(前半から続く)


 ブラジル大統領選

FP OCTOBER 19, 2018

The Sad Decline of Brazil’s Political Establishment

BY JOSÉ R. CÁRDENAS

FT October 24, 2018

Opponents fear ‘wrecking ball’ Bolsonaro poses threat to Brazilian democracy

Joe Leahy in São Paulo and Andres Schipani in Rio de Janeiro

NYT Oct. 24, 2018

Caetano Veloso: Dark Times Are Coming for My Country

By Caetano Veloso

The Guardian, Thu 25 Oct 2018

Bolsonaro threatens the world, not just Brazil’s fledgling democracy

Noam Chomsky and 14 others

ブラジルは、1964年の軍事クーデタと独裁体制の成立以来、最悪の危機を迎えている。107日の第1回投票で、極右の候補者、ボルソナロJair Bolsonaroは投票数の46.03%を獲得したのだ。この結果が最初のヘイト暴力事件を多発させた。70件以上の攻撃がLGBTの人々、女性、極右候補への反対派、ジャーナリストに対して起きた。

もしボルソナロが当選すれば、ヘイト犯罪が制度化され、物理的な暴力が解放されるだろう。すでにブラジルは世界で最も暴力的な国家の1つである。2017年、殺人は61619人、毎日、170人ほどが殺害された。若い黒人男性は23分ごとに殺されている。

ブラジルの民主的制度は、すべての政党に及ぶ汚職、ルセフ大統領の議論の余地ある弾劾で、その信頼を破壊してしまった。

1028日の第2回投票で、極右候補者はブラジル社会の保守的、反動的な部門から支持を受けている。武器擁護派、大地主、多くの工業資本家、強力なエヴァゲリカル教会、軍・警察の一部である。国際社会、特にフランスとEUはブラジルの民主派を応援しなければならない。

FT October 25, 2018

A Bolsonaro victory will put Brazil’s democracy to the test

Geoff Dyer

PS Oct 25, 2018

Why is Democracy Faltering?

KAUSHIK BASU


 中央銀行家

NYT Oct. 20, 2018

The Secret Lives of Central Bankers

By Annelise Riles

VOX 22 October 2018

Considering new monetary policy frameworks and the case of Japan, Part 1: Raising the inflation target and price-level targeting

Sayuri Shirai

VOX 23 October 2018

Considering new monetary policy frameworks and the case of Japan, Part 2: Nominal GDP targeting and nominal wage targeting

Sayuri Shirai

FT October 26, 2018

Paul Volcker sets a challenge for the next generation

Gillian Tett

ポール・ボルカーの自宅に招待された。彼は回想録の出版を準備していたが、重い病気になり、出版時期を早めた。そして私を呼んで、後世の銀行家たちに想いを伝えたい、と願ったようだ。

ボルカーは、連銀議長として1970年代のインフレを鎮め、2008年の金融危機後には、金融制度改革のためオバマの大統領顧問となった。ボルカーは、3つの領域で進歩が逆転されつつある、と考える。1.インフレ目標2%を追求するだけが、21世紀の中央銀行家の仕事ではない。2.量的緩和は金融システムに大きなリスクを残した。3.金融ひっ迫を終えて、金融ビジネスは悪しき慣行を復活させた。

しかし、ボルカーが後世に最も伝えたかったことは、金融経済の問題ではなく、公共部門の重要性であった。かつては、優れた政府が尊敬され、支持されたのだ。彼は公職を棄てて、巨額の報酬を得るために民間ビジネスへ移ることを拒んだ。


 ドイツの2大政党制の終わり

FT October 21, 2018

Germany’s political centre cannot hold

Wolfgang Münchau

PS Oct 23, 2018

The End of Germany’s Two-Party System

SŁAWOMIR SIERAKOWSKI

ドイツの社会民主党SPDは生存の危機にある。バヴァリアの地方選挙で、わずか9.7%しか得票できず、緑の党や極右のAfDにも負けた。

SPDとキリスト教民主同盟CDUとの2大政党がドイツの政治的安定性を実現してきた。その崩壊は、歴史観(第2次世界大戦)、地政学(対ロシア)、経済(自動車産業)、倫理(難民)に関する、戦後の政治的コンセンサスの崩壊でもある。

