IPEの果樹園2018

今週のReview

10/1-6

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シリア内戦の終わり ・・・米中貿易戦争 ・・・グローバリズム批判 ・・・民主主義の挑戦 ・・・アメリカ・ファースト ・・・アメリカ最高裁とカバノー ・・・アルバニア再興

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 シリア内戦の終わり

The Guardian, Fri 21 Sep 2018

If ending Syria’s war means accepting Assad and Russia have won, so be it

Jonathan Steele

シリア情勢がこれ以上に複雑になることはあり得ないほどのときに、それは起きた。地中海上空で、シリアのミサイルがイスラエルの爆撃機を撃ち落とし損ねた後、同盟国ロシアの偵察機を撃破したのだ。バルチック海のリゾート地、ソチでは、ロシアとトルコの2人の大統領が、イドリブ県の聖戦主義者武装勢力を掃討するためにトルコ軍が監視する計画を作った。

2つの点は明らかだ。1つは、2011年にはシリアの改革運動であったことが、その後、外国からの介入が増え続けてきたこと。もう1つは、その中心的な、不可欠の役割を、今ではロイシアが担っていることだ。

ロシア軍は、イスラエルが占領するゴラン高原との境界線近くに展開し、イラン系の武装勢力がイスラエルを挑発しないよう警戒している。そしてロシアは、イスラエル空軍がシリア内のイラン系武装勢力に空爆するのを黙認している。ロシアはまた、トルコとも多面的な関係を結んでいる。

イドリブ県には、イギリス、フランス、アメリカを含む外国の兵士がおり、人道的な理由以外にも、シリア政府とロシア軍のイドリブ侵攻を阻止するキャンペーンを強化している。それは、自分たちが支援する反政府武装勢力にシリアの中核地域で反攻する時間を与えるためだが、その動機は正当なものではない。

今や、イドリブ県の200万人を救出する良い方法とは、反乱軍が降伏することを条件に、政治的解決策を見出すことだ。シリア政府は、この2年で、100以上の降伏協定を結んできた。それは言葉を飾って「和解協定」と呼ばれている。多くの反政府武装勢力はイドリブに移動することを許された。政府は支配地域を拡大するため、叛乱兵士たちが銃器を帯びたまま、政府のバスで移動させた。

ロシアの飛行機は降伏を呼びかけるビラを投下している。2年前のアレッポ東部では、ビラを拾った者、その内容を伝えた人々を、反乱軍が処罰したと伝えられた。メッセージは、無益な戦争を止めて和平に応じるのが良い、というものだ。今になっても、アメリカが指導する爆撃部隊がダマスカスのアサド司令部を破壊する、という期待を、諦めていない反政府武装勢力がいる。

シリア政府は明確なメッセージを送っている。イスラム国やアルカイダに属していなければ、イドリブ県の降伏した反政府武装勢力には罪を問わない、と。以前の条件にはあった、シリア軍に組み込むことも、求めていない。その代わりに、イギリス、フランス、アメリカ政府は支援する軍隊が降伏の取り決めを邪魔しないように求めている。

アサドは自国民を大規模に殺戮した、と常に責められる。しかし、反政府武装勢力も自国民を殺戮してきた。西側の諸政府は、この大虐殺について責任の一端を負っているのだ。


 米中貿易戦争

PS Sep 21, 2018

The US Will Lose Its Trade War with China

ANATOLE KALETSKY

ドナルド・トランプ大統領が言うこと、行うことに関わらず、アメリカが関税で中国に勝利することはないだろう。トランプは、中国に対して優位にあると確信している。アメリカ経済は非常に好調で、また、共和党も民主党も、中国の台頭を退け、アメリカのグローバルな支配を維持する、という戦略的目的を支持しているからだ。

しかし、皮肉なことに、この好調さは致命的な弱点である。

デイヴィッド・リカード以来、エコノミストたちは輸入制限が消費者の厚生を悪化させ、生産性上昇を損なう、と論じてきた。しかし米中紛争で、比較優位よりもさらに重要なことは、ケインズの需要管理論だ。アメリカはトランプの関税に苦しむが、中国はその悪影響を容易に相殺できる。

ケインズによれば、貿易戦争の結果はその経済が不況か、過剰需要であるか、に依存する。不況の場合、長期的には効率性を損なうが、関税は国内経済活動と雇用を刺激する。しかし、経済が生産能力の上限まで利用している状態なら、関税は単に物価を上昇させ、金利の引き上げ圧力になる。後者が現在のアメリカ経済である。

