前半から続く)


 ハイテク大企業と社会秩序

The Guardian, Sun 11 Nov 2018

Without a fair tax on tech, it could be the end of the state as we know it

John Harris

先週、アメリカ中間選挙と並んで、サンフランシスコの提案Cが承認された。それは年間売り上げが5000万ドルを超える企業に、ホームレスを支援する財源として年3億ドルを調達する、という提案だ。サンフランシスコにハイ的大企業が集中しているために、論争は彼らの社会的責任に関する紛争となっている。ソフトウェア企業Salesforceの創立者でCEOMarc Benioffを含む支持派は、Twitter, Lyft, and Stripeのような反対派と対峙している。富裕層は明らかに、最も弱い人々を助ける、ささやかな提案にも反対する。ハイテク大企業のもたらした不動産価値の高騰によって、少なくとも部分的には、ホームレス問題が起きている。

アメリカの外では、企業の利益と収める税金とのギャップがさらに拡大している。2016年、Appleはアメリカ外で得た410億ドルに対して、20億ドルの税金を支払った。実効税率は4.8%である。Taxwatchによれば、2017-2018年に、Facebook, Google, Apple, Microsoft and Ciscoがイギリスで上げた利潤は66億ポンドであるが、支払った税金は19100万ポンドである。

ハイテク大企業はわれわれの社会や経済を高速で変形していくが、政府による仕事を助けるためには驚くほど不十分な財源しか出そうとしない。

FT November 11, 2018

Ping An’s hedge against future risks

Oliver Ralph and Don Weinland in Shenzhen

Ping An(中国平安保険)をハイテク企業と誤解してはならない。Amazon and Facebook, 並びに 中国のTencent and Alibabaといった世界の多くのハイテク企業集団が、ソーシャル・メディアやeコマースから銀行業や保険に進出しているのに対して、平安は逆方向に進化している。

過去30年で、経営者のPeter Maは、平安を発行株式の時価評価額で世界最大の保険会社に育てた。その額は1700億ドルであり、既存の伝統ある保険会社Axa, Allianz and AIGをはるかに超える。彼はそれをほとんど中国国内だけで達成した。140万の支店、17900万人の顧客、それは年25%で増大し、医療診断から資産運用まで、48600万人のインターネット・サービス利用者がいる。

その発展は巨額の技術投資によって支えられてきた。収入の1%、すなわち、975000万元(14億ドル)を投資している。23000人の開発技術者を雇用し、年8000件以上の特許を申請する。保険業の伝統的ビジネスモデルから離脱するグローバルな傾向の先頭を走っている。

平安は海外市場、特に、東南アジア市場への拡大を進めている。

FT November 12, 2018

Government and business must fight the cyber threat

Brad Smith

FP NOVEMBER 12, 2018

Battling the Bots

BY ELIAS GROLL

NYT Nov. 14, 2018

The Huxley Trap

By Ross Douthat

ハクスリーAldous Huxleyの「素晴らしい新世界」が、ようやく、ハイテクに支援されて実現するのだろうか。喜び、悪徳、安定性。

NYT Nov. 15, 2018

Facebook and the Fires

By Kara Swisher


 地球環境と資源

FT November 11, 2018

Earth’s natural resources risk being squandered

The Guardian, Wed 14 Nov 2018

The Earth is in a death spiral. It will take radical action to save us

George Monbiot


 ロシアへの制裁

FT November 12, 2018

Russian sanctions: why ‘isolation is impossible’

Henry Foy in Moscow


 イタリアと欧州委員会の妥協

FT November 12, 2018

Europe must cut a grand bargain with Italy

David Folkerts-Landau

欧州委員会がイタリアの債務問題で対決するより協力しなければ、次のユーロ債務危機が避けられない。ECBがイタリア政府の国際金融市場に対するアクセスを保障している、と投資家たちが前提するから、パニックは避けられている。

広まった偏見に反して、イタリアは倹約家であった。超過債務は、ユーロ圏に入る前からあったものだ。それ以降、イタリアはプライマリー予算で、ほとんど毎年、黒字を続けた。2000年以降、債務が増えているのは財政赤字を融資したのではなく、利払いによる。近年は経常収支も黒字だ。

しかし、緊縮財政で超過債務を減らす政策は、同時に成長を促す構造改革を実施しても、失敗だった。イタリア経済は停滞したのだ。この20年間で、スペインは40%、フランスとドイツは30%成長したが、イタリアはわずか7%である。