2大政党システムが保証した安定性と予測可能性が失われ、ラディカルな社会変化が支持されるだろう。支持基盤は解体し、支持者たちはパニックを生じている。しかし、SPDCDUへの支持が失われても、その考えは広く受け入れられている。政党への信認がなくなったのだ。

多極化した政治システムは、一般に、不安定化する。政権は常に、奇妙な連立を模索し続けるからだ。それぞれの政党の掲げる政策は実現しない。

CDUSPDによる2極体制の衰退は、ヨーロッパにおけるドイツのヘゲモニーの終わりとなる。ドイツに代わる国はなく、ヨーロッパ議会の2大会派も崩壊する。それはヨーロッパの衰退でもある。

FP OCTOBER 23, 2018

Germany’s New Politics of Cultural Despair

BY ELIAH BURES

FP OCTOBER 24, 2018

The Party Is Over

BY MATTHEW GOODWIN


 歴史的な偉人としてのトランプ

FT October 22, 2018

Donald Trump embodies the spirit of our age

Gideon Rachman

先月、国連での演説は、アメリカ大統領に対してかつてないことだが、聴衆の嘲笑にあった。しかし、最後に笑うのはトランプだろう。第45代大統領は、歴史を変える指導者、時代精神の体現者になろうとしている。

歴史的な偉人は、善良な人である必要はないし、知的な人物である必要もない。トランプは常習的な嘘つきで、元国務長官Rex Tillersonは「間抜け」と呼んだ。しかし、トランプが、哲学者G.ヘーゲルの呼んだ「世界史的偉人」であるのは明らかだ。

ヘーゲルがナポレオンを「馬上の世界精神」と呼んだことは有名だ。フランスのマクロン大統領が語ったように、「ヘーゲルは『偉人』を、ある偉大な何かを実現するための道具、と考えた。」

私はトランプがヘーゲルを知っているとは思わない。しかし、彼は本能的に、ヘーゲルが書いたような偉人なのだ。他方、マクロンは、現時点では、死滅する旧秩序を体現しているように見える。

未来の歴史家から見て、トランプは、アメリカがその他の世界に対する関係を決める、というエリートのコンセンサスを決定的に破壊した。以前の大統領は、皆、アメリカの衰退を否定したが、トランプはそれを認めた。そしてアメリカのパワーを露骨に使用して、世界秩序をアメリカに有利なルールに変えた。

トランプのゼロサム観では、中国の台頭はアメリカにとって悪いニュースである。トランプは、中国をアメリカ主導の国際秩序に組み込む、という過去40年以上もアメリカ外交の基本であった考えを棄てた。

トランプは、エリートの考え方がアメリカ国民とどれほど離れているか、移民、貿易、アイデンティティで、明確にした最初の大統領だ。トランプは、伝統的なアナリストたちが政治的な自殺行為を見なす、発言や行動を取った。その彼の本能はアナリストより優れていた。高齢にもかかわらず、他の政治家よりニュー・メディアを効果的に駆使した。

しかし、こうした過激化は将来も成功するのか? 初期の兆候は有望だ。しかし、暗転するかもしれない。エスタブリシュメントの側にある者と同じく、私も、そう考える。

究極的な結末が悲惨なものであっても、トランプは「歴史的な偉人」であることに変わりない。ヘーゲルは、世界史における偉人たちが悪い最期に至った、と書いた。アレキサンダー大王は若く死に、シーザーは殺され、ナポレオンはセント・ヘレナ島に流された。トランプはどうか?

FT October 22, 2018

The squandering of American soft power

NYT Oct. 22, 2018

Trump, Populists and the Rise of Right-Wing Globalization

By Quinn Slobodian

NYT Oct. 22, 2018

The Materialist Party

By David Brooks

NYT Oct. 24, 2018

Trump Gets Terrible

By Gail Collins


 女性のパワー

FT October 22, 2018

This #MeToo moment looks like a turning point for India

Amy Kazmin

FT October 23, 2018

American men should find the courage to reject machismo

Anne-Marie Slaughter

FT October 24, 2018

The power of example will galvanise change for African women

David Pilling

エチオピアの首相、Abiy Ahmedは、アフリカ大陸を震撼させる政治行動を示してきた。数千の政治犯を釈放し、エリトリアと和平を結び、アフリカで最も厳しい統制国家で、完全な民主的選挙を約束した。今月、その中でも最も衝撃的な行動を示した。閣僚の半数に女性を指名したのだ。

