IPEの果樹園2018

今週のReview

10/22-27

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ドイツの地方選挙 ・・・気候変動と国際政治 ・・・サウジアラビアのジャーナリスト殺害 ・・・ユーロ危機 ・・・Brexitの進む道 ・・・株価下落と金融危機 ・・・リベラルで多角的な経済秩序 ・・・トランプとドル ・・・ビットコインとブロックチェーン ・・・インターネット世界の分裂 ・・・アメリカの内戦 ・・・北欧の永世中立

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 ドイツの地方選挙

FP OCTOBER 11, 2018

In Bavaria, Green Could Be King

BY SUDHA DAVID-WILP

NYT Oct. 12, 2018

Angela Merkel Could Save Europe. Why Won’t She?

By Julianne Smith


 気候変動と国際政治

FT October 12, 2018

Let’s innovate our way out of climate change disaster

Tim Harford

FT October 12, 2018

Indonesia is showing the way on sustainable growth

Nicholas Stern

今週、IMF/世銀総会がインドネシアのバリ島である。世界の指導者たちが集まるだろう。

新興経済の指導者の多くが、すでに低カーボン経済への移行を開発計画の中心に置くことを認めている。インドネシアは世界でも炭素排出量の多い国である。

低カーボン経済への移行は、気候変動を抑えるためだけでなく、経済にも良いことだ。気候変動の対策に積極的な行動を取ることで、強く、持続可能な、包括的経済成長が実現できるだろう。それは2030年までに、少なくとも26兆ドルの取引規模である。またそれは、低カーボンの職場を6500万人以上にもたらし、70万人以上が大気汚染による死亡を免れる。

クリーン・エネルギーのコストは利用可能な水準になっている。再生可能エネルギーのコストは急速に下落し、波動エネルギーによる発電など、化石燃料に代わる有望な技術が開発されている。

民間投資を低カーボン経済に向けることが重要だ。世銀など、開発金融機関や国際機関が支援するのは重要だ。

NYT Oct. 18, 2018

Searching for Water Across Borders

By Jeff Nesbit

気候変動は水の希少性をグローバルな安全保障問題にする。裕福な諸国は国境の外に、必要な水を探し始めた。それは貿易や地政学に重要な意味を持つ。サウジアラビアと中国は自国民を救うためにアメリカの助けを求めた。

2014年、サウジアラビア最大の乳製品企業Almaraiは、4750万ドルでアリゾナに15平方マイルの農場を買った。そこで育てたアルファルファ(牧草)を自国に送って、乳牛を育てるためだ。農耕には莫大な鈴が必要だ。

中国も、アメリカに食糧を求めた。世界の大豆の半分以上を、アメリカと南米から輸入している。2013年には、中国企業が世界最大の豚肉生産者Smithfield Foodsを買収した。最近では、アメリカで育つ豚の4分の1が中国で消費されている。

安全保障の専門家James Clapperによれば、世界の諜報機関が注目する「衝突する領域」は、食糧、水、エネルギー、病気、である。

サウジアラビアのAlmaraiは、コロラド川の水をめぐって、アメリカの諸都市と争奪戦を始めている。中国は、大豆など、大量の水を消費する農作物を得るために、アマゾンンを貫く3000マイルの鉄道建設を提案した。

FP OCTOBER 18, 2018

The Hope at the Heart of the Apocalyptic Climate Change Report

BY JASON HICKEL


 サウジアラビアのジャーナリスト殺害

PS Oct 12, 2018

The New Disappeared

NINA L. KHRUSHCHEVA

NYT Oct. 12, 2018

Body Parts on the Bosporus

By Roger Cohen

6日間、トランプ政権は沈黙したままだった。王位継承の皇太子であるM.B.S.はトランプの中東で亡くした息子のように抱擁され、その情熱はトランプの最初のサウジ訪問で1100億ドルの武器購入によって固められた。トランプの外交政策に人権の問題は存在せず、専制支配者も歓迎し、Khashoggiのような権力に対して真実を主張するジャーナリストを軽蔑していた。トランプは、自分のこととお金以外に、重大な関心を持っていない。

Khashoggiの行方不明は、今や、トランプの価値を無視する外交が示す典型となった。アメリカの核心的な価値を軽蔑する彼の姿勢は、イエメンから、フィリピン、ロシアまで、その影響を示している。これがトランプ・ワールドである。

