IPEの果樹園2018

今週のReview

9/24-29

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核のバズーカ ・・・リーマンショックの教訓 ・・・世界貿易システムと貿易戦争 ・・・非リベラルな民主主義 ・・・21世紀の地平線 ・・・安倍政権の時代 ・・・Brexitの混乱 ・・・暴力と民主主義 ・・・政治家の嘘と不倫

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 核のバズーカ

FP SEPTEMBER 12, 2018

Point and Nuke

BY JEFFREY LEWIS

アイゼンハワーが第34代大統領として就任式の宣誓をした1953年に、アメリカの核弾頭保有は1000に近かった。それから8年後に、彼が退任するとき、その保有数は約2万発に増えていた。このレ潁川の軍拡が生んだ1つの奇妙な成果が核のバズーカであった。たった2人の兵士により核兵器による破壊がもたらされる。

1950年代には、アメリカの軍事計画において、核兵器は単に敵を抑止する戦略的なものではなく、敵対者に対する攻撃手段であった。アイゼンハワーは、核兵器を、通常兵器に変わる安価な代替物と考えていた。

就任後すぐに、アイゼンハワーは、交渉が決裂した場合、朝鮮半島で核兵器を使用する決断をした。当時、アイゼンハワーは、米軍が核戦争でもよりうまく生き延びる、と考えていた。彼の日記には、「今や、世界中に及ぶ軍事的な関与を(軍事国家に転換することなく)維持するのは、核兵器を保有し、必要なときに使用する意志を持つのでなければ、不可能だ。」

核兵器の実戦における利用は、Davy Crockettを生んだ。それは、数マイル離れて、導火線なしに核兵器を発射する銃である。その呼び名は19世紀アメリカの開拓者の名前で、1954年のディズニー映画に由来する。2-3人の兵士が持ち運んで、3脚から発射された。その破壊力は火薬にして20トンないし10トンの規模に制限された。広島・長崎の核爆弾の規模に比べて、ごく一部であるが、侵攻するソ連軍や中国軍を死滅させるには十分だった。

その後、核兵器に関する集団的な認識が変化した。ケネディとフルシチョフとがキューバで対決した危機は世界を恐怖に突き落とした。

多くの人々が、特にヨーロッパで、そこに防衛のため配備される核兵器はソ連にとって重大な脅威となることに注意するようになった。核防衛はもはや防衛ではなくなった。1060年代後半、米軍はDavy Crockettを配備から外した。

しかし、その後も、小規模核はアメリカの軍備に残された。W54は、1980年代に存在した、バックパックの大きさの核地雷である。それは進行するソ連軍を阻止するために、橋や山を崩壊させるためのものだった。ゴルバチョフに対するクーデタとソ連崩壊の可能性が高まってから、ジョージ・HW・ブッシュは、完全ではないが、アメリカの戦術核廃止を決定した。

しかし今、戦術核兵器はニュースに再現している。ドナルド・トランプ大統領が、戦場で使用する2つのシステムを含む、核軍備の見直しを支持したからだ。

だれもトランプに核のバズーカ砲については教えていない。

FT September 17, 2018

A nuclear gamble on North Korea’s Chairman Kim

Gideon Rachman

金正恩は本当に改革派なのか? 非核化と経済成長を望んでいるのか? それは大きな賭けである。トランプは2度目の首脳会談を受け入れ、親しみを込めてTweetした。「ありがとう、キム委員長。我々2人で、世界中の人が間違っていることを、証明しよう。」

今週、ムンジェインは、3日間の南北首脳会談でピョンヤンを訪れた。ムンの前提(あるいは希望)は、トランプとキムの予測不可能性が和平の条件を創り出す、というものだ。過去の朝鮮半島は、和平交渉の失敗が繰り返されてきたからだ。

ワシントンとソウルの懐疑派たちは、ムンが危険なまでにナイーブである、と恐れている。韓国政府は北朝鮮の伝統的なおとり作戦に利用されているだけだ、と。

FP SEPTEMBER 18, 2018

Your Mission Is to Keep All This From Collapsing Into Nuclear Hellfire’

BY JEFFREY LEWIS


 リーマンショックの教訓

The Guardian, Fri 14 Sep 2018 

Ten years after the crash: have the lessons of Lehman been learned? 