批評家は、外国援助を期待した広報に過ぎない、と言う。それも正しいだろう。しかし、模範が生み出す真の変革を過小評価してはいけない。


 戦争の規制

FT October 22, 2018

Lay down rules of engagement for cyber war before it is too late

Anjana Ahuja

FP OCTOBER 25, 2018

Counting the Dead in Europe’s Forgotten War

BY AMY MACKINNON


 発展途上国の経常収支赤字

PS Oct 22, 2018

Taming Capital Flow Volatility

ANDRÉS VELASCO

「今では経常収支赤字を出すことは犯罪だ。そのような考え方は狂っている。」 シンガポール副首相Tharman ShanmugaratnamIMF・世銀の年次総会でそう嘆いた。彼は聴衆に思い出すように求めた。韓国やシンガポールは「経済発展の初期に経常収支赤字を出した。われわれは成長のために投資し、貯蓄したのだ。」

赤字国が犯罪者のように言われるのは、気まぐれで悪名高い外国資本に依存しているからだ。外国からの借り入れは成長を加速するが、金融危機に対して脆弱になる。

そのリスクに対して、発展途上国は2つのことをする。金融・財政政策を引き締めて経常収支赤字を減らし、巨大な外貨準備を維持する。それはどちらも効率を損なうことだ。

Tharman副首相は、G20の議長として、国際金融改革の報告書を提示した。過度の浮動的な市場や通貨危機を除けば、発展途上国は国際資本移動の利益を享受できる。自国の金融市場を発展させて、自分たちで投資を融資できることに始まり、グローバルな資本移動のサーベイランスを求めている。それは自己実現的なペシミズムを防ぐだろう。

さらに、グローバルなセーフティーネットを構築するため、IMFの増資に加えて、地域的な金融支援システムの協力を求めている。モラルハザードを批判する声に対して、IMFが各国の政策を事前に評価することで、緊急支援の信頼性を高めることも指摘する。

そして、国際資本移動の浮動性を克服することで、韓国やシンガポールがしたように、多くの国がもっと学校や病院にも投資することだ。新しいグローバルな政策を推進する政治的意志があれば、それは可能である。


 北朝鮮の非核化

PS Oct 22, 2018

Defining Diplomacy Down

RICHARD N. HAASS

北朝鮮の非核化を求める外交政策は、Daniel Patrick Moynihanがかつて指摘した、「基準の劣化」が起きている。Moynihanによれば、行動基準が時とともに劣化し、以前は耐えがたいようなことが広く受け入れられるような社会的趨勢を意味する。

外交の目標は北朝鮮御非核化である。しかし、ますますアメリカも韓国も、その基準を下げつつある。重要な目標を妥協すること、また、短期的な安定化を維持するため、長期的な非核化の目標を軽視する危険がある。

いつの間にか、最大限の圧力をかける、という主張は消えてしまった。非核化に必要な情報の提示と検証は何も行われていない。しかし韓国は核兵器だけでなく、通常兵器の脅威も重視する。他方、アメリカは非核化を優先する。そこには北朝鮮が付け入る齟齬が生じやすい。

北朝鮮には、核兵器とミサイルを放棄するか、経済開発のための支援を受けるか、どちらかの選択を迫ることが重要だ。北朝鮮は両方を望んでいる。朝鮮戦争の終結宣言も、それによって何を求めているのか、が問われる。米韓軍事演習や一時的に停止するのか? 韓国駐留の米軍の水準まで低下させるのか?

最善の道は、関係諸国が緊密に相談することだ。個別交渉に入って互いにショックを与えることは避けて、包括的な合意で非核化の進展とその見返りを与える。それまでは、軍事演習と経済演習による圧力が必要だ。

PS Oct 25, 2018

Trump’s Floundering North Korea Strategy

CHRISTOPHER R. HILL


 アメリカを目指す難民キャラバン

FP OCTOBER 22, 2018

The World’s System for Resettling Refugees Benefits the United States

BY DENIS MCDONOUGH, RYAN CROCKER

The Guardian, Wed 24 Oct 2018

The Guardian view on the migrant convoy: a heroic journey

Editorial

子供を含む、6000あるいは7000人の人々が、メキシコを通って、3000マイルを歩いてアメリカを目指す。それは、よりよい生活を求める、勇敢さ、辛苦に耐える、決断力を示すものだ。彼らはすべての国が必要とするような市民であり、いかなる政治家もその支持を誇りとすべき人々である。もちろん、トランプのような、多くの特権的なクッションで守られた者たちは反対するだろう。中間選挙前に、彼らの苦労を得点稼ぎに利用する。

