(前半から続く)
● 気候変動と政治
FT September 23, 2018
Shinzo Abe: Join Japan and act now
to save our planet
Shinzo
Abe
西日本を襲った前例のない豪雨と地滑りで住民200人以上が犠牲になった。過酷な熱波によりおよそ160人の死者が出た。熱波はヨーロッパやアメリカ西部でも起きたし、ハリケーン、台風がアメリカやフィリピンを襲った。
温暖化は海洋の二酸化炭素濃度を増やし、酸化して、浄化力を奪う。プラスチック汚染も広がっている。国際社会は温暖化対策を取ってきた。しかし、温暖化のスピードは予測を超えている。
すべての国が緊急に対策を取るべきだ。発展した諸国は、途上諸国への支援を、約束した通り実行しなければならない。それと並行して、新しい成長、新しいアイデアを広めるべきだ。
日本はウルトラバッテリの開発、それによる分散化、デジタル化、そして、水素エネルギー社会の実現を目指している。環境関連の企業にグリーン・ボンドを発行させ、年金基金を投資している。
製造業の温暖化ガス排出を減らす生産方法、過剰な鉄鋼生産を削減するべきだ。エネルギー転換に投資し、シェリング・エコノミーを推進する。
国連の持続可能開発目標や、東京で開催するアフリカ開発国際会議は、それを促進するのだ。
PS Sep 24, 2018
The Case Against Climate Despair
CARL
BILDT
アメリカのトランプ大統領はパリ協定を離脱したが、世界はますます温室効果ガスGHGの排出削減が必要だと確信しつある。
多くの報告書が目標達成に関して絶望的な状況を描いている。しかし、そうした結論は危険なだけでなく、間違っている。今月、カリフォルニア、サンフランシスコで開催されたthe Global Climate Action
Summitは、脱化石燃料の技術に飛躍的な前進があった、というthe Exponential Climate
Action Roadmapに注目が集まった。
太陽や風力による発電は4年ごとに倍増しており、このまま増加すれば、2つの再生可能エネルギーだけで、2030年までに、世界の電力の半分を供給できる。しかも、新しい技術や投資はそれをさらに上回って前進しそうだ。今後15年間で、推定90兆ドルが新しいインフラに投資される。
新しいアプローチは、エネルギー、産業、建築、都市計画、交通、農業、森林について実施され、GHG排出量を2030年までに半減するだろう。しかし、そのためには意思決定の広範な連携が必要だ。幸い、政府や主要企業はこうした問題に指導力を示し始めた。
希望はある。
FP SEPTEMBER 26, 2018
The Paris Accord Won’t Stop Global
Warming on Its Own
BY
RICHARD SAMANS
● アメリカ・ファースト
NYT Sept. 23, 2018
‘America First’ Has Won
By
Robert Kagan
トランプ大統領は多数の支持を得ていない。しかし、「アメリカ・ファースト」アプローチは世界で支持されている。トランプがカナダ、メキシコ、ヨーロッパと貿易戦争することに反対する声は上がっていない。次の大統領がだれであれ、アメリカは長い貿易戦争に入ったのだ。結局、ヒラリー・クリントンもTPPの支持を選挙戦では取り下げた。自由貿易のコンセンサスなど存在しない。
トランプの移民政策は共和党に支持されているが、民主党政治家でもさらに多くの移民をアメリカは歓迎する、と公約することはない。1920年代と同様、孤立主義と反移民感情がアメリカ第一主義である。
グローバルな安全保障におけるアメリカの役割も、両党は縮小することで一致する。ロシアとの和解、北朝鮮との取引、中国との貿易戦争と、それにもかかわらず軍備拡大への反対。政治家たちはトランプを支持している。リベラルな秩序を称賛する民主党議員たちも、アメリカが海外で軍事的関与を縮小することに賛成だ。
旧同盟諸国はアメリカの軍事力に頼るべきではない。自分たちで防衛するべきだ。1930年代に、イギリスはダンチッヒの防衛を拒み、アメリカも今、台北やリガを防衛するために兵士を死なせたくない。キエフやトビリシなど、言うまでもない。オバマの国際主義は民主党の基盤から見ても過大であった。トランプの、より狭い、一国主義の、ナショナリスト・アプローチは、オバマの世界市民主義より、アメリカ国民の感覚に近い。
われわれが観ているのは、単なる発作や、アメリカ外交の新方針ではなく、むしろ伝統への回帰である。それは、ファシズムや軍国主義が世界を席巻している間、わきに控えていただけだ。
FP SEPTEMBER 24, 2018
Socialists and Libertarians Need an
Alliance Against the Establishment
BY
STEPHEN M. WALT
アメリカは新しい外交政策を必要としている。しかし、だれがそれを形成し、実行するのか? 民主的な社会主義を唱える左派、リバタリアンたちの右派、その中心にいて外交政策を担うリアリストの連合は実現するだろうか?
