IPEの果樹園2018
今週のReview
10/8-13
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最高裁判事候補カバノーの公聴会 ・・・大西洋同盟の衰退 ・・・ユーロ圏改革 ・・・トランプの貿易戦争 ・・・金融危機とグローバル・リンク ・・・Brexitとヨーロッパの秩序 ・・・グローバリゼーションの逆転とポピュリズム ・・・アテネの覇権と民主主義 ・・・安倍政権と沖縄米軍基地 ・・・オーストラリアの移民依存経済
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 最高裁判事候補カバノーの公聴会
FT September 29, 2018
Christine Blasey Ford, America’s
reluctant star witness
Courtney
Weaver
証言することについてためらわなかったか、と訊かれて。フォード女史はそのプラス面とマイナス面を考えた、と説明した。「私は毎日、来るべきかどうか、そのリスクと利益を計算していました。突進してくる列車の前に身を投げて、その列車は走り去っていくだけではないか、と思ったのです。個人として私は抹殺されるだろう、と。」
木曜日、フォード女史は列車の前に身を投げた。他の何よりも、私たちは、彼女がそうしたことを記憶するだろう。
FT October 1, 2018
Sex, violence and the rise of
populism
Gideon Rachman
ポピュリズムの台頭に関する最も普及した説明は、不平等や人種に注目するものだ。しかし、ブレット・カバノーの指名をめぐる騒動は3つ目の要因を示している。それは男性の怒りだ。
伝統的なジェンダーの役割分担は挑戦を受けている。多くの男性はそのパワーや地位を失うことを恐れているのだ。その不安は、アメリカ、ブラジル、フィリピン、イタリア、その他のポピュリズム運動が示す女性蔑視に見ることができる。
主流の評論家たちは、「プッシーで」女をわしづかみにする、というトランプの言葉は大統領選挙で不利に働く、と考えた。しかし、トランプのこうしたタブーを破壊する物言いを黙って好む男性もいただろう。アメリカ男性の53%、白人男性に限れば62%が、トランプに投票した。
NYT Oct. 2, 2018
The American Civil War, Part II
By Thomas
L. Friedman
私はジャーナリストとしての経歴をレバノン内戦で始めたが、それがアメリカ内戦で終わるとは、思わなかった。
それはまだ始まっていないが、今、目の前で展開しているのは、疑いなく、それが始まりつつあることを示している。月曜日、Jeff Flake上院議員は述べた。「部族主義Tribalismがわれわれを滅ぼす。われわれの国は引き裂かれ、正気の大人たちが決してすることのないことを始めている。」
神聖なものは何もない。ブレット・カバノーは、反対する党派による攻撃や、ラジオのトークショーでしか聞かないような、陰謀論によって、自分を弁護した。とてもアメリカ最高裁判事が主張するようなことではない。誰が彼に公平さを期待できるだろうか?
株価が上昇し、失業率が低下している今でさえこうだ。次の不況が着たら、何が起きるだろうか?
