IPEの果樹園2018

今週のReview

10/29-11/3

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サウジアラビアのジャーナリスト殺害 ・・・Brexit2度目の国民投票 ・・・WTOの解体 ・・・貿易戦争と海外証券投資 ・・・歴史的な偉人としてのトランプ ・・・発展途上国の経常収支赤字 ・・・アメリカを目指す難民キャラバン ・・・ユーロ圏のガバナンス改革 ・・・平等な社会

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 サウジアラビアのジャーナリスト殺害

FT October 19, 2018

US must shed its illusions about Saudi Arabia’s crown prince

Richard Haass

イスタンブールのサウジアラビア領事館でジャーナリストのカショギJamal Khashoggiがサウジ政府に殺害されたのは確かなようだ。しかし、サルマン皇太子MbSがこれに関与した完全な証拠を、われわれは得ることがない、ということもありうる。サウジ政府が偏らない専門的な捜査機関を設けて解明するとは思えない。

MbSは、カショギの殺害を他のジャーナリストたちに教訓として示したかったのかもしれない。あるいは、王室内部の権力争いで、序列を超えて一気に王位継承者となったMbSが、その地位を固める過程の事件とみる者もいる。

アメリカ、その他の政府にとって最も重要な問題は、これにどう対応するか? である。ドナルド・トランプ大統領は、これまでのところ、強権指導者を受け入れ、その話を信用する外交を選択してきた。ロシアのプーチン大統領が、2016年アメリカ大統領選挙に介入しなかった、という保証や、北朝鮮の金正恩が核兵器に関する約束を受け入れたのだ。

トランプ大統領は、サウジが重要な武器の購入者であり、シリア内戦やテロとの戦いでアメリカと協力し、ともにイランと敵対することを指摘する。世界の石油供給の10%を占め、その海外投資も巨額である。

しかし、衝動的冷酷なMbSの行動は、アメリカの国益を損なっている。イエメン戦争は、サウジのベトナム戦争とも呼ばれ、人道的、戦略的な大失敗だ。カタールを不安定化し、また、レバノンの首相を誘拐・拘束した。カショギ殺害は、イランに対する圧力をかけることを難しくしただろう。

この問題は、重要な国の愚行を繰り返す指導者をどう扱うか、という難しい選択である。原則と利害とが衝突するのは、冷戦時代からあったし、1970年代のイランでもそうだった。

それらの経験から導かれる正しい対応は、1.サウジアラビアとサルマン皇太子MbSとを区別する。2.企業はリヤドとの提携を再考する。3.これまで通りの友好関係は続けられない。4.独立の、制約されない捜査機関を設けるよう要求する。しかし、5.サルマン皇太子の退陣を要求しない。それは逆効果になるかもしれない。退陣するかどうかは、サウジ国民が決めることだ。皇太子は国内で強く支持されている。

NYT Oct. 23, 2018

What Is Turkey’s Game?

By The Editorial Board

地域の大国であり、クシュナーを通じてトランプ大統領と緊密な同盟関係を結ぶサウジアラビアに、これほど大胆な挑戦を行ったのはなぜか?

自国の首都イスタンブールで、外国の権力者が命じた殺害が行われたことへの激しい怒り。この事件を利用して、トルコ経済の窮状において、サウジアラビアから資金援助を獲得する意図。

エルドアンは、間接的にサルマン皇太子を示唆しただけで、サウジとの関係を重視した「これは交渉であり、和解の代償を引き上げているのだ。」。MbSの失脚につながる弱みを握った。

エルドアンはトルコをスンニ派ムスリムの大国にしようと考えている。彼の夢は、新しいオスマン帝国の大統領になることだ。しかし、外交的な失敗は、サウジやエジプトとの対立、アメリカやヨーロッパの離反となった。