債務は増え続けている。歳出カットは生活水準を低下させ、イタリアの有権者を過激な選択に向かわせた。改革は実行されない。それは緊縮策と同時に実施できないものだから。債務が増え、財政赤字が増えれば、債券の利払いが増え、さらに赤字を増やす。同様に、所得や資産に増税すれば、成長がさらに落ち込み、有権者の怒りが増す。

ヨーロッパの政治情勢は、債務の共通化、財政移転によって、イタリアの債務負担を減らすことを不可能にした。民間部門を含めた債務の削減も困難だ。唯一の選択肢は、債務の利払いを減らすことだ。これにより、赤字や債務を増やさずに経済の近代化が可能になる。改革を確実に実行すると同時に、インフラ投資を増やせば、成長率が高まる。それは将来の債務返済力も強化する。

民間投資家が債務の利払い延期に自発的に合意することはない。だから欧州安定化メカニズム(ESM)が高コストの債務の一部を購入するべきだ。そしてEMSへの利払いは、イタリアの生産性と成長が高まってから行うことにする。

グランド・バーゲンの大枠はこうだ。イタリアは、構造改革なしに成長を高めることはできないと認める。欧州委員会は、緊縮策で超過債務問題は解決できないと認める。両者がそれを認めることで、ESM案が実現可能になる。

イタリア債務危機はユーロ圏の生存の危機になる。現在のチキン・ゲームは無責任だ。ESMを活用せよ。

FT November 14, 2018

Italy’s budget row leaves eurozone in limbo

John Redwood

FP NOVEMBER 14, 2018

Europe Should Let Italy Win

BY HAROLD JAMES

どちらが尻込みするのか? この争いはギリシャの場合と2つの点で異なる。1.イタリアの規模ははるかに大きい。救済パッケージを組むことも難しい。2.アメリカのトランプ大統領が国際政治とアメリカ政治を変革した結果、国際環境が変わった。

イタリアとヨーロッパがインフラ投資で妥協することはむつかしくない。しかし、政治論争が過熱すれば妥協が難しくなる。欧州委員会はその前に解決策を見出すべきだ。

イタリアの予算案でGDP2.4%の赤字は、3%規制を超えておらず、論争がわかりにくい。問題は財政政策と成長との関係だ。イタリアの成長率が高まれば、この数字は正しく、刺激策は成功である。2ケタのマイナス成長と長い停滞の後、イタリア経済は1.5%の成長を回復した。それが再び低下したので、一時的刺激策を求めている。

誰でも知っているように、それがすべてではない。この予算案の目的は、経済成長だけでなく、連立政権の維持である。右派政党the Legaは、税制の簡素化を求めている。左派政党the Five Star Movementは、基礎的最低所得、そして、理想主義的なユニバーサル・インカムを求めている。両党とも、予定されていた付加価値税の引き上げを破棄し、年金給付年齢を引き下げたいと考えている。

ここには、ナショナリズムではないが、税率や財政政策に関するナショナルな主張がある。欧州委員会ではなく、国民の民主主義的な決定に従うべきだ、という主張だ。また、予算案は支出削減策として、移民のための住宅や管理を減らす。

イタリアがナショナルな、反EUの主張をすれば、トランプやプーチンが支持するだろう。両者はイタリアに対する財政的、政治的な支援について語っている。アメリカ財務省がイタリア政府債を購入するかもしれない。しかし、アメリカが、EUに歯向かう1つのヨーロッパの政府を支援するなら、それをヨーロッパではあまりにも攻撃的な外交と見るだろう。あたかもトランプが、「グローバリズム」に対抗して「ナショナリストの国際同盟」を組織しているようで、ヨーロッパの姿勢は硬化する。

イタリアの閣僚たちは、トランプをまねて、ECBを攻撃するかもしれない。しかしそれは、ECBによるイタリア政府債券の支持を失う危険がある。それは誰をも傷つけるが、真っ先にイタリアの銀行を粉砕するだろう。政府債が暴落し、それを保有するイタリアの銀行が資本不足となり、資本強化が必要だが、銀行を助ける政府には別のEUのルールが反対する。

イタリア政府は、財政の枠組みから移民の扱いまで、広い範囲でEUに反対している。トランプやプーチンのイデオロギーを借りてEUを攻撃するかもしれない。それはEU内で他国の反EU運動を刺激する。しかし、それはイタリアをますます地雷原に引き入れる。ブラッセルの答えは、ルールはルールだ、従うしかない、と。

