IPEの果樹園2018

今週のReview

10/1-6

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シリア内戦の終わり ・・・米中貿易戦争 ・・・グローバリズム批判 ・・・民主主義の挑戦 ・・・朝鮮半島の核と政治 ・・・Brexitの最後の妥協 ・・・気候変動と政治 ・・・アメリカ・ファースト ・・・アメリカ最高裁とカバノー ・・・アルバニア再興

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 シリア内戦の終わり

The Guardian, Fri 21 Sep 2018

If ending Syria’s war means accepting Assad and Russia have won, so be it

Jonathan Steele

シリア情勢がこれ以上に複雑になることはあり得ないほどのときに、それは起きた。地中海上空で、シリアのミサイルがイスラエルの爆撃機を撃ち落とし損ねた後、同盟国ロシアの偵察機を撃破したのだ。バルチック海のリゾート地、ソチでは、ロシアとトルコの2人の大統領が、イドリブ県の聖戦主義者武装勢力を掃討するためにトルコ軍が監視する計画を作った。

2つの点は明らかだ。1つは、2011年にはシリアの改革運動であったことが、その後、外国からの介入が増え続けてきたこと。もう1つは、その中心的な、不可欠の役割を、今ではロイシアが担っていることだ。

ロシア軍は、イスラエルが占領するゴラン高原との境界線近くに展開し、イラン系の武装勢力がイスラエルを挑発しないよう警戒している。そしてロシアは、イスラエル空軍がシリア内のイラン系武装勢力に空爆するのを黙認している。ロシアはまた、トルコとも多面的な関係を結んでいる。

イドリブ県には、イギリス、フランス、アメリカを含む外国の兵士がおり、人道的な理由以外にも、シリア政府とロシア軍のイドリブ侵攻を阻止するキャンペーンを強化している。それは、自分たちが支援する反政府武装勢力にシリアの中核地域で反攻する時間を与えるためだが、その動機は正当なものではない。

今や、イドリブ県の200万人を救出する良い方法とは、反乱軍が降伏することを条件に、政治的解決策を見出すことだ。シリア政府は、この2年で、100以上の降伏協定を結んできた。それは言葉を飾って「和解協定」と呼ばれている。多くの反政府武装勢力はイドリブに移動することを許された。政府は支配地域を拡大するため、叛乱兵士たちが銃器を帯びたまま、政府のバスで移動させた。

ロシアの飛行機は降伏を呼びかけるビラを投下している。2年前のアレッポ東部では、ビラを拾った者、その内容を伝えた人々を、反乱軍が処罰したと伝えられた。メッセージは、無益な戦争を止めて和平に応じるのが良い、というものだ。今になっても、アメリカが指導する爆撃部隊がダマスカスのアサド司令部を破壊する、という期待を、諦めていない反政府武装勢力がいる。

シリア政府は明確なメッセージを送っている。イスラム国やアルカイダに属していなければ、イドリブ県の降伏した反政府武装勢力には罪を問わない、と。以前の条件にはあった、シリア軍に組み込むことも、求めていない。その代わりに、イギリス、フランス、アメリカ政府は支援する軍隊が降伏の取り決めを邪魔しないように求めている。

アサドは自国民を大規模に殺戮した、と常に責められる。しかし、反政府武装勢力も自国民を殺戮してきた。西側の諸政府は、この大虐殺について責任の一端を負っているのだ。

NYT Sept. 26, 2018

These Are Not Disposable Allies

By Aliza Marcus

FP SEPTEMBER 26, 2018

Syria’s Three Wars

BY STEVEN SIMON


 米中貿易戦争

FT September 21, 2018

Wang Qishan, China’s philosopher king

Tom Mitchell

PS Sep 21, 2018

The US Will Lose Its Trade War with China

ANATOLE KALETSKY

ドナルド・トランプ大統領が言うこと、行うことに関わらず、アメリカが関税で中国に勝利することはないだろう。トランプは、中国に対して優位にあると確信している。アメリカ経済は非常に好調で、また、共和党も民主党も、中国の台頭を退け、アメリカのグローバルな支配を維持する、という戦略的目的を支持しているからだ。