アメリカ企業は、全体として、中国からの輸入品に代わる追加の低賃金労働者を見つけられない。たとえ少数の企業は中国製品を締め出すことにより刺激を受けても、賃金引き上げや新工場の建設はインフレにつながる。関税が多年に及ぶと確信しない限り、アメリカ企業は中国と競争する投資や新規雇用を行わないだろう。

他方、このことを知っている中国企業は、アメリカの関税によるコストを抑えるために輸出価格を下げることもないだろう。つまり、アメリカの輸入業者が関税の追加コストを支払い、それを消費者に転嫁する。あるいは、利潤を減らしてアメリカの株主が負担する。こうして関税は、トランプが信じているような中国への「懲罰」ではなく、売上税のように、アメリカの消費者や企業に損害を与える。

しかし、たとえ関税により一部の市場から中国製品が排除されたとしても、よそから競争的な価格で輸入品が入ってくるだろう。靴やおもちゃはベトナムやインドから、電化製品や工業機械は韓国やメキシコから供給され、また、いくつかの日本やヨーロッパの企業が中国の高価格製品でも代替する。その意味では、いくらか中国に「懲罰」となるが、新興市場やグローバル経済は潤うのだ。

中国の輸出業者が被る損失は、需要管理政策によって相殺できるから、中国が成長や雇用、企業利潤で失うものはないだろう。しかし、中国政府はそれを好まなかった。習近平主席が、中国の国内債務を減らし、銀行部門を改革すると約束したからだ。

しかし、ケインズ政策を抑える財政再建の議論は、アメリカがトランプの関税で地政学的な冷戦とみなす行動を取ったことで、無意味になった。

関税がアメリカ企業や有権者の損害を与え、中国と他の世界はそのコストを容易に排除できるとき、トランプはどう反応するのか? それは、北朝鮮、EU、メキシコとの紛争を観ればわかる。彼は目標が達成できないときは「取引」する。

トランプは、その一貫して矛盾した外交を説明して、「大声で叫び、白旗を掲げる」驚異的な能力がある。米中間の貿易戦争もそうだ。

NYT Sept. 26, 2018

Leadership, Laughter and Tariffs

By Paul Krugman

単純化のために、世界は3つの経済、アメリカ、中国、ヨーロッパ、から成っているとしよう。ECBBOEも、アメリカが中国とヨーロッパに対して関税を引き上げ、中国とヨーロッパは報復する、と考えている。しかし、中国とヨーロッパは互いに関税を引き上げない。

その場合、外国の消費者と生産者には、アメリカから去って、多様化する選択肢が多くある。例えば、中国の生産者はアメリカから買わずに、ヨーロッパからより多く買うだろう。しかしアメリカの消費者と生産者に同じような弾力的選択肢はない。

なぜアメリカは双方と一方的な貿易戦争をしているのか? それはトランプが始めたことだから。トランプ政権は、多くの分野で孤立しており、通商政策はその1つである。トランプでなければ、アメリカ政府は、ヨーロッパとともに、知的財産などに関して、中国に圧力をかけただろう。

トランプが国連で示したように、世界はアメリカを文字通りに笑っているのだ。もちろん、アメリカを信頼する国はない。むしろ、アメリカと関わらないように苦労している。


 グローバリズム批判

The Guardian, Wed 26 Sep 2018

The truth is that Trump has a point about globalisation

Larry Elliott

かつては3年ごとに、IMFと世界銀行の総会がワシントンで開催され、加盟国の財務大臣と中央銀行総裁が集まっていた。2000年のプラハ総会を反グローバリゼーションの暴徒たちが占拠して以来、抗議活動を避けて、遠方で開催されるようになった。シンガポール、トルコ、ペルー。

今年の総会はインドネシアのバリで開催されるが、騒ぎはないだろう。しかし、もはや真の脅威はモロトフ・カクテルを投げるアナーキストたちではない。会議の内側に脅威はある。ドナルド・トランプ大統領は、IMFや世銀のような国際機関に火炎瓶を投げている。

「われわれはグローバリズムのイデオロギーを拒否する。われわれが称えるのは愛国主義の原理だ。」と、アメリカ大統領は国連総会で演説した。IMFのメッセージはこうだ。貿易障壁を破棄し、国境線に関係なく資本移動を許し、多国籍企業に対する政府の規制を止めることが、繁栄への道である、と。しかし今、世界最強の男は異論を唱える。グローバリゼーションが生じた経済・社会の病状を治癒するのは、唯一、国民国家だけである。トランプの演説は指導者たちの失笑を買ったが、真実は違う。彼に賛同する者は増えている。

