IPEの果樹園2018
今週のReview
10/8-13
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最高裁判事候補カバノーの公聴会 ・・・大西洋同盟の衰退 ・・・ユーロ圏改革 ・・・トランプの貿易戦争 ・・・金融危機とグローバル・リンク ・・・Brexitとヨーロッパの秩序 ・・・グローバリゼーションの逆転とポピュリズム ・・・アテネの覇権と民主主義 ・・・安倍政権と沖縄米軍基地 ・・・オーストラリアの移民依存経済
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign
Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project
Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 最高裁判事候補カバノーの公聴会
NYT Sept.
27, 2018
Why Brett
Kavanaugh Wasn’t Believable
By The Editorial Board
ブレイジー・フォードChristine
Blasey Fordは冷静で、厳粛だった。カバノーBrett
Kavanaughは感情に大きく左右され、敵対的であった。
われわれは、ワシントンで繰り広げられる党派的な争いを悲観する意識の高いアメリカ人と、その悲しみを共有する。結果に関わらず、この承認手続きが終わった後も、苦渋が増すだろう、と予告したカバノーの言葉は正しい。彼が司法委員会の民主党員に向けたあからさまな軽蔑は、また、彼の公平さに関する姿勢を強く疑わせる。
ブレイジー博士は、アンビバレントな感情が起きることを正直に述べた。「私は恐ろしい。」証言を始めるとき、彼女は上院議員たちに語った。これらか行うことで彼女は何も利益を受けることなどない。殺害するという脅迫を受けて、彼女は家族とともに隠れている。
公聴会で最も腹立たしいことは、司法委員会の11人の共和党上院議員たちが見せた臆病さだ。彼ら、すべての男性議員たちは、ブレイジー博士に、ただのひとことも質問しなかった。性犯罪にかかわる検察官Rachel
Mitchellが、5分間、ブレイジー博士の話に穴を見つけようとしたがうまくいかない間、黙っていた。
The
Guardian, Fri 28 Sep 2018
Brett
Kavanaugh's credibility has not survived this devastating hearing
Richard Wolffe
ワシントンには1人のヒーローも、1人のリーダーもいない、と言う。しかし、上院の公聴会で、われわれは見た。彼女の名はDr
Christine Blasey Fordだ。
Brett Kavanaughは、それより大きくなりえなかった。最初から感情的で、じゃまをした。気難しく水を読み、政治の様々な問題を非難した。
彼は自分を貶める政治的な意図を示そうとした。多くの者を責めた。メディア、司法委員会の民主党員、巨大な左派の陰謀、クリントン夫妻。彼は、セックスが政治的な破滅として評価を下げる武器になる、と予言した。彼がそうだ。
上院議員が、あなたを襲ったのがBrett
Kavanaughだと、どのくらい正確に言えるのか、と質問した。「100%」、と彼女は断言した。
その後の静寂の中で、共和党員のため息が流れた。
FT
September 29, 2018
Christine
Blasey Ford, America’s reluctant star witness
Courtney Weaver
証言することについてためらわなかったか、と訊かれて。フォード女史はそのプラス面とマイナス面を考えた、と説明した。「私は毎日、来るべきかどうか、そのリスクと利益を計算していました。突進してくる列車の前に身を投げて、その列車は走り去っていくだけではないか、と思ったのです。個人として私は抹殺されるだろう、と。」
木曜日、フォード女史は列車の前に身を投げた。他の何よりも、私たちは、彼女がそうしたことを記憶するだろう。
The
Guardian, Sat 29 Sep 2018
Kavanaugh
has revealed the insidious force in global politics: toxic masculinity
Jonathan Freedland
カバノーや共和党員が木曜日の公聴会で見せた情景は、トランプが広め、自ら示す広範な現象を伝えた。男性が優位であるべきだという姿勢、その抑制への反発である。膨張した男性筋力誇示と言える。それはアジア、ヨーロッパ大陸、イギリスの政治に広がるポピュリスト運動の一面である。
トランプ、フィリピンのドゥテルテ、ハンガリーのオルバン、あるいは程度は低くても、イギリスのボリス・ジョンソンの暴言に共通する。
アメリカ司法システムの頂点にある最高裁判事が、カバノーを含めるなら2人も、性的暴行の疑いを持たれている。
NYT Sept.
