今週のReview
11/5-10
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安定成長協定とイタリア ・・・アメリカの株価 ・・・アメリカ議会中間選挙 ・・・複雑な国際政治ゲーム ・・・リベラリズムの終わり ・・・移民のキャラバン ・・・カショギ殺害とMbS ・・・Brexitの終幕 ・・・北欧モデル ・・・トランプ支持者の暴力 ・・・労働市場のグローバル化 ・・・グローバリゼーションの分裂 ・・・メルケル時代の終わり ・・・中国の対立と改革
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign
Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project
Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 安定成長協定とイタリア
VOX 25
October 2018
Reforming
the EU fiscal framework: A proposal by the European Fiscal Board
Roel Beetsma, Niels Thygesen, Alessandro
Cugnasca, Eloïse Orseau, Polyvios Eliofotou, Stefano Santacroce
安定成長協定(SGP)がその使命を果たしておらず、改革するべきだ、と認識されるようになってきた。現在のSGPは5つの部分から成っている。
1.2つの「基準値」で財政政策を中期においてチェックする。すなわち、予算赤字と債務/GDP比率である。
2.これらの基準値が、ときには対立する財政政策の要求に一致するとみなす。すなわち、構造調整と債務削減である。
3.財政政策を複数の視点で監視する。それは必然的に対立する評価を生み出す。その結果、異なる指標に関する意見対立を含む判断によってSGPが順守される。
4.柔軟なアレンジを許す複雑なシステムであるため、加盟国は赤字削減の要求を緩和するよう求めて条件を交渉する。たとえば、構造改革や特定の公共投資に関する条件だ。
5.遵守しない加盟国に対して警告と制裁のエスカレートを求めたが、実際に制裁が実行されたことはない。
これまでのいくつかの改革により、次第に、ルールが複雑になった。改革によってSGPが景気循環を増幅する性格に変わったことを批判する声がある。また、SGPに関する政治的な妥協は、その時間的不整合を生じた。すなわち、困難な状況になればルールは緩和された。改革案は、SGPがガバナンスに関する目標を理解するだけでなく、そのルールが自分たちのためにあり、民主的に支持されるよう、明確なものにするべきだ。
具体的な問題としては、1.複雑すぎる。2.透明性を欠く。3.分析と政策決定の分割があいまい。4.ルール違反への制裁措置が実行されていない。
改革案は、1つの基準値、60%だけに注目する。債務/GDP比率が60%になる名目政府支出の増加率が、この60%に達する期間で、その上限が導かれる。条約は改正されないため、予算赤字3%の基準値も残るが、もはや適用されない。協定の順守は、ネットの名目政府支出額が示す増加率のみを監視される。
景気循環による失業や公共投資による赤字は、現在と違って、懲罰の基準に触れることなく、4年間の内の乖離として考慮される。また、エスケイプ・クローズ(免責条項)が一般に定義される。それは、深刻な不況や、自然災害のような、政府に管理できない高度に例外的な事情で、上限を超えた場合である。
PS Oct 26,
2018
Why Italy
is the Latest to Question Policy Orthodoxy
MOHAMED A. EL-ERIAN
グローバル金融市場が緩和から引き締めに転換し始めたことで、財政赤字や政府債券のデフォルトを懸念する声が高まっている。イタリア政府の赤字予算を、欧州委員会は、EUの財政ルールに違反する、と拒否した。格付けが下がり、ユーロ危機の記憶がよみがえる。
しかし、イタリア政府は選挙によって成長や雇用を刺激する積極的な姿勢に国民の支持を得たのだ。政府にはそれを実行する権限があり、EUはもっと柔軟な姿勢で、非正統的な政策にも許容する余地を認めるべきであろう。すなわち、財政赤字を一時的に増やしても、将来の成長率を高め、成長の潜在力を高める供給側の改革を推進するのである。
新しく選出された政府が先進世界の正統的な政策合意に挑戦するのは、これが最初ではない。2015年1月のギリシャ、シリザがそうだった。またアメリカでは、トランプがマクロ政策の基準に反して、すでに数年を経た好景気において、需要を増やす減税策と政府支出増を決定し、敵対的な通商政策を採用した。トルコ政府も通貨危機の管理に対する常識を翻し、高金利政策も、IMF融資も、拒んでいる。
非正統的な政策アプローチがますます強まっているのは、多年の低成長と非包括的な成長が、3重(所得、資産、機会)の不平等をともなって人々を苦しめているからだ。専門家たちは彼らの試みを硬直的に否定してはならない。その背後にある様々な要因を考慮し、成長の減速に苦しむ世界で、経済の成長分野を取り込む必要がある。
イタリアの場合、EUは十何位交渉を続けるべきだし、イタリア政府は長期的な高成長をもたらす供給側の変化を真剣に実現するべきだ。
FT October
28, 2018
Italy is
setting itself up for a monumental fiscal failure
Wolfgang Münchau
SPIEGEL
ONLINE 11/01/2018
Weaponized
Debt
Italy
Doubles Down on Threat to Euro Stability
By DER SPIEGEL Staff
時限爆弾 ・・・チキン・ゲーム ・・・革命か、破滅か? ・・・構造に問題 ・・・頑固な子供の扱い方 ・・・イタリアはギリシャではない
NYT Nov.