Yanis Varoufakis, Ann Pettifor , Mark Littlewood, David Blanchflower, Olli Rehn, Nicky Morgan, and Micah White 

Yanis Varoufakis ・・・少数者のための救済、多数者のためには緊縮。その結果、2007年以来、世界の債務は40%も増えた。

いくつかの銀行を救済して安全にしたことで、リスクはシャドーバンキングに移された。影の銀行取引は、201028兆ドルから、201845兆ドルへ、西側から新興市場へ、移動した。その結果は、トルコやアルゼンチンが示している。要するに、リスクは圧縮されず、見えなくなり、あるいは、分散されたのだ。さらに、2008年に資本主義を救った2大国、アメリカと中国は、その政治が悪化して、再び救済を行えない。

何をすべきか?

1に、グローバルな貯蓄過剰をグローバルなグリーン投資に向けるべきだ。公的投資銀行の多国間パートナーシップで債券発行し、中央銀行が流通市場で支援する。グローバルな貯蓄は、雇用や地域開発、教育・健康、環境、人道的な目的に積極的に投資される。

2に、貿易協定は、貧しい諸国の政府が労働者のための最低生活賃金を設定することを含むべきだ。

3に、われわれは新しいブレトンウッズ合意により、貿易の均衡化と、貿易と資本移動の調整を促し、金融取引を制御すべきだ。貧困を解消し、世界中の周辺化された社会を支援するために、国際的な公的投資ファンドを設けるべきだ。

Ann Pettifor ・・・世界を(金融危機から)安全なものにするには、民主的な選挙で決めた政府がグローバル化した金融システムの運営に責任を持つべきだ。最も重要なことは、国境を超える資本移動、為替レート、信用供与、金利について管理することだ。

規制当局、中央銀行が、グローバル企業の資金移転を監視し、民主的に課税すること、信用供与を監視し、投機的な活動を規制し、金利を管理し、生産的な、長期の投資に、資金が利用できるようにしなければならない。

ケインズは大恐慌の後、こうした教訓を学んだ。

The Guardian, Fri 14 Sep 2018 

The Guardian view on the great financial crash: new thinking needed 

Editorial 

FT September 14, 2018 

A post-crisis cure that has stored up economic pain 

Merryn Somerset Webb 

QEや超低金利を採用したことは正しかったのか? それ以外の選択はなかったか?

QEや超低金利は、どのような副作用をともなったのか? それは富裕層に莫大な富をもたらした。

FT September 14, 2018 

Crisis firefighters still uninterested in fire prevention 

FP SEPTEMBER 14, 2018 

How the Tariff War Could Turn Into the Next Lehman 

BY MICHAEL HIRSH

10年前に、リーマンブラザーズが倒産した。実際の金融危機は、その1年ほど前から始まっていたが、リーマンショックは誰もがその深刻さを知った瞬間であった。

ウォール街と経済を監督する人々は、ポールソン財務長官、バーナンキ連銀議長のように、グローバルな経済システムの複雑さについていけなかった。

10年を経て、金融システムは安定したように見えるが、エコノミストや政策担当者たちは、新しいグローバル危機が同じような形で襲ってくることを恐れている。それは貿易戦争のエスカレーションだ。ワシントンとその主要な貿易相手国との間で報復脱線が始まったとき、国際システムの深い相互リンクに何が起きるのか、だれにもわからない。

1に、米中貿易戦争だ。中国はどのように報復するのか? プリンストン大学のAlan Blinderは、貿易以外の報復ではないか、という。私がこれまで、中国はしないだろう、と言い続けてきた方法だ。すなわち、財務省証券を大規模に売却する。あるいは、経済学とは無関係な分野だ。南シナ海か、北朝鮮に関わる行動だろう。

もちろん、そのような行動は経済的な衝撃をともなう。貿易が妨げられ、アメリカ金融市場が混乱し、恐らく不況が始まる。

よく理解されていない、貿易戦争のもう1つの側面は、グローバル・サプライ・チェーンを破壊することだ。トランプ政権の目標は、明らかに、企業のサプライ・チェーンから中国を外すことだ。