29, 2018
Capitol
Hill Ralph Club
By Maureen Dowd
FT September
29, 2018
There
should be no rush on Supreme Court decision
Christine Todd Whitman
The
Guardian, Sun 30 Sep 2018
Here's
what delaying Kavanaugh's confirmation vote means politically
Walter Shapiro
The
Guardian, Sun 30 Sep 2018
Kavanaugh
v Ford: the parading of sexual assault victims has to end
Catherine Bennett
FT October
1, 2018
FBI probe
into Brett Kavanaugh should be given time
FT October
1, 2018
Sex,
violence and the rise of populism
Gideon Rachman
ポピュリズムの台頭に関する最も普及した説明は、不平等や人種に注目するものだ。しかし、ブレット・カバノーの指名をめぐる騒動は3つ目の要因を示している。それは男性の怒りだ。
伝統的なジェンダーの役割分担は挑戦を受けている。多くの男性はそのパワーや地位を失うことを恐れているのだ。その不安は、アメリカ、ブラジル、フィリピン、イタリア、その他のポピュリズム運動が示す女性蔑視に見ることができる。
主流の評論家たちは、「プッシーで」女をわしづかみにする、というトランプの言葉は大統領選挙で不利に働く、と考えた。しかし、トランプのこうしたタブーを破壊する物言いを黙って好む男性もいただろう。アメリカ男性の53%、白人男性に限れば62%が、トランプに投票した。
NYT Oct.
1, 2018
All the
Ways a Justice Kavanaugh Would Have to Recuse Himself
By Laurence H. Tribe
NYT Oct.
2, 2018
The
American Civil War, Part II
By Thomas L. Friedman
私はジャーナリストとしての経歴をレバノン内戦で始めたが、それがアメリカ内戦で終わるとは、思わなかった。
それはまだ始まっていないが、今、目の前で展開しているのは、疑いなく、それが始まりつつあることを示している。月曜日、Jeff
Flake上院議員は述べた。「部族主義Tribalismがわれわれを滅ぼす。われわれの国は引き裂かれ、正気の大人たちが決してすることのないことを始めている。」
神聖なものは何もない。ブレット・カバノーは、反対する党派による攻撃や、ラジオのトークショーでしか聞かないような、陰謀論によって、自分を弁護した。とてもアメリカ最高裁判事が主張するようなことではない。誰が彼に公平さを期待できるだろうか?
株価が上昇し、失業率が低下している今でさえこうだ。次の不況が着たら、何が起きるだろうか?
事態がベトナム戦争や公民権運動のときよりもひどいと感じるのは、われわれを結束させる3つの偉大な力が失われたからだ。すなわち、増大する中産階級、冷戦、まともな共和党。
FP OCTOBER
4, 2018
Changing
Global Gender Norms Is Possible
BY SARAH DEGNAN KAMBOU, RAVI VERMA
● マクロン
NYT Sept.
27, 2018
Why I
Applaud the Unpopular Mr. Macron
By Roger Cohen
NYT Oct.
4, 2018
France
Lifts the Lid on Its Algeria War
By Sylvie Kauffmann
● 大西洋同盟の衰退
The
Guardian, Fri 28 Sep 2018
It’s not
just Trump. Much of America has turned its back on Europe
Timothy Garton Ash
私はワシントンで、トランプがたとえ2021年1月まで大統領で居るとしても、もちろん、もっと早くさることを願うが、その後に残る大西洋を超える西側同盟を探そうとした。その答えは、冷めたものだ。最善のケースでも、ウォーターゲートやベトナム戦争の後に起きたようには、アメリカとその国際的な同盟関係は回復しないだろう。今回は違う。アメリカ国内と国外における理由がある。
NYTの匿名コラムが示したような、政府部内でトランプの独裁的な行動に歯止めをかけようとしている幹部職員たちに尋ねた。皆が、トランプは共和党をものにした、と言う。モラーによる捜査結果が彼の行動を変えることがなく、アメリカ経済の好調さも変わらないとしたら。トランプは再選される。この8年間で、大西洋同盟は生き残れない。
たとえ民主党の主流派で影響力のあるバイデンJoe
Bidenが大統領になっても、そして、副大統領には左派の人物が就いても、最善で望めることは「オバマ・マイナス」であり、「オバマ・プラス」ではない。そして「国内の再建を」優先すると決めたのは、トランプの前に、オバマであった。