トランプとの関係を修復し、経済的衰退を逆転するチャンス、と観たのである。エルドアンが国内権力を強化することは確実だ。


 Brexit2度目の国民投票

The Guardian, Fri 19 Oct 2018

If you think Brexit will leave us weaker and poorer, march for a people’s vote

Timothy Garton Ash

もう十分だ! この国民的な恥をおしまいにしよう。世界中で、ますます、イギリスは憐れみと軽蔑の対象になっている。Brexitは、もしそれを実行したら、最近の歴史における最も重大な、やるべき理由のなかった、国民的自傷行為となるだろう。

EUの他の加盟諸国と合意する案がないのは、もはや全く明らかになっている。唯一、前進する道は、議会が問題を国民に差し戻すことだ。イギリス国民がEUにとどまるべきか、決める。そのために、可能な限りすべての人がロンドンに集まって、人民の投票を要求しよう。

2016年の離脱派も、残留派も、今の意見は分裂している。残留派が2人いると、異なる意見が3つある。離脱する、最悪を避ける、ソフトBrexitにする。私は彼らの意見を詳しく聞いたが、正しいと確信できたのは1つである。良いBrexitとは、Brexitしないことだ。

ジョン・メイジャーが述べたように、Brexitの決定は大失敗だった。アイルランド島で流血の宗派争いを再開させてはならない。リベラルで進歩的なイングランドを望み、排外的で、反動的なイングランドを拒むなら、Brexitを支持した有権者の不安にBrexitは何も解決策をもたらさないと考えるなら、議会への行進に参加しよう。

そこで、あなたと会いたい。

SPIEGEL ONLINE 10/19/2018

Brexit Negotiations

Watching a Country Make a Fool of Itself

A Commentary by Jan Fleischhauer

世界に、イギリスが示したほど傲慢な国はない。しかし、悲しいことは、このかつてグローバルな大国であったイギリスが、自分の足がもつれて、ドアにもたどり着けないことだ。

ドイツ人ジャーナリストMatthias Matussekは、ロンドンのドイツ大使館で作家のAntonia S. Byattと話した。彼女はMatussekに、欧州憲法に関して意見を求めた。欧州共同体の諸国がいくつかの根本原理に合意するなら、それは悪いことではないだろう、と答えると、彼女はとんでもないことを言った。

「ご存じでしょうが、私たちイギリス人は憲法を必要としません。世界で最も古い民主主義の国ですから。」少し間をおいて、彼女は続けた。「あなたたちドイツ人のような若い国には、憲法がとても有益なのでしょうね。」これほど高慢で侮辱する言葉はないだろう。彼女はこう言ったのだ。「あなたたちは野蛮人だ。最近になって棍棒を持たなくなっただけだから、首輪が必要だわね。」

悪い合意より、合意しない方がよい。メイ首相はそう言った。イギリス人がそう確信したなら、そうだろう。ハードBrexitはドイツにも有害だ。少しだが。しかし、イギリス人が被る損害はそれどころではない。

トラックはウェールズに向かう途中で止まってしまう。境界線が復活するからだ。ガソリンスタンドは空になり、病院には薬がない。ポーランド人の配管工たちが帰国した後、トイレが詰まっても直してくれる者がいない。


 WTOの解体

FP OCTOBER 19, 2018

The Trade War Has Claimed Its First Victim

BY ARVIND PANAGARIYA

アメリカのドナルド・トランプ大統領が、3月、鉄鋼輸入に25%、アルミニウムの輸入に10%の関税を課すと発表し、貿易戦争を始めた。5月には、カナダ、メキシコ、EUからの輸入に課税を拡大した。予想されたように、中国は、アメリカから輸入する等しい量の鉄鋼・アルミニウムに関税を課し、カナダ、メキシコ、EUも報復した。

法的な根拠として、アメリカは、めったに利用されないWTOの条項を使った。すなわち、国家安全保障上の理由で加盟国は貿易に関する譲歩を停止できる。トランプの関税は間違いなくその条項の精神に反しているが、WTOの研究者たちは、トランプが条文に違反していない、と認める。

WTO加盟国である、カナダ、中国、メキシコ、ノルウェイ、ロシア、トルコ、そしてEUが、アメリカの新しい貿易障壁に関して紛争パネルの設置を要求した。しかし、アメリカの弁明は明白だ。WTOは、加盟国が国家安全保障に関する必要な防衛措置を取るとしても、これを妨げない。そして、何が防衛措置であるかを決めるのは、アメリカだけである。