1, 2018
Who Will
Flinch in a Game of Chicken Between Italy and the E.U.?
By Luigi Zingales
● アメリカの株価
FT October
26, 2018
The regime
change for global markets is just beginning
Michael Mackenzie
今週の株価は、10月が危険な月である、という評価を固めた。ウォール街はこの年の上昇分を水曜日に失ったのだ。
債券市場の利回り上昇が、一部、責めを負う。さらに、米中間の貿易摩擦、ドル高、世界の成長減速が企業の利益に打撃となることを、キャタピター社や3Mが示した。アメリカ企業の収益はすでにピークを過ぎた、減税の効果も失われていく。つまり、はっきり言って、企業の収益が低下することを想えば、現在の評価水準は維持不可能なのだ。ウォール街の混乱した調整局面が世界の投資家心理に影響する。
もし投資家たちがそのお願いリストを書くなら、すでに債務の増大した中国に追加の刺激策を、また米中貿易紛争の解決を願うだろう。またブリュッセルがイタリアの予算に関して合意し、Brexit交渉でイギリスと合意することも願う。またアメリカ連銀が金利引き上げを一時的に延期し、それゆえドル安になることを願うだろう。
しかし、そんなことは可能だが、今起きている市場の緊張状態はもっと根本的な変化の反映である。すなわち、債券市場の利回りと浮動性とを抑えていた10年に及ぶ中央銀行の姿勢が終わる、ということだ。
FT October
26, 2018
Next
investing hazard are bets on a ‘noflation’ world
Peter Tasker
FT October
27, 2018
For
investors, risks are becoming hard to ignore
FT October
27, 2018
The bright
lights of market illusions are dimming
Merryn Somerset Webb
世界の中央銀行が流動性の電源を消せば、無限のイメージは失われる。
FT October
29, 2018
Has the
market fallen out of love with Donald Trump?
Gavyn Davies
PS Oct 29,
2018
Falling
Share Prices and the Outlook for the US Economy
MARTIN FELDSTEIN
NYT Oct.
29, 2018
The
Economy Is Great, Really, for Now
By Ruchir Sharma
1980年代は日本、2000年に入って10年は新興市場、2010年からはアメリカが高成長を示した。しかし、高成長の次は減速が続くものだ。
トランプ嫌いの人々は、トランプがアメリカの衰退をもたらす、と主張するだろうが、それは間違いだ。アメリカの高成長はオバマの下で始まり、トランプがさらに刺激した。トランプと行き詰まった議会がそれを引き継ぐ。経済はしばしば政治の意図を超えて動く。
フランスからブラジルまで、危機後の債務削減は次の成長を準備することを意味する。アメリカは長い成長を終わり、他の地域が次の成長を始める。
● アメリカ議会中間選挙
FT October
26, 2018
America’s
Democrats need to set out what they stand for
アメリカ議会の中間選挙は、2016年大統領選挙でドナルド・トランプが衝撃的な当選を果たした後の、最初の公式な政治的診断である。
2020年のトランプ再選を阻むさまざまな脆弱性が顕著に示され、民主党の地滑り的な勝利になるだろう、と思われた。しかし、それは確実ではない。トランプの支持率は低いが、若干上向いた。最高裁判事候補となったカバノーに対する民主党の反対は、共和党の支持者に対する予想外の効果を生んだ。民主党は、なお、下院で多数を示すかもしれないが、その見込みはわずかな差だ。上院は共和党が多数のままだろう。