FT October 13, 2018

Saudi Arabia: a kingdom in the dock

Laura Pitel in Istanbul and Simeon Kerr in Dubai

FT October 15, 2018

Trump’s dangerous reliance on Saudi Arabia

Gideon Rachman

FP OCTOBER 15, 2018

Saudi Oil Threat in Khashoggi Disappearance Seen as a Bluff

BY KEITH JOHNSON

FP OCTOBER 15, 2018

This Is America’s Middle East Strategy on Steroids

BY STEPHEN M. WALT

アメリカは中東から引き上げてはいないし、ワシントンがチェックすることで、この地域はカオスに向かって落ち込んでもいない。イラク戦争をピークとして大幅に減ったが、あの時期は異常であった。アメリカはなお、この地域に25000人の兵士を派遣している。イスラム国の残党と戦う数千人、イランの影響力拡大に対抗し、バーレーンの港には海軍の小隊、カタールには空軍の強力な基地があり、その他の諸国にも特殊部隊が展開し、主にテロ対策に当たっている。

トランプ大統領は、アメリカの伝統的な中東の支援諸国との関係を強化してきた。エジプトの強権指導者シシをホワイトハウスに迎え、アメリカ大使館をエルサレムに移して、イスラエルの入植拡大を熱狂的に支持する、共和党の大口献金者Sheldon Adelsonを喜ばせた。ネタニヤフ首相とも極めて良好な関係だ。サウジの新しい権力継承者、改革派としてサルマンM.B.S.皇太子、そしてアラブ首長国連邦とも友好関係にある。

国防長官ポンペイオも大統領顧問ボルトンも、サウジ・イスラエル・エジプト・湾岸諸国の対イラン同盟にアメリカが参加することを支持している。トランプはイラン核合意から離脱し、テロ支援や地域の不安定化を図っている、とイランを非難して、彼らを喜ばせた。オバマ政権は、アメリカがイランとの戦争を避けるため、同盟諸国を支援した。しかしトランプはこれを逆転させた。彼は戦争を望んでいる、と観る者もいる。

アメリカが支援を強化したことで注目すべき点は、彼らがますますアメリカからの無条件の支持を受けるにふさわしくない国になっている、ということだ。むしろ今こそ、各国の行動を否認し、そのような行動から距離を取り、他の選択肢を探しておくときである。

エジプトでシシは、民主化の希望を完全に葬り、反政府デモを殺戮し、疑わしい理由で、数百人を投獄した。他方、イスラエルはさらに民主主義から離れてアパルトヘイトに向かい、占領地への入植を続け、ガザ地区の境界線でパレスチナ市民を射殺している。サウジアラビアでも、サルマン皇太子は進歩的な改革派ではない。それが明白になった。石頭の、恨みがましい、有能さを欠いた指導者だ。レバノンやカタールとの関係悪化、イエメン戦争を観ても、その失策は明らかだ。脱石油の経済改革に必要な外国の投資家たちはサウジから逃げてしまうだろう。さらに、Jamal Khashoggi殺害容疑が加わった。

しかし、トランプ政権は違うことを考えている。サウジに強く抗議すれば武器購入を止めるかもしれない。対イラン同盟にも影響する。イラン核合意からのアメリカの離脱、イラン制裁は、ヨーロッパとの紛争、彼らの不利益を生じている。彼らはそれをトランプの大失策だと考えている。

こうしてトランプのアメリカは、長期に及ぶヨーロッパの民主的な同盟諸国を犠牲にして、また、彼らにドルに依存した金融システムからの離脱を進める理由を提供して、ますます怪しげな中東の諸国家を仲間に引き込んでいる。この交換が、アメリカにとって戦略的にも、道義的にも、意味があるのか?

私は、アメリカとヨーロッパが協議して離婚を進めることには賛成だ。外交的、経済的な関係を保ちながら、ワシントンは徐々に、安全保障問題をヨーロッパ自身の手に委ねるべきだ。永久に、ヨーロッパを従順な、依存したパートナーにすることは間違いだ。しかし、トランプの政策はヨーロッパに分裂をもたらす。この汚れた、金のかかる離婚事件にまみれた男が、同じような騒ぎをアメリカに生じるのは見たくない。

アメリカは中東に大規模な軍事介入を行ったが、地域を安定化できなかった。重要なことは、ここに述べたようなマイナスの傾向は、アメリカが中東への関与を低下させたからではなく、過剰な、しかも無批判な支持を与えたから起きている、ということだ。彼らはいかに悪行を重ねてもトランプは支持するだろう、と考えている。アメリカは彼らに肥料をやっている。