欧州委員会のその対応も、イタリア国民を納得させない。イタリアの予算案を否定するなら、EUが真に経済回復に関与し、大規模移民の脅威という話を鎮静化するべきだ。ヨーロッパの指導者たちは、一国の、あるいは、ナショナリストの戦略が持続的な福祉の改善につながらず、EUこそが集団的な安全保障と真の公共財を生み出す、と説明しなければならない。

もし現在の予算案を変更したら、イタリア政府は有権者を裏切ったように見える。もし欧州委員会が財政ルールの一貫した適用を諦めれば、すべての加盟国がそうするだろう。不可能を可能にするヨーロッパの技量が求められる。より広くヨーロッパの成長と安全保障に問題を再定義することで、行き詰まりは回避できる。インフラ投資、特に、環境的に持続可能なエネルギーへの投資は、中東やロシアへの依存から脱し、ヨーロッパの安全保障ジレンマを解決する。難民を社会に、労働市場に統合することも、安全保障(治安)の問題だ。

真にヨーロッパの問題を解決するために資源を投入することは支持される。それを解決することはヨーロッパの公共財である。もしイタリアの赤字がそのような用途に限定されるなら、EUはそれを承認する。


 インドの中央銀行

FT November 12, 2018

India’s shadow banks risk repeating crisis-era mistakes

Patrick Jenkins

インドのモディ首相とアメリカのトランプ大統領は、ときに類似点を指摘される。2人ともポピュリスト的な反エリート主義を唱える。金融に対する姿勢もそうだ。選挙に向けて中央銀行に圧力を加える。弱いシャドー・バンキングが膨張しても、次の金融危機を準備している、という問題は無視する。

最近破たんしかけたIL&FSはインドのシャドー・バンキングもしくは“non-bank financial companies” (NBFCs)1つである。増大する中産階級の貯蓄を集めて成長した。その拡大の契機となったのは、2016年のモディによる高額紙幣の廃貨であった。巨額の現金がマネー・マーケット・ファンドに流れ込んだ。

2008-2008年の金融危機は、短期の大口契約による資金調達で拡大した金融機関が、市場のパニックにおいて資金を枯渇させたのだ。同じ自己実現的な危機のリスクがインドに広がっている。しかも、NBFCsは主流の銀行も巻き込んでおり、モディはインド準備銀行に圧力をかけて、金融緩和や緊急融資をするように求めた。

さらに大きな問題は、NBFCs問題が「炭鉱のカナリア」ではないか、ということだ。アメリカでも、イギリスでも、ビジネスと結びついた金融業が小口の投資家たちに大きな損失を強いるかもしれない。かつてのクレジット・サイクルがそうであったように。

PS Nov 12, 2018

Who Should Control India’s Central Bank?

JAYATI GHOSH

PS Nov 14, 2018

India’s Central Bank Under Attack

ESWAR PRASAD

モディ政権がインド準備銀行RBIを政治的に全力で攻撃している。これはインド経済にとって危険な展開だ。RBIの信頼と有効性がマクロ経済と金融の安定性に大きく貢献してきたからだ。それがインドの高成長を支えてきた。

中央銀行に対する批判は珍しくない。インフレや金融不安を過剰に心配して金利を引き上げ、制y等を妨げている、と政府は主張する。ドナルド・トランプもそうだ。

しかし、アメリカの連銀と違って、RBIはその独立性を法によって確立されていない。むしろ、モディ政権は法律の条文を用いて圧力を行使する。政府が特に嫌うのは、RBIが銀行の不良債権を減らすために、国有銀行から政治的なコネのある企業への融資を削ったことだ。政府、特にArun Jaitley財務大臣は、世界金融危機においてRBIの融資拡大を求め、その後、銀行システムに不良債権が累積した。

今までRBI総裁のUrjit Patelは政府の要求を拒んでいる。しかし、もし政府が多方面でRBIを攻撃し続ければ、効果的な金融政策決定は不可能になる。さらに、もし総裁が辞任すれば、インドの機能しない官僚制の中では唯一のもっとも尊敬されているRBIが深刻な打撃を被るだろう。

最近、トルコで起きたことに注意するべきだ。エルドアン首相が公然と中央銀行を批判し、トルコ・リラの価値が急落した。エルドアンの攻撃を退けて、金利を引き上げたが、すでに信認は失われていた。中央銀行への市場の信認は、その国が内外の困難な環境で、一定の政策余地を維持するために、欠かせないものである。

ルピーの下落がさらに続く場合、インドから資本流出が起きる。また、RBIが物価を安定させるなら、金利は低く、政府の赤字も安価に融資できる。RBIの金融政策と監督は、経済を安定させ、高成長を維持する、もっとも効果的な手段である。

政府は、RBIを攻撃するより、称揚するべきだろう。


 サウジアラビア

PS Nov 12, 2018

Are You Buying Oil from Saudi Arabia?