アメリカの周りの世界も変化した。アメリカとイギリスはロシアの脅威に関心が集中している。他方、西側として、長期的、戦略的な競争、グローバルなイデオロギーの挑戦が、中国との間で続いている。私は2度目の国民投票を行ってBrexitを逆転しなければならないと信じるが、もしこのままBrexitが実行され、毒を含んだ離婚となれば、アメリカのヨーロッパに対する関与はさらに低下するだろう。
アメリカが第1次世界大戦に参戦したのは、大西洋同盟と地政学的な西側を示す最初の瞬間であった。しかし、その後のアメリカは、20年以上、大陸規模の自国の事情に引きこもっていた。その間に、ヨーロッパの民主主義はファシズムとコミュニズムに降伏したのだ。日本が真珠湾でアメリカの太平洋艦隊を攻撃して、ようやく、F.D.ルーズベルトはアメリカを第2次世界大戦に参加させることができた。
1945年も、アメリカは内向きの姿勢を示したが、冷戦の脅威が、1991年のソ連崩壊まで、アメリカをヨーロッパに関与させた。それは歴史的な例外であった。今では、アメリカ国民の関心は国際的関与や同盟関係にない。アメリカ中で、外交問題は聴衆の関心を集めなくなった。アメリカ人は、アフガニスタンやイラクの滑走路、学校ではなく、自国のインフラを改善したいのだ。アメリカ・ファーストは、トランプの選挙スローガンだけでなく、アメリカ人のムードを示す。
トランプはひどい大統領であるが、変化の兆候でしかなく、原因ではない。大西洋間の乖離はトランプ以前からあった。そのさまざまな原因は深く、トランプ以降も続く。
PS Sep 28,
2018
Reclaiming
American Internationalism
CHRISTOPHER R. HILL
● ユーロ圏改革
PS Sep 28,
2018
One Club
Does Not Fit All in Europe
JEAN PISANI-FERRY
PS Oct 1,
2018
Fiscal
Freedom in the Eurozone?
LUCREZIA REICHLIN
左右のポピュリストによるイタリア連立政権が、ユーロ圏の財政ルールを破る予算案を示した。これは、ポピュリストが政権を執れば、ルールに従うだろう、という期待を否定するものだ。しかし財政ルールを破ったのは、イタリアが最初ではない。フランスも、ドイツもルールを破った。
このまま次々に財政ルールが守られなくなれば、ユーロ圏は解体する。それを避けるために、新しい財政ルールが必要だ。1つの選択は、市場の規律に委ねることだ。しかし、それは非常に不安定化する危険がある。それゆえ、独仏の宣言では妥協案を示された。リスクを減らしつつ、リスク・シェアリングを進める。債務の組換えのような形で、市場規律を強化する。
そのような改革は実行できないように見える。他の加盟国が共通のルールに従うと、どの国も信頼できない。北欧諸国では、改革を支持する政党が弱くなって、リスク・シェアリングへの意欲は消滅しつつある。むしろ、脆弱な加盟国の財政政策による外部性を制限することに焦点を当てるのが良い。たとえば、債務全体の上限ではなく、外国人が保有する債券に上限を課すのだ。どの国も、債権者が自国民である限り、債務に制限を受けない。
債務による支出で成長率を高め、持続可能性を達成できれば、それはその国が何らかの金融的な抑制を強いられるだけである。自国民が政府の債務を受け入れる限り、それは可能だ。日本がすでにしているように。
問題は、そのようなルールの下でユーロ圏は維持できるか、である。金融統合が減る分、ユーロを維持する経済的な動機も弱くなる。
VOX 02
October 2018
Euro area
reform: An anatomy of the debate
Jean Pisani-Ferry
ドイツとフランスの2国間取引ではユーロ圏の問題を全体として改革できないことを恐れて、独仏のエコノミストたちが集まり改革案を示した。私のその参加者の1人である。
その提案は、ドイツが望む責任ある財政とフランスが求める連帯が、取引されるだけでは、効率性フロンティアの内側にとどまることを指摘する。両方の基準から、より高い均衡を実現できるのだ。すなわち、財政の健全さと政策余地を認め、市場規律とリスク・シェアリングを唱えている。
フランスは、最後の手段として、債務の組換えを認めていることに不満を示した。それが自動的な債務の組換えにつながることを恐れた。ドイツは、ヨーロッパ預金保険制度を政治的に嫌っていた。安定化基金も、一時的な財政移転を含むので、判断を留保した。
最も重要な点は、最後の手段として、支払い不能の債務を組み替えることだ。その処理過程は、金融的にも、経済的にも、混乱を抑えておく。そのための集団行動条項を債券に明記するべきだ。
● 左派の改革案
PS Sep 28,
2018
Profit
Sharing Now
KAUSHIK BASU
The
Guardian, Sun 30 Sep 2018
Labour has
caught the mood of the times. Now it needs new ideas to remake capitalism
Will Hutton
● リベラル・デモクラシー
PS Sep 28,
2018
A Strategy
for Liberals
DOMINIQUE MOISI
NYT Sept.