しかし、皮肉なことに、この好調さは致命的な弱点である。

デイヴィッド・リカード以来、エコノミストたちは輸入制限が消費者の厚生を悪化させ、生産性上昇を損なう、と論じてきた。しかし米中紛争で、比較優位よりもさらに重要なことは、ケインズの需要管理論だ。アメリカはトランプの関税に苦しむが、中国はその悪影響を容易に相殺できる。

ケインズによれば、貿易戦争の結果はその経済が不況か、過剰需要であるか、に依存する。不況の場合、長期的には効率性を損なうが、関税は国内経済活動と雇用を刺激する。しかし、経済が生産能力の上限まで利用している状態なら、関税は単に物価を上昇させ、金利の引き上げ圧力になる。後者が現在のアメリカ経済である。

アメリカ企業は、全体として、中国からの輸入品に代わる追加の低賃金労働者を見つけられない。たとえ少数の企業は中国製品を締め出すことにより刺激を受けても、賃金引き上げや新工場の建設はインフレにつながる。関税が多年に及ぶと確信しない限り、アメリカ企業は中国と競争する投資や新規雇用を行わないだろう。

他方、このことを知っている中国企業は、アメリカの関税によるコストを抑えるために輸出価格を下げることもないだろう。つまり、アメリカの輸入業者が関税の追加コストを支払い、それを消費者に転嫁する。あるいは、利潤を減らしてアメリカの株主が負担する。こうして関税は、トランプが信じているような中国への「懲罰」ではなく、売上税のように、アメリカの消費者や企業に損害を与える。

しかし、たとえ関税により一部の市場から中国製品が排除されたとしても、よそから競争的な価格で輸入品が入ってくるだろう。靴やおもちゃはベトナムやインドから、電化製品や工業機械は韓国やメキシコから供給され、また、いくつかの日本やヨーロッパの企業が中国の高価格製品でも代替する。その意味では、いくらか中国に「懲罰」となるが、新興市場やグローバル経済は潤うのだ。

中国の輸出業者が被る損失は、需要管理政策によって相殺できるから、中国が成長や雇用、企業利潤で失うものはないだろう。しかし、中国政府はそれを好まなかった。習近平主席が、中国の国内債務を減らし、銀行部門を改革すると約束したからだ。

しかし、ケインズ政策を抑える財政再建の議論は、アメリカがトランプの関税で地政学的な冷戦とみなす行動を取ったことで、無意味になった。

関税がアメリカ企業や有権者の損害を与え、中国と他の世界はそのコストを容易に排除できるとき、トランプはどう反応するのか? それは、北朝鮮、EU、メキシコとの紛争を観ればわかる。彼は目標が達成できないときは「取引」する。

トランプは、その一貫して矛盾した外交を説明して、「大声で叫び、白旗を掲げる」驚異的な能力がある。米中間の貿易戦争もそうだ。

NYT Sept. 21, 2018

Why Tariff and Trade Disputes Are More than a Money Problem

By Jeff Sommer

FT September 23, 2018

China’s relentless export machine moves up the value chain

Tom Hancock in Shanghai

上海の周辺部にあるSany Groupは、世界の2大国が貿易戦争を展開していることなど何も感じさせない。500人の労働者と200台のロボットが鋼鉄の部品を組み立てて、毎日、50台の掘削機械、重量にして20トンを生産している。

中国最大の製造業者の1つであるSanyが生産量の40%以上、昨年は12兆ドルを輸出しているのは、主に、アジアとラテンアメリカの新興市場である。Sanyは今年、海外の売り上げを30%増やす目標を立てている。

世界金融危機後も中国経済は好調であった。2009年、ドイツを抜いて世界最大の輸出国になった後も、輸出は平均5%で増加し、2017年、22600億ドルになった。グローバルな輸出額は。年2%以下でしか増加していない。

