2016年の国民投票は、それが何を意味するのか知らないまま、EU離脱を決めた。今や、なにがBrexitかはっきりした。2度目の国民投票でわれわれは運命を選択する。
PS Nov 22,
2018
Brexit and
the Global Economy
MOHAMED A. EL-ERIAN
UKとEUとの交渉は何とか合意に向かい、経済的な崩壊はイギリスにとって深刻だ、と思われている。
しかし、世界のその他の地域がそれ自身の根本的な変化に直面していることも明らかだ。政治・経済システムは長期的な構造変化を進めており、その多くは技術、貿易、気候変動、拡大する不平等、高まる政治的不満によって動いている。これらの問題に対処するには、世界中の政策担当者たちがUKのBrexitが示す経験から教訓を学ぶのが良いだろう。
離脱派が勝利したとき、専門家や評論家、保守党、労働党の指導者たちも驚いた。彼らは「アイデンティティ」の重要性を理解していなかった。また、経済危機を予測した専門家たちは、Brexitを資本流入の「サドン・ストップ」と誤解した。Brexitはそれと異なり、不確実なものだった。
UK経済は、すでに緩やかな構造変化を始めている。外国からの投資が減り、生産性上昇が鈍った。生産拠点の移転や、投資、雇用の流出が始まっている。Brexitの過程は、経済・政治の分裂が生むリスクを示し、グローバルな経済変動がますます強まる中で、この過程が何をもたらすか、他国に教えている。Brexitは、経済的な相互作用を減らし、経済の回復力を減らし、国際的な資本移動を複雑にし、活力を失わせる。
イギリスはこれまで、「開放型の小国経済」が、ヨーロッパや世界と抜け目なく、効率的に結び付き、国内の優位を活用できる、という見本であった。しかし今では、大国の、比較的閉鎖的な経済が大きな魅力を発揮しつつある。そして、東アジアの小国のように、その選択肢がない場合は、緊密に結び付いた地域ブロックが代替策となるかもしれない。
Brexitはグローバル経済の課題を示している。成長や流動性の見通しは、今まで以上に、不確実で、分散している。
● ロボット・AIの戦争
FT
November 16, 2018
Robot-soldiers,
stealth jets and drone armies: the future of war
Katrina
Manson
ロボットとAIが戦う第3次世界大戦のための実験施設が、the US Army
Research Laboratory (ARL)である。
サイバー戦争の標的は、電力システムのグリッド、水道ネットワーク、金融システム、病院、軍事司令官たちの家族であるだろう。
FT
November 19, 2018
Shaping
the Future of the Fourth Industrial Revolution, by Klaus Schwab with Nicholas
Davis
Review by John Thornhill
● 政治の力量
FT
November 16, 2018
Brexit,
Trump and how politics loses the capacity to shock
Tim Harford
● イタリア政府と欧州委員会
PS Nov 16,
2018
Give
Italy’s Government a Chance
BILL
EMMOTT
ユーロ圏の予算ルールを守る者と、それを破る者との対立である。しかし、ルールを破ることに制裁を行うより、イタリア政府にチャンスを与えてはどうか?
連立政権は、少なくとも数か月しか経たない今、国民に支持されている。合わせて60%の得票があったことは重要だ。赤字予算の規模は国際的水準で観て小さい。政府が約束した政策を実行できるかどうか、EUとの対立を騒ぎ立てるより、やらせてみたほうが良い。少なくとも、デンマークに倣った福祉国家の改革を唱えているのは正しい視点だ。
イタリアのユーロ離脱を刺激するのは間違いだ。インフラ投資は極端に削減されており、その回復は必要だ。EUにとって財政安定協定の改革も避けられない課題である。
FT
November 21, 2018
The
markets, not Brussels, will determine Italy’s fate
Tony Barber
FT
November 21, 2018
Europe’s
crises conceal opportunities to forge another path
Timothy
Garton Ash
今、この瞬間において、ヨーロッパは嵐に包まれている。Brexitからウクライナ、ポーランドのポピュリストからイタリアのユーロ攻撃まで。しかし、これらの危機にはそれ自体に機会が隠されている。もう1つのヨーロッパは可能なのだ。
フランス大統領のマクロン。ヨーロッパ議会選挙に向けたリベラル派と、対立するEPPの統一候補者。メルケル後のドイツ政治。ポーランドの政権党が地方で敗北した。Brexitの政府案が議会で否決されれば、第2回目の国民投票が実現するかもしれない。
ポーランド国家の一節がふさわしい。「ヨーロッパはまだ敗北していない。われわれが生きている限り。」
FT
November 22, 2018
Why talk
of a two-tier Europe should worry investors
Tony Barber
● 日本の金融政策
PS Nov 16,
2018
The Bank
of Japan’s Stealth Tapering
TAKATOSHI
ITO
安倍首相は、デフレが日本経済の主要な停滞要因だ、と正しく認めた。アベノミクスの一部として、黒田日銀総裁はデフレ脱却を求められた。2%のインフレ目標は達成が難しいと思われたが、QQEの発表後、デフレから1.7%のインフレが達成された。資産効果による高価な輸入材の影響があった。しかし、それも日銀の大規模な資産購入が続いていたからだ。健全なインフレが達成されるまで続ける、というアナウンスメントも有効だった。
消費税引き上げの問題、デフレと賃金抑制との悪循環があった。日銀はスイス型のマイナス金利も採用したが、その後、民間商業銀行の苦境に配慮してイールド・カーブに介入した。その政策転換は、今や見えないQQEからの離脱を始めている。
金融政策の決定には、日銀に限らず、インフレ、成長、雇用という3つの目標によるトリレンマが生じている。それは日銀に限らない。
● Amazon第2本社
NYT Nov.
