IPEの果樹園2018

今週のReview

8/13-25

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国際秩序を守ることに反対する ・・・移民をめぐる誤解 ・・・世界貿易体制の改革 ・・・2008年という転換点 ・・・トルコの通貨危機 ・・・ネオ中世と諸都市の繁栄

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 国際秩序を守ることに反対する

FP AUGUST 1, 2018

Why I Didn’t Sign Up to Defend the International Order

BY STEPHEN M. WALT

先週、NYTに主要な国際関係論の学者たちが連名で広告を出した。“Why We Should Preserve International Institutions and Order.”

それはトランプ大統領に向けたものだ。私も参加するように招待された。しかし、真剣に検討した末、参加しなかった。

私はかつて2つの同じような広告に参加した。2002年にはイラク侵攻に反対したし、もう1つ、イラン核合意を支持した。

トランプが外交の能力を欠き、アメリカの地位をすでに損ない、将来も損なうことを懸念する気持ちは、署名した人々と共通である。しかし、参加しない次のような理由がある。

1.第2次世界大戦後の国際機関には破滅的な者もあるが、それらを一緒に扱っている。私のようなリアリストは、米ソの2極体制と核兵器の方が、広告が示すいかなる国際機関よりも、大国間の戦争を回避する上で重要であった、と考えている。

2.「リベラルな国際秩序」を理想化する気分は現実認識を間違っている。戦後秩序は、その価値に反する行動や決定を多くともなった。

3.戦後の諸機関は、NATOWTOのように、現在の問題の原因であった。その意味でも、新しい国際秩序や国際機関がもっと議論されるべきだ。

4.こうした広告には有効性がない。私が参加した2つの広告も、ブッシュ大統領がイラク戦争をはじめ、トランプ大統領がイラン核合意を破棄するのを止めることはできなかった。そもそも大当郎たちは学者の説得など聞かない。

アメリカ国民の多数が既存の国際秩序をアメリカの利益を損なうとトランプのように考えたから、彼は当選したのだ。このような広告でトランプには勝てない。


 移民をめぐる誤解

PS Aug 3, 2018

The Fog of Immigration

STEFANIE STANTCHEVA

もしフランスが自由の女神像を、今、アメリカに送ろうとすれば、アメリカ人はその精神を受け入れるだろうか? 碑文は言う。「疲れた、貧しい者たちを、私に与えよ。/ あなたが追い回す、自由を熱望する大衆を、私に与えよ。」

移民論争で示されたように、多くのアメリカ人は「黄金のドア」を激しく閉めることを望むと思う。それはヨーロッパでも同じことだ。

しかし、アメリカ人やヨーロッパ人は、移民の規模や性質に関して、ひどく間違った理解に基づいて議論している。どれくらい移民がいるのか? 移民の多くはイスラム教徒か? 移民のせいで、社会保障支出が増大し、財政赤字を悪化させたのか?

再分配政策に反対していた政治家たちは、移民問題を持ち込むことで、その主張を強めることになると考えている。それはナショナリストやポピュリストの戦略でもある。移民に関する間違った認識を放置すれば、重要な政策で間違った歪みを生じる。


 世界貿易体制の改革

FT August 5, 2018

The WTO has become dysfunctional

Dani Rodrik

世界貿易体制は、中国のような、明らかに異なるルールでグローバリゼーションに参加する峡谷をどのように扱うべきか?

経済モデルが収れんすることを前提にWTOは成立した。しかし、それは起きないだろう。経済の多様性を反映したルールに変えるべきだ。

確かに国営企業や政治的介入は多大のコストをもたらすだろう。しかし、EUの共通農業政策も同じである。中国も、他国が独自の社会・経済戦略を創る権利を認めねばならない。貿易が国内の労働基準、財政システム、先端技術への投資を脅かすとき、豊かな先進諸国も、輸入や海外投資より、これらを重視することができる。

WTOは、経済モデルの多様性を権利として認めなければ、機能しない。

FP AUGUST 6, 2018

You Live in Robert Lighthizer’s World Now

BY QUINN SLOBODIAN

先月、ドナルド・トランプ大統領の通商代表であるライトハイザーRobert Lighthizerが議会で質問された。彼は、政権の他の多くの閣僚と違い、何を達成したいか、その方法についても知っている。