中国の製造業輸出は、中間的な水準の技術において急速に増大した。中国企業の輸出分野は、低水準の財から、中級財に急速に変化している。アメリカ政府による関税賦課は、そのグレードアップを加速するだろう。

それはアメリカが恐れるようなハイテク先端分野ではないが、過去10年間で製造業部門の平均賃金が3倍に上昇し、ブラジルやメキシコを超えて、それに見合う生産性上昇を達成してきた。多国籍企業による技術移転も、重要な役割を果たしている。科学や建設機械で、多国籍企業は中国に技術移転したが、それはすぐに中国からの輸出増大となった。

中国企業は完成品のために高度な部品をドイツなどから輸入しているが、それも次々に国内生産に転換しつつある。中国が中間レベルの技術による輸出を急増させることで、最も影響を受けるのは東アジアの近隣諸国であろう。日本、韓国、台湾などと、中国を結んで、先進諸国市場へ輸出していた三角貿易が形成されてきたが、それは消滅するだろう。韓国は非常に厳しい競争にさらされている。

中国の労働力プール、市場規模、濃密なサプライチェーンの集積は、今も低レベルの製品輸出で高い競争力を失わない。「雁行形態」と呼ばれるアジアの輸出指向型成長モデルは、中国の低レベルから中レベルの製品にまで及ぶ、圧倒的な競争力によって消滅する。

FT September 23, 2018

US trade hawks seize their chance to reset China relations

Rana Foroohar

NYT Sept. 24, 2018

The Unlikely, Obvious Solution to the Trade War

By Yukon Huang

技術の盗用、技術移転の強制、政府による企業支援、市場規模による有利な交渉力、など、アメリカ政府は中国の貿易を批判する。それらは、貿易戦争ではなく、WTOを通じて解決することが望ましい。

YaleGlobal, Tuesday, September 25, 2018

The US-Chinese Trade War Begins

Börje Ljunggren

PS Sep 26, 2018

What China Can Gain from Trump’s Trade War

KEYU JIN

トランプが貿易戦争によって中国を封じ込めるか、処罰するかどうかにかかわらず、その意図せざる結果は、中国を新しい時代に向けて強化するだろう。長期的に、外国貿易や輸入技術への依存を減らし、より強く、活力を得て、アメリカの創るルールを無視できる国になる。

貿易戦争の「敗者」が、ときには「勝者」よりも優位になる。1980年代、アメリカのレーガン大統領は日本の対米自動車輸出の台数を制限した。しかし、時間が経って、日本の自動車産業はより高価な自動車を輸出するようになった。

トランプは中国を攻撃し、「アメリカを再び偉大にする」という。しかし、それはむしろ中国をより強くするだろう。

NYT Sept. 26, 2018

Leadership, Laughter and Tariffs

By Paul Krugman

単純化のために、世界は3つの経済、アメリカ、中国、ヨーロッパ、から成っているとしよう。ECBBOEも、アメリカが中国とヨーロッパに対して関税を引き上げ、中国とヨーロッパは報復する、と考えている。しかし、中国とヨーロッパは互いに関税を引き上げない。

その場合、外国の消費者と生産者には、アメリカから去って、多様化する選択肢が多くある。例えば、中国の生産者はアメリカから買わずに、ヨーロッパからより多く買うだろう。しかしアメリカの消費者と生産者に同じような弾力的選択肢はない。

なぜアメリカは双方と一方的な貿易戦争をしているのか? それはトランプが始めたことだから。トランプ政権は、多くの分野で孤立しており、通商政策はその1つである。トランプでなければ、アメリカ政府は、ヨーロッパとともに、知的財産などに関して、中国に圧力をかけただろう。