この悲しい話は予測できた。アメリカ大統領が外交を何も知らず、外交関係の重要なポストを空席のまま放置し、ホワイトハウスの上級職に就く資格のない、甘やかされた金持ちの子供に、彼が大統領の娘と結婚したというだけで、大統領顧問にしているのだから。

The Guardian, Tue 16 Oct 2018

The Guardian view on Saudi Arabia: in need of new leadership

Editorial

PS Oct 16, 2018

The US-Saudi Relationship After Khashoggi

BARAK BARFI

NYT Oct. 16, 2018

America’s Dilemma: Censuring M.B.S. and Not Halting Saudi Reforms

By Thomas L. Friedman

911以来、サウジアラビアに関する、最も重要なアメリカの国益はどこにあるのか? それは石油ではない。武器輸出でもない。イランに対抗することでもない。中東におけるイスラム宗教改革を進めることだ。サウジアラビアは聖地メッカとメジナを擁している。

FP OCTOBER 16, 2018

Will the Saudis’ Khashoggi Confession Get Them Off the Hook?

BY MICHAEL HIRSH

YaleGlobal, Tuesday, October 16, 2018

Murder in the Middle East

Bruce Riedel

イスタンブールのサウジ公邸でジャーナリストのJamal Khashoggiが行方不明となった事件は、この地域と、特にサウジアラビア王室に長く重要な意味を持つだろう。

サウジのジャーナリストは2017年に自分からアメリカのヴァージニアに亡命した。直前のMBS放送で、2000万人が栄養不良や病気に苦しむ危機に瀕した、サウジが行っている野蛮なイエメン戦争を強く批判した。リヤドは毎年少なくとも500億ドルの戦費を負担している。彼はサウジ皇太子をシリアのアサドにたとえ、その「威信」が失われたと示唆した。サウジとその同盟諸国がイエメン戦争を停止するように求めた。

サウジは、再婚の届けを出すようにジャーナリストを誘い出した。王室護衛軍やその他の諜報関係者から15名の実行チームを作り、102日の朝、イスタンブールに派遣した。彼らはKhashoggiを殺害し、彼の死体とともに、その夜、サウジアラビアに戻った。サウジアラビアはこの告発を否定したが、納得できる説明を示していない。

Mohammed bin SalmanMBS)皇太子は、改革派としてのイメージを広めてきた。その幻想は、この事件で崩壊した。彼は無慈悲で危険な破壊者である。

世界第2の石油埋蔵量を持つサウジと他国は取引しなければならない。サルマン国王が皇太子の責任を問うことはないだろう。しかしMBSは世界の非難に直面し、王国の取引相手はますます動揺する。

イランが有利になった。トルコは決定的な情報を漏らし、「捜査」に協力する、と注意深く行動している。しかし、その関心は、捜査にはなく、自国においてはジャーナリスト弾圧に関心を向けない。アメリカ大統領で、トランプほど王国と緊密な関係を示す者はいなかった。1100億ドルの武器購入(実際は50億ドル)というフェイク・ニュースに隠れている。イスラエル・サウジアラビアとの同盟を築いた義理の息子、クシュナーがその評価を問われている。

2011年の「アラブの春」以降、中東世界は混乱している。破たん国家と内戦の土地ばかりが増える。悪辣な皇太子が新しいパンドラの箱を開けた。

FT October 17, 2018

The enduring myth of the young Arab reformer

Roula Khalaf

FP OCTOBER 17, 2018

Khashoggi’s Death Is Highlighting the Ottoman-Saudi Islamic Rift

BY MUSTAFA AKYOL

FT October 19, 2018

Saudi Arabia must be held accountable

NYT Oct. 18, 2018

Why King Salman Must Replace M.B.S.

By Madawi al-Rasheed

事態の深刻さを理解したサルマン国王が、皇太子を解任し、王室を立憲君主制に改革することにより、サウジアラビアはこの危機を脱することができる。

NYT Oct. 18, 2018

Trump vs. the World Order

By David Leonhardt


 中国の国際政治経済学

FT October 12, 2018

China may hit US harder as economic rivalry mounts

Andrew Gilholm

FT October 13, 2018

The US is hunkering down for a new cold war with China

Graham Allison

FP OCTOBER 15, 2018

China’s Great Leap Backward

BY JONATHAN TEPPERMAN

FT October 18, 2018

The Treasury's currency report was all about China.