世界の経済大国として、中国は国民国家を否定しなかった。グローバリゼーションに関して、習近平とドナルド・トランプは逆の姿勢を示すが、中国の過去40年に及ぶ驚異的な成長は、グローバリゼーションの教科書とは反対の行動を取った結果である。かつて西側諸国も、第2次世界大戦後の数十年間、資本を規制し、移民を管理し、貿易制限も慎重に扱った。国内の完全雇用や生活水準の向上を重視し、必要なら貿易の制限したのだ。

国民国家は消滅する、という主張は3つの議論から成る。1.財、サービス、人、資金のグローバルな移動を制限することは非効率である。その障壁を破棄すれば成長が高まる。2.政府はグローバリゼーションに逆らえない。市場のパワーは、あたかもハリケーンやブリザードと同じ、自然の猛威である。3.現代の資本主義は超国家的であり、国民国家は時代錯誤だ。経済がグローバル化する以上、政治もグローバル化する。

しかし、成長は弱く、純粋な市場など存在せず、それは政治的決定がもたらしたものだ。グローバリゼーションは、労働に対する資本の優位を広めた。明らかに資本市場が個々の政府を制約し、好ましいグローバル・ガバナンスを築いた。EUでも、IMFでも、それを動かすのはグローバリストたちだ。

国民国家は完璧ではないが、既存のモデルが失敗したとき、人々はその代替を求めた。経済安全保障について、自分たちの声を反映させるよう求めている。特に、中道左派政党はこれに失敗し、人々は別の運動・政党を支持するようになった。


 民主主義の挑戦

NYT Sept. 21, 2018

Democracy Will Still Surprise Us

By Roger Cohen

アテネの民主主義は、男性のみで、普通選挙とは程遠い。それでも、アテネの夜明けに浮かぶ白い城壁を観ると、人類の政治システムとして、投票を通じた市民の権力行使を許す試みが1000年を生き延びたことに、感慨を覚える。

民主主義は何度も失敗し、なお挑戦し続けている。

最善の民主主義では、自由な市民たちが共通の運命を決定する過程に参加する。しかし最悪の民主主義では、市民の紐帯が腐食し、権力は少数者に帰属し、誇大表現が当たり前になり、嬌声を上げる群衆の中で、寛容さや抑制は失われてしまう。それはプーチンのような専制支配者にふさわしい。

民主主義は危機において支持される言葉だ。各地の自由を求める声は続いている。しかし、西側民主主義は動揺している。富を集中し、不正義をもたらしている。ゲーテのファウストのように、技術は矛盾した魂を持つ。

現代はグローバルな直接民主主義の代である。Facebookには月に22億人の利用者がいる。リベラルはもっと楽しく、愛国的な姿勢を持つべきだ、とポーランドの社会学者Karolina Wiguraは考える。リベラルは退屈だ、と思われている。ハーヴァード大学のYascha Mounkは、反民主主義の不満を軽視してはならない、と言う。

真実がどうなるのか、ポピュリズムの傲慢さがどうなるのか、心配だ。トランプの道徳破壊が腐食を広げ、アメリカの言葉の価値が失われ、自由世界をつなぐ接着力を失うことが心配だ。

しかし、私は楽観論者だ。民主主義は堅固である。人類が自由を求める以上、民主主義のシステムこそが最善だ。


 アメリカ・ファースト

NYT Sept. 23, 2018

America First’ Has Won

By Robert Kagan

トランプ大統領は多数の支持を得ていない。しかし、「アメリカ・ファースト」アプローチは世界で支持されている。トランプがカナダ、メキシコ、ヨーロッパと貿易戦争することに反対する声は上がっていない。次の大統領がだれであれ、アメリカは長い貿易戦争に入ったのだ。結局、ヒラリー・クリントンもTPPの支持を選挙戦では取り下げた。自由貿易のコンセンサスなど存在しない。

トランプの移民政策は共和党に支持されているが、民主党政治家でもさらに多くの移民をアメリカは歓迎する、と公約することはない。1920年代と同様、孤立主義と反移民感情がアメリカ第一主義である。

グローバルな安全保障におけるアメリカの役割も、両党は縮小することで一致する。ロシアとの和解、北朝鮮との取引、中国との貿易戦争と、それにもかかわらず軍備拡大への反対。政治家たちはトランプを支持している。リベラルな秩序を称賛する民主党議員たちも、アメリカが海外で軍事的関与を縮小することに賛成だ。