PETER SINGER

サウジアラビアからの石油が輸入されているか、情報を示し、ジャーナリスト殺害の責任を問うために、その購入を止めるべきだ。

FT November 14, 2018

The ruthless campaign to save Mohammed bin Salman

Roula Khalaf

FT November 14, 2018

Riyadh must be pressed to end its war in Yemen


 自由で開かれたインド太平洋

PS Nov 12, 2018

A Concert of Indo-Pacific Democracies

BRAHMA CHELLANEY

中国中心のアジアが現れるのを防ぐために、インドと日本の協力関係を強化することが重要だ。アジア歴訪中のアメリカのペンス副大統領は、「自由で開かれた」インド・太平洋地域のビジョンを広めた。このビジョンを実現する意志を持った国が日本である。

そもそも安倍首相が、「自由で開かれたインド・太平洋」という考えを最初に示し、トランプ政権が、オバマの「アジア旋回」に代わる戦略として採用した。日本は、地域における中国の台頭を最も強く意識して、その地位を強化しつつある。市場規模、ハイテク、軍事力において、最近ではその法的制約を緩め、地政学的な力を高めている。

日本の海軍、潜水艦と駆逐艦は、自国の海域を超えて、アジアの安全保障を担う世界レベルの活動を開始している。「自由で開かれたインド・太平洋」を実現するには、地域の4つの民主主義国(日本、インド、インドネシア、オーストリア)が協力関係を強めねばならない。

最近行われた安倍・モディの首脳会談は重要だ。外務大臣、防衛大臣の「ツー・プラス・ツー」に加えて、第3国(ミャンマー、バングラデシュ、スリランカを含む)との協力関係に加えていくことが合意された。

その障害となるのは、日韓関係の紛糾、主要諸国における国内問題、である。

FT November 14, 2018

Japan risks repeating some old mistakes

Robin Harding

19974月、日本は消費税を引き上げ、不況になった。20008月、20067月、日銀は頻リを引き上げ、不況になった。安倍首相は20144月に消費税を引き上げ、不況になった。

日本は次の失敗を準備している。

FP NOVEMBER 15, 2018

Asia Needs Pence’s Reassurance

BY PATRICK M. CRONIN


 Brexit合意案の採決

FT November 13, 2018

Britain’s conspiracy of silence over the Brexit deal

Peter Mandelson

Brexitの核心にある矛盾が、今、明らかになってきた。閣僚を辞任したJo Johnsonはそれを「奴隷」“vassalage”と呼んだが、EUの外で、より大きな支配権を取り戻す、と意図した出来事は、さらに多くの支配権を失うことでしか実現しない。

これはテリーザ・メイ首相の失策ではない。指導力がないとか、交渉術の不足を非難することは愚かである。狂信的なBrexit推進派は、親ヨーロッパ派の陰謀だ、という。しかし、矛盾はBrexitに本来備わっていた。われわれは摩擦のない市場を願うが、UKEUを出ても、それを実現するとしたら、発言権を持たないEUのルールに従うことでしか、それを確保できないのだ。

労働党の影の内閣は、我慢強い、友好的な交渉によって、魔法のような合意条件が見いだせる、と言う。イギリスはEUの外で、自律的な、かつ、完全な市場アクセスを得る、と言うのだ。

しかし、時間をかけるほど、条件は悪くなるだろう。EU加盟諸国は厳しいルールに従ってEUにとどまっている。EUの外に出た国が、特恵的な市場アクセスと関税同盟の特権を求め、より弾力的な条件を与えられることなど望まない。また、こうした例がEUの内部で摩擦を生じることを望まない。イギリスが緊密な関係を望むほど、EUは平坦な競争条件を要求する。非加盟国として発言力を持たないまま、EUのルールを受け入れるのだ。

イギリスのビジネス界がこれについて沈黙していることは驚きだ。彼らはイギリス政府を通じて発言することで自分たちの利害を守ってきた。その手段を失う。

国民が決めたことだから、それに従うべきだ、というのは間違った議論だ。政府はその結果について正しく伝えていない。支配権は戻らない。イギリスはEUの付録になる。

議会はBrexitを止められないかもしれない。しかし、有権者は止めることができる。そのチャンスがあれば。通商国家の生存の危機だ。国民はそれを望むのか?