事態がベトナム戦争や公民権運動のときよりもひどいと感じるのは、われわれを結束させる3つの偉大な力が失われたからだ。すなわち、増大する中産階級、冷戦、まともな共和党。
● 大西洋同盟の衰退
The Guardian, Fri 28 Sep 2018
It’s not just Trump. Much of America
has turned its back on Europe
Timothy
Garton Ash
私はワシントンで、トランプがたとえ2021年1月まで大統領でいるとしても、もちろん、もっと早く去ることを願うが、その後に残る大西洋を超える西側同盟を探そうとした。その答えは、冷めたものだ。最善のケースでも、ウォーターゲートやベトナム戦争の後に起きたようには、アメリカとその国際的な同盟関係は回復しないだろう。今回は違う。アメリカ国内と国外における理由がある。
NYTの匿名コラムが示したような、政府部内でトランプの独裁的な行動に歯止めをかけようとしている幹部職員たちに尋ねた。皆が、トランプは共和党をものにした、と言う。モラーによる捜査結果が彼の行動を変えることがなく、アメリカ経済の好調さも変わらないとしたら。トランプは再選される。この8年間で、大西洋同盟は生き残れない。
アメリカが第1次世界大戦に参戦したのは、大西洋同盟と地政学的な西側を示す最初の瞬間であった。しかし、その後のアメリカは、20年以上、大陸規模の自国の事情に引きこもっていた。その間に、ヨーロッパの民主主義はファシズムとコミュニズムに降伏したのだ。日本が真珠湾でアメリカの太平洋艦隊を攻撃して、ようやく、F.D.ルーズベルトはアメリカを第2次世界大戦に参加させることができた。
1945年も、アメリカは内向きの姿勢を示したが、冷戦の脅威が、1991年のソ連崩壊まで、アメリカをヨーロッパに関与させた。それは歴史的な例外であった。今では、アメリカ国民の関心は国際的関与や同盟関係にない。アメリカ中で、外交問題は聴衆の関心を集めなくなった。アメリカ人は、アフガニスタンやイラクの滑走路、学校ではなく、自国のインフラを改善したいのだ。アメリカ・ファーストは、トランプの選挙スローガンだけでなく、アメリカ人のムードを示す。
トランプはひどい大統領であるが、変化の兆候でしかなく、原因ではない。大西洋間の乖離はトランプ以前からあった。そのさまざまな原因は深く、トランプ以降も続く。
● ユーロ圏改革
PS Oct 1, 2018
Fiscal Freedom in the Eurozone?
LUCREZIA
REICHLIN
左右のポピュリストによるイタリア連立政権が、ユーロ圏の財政ルールを破る予算案を示した。これは、ポピュリストが政権を執れば、ルールに従うだろう、という期待を否定するものだ。しかし財政ルールを破ったのは、イタリアが最初ではない。フランスも、ドイツもルールを破った。
このまま次々に財政ルールが守られなくなれば、ユーロ圏は解体する。それを避けるために、新しい財政ルールが必要だ。1つの選択は、市場の規律に委ねることだ。しかし、それは非常に不安定化する危険がある。それゆえ、独仏の宣言では妥協案を示された。リスクを減らしつつ、リスク・シェアリングを進める。債務の組換えのような形で、市場規律を強化する。
そのような改革は実行できないように見える。他の加盟国が共通のルールに従うと、どの国も信頼できない。北欧諸国では、改革を支持する政党が弱くなって、リスク・シェアリングへの意欲は消滅しつつある。むしろ、脆弱な加盟国の財政政策による外部性を制限することに焦点を当てるのが良い。たとえば、債務全体の上限ではなく、外国人が保有する債券に上限を課すのだ。どの国も、債権者が自国民である限り、債務に制限を受けない。
債務による支出で成長率を高め、持続可能性を達成できれば、それはその国が何らかの金融的な抑制を強いられるだけである。自国民が政府の債務を受け入れる限り、それは可能だ。日本がすでにしているように。
問題は、そのようなルールの下でユーロ圏は維持できるか、である。金融統合が減る分、ユーロを維持する経済的な動機も弱くなる。
● トランプの貿易戦争
PS Sep 28, 2018
The China Tariff Mess
MARTIN
FELDSTEIN
なぜアメリカ政府は関税を課したのか? と訊かれる。トランプ大統領は、アメリカが貿易戦争で中国に勝てると考えているのか? 中国はもっと報復関税を課してくるのか?