こうしたキャラバンは以前からあったし、今後もなくならないだろう。人々、特に女性と子供は、直面する窮状に対して、繁栄する世界を目指すという当然の反応を示した。賢明な、思慮ある対応は、この移動を管理して彼らを遇することだ。しかし、ネイティビストたちは彼らを脱獄者の大集団とみなす。中央アメリカへの援助は、「自分たちの国を逃れてアメリカへ来るものを阻止する仕事をきちんとする」ことが条件となる。中央アメリカを監獄植民地とみなす考えは、アメリカの司法システムに反映されている。

専門家の多くは、ある程度まで、この地域のカオスがアメリカの大量強制送還に由来する、と指摘している。ギャングのメンバーやその疑いをかけた者を国外追放しているからだ。こうしたギャングたちはカリフォルニアの監獄から生じた。今、彼らが破壊している諸国で生まれたのではない。そして彼らの犠牲者たちが、歩いてアメリカに逃れてくる。

暴力の多くは麻薬と、麻薬取引の儲けによって蔓延した。こうした諸国や住民を、壁によってアメリカの政治や経済から遮断できる、と考えるのは毒に冒された発想だ。しかし、それはトランプを有利にする。啓発された自己利益に従う政策とは、移動の最悪の効果を緩和することだ。彼らの国に十分な支援を与えて、経済と治安の状態を改善し、人々が切望する正義の司法に接近することだ。オバマ政権はその政策を実行したが、今、トランプが破壊している。

「移民の根源的理由に対処する」というのは、2015年以来、EUの公式の戦略だ。難民を減らす手段として、それは長期的にしか効果がない。市民社会が育つのには時間がかかる。それは外国から持ち込んで建てるプレハブ住宅でも、被災地にヘリコプターで運ぶ仮設住宅でもない。しかし、社会を安定化する支援は必要だし、貧しい諸国が自分たちの開発政策を模索する邪魔をしてはならない。

キャラバンは人道的な非常事態として扱われるし、住民たちは彼らの勇気と意志を称えるべきだろう。

VOX 24 October 2018

Losing it: The economics and politics of migration

Ian Goldin, Benjamin Nabarro


 アフガニスタン

FP OCTOBER 22, 2018

Afghanistan’s Strongman Democracy

BY DIPALI MUKHOPADHYAY, OMAR SHARIFI

アフガニスタンはたとえ弱体な政府に依拠しているとしても、自分たちの国を再建したいという決意は今も強い。

FP OCTOBER 22, 2018

Cameroon’s Paul Biya Gives a Master Class in Fake Democracy

BY JEFCOATE O'DONNELL, ROBBIE GRAMER

FT October 23, 2018

South Africa must translate political freedom into prosperity

Cyril Ramaphosa


 イラン制裁

FP OCTOBER 22, 2018

Can the U.S. Make Oil Sanctions on Iran Work?

BY KEITH JOHNSON


 INFの破棄

FP OCTOBER 22, 2018

Trump’s Plan to Leave a Major Arms Treaty With Russia Might Actually Be About China

BY LARA SELIGMAN

The Guardian, Tue 23 Oct 2018

Trump is creating a nuclear threat worse than the cold war

Simon Tisdall

ワオ! 彼がまたやった。

ドナルド・トランプが画期的な軍縮条約を破棄すると発表した。ルールに依拠したグローバルな秩序に、また1つ、破滅的で、危険な打撃を与えた。

これは世界に向けたスタートの号令だ。2つの超大国による世界より、もっと恐ろしいグローバル核軍拡競争が始まった。この大統領は、破滅をもたらす脅しをしてから、その緊張を緩める。北朝鮮とやったことだ。しかし、今度は相手が違う。十分な核戦力を持つプーチンだ。

プーチンが言うように、ある意味で、核兵器の技術開発でINFを破ったのはアメリカだ。さらに、INFの破棄は、ロシアとも共通した、この条約に参加していない中国の核軍拡を意識している。

イギリスやフランスのような核保有国も、核武装を検討している諸国にも、無関係ではありえない。

FT October 23, 2018

Donald Trump strikes a blow against nuclear stability

FP OCTOBER 23, 2018

Would INF Withdrawal Recreate a Nuclear Hair-Trigger World?