旧同盟諸国はアメリカの軍事力に頼るべきではない。自分たちで防衛するべきだ。1930年代に、イギリスはダンチッヒの防衛を拒み、アメリカも今、台北やリガを防衛するために兵士を死なせたくない。キエフやトビリシなど、言うまでもない。オバマの国際主義は民主党の基盤から見ても過大であった。トランプの、より狭い、一国主義の、ナショナリスト・アプローチは、オバマの世界市民主義より、アメリカ国民の感覚に近い。

われわれが観ているのは、単なる発作や、アメリカ外交の新方針ではなく、むしろ伝統への回帰である。それは、ファシズムや軍国主義が世界を席巻している間、わきに控えていただけだ。

FP SEPTEMBER 24, 2018

Socialists and Libertarians Need an Alliance Against the Establishment

BY STEPHEN M. WALT

アメリカは新しい外交政策を必要としている。しかし、だれがそれを形成し、実行するのか? 民主的な社会主義を唱える左派、リバタリアンたちの右派、その中心にいて外交政策を担うリアリストの連合は実現するだろうか?

過去4分の1世紀、アメリカ外交政策は、リベラルな国際主義者とタカ派のネオコンの緩やかな連携で動いてきた。両者はアメリカ例外主義を固く信じている。すなわち、アメリカは欠くべからざる大国であり、世界全体に積極的な指導力を発揮しなければならない。圧倒的な軍事的優位を好み、リベラルな諸価値(民主主義、人権、法の支配、市場)を世界の隅々にまで広めるという目標に賛同する。国際機関の役割に対して意見が対立しても、共和・民主両党の大統領において広く連携を組んだ。

残念ながら、こうしたエリートたちが支持する外交は致命的な失敗に至った。彼らが共有するリベラル・ヘゲモニーの戦略は、より調和した、繁栄する世界を創り出せなかった。代わりにそれは、多くの破たん国家、大国間関係の悪化、グローバルな不況、民主主義への不信、グローバリゼーションへの排外主義的反動、をもたらした。


 中国の外交・介入主義

PS Sep 27, 2018

The China Backlash

BRAHMA CHELLANEY

中国は、ハーヴァードのGraham Allisonが言うように、「世界でもっとも保護主義的で、重商主義的で、略奪的な、大国経済である。」

しかし、マレーシアのマハティール首相は北京を訪問し、中国によるインフラプロジェクトと、その返済不可能な債務を批判した。マハティールは「新しい植民地主義」として警告した点で、その大胆さは特別なケースだが、中国の重商主義的貿易や投資、融資に関して反対する声が広がっている。

特に、昨年12月、スリランカがその戦略的な港湾Hambantotaを、中国が建設した際の債務を支払えず、99年間、中国に貸し出す契約に合意したことは、衝撃であった。他国にも、中国のインフラ投資が「債務の罠」に陥る危険を強く意識させたのだ。BRIは、多くの国Bangladesh, Hungary, and Tanzania, MyanmarそしてPakistanでも見直しが求められている。

中国は急速に成長して豊かになった。それは国際貿易のルールを偽るものだった。今では多くの国が、中国製品をダンピング提訴や禁止的な関税によって阻もうとしている。もはや一帯一路が単純に歓迎されることはない。

中国にとって国際貿易の利益を失うことは許されず、中国がそのルールを免れることもできなくなった。


 アメリカ最高裁とカバノー

FT September 27, 2018

The deluge of vitriol swamping American politics

Edward Luce

ドナルド・トランプは最高裁判事候補にカバナーBrett Kavanaughを指名した。それは非常にうまくいく。それが理由だ。

アメリカのシステムは激しい非難の中で解体しつつある。憲法は党派を形成しないようにデザインされた。しかし、今、立法府はますます憎しみ合う2つの党派によってもてあそばれている。

バラク・オバマが当選する前は、アメリカの党派主義を嘆く声が広がっていた。しかし、Newt Gingrichが下院議長になって、それが変わった。ギングリッチは党の締め付けを強化した。党を超えた交流はなくなった。

オバマはそれを批判して当選したが、彼の当選後、その傾向は強まった。共和党が選出されたアメリカ大統領の国籍を疑うというのは、限度を超えた運動だった。トランプはこの「バーサー」運動を利用した。そして民主党の側でも、次第に、共和党に対抗する破壊的な主張が強まった。

政治の勝者がすべてを得る以上、勝つことだけが優先された。政府の2部門が毒に汚染され、司法が最も政治的ではないはずだった。それこそがトランプによるカバナー指名の間違っている点だ。