カナダ、中国、メキシコ、EUに関しても事態は複雑だ。WTOのルールでは、加盟国が他の加盟国による権利の侵害を確信しても、それをWTOの紛争処理機構に委ねることを求めている。この機構のみが報復を合法化できる。彼らが一方的にトランプの関税に報復したことで、かれらもルールに違反したことになる。アメリカはすでにその調査を要求している。

アメリカは自分たちの行為を法的に根拠づけるよう配慮している。9月末に、中国からの2500億ドルの輸入に対して関税を課す根拠は、1974年の通商法301条であった。これは2000年にEUWTOに訴えて、すでにこの法律による貿易規制を無効と判定している。

事態は明白だ。アメリカは貿易戦争を煽動する際に、これまでの貿易ルールを回避して主張したし、貿易相手国も自分たちが貿易ルールを破ることを気にしなかった。もしWTOがアメリカを調査すると言えば、アメリカ政府は単にWTOから脱退するだろう。もしWTOが調査しなければ、将来、国家安全保障に関する貿易制限をどの国に対しても抑えられない。カナダ、中国、メキシコ、EUがルールを破ったとWTOが認めるなら、これらの諸国がWTOから脱退するかもしれない。

楽観論者は2つの結果を期待する。第1に、サプライ・チェーンの混乱は失業と不況をもたらし、トランプと他国の指導者たちがルールにもどる。第2に、2年経てば、アメリカの大統領が代わる。

しかし、どちらのシナリオも実現の見通しは暗い。アメリカでは、中国がルールに違反しており、封じ込めるべきだ、という意見が以前から支配的である。また、WTOの働きについても不満がある。2021年に誰がホワイトハウスにいても、その人物は、WTOがアメリカの利益を十分に守っていない、と考えるだろう。

1870年から第一次世界大戦まで、グローバリゼーションの第1波は西側世界に繁栄をもたらした。しかし、戦間期の近隣窮乏化政策に対する誘惑に負け、新しい貿易障壁が熱望されて、世界不況に至った。第二次世界大戦後の長い繁栄を経て、世界は新しい貿易紛争の時代に入ろうとしている。その結末はまだわからない。


 貿易戦争と海外証券投資

FT October 22, 2018

Beijing finds unlikely anti-Trump weapon in global indices

James Kynge

米中間の貿易戦争に注目が集まる。しかし、海外証券投資を忘れていないか。中国の債券と株式に向かう外国資本の流れは、アメリカ・ドルに対する人民元の減価を止めるのに役立った。

ドナルド・トランプの中国に対する非難と制裁は、米中間の新しい冷戦を懸念する声を生んでいる。

しかし、外国のファンド・マネージャーたちは冷静であり、おそらく、彼らは中国経済が支配的になる時代を予想している。彼らが保有する人民元建の債券・株式は9月末で4622億ドルに達しており、それは1年前には1225億ドルであった。

こうした資本流入は中国の経済抵抗力を高めている。中国の人民銀行はその外貨準備を増やし、ドルに対する人民元レートの維持に介入する力を増している。中国の債券市場は世界第3の規模であり、その利回りは特にヨーロッパに比べて大幅に高い。中国の10年物国債で3.57%、ドイツの10年物債券は0.47%、アメリカは3.2%である。

より重要な要因は、中国の債券・株式が国際的指標に追加される、という見通しである。ファンド・マネージャーたちはそのポートフォリオに中国の資産を増やしている。また、各国の中央銀行は外貨準備をIMFSDRと同じ構成に近づけようとする。中国が人民元をSDRの構成通貨に追加した努力は、このように成果を示している。

しかし、中国市場の信用調査や格付けは不十分だ。外故億資本が流入することで、こうした不適切な評価は是正を迫られるだろう。


 歴史的な偉人としてのトランプ

FT October 22, 2018

Donald Trump embodies the spirit of our age

Gideon Rachman

先月、国連での演説は、アメリカ大統領に対してかつてないことだが、聴衆の嘲笑にあった。しかし、最後に笑うのはトランプだろう。第45代大統領は、歴史を変える指導者、時代精神の体現者になろうとしている。