過去4分の1世紀、アメリカ外交政策は、リベラルな国際主義者とタカ派のネオコンの緩やかな連携で動いてきた。両者はアメリカ例外主義を固く信じている。すなわち、アメリカは欠くべからざる大国であり、世界全体に積極的な指導力を発揮しなければならない。圧倒的な軍事的優位を好み、リベラルな諸価値(民主主義、人権、法の支配、市場)を世界の隅々にまで広めるという目標に賛同する。国際機関の役割に対して意見が対立しても、共和・民主両党の大統領において広く連携を組んだ。
残念ながら、こうしたエリートたちが支持する外交は致命的な失敗に至った。彼らが共有するリベラル・ヘゲモニーの戦略は、より調和した、繁栄する世界を創り出せなかった。代わりにそれは、多くの破たん国家、大国間関係の悪化、グローバルな不況、民主主義への不信、グローバリゼーションへの排外主義的反動、をもたらした。
多くの批判的な評論が現れたのは当然だ。中でも、the Atlanticに載ったPeter
Beinartの論説、the New York Times に載った歴史家Daniel Bessner (the
University of Washington)の論説がある。しかし、十分に広範な連携を組み、一貫した外交政策を立てられるか? その候補としては、反戦主義的な進歩派、軍事的抑制とオフショアバランシングを大戦略とするリアリスト、アメリカの帝国主義的傾向を嫌うリバタリアン、である。
FP SEPTEMBER
27, 2018
Taming the
President of Pride
BY ALISON MCQUEEN
● イギリス労働党の政策
The Guardian, Mon 24 Sep 2018
Can Labour forge a new, 21st-century
socialism?
John
Harris
The Guardian, Mon 24 Sep 2018
The Guardian view on Labour’s
economic ideas: radical and necessary
Editorial
FT September 24, 2018
Economics for the Many, edited by
John McDonnell
Review
by Chris Giles
イギリス政治における新しい左派の経済宣言を明確にする必要は高まっている。10年前の世界金融危機以後、イギリス経済の成長力は乏しい。
実質賃金は停滞し、生産性上昇も弱く、政府サービス支出は大幅に削減され、多くの家庭が良い仕事を見つけられず、手が届きそうな家もない。現代の資本家たちについて、しばしばその道徳の欠如が非難される。税金を回避することに努め、消費者から法外な金を取ったり、被雇用者の賃金を下げたりして、自分たちのボーナスを増やそうとしている、と。
残念ながら、労働党の陰の蔵相John McDonnellが編集した新著Economics
for the Manyはその答えを示していない。これは左派の思想家や労働党コービン党首の支持者のグループが書いた論文を集めたものだ。この論集に含めた様々な章の選択には説明がない。コービン主義の思想の一部である、と言う。ラディカルな公平性、持続可能な社会、そこにおいてはすべての者が富を分かち合う、そういう計画を目指している。企業の所有、金融部門の短期主義、グリーン投資、地方分権。しかし、そこには知的な一貫性がない。
ある章は正統的なマクロ経済学によって予算を示し、他の章は「財政ルールに関して際限なく懸念する人々」が「危険な結果」をもたらした、と批判する。EUから離脱して自由を得ることを熱烈に歓迎する章もあれば、ヨーロッパの共通法人税制に向けた欧州連邦の計画を支持している。また、不平等が大幅に増大したとか、イギリスの増大する債務負担が政府支出を妨げた、といった事実誤認がある。労働党内のネオリベラリズムやニュー・レイバーと対立するコービン派の党派争いが顕著だ。
その欠陥を知ったうえで、新しい左派の発想を知るには重要な本である。
FT September 25, 2018
Labour’s economic plans need more
business input
FT September 26, 2018
Jeremy Corbyn’s effective rhetoric
for the many, not the few
Sam
Leith
労働党は、一方で、無料医療保険制度を「純粋な社会主義」と称えたAneurin Bevanを引用して、ラディカル派の信頼を維持し、他方で、ラディカルを新しいコモンセンス、新しい中央勢力として提示した。
The Guardian, Thu 27 Sep 2018
Could Corbyn solve Brexit and save
Britain? I can almost imagine it now
Martin
Kettle
● 国連
FT September 24, 2018
At the UN, America first becomes
America alone