ライトハイザーは、自分の貿易に関する思想を、トランプ大統領も共有している、と述べた。長年ワシントンの住人として、政治のことを知っており、彼の経済思想がアメリカの今後を決めるだろう。彼は、それを「保護主義」と呼ぶことに反対した。アメリカの政策を、自給自足やグローバルマーケットからの撤退に向かうとみなすのは間違いだ。

彼は開かれた市場や自由貿易を好む。それは単純に、比較優位を支持する「経済学」によるものだ。しかし、標準的な自由貿易論とは異なり、ライトハイザーは、それを達成するために政治的な武器を使用する。「最恵国条項」やWTOの多国間のアプローチを彼は信用しない。むしろ2国間交渉で、より低い関税率を達成する、と言う。

それゆえ、ライトハイザーの単独行動主義は、自国産業を保護するためのものではない。彼は国際競争を支持し、強化することを求める。矛盾しているようだが、貿易戦争はより自由な貿易をもたらすのだ。

ライトハイザーは、実際には、中国の国家資本主義が市場を支配することに反撃したいのだ。そのためにアメリカは中国の攻撃スタイルをまねて、ある意味で、より国家資本主義的になる。それゆえ今の貿易戦争を、1930年代と比較するのではなく、1980年代から理解するべきだ。彼は日米投資協議の議長を務め、日本の鉄鋼輸入に関する交渉を指導した。

ライトハイザーに関して、当時、エコノミストのバグワティJagdish Bhagwatiは、レーガン政権の「攻撃的ユニラテラリズム」を批判し、その筆頭に挙げた。バグワティは、こうした姿勢を、工業製品の支配力を失ったアメリカの「巨人萎縮症」と呼んだ。しかし、それが外国市場を開放する効果を認めていた。その「互恵性」の主張は、19世紀のイギリスにおける「公正貿易」論にさかのぼる。

WTOは、中国がますます西側の国と同じ行動を示すようになる、単なるエキゾチックなカナダになる、と前提している。しかし、ライトハイザーは文化的に観てそれを否定する。

中国がアメリカの技術的な優位を奪ったのは、「強制的な技術移転」によるものだ、とライトハイザーは考える。国家資本主義、非経済的な技術の取得、サイバー攻撃による略奪、である。そこで彼は、中国がそのやり方を変えるまで、関税を道具として使う。

ハワイの最も若い民主党上院議員Brian Schatzが、先月の公聴会でライトハイザーに質問した。「中国とのチキンゲームで、彼らは50年、100年を考えている。われわれは、民主制の結果として、2年間の見解を問われる。」 この違いが、関税という手段では構造的な貿易不均衡を解消するのを不毛な戦略にしている。Schatzは問う。「あなたは非民主的な方針を目指すのか?」 「彼らは永久に待つことができるのに、われわれにはその余裕が全くない。」

それに答えることはなかった。アメリカの利益を損ない、中国の莫大な富をもたらしたものが、国家資本主義である、とライトハイザーは考えている。しかも、民主的意志決定に反するとしても、国家間の競争はますますそれを必要としている。

ライトハイザーの思想は、「歴史の終わり」の別の収れんを意味するものである。


 2008年という転換点

PS Aug 8, 2018

The Turning Point of 2008

ADAM TOOZE

10年前の今週、ロシアの戦車はグルジアに侵入し、首都のトビリシまで数時間のところで停まった。コーカサスにおける短い戦争は、冷戦後の10年近く続いた西側のヨーロッパにおける覇権を終わらせた。

20088月、ヨーロッパの外交官たちは戦争を回避するために集まった。しかし、数週間で、世界金融危機が起き、世界の関心を集めるようになった。ワシントン、ロンドン、パリ、ベルリン、モスクワが銀行の破たんを心配し、軍事的エスカレーションは緊急課題ではなくなった。一見、グルジアの戦争と世界金融危機は関係がないように見える。しかし、それは対立をもたらした深部の潮流を無視するものだ。