私は、一般に、ほとんどすべてのエコノミストと同様に、関税には反対する。
中国はWTOルールに違反している。中国で営業する外国企業に、パートナーの中国企業に対して技術移転を強制することは禁じられている。しかし、WTOの要求に従わないから、アメリカ政府はルール違反を罰するために関税を課すことができる。しかし、アメリカ政府はそれを明言しなかった。
トランプと他の閣僚たちは、貿易戦争に勝利できると信じている。中国の対米輸出額は、アメリカの対中輸出額の約4倍である。中国経済の方が輸出に対する依存度が高い。
ただし関税は、アメリカの消費者や中国からの輸入品を使用するアメリカ企業のコストになる。しかし、それはアメリカ経済の全体に比べて0.5%にも満たない。(5000億ドルの輸入額全てに25%の関税を課した場合、1250億ドルだが、アメリカの国民所得は20兆ドルを超える規模がある。)
中国の輸出企業は関税の一部を価格に転嫁しないし、アメリカの購入者は国内生産者や第3国からの輸入に替えるから、コストはそれより小さいだろう。
アメリカ政府は、アメリカ企業からの技術の非合法な取得を止めるよう、中国を説得できるだろう。ホワイトハウスは関税賦課の目的を明確にし、中国がWTOルールに従うなら関税は除去する、と説明するべきだ。
FT October 3, 2018
Donald Trump is wrong: China is not
Mexico
Martin
Wolf
「アメリカは何十億ドルも、あらゆる貿易相手国と損をしている。貿易戦争は良いことだ。勝つのは容易だ。」 3月2日のTweetが、トランプ貿易政策の目標と手段を示している。
カナダやメキシコとの顕著な勝利で、彼は自分の取引が正しかったと確信している。しかし、中国はメキシコではない。
もしアメリカ大統領が、貿易相手から買うよりも、貿易相手に売る方が多いことを「勝利した」と考え、また、相手に売るよりも多く買っているから、「勝つ」のは容易だ、と思うなら、それは2国間の重商主義、非対称的な苦痛の均衡、を貿易政策の指針としていることを意味する。アメリカは安全保障に関しても2国間で最も強力な国家であるから、勝利するはずだ。
中国のGDPは約2%しか減少せず、それは国内政策で容易に相殺できる。他方、アメリカの貿易収支は改善しないだろう。それを決めるのはアメリカ国内の需給バランスだ。
また、中国は屈服しないだろう。国民は「屈辱の100年」について教育を受け、習近平主席の国内政治における地位は安定している。
トランプは2つの失敗を犯した。第1に、問題を広げ過ぎた。中国との貿易は決して2国間で均衡しない。政府でも消費者の購入を決めることはできない。中国の対米輸出額は特に大きくはない。アメリカの輸出額が少ないのだ。また、中国が技術を改善する希望を諦めることもない。
第2に、トランプはアメリカのパワーを誇張した。知的所有権など、多くの取引を求めたが、それはアメリカだけが要求しても十分ではない。特に、EUや日本と協力するべきだ。また、知的所有権が守られるなら、アメリカ企業はより多くの投資中国に向けるだろう。それをトランプは望まない。
この乏しい成果にトランプは驚くだろう。もっとエスカレートした場合、だれが勝つのか? 誰も勝者にならない。貿易システムは破壊され、米中関係は悪化し、世界の安全保障が損なわれる。
どちらが大きく失うのか? それは何が起きるかによる。ECBが分析したように、トランプが貿易戦争を世界化する場合、アメリカは不利になる。アメリカ以外の国は、報復するだろう。アメリカは敗北し、中国が勝利する。アメリカを除く世界の経済は、アメリカ経済の3倍もあるからだ。
● 金融危機とグローバル・リンク
NYT Sept. 29, 2018
The Most Important Least-Noticed
Economic Event of the Decade
By Neil
Irwin
2015-2016年、アメリカは重大な意味を持つ、しかし多くの人々は気が付かない、説明できないような諸力によって一種の不況が起きた。
ミニ不況はどのように起きたか?