トランプが国連で示したように、世界はアメリカを文字通りに笑っているのだ。もちろん、アメリカを信頼する国はない。むしろ、アメリカと関わらないように苦労している。

PS Sep 27, 2018

Chinese Reform During a Trade War

ANDREW SHENG, XIAO GENG

さまざまな自国の改革の一部として、知的所有権のルールを整備することで、中国は国際的なルールに基づく秩序を支えることになる。

VOX 27 September 2018

Three tariff lessons from US interwar history

Eric Bond, Mario Crucini, Tristan Potter, Joel Rodrigue

NYT Sept. 27, 2018

Japan’s Embrace of Bilateral Trade Talks With U.S. Spares It From Tariffs

By Motoko Rich


 グローバリズム批判

PS Sep 21, 2018

The Evolution of Globalization

ERIK BERGLÖF

貿易や資本移動が自由化されて、新興市場と発展途上諸国は取り残されることを恐れた。しかし、その後、逆のことが起きた。先進経済の行方、多角制度の動揺が懸念される。

Richard Baldwin, The Great Convergence: Information Technology and the New Globalization, Harvard University Press, 2016

François Bourguignon, The Globalization of Inequality, Princeton University Press, 2015

Kemal Derviş and Ceren Özer, A Better Globalization: Legitimacy, Governance, and Reform, Center for Global Development, 2005

Stephen D. King, Grave New World: The End of Globalization, The Return of History, Yale University Press, 2017

Branko Milanovic, Global Inequality: A New Approach for the Age of Globalization, Harvard University Press, 2016

Dani Rodrik, The Globalization Paradox: Democracy and the Future of the World Economy, W. W. Norton & Company, 2011

Joseph E. Stiglitz, Globalization and its Discontents, W. W. Norton & Company, 2002

Joseph E. Stiglitz, Globalization and its Discontents Revisited: Anti-Globalization in the Era of Trump, W.W. Norton & Company, 2017

グローバリゼーションの不安について2002年に出版されたJoseph E. Stiglitzの本は、ノーベル経済学賞をすでに受賞していたエコノミストが国際的な注目を集め、ロックスターのような有名人にした。2017年に、彼はその後の変化を加えて、最初の本を再考している。

アジア通貨・金融危機、ソ連崩壊の時代と、その後、911テロ、リーマンブラザーズ倒産を経た現代とは、世界が大きく変わった。反グローバリゼーションの連携は変化した。貿易協定で不平等が拡大し、職場が失われるという不安、環境破壊が注目された1990年代から、トランプのように、職場、貿易、不公正、に注目するようになった。アメリカは世界における地位、特に、中国に対して、地位が低下することを恐れており、環境破壊の関心は失われた。

Stiglitzは、富の分配、経済政策の効果が重視されるようになった、と指摘する。エコノミストたちは、機会の不平等、人々が経済に参加しているプロセスを考えている。以前と比べて、グローバリゼーションが発展途上国にプラスの影響を与えたことが認められている。

François Bourguignon、あるいは、Branko Milanovicの研究が、国際間、国内で、分配と不平等が変化したことを示す。発展途上諸国の中から新興市場が成功し、アジアとアフリカの対照が顕著になっている。

Brexit国民投票やトランプの大統領選勝利は、グローバリゼーションへの新しい不満が政治に及ぼす影響を示した。

Dani Rodrik 、あるいは、Kemal Dervişの研究は、グローバリゼーションの管理を改善する方策を考察した。しかし、国際社会の合意や国際機関の改善は進まない。ブレトンウッズ合意やプラザ合意の示したような、国際協調による集団的解決策は大きく後退してしまった。

NYT Sept. 22, 2018

We Were Making Headway on Global Poverty. What’s About to Change?

By Bill Gates and Melinda Gates

The Guardian, Wed 26 Sep 2018

The truth is that Trump has a point about globalisation

Larry Elliott

かつては3年ごとに、IMFと世界銀行の総会がワシントンで開催され、加盟国の財務大臣と中央銀行総裁が集まっていた。2000年のプラハ総会を反グローバリゼーションの暴徒たちが占拠して以来、抗議活動を避けて、遠方で開催されるようになった。シンガポール、トルコ、ペルー。

今年の総会はインドネシアのバリで開催されるが、騒ぎはないだろう。しかし、もはや真の脅威はモロトフ・カクテルを投げるアナーキストたちではない。会議の内側に脅威はある。ドナルド・トランプ大統領は、IMFや世銀のような国際機関に火炎瓶を投げている。