10代の頃の性的暴行が疑われることを無視するとしたら、それは怠慢であろう。しかし、共和党は承認する。上院でも、裏切り者になることを恐れ、だれもカバナーを否認することはないだろう。

アメリカの党派はイデオロギーで対立しているのではなく、生物学で対立する。それは妥協の余地がない。アイデンティは分割できない。人種や性的指向に関する論争が繰り返される。

セラピストは、結婚が失敗に終わるケースには、互いを侮辱するだけになる、引き返せない時点がある、と言う。アメリカは以前もこうした離婚に苦しんだ。1860年代の南北戦争だ。まさか歴史は繰り返さないだろう。しかし、無視するには難しい類似性がある。


 アルバニア再興

PS Sep 27, 2018

The Albanian Miracle

RICARDO HAUSMANN

5年前、アルバニアは最悪の状況だった。ギリシャとイタリアがユーロ危機に陥り、アルバニアへの送金と資本流入が減少した。財政赤字はGDP7%に達し、大部分の返済が遅れた。国際金融市場のアクセスを失い、国内金利は跳ね上がった。

加えて、電力供給会社が機能的にも財政的にも破たんした。政府と電力会社の債務返済が遅れて、銀行システムに不良債権が増加した。破局が迫っていた。

現在はどうか。経済は4.2%で成長している。農産物、鉱物、エネルギー、旅行サービス、ビジネス・サービスの2ケタ成長がけん引している。アルバニアの金利は記録的な低水準で、通貨価値も高い。かつて独裁者の下で、ヨーロッパの北朝鮮と呼ばれたが、アルバニアの1人当たりGDPはドイツの4分の1に達した。

エコノミストたちはさまざまな失望を生む結果に責められ、IMFや世界銀行のような国際機関も助言する諸国の乏しい成果に悩まされている。アルバニアの成功は注目に値する。

成功の秘訣は何か? 第1に、20139月に首相となったEdi Ramaは、即座にIMFと協議し、金融支援と財政再建案を開始した。3年の計画は成功し、債務のGDP比率は低下しつつある。

財政再建の間は、他の景気刺激策が必要だ。特に輸出である。ボトルネックを解消し、機会をつかむ不断の努力によって、輸出は拡大しつつある。ビジネス指標に従うのではなく、アルバニアは問題重視で繰り返しの改善作業を採用した。問題をモニターし、原因を特定し、解決する方策を工夫する。

農業ではアグリゲーターが発展した。それは小規模農家を集めて、優れた技術を伝え、利益の出る市場を教える。野菜の輸出がブームになった。エネルギー部門では、政府が、電力を盗む市民の行動を変える、という非正統的戦略で成功した。製造業や観光業のコンサルタントが改善する分野を特定した。アルバニアは歴史的な都市の再生に投資してきたが、アグロ・ツーリズムの可能性を持つ100の村にも投資している。

大使たちは、一致した戦略の下、直接投資を誘致するために企業と直接に接触している。政策担当者たちは海外に流出したアルバニア人と連絡を取り、人材、投資、市場、ビジネスの源泉としている。政府が問題や弱点を理解し、目標を定めて、その達成のために不断の努力を重ねるとき、IMFや開発機関は金融支援を生かすことができる。

まったく絶望的に見えたアルバニアが、われわれの希望の源になった。

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The Economist September 15th 2018

A manifest

Britain and the European Union: Selling Chequers

The Supreme Court: Weak is strong

Emerging markets: Lessons from Lusaka

America’s Supreme Court: And Brett makes five

Politics and the law in India: Conspiracy theories

Separatism in Hong Kong: A slippery slope

Zambia: End of the road

The Democratic Republic of Congo

Venezuela: The half-life of a currency

(コメント) リベラリズムを再建するマニフェストを模索します。穀物法の撤廃は、その時代の変化を「自由貿易」が示していたと思います。今、リベラリズムの大義は、もっと多くのことを含むでしょう。移民についてのルールを見いだし、デジタル大企業や国際秩序(戦争と平和)の市民社会における合意を模索します。

香港、ザンビア、コンゴ民主共和国、ジンバブエ。いずれも著しい失敗ケースです。なぜか?