Colby Smith

FP OCTOBER 18, 2018

China’s Dangerous Dollar Addiction

BY EDOARDO CAMPANELLA


 ユーロ危機

SPIEGEL ONLINE 10/12/2018

A European IMF

The New Face of the Eurozone Bailout Fund

By Christian Reiermann

ヨーロッパ安定メカニズムと呼ばれていた救済基金が新しい権限を得て整備される。それは今やIMFが担うような諸機能を果たすのだ。しかし、反対する声もある。

静かな環境で、1つの有望な新興企業がある。ダイナミックに成長し、国際的なスタッフを抱え、莫大な資金を扱う見通しだ。ジムまで持っている。

8年前、もう少し離れた場所で、わずか5人で始まった。しかし、今では180人が働く。彼らは43カ国から集まり、数十か国語を使用する。

この新興企業は、ESM、すなわち、ヨーロッパ安定メカニズム、もっと普及した呼び名は、ユーロ救済基金、である。

理事会のメンバーたちは、EMSをヨーロッパのIMFにしたいと思っている。そのために、EMSはユーロ圏諸国の財政を監視する新しい権限を得る。金融危機に際して、政府や銀行を救済する資金を供給し、破たんした銀行の整理もする。

しかし、そのためには厳しい条件を課すことになる。その前身であるEFSFthe European Financial Stability Facility)は、5つの国Greece, Ireland, Portugal, Cyprus and Spainを救済し、100億ユーロを融資した。ESMも、財政緊縮、社会システムの改革、労働市場の自由化、を求めるだろう。これまでに行われた融資は、すべて返済され、プログラムは成功だった。

ドイツ人のEMS長官Klaus Reglingは、危機の8年間を経て、満足している。そして新しい拡大される使命のために、スタッフを大幅に増やそうとしている。EMSは、基金であり、債券発行機関であり、金融危機の早期警報システムである。

EMSに権限を奪われる欧州委員会は、これに反対している。

SPIEGEL ONLINE 10/16/2018

Untethered in Italy

Salvini Pushes Country to the Precipice

By Walter Mayr

PS Oct 17, 2018

Will Italy Sink Europe?

JIM O'NEILL

ユーロがなくても、30年前に初めて調べたときからそうだった。イタリアの生産性上昇はヨーロッパの水準で観て低かった。通貨リラを切り下げて高成長を示すときもあったが、それは次のさまざまな危機の種をまくことになった。

イタリアで左派と右派のポピュリストによる政権が成立し、これまでもしばしば議論された債務/GDP比率と予算赤字が再び懸念されている。

リラがあれば、それを切り下げるときだ、という者もいる。しかし、ユーロ圏に参加してリラを失ったからそれができない。しかし、イタリアは低インフレと低金利を得たのだ。リラ切下げは改革を避けるだけで、むしろ害になるだろう。

ユーロ圏の財政規律に従うことは、イタリアにとって牢獄だ、という者もいる。それはあまりにも低い名目成長率とインフレ率、高い債務を意味する。しかし、ポピュリスト政権が成立する前は、他国に比べてイタリアは(景気循環調整後の数値で)規律を守っていた。

イタリアが必要としているのは、生産性を高める構造改革である。他方で、EU当局は、イタリア政府の財政規律について攻撃し過ぎてはいけない。もし民主的に選ばれた政権が退けば、事態は一層悪化するだろう。イタリアに必要なことは、名目GDPの成長である。


 NAFTAからUSMCA

PS Oct 12, 2018

Trump’s North American Trade Charade

ANNE O. KRUEGER

NAFTAが廃止されるよりは良かったが、the United States-Mexico-Canada Agreement (USMCA)はトランプ大統領が言うような「勝利」ではない。

予想されたものよりましである理由は、1.サンセット条項が、6年ごとの再交渉ではなく、16年に延期された。2.なくすと主張していた紛争処理メカニズムが、弱められた形でも残った。

トランプ政権が強い関心を持っていた自動車産業に関する限り、管理貿易の傾向が強まった。輸入割り当てが始まるだろう。貿易圏内の原産地規制が強まった(NAFTA62.5%であったが、75%)。それは効率的な生産を妨げ、アメリカ産業の生産性を低下させる。ヨーロッパやアジアの生産者は有利になるだろう。

また、自動車の価値の4045%を、2023年までに、時給16ドル以上の労働者が生産しなければならない、と求めている。それはメキシコの自動車産業労働者の時給よりはるかに高い。メキシコの生産者は、時給を上げるより、25%の関税を選択するだろう。