2015年、中国の指導者たちは、中国経済が信用の膨張とバブルにあることを懸念し、成長を抑制する政策を取った。それは強い効果を発揮し、経済が減速した。中国に供給している新興市場が問題を生じた。
他方で、アメリカ連銀はアメリカ経済が完全に健全さを取り戻したと考え、金融の超緩和政策を終わりにすると決めた。それは、ECBや日銀が緩和を続けている方向と反対であった。このためドルの価値が急騰した。
ドル高は中国経済の悪化を強めた。中国はその通貨をドルに固定してきたので、ドル高は中国企業の競争力を損なった。中国当局はこの負担を減らすために2015年8月にペッグ制を緩和したが、資本流出に直面し、経済状況をさらに悪化させた。
主要な新興市場において、多くの企業や銀行がドルで借り入れをしていた。ドル高は彼らの負担を増やした。
全てを考慮すると、アメリカ連銀の金利引き上げは、2015年12月に行われたが、金融上嫌悪引き締めと世界全体での成長の減速をもたらした。それはまた、石油や多くの一次産品への需要を減らした。主要な一次産品供給国、ブラジル、メキシコ、インドネシアの苦痛はそれを代表する。
アメリカのエネルギー生産者は価格下落と債務増の圧力下にいたので、株価やリスクの高い社債は2016年初めに不安を生じた。投資家たちの損失と金融システムの安定性に関する恐怖が生じた。
強いドル、弱い新興市場の成長、低い一次産品価格、その悪循環がある種の資本財に関する支出を、2015年半ばに急落させた。
金融市場のアナリストの中には、太平洋の両側で、米中指導者たちが2016年2月のG20において秘密の合意をした、と考える者がいる。「上海合意」である。アメリカ連銀は金利を引き上げず、その代わりに中国は必要な行動を取る、というのだ。イエレンはそれを否定する。
2015-16年のグローバルな通貨・商品価格の累積的効果から得られる教訓とは何か?
1.トランプ政権が自慢する投資の強さは、ミニ不況からの回復であった。2.ミニ不況は2016年の大統領選挙に影響した3.経済政策担当者たちは、予測や前提に反しても、情報に柔軟に対応しなければならない。4.グローバル経済はあまりにも緊密に結びついているため、上海やサンパウロの事件が遠く離れた場所で予想外の結果をもたらす。
● Brexitとヨーロッパの秩序
PS Sep 28, 2018
Brexit and the European Order
JOSCHKA
FISCHER
「ハードBrexit」とは、2019年2月29日の午後11時になって、UKとEU加盟諸国との間の、関税同盟と単一市場など、あらゆる条約が、そして、EUによる国際通商条約が終わる、ということだ。
しかしBrexitの持つ政治的意味はもっと大きい。EUの核心をなす考え方は、諸国家のヨーロッパ型システムについて、特別な見方を取る政治プロジェクトだ、ということである。これがBrexitの意味と関係する。UKがEUを離脱すると決めたのは、21世紀のヨーロッパ型秩序に深刻な打撃となるだろう。
2016年の国民投票で、離脱派は経済的な富ではなく、完全な政治的主権を要求した。それはイギリスの現在や未来の客観的事実に依拠せず、過去の、19世紀におけるグローバルな大国としてイギリスを考えた。UKがEUの中でも、外でも、今ではヨーロッパの中規模国家でしかなく、グローバルな大国になる見込みは全くない。そんなことは気にしなかった。
もしヨーロッパ大陸で、21世紀ではなく19世紀の姿を目指すイギリスに追随する国が続けば、EUは崩壊する。各国は、最高の優位を求めて戦い、常に、相手の野心を挫くことを目指す、主権国家の厄介なシステムにもどるのだ。その場合、ヨーロッパは永久に国際政治から姿を消すだろう。最悪の場合、ヨーロッパは敵対する大国の闘争場になる。
この旧システムは30年戦争(1618-1648)で生まれた。普遍的な境界と帝国が支配するシステムが宗教改革で崩壊したからだ。いくつかの宗教戦争と、強力な領土国家の確立を経て、主権国家の「ウェストファリア体制」が成立した。