BY MICHAEL HIRSH

FP OCTOBER 23, 2018

Trump’s Punk Rock Nuclear Policy

BY JEFFREY LEWIS

なぜトランプはINFを破棄するのか? その理由を探すことは、すでに無意味である。トランプは、ボルトンの奇妙な世界観を気に入った。ボルトンは、アメリカの主権を制約するすべての条約を拒否する。理由は何とでも付ける。

確かに、INFには問題があった。すでに2011年に、ボルトンは離脱を求めている。そのときの戦略的な敵であるイランに、条約は対応していなかったからだ。

アメリカがソ連と1987年にINFを結んだとき、それは名前に反して、500から5500キロの中短距離ミサイルを禁止した。アメリカは海や飛行機から発射するミサイルを持っていたから満足だった。他方、ロシアは次第に周辺の脅威を懸念するようになった。中国、インド、イラン、北朝鮮、韓国、パキスタン、サウジアラビア。すべてこの射程のミサイルを保有している。ロシア人は新型のクルーズ・ミサイルを開発し、条約を破った。オバマは条約の改正を模索し、トランプは破棄した。

ボルトンにとっては、アメリカ例外主義だけが真実だ。

NYT Oct. 24, 2018

Getting Tough’ Over a Missile Pact Could Weaken America

By The Editorial Board

FP OCTOBER 24, 2018

Trump Is Right About the INF

BY ESTHER OWENS


 ホームレス

PS Oct 23, 2018

America’s Homelessness Crisis Is Deepening

LAURA TYSON , LENNY MENDONCA

もっと多くの住宅を建てる。人々がホームレスになる複雑な理由について理解する。

NYT Oct. 23, 2018

How to Make America America Again

By Thomas L. Friedman


 ユーロ圏のガバナンス改革

VOX 23 October 2018

Fixing the euro needs to go beyond economics

Anne-Laure Delatte

ユーロ圏は、債権国と債務国との利害対立と、調整コストの分担を決める協力の問題によって、政治的な意思決定が機能しなくなっている。利害対立を克服する改革案は既に存在する。すなわち、債権国は市場規律を求め、債務国はリスク・シェアリングを求めている。両者の妥協を実現すれば、どちらにとっても望ましいからだ。

しかし、妥協を実現するためには、共通の政治的な改革目標が合意されねばならない。コンセンサスが形成できない2つの理由がある。1.国家間交渉である。2.ネットの利益が確実ではなく、ネットのロスが生じかねない。その結果、政治家たちは現状維持に傾く。

Morascvick (1998)によれば、リベラルな政府間主義によってEUは前進してきた。国家ごとに異なる利害を、一連の、プラグマティックな国家間の妥協が成立したからだ。しかし、農産物貿易の自由化と違い、債権国と債務国との対立は、双方において利益と損失が生じる。しかも、誰がそれを負担するのか明確ではない。最終的な結果が非常に不確実なのだ。

ユーロ危機がEUの統合プロジェクトに及ぼす影響は、2015年以降の移民流入がEUの辺境国に集中し、それらが最大の債務諸国(イタリア、スペイン、ギリシャ)でもある、という意味で、複雑になった。現在のガバナンスにおいては、協力して行動することがむつかしい。

ヨーロッパが機能するためには、統一した政治的主権が必要だ。しかし、各国の議会は主権を移譲しない。そこで、各国の議員を集めた第2のヨーロッパ議会を設けることだ。彼らがヨーロッパ政治の妥協を達成できるのは、3つの理由による。1.責任の明確な移譲、2.ヨーロッパ議員間の社会性、3.情報の共有と説明責任

この議会には、共通の公共財を融資するためにヨーロッパ全体に課税する正当性がある。こうした制度の革新によって、ヨーロッパは停滞を脱するだろう。

FP OCTOBER 23, 2018

Only Macron Can Save Europe, Says Macron

BY ROBERT ZARETSKY

The Guardian, Wed 24 Oct 2018

The real danger to Europe? The lost sense of a common cause

Natalie Nougayrède

FP OCTOBER 24, 2018

This Is an Existential Test of the Eurozone’

BY MICHAEL HIRSH

FT October 25, 2018

Italy’s face-o with Brussels has echoes of the Greek debt crisis

Isabelle Mateos y Lago


 中国の統制

NYT Oct. 23, 2018

Being China Means Never Having to Say You’re Sorry

By Yi-Zheng Lian

YaleGlobal, Thursday, October 25, 2018

Hong Kong: Global or Chinese Capital?