トランプ大統領自身が示した基準、アメリカの貿易収支赤字を2国間で減らす、また、良い職場を自国に取り戻す、という意味で、USMCAは失敗だ。エコノミストなら知っているように、財・サービスの赤字はマクロ経済の問題である。国内支出と貯蓄との差を反映しているに過ぎない。USMCAには、赤字を減らすことと何も関係ない。

今回の合意は、むしろアメリカの職場を破壊するだろう。北米の生産者は生産性を低下させ、アジアとヨーロッパが第3国市場で売り上げを増やす。さらにアメリカ市場でもそうだろう。外国の自動車会社は、明らかに、オフショア生産拠点をアメリカから海外へ移す。それはさらにアメリカの生産と雇用を失わせる。

2017年まで、アメリカは貿易自由化のグローバルな指導者だった。今は違う。友好国や同盟国を威嚇して有利な条件を得ることは、アメリカが失うソフトパワーに比べて、無価値なものである。

FT October 18, 2018

Transatlantic privacy deal is vital to trade

Wilbur Ross


 Brexitの進む道

PS Oct 12, 2018

Into the Brexit Labyrinth

JACEK ROSTOWSKI

20175月、リスボン条約の50条に従うEUとの離脱交渉をイギリス政府は1年半続けたが、合意には近づいていない。遅かれ早かれ、イギリス国民は自己破滅的な離脱か、あるいは、Brexitそれ自体を放棄するか、選択しなければならない。

エッシャーの有名な絵のように、イギリス政府の離脱交渉は、メイ首相によって始まったまま、政治的、戦略的な迷路を歩くだけである。メイは、当面、EEAとして単一市場に入ったノルウェイ・オプション、あるいは、カナダとEUとの自由貿易協定を目指した。「チェッカーズ(首相公邸)案」がそれである。

しかし、この選択肢は、EUによって直ちに拒否された。それは複雑すぎる妥協だ、というのだ。またFTAは、すでに45年もEUとしてイギリス経済がスプライ・チェーンの一部になって、大陸ヨーロッパから切り離せなくなっている、という意味で、不十分である。

もし合意のないまま離脱すれば、交渉期間が延期されても、その不確実さは耐えがたいほど大きいだろう。イギリス産業も外国企業も、イギリスから脱出してしまう。投資は大幅に減少するだろう。

アイルランドの国境が再現されるなら、北アイルランドにおけるカソリックとプロテスタントとの和平合意は崩壊する。これが回避されないと、「チェッカーズ案」への路は閉ざされてしまう。

イギリスには2つの選択肢しか残らない。1つは、Brexitに向けて、とにかく出発することだ。何が起きるか、観てから決める。あるいは、2度目の国民投票を行って、Brexitそれ自体を破棄する。

The Guardian, Sat 13 Oct 2018

Three years of Labour under Jeremy Corbyn has changed British politics

Gary Younge

The Guardian, Tue 16 Oct 2018

I have made no false promises on Brexit – I’m free to tell you the truth

John Major

今まで、アメリカの大統領は皆、イギリスをEU加盟国として評価してきた。しかし、このままで行けば、すぐにそうではなくなる。自由貿易、開かれた市場、安全保障の重視というアングロ・アメリカの信念を、EUの中で議論しなくなれば、われわれの友人、アメリカは、UKではない誰か、アメリカの利益に尽くす他の国を求めるだろう。それを否定するのはロマンチックな妄想である。

アメリカの同盟相手として、われわれの価値は下がるのだ。

何世紀にもわたって、われわれの国は、ヨーロッパが統一してわれわれに反対することを妨げようと画策してきた。いかし現代では、ヨーロッパのすべてをわれわれの背後に、われわれを支えるように選択した。過去の政治家たちは墓石の下で寝苦しい想いをしているだろう。

われわれは未来を「グローバル・ブリテン」と呼ぶのか? それは正しい政策だが、何も新しいことではない。300年間もそうであった。新しい点は、世界がイギリスを、同盟を組むべき超大国ではなく、中規模、中ランクの国家とみていることだ。そして、すぐに世界はもっと冷たくなる。

Brexit後の世界は非常に異なるものだろう。それがいかなる姿になるとしても、離脱派の約束からは程遠いものだ。あれは票を集めるためのファンタシーであった。まともな政治では決してなかった。私は、議席を得るためや、党派を利するために発言する必要がない。Brexitに関して私が思うところを、完全かつ正確に述べる自由がある。

われわれの決定は、UKEUの両方を衰退させる、途方もない間違った判断であった。われわれの国家の富も、個人の富も、損なわれる。われわれの将来の安全保障も深刻なダメージを受ける。時とともに、UKが崩壊していくだろう。われわれの若者たちが未来への展望を奪われる。