歴史的な偉人は、善良な人である必要はないし、知的な人物である必要もない。トランプは常習的な嘘つきで、元国務長官Rex Tillersonは「間抜け」と呼んだ。しかし、トランプが、哲学者G.ヘーゲルの呼んだ「世界史的偉人」であるのは明らかだ。

ヘーゲルがナポレオンを「馬上の世界精神」と呼んだことは有名だ。フランスのマクロン大統領が語ったように、「ヘーゲルは『偉人』を、ある偉大な何かを実現するための道具、と考えた。」

私はトランプがヘーゲルを知っているとは思わない。しかし、彼は本能的に、ヘーゲルが書いたような偉人なのだ。他方、マクロンは、現時点では、死滅する旧秩序を体現しているように見える。

未来の歴史家から見て、トランプは、アメリカがその他の世界に対する関係を決める、というエリートのコンセンサスを決定的に破壊した。以前の大統領は、皆、アメリカの衰退を否定したが、トランプはそれを認めた。そしてアメリカのパワーを露骨に使用して、世界秩序をアメリカに有利なルールに変えた。

トランプのゼロサム観では、中国の台頭はアメリカにとって悪いニュースである。トランプは、中国をアメリカ主導の国際秩序に組み込む、という過去40年以上もアメリカ外交の基本であった考えを棄てた。

トランプは、エリートの考え方がアメリカ国民とどれほど離れているか、移民、貿易、アイデンティティで、明確にした最初の大統領だ。トランプは、伝統的なアナリストたちが政治的な自殺行為を見なす、発言や行動を取った。その彼の本能はアナリストより優れていた。高齢にもかかわらず、他の政治家よりニュー・メディアを効果的に駆使した。

しかし、こうした過激化は将来も成功するのか? 初期の兆候は有望だ。しかし、暗転するかもしれない。エスタブリシュメントの側にある者と同じく、私も、そう考える。

究極的な結末が悲惨なものであっても、トランプは「歴史的な偉人」であることに変わりない。ヘーゲルは、世界史における偉人たちが悪い最期に至った、と書いた。アレキサンダー大王は若く死に、シーザーは殺され、ナポレオンはセント・ヘレナ島に流された。トランプはどうか?


 発展途上国の経常収支赤字

PS Oct 22, 2018

Taming Capital Flow Volatility

ANDRÉS VELASCO

「今では経常収支赤字を出すことは犯罪だ。そのような考え方は狂っている。」 シンガポール副首相Tharman ShanmugaratnamIMF・世銀の年次総会でそう嘆いた。彼は聴衆に思い出すように求めた。韓国やシンガポールは「経済発展の初期に経常収支赤字を出した。われわれは成長のために投資し、貯蓄したのだ。」

赤字国が犯罪者のように言われるのは、気まぐれで悪名高い外国資本に依存しているからだ。外国からの借り入れは成長を加速するが、金融危機に対して脆弱になる。

そのリスクに対して、発展途上国は2つのことをする。金融・財政政策を引き締めて経常収支赤字を減らし、巨大な外貨準備を維持する。それはどちらも効率を損なうことだ。

Tharman副首相は、G20の議長として、国際金融改革の報告書を提示した。過度の浮動的な市場や通貨危機を除けば、発展途上国は国際資本移動の利益を享受できる。自国の金融市場を発展させて、自分たちで投資を融資できることに始まり、グローバルな資本移動のサーベイランスを求めている。それは自己実現的なペシミズムを防ぐだろう。

さらに、グローバルなセーフティーネットを構築するため、IMFの増資に加えて、地域的な金融支援システムの協力を求めている。モラルハザードを批判する声に対して、IMFが各国の政策を事前に評価することで、緊急支援の信頼性を高めることも指摘する。

そして、国際資本移動の浮動性を克服することで、韓国やシンガポールがしたように、多くの国がもっと学校や病院にも投資することだ。新しいグローバルな政策を推進する政治的意志があれば、それは可能である。