民主党の指導部は、何十年も、クリントン夫妻とその仲間たちが中心であった。オバマが大統領のときでもそうだった。組織や資金はクリントンに頼っていた。夫妻がいなくなった空白を埋めることができない。さまざまな保護や医療保険など、民主党は多くのことを説明するが、強力なテーマがない。トランプが移民や貿易を議論することに合わせているだけでは勝てない。トランプは、左派の「暴徒」がアメリカの民主主義を破壊した、と言う。
民主党員たちは、1人の男に反対するのではなく、自分たちが何者であるかを明確に示す必要がある。
FT
November 1, 2018
US
midterms: Democrats look to big data to beat Trump
Hannah Kuchler in San Francisco
インターネットにおける有権者個人に対する効果的な政治広告の開発は、急速に進んだ。しかし、プライヴァシーは保護されねばならない。
FT
November 1, 2018
US
midterms set stage for mother of all White House battles
Edward Luce
トランプはすでに2020年の大統領選挙を戦っている。トランプは選挙結果によっては政権内の路線の異なる閣僚、マティスなど、を排除するだろう。
今後、両党の和解も妥協もない。2020年まで、政治が平静に戻ることもない。
NYT Nov.
1, 2018
Too Poor
to Vote
By Danielle Lang and Thea Sebastian
FP
NOVEMBER 1, 2018
Deflecting
and Deal-Making: Trump’s Plan if Republicans Lose the House
BY MICHAEL HIRSH
FP
NOVEMBER 1, 2018
Two
Eurocrats and Their Trans-Atlantic Quest to Woo Idaho
BY ROBBIE GRAMER
● 気候変動
PS Oct 26,
2018
How to
Mobilize Private Capital for Climate Action
HÅVARD HALLAND , JUSTIN YIFU LIN
● 複雑な国際政治ゲーム
PS Oct 26,
2018
The Global
Economy’s Three Games
JEAN PISANI-FERRY
いくつかの盤面で、複数のプレーヤーがいる。トランプの国際経済戦略が、そのような世界を作りつつある。
アメリカ、中国、そして、緩やかに連携する他のG7という、3人のプレーヤーだ。3つのゲームがある。貿易ルール、中国のルール教化、中国型発展の抑止、である。
トランプは貿易ルールを破壊する。アメリカ政府はWTOを2国間交渉の障害とみなしている。WTOの自由化義務や紛争処理メカニズムに邪魔されたくない。アメリカ中心の貿易関係を、誘惑と脅しで実現する。
その理由は単純だ。多角的なルールは常に弱いプレーヤーを守るためにあるからだ。なぜアメリカが、その圧倒的な交渉力を使ってはならないのか? 最近のUSMCAが示すように、アメリカは他の2国の義務を決め、その通商政策を制限した。
ヨーロッパ、日本、中国は、アメリカの姿勢に反対し、多国間主義を主張する。しかし、彼らの姿勢も半分しか正しくない。EUは独自の貿易体制を築いており、中国も強い交渉力を駆使している。しかし中国は、グローバルなルールを過去の西側による支配とみなしていたが、今は、アメリカ以外の貿易相手国と立場が似ている。
第2のゲームは、中国をルールに従わせることだ。中国が発展途上国に分類され、WTOの特恵を利用していることに、アメリカは不満を述べた。また中国は内部に大きな異質性を含んでいる。一部は貧しく、一部は裕福である。洗練されていない産業もあれば、高度な技術開発力を示す産業もある。後者は前者の陰に隠れている。
アメリカは中国政府の行動を批判している。知的所有権の侵害、産業補助金、外国企業の買収など、他のG7諸国もアメリカと同じ不安を持っている。中国の専門家の多くも、補助金や投資政策の見直しが必要と認めている。
第3は、中国型の発展戦略を抑止するゲームだ。それは貿易ルールだけでなく、現在の超大国に新興の挑戦国が地政学的に対抗する関係に入った。アメリカの安全保障関係者は、中国に対する戦略的な関与政策は失敗し、戦略的な競争に変わる、という。