しかし、ノーベル賞受賞者のMichael Spenceが注目するように、この数十年で、ますます多くの発展途上諸国が、かつて先進諸国しか生産できなかった、高付加価値の製品を生産するようになった。この変化は恒久的で、逆転できない。

トランプ政権は、アメリカ企業が効率的なサプライ・チェーンを選択できないような条件を作り、その影響はよくできない。アメリカ企業の効率は低下し、それは物価の上昇になるだろう。

10年前のリーマンショックと現在の貿易戦争とは多くの点で異なる。貿易はGDPのごく一部でしかない。しかし金融市場は、さらに緊密に、高速に、グローバルに結合している。パニックやバブルが起きやすいし、急速に経済を破壊するだろう。

しかし、政府、企業、家計はますます債務に依存している。世界の債務は10年で72兆ドルも増えたが、中国企業の債務膨張がその3分の1を占める。

貿易戦争で、もし中国経済が不況になれば、トランプは喜ぶかもしれない? しかし、それに続く世界不況を、彼が喜ぶことはないだろう。

NYT Sept. 15, 2018

I Came of Age During the 2008 Financial Crisis. I’m Still Angry About It.

By M.H. Miller

PS Sep 17, 2018

Looking Beyond Lehman

LEE HOWELL

債務への依存は増大し、世界金融危機によっても変わらなかった、と専門家たちは警告する。歴史的に見て、株式市場はブームと破たんとを繰り返している。

しかし、一層重要なことは、世界最大の企業が10年前と全く異なっていることだ。市場評価額で観て、2008年にはPetroChina, ExxonMobil, General Electric, China Mobile, and the Industrial and Commercial Bank of Chinaであった。しかし、2018年にはFAANGがその地位を占める。すなわち、Facebook, Amazon, Apple, Netflix, and Alphabet (Googleの親会社)である。

アメリカ連銀は、先月、ジャクソン・ホールにおける定期シンポジウムで、デジタル・プラットホームの支配と「勝者総取り“winner-take-all”」型市場に焦点を当てた。物的な工業製品より、デジタル・ソフトウェアのような物ではない資産が世界経済の成長を主導している。

製品にデジタル技術が利用されることだけでなく、デジタル化はビジネス・モデルの転換、ネットワーク効果や、規模よりも範囲の経済を通じた価値の創造を急速に展開する。デジタル化が求めるのは、資産ではなく、才能である。資本を利用できる量ではなく、スキルの高い、希少な労働力を集めることができるかが、革新、競争力、成長を制限する。

AIと結びついた機械化は労働力に破壊的な効果を生じる。その変化は人類史にかつてなかったことだ。バブルが破裂する「ミンスキーの瞬間」を探すより、この「第4の産業革命」に注目するべきだ。リーマンブラザーズ倒産の最大の教訓とは、技術を人々が力を得るために設計し、利用せよ、ということだ。

PS Sep 17, 2018

A Better Bailout Was Possible

ROB JOHNSON, GEORGE SOROS

ポールソンが7000億ドルのTARPを得たとき、納税者の資金を使って、住宅価格の下がった債務者に債務を減額し、債権を持つ金融機関には資本を注入して株式を取得することが望ましい救済策であった。そうすれば債務者は負担を軽減されて住宅から立ち退くことが避けられ、銀行も救済できただろう。

われわれはサマーズに提言したが、彼はそれが銀行の国有化を意味し、アメリカは政治的に受け入れない考え方だ、と拒んだ。それは間違いだった。税金を使って金融機関だけが巨額の救済を受け、債務者は住宅を失って、その後の長い停滞と政治的な不満が高まった。それに反応するポピュリズムの高揚、トランプの大統領選挙勝利が続いた。

FT September 18, 2018

Preventive measures will not stop the next financial crisis

Axel Weber

NYT Sept. 18, 2018

How the Next Downturn Will Surprise Us

By Ruchir Sharma

リーマンブラザーズ倒産から10年の議論は、なぜ「大きすぎて潰せない」ような銀行ができたか、に集中している。しかし、その論争が見逃している問題は、株式、債券、その他の金融資産を取引するグローバルな市場が、憂慮すべきほどまで、巨大化していた。どのようにしてそうなったのか? である。