 アメリカを目指す難民キャラバン

The Guardian, Wed 24 Oct 2018

The Guardian view on the migrant convoy: a heroic journey

Editorial

子供を含む、6000あるいは7000人の人々が、メキシコを通って、3000マイルを歩いてアメリカを目指す。それは、よりよい生活を求める、勇敢さ、辛苦に耐える、決断力を示すものだ。彼らはすべての国が必要とするような市民であり、いかなる政治家もその支持を誇りとすべき人々である。もちろん、トランプのような、多くの特権的なクッションで守られた者たちは反対するだろう。中間選挙前に、彼らの苦労を得点稼ぎに利用する。

こうしたキャラバンは以前からあったし、今後もなくならないだろう。人々、特に女性と子供は、直面する窮状に対して、繁栄する世界を目指すという当然の反応を示した。賢明な、思慮ある対応は、この移動を管理して彼らを遇することだ。しかし、ネイティビストたちは彼らを脱獄者の大集団とみなす。中央アメリカへの援助は、「自分たちの国を逃れてアメリカへ来るものを阻止する仕事をきちんとする」ことが条件となる。中央アメリカを監獄植民地とみなす考えは、アメリカの司法システムに反映されている。

専門家の多くは、ある程度まで、この地域のカオスがアメリカの大量強制送還に由来する、と指摘している。ギャングのメンバーやその疑いをかけた者を国外追放しているからだ。こうしたギャングたちはカリフォルニアの監獄から生じた。今、彼らが破壊している諸国で生まれたのではない。そして彼らの犠牲者たちが、歩いてアメリカに逃れてくる。

暴力の多くは麻薬と、麻薬取引の儲けによって蔓延した。こうした諸国や住民を、壁によってアメリカの政治や経済から遮断できる、と考えるのは毒に冒された発想だ。しかし、それはトランプを有利にする。啓発された自己利益に従う政策とは、移動の最悪の効果を緩和することだ。彼らの国に十分な支援を与えて、経済と治安の状態を改善し、人々が切望する正義の司法に接近することだ。オバマ政権はその政策を実行したが、今、トランプが破壊している。

「移民の根源的理由に対処する」というのは、2015年以来、EUの公式の戦略だ。難民を減らす手段として、それは長期的にしか効果がない。市民社会が育つのには時間がかかる。それは外国から持ち込んで建てるプレハブ住宅でも、被災地にヘリコプターで運ぶ仮設住宅でもない。しかし、社会を安定化する支援は必要だし、貧しい諸国が自分たちの開発政策を模索する邪魔をしてはならない。

キャラバンは人道的な非常事態として扱われるし、住民たちは彼らの勇気と意志を称えるべきだろう。


 ユーロ圏のガバナンス改革

VOX 23 October 2018

Fixing the euro needs to go beyond economics

Anne-Laure Delatte

ユーロ圏は、債権国と債務国との利害対立と、調整コストの分担を決める協力の問題によって、政治的な意思決定が機能しなくなっている。利害対立を克服する改革案は既に存在する。すなわち、債権国は市場規律を求め、債務国はリスク・シェアリングを求めている。両者の妥協を実現すれば、どちらにとっても望ましいからだ。

しかし、妥協を実現するためには、共通の政治的な改革目標が合意されねばならない。コンセンサスが形成できない2つの理由がある。1.国家間交渉である。2.ネットの利益が確実ではなく、ネットのロスが生じかねない。その結果、政治家たちは現状維持に傾く。

Morascvick (1998)によれば、リベラルな政府間主義によってEUは前進してきた。国家ごとに異なる利害を、一連の、プラグマティックな国家間の妥協が成立したからだ。しかし、農産物貿易の自由化と違い、債権国と債務国との対立は、双方において利益と損失が生じる。しかも、誰がそれを負担するのか明確ではない。最終的な結果が非常に不確実なのだ。