FP SEPTEMBER 24, 2018
Peacekeeping Can’t Be Done on the
Cheap
BY
ANTÓNIO GUTERRES
国連の平和維持活動は国際主義の具体的な例である。それはグローバル社会が創造性とプラグマティズムを駆使して解決すべき問題である。非常に危険な活動であること。世界からの支持が必要であること。平和維持軍の兵士による性的な収奪があったこと。
FP SEPTEMBER 26, 2018
How to Fix the U.N.—and Why We
Should
BY
RECEP TAYYIP ERDOGAN
安保理は平和を実現することに失敗している。総会を通じて、アメリカが創った国連を改革せよ。
● オバマ政権の金融危機対策
PS Sep 24, 2018
When Hindsight Is Not 20/20
LAWRENCE
H. SUMMERS
オバマ政権に対するRob Johnson and George Sorosの非難は不当である。政府が何でもできるわけではないし、Sorosは市場で活動する民間の投棄者であった。銀行への資本注入はオバマ政権の発想にあった。社会主義だという意味で拒否したことはない。銀行の株価が旧来していた理由である、巨額のモーゲージ債券を政府が購入した。イギリス政府の経験は比較できない。
後から見れば、もっと良い政策が選択できたかもしれない。その反省をすることは重要だ。
● 食事の配給アプリ
FT September 26, 2018
The food app revolution will eat its
drivers
John
Gapper
タクシーよりも、食事を届けるアプリの普及の方が、さらに大きな影響を社会に及ぼすだろう。
● トランプとイラン
FT September 26, 2018
Donald Trump’s lack of a Middle East
strategy benefits Iran
David
Gardner
● 中国の外交・介入主義
FP SEPTEMBER
26, 2018
Chinese
Tourists Are Beijing’s Newest Economic Weapon
BY NITHIN COCA
FT September 27, 2018
The boon of China’s entry into
Africa comes with a warning
David
Pilling
PS Sep 27,
2018
The China
Backlash
BRAHMA CHELLANEY
中国は、ハーヴァードのGraham
Allisonが言うように、「世界でもっとも保護主義的で、重商主義的で、略奪的な、大国経済である。」
しかし、マレーシアのマハティール首相は北京を訪問し、中国によるインフラプロジェクトと、その返済不可能な債務を批判した。マハティールは「新しい植民地主義」として警告した点で、その大胆さは特別なケースだが、中国の重商主義的貿易や投資、融資に関して反対する声が広がっている。
特に、昨年12月、スリランカがその戦略的な港湾Hambantotaを、中国が建設した際の債務を支払えず、99年間、中国に貸し出す契約に合意したことは、衝撃であった。他国にも、中国のインフラ投資が「債務の罠」に陥る危険を強く意識させたのだ。BRIは、多くの国Bangladesh,
Hungary, and Tanzania, MyanmarそしてPakistanでも見直しが求められている。
中国は急速に成長して豊かになった。それは国際貿易のルールを偽るものだった。今では多くの国が、中国製品をダンピング提訴や禁止的な関税によって阻もうとしている。もはや一帯一路が単純に歓迎されることはない。
中国にとって国際貿易の利益を失うことは許されず、中国がそのルールを免れることもできなくなった。
● IMFと国際協調
PS Sep 27,
2018
Managing
the Global Factor Better
MOHAMED A. EL-ERIAN
「グローバル・ファクター」が各国のファンダメンタルズを超えて浮動性を高めている。それは国内政策を困難にし、政治の分極化、社会の分断状態を強めている。
トランプの「アメリカ・ファースト」アプローチの影響だけでなく、アメリカ連銀が金融政策を正常化するだろう。他方で、世界の主要な経済には成長のばらつきがある。それは新興市場も、それ以外の主要経済にも、重大な経済管理についての挑戦を意味する。
IMFは、1.グローバルな流動性の変化に「砂を撒く」。2.各国の政策について波及効果を監視する。3.率直な経済政策フォーラムを組織する。
IMFが加盟諸国の声をよく聴き、効果的な対応を取るなら、IMFこそグローバルな政策協力の推進者になれるだろう。
FT
September 28, 2018
Dollar dominance prevails despite
global efforts
Gillian
Tett
なぜドルの世界金融市場における支配的な地位は失われないのか?