低金利の融資が増えたこと、中央銀行が金利を低く維持したこと。金融市場は世界GDP347%まで膨張していた。しかし今、市場はさらに巨大である。世界GDP360%もある。

過去10年間、世界の主要な(米欧中日)中央銀行は、景気回復を目指してそのバランスシートを拡大し、5兆ドル以下から170y等ドル以上にした。こうして新しく印刷された貨幣は、金融市場で行き場を求め、しばしば最も規制の少ない市場に向かっている。

今や銀行融資ではなく、企業の社債発行が重要であり、債券ファンド、年金基金、保険会社のような、非銀行の金融機関がこれらを購入している。中央銀行の金利が低く維持されたため、金融機関は収益を求めて危険な資産、規制のない市場に投資している。例えば、中国の株式、債券、不動産である。それは規制のあいまいな市場でバブルを形成している。

アメリカが金利を引き上げ始めた。金融市場はどれほど巨大化しても、その崩壊が始まれば中央銀行が救済することを知っている。

FT September 20, 2018

How hedge funds keep markets trading in a crunch

Gillian Tett

FT September 20, 2018

The panic over liquidity exacerbated the crisis

From James Marshall, Bangkok, Thailand


 世界貿易システムと貿易戦争

PS Sep 17, 2018

The Global Trade System Could Break Down

ANNE O. KRUEGER

The Guardian, Tue 18 Sep 2018

The Guardian view on US-China trade wars: careful what you start

Editorial

FT September 19, 2018

White House hawks ratchet up trade hostilities with China

James Politi and Demetri Sevastopulo in Washington

FT September 18, 2018

The US, China and the logic of trade confrontation

Gideon Rachman

貿易戦争は、何の意味もない呼称ではない。最近の貿易制裁における米中間での応酬は、恐怖やプライドに関する感情を高め、現実の戦争を勃発させる。双方とも屈服することを受け入れない。世界に対しても、自国民に対しても、メンツを失うことになる。

トランプ政権は、中国が何十年も貿易でだましてきた、と主張する。7月の制裁に対して、中国が報復し、今や、中国からの2000億ドルを超える輸入品に10%の関税を課す。

米中とも、自分が貿易戦争に勝つ、と考えている。中国経済は不況になるのを避けているが、それゆえアメリカとの貿易黒字、その関税賦課に脆弱である、と。しかし中国政府は、権威主義的政治体制が、アメリカのような有権者の不満にさらされた政治モデルより貿易戦争に強い、と考える。

戦争は、政治的な意味で、相対的なパワーをめぐる論争を意味する。合意できれば戦争する必要はない。

中国は、関税を課すアメリカからの輸入が尽きてしまうので、他の報復手段を探すだろう。その変化はすでに見えている。アメリカが協力を求める北朝鮮への制裁を、緩和しつつある。中国国内で活動するアメリカ企業に対する規制を強化する。10%の関税に匹敵するほど、人民元の為替レートを減価させて、その効果を容易に相殺できる。

中国がアメリカの財務省証券の最大の購入者であることも新しい懸念を生む。理論上、大幅な財政赤字を出しているアメリカ政府は、中国が購入を拒むだけで強い圧力を受ける。しかし、オバマ政権の頃、中国は保有するアメリカ財務省証券を売却しないだろう、と考えていた。なぜなら、それは中国自身の貯蓄を損なうから。トランプ政権が関税を課してから、再びアメリカの赤字は膨張している。中国がその報復手段を考慮するのは当然だ。

戦争が始まれば、あらゆる新しい武器が開発される。それは貿易戦争でも、現実の戦争でも、同じことである。

YaleGlobal, Thursday, September 20, 2018

The Innovation Dilemma

Stephen S. Roach

NYT Sept. 18, 2018

Will Donald Trump Stand Up to China?