Philip Bowring


 農業改革

FT October 24, 2018

Can China’s agricultural transformation offer lessons for Africa?

Rakesh Kapur


 トランプの言動とテロ続発

The Guardian, Thu 25 Oct 2018

Trump’s words have consequences, and he can no longer deny it

Gary Younge

The Guardian, Thu 25 Oct 2018

The Guardian view on the US pipe bombs: rage and resistance

Editorial


 平等な社会

The Guardian, Thu 25 Oct 2018

To trust each other again, we need to become more equal

Larry Elliott

アダム・スミスからずっと、エコノミストたちは、信用が社会をつなぐ接着剤であると認めてきた。相互に信頼し合う人々が住む国家は、強い制度を持ち、より開放的で、汚職が少ない。より早く成長し、住むのに快適な場所である。信頼を失った国とは、警察国家となる。

それゆえ、信頼がますます低下していることは重要だ。アメリカでは、政府への信頼が下落してきた。政府は正しいことをする、と信じる人が、アイゼンハワーやJ.F.ケネディーのころは5人のうち4人いたが、ドナルド・トランプの下で、5人のうちの1人に減った。イギリスでは、テリーザ・メイがBrexit交渉に画策するが、その議会は銀行よりも信頼されていない。イギリスで最も信頼されているのは、断然、軍隊である。ビッグ・ビジネスも、シティも、新聞も、もちろん、政治家もわれわれは信用しない。

アメリカの政治理論家たちEric Uslaner and Mitchell Brownが、信頼と不平等の関係を明確にした。不平等が増すと、貧しい人々は無力さを感じ、政治システムは彼らの声を聴いていない、と思う。そして、市民的な関与から離脱する。「資源が不平等に分配されるなら、頂点と底辺の人々は共通の運命を生きるとは互いに思わない。それゆえ、異なる社会的背景の人々を信用することも無くなる。」

2016年の政治的激震の前に、私たちはこの道を進んでいた。そして、Brexitとトランプ当選である。離脱派と残留派は互いを信用しない。アメリカの西部や東部のリベラルな人々は、ラストベルトで苦しむ人々と全く違う国に住んでいるようだった。

企業のトップには極端な報酬の増加が起きていた。金融部門では、裕福になるためなら何でもありの体制が支配した。大不況からの回復は、近代史上で、最も不公平なものだった。膨大な利得がトップの階層に転がり込んだ。

Mary’s Universityで、シティを監督するAndrew Baileyが語った。「大恐慌から1980年代まで、システムは1930年代の遺産によって機能していた。明文化されていないけれど、企業重役の報酬は平均的な給与を大幅に超えて増加すべきではない、・・・これを破ることは間違いであり、広い意味で社会の結束を促す、規範を破壊することだった。」

技術革新は、社会が平等な時に、新しいアイデアから生じやすい。高度な競争力を持ち、同時に、平等な国は存在する。たとえば、スウェーデンだ。アメリカに負けない成長と、より豊かな福祉、長い寿命を実現している。


 

FT October 25, 2018

Japan’s warming ties with China are a positive step


 

PS Oct 25, 2018

Who Deserves Credit for the Strong US Economy?