ユーロ危機がEUの統合プロジェクトに及ぼす影響は、2015年以降の移民流入がEUの辺境国に集中し、それらが最大の債務諸国(イタリア、スペイン、ギリシャ)でもある、という意味で、複雑になった。現在のガバナンスにおいては、協力して行動することがむつかしい。

ヨーロッパが機能するためには、統一した政治的主権が必要だ。しかし、各国の議会は主権を移譲しない。そこで、各国の議員を集めた第2のヨーロッパ議会を設けることだ。彼らがヨーロッパ政治の妥協を達成できるのは、3つの理由による。1.責任の明確な移譲、2.ヨーロッパ議員間の社会性、3.情報の共有と説明責任

この議会には、共通の公共財を融資するためにヨーロッパ全体に課税する正当性がある。こうした制度の革新によって、ヨーロッパは停滞を脱するだろう。


 平等な社会

The Guardian, Thu 25 Oct 2018

To trust each other again, we need to become more equal

Larry Elliott

アダム・スミスからずっと、エコノミストたちは、信用が社会をつなぐ接着剤であると認めてきた。相互に信頼し合う人々が住む国家は、強い制度を持ち、より開放的で、汚職が少ない。より早く成長し、住むのに快適な場所である。信頼を失った国とは、警察国家となる。

それゆえ、信頼がますます低下していることは重要だ。アメリカでは、政府への信頼が下落してきた。政府は正しいことをする、と信じる人が、アイゼンハワーやJ.F.ケネディーのころは5人のうち4人いたが、ドナルド・トランプの下で、5人のうちの1人に減った。イギリスでは、テリーザ・メイがBrexit交渉に画策するが、その議会は銀行よりも信頼されていない。イギリスで最も信頼されているのは、断然、軍隊である。ビッグ・ビジネスも、シティも、新聞も、もちろん、政治家もわれわれは信用しない。

アメリカの政治理論家たちEric Uslaner and Mitchell Brownが、信頼と不平等の関係を明確にした。不平等が増すと、貧しい人々は無力さを感じ、政治システムは彼らの声を聴いていない、と思う。そして、市民的な関与から離脱する。「資源が不平等に分配されるなら、頂点と底辺の人々は共通の運命を生きるとは互いに思わない。それゆえ、異なる社会的背景の人々を信用することも無くなる。」

2016年の政治的激震の前に、私たちはこの道を進んでいた。そして、Brexitとトランプ当選である。離脱派と残留派は互いを信用しない。アメリカの西部や東部のリベラルな人々は、ラストベルトで苦しむ人々と全く違う国に住んでいるようだった。

企業のトップには極端な報酬の増加が起きていた。金融部門では、裕福になるためなら何でもありの体制が支配した。大不況からの回復は、近代史上で、最も不公平なものだった。膨大な利得がトップの階層に転がり込んだ。

Mary’s Universityで、シティを監督するAndrew Baileyが語った。「大恐慌から1980年代まで、システムは1930年代の遺産によって機能していた。明文化されていないけれど、企業重役の報酬は平均的な給与を大幅に超えて増加すべきではない、・・・これを破ることは間違いであり、広い意味で社会の結束を促す、規範を破壊することだった。」

技術革新は、社会が平等な時に、新しいアイデアから生じやすい。高度な競争力を持ち、同時に、平等な国は存在する。たとえば、スウェーデンだ。アメリカに負けない成長と、より豊かな福祉、長い寿命を実現している。

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The Economist October 13th 2018

The next recession

Saudi Arabia: The fate of a journalist

Financial crime: Dirty capital

The world economy: The next recession

Istanbul’s Arabs: Dissident haven

Rape during conflict: The wolves of war

The world economy: Pulling ahead

(コメント) アメリカの景気は過熱し、インフレに対して金利が引き上げられる。他方、日本やヨーロッパは金融緩和が続き、ドル高が進む。これまでドルの融資や投資を受けていた新興経済から資本が流出し始めた。中国の成長も減速している。それ自体が原材料や農産物を輸出している諸国に需要を減らす。トランプ政権は米中貿易戦争だけでなく、さまざまな国際システムを敵視し、次々に破壊する。

サウジアラビア政府は外国に逃れたジャーナリストの口をふさぐために殺害した。ロンドンは不正な資金流入によって繁栄している。戦争におけるレイプの被害者を救済すること、加害者を逮捕し、処罰することが求められる。

この不完全な世界で、次の不況は各地の市民社旗と政治システムに致命的な打撃となるのか?