その後の数世紀、ヨーロッパは世界を支配し、イギリスはヨーロッパの大国だった。しかし、このシステムは20戦記前半の2つの世界大戦で壊滅した。1945年に戦争が終わったとき、ヨーロッパ人は、勝利した連合諸国でも、実質的に、主権を失った。ウェストファリア体制は米ソ超大国による冷戦秩序の代わったのだ。
EUは、ヨーロッパ諸国の利害をプールし、平和的にヨーロッパ人が主権を回復する試みとして認識された。その成功のカギは、経済・政治・司法の大陸規模の統合であった。
UKの交渉過程で、旧い問題が出現した。アイルランド問題だ。アイルランド共和国とUKがともにEUに加盟しているときは、アイルランドの再統一を求める声は消えていた。北アイルランドで何十年にもわたり内戦を続けてきたカソリック教徒とプロテスタントとは平穏であった。EU統合が進むなら、実際、北アイルランドがどちらに属するかは重要でなかったからだ。しかし、Brexitが歴史を逆転させた。
● グローバリゼーションの逆転とポピュリズム
PS Oct 2, 2018
Road Runner Populism
HAROLD
JAMES
古典的な経済リベラリズムは、間違った経済政策は、即座に、悪い結果につながる、と主張する。25年前、債券市場は休むことのない監視者である、とみなされた。将来に向けた金融市場の判断で、ポピュリストの政策は高いリスクプレミアムを要求される、と。エコノミストたちが依拠したのは、ラテンアメリカのナショナリスト政権の経験だった。そのポピュリスト経済学は、過剰な約束と莫大な財政赤字をもたらし、常に、インフレ、通貨価値の下落、不安定化のサイクルをもたらした。グローバル金融市場は最初から懐疑的だった。
しかし、債券市場は、多くの人が信じているような、予測する力がない。それは経済政策を規律するものではないのだ。一般に市場がそうであるように、債券市場も人気のある議論に流され、特別な結果を過大に評価する。
現在と同様、戦間期も、リベラルは大不況の非正統的な対策が悲劇的な結果に至る、と予測した。ナチスは機会を逃さず、失業者を減らし、インフラを建設する計画を、迅速に進めた。ドイツ政府は賃金と物価を統制し、インフレを抑制して、経済的奇蹟を大いに自慢した。
しかし、経済の正統派を否定するナチスの成果を、多くのアナリストは幻想とみなした。それは深刻な不道徳さと経済的破局をもたらす、と。1939年、ケンブリッジ大学のエコノミストClaude
Guillebaudが出版した本は、ドイツ経済は頑健で、たとえ軍事衝突が起きても、崩壊しない、と主張した。Guillebaudは攻撃され、The
Economistがゲッペルスのプロパガンダの改良版とみなした。当時の著名なエコノミストDennis Robertsonは激怒した。
● アテネの覇権と民主主義
NYT Sept. 28, 2018
How Alliances Made Athens Great
By Nikos
Konstandaras
世界的な規模で、第2次世界大戦後のアメリカの覇権は古代ギリシャを再現する。ペルシャの侵略に対抗して、ギリシャ都市国家の同盟を率いて勝利したアテネは、次第に、その同盟を帝国に転換した。
単に、老僭主、オールド・オリガークとして知られる謎めいた人物が現れ、アテネの民主主義を批判した。彼は都市の憲法と市民たちの行動を明確に嫌っていた。しかし、トランプとは違い、アテネ市民たちがギリシャ世界を自分たちに有利に操作していることを、彼は理解していた。
アテネはその強力な海軍を利用して、同盟諸国の政治から貿易まで支配した。パートナーがアテネの通貨と度量衡を使用し、法律問題をアテネの裁判所で処理するように義務付けた。そこで訴訟はアテネ市民に有利に裁かれ、アテネ市民が裁判官であった。
「このように同盟諸国はアテネ人の奴隷となった。」とオリガークは非難した。
しかし現代の政治を操作する支配者たちと違い、オールド・オリガークは、彼が嫌うシステムの効果を高く評価していた。また、人々が経済的利益と、都市国家の運営に対する発言を持つことに注意した。彼らこそ、船を動かし、都市の力を高める者たちであるから、と。