The Guardian, Wed 14 Nov 2018

Theresa May’s Brexit deal solves nothing: open warfare is about to begin

Polly Toynbee

FT November 14, 2018

With a Brexit text seemingly agreed in principle, what now?

David Allen Green

NYT Nov. 14, 2018

A Brexit Deal Has Arrived. Now the Chaos Begins.

By Helen Lewis

The Guardian, Thu 15 Nov 2018

Theresa May’s deal is worse for Britain than staying in the EU

John Redwood

The Guardian, Thu 15 Nov 2018

The Brexit wreckers are slinking away from the rancid mess they’ve made

Rafael Behr

The Guardian, Thu 15 Nov 2018

The Guardian view on a Tory Brexit: irreconcilable differences

Editorial

ここに至って、ナショナリズムを煽ることがどれほど破壊的な力となるか、わかっただろう。Brexit推進派は、ヨーロッパを去ることがイギリスの偉大さを取り戻すことだ、と主張した。メイはこう述べた。イギリスの有権者は「ヨーロッパを去って、世界を受け入れることに決めた。・・・真のグローバル・ブリテンを築く、と。」 それは虚言である。EUがイギリスの力を高めている。離脱すれば、ここは委縮し、怒りに翻弄される。

FT November 15, 2018

The Brexit illusions shattered by Theresa May’s impending deal

2年半を経て、メイ首相は離脱条件に合意した。その経済コストは明らかだ。妥協の痛みがあまりにも明瞭である。

首相は確かに国民投票の結果を尊重した。しかし、祝うどころではない。合意案はBrexitの幻想を吹き飛ばした。すなわち、EUからの離脱は直ちに行う。EUとの新しい通商条約はシンプルなもので、2019年末までに達成される。新しい、明確に定義されない関係は良好なものである、と。

しかし、40年間の経済、通商、法律に及ぶ関係を解体するのは容易でない。イギリスの交渉手段は少なく、メイ政権はそれをうまく使わなかった。単一市場や関税同盟に残る気はない、と早くから表明したことは無責任であった。メイはヨーロッパの「分断統治」を狙ったが、EU27か国は団結を乱さなかった。

EUにとどまることに比べて、メイの離脱案は明らかに劣っている。UKは、メイが自分から決めたレッド・ラインの中で、可能な最善のプランを示した。その合意には誰も満足していない。

FT November 15, 2018

Parliament should reject Theresa May’s rotten Brexit deal

Philip Stephens

FT November 15, 2018

Theresa May’s terrible Brexit deal has united the UK in horror

Martin Wolf


 中国の改革と独裁

SPIEGEL ONLINE 11/13/2018

The Disappeared

An Inside Look at China's Reeducation Camps

By Katrin Kuntz

FT November 15, 2018

Xi versus Deng, the family feud over China’s reforms

Lucy Hornby in Shenzhen


 米中貿易戦争

NYT Nov. 13, 2018

China and Trump, Listen Up!

By Thomas L. Friedman

FT November 14, 2018

American executives are becoming China sceptics

Jamil Anderlini

FT November 16, 2018

China is winning the trade war with America

Gillian Tett

FT November 16, 2018

China’s Belt and Road hits problems but is still popular

Raffaello Pantucci


 メルケルとワイマール共和国

FT November 14, 2018

Angela Merkel heads for the exit amid echoes of the Weimar Republic

Frederick Studemann


 スリランカ、パキスタン

FT November 15, 2018

Sri Lanka turmoil points to China’s increasing role

FT November 15, 2018

Technology can address problems plaguing Pakistan economy

Henny Sender


 プエルトリコのハリケーンと資本主義

PS Nov 15, 2018

Disaster Capitalism Comes to Puerto Rico

MARTIN GUZMAN , JOSEPH E. STIGLITZ


 メキシコと資本市場

FT November 16, 2018

Keeping both Mexicans and financial markets happy is a tricky task

Jude Webber

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The Economist November 3rd 2018