● アメリカ最高裁とカバノー
FT
September 27, 2018
Trump
makes American comedy great again
Henry Mance
FT
September 27, 2018
The deluge
of vitriol swamping American politics
Edward Luce
ドナルド・トランプは最高裁判事候補にカバナーBrett
Kavanaughを指名した。それは非常にうまくいく。それが理由だ。
アメリカのシステムは激しい非難の中で解体しつつある。憲法は党派を形成しないようにデザインされた。しかし、今、立法府はますます憎しみ合う2つの党派によってもてあそばれている。
バラク・オバマが当選する前は、アメリカの党派主義を嘆く声が広がっていた。しかし、Newt
Gingrichが下院議長になって、それが変わった。ギングリッチは党の締め付けを強化した。党を超えた交流はなくなった。
オバマはそれを批判して当選したが、彼の当選後、その傾向は強まった。共和党が選出されたアメリカ大統領の国籍を疑うというのは、限度を超えた運動だった。トランプはこの「バーサー」運動を利用した。そして民主党の側でも、次第に、共和党に対抗する破壊的な主張が強まった。
政治の勝者がすべてを得る以上、勝つことだけが優先された。政府の2部門が毒に汚染され、司法が最も政治的ではないはずだった。それこそがトランプによるカバナー指名の間違っている点だ。
10代の頃の性的暴行が疑われることを無視するとしたら、それは怠慢であろう。しかし、共和党は承認する。上院でも、裏切り者になることを恐れ、だれもカバナーを否認することはないだろう。
アメリカの党派はイデオロギーで対立しているのではなく、生物学で対立する。それは妥協の余地がない。アイデンティは分割できない。人種や性的指向に関する論争が繰り返される。
セラピストは、結婚が失敗に終わるケースには、互いを侮辱するだけになる、引き返せない時点がある、と言う。アメリカは以前もこうした離婚に苦しんだ。1860年代の南北戦争だ。まさか歴史は繰り返さないだろう。しかし、無視するには難しい類似性がある。
● アルバニア再興
PS Sep 27,
2018
The
Albanian Miracle
RICARDO HAUSMANN
5年前、アルバニアは最悪の状況だった。ギリシャとイタリアがユーロ危機に陥り、アルバニアへの送金と資本流入が減少した。財政赤字はGDPの7%に達し、大部分の返済が遅れた。国際金融市場のアクセスを失い、国内金利は跳ね上がった。
加えて、電力供給会社が機能的にも財政的にも破たんした。政府と電力会社の債務返済が遅れて、銀行システムに不良債権が増加した。破局が迫っていた。
現在はどうか。経済は4.2%で成長している。農産物、鉱物、エネルギー、旅行サービス、ビジネス・サービスの2ケタ成長がけん引している。アルバニアの金利は記録的な低水準で、通貨価値も高い。かつて独裁者の下で、ヨーロッパの北朝鮮と呼ばれたが、アルバニアの1人当たりGDPはドイツの4分の1に達した。
エコノミストたちはさまざまな失望を生む結果に責められ、IMFや世界銀行のような国際機関も助言する諸国の乏しい成果に悩まされている。アルバニアの成功は注目に値する。
成功の秘訣は何か? 第1に、2013年9月に首相となったEdi Ramaは、即座にIMFと協議し、金融支援と財政再建案を開始した。3年の計画は成功し、債務のGDP比率は低下しつつある。