「われわれはグローバリズムのイデオロギーを拒否する。われわれが称えるのは愛国主義の原理だ。」と、アメリカ大統領は国連総会で演説した。IMFのメッセージはこうだ。貿易障壁を破棄し、国境線に関係なく資本移動を許し、多国籍企業に対する政府の規制を止めることが、繁栄への道である、と。しかし今、世界最強の男は異論を唱える。グローバリゼーションが生じた経済・社会の病状を治癒するのは、唯一、国民国家だけである。トランプの演説は指導者たちの失笑を買ったが、真実は違う。彼に賛同する者は増えている。

世界の経済大国として、中国は国民国家を否定しなかった。グローバリゼーションに関して、習近平とドナルド・トランプは逆の姿勢を示すが、中国の過去40年に及ぶ驚異的な成長は、グローバリゼーションの教科書とは反対の行動を取った結果である。かつて西側諸国も、第2次世界大戦後の数十年間、資本を規制し、移民を管理し、貿易制限も慎重に扱った。国内の完全雇用や生活水準の向上を重視し、必要なら貿易の制限したのだ。

国民国家は消滅する、という主張は3つの議論から成る。1.財、サービス、人、資金のグローバルな移動を制限することは非効率である。その障壁を破棄すれば成長が高まる。2.政府はグローバリゼーションに逆らえない。市場のパワーは、あたかもハリケーンやブリザードと同じ、自然の猛威である。3.現代の資本主義は超国家的であり、国民国家は時代錯誤だ。経済がグローバル化する以上、政治もグローバル化する。

しかし、成長は弱く、純粋な市場など存在せず、それは政治的決定がもたらしたものだ。グローバリゼーションは、労働に対する資本の優位を広めた。明らかに資本市場が個々の政府を制約し、好ましいグローバル・ガバナンスを築いた。EUでも、IMFでも、それを動かすのはグローバリストたちだ。

国民国家は完璧ではないが、既存のモデルが失敗したとき、人々はその代替を求めた。経済安全保障について、自分たちの声を反映させるよう求めている。特に、中道左派政党はこれに失敗し、人々は別の運動・政党を支持するようになった。

PS Sep 27, 2018

The Restructuring of the World

MICHAEL SPENCE


 民主主義の挑戦

NYT Sept. 21, 2018

Democracy Will Still Surprise Us

By Roger Cohen

アテネの民主主義は、男性のみで、普通選挙とは程遠い。それでも、アテネの夜明けに浮かぶ白い城壁を観ると、人類の政治システムとして、投票を通じた市民の権力行使を許す試みが1000年を生き延びたことに、感慨を覚える。

民主主義は何度も失敗し、なお挑戦し続けている。

最善の民主主義では、自由な市民たちが共通の運命を決定する過程に参加する。しかし最悪の民主主義では、市民の紐帯が腐食し、権力は少数者に帰属し、誇大表現が当たり前になり、嬌声を上げる群衆の中で、寛容さや抑制は失われてしまう。それはプーチンのような専制支配者にふさわしい。

民主主義は危機において支持される言葉だ。各地の自由を求める声は続いている。しかし、西側民主主義は動揺している。富を集中し、不正義をもたらしている。ゲーテのファウストのように、技術は矛盾した魂を持つ。

現代はグローバルな直接民主主義の代である。Facebookには月に22億人の利用者がいる。リベラルはもっと楽しく、愛国的な姿勢を持つべきだ、とポーランドの社会学者Karolina Wiguraは考える。リベラルは退屈だ、と思われている。ハーヴァード大学のYascha Mounkは、反民主主義の不満を軽視してはならない、と言う。

真実がどうなるのか、ポピュリズムの傲慢さがどうなるのか、心配だ。トランプの道徳破壊が腐食を広げ、アメリカの言葉の価値が失われ、自由世界をつなぐ接着力を失うことが心配だ。