America divided

Stockmarkets: Red October

The Democrats: Kick-starting the donkey

Japan’s pampered pets: A dog’s life

Cambodia’s garment industry: Needling Hun Sen

Closing arguments (1) Caravan of copycats

Lexington: The Trump cult

Bagehot: Explaining Brexit

(コメント) 世界の株価下落に中国市場の影響が示されます。比べるわけではないですが、日本の記事は、洋服を着て、おむつをしたペットたち。ペットも高齢化し、手押し車に乗り、病院に通い、葬儀が行われます。

アメリカの中間選挙に関して、何がトランプへの熱狂的な支持者を生むのか? 何がBrexitを説明できるのか? 貿易赤字や、中国、移民の影響から、アメリカやイギリスの社会における人々の感じる問題を軽視し、応えてこなかった政治家・政党を批判します。

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IPEの想像力 11/19/18

国際システムにおける大国と小国は、どのように理解できるでしょうか? たとえば、カンボジアの民主主義から独裁体制への変化と、高い経済成長の実現は、<比較経済>の視点とどう関係するでしょうか?

<比較経済論>において、私は4つの視点で議論しています。1.資本主義と社会主義について、2.市場のもたらす富と貧困、開発について、3.ケインズ主義的な修正と新自由主義の反革命、資本主義の多様性について、4.帝国からグローバリゼーションまで、各地の政治・社会モデルを制約する市場の拡大と縮小について。

資本主義と社会主義との対抗というのは、冷戦によって強く意識されましたが、冷戦後の現在でも存在します。市場が発達することで、恐慌や富の集中、市場の独占が問題となるとき、その生産力や富を<社会>が所有・支配するべきだ、という考えは、必ず、提起されるはずです。金融ビジネスやハイテク大企業の支配に対して、今も都市や民主的な指導者が反対の声を上げています。

冷戦終結は、かつての社会主義圏を資本家的な成長システムに開放しました。資源の採取や労働者の強制移住、奴隷化によって成り立った帝国システムが、今では、グローバルな市場にリンクした巨大な企業組織によって、国境を無視して拡大したり、金融危機によって縮小したりしています。それはまるで、主要通貨の中央銀行が供給する貨幣という血液を受けて、貧しい土地や労働者を呑みこむ軟体動物のようです。

日産のゴーン会長が逮捕されたニュースの意味は、まだ、何も見えていません。有価証券に報告するべき情報を偽ったことは、どのような犯罪なのでしょうか? 株主をだました、というわけですか。テレビでは、5億円の住宅を買った、と指摘しますが、10億の年間報酬があれば、そのような家が世界各地にあることも不思議ではないでしょう。

所有と勤労とが結びついた市場システムは、特に、金融システムとして、高度に発達することで、反対の性格に変わるのだ、と思います

Brexitとトランプを支持した人々のほんとうの理由は何でしょうか? 移民や文化的な不安を挙げることも多いですが、人々は何に怒っているのか? 老人たちではなく、若者たちでもなく、むしろ、安定した仕事がなく、十分な報酬を得られない、しかも、今から人生をやり直すこともできない、と思い始めた中間世代の人々が不安と不満に駆られているのではないか、と思いました。

たとえ能力や資格において差があるとしても、その人の人生が否定されたように感じる、セレブ達の豪勢な生活、傲慢な態度、成果主義や能力主義による正当化、そして、経済学の擁護論は人々の感じる不満を無視してきました。しかし、国民投票によって発言の機会を得た人々、大統領選挙において復讐する機会を得た人々は、まさしく、Brexitとトランプを選んだのです。

Brexit案が議会で否決されたとき、保守党が分裂し、議会が解散したとき、2度目の国民投票が認められたときに、どのような論争が有権者の声を吸収できるのか? そして、2020年の東京オリンピックではなく、トランプの再選運動が、どのようなアメリカと世界の紛争に火を放ち、新秩序に形を与えるのでしょうか?

ロナルド・ドーアの訃報を読みました。同志社大学でベーシックインカムのシンポジウムがあったとき、一言、二言、挨拶と質問をしただけで、ドーアと深く話し合うこともなかったことが悔やまれます。

スキデルスキーが紹介する「補償された自由貿易」は、ドーアの量的割当貿易制度と共通した、市場システムと社会的な安定・革新を、均衡させる試みです。Brexitとトランプの世界を超えて、私たちが継承すべきものです。

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