共産主義体制後のヨーロッパを西側が吸収する作業は、単なるベルベット革命ではなかった。ブッシュ政権のラムズフェルド国防長官が「新しいヨーロッパ」と呼んだ、NATOEUに新規に加わった諸国は、莫大なドルの流入によって動いていた。アメリカの住宅バブルと同様に、ヨーロッパの銀行はイギリス、アイルランド、スペインでも大規模なバブルを生じた。その最も極端な不動産価格のインフレがNATOの東のフロンティア、バルチック諸国で起きた。

ロシアとの安全保障が懸念されたために、脱共産主義国家は繁栄に取り残された。2000年代の初め、ウクライナやグルジアは、NATOにもEUにも入れず、カラー革命のもたらした「キャッチアップ」の期待は満たされなかった。

他方、プーチンのロシアもグローバリゼーションの大きな利益を得ていた。主に、中国が刺激した新興経済のブームが、原油価格を上昇させたからだ。

2008年にウクライナがNATO加盟を申請したとき、それはロシアの介入を刺激しなかった。しかし、グルジア戦争がきっかけとなって、ウクライナの政治家たちは3つに分裂した。西側と同盟するか、ロシアと同盟するか、両者のバランスを取るか。その対立は金融危機の衝撃によって過熱した。

旧ソ連圏ほど、世界金融危機の影響が厳しかったところはない。グローバルな融資は圧縮されて、最も弱い借り手が最初に見捨てられたからだ。世界最大の石油・天然ガス輸出国であるロシアは、最大の被害を受けた国の1つであった。しかし、1990年代の金融危機を経験して、プーチンはロシアを巨額のドル準備で守るべきだと考えた。それが金融危機を乗り切る助けとなった。

実際、その衝撃は東中欧で政治を分裂させた。バルチック諸国はユーロ圏への加盟方針を堅持した。ハンガリーでは諸政党が信用を失い、オルバン首相が非リベラルな体制に向かう機会を得た。政治的に脆弱で、経済的にも弱いウクライナは、グルジア戦争と世界金融危機のダブルパンチであった。

20088月の教訓を世界は学ぶだろう。資本主義は危機を繰り返す。そして、グローバルな成長は必然的に安定した一極世界をもたらすわけではない。むしろ、多極化が進み、外交的、地政学的な和解の努力がなければ、それは紛争へのレシピとなる。


 トルコの通貨危機

PS Aug 14, 2018

The Turkish Emerging Market Timebomb

JIM O'NEILL

トルコの通貨・金融危機は、新興市場の教科書的な例である。1990年代から、そのようなケースを飽きるほど見てきた。

トルコは大幅な経常収支赤字を続け、好戦的な指導者は、彼のポピュリスト的政策が持続可能ではないことを理解せず、ますます、外国投資家(と国内の富裕層からの投資)に依存するようになっていた。

市場は、長い間、トルコが通貨危機に向かうことを予想していた。そして今、危機がついに訪れて、そのコストを支払うのはトルコの国民だろう。金融政策を引き締め、外国からの借り入れを減らし、全面的な景気悪化に向かうことで、国内貯蓄が時間をかけて埋め合わせるのを待つのである。

エルドアン大統領の指導力は、問題を複雑にするとともに、一定の解決に向けたレバレッジともなる。エルドアンは憲法を改正し、権力を集中した。アメリカのトランプ大統領と口論し、ロシアのミサイル防衛システムの導入を契約した。

これは危険なことだ。特にアメリカ政府が、レーガン型の財政赤字拡大と、それによって連銀に金融引き締めを急ぐ必要性を感じさせているときだから。新興市場は海外借入が枯渇するだろう。エルドアンの非正統的な政策は放棄されると思う。

しかし、危機を超えてトルコの成長を観る必要がある。若者の人口比率が高く、将来の潜在成長力を期待できる。ヨーロッパ、中東、中央アジアをつなぐ、トルコの地政学的な位置は、多くの近隣諸国に安定化のための協力を合意させる。しかし、プーチンのロシアと関係を深め、NATOを離脱するようなことは間違いだ。ロシアがエルドアンの赤字を補う力はない。