29, 2018
Depressed
About the Future of Democracy? Study History
By Norman Eisen
● トランプの貿易戦争
PS Sep 28,
2018
The China
Tariff Mess
MARTIN FELDSTEIN
なぜアメリカ政府は関税を課したのか? と訊かれる。トランプ大統領は、アメリカが貿易戦争で中国に勝てると考えているのか? 中国はもっと報復関税を課してくるのか?
私は、一般に、ほとんどすべてのエコノミストと同様に、関税には反対する。
アメリカがなぜ関税を課したのか、その理由はわからない。トランプ政権は明確な目的を説明していないからだ。対中貿易政策に関する閣僚が多すぎることもある。財務長官Steven
Mnuchin, アメリカ通商代表Robert
Lighthizer, 貿易・製造業担当大統領顧問Peter
Navarro, 商務長官Wilbur
Rossである。
中国はWTOルールに違反している。中国で営業する外国企業に、パートナーの中国企業に対して技術移転を強制することは禁じられている。しかし、WTOの要求に従わないから、アメリカ政府はルール違反を罰するために関税を課すことができる。しかし、アメリカ政府はそれを明言しなかった。
最近、習近平主席は、そのような技術移転なしに外国企業が自動車産業に参入できる、と説明し、中国のアプローチを変えた。
ムニューチン財務長官が北京に行ったとき、アメリカが求める、中国の経済政策を改善すべき点を列挙した。それには技術移転の問題だけでなく、さまざまな産業における政府の補助金を挙げた。
私は、中国に対して、中国企業がアメリカ企業の技術を盗むのを止めれば、関税を課すこともない、と明確に言うべきだと思う。それは強制的な技術移転だけでなく、サイバー攻撃による技術情報の窃盗、その他の非合法手段を含む。
トランプと他の閣僚たちは、貿易戦争に勝利できると信じている。中国の対米輸出額は、アメリカの対中輸出額の約4倍である。中国経済の方が輸出に対する依存度が高い。
ただし関税は、アメリカの消費者や中国からの輸入品を使用するアメリカ企業のコストになる。しかし、それはアメリカ経済の全体に比べて0.5%にも満たない。(5000億ドルの輸入額全てに25%の関税を課した場合、1250億ドルだが、アメリカの国民所得は20兆ドルを超える規模がある。)
中国の輸出企業は関税の一部を価格に転嫁しないし、アメリカの購入者は国内生産者や第3国からの輸入に替えるから、コストはそれより小さいだろう。
アメリカ政府は、アメリカ企業からの技術の非合法な取得を止めるよう、中国を説得できるだろう。ホワイトハウスは関税賦課の目的を明確にし、中国がWTOルールに従うなら関税は除去する、と説明するべきだ。
FT October
3, 2018
Donald
Trump is wrong: China is not Mexico
Martin Wolf
「アメリカは何十億ドルも、あらゆる貿易相手国と損をしている。貿易戦争は良いことだ。勝つのは容易だ。」 3月2日のTweetが、トランプ貿易政策の目標と手段を示している。
カナダやメキシコとの顕著な勝利で、彼は自分の取引が正しかったと確信している。しかし、中国はメキシコではない。
もしアメリカ大統領が、貿易相手から買うよりも、貿易相手に売る方が多いことを「勝利した」と考え、また、相手に売るよりも多く買っているから、「勝つ」のは容易だ、と思うなら、それは2国間の重商主義、非対称的な苦痛の均衡、を貿易政策の指針としていることを意味する。アメリカは安全保障に関しても2国間で最も強力な国家であるから、勝利するはずだ。
しかし、まじめなエコノミストなら、アダム・スミス以来、すべての国に、こうした「勝利」を得ることはできない、と主張するだろう。すべての国の貿易収支に黒字を求めるのは蒙昧であり、特に自由な資本移動があるなら、貿易政策では達成できない愚かな目標だ。