しかし、もしかするとアメリカも、そうなのでしょうか? 最高裁判事候補としてカバノーが公聴会に現れ、彼の性的暴行疑惑を証言する女性と対峙しました。

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IPEの想像力 10/1/18

アメリカABCニュースを衛星放送で観ました。最高裁判所の判事は、トランプと共和党によるカバノーを指名・承認して、司法を保守派の多数で、半永久的に支配しようとしています。

共和党議員は、・・・この公聴会を、候補者指名を妨害する民主党による陰謀、著しい党派主義、政治介入だ、と非難します。カバノーは十分な資格のある候補者であり、その人物に対する「証拠もない」嫌疑は、指名手続きを遅らせる理由にならない。

民主党議員は、・・・カバノーの党派性(共和党に偏った言動)は問題だ。また、たとえ政治姿勢を持つ場合でも、感情的にならない、公平な姿勢を判事としては示すべきだ。カバノーは、とても最高裁判事として公正な判断ができるとは思えない。こうした人物に最高裁の権限を委ねるべきではない。性的暴行を訴える証人の話は十分信頼できる。自分の訴えが正しいことを証言できる他の人物たちの名前を挙げて、捜査を要求している。カバノーは、いかなる質問にも答えず、捜査を要求せず、逃げるだけだった。

最高裁や司法に関しては、「自分が有罪になっても恩赦できる」とトランプ大統領が発言したことに関係するでしょう。

斎藤彰「トランプの私的醜聞とロシア疑惑の意外な接点」(WEDGE Infinity,201886日)を読みました。アメリカでは、トランプ大統領自身に対する捜査が進行しています。いわゆるロシア疑惑です。選挙運動においてロシア政府・プーチンの情報操作や介入を、トランプ陣営は知っていたのか? クシュナーはロシア側と共謀したのか? 情報や資金のつながりがあったのか?

トランプが性的関係を持っていた元ポルノ女優の告発で、トランプの顧問弁護士の部屋が捜索されました。その際に、多くの証拠が見つかり、ロシア疑惑を深めたということです。こそ泥を捕まえたらCIA工作員で、盗聴事件、ニクソン大統領の辞任へ至ったウォーターゲート事件と似ています。

ロシア疑惑は大統領に関わっており、司法の独立性を示すため、モラー特別検察官が捜査しています。特別検察官による捜査を支持したローゼンシュタイン司法副長官を、トランプ大統領は解任するかもしれない、と言われます。ローゼンシュタインは、大統領の権限を停止することについても検討した、という報道があり、トランプは、こうした司法を何としても屈服させたいのです。

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沖縄知事選挙で玉木デニー氏が当選したと知って、私は、NHKの報道は間違っている、と思いました。玉木氏については翁長氏による指名だけが紹介され、佐喜眞淳氏の主張が具体的で、説得的であり、基地問題で政府との対立を超えて、経済問題や若者のことを考えている、と報道していたからです。

当然、沖縄選の結果を受けて、安倍首相は政府の姿勢を質問されました。首相の答えは、選挙民や記者の質問に答えず、美辞麗句を返すことでした。「真摯に受け止める。」「沖縄の振興」「基地負担の軽減に努める。」

観光客が増えても、沖縄の生活は改善しない。公共工事を約束することで票を増やせる、という政府・自民党の発想が間違っている、という意見を読みました。

幼稚園の上を米軍機が飛ばないように約束してほしい、と要求した。しかし、米軍からの回答を待っている、と繰り返した官僚の態度に、子供の親として強い不満を覚えた、と女性は語っていました。彼女はその後、立候補しました。

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最高裁判事の候補者指名も、沖縄米軍基地・移設問題も、政治が解決しなければならない問題を裁判所が判断するように求められます。司法の独立性が認められているとしても、さまざまな形で政治は介入できます。政治が分離しておくことを好ましいと考えなければ、政治の混乱がそのまま司法に及ぶのです。

アメリカのキリスト教・保守派は、裁判所が堕胎を合法と認めたことに強く反発しました。この理由だけで、共和党の保守派候補を支持し、トランプを支持したとThe Economistの記事は指摘します。同性婚も、銃規制も、かつての奴隷制、そして移民も、裁判所で問われます。

日本では、原発問題、米軍基地問題がそうです。

政治が機能せず、党派対立がメディアや司法にまで及ぶとしたら、民主主義国家ではなく、破たん国家です。Brexitが穀物法撤廃におけるイギリスの政党政治再編成を、トランプと共和党による最高裁の支配がアメリカ南北戦争を、連想させるのです。

The Economistの特集記事はリベラリズム復興・再宣言でした。そのすべてには賛同しませんが、リベラルな社会政治モデルを問い直す真摯な姿勢が政治家たちに必要です。

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