カタールでは無理だが、中国は支援を与えるだろうか? それも、ギリシャのケースを観れば、金融危機による有利な投資機会を中国企業が得るだけの話であろう。

つまり、トルコ経済を救済するのは伝統的な西側との関係強化、すなわち、アメリカとEUである。トランプにとって、トルコの経済危機から始まる世界経済の悪化や、急激なドル高は、彼の国内的な目標をとん挫させるものだ。もしエルドアンが望めば、トランプは「取引」に応じるだろう。

同様にヨーロッパの大銀行も、特にぜい弱な銀行にとって、トルコに対する巨額の融資が懸念される。難民危機の影響も続いており、トルコの経済危機はEU内の一層深刻な不安定化に向かうレシピとなる。

その過激な演説にもかかわらず、エルドアンが孤立主義や西側との対決姿勢を棄てるなら、多くの投資家がリラをもっと買っておけばよかった、と思うようになるだろう。

NYT Aug. 15, 2018

Worried About Turkey’s Economic Problems? China’s Could Be Worse

By Ruchir Sharma

トルコの危機は自ら作り出したもので、だれかが経済戦争を仕掛けた、というのはエルドアンの妄想である。しかし、急速なドル高に関する指摘は正しい。発展途上諸国の経済はドル高によって破壊された、という歴史があるからだ。

新興市場の通貨危機の前に、多くの場合、アメリカ連銀が金融を引き締め、ドル高が起きた。トルコのような発展途上諸国は、債務の返済が困難になって、外国投資家たちは逃げ始めた。

問題は、トルコの通貨危機が、1997年のタイ・バーツのように、世界経済危機の引き金になるか、である。トルコ・リラの下落は他の発展途上諸国にも影響するが、トルコのような二重の問題、対外債務依存と、政府のインフレ的な拡大策、を抱える国は少ない。

しかし、さらに深刻な別の問題が存在する。それは、ドル高が世界第2の経済規模を持つ国、中国の金融・経済危機につながる可能性だ。

ドル高に対する中国の問題はトルコと異なる。輸入超過でドルの借入に頼るトルコのような問題は中国にない。しかし、2008年の世界金融危機後、中国政府は成長を維持するために融資を増やした。過去10年間の世界の債務増の半分以上が、中国国内で生じた。今や中国にはアメリカ以上の貨幣が供給されており、彼らはより有利な投資先を探している。

つまり、中国には深刻な資本逃避のリスクがあるのだ。アメリカ連銀が金利を引き上げつつある。中国は資本逃避を阻止するために管理を強化したが、それは長期的には無効になる。人々が規制を回避する方法を見出すからだ。

アメリカの金利が上昇しても、中国は金融緩和を続け、人民元の価値が下落する。それは資本逃避をますます刺激する。中国政府は、人民元の価値を高めてドル高の魅力を削ぐことができる。しかし、それは金融引き締めと、すでに減速しつつある中国の成長を、過大な債務返済の負担でさらに減速させるだろう。

アメリカが世界経済に占める比率は、2001年の32%から、23%に低下した。しかし、世界の中央銀行が保有する外貨準備にアメリカ・ドルが占める割合は60%以上もあり、中国は人民元をドルに代わる外貨準備にする野心を持っている。

危機はトルコから中国へ、トランプの貿易戦争から通貨戦争へと、展開するかもしれない。アメリカにとって人民元の価値が下がって中国の輸出を増やすことは決して望まないだろうが、この数日、中国は人民元の下落を防ごうとしている。

中国の選択はむつかしい。ドル高が資本逃避を増やす中で、人民元の価値を維持する政策は成長を減速することになる。北京が低利融資を拡大し続けたのは、アメリカの金融政策が極度に緩和し、ドル安が続いたからだ。今や、アメリカの金利は上昇する。

世界経済の行方は、中国の選択にかかっている。


 ネオ中世と諸都市の繁栄

PS Aug 10, 2018

The World Economy’s Urban Future

PARAG KHANNA

今、世界中で、政治経済の警報ベルが鳴り響いている。

アメリカの予算赤字は2020年までに1兆ドルを超えるだろう。多くのヨーロッパの銀行が、ユーロ圏の債務組み換え制度がないために、再び不安定化している。中国の債務/GDP比率は、かつて日本が示した水準に近付いている。