しかし、私は楽観論者だ。民主主義は堅固である。人類が自由を求める以上、民主主義のシステムこそが最善だ。

NYT Sept. 24, 2018

The Best Way for Democrats to Win Working-Class Voters

By Matt Morrison

The Guardian, Tue 25 Sep 2018

Labour backing a second referendum shows democracy is working beautifully

Zoe Williams

FT September 27, 2018

How social media exposed the fractures in Brazilian democracy

Joe Leahy and Andres Schipani in São Paulo

FT September 27, 2018

The case for publicly enforced online rights

Evgeny Morozov

デジタル技術に依拠した世界では、評価が重要になる。信頼できるという評価を得ることは、相互の情報交換や、ソーシャル・ネットワークにおける質の問題になる。

現実世界の、社会保障や教育へのアクセスが保障された市民権の概念と違って、デジタル世界は、まったく異なった私的なメカニズムに依拠している。民主的な権利を守るためには、その私的な情報交換を信頼できるものに強制する主権者が求められる。

階層性や社会的差別を否定する、インターネットのユートピアはどうなったのか? しかし、分断された現在のデジタル世界より、中国のような「社会的信用」の評価システムの方が優れている。その国家監視体制を嫌うとしても、資格や手続きを検証するシステムは欠かせない。さもなければ、巨大インターネットの大貴族たちに支配されるだけだ。


 朝鮮半島の核と政治

NYT Sept. 21, 2018

Kim Jong-un Has a Dream. The U.S. Should Help Him Realize It.

By John Delury

FT September 23, 2018

Grounds for hope, as well as scepticism, on the Korean peninsula

韓国のムンジェイン大統領は北朝鮮の民衆に朝鮮半島統一を呼びかけた。金正恩が、これまでと全く異なるタイプの北朝鮮指導者であることは明らかだ。彼は改革、近代化、非核化を公言した。

彼らの約束が本物かどうか、トランプが第2回目の首脳会談で確かめる価値はある。

FP SEPTEMBER 25, 2018

Pompeo’s New North Korea Envoy Wades Into Diplomatic Minefield

BY ROBBIE GRAMER


 Brexitの最後の妥協

NYT Sept. 22, 2018

Britain Stumbles Toward Disunion

By The Editorial Board

Brexitが簡単だとは決して予想していなかったが、その期限が近づくにつれて、離脱交渉は一層心を砕く、毒々しいものになっている。

今週の初め、EUは、メイの妥協案が機能しない、と宣言した。今月後半、メイは保守党に対して、その提案を擁護する予定だ。しかし、強硬な離脱派はそれを受け入れられないと言う。

フランスのマクロン大統領は、2016年の国民投票で離脱派が勝利したのは、離脱を「簡単だ」と言ったからだ。彼らは「嘘つき」だった、と言う。

多くの保守党議員は、劇場風強硬派のジョンソンも、古風な社会主義者のコービンも、権力を握るとは決して考えたくない。メイの妥協案が何であれ、彼らはそれを支持するだろう。EU内にも、ハンガリーのオルバンのようなイギリスの離脱についての同情派が、マクロンの強硬策に反対している。

イギリス政治家の好む他の選択肢は、国民投票をもう一度することだ。しかし、その結果は予想できない。離脱が何の痛みもない、という欺瞞を維持することはできず、せめてダメージを減らすことである。

The Guardian, Sun 23 Sep 2018

The Salzburg debacle makes the choices starker for Mrs May – and for Mr Corbyn

Andrew Rawnsley

FT September 23, 2018

No-deal Brexit is the most likely outcome of the Salzburg summit

Wolfgang Münchau

NYT Sept. 26, 2018

Is Merkel to Blame for Brexit?

By Jochen Bittner

イギリス国民が移民を規制するためにEU離脱を選択し、ドイツも難民危機に苦しんだ。メルケルはイギリスと和解するときだろう。移民の上限を認めることだ。

FT September 27, 2018

A timeout is Britain’s best Brexit option

Philip Stephens

FT September 27, 2018

Chilling predictions confuse the Brexit picture

Chris Giles


(後半へ続く)