By The Editorial Board

PS Sep 20, 2018

Trump’s Currency Confusion Continues

JEFFREY FRANKEL

トランプ政権は、再び、中国の通貨政策が不当に貿易を有利にするための人為的な通貨操作だ、と非難している。

以前の2つの政権は、中国に対する通貨操作の認定を行わなかった。恒常的な為替市場への介入はなく、GDP3%を超える経常収支黒字も出していなかったからだ。中国は確かに、もう1つの基準、米中間で200億ドル以上の貿易黒字、を出している。しかし、中国の世界経済に占める割合が15%であり、アメリカが世界に対して6000億ドルの赤字を出していることから、2000億ドルではなく、900億ドルが基準となるべきだろう。

4月に、900億ドルの黒字をアメリカに対して出したのは、中国に並んで、ドイツ、インド、日本、韓国、スイスであった。それ以降、人民元は6%減価したが、それはドルが広く貿易相手国と比較して7%増価したことに理由がある。

このドル高はトランプ政権の政策によって説明できる。まず、トランプと共和党は、景気循環を増幅する財政刺激策を行った。それは不況期でもないのにかつてない財政赤字を生んでいる。マクロ経済理論が予測するように、この政策は金利を上昇させ、資本流入とドル高につながる。

さらにトランプは、貿易相手諸国との貿易戦争で、貿易赤字を減らすと信じている。しかし、もし貿易相手国が輸出できなくなれば、彼らは輸入するドルを持たなくなる。関税引き上げによる輸入削減は、いくつかの形で相殺される。他国による報復関税もそうだ。トランプは理解していないが、ドルを得られなくなるアメリカ向けの輸出国はドルを得るために競い合い、ドルが希少になって、変動レート制ではドル高になる。

かつて中国は人民元を安くする介入を行っていた。しかし、その後は政策を転換し、2004-2014年に37%の人民元高を許容した。2014年に、中国からの資本逃避が起き、人民銀行は減価を抑える買い介入を行った。いわゆる「風に逆らう」政策だ。もし市場需要から人民元がドルに交換され続けたら、人民元安はさらに進み、アメリカの輸出業者はさらに苦しんだだろう。

アメリカの政治家たちは基本的事実を理解している。しかし、トランプは別だ。人民元が安くなる原因は、アメリカの財政赤字と、トランプが振りまく貿易戦争だ。

PS Sep 20, 2018

MAD About Sino-American Trade

MINXIN PEI


 プーチンの人気

PS Sep 14, 2018 

Has Putin’s Popularity Bubble Burst? 

NINA L. KHRUSHCHEVA 


 非リベラルな民主主義

FP SEPTEMBER 14, 2018 

The End of Viktor Orban’s Peacock Dance 

BY ZSELYKE CSAKY 

NYT Sept. 16, 2018

The Rise of Authoritarian Capitalism

By Kevin Rudd

リベラルな民主主義と資本主義は、19世紀以来、西側政治経済秩序の指導的概念であった。しかし今、そのグローバルな将来は不確実である。

冷戦後の民主的な資本主義には4つの朝鮮課題があった。金融システムの不安定性、技術革新のもたらす破壊性、社会的・経済的な不平等の拡大、民主的な政治の構造的弱点。

アメリカの民主的資本主義がグローバルな指針であるためには、国内改革を進める必要がある。社会契約はニューディールのように再建されるべきだ。技術変化の社会的衝撃は、市場に委ねず、政治的に制御するべきだ。金融の役割は、歴史的な、実物経済に奉仕するものにもどるべきだ。最高裁は、政治資金を厳格に規制し、選挙区の偏向や憲法修正条項の乱用を止めるべきだ。

またアメリカは、国際秩序の中で責任を果たすべきである。

PS Sep 20, 2018

Good Politics, Bad Economics

ROBERT SKIDELSKY

悪い経済学は悪い政治をもたらす。世界金融危機と、その後の景気回復の遅れは、政治の過激主義をもたらした。

悪い政治とは、私にとって、外国人排斥のナショナリズム、国民の民主的な市民権と自由を奪うものだ。良い政治とは、戦後の繁栄をもたらした、国際協調主義、表現の自由、説明責任を果たすガバナンスである。

悪い経済学とは、現実経済において何が起きるかを金融市場の独裁的な決定に委ねてしまうものだ。対照的に、良い経済学とは、不安や危機、混乱に対する市民の保護を政府の役割として認めているものだ。