MICHAEL J. BOSKIN

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The Economist October 13th 2018

The next recession

Saudi Arabia: The fate of a journalist

Financial crime: Dirty capital

The world economy: The next recession

Istanbul’s Arabs: Dissident haven

Rape during conflict: The wolves of war

The world economy: Pulling ahead

(コメント) アメリカの景気は過熱し、インフレに対して金利が引き上げられる。他方、日本やヨーロッパは金融緩和が続き、ドル高が進む。これまでドルの融資や投資を受けていた新興経済から資本が流出し始めた。中国の成長も減速している。それ自体が原材料や農産物を輸出している諸国に需要を減らす。トランプ政権は米中貿易戦争だけでなく、さまざまな国際システムを敵視し、次々に破壊する。

サウジアラビア政府は外国に逃れたジャーナリストの口をふさぐために殺害した。ロンドンは不正な資金流入によって繁栄している。戦争におけるレイプの被害者を救済すること、加害者を逮捕し、処罰することが求められる。

この不完全な世界で、次の不況は各地の市民社旗と政治システムに致命的な打撃となるのか?

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IPEの想像力 10/29/18

次の金融危機と世界不況が迫っています。

The Economistの特集記事には、日本を見習え、と書いています。これまで、日本は最低最悪の愚策を続ける国として非難してきた雑誌が、称賛するとまでは書かないけれど、世界が日本に追いついた、と認めるわけです。日本がバブル崩壊後に試したさまざまな政策手段を、今や、世界が試す番だ、と。

しかし、QEQQEが優れた金融政策だ、とは思えません。The Economistが紹介するインフレ目標の変更、名目GDP目標も、所得政策や賃金への目標設定も、その効果は不確かで、とても世界不況の重力を跳ね返すエンジンとはならないでしょう。

その結果、特集記事は、当然、財政政策に期待します。しかし、QQEですでに財政規律が弛緩し、他方で、適切な公共投資が見つからないかもしれません。日本のような、中央銀行が政府の赤字を貨幣化する姿勢は、明確なチェックが保証されなければ、多くの発展途上国が示す無用な政治的建造物、すなわち、巨大なモスクや、万里の長城に近い土木工事に、消えるだけでしょう。

オリンピックや万博、グローバルなギャンブルの誘致、自国民ではなく、外国人の観光を称賛する政治家が「日本型ポピュリスト」です。ユーロ圏でも、日本でも、赤字や債務累積に対する政治の姿勢が問われます。

危機の発生過程は、大国意識や強権支配・専制や王朝を目指す指導者が国際秩序を破壊し、愚行の集大成です。記事は、世界恐慌をもたらす新しい歴史の様相を政治と経済の悪化に見ます。

金融危機と救済、不況、長期失業が、政治の危機を深めます。各国の政治は分裂し、社会対立を強めて過激化し、イデオロギー的な主張と国際対立、軍事紛争を好むようになります。財政政策をめぐって国内の合意形成を図ることは難しく、むしろ、外国人やマイノリティーを敵視し、移民や貿易を妨げ、協調の枠組みを破壊します。関税引き上げや通貨価値の切下げによって、他国の需要を奪うことが政治の成果と見なされ、世界経済は急速にエンジンを失い、落下します。

1930年代の不況は、金本位制によって各国の政策余地を奪い、民主主義を破壊しました。現在の変動レートと自由資本移動は、不平等で不安定な繁栄が民主主義を破壊し、世界恐慌後の安定化を放棄します。

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最大の改善策は、所得の平等化である、と思います。貧困のさまざまな理由に対処することが、新しい経済政策の中心をなすと思います。

貧困層の所得を回復するマイナスの所得税や、貧しい地方自治体の公共事業を豊かな地方自治体が分担する連邦制が、積極的に組み替えられるでしょう。

難民たちのキャラバンを救済するために、過疎地域に開拓村を設けてインフラ投資するはずです。グローバルな貯蓄が、学校、図書館、病院、警察への投資に向かうことが、貧しい辺境地域の富を増やすのです。

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グローバルな危機を克服する社会が現れます。農産物の価格を安定化するために、大規模な備蓄や融資、輸送システム、世界貿易が発達したように、グローバルな貯蓄と投資の関係が平等化と安定化に向けて整備されるでしょう。

NHKBS3「プレミアムカフェ 北京・パリ大陸横断レース」を観ました。14000キロ、38日間、クラッシックカーを修理しながら、北京からパリまで走り続けました。自動車は自分の体の一部となり、愛し、慈しんで、走るように励まし続け、競争相手である他の参加者とともに、大きな仲間意識を生み出します。

金融ビジネスや外国人観光客、万博、カジノではなく、もっと貧しい人々のことを考える政治を求めます。国境を超えて政治家たちが集まる、大陸縦断や海洋走破の大レースはどうですか。

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