16, 2018
New York
City Needs Amazon as Much as Amazon Needs Us
By
Vishaan Chakrabarti
ニューヨークは、その成長を支える企業の投資と雇用を必要としている。Amazonはニューヨーク全体にとって有益なインフラ投資に貢献する、という社会契約に従うべきだ。
FT
November 18, 2018
Opportunity
knocks in the US for rundown areas — and investors
Joshua Chaffin in New York
NYT Nov.
19, 2018
The Secret
of Amazon’s Success
By
William Lazonick
NYT Nov.
21, 2018
Will
Amazon Ruin or Revitalize New York City?
By Jenny Schuetz and Elizabeth Goldstein
● 中国・香港・台湾
FP
NOVEMBER 16, 2018
China’s
Orwellian Social Credit Score Isn’t Real
BY JAMIE HORSLEY
FP
NOVEMBER 20, 2018
Last Call
for Hong Kong’s Rule of Law
BY
DENISE Y. HO
FT
November 21, 2018
Tech
titans feel the chill in relations with Beijing
Louise Lucas in Hong Kong
FT
November 21, 2018
China’s
‘sharp power’ play in Taiwan
Kathrin
Hille in Tainan
中国は台湾を自国の一部と主張している。もし台湾が独立を主張するなら、断固として、軍事的な侵攻を行うと脅す。独立を支持する民進党DPPが、2016年に、大統領選挙と議会選挙の両方で勝利してから、北京の台湾政府に対する圧力は全面的に強まった。軍事分野、外交分野、そして、航空やホテルにおける名称・台湾の使用禁止、中国から台湾への旅行者を減らし、台湾からの農産物輸入も減らした。
今や、DPP政権は、国内の選挙介入、市長選挙や地方議会選挙、村長まで、中国による有権者への圧力を受けている。それは西側民主主義国で論争となっている権威主義国家からの介入、弱体化工作と共通している。
アメリカ大統領選挙で問題となったロシアによる選挙介入は、新しい言葉を生んだ。「シャープ・パワー」である。台湾こそ、「シャープ・パワー」の戦争における最前線である。
土曜日に行われた高雄市の市長選挙は、地域の問題が争点であったが、その結果は台湾海峡をはさむ中台関係を決定するものだった。なぜなら、DDPが敗北したことで、2020年の蔡英文再選の可能性を消し去ったからだ。蔡は、台湾の独立を否定しないことで、北京の激しい怒りを買った。
FP NOVEMBER
21, 2018
China Is
in Denial on Trade
BY CAROLINE HOUCK
● 新しい権力
FT
November 17, 2018
Why the
real power in America is in the suburbs
Janan
Ganesh
FT
November 20, 2018
US
midterms show a shift to a positive populism
Anne-Marie
Slaughter
権力の本質が変化した。アメリカ中間選挙はそれを示している。
多くの人々がつながる新しいチャンネルを、Jeremy
Heimans and Henry Timmの言う「参加への増大する渇望」は求めている。Facebookなどのメディアに参加し情報を交換する人々、抗議活動や政治キャンペーンに参加する人々がいる。貨幣のように蓄えたり支出したりする、伝統的な権力概念と違い、新しい権力は「潮流のように」共有され、カスタマイズされ、多くの人々に実践される。
ドナルド・トランプもバラク・オバマも、こうした新しい権力モデルを育ててきた。ウェブサイト“My
Obama”を通じて、支配を放棄して、キャンペーンの拡大を図った。支持者たちは、それぞれの表現でメッセージを広め、全体としてよく組織された構造に収まった。トランプのメッセージはもっと権威主義的だが、やはり、支持者たちの深く分散した運動であった。
有権者たちは2大政党の支配や、富裕層の超組織化、貧困層の分断化を嫌い、より穏健な候補者にランク付けされた投票制度を利用した。
ポピュリズムのプラグマティックな、積極的な変化が可能となる。
NYT Nov.
19, 2018
The New
Economy and the Trump Rump
By Paul Krugman
(後半へ続く)