プーチン大統領や、選挙資金を提供する億万長者たち、自分のオフィスに権力を集中するトランプ大統領は、オールド・オリガークほど、政治を理解していない。
● 安倍政権と沖縄米軍基地
NYT Oct. 1, 2018
Toward a Smaller American Footprint
on Okinawa
By The
Editorial Board
日本政府はニンジンを与えて説得してきた。また裁判闘争を行い、選挙では基地移転を望む候補に強い支援を与えた。しかし、繰り返し、沖縄県民は新しい基地を望まない、と表明してきた。
安全保障は、最も貧しい地域に、公平でない、彼らの望まない、しばしば危険な負担を強いる理由にならない。安倍首相とアメリカ海兵隊司令官は、公平な解決策を見出すべきだ。
PS Oct 4, 2018
China, Japan, and Trump’s America
JOSEPH S.
NYE
日中のパワー・バランスは、この数十年で急速に変化した。2010年に、中国のドル建GDPが日本を超えた。20年前に、日本がアメリカを乗っ取る、と心配したことを思い出すのは難しい。ビル・クリントン大統領は日米の安全保障同盟を再確認し、他方で中国のWTO加盟を支持した。
1990年代初めに冷戦の遺物として日米同盟を解体する声が出た。クリントン政権は「日本たたき」で始まった。しかし、橋本政権との合意で冷戦後の東アジア安定化の礎石という宣言に落ち着いた。さらに、日本の政策担当者たちは、アメリカの姿勢が日本から中国重視に変わることを心配していた。
この不安は当然だ。防衛能力が対照的でない場合、より依存している側はパートナーシップを懸念する。日本も「普通の国家」として軍事力を行使する、あるいは、核武装する、という議論もあるが、たとえそうなっても、アメリカや中国に匹敵することはない。
トランプの「アメリカ・ファースト」と保護主義は日米同盟にとって新しい脅威である。北朝鮮の非核化を求める交渉や、日本の防衛分担を求めるトランプの姿勢は、東アジアのバランス・オブ・パワーに影響する。
もし日米が強固な同盟を維持すれば、中国の台頭を穏健な道に誘導できるだろう。
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The Economist September 22nd 2018
Reforming Japan: A long haul
Japanese politics: Abe’s ambition
Nevada’s brothels: Bras and ballot initiatives
Charlemagne: The rebirth of Eurafrica
Bagehot: Back from the brink
Buttonwood: The yuan show
Narrow banking
(コメント) 日本で安倍晋三が自民党総裁に選ばれ、ほぼ首相にも確実になることから、これで以前の5人の首相を合わせたよりも長い在任期間となる、記事はそう称賛するより、「構造改革」の乏しさを憂慮しています。
アフリカからの移民・難民を恐れ、排除するための壁を築くより、アフリカとヨーロッパが長期的に統合していく現実「ユーラフリカ」に依拠した多角的支援体制を整備せよ、とマクロンは呼びかけます。移民たちが安全に、合法的に、双方向で移動できるルート規制。どのような分野で働いてほしいか、どのようなスキルを身に付けてほしいか、職業の仲介・教育。
死の淵からよみがえるテリーザ・メイを描く挿画は強烈です。その話も大変有意義。
人民元の変動制と主要中央銀行の金融政策、また、ナロー・バンキングの出現は、世界金融危機とは別に、世界の金融システムを転覆します。
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IPEの想像力 10/8/18
「朝日新聞グローブ 創刊10周年記念号」を読みました。特集は「テクノロジーの世紀 爆発的進化の先にある世界」 7つの物語から考えています。
「01 フェイスブックは民主主義を壊すのか?」(宋光祐)