ヨーロッパ、日本、カナダは、この対抗関係の一部ではない。彼らは米中にとってそれほど重要ではないからだ。しかし、彼らは外交的、経済的に、また、少なくとも日本がそうであるように、安全保障上、その構成要素である。米中対立が増せば、中国の指導部は西側の価値からさらに離れ、ヨーロッパ、日本、カナダはアメリカの安全保障に対する依存を強める。
トランプ大統領がどのような長期戦略を描くのか、その真の目的は何か、だれにもわからない。アメリカ以外のG7諸国はこの不確実な状況を生きる。中国とともにWTOを改革し、グローバルな妥協を実現するかもしれない。また、アメリカに同調するしかない他のG7諸国が、トランプと習近平の合意によって、中国との対決に残されるだけかもしれない。それは彼らの敗北だ。
もしヨーロッパ、日本、カナダが米中対決の行方を傍観するなら、彼らは国際情勢から排除され、米中G2による世界を黙認することになる。
● リベラリズムの終わり
PS Oct 26,
2018
The
Decline of the West, Again
HELMUT K. ANHEIER
FP OCTOBER
26, 2018
How to
Compromise With Populism
BY ERIC KAUFMANN
2010年、ドイツのメルケル首相は、イギリスのキャメロン首相や他の西側指導者たちとともに、多文化主義は失敗した、と宣言した。それに代わって、リベラルな諸価値と国家の制度的介入に依拠する、包括的なナショナリズムが、マイノリティーを統合し、ポピュリストの右派から有権者を取り戻す、と主張した。しかし、国家ナショナリズムは画一的で硬直的であり、有権者をめぐる競争において、リベラルにも、ナショナリストにも劣るものだ。
新しい、柔軟な、ナショナリズムが求められる。移民集団も、保守派も、独自の仕方で国民の一部になる。西側は、私が「多様な発言からなる政治体・マルチボーカリズムmultivocalism」と呼ぶ、文化政治を必要としている。
真のナショナリズムを求めるポピュリストの右派に対抗し、主流の政治家たちは、ケベックからスイスまで、ブルカを攻撃し、保守的なイスラムのシンボルを禁じてきた。宗教と国家とを分離する政策がその根拠であった。
しかし、国家主導の政教分離には問題がある。第1に、こうした手段はリベラルな信条に反する。異教徒を投獄するわけではないが、信仰に合った服装や礼拝を禁止する。十字架は国家に許容されても、マイノリティーは排除されたと感じる。さらに、市民的なナショナリズムは、保守派の不満に応えるものではない。保守派は「真の国民」を、そこに生まれたこと、その祖先の出自と結びつける。
国家が国民の定義を、マイノリティーを包括するために、普遍的な価値に薄めると、ポピュリストの有権者はそれを拒む。彼らは国民を倫理的な原理のセットに還元しないからだ。十字架と結びつけて国民であることを考え、中身を薄めるのではなく、濃くすることで、キリスト教徒でないものを排除する。ここに根本的なジレンマがある。国家のアイデンティティを、無意味な包括的本質にするのか、あるいは、濃縮して他者との摩擦を生むのか。
市民型の国家・国民定義nationhoodは、マイノリティーと白人保守主義との分断を生む、ゼロサム状態を認めている。しかし、普通のアイデンティティはどちらにも属さない。国際的なスポーツ大会や国民の記念日、危機や戦争に際して、「ホット・ナショナリズム」が現れる。イデオロギー対立や国家間の戦争が珍しくなった今では、そのような機会は減った。しかし、他方で、われわれはエスニック・人口の大変動を経験している。市民型国家・国民定義はエスニック関係を超えられない。
国家・国民定義の旧モデルはフランス第3共和制である。さまざまな方言を標準語に統一し、公式の歴史を決め、学校や軍隊のような国家機関を通じて「農民からフランス人を」創った。これに反して、常に、民衆的な、ボトムアップ型の国民があった。FCバルセロナのチーム、アメリカの星条旗を付けた消費財、大衆文化が示すものだ。また、国民アイデンティティは地方の組織によって異なる。どこで考えるかによって、国家・国民は異なるのだ。エスニック集団や政党によっても異なっている。現代の市場社会においては、国家もボトムアップ型の、仲間内の反応で決まる。それらは競争的に併存している。