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IPEの想像力 10/29/18

次の金融危機と世界不況が迫っています。

The Economistの特集記事には、日本を見習え、と書いています。これまで、日本は最低最悪の愚策を続ける国として非難してきた雑誌が、称賛するとまでは書かないけれど、世界が日本に追いついた、と認めるわけです。日本がバブル崩壊後に試したさまざまな政策手段を、今や、世界が試す番だ、と。

しかし、QEQQEが優れた金融政策だ、とは思えません。The Economistが紹介するインフレ目標の変更、名目GDP目標も、所得政策や賃金への目標設定も、その効果は不確かで、とても世界不況の重力を跳ね返すエンジンとはならないでしょう。

その結果、特集記事は、当然、財政政策に期待します。しかし、QQEですでに財政規律が弛緩し、他方で、適切な公共投資が見つからないかもしれません。日本のような、中央銀行が政府の赤字を貨幣化する姿勢は、明確なチェックが保証されなければ、多くの発展途上国が示す無用な政治的建造物、すなわち、巨大なモスクや、万里の長城に近い土木工事に、消えるだけでしょう。

オリンピックや万博、グローバルなギャンブルの誘致、自国民ではなく、外国人の観光を称賛する政治家が「日本型ポピュリスト」です。ユーロ圏でも、日本でも、赤字や債務累積に対する政治の姿勢が問われます。

危機の発生過程は、大国意識や強権支配・専制や王朝を目指す指導者が国際秩序を破壊し、愚行の集大成です。記事は、世界恐慌をもたらす新しい歴史の様相を政治と経済の悪化に見ます。

金融危機と救済、不況、長期失業が、政治の危機を深めます。各国の政治は分裂し、社会対立を強めて過激化し、イデオロギー的な主張と国際対立、軍事紛争を好むようになります。財政政策をめぐって国内の合意形成を図ることは難しく、むしろ、外国人やマイノリティーを敵視し、移民や貿易を妨げ、協調の枠組みを破壊します。関税引き上げや通貨価値の切下げによって、他国の需要を奪うことが政治の成果と見なされ、世界経済は急速にエンジンを失い、落下します。

1930年代の不況は、金本位制によって各国の政策余地を奪い、民主主義を破壊しました。現在の変動レートと自由資本移動は、不平等で不安定な繁栄が民主主義を破壊し、世界恐慌後の安定化を放棄します。

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最大の改善策は、所得の平等化である、と思います。貧困のさまざまな理由に対処することが、新しい経済政策の中心をなすと思います。

貧困層の所得を回復するマイナスの所得税や、貧しい地方自治体の公共事業を豊かな地方自治体が分担する連邦制が、積極的に組み替えられるでしょう。

難民たちのキャラバンを救済するために、過疎地域に開拓村を設けてインフラ投資するはずです。グローバルな貯蓄が、学校、図書館、病院、警察への投資に向かうことが、貧しい辺境地域の富を増やすのです。

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グローバルな危機を克服する社会が現れます。農産物の価格を安定化するために、大規模な備蓄や融資、輸送システム、世界貿易が発達したように、グローバルな貯蓄と投資の関係が平等化と安定化に向けて整備されるでしょう。

NHKBS3「プレミアムカフェ 北京・パリ大陸横断レース」を観ました。14000キロ、38日間、クラッシックカーを修理しながら、北京からパリまで走り続けました。自動車は自分の体の一部となり、愛し、慈しんで、走るように励まし続け、競争相手である他の参加者とともに、大きな仲間意識を生み出します。

金融ビジネスや外国人観光客、万博、カジノではなく、もっと貧しい人々のことを考える政治を求めます。国境を超えて政治家たちが集まる、大陸縦断や海洋走破の大レースはどうですか。

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