リベラル派は、悪い政治が良い経済学を、あるいは、良い経済学が悪い政治を、実現することを認めようとしない。しかし、ハンガリーのオルバン政権は正しいケインズ主義を実行したし、イギリスのオズボーン首相は、間違った緊縮策を実行した。

ナショナリストとリベラル派では、ナショナリストの方が社会的保護の主張を好む。リベラル派は、財、人、情報の自由移動を支持したが、ナショナリストの政治はそれら3つを禁止すると主張した。それは、金融危機後に極左の政党が支持を拡大した理由でもあった。しかし大規模な経済崩壊に直面すると、極左の国際主義は動揺し、右派のナショナリストの支持を奪われた。

移民・難民の危機に対してリベラル派が優れた選択肢を示さず、外国人排斥に向けて右派が敵意を煽るのを止められなかった。そして市場は機能するかもしれないが、シュンペーターが述べたように、余りにも破壊的で、繰り返し崩壊したのだ。

しかし、現代を第2のファシズム高揚期と呼ぶのは、私は間違いだと思う。悪い経済学が支配的になるのは、悪い政治が権力の中枢に近づくときだ。彼らが権力を握り、政策を決めるかどうか、である。その条件は多くの要因で決まる。経済的危機の深刻さ、政治のエスタブリシュメントが示す正当性と適応力、社会保障のシステム、選挙政治と指導力の在り方、国際情勢。

現代において、良い経済学がなすべきことは3つだ。2008年の金融崩壊が再現するのを防ぐ。いかなる金融崩壊に対しても景気循環を抑える十分に強固な経済対策を取る。経済的な公正さに対する国民の要求を実現する。

良い政治を維持するためには、4つの条件が必要だ。グローバリゼーションに政治的・社会的な制限を課す。実物経済の金融化を抑える。財政・金融政策に正しい役割を与える。加速する機械化の時代に、公正な報酬体系を守る。

リベラル派や左派は、こうした問題を無視している。


 労働者の権利

PS Sep 14, 2018 

Can Trade Agreements Be a Friend to Labor? 

DANI RODRIK

労働側は、長年、国際貿易協定が企業の利益だけを推進し、労働者の関心に注意を払わない、と批判してきた。WTOも、「完全雇用」に言及することはあっても、「労働基準」は国際協定から締め出されている。

対照的に、地域貿易協定は外国の労働基準を扱ってきた。NAFTAのオリジナルな合意には、1992年に署名するとき、付属する合意が交わされた。それ以降、アメリカの貿易協定には労働に関する章が設けられている。TPPも、ベトナム。マレーシア、ブルネイに労働慣行の改善、そしてベトナムには独立した労働組合の組織化を認めるように求めている。

発展途上国は、従来、労働基準を貿易協定に含めることに反対であった。それが貿易保護に悪用されると考えたからだ。その懸念は、労働者の基本的権利を超えて、賃金や労働条件を特定化する内容について言えることだ。他方で、労働者の交渉力における非対称性を正す必要や、基本的人権を求めることは、経済発展に矛盾するものではない。

また、「底辺への競争」や「ソーシャル・ダンピング」に関しては、それに対する貿易協定とは別の手段が必要である。

FT September 15, 2018 

Workers have right to gig economy that delivers for 21st century 

Sarah O’Connor  

FT September 16, 2018

Banks jump on to the fintech bandwagon

Rana Foroohar


 21世紀の地平線

FT September 16, 2018

China is reshaping the international order

Zhou Bo

21世紀の地平線で、中国以上に大きくなる国は存在しない。中国はグローバリゼーションから莫大な利益を受けたから、現在の国際システムに反対しない。西側の民主主義を強制されることには抵抗しても、国際システムの開放性こそが40年間の中国の成長を可能にした。

中国は西側の多くの成果を吸収した。技術やマネージメント、そして、自国だけでなく、世界を変える方法を学んだ。その最善の試みが一帯一路イニシアチブである。これはチャリティでもなければ、債務の罠に向かうのでもない。中国は投資に対する収益を求めている。