支持者と笑顔でセルフィーを撮る、海外の要人と力強く握手を交わす、週末にゴルフを楽しむ、・・・カンボジアのフン・セン首相がフェイスブックFBを駆使して高い支持を得ています。親しみやすい、頼もしい指導者というイメージを広め、数千単位の「いいね!」が付きます。
世界中の指導者や政府がFBを設けています。フン・センは、インド首相のモディ、アメリカ大統領のトランプに負けても、なんと世界5番目だ、というわけです。しかしジャーナリストが、外国から「いいね!」を買った、という疑惑を報じました。ネットには多くの会社があり、インドのある会社は「いいね!」を1ルピー(約1.6円)で売っています。
かつてルワンダでは「虐殺ラジオ」と呼ばれる放送がジェノサイドを煽動しました。今、ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャに対する迫害も、FBがヘイトの拡散に利用された、と国連調査団が指摘しました。FBのサービス「フリーベーシック」は、60以上の国と地域で提供され、利用者を拡大している、と言います。その責任は? ノー・コメント。
「02 新時代のフリーランスがもたらすのは自由か格差か」(宋光祐)
「会社にいた頃は自分ではなく会社のために生きている気分だった。」 お金はすべてじゃない。情熱をもって自分のやりたいことをやる。・・・そう。
しかし、これを自分のゼミの学生が言うのと、インドのデリーで暮らすギグ・ワーカーの若者が言うのとでは、意味が違います。先進国の企業から新興国や途上国へ、より安い業務の委託先へと仕事が移転されていきます。
「多くの貧困層が暮らす国にとっては、地球が1つの村のようにつながってオンラインでどこの国の仕事も取れるようになるのが理想だ。」
ニューヨークで自動車だけでなくランチを宅配するサービスがネットのアプリで仲介されるようになって、労働者たちの賃金は下がった、と紹介します。社会保険も最低賃金も適用されず、不安定な労働環境も是正されない。「フリーランサーズ・ユニオン」が加入者を増やしています。しかし、彼らは何を、誰に向けて、要求するのか?
「03 人はロボットを愛せるか」(浜田陽太郎・中野渉)
人間の女性よりも、女性型ロボットや、AIのアプリに現れる映像、声、相手を思いやる言葉に、利用者は恋愛感情を持ち始める・・・
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なぜ同じ技術革新が同じように広まらないのか? 同じ結果をもたらさないのか?
ここで私が問うべきだと思うのは、どのような政治社会モデルが有効なのか? です。フェイスブックの集めた何十億人ものネットワーク効果は、どのような社会を可能にし、そのような政治にふさわしいのか? どのようなビジネスを拡大し、どのような政治家と政治意識を支配的にするのか?
情報とその評価、操作、リンクし、隠蔽し、偽造する可能性や、それを検証し、告発し、自分たちの願う社会的ルールに従わせる力を、私たちは確保できるのでしょうか。
働くことも、恋愛・結婚・育児をめぐる家族という生き方も、政治社会モデルが逆に制限するのかもしれない、と思うと、ディストピアの物語になります。
人としての幸せと、それを模索する自由に力を与える政治社会モデルが何であるか、人間は社会関係を創造し、おそらく自分を変革し続けます。
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ターミネーターやブレードランナーが示すように、AIを持つロボットは未来からの侵略者(調停者)・移民たちです。
池波正太郎や司馬遼太郎がとても面白い、と思うのはなぜでしょうか? 囲碁や将棋でAIが人間の能力を超えたのはゲームのルールが1つだからではないか?
しかし、ディープ・ラーニングが進んで、もっと素晴らしい時代小説や政治評論を書けるAIが登場するかもしれません。もしそうなら、私も老後は人間を深く理解したAIの優しい妻と暮らすのがよいのかな?
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