財政再建の間は、他の景気刺激策が必要だ。特に輸出である。ボトルネックを解消し、機会をつかむ不断の努力によって、輸出は拡大しつつある。ビジネス指標に従うのではなく、アルバニアは問題重視で繰り返しの改善作業を採用した。問題をモニターし、原因を特定し、解決する方策を工夫する。
農業ではアグリゲーターが発展した。それは小規模農家を集めて、優れた技術を伝え、利益の出る市場を教える。野菜の輸出がブームになった。エネルギー部門では、政府が、電力を盗む市民の行動を変える、という非正統的戦略で成功した。製造業や観光業のコンサルタントが改善する分野を特定した。アルバニアは歴史的な都市の再生に投資してきたが、アグロ・ツーリズムの可能性を持つ100の村にも投資している。
大使たちは、一致した戦略の下、直接投資を誘致するために企業と直接に接触している。政策担当者たちは海外に流出したアルバニア人と連絡を取り、人材、投資、市場、ビジネスの源泉としている。政府が問題や弱点を理解し、目標を定めて、その達成のために不断の努力を重ねるとき、IMFや開発機関は金融支援を生かすことができる。
まったく絶望的に見えたアルバニアが、われわれの希望の源になった。
● イエメン内戦
FP SEPTEMBER
27, 2018
America Is
Not an Innocent Bystander in Yemen
BY STEVEN A. COOK
● ASEANの価値
YaleGlobal,
Thursday, September 27, 2018
Asian
Values
Humphrey Hawksley
西側民主主義の将来に対する疑問と、中国とロシアの指導する権威主義体制の対抗は、多くの政府に、どちらかを絶対とするのではない、別の何かを探求させている。ASEANが独自の価値を示さなければ、イデオロギーを含む体制間の冷戦的な対立によって分裂するだろう。
アジア諸国がめざす価値とは、1.中国の台頭を封じ込めることではなく、北京やワシントンの条件ではない、自分たちの条件で発展を目指す。2.今は欠けている、地域的な目標の感覚を持つ。それはアジアの諸大国、すなわち、中国、インド、日本の緊張緩和を促す。
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The Economist September 15th 2018
A manifest
Britain and
the European Union: Selling Chequers
The Supreme
Court: Weak is strong
Emerging
markets: Lessons from Lusaka
America’s
Supreme Court: And Brett makes five
Politics and
the law in India: Conspiracy theories
Separatism in
Hong Kong: A slippery slope
Zambia: End of
the road
The Democratic
Republic of Congo
Venezuela: The
half-life of a currency
(コメント) リベラリズムを再建するマニフェストを模索します。穀物法の撤廃は、その時代の変化を「自由貿易」が示していたと思います。今、リベラリズムの大義は、もっと多くのことを含むでしょう。移民についてのルールを見いだし、デジタル大企業や国際秩序(戦争と平和)の市民社会における合意を模索します。
香港、ザンビア、コンゴ民主共和国、ジンバブエ。いずれも著しい失敗ケースです。なぜか?