マルチボーカリズムによる国家・国民定義とは、人々が独自のアイデンティティを国家に賦与することで、彼らと国家との紐帯を強化するものだ。フランス人であること、スウェーデン人であること、アメリカ人であることには、一定の幅がある。多文化主義はそうではない。マイノリティーは、受入国とは異なる文化の出自の国から離れて、その国の国民やシンボルに一致するよう奨励される。
ボトムアップ型のシステムは、機械と違って、多くの、一見したところカオスに満ちた、複雑なものだ。中央から管理することはできない。人々は異なる環境にあり、異なるメディアを観て、文化的シンボル、アイデアを共有し、国家・国民のアイデンティティを形成する。政府は重要な役割を果たすが、メディアやソーシャル・ネットワークも需要だ。国家は偏在するがどこにもなく、誰の心にも、どの文書にも固定されていない。その定義は誰にも支配できない。
この複雑さを受け入れるには、マルチボーカリズムの寛容さが重要だ。人々は、自分のキャンバスにエスニック、階級、地域、イデオロギー的な視点を加えて、国家の価値のリストや憲法よりも、より自然に、意味のある一体感を示す。
政策として、マルチボーカリズムは排他的なアイデンティティの表現を修正するように求める。多様であることと、連続していることとは、偽善を意味しない。主流の政治家たちは、さまざまなアイデンティティを国民性として承認することだ。いつの定義だけが正しいのではなく、さまざまな正しい定義が存在する。
SPIEGEL
ONLINE 10/29/2018
The
Stephen Bannon Project
Searching
in Europe for Glory Days Gone By
By Christoph Scheuermann
PS Oct 30,
2018
Europe’s
Coming Year of Reckoning
JOSCHKA FISCHER
PS Oct 30,
2018
The New
Tyranny of the Dollar
MARK LEONARD
FP OCTOBER
31, 2018
The
Economic Crisis Is Over. Populism Is Forever.
BY JAMES TRAUB
メルケルの没落は、西側リベラリズムの物質主義的な前提が、もはや西側の現実と政治に合わなくなった、ということを示している。リベラリズムは、合理主義、世俗主義、功利的な計算、を基本的な信条としている。しかし、カンザス州の共和党は労働者からも支持を得たのは、彼らの真の利益に反して、伝統的な価値観に魅力を感じているからだ。あるいは、2008年の大統領選でオバマは指摘した。銃や宗教への執着、自分と違う者たちへの無関心、彼らの不満を説明してくれるものとしての、反移民・反貿易感情に、労働者階級はしがみつく。
人、商品、仕事、思想がグローバル化し、救済には差が生じ、西側の政治が再定義されている。リベラルがその基本的価値を捨てることはできないが、その価値を共有しない人々を真剣に理解しなければならない。
FT
November 1, 2018
What the
lessons of 1918 can teach today’s world leaders
Simon Kuper
● 移民のキャラバン
NYT Oct.
26, 2018
‘It’s an Exodus’
By Ioan Grillo
NYT Oct.
27, 2018
Mexico
Should Not Consent to do Washington’s Dirty Work
By Jorge G. Castañeda
移民のキャラバンが、メキシコを通ってアメリカを目指している。トランプはすでにホンジュラスへの援助を停止した。彼は米兵800人を国境線に派遣した。
キャラバンは、10月12日に、世界で最も危険な土地の1つであるSan Pedro
Sulaを脱出した小さな集団から始まった。彼らは北へ向かう難民と離合集散を経ながら、メキシコの連邦警察に導かれ、通過する村から水や薬の支援を受けて、続いた。ほかのキャラバンも報告されている。この移民と外交の危機に解決策はあるのか?