アメリカのような超大国は、2国間で大幅な黒字を持つ相手に対して、容易に貿易戦争で勝てるのか? その答えは、Yesであり、Noでもある。カナダとメキシコについて、アメリカは「勝利」した。
しかし、中国は違う。中国の対米輸出は、そのGDP比がアメリカの対中輸出より高い(4.1%と0.7%)。中国の対米貿易黒字のGDP比は2006年から大幅に下がった(10.2%から3.1%)。しかし、アメリカが禁止的な高関税を課しても、中国のGDPは4.1%も減少しない。そしてアメリカの輸出も減る。中国の輸出品の付加価値は、その3分の1が輸入品である。中国はアメリカ以外にも輸出している。
中国のGDPは約2%しか減少せず、それは国内政策で容易に相殺できる。他方、アメリカの貿易収支は改善しないだろう。それを決めるのはアメリカ国内の需給バランスだ。
また、中国は屈服しないだろう。国民は「屈辱の100年」について教育を受け、習近平主席の国内政治における地位は安定している。
トランプは2つの失敗を犯した。第1に、問題を広げ過ぎた。中国との貿易は決して2国間で均衡しない。政府でも消費者の購入を決めることはできない。中国の対米輸出額は特に大きくはない。アメリカの輸出額が少ないのだ。また、中国が技術を改善する希望を諦めることもない。
第2に、トランプはアメリカのパワーを誇張した。知的所有権など、多くの取引を求めたが、それはアメリカだけが要求しても十分ではない。特に、EUや日本と協力するべきだ。また、知的所有権が守られるなら、アメリカ企業はより多くの投資中国に向けるだろう。それをトランプは望まない。
この乏しい成果にトランプは驚くだろう。もっとエスカレートした場合、だれが勝つのか? 誰も勝者にならない。貿易システムは破壊され、米中関係は悪化し、世界の安全保障が損なわれる。
どちらが大きく失うのか? それは何が起きるかによる。ECBが分析したように、トランプが貿易戦争を世界化する場合、アメリカは不利になる。アメリカ以外の国は、報復するだろう。アメリカは敗北し、中国が勝利する。アメリカを除く世界の経済は、アメリカ経済の3倍もあるからだ。
FP OCTOBER
3, 2018
Is the
U.S.-China Trade War About to Become a Currency War?
BY KEITH JOHNSON
● 金融危機とグローバル・リンク
PS Sep 28,
2018
Roundtable:
The West’s Decade of Despair
PROJECT SYNDICATE interviews ROBERT J.
SHILLER, STEPHEN S. ROACH, TERESA GHILARDUCCI, JEFFREY D. SACHS, ANGUS DEATON
なぜ世界に倒産が広がった? 住宅バブルが破裂した、資産価格は下落し、信用市場は止まった。人々は、仕事を失い、住宅を失い、生活できなくなった。なぜサブプライム・モーゲージ・ブームを放置したのか? 過度のリスクテイクをチェックしなかったのか? 2008年が来る前に。
Bob Shiller: 私は危機を警告していた。異常に高い住宅価格であった。しかし、それを示すデータがあるのに、だれも見なかった。グラク=スティーガル法があっても危機が起きた。その撤廃よりも、心理の問題である。
Stephen S. Roach: 私の意見は支持されていない。金融危機は、それ以前の経済政策が導いた、というものだ。もちろん、銀行は膨大な失策を重ねていたが、音楽が止まったとき、彼らは問題に直面した。
Teresa Ghilarducci: 10年経って正常化した、とは決して言えない。銀行家たちが変わったのではなく、信用を利用できないから何もしないだけだ。市場とその参加者は、今も、少しも賢明になっていない。
Adam Toozeは、アメリカの金融危機と2009年以降のユーロ・ソブリン危機とを本質的につながった危機として描いた。アメリカと中国については、どのような共棲関係があったのか? 危機の後、米中の違いは何に拠るのか?