しかし、もしかするとアメリカも、そうなのでしょうか? 最高裁判事候補としてカバノーが公聴会に現れ、彼の性的暴行疑惑を証言する女性と対峙しました。
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IPEの想像力 10/1/18
アメリカABCニュースを衛星放送で観ました。最高裁判所の判事は、トランプと共和党によるカバノーを指名・承認して、司法を保守派の多数で、半永久的に支配しようとしています。
共和党議員は、・・・この公聴会を、候補者指名を妨害する民主党による陰謀、著しい党派主義、政治介入だ、と非難します。カバノーは十分な資格のある候補者であり、その人物に対する「証拠もない」嫌疑は、指名手続きを遅らせる理由にならない。
民主党議員は、・・・カバノーの党派性(共和党に偏った言動)は問題だ。また、たとえ政治姿勢を持つ場合でも、感情的にならない、公平な姿勢を判事としては示すべきだ。カバノーは、とても最高裁判事として公正な判断ができるとは思えない。こうした人物に最高裁の権限を委ねるべきではない。性的暴行を訴える証人の話は十分信頼できる。自分の訴えが正しいことを証言できる他の人物たちの名前を挙げて、捜査を要求している。カバノーは、いかなる質問にも答えず、捜査を要求せず、逃げるだけだった。
最高裁や司法に関しては、「自分が有罪になっても恩赦できる」とトランプ大統領が発言したことに関係するでしょう。
斎藤彰「トランプの私的醜聞とロシア疑惑の意外な接点」(WEDGE
Infinity,2018年8月6日)を読みました。アメリカでは、トランプ大統領自身に対する捜査が進行しています。いわゆるロシア疑惑です。選挙運動においてロシア政府・プーチンの情報操作や介入を、トランプ陣営は知っていたのか? クシュナーはロシア側と共謀したのか? 情報や資金のつながりがあったのか?
トランプが性的関係を持っていた元ポルノ女優の告発で、トランプの顧問弁護士の部屋が捜索されました。その際に、多くの証拠が見つかり、ロシア疑惑を深めたということです。こそ泥を捕まえたらCIA工作員で、盗聴事件、ニクソン大統領の辞任へ至ったウォーターゲート事件と似ています。
ロシア疑惑は大統領に関わっており、司法の独立性を示すため、モラー特別検察官が捜査しています。特別検察官による捜査を支持したローゼンシュタイン司法副長官を、トランプ大統領は解任するかもしれない、と言われます。ローゼンシュタインは、大統領の権限を停止することについても検討した、という報道があり、トランプは、こうした司法を何としても屈服させたいのです。
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沖縄知事選挙で玉木デニー氏が当選したと知って、私は、NHKの報道は間違っている、と思いました。玉木氏については翁長氏による指名だけが紹介され、佐喜眞淳氏の主張が具体的で、説得的であり、基地問題で政府との対立を超えて、経済問題や若者のことを考えている、と報道していたからです。
当然、沖縄選の結果を受けて、安倍首相は政府の姿勢を質問されました。首相の答えは、選挙民や記者の質問に答えず、美辞麗句を返すことでした。「真摯に受け止める。」「沖縄の振興」「基地負担の軽減に努める。」
観光客が増えても、沖縄の生活は改善しない。公共工事を約束することで票を増やせる、という政府・自民党の発想が間違っている、という意見を読みました。
幼稚園の上を米軍機が飛ばないように約束してほしい、と要求した。しかし、米軍からの回答を待っている、と繰り返した官僚の態度に、子供の親として強い不満を覚えた、と女性は語っていました。彼女はその後、立候補しました。
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最高裁判事の候補者指名も、沖縄米軍基地・移設問題も、政治が解決しなければならない問題を裁判所が判断するように求められます。司法の独立性が認められているとしても、さまざまな形で政治は介入できます。政治が分離しておくことを好ましいと考えなければ、政治の混乱がそのまま司法に及ぶのです。
アメリカのキリスト教・保守派は、裁判所が堕胎を合法と認めたことに強く反発しました。この理由だけで、共和党の保守派候補を支持し、トランプを支持したとThe
Economistの記事は指摘します。同性婚も、銃規制も、かつての奴隷制、そして移民も、裁判所で問われます。
日本では、原発問題、米軍基地問題がそうです。
政治が機能せず、党派対立がメディアや司法にまで及ぶとしたら、民主主義国家ではなく、破たん国家です。Brexitが穀物法撤廃におけるイギリスの政党政治再編成を、トランプと共和党による最高裁の支配がアメリカ南北戦争を、連想させるのです。
The Economistの特集記事はリベラリズム復興・再宣言でした。そのすべてには賛同しませんが、リベラルな社会政治モデルを問い直す真摯な姿勢が政治家たちに必要です。
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