なぜトランプ大統領は、さんざん騒いだ後で、水に薄めたNAFTAの改定を認めたのか? USMCAとは何か? 私が情報を組み合わせて推測すれば、アメリカは、メキシコ政府が移民と難民を阻止する汚い仕事を、アメリカ政府に変わって実行するという約束と交換に、USMCAにかかわる多くの要求を諦めたのだ。すなわち、メキシコとの間で生じている大幅な貿易赤字を減らし、自動車産業の雇用を取り戻すことだ。
従来、アメリカの政府職員たちは、メキシコとの間で、さまざまな問題を分離して交渉した。それによって両国関係の安定化と繊細な問題の処理をはかったのだ。しかし、トランプは違う、トランプにとって貿易と移民は元から結びついていた。
トランプは、国境における治安と移民問題の解決を優先したのだ。
FT October
30, 2018
On the
migrant trail with the Hondurans chasing the American dream
Jude Webber in Tapachula, Mexico
「悪い。仕事がない。」Nolvin
Floresは語った。「仕事があれば、生きていける。仕事がない日は、食べない。私たちは飢餓から逃れている。」
彼は17歳だ。ホンジュラスからキャラバンに加わった。メキシコを通ってアメリカに向かう。希望を共有して進み、絶望を後ろに置いて。
女性や子供を含む数千人のメンバーが、強奪や暴力に苦しみ、中には肉親を殺害されて、キャラバンに加わった。
私は2つのイメージをぬぐえない。1つは、仕事を求めてさまよう、大恐慌時代のアメリカを描く小説から抜け出したようなイメージだ。もう1つは、200人の、絶望する、失業した造船労働者たちが、1936年に、ロンドンまで行進したthe Jarrow
Marchである。
仕事の無い、希望の無い、福祉国家の無い、Floresのような人々は、100年近くも過去の状態に留め置かれている。
彼のアメリカン・ドリームはささやかなものだ。アメリカで働いて、お金を母親と幼い兄弟たちに送る、というものだ。そして最後はホンジュラスに帰って、店を開く。
メキシコ大統領Enrique
Peña Nietoは、アメリカ国境から移民たちを遠ざけて、緊張を避けたい。「あなたの家だ」というプランでは、移民たちに、メキシコで労働できる難民資格を与える。身分証明書を与え、医療や学校へのアクセスも認める。その条件は、南の州Chiapas
and Oaxacaにとどまることだ。
● カショギ殺害とMbS
FP OCTOBER
26, 2018
How Mohammed
bin Salman Turned Saudi Arabia Into an Investment Wasteland
BY MICHAEL HIRSH
カショギJamal
Khashoggi殺害の前から、Mohammed
bin Salman(MbS)皇太子を西側が改革派として歓迎する中でも、資金は流出していた。その理由は、MbS自身にある。
2016-2017年、サウジアラビアへの海外直接投資は、75億ドルから14億ドルへと、驚くほど減少した。サウジの富裕層による資本流出も生じていた。さまざまな理由から、冷めた目の海外投資家やサウジビジネスマンは、もはや皇太子の権威主義的傾向や気まぐれな経済政策を、信用しなくなっていた。
カショギ殺害は、それまでに専門家たちが抱いた疑念を、広く海外投資家に生じたのだ。MbSは多くのひどい意思決定を行い、影響ある人々や富裕層から嫌われていた。サウジの予算赤字を減らす計画は実現せず、目標年度が変更された。MbSの巨額の投資は、シリコンバレーも含めて、その収益を十分に期待できない。カショギ殺害で、「砂漠の中のダヴォス」からウォール街の資本が流出した。AramcoのIPOをめぐって、その評価額を2兆ドルと語ったことは、専門家たちの笑いを招いた。2500億ドルの政府投資信託は、すでに株価の維持に利用されている。
もし2019年に原油価格がさらに下落すれば、MbSの海外の友人たちはその資金を引き上げるだろう。
FT October
27, 2018
Khashoggi
killing spreads fear among Arab dissidents
Heba Saleh in Cairo, Simeon Kerr in Dubai
and Andrew England in London
PS Oct 29,
2018
The Folly
of MBS
DOMINIQUE MOISI
PS Oct 29,
2018
Did the
Global Order Die with Khashoggi?
ANA PALACIO
FP OCTOBER
29, 2018
Mohammed
bin Salman Is the Next Saddam Hussein
BY RYAN COSTELLO, SINA TOOSSI
FT October
31, 2018
Independent
Arab media faces an uphill battle
Roula Khalaf
FP OCTOBER
31, 2018
U.S.
Pushes for Cease-Fire in Yemen
BY LARA SELIGMAN, ROBBIE GRAMER
FT
November 2, 2018
Jamal
Khashoggi killing resets US relations in the Middle East
David Gardner
● Brexitの終幕
FP OCTOBER
26, 2018
A Second
Vote on Brexit Won’t Enhance Democracy. It Will Undermine It.