Roach: 中国はすぐに財政刺激策を実施した。しかし、それは多くの問題も生じている。債務のGDP比は150%から250%に急増した。
Jeffrey D. Sachs: 多くのアメリカ人はシステムが操作されている、詐欺だと感じている。オバマ政権はウォール街の支持者たちで経済チームを組んだ。よく言えば、それは慎重な判断。金融システムを再起動することを優先した。私はサマーズに、銀行家の報酬を制限すべきだ、と言った。しかし、彼は強く否定した。
Angus Deaton: 膨大なレント・シーキングが存在した。今も金融機関は「大きすぎて潰せない。」
・・・危機管理は成功したか? ・・・行動が遅すぎた? ・・・政治が悪いのか? ・・・何が救いか? ・・・ベーシックインカムはどうか?
NYT Sept.
29, 2018
The Most
Important Least-Noticed Economic Event of the Decade
By Neil Irwin
2015-2016年、アメリカは重大な意味を持つ、しかし多くの人々は気が付かない、説明できないような諸力によって一種の不況が起きた。
新興市場の悪化、石油や一次産品の価格下落、ドル価値の上昇によって、アメリカで投資が急激に減速した。
苦痛はエネルギーと農業部門、そして、こうした部門に製品を供給する製造業に限られた。しかし、この不況を理解することは重要だ。
このミニ不況が2016年の半ばから資本支出を復活させ、より高い成長が始まった。それは2016年の選挙における製造業の集中した地域における強い不満を説明する。
もっとも重要な点は、このミニ不況がアメリカを孤島のように扱うエコノミストたちに反省を迫ることだ。
ミニ不況はどのように起きたか?
2015年、中国の指導者たちは、中国経済が信用の膨張とバブルにあることを懸念し、成長を抑制する政策を取った。それは強い効果を発揮し、経済が減速した。中国に供給している新興市場が問題を生じた。
他方で、アメリカ連銀はアメリカ経済が完全に健全さを取り戻したと考え、金融の超緩和政策を終わりにすると決めた。それは、ECBや日銀が緩和を続けている方向と反対であった。このためドルの価値が急騰した。
ドル高は中国経済の悪化を強めた。中国はその通貨をドルに固定してきたので、ドル高は中国企業の競争力を損なった。中国当局はこの負担を減らすために2015年8月にペッグ制を緩和したが、資本流出に直面し、経済状況をさらに悪化させた。
主要な新興市場において、多くの企業や銀行がドルで借り入れをしていた。ドル高は彼らの負担を増やした。
全てを考慮すると、アメリカ連銀の金利引き上げは、2015年12月に行われたが、金融上嫌悪引き締めと世界全体での成長の減速をもたらした。それはまた、石油や多くの一次産品への需要を減らした。主要な一次産品供給国、ブラジル、メキシコ、インドネシアの苦痛はそれを代表する。
アメリカのエネルギー生産者は価格下落と債務増の圧力下にいたので、株価やリスクの高い社債は2016年初めに不安を生じた。投資家たちの損失と金融システムの安定性に関する恐怖が生じた。
強いドル、弱い新興市場の成長、低い一次産品価格、その悪循環がある種の資本財に関する支出を、2015年半ばに急落させた。
金融市場のアナリストの中には、太平洋の両側で、米中指導者たちが2016年2月のG20において秘密の合意をした、と考える者がいる。「上海合意」である。アメリカ連銀は金利を引き上げず、その代わりに中国は必要な行動を取る、というのだ。イエレンはそれを否定する。
2015-16年のグローバルな通貨・商品価格の累積的効果から得られる教訓とは何か?
1.トランプ政権が自慢する投資の強さは、ミニ不況からの回復であった。2.ミニ不況は2016年の大統領選挙に影響した3.経済政策担当者たちは、予測や前提に反しても、情報に柔軟に対応しなければならない。4.グローバル経済はあまりにも緊密に結びついているため、上海やサンパウロの事件が遠く離れた場所で予想外の結果をもたらす。
PS Oct 1,
2018
The First
Bank of Starbucks
SIMON JOHNSON
PS Oct 2,
2018
One
Hundred Years of Ineptitude
HELMUT K. ANHEIER
PS Oct 3,
2018
Bad
Financial Moon Rising
WILLIAM WHITE
(後半へ続く)