中国、ロシア、サウジアラビアなど、「民主主義の世紀が終わる」と懸念する者がいる。しかし、繁栄への路はリベラルな民主主義だけではない、ということに気付くべきだ。中国の台頭は、イデオロギーや社会システムを輸出するものではないし、「国際秩序」の支配的モデルを転換するわけでもない。

「リベラルな国際秩序」とは、複雑な時代を西側が過度に単純化して呼んだ名前である。歴史が示すのは、長期に渡って帝国や諸大国が支配したけれど、世界が単一の極に支配されたことはない、という事実だ。異なる政治システム、異なる安全保障の構造、異なる文明が、同時に存在した。単一の価値がすべての者に支持されることはない。

現代の世界を区別するのは、その相互依存の深さである。その意味で、トランプの貿易戦争は間違っている。中国からの輸入に関税を課しても、それはアメリカの輸入に影響し、中国が報復し、解決の道は見えない。

最も重要な世界の変化とは、Steven Pinkerが指摘した、暴力の減少である。同時に、経済的なパイの分配が、中国やインドなど、東に向けて急速に増えていることだ。

こうした変化は国際秩序のパワー配分に新しい均衡を、そして、和解への道を拓くだろう。もしアメリカがその変化を受け入れがたいと思うなら、非常に危険な時代に向かう。

FT September 19, 2018

America can no longer carry the world on its shoulders

Janan Ganesh

「普通の国」になるというのは、共和国であるというよりも多くの意味を含む。例えば、ドイツだ。

トランプがアメリカを「普通の国」にすると言うとき、われわれは彼を信用しない。それはアメリカ外交について、利己的な世界でも、最も利己的な国にする、という意味だから。自由世界のために働き過ぎた、とは信じられない。

しかし、リアルポリティークへの回帰は、リアリストの国際政治学者たちが主張してきたことだ。リベラル派はアメリカのパワーを、NATO、ワシントン・コンセンサスと一緒に、支持してきた。それはアメリカのパワーが後退したことを認める前の時代だ。

パックス・アメリカーナは普通の世界ではない。John Mearsheimer Stephen Waltは、ともに著書において、アメリカの「リベラル・ヘゲモニー」を批判してきた。トランプが去っても、アメリカの大統領たちは「普通の国」に向かうだろう。

PS Sep 19, 2018

Emerging Markets’ Shifting Bottom Line

GENE FRIEDA


 安倍政権の時代

FT September 16, 2018

Shinzo Abe has earned time to draw his third arrow

FP SEPTEMBER 17, 2018

Don’t Let the U.S.-Japanese Alliance Get Out of Shape

BY KEVIN KNODELL

PS Sep 20, 2018

Japan’s Successful Economic Model

ADAIR TURNER

ほとんどすべての人が、日本の経済モデルは破たんした、と思っている。1991年以来、平均成長率は0.9%であり、それ以前お20年間は4.5%であったから、大幅に下がった。低成長、巨額の財政赤字、ほぼゼロにインフレ率は、政府債務のGDP比を50%から236%にまで上昇させた。

増税と政府支出削減は、債務危機を回避するために避けられない。

しかし、日本モデルが失敗だった、という考えは間違っている。人口減少は課題であるが優位にもなり、債務は見た目以上に持続可能である。

GDPよりも1人当たりGDPが福祉において重要であるから、この10年間、日本は0.65%で成長し、アメリカに等しい。UK0.39%やフランス0.34%よりも高い。日本経済は、多くの労働者の賃金が停滞するアメリカのような不平等を示していないし、失業率は3%を切っている。

日本が世界の技術革新をリードし、高齢者が長く働くことのできる環境を可能にしている。ロボットの開発は、より少ない人で財とサービスを生産できるようにした。それは、新興市場に比べても、人口の高齢化する社会にとって根本的な機械化の可能性を示している。

日本の公的債務はGDP236%であるが、政府の保有する資産を考慮した場合、その純債務は152%に低下する。さらに日本銀行がGDP90%に相当する国債を保有している。日本政府と国民は、実質的に、それ自身に債務を負っている部分を除けば、債務水準は約60%である。


(後半へ続く)