BY TOM SLATER
イギリスがBrexit反対に転換することを、外国の観察者が考えるのは許されるだろう。先週、70万人が、いわゆる「人民の投票」を求める行進People’s
Vote marchに参加した。
しかし、これは陳腐で、不真面目な、イギリス政治の力学から離れる逃げ道だ。真の民主派はこれを受け入れないだろう。この運動は、残留派のエリートたちが起こしたものでしかない。
国民投票で決めたことを実施する前に、それを否定する投票を呼び掛けることは、ある政党が多数を得たのに、組閣させずに次の投票をするようなものだ。2016年の投票の前に、人々が決断したら、政府はそれを実行する、と知らされていた。それを否定すれば、人々は民主主義を一世代にわたり信用しなくなる。
The
Guardian, Sat 27 Oct 2018
It may not
stop Brexit. But I’m glad I joined the march for a People’s Vote
Ian Jack
The
Guardian, Tue 30 Oct 2018
Merkel is
going but Germany won’t shift its stance on Brexit
Charles Grant
FT October
30, 2018
How the
Irish border backstop became Brexit’s defining issue
Alex Barker in Brussels and Arthur Beesley
in Dublin
SPIEGEL
ONLINE 10/30/2018
Brexit
Talks
It's Time
to Make Concessions to Britain
A Commentary by Peter Müller
FT October
31, 2018
Greece
shows Britain a maverick state can recover from disorder
Tony Barber
FT
November 1, 2018
A ‘no
deal’ Brexit outcome would justify another referendum
Martin Wolf
PS Nov 1,
2018
Winter Is
Coming to the UK
HAROLD JAMES
テリーザ・メイ首相の「チェッカーズ案」は、交渉の前に死んでいた。それはEUや野党の労働党に反対されただけでなく、議会を通過させる保守党内の支持も得られなかった。
メイ内閣の唯一の選択肢は、何かが起きるのを待つことだ。それは、メイの交渉戦略が失敗しただけでなく、Brexitそれ自体のロジックが矛盾しているからだ。
チェッカーズ案は一連の困難な妥協に依拠している。UKはEUとの関税を維持する(単一市場にとどまる)が、関税同盟には参加しない。UKとEUは共通のルールブックを持ち、UKは第3国と合意すれば、EUの貿易ルールから離れる。
たとえこうした合意ができても、アイルランドとの国境問題がある。アイルランド共和国はEUに残るから、北アイルランドとアイルランド共和国との間で、もしくは、北アイルランドと英国との間で、境界線が復活する。最初の場合、北アイルランドの宗教対立が復活し、後者の場合、UKの分裂が生じる。
Brexitというのは、国家主権を国際秩序の唯一の合理的基礎とする考え方である。それは学会で「リアリズム」と呼ばれる。諸国家は利害を集約、定義し、グローバルなレベルで、永久に、相互の衝突を繰り返す。それは、TVシリーズ“Game of
Thrones”(GOT)に観られる、シェークスピアと幻想文学を加えた世界観だ。
このGOT型リアリズムで観るなら、EUはナンセンスである。なぜなら、その前提は、ナショナリズムと国益を超越しているからだ。Brexitの背後には、ヨーロッパが債務の重みと管理不能の移民流入で崩壊する、という確信がある。UKは、この燃え盛って崩壊していく家から脱出することにしたのだ。
こうした解釈の問題は、EUの機能、家を支えている制度、規制、法体系を無視していることだ。もちろん、常に、それらを嫌う者がいる。北欧と南欧ではユーロ危機を全く異なった意味で理解する。東欧と西欧では難民を観る視点が異なっている。主要な政治的分断は、社会の間ではなく、社会の内部にあるのだ。離脱論はその分断を強める。
UKは、新しい秩序を唱えて、新しい分断を生じている。シティは、ヨーロッパの顧客を失うことを恐れる銀行と、ヨーロッパの規制から自由になることを喜ぶヘッジファンドンに分裂している。ヨーロッパの補助金を失う農家と、より持続可能な農業を新しく試みる農家とが分裂する。保護を願うBrexit支持者と、シンガポールと並ぶ規制緩和の天国を望む支持者が分裂する。
リアリズムの世界では、国家が完璧な国益を代表する。しかし、多元的民主主義において、国益は不断の論争と対立を意味する。現代の世界は1930年代のような権威主義体制の脅威に直面していないし、メイは独裁者として支配することもない。
(後半へ続く)