決して実現できない約束をした者たちを、決して忘れてはならない。許してもならない。

さらに大きな問題は、EUがどのような影響を受けるか、である。それはひどいものだ。UKの抜けたEUはバランスを変化させ、自由な市場を支持する国が劣勢になる。独仏が対立するとき、UKが緩衝材となることもできない。ドイツはさらに孤立し、摩擦は激化するだろう。

Brexit推進者たちが、それはヨーロッパの問題だ、われわれと関係ない、と言うだろう。彼らは現実を無視している。

われわれはどうか? 主要政党のどれも、健全さを失っている。保守党も、労働党も、過激な分派に振り回される。左右の過激派が政治の分断化を強め、妥協を拒むことを私は懸念する。もっと穏健な意見なら共通の土台を提供するだろう。

醜い共食いの政治ではなく、もっと敬意と礼節を重んじるべきだ。対決を抑えて、妥協するべきだ。

FT October 16, 2018

Why the pound is keeping its cool in a big week for Brexit

Katie Martin

PS Oct 16, 2018

The Brexit Endgame

ROBERT SKIDELSKY

UKの「残留派」は、イギリスの諸都市にプラカードを掲げて問い続けている。「Brexit―それは価値があるのか?

経済学の答えは明らかに、まったくない、だ。コスト・ベネフィットだけなら、離脱の決定は不合理だ。しかし、経済学はまた、その決定を支配していた。Brexitに向けたプロパガンダは、経済的不満を反映したからだ。特に、移民への恨みとEUへの反発だ。

人々の怨嗟は、彼らを無視する支配者たちによって国内経済が損なわれたことで生じた。Will Hutton and Andrew Adonisが述べたように、「われわれの諸問題はイギリスで作られた。解決するのもイギリスである。ヨーロッパはそれを邪魔しない。」

しかし、Brexitには非経済的な面がある。イギリスは、かつて1度もヨーロッパ国家の一部になったことがない。EUは、サッチャーが恐れたような「超国家」には程遠いものだが、イギリスだけでなく、多くの加盟国でも正当性を欠く、国家としての野心を持っている。ヨーロッパ市民と言いながら、政治は各国民の手にある。「離脱派」のキャンペーンは、経済的な不満だけでなく、こうした超国民政府の見せかけに反対するものだった。

Brexitは、超国家主義とナショナリズムとの弁証法が世界のその他の地域にも広がっているように、現代政治の基本要素である。

その結末は見えないが、4つの可能性がある。

1EU離脱を止める。政府案を議会が否決する、あるいは、2度目の国民投票で。2.合意なしの離脱。鉄道も道路も閉鎖され、食料、医薬品、燃料も届かない。経済的破滅。3.「半分半分」の妥協。「チェッカーズ・プラン」は、サービスを除く自由貿易協定と、アイルランド国境問題の解決を示した(保守党内の強硬派が反対)。4.違う意味での「半分半分」。ノルウェイのようなEEA。しかし、EUのルールに従い、分担金も支払う(強硬派はもっと強く反対)。

20195月になれば、イギリスは「一時的に」関税同盟に残り、最終の離婚合意には2年から3年を要するだろう。こうした「ソフトBrexit」で、国民投票を尊重し、経済的破局を避ける。イデオロギーに対するプラグマティズムの勝利だ。

かつてJ.M.ケインズが述べたように、政権を争う言葉は乱暴なものとなり、考えられないような過激化を示す。しかし、いったん権力を得れば、もはや情熱的な姿勢は必要ない。レトリックによる代償ができるだけ抑えられるようにする。

Brexitも、トランプも、ヨーロッパにおける極右も、貿易を破壊しないし、戦争にも、独裁政権にもならず、脱グローバリゼーションを急ぐこともないだろう。むしろ、主流の政治における過剰な言葉に対する警告と見るべきだ。

The Guardian, Wed 17 Oct 2018

Blair, Clegg and Heseltine: why we need another EU referendum

Tony Blair, Nick Clegg and Michael Heseltine

FT October 18, 2018

Brexit’s one certain outcome is uncertainty

Philip Stephens

NYT Oct. 18, 2018

I Didn’t Hate the English — Until Now

By Megan Nolan

FT October 19, 2018

‘Known unknowns’ to help the UK budget for Brexit

Martin Wolf

FT October 19, 2018

A longer Brexit transition can ease Britain’s trading troubles


(後半へ続く)