こうした経済不安は政治の機能不全によって増幅される。すべての政治経済モデルは、3つの主要な、不可逆的、超大陸的な趨勢に直面している。1.グローバリゼーション、金融資本主義による不平等の拡大、2.機械化やAIの進歩による労働力の過剰化、そして、3.人口トレンドの偏りである。

世界人口が120億を超えて、マルサス的な危機の局面に入る、と予測する者がいる。特にアフリカだ。しかし、北米、西欧、北アジアでは出生率がすでに人口規模を維持できない水準まで落ちている。アフリカ、インドの人口増加は続いているが、世界の人口学的なデフレはすでに始まっている。

問題は、歴史的に観て、人口減少が貿易、技術革新、生産性上昇と結びついて、経済発展の原動力をなしてきた、ということだ。それらが逆転する恐れが強い。成長を持続させる新しいアプローチが必要だ。

それは都市・地方のダイナミズムであろう。すでに発展した地域は、ネオ中世のような姿、すなわち、人口の集まる、ダイナミックな都市の集合体と、人口が減少し、破たんする町や地方とによってできている。

問題は、必要な人的資本をどうやって引き寄せるか、ということだ。手ごろな価格で手に入る優れた住宅、効率的な公共交通機関、専門的な教育環境、など。さらに、新しい世代はリベラルな文化や多様なライフスタイルを求めている。

ネオ中世的な世界で、都市は安定性と良好なガバナンスの群島であり、不確実さの海に浮かんでいる。それは諸都市が、国家よりも、変化する現実に適応する能力が優れているからである。世界がこうした群島から成ることを追求するなら、その姿はどのように変わるか?

アジアでは、債務の水準を下げ、貧困を減らし、多数の人々が都市のサービス分野で雇用されるだろう。国境を開放して移民を受け入れるなら、さらに数十年の高成長が維持できる。中国、韓国、日本、タイは、労働力不足を解消するため、ASEAN全域の若い労働者が境界を超えるように支援する。

成功のカギは、不均等な政府債務水準を相互に負担し、経済が必要とする数百万、数千万の移民たちを文化的に同化させる、政治的な挑戦に加わることだ。

都市こそが、賢明な政治経済的決定の物語を生み出し、経済や社会の構造変化を実現するメイン・エンジンである。

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The Economist July 28st 2018

Planet China

China’s Belt and Road Initiative: Gateway to the globe

Charlemagne: The Salvini effect

Gambling in Japan: Betting big

Banking in Japan: Fistfuls of dollars

(コメント) 中国の「一帯一路イニシアチブ(BRI)」をどう見るべきか? それは、ユーラシアからアフリカまで、巨額の融資と投資、インフラ建設をもたらし、世界を単一の輸送ネットワークに統合する。しかし、ギリシャやインド洋、ラテンアメリカまで、地政学的な戦略とも切り離せない。そこには明確な基準や統一した方針が何もない。

ブレトンウッズ体制に代わる中国式の世界秩序ではない。マーシャル・プランとEUが行ったことを、はるかに短い期間で実現するかもしれない。EU諸国はBRIの透明性、投資基準を重視し、労働基準、債務の持続可能性、実施手続きの開放性、環境基準も明確にするよう、中国に求めている。

ギャンブルの奨励策と、過大な通貨供給を銀行の冒険的な対外融資に挑ませる、アベノミクスの「成功」とは何か?

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IPEの想像力 8/13/18

インドのチャトラパティ・シヴァージー空港(地域政党シブ・セーナーの改名運動による空港名)に着いて、私が最初にしたことはe-Visaの入国手続きでした。何度か眼鏡をはずしてレンズを観ただけで、特に難しい質問もなく、査証を発行してくれました。

しかし、プリペイドのタクシーを利用したのはまずかったようです。最初のカウンターではなぜか拒まれ、他の客が待つカウンターで1400ルピーも請求されました。その後のインドの経験から考えて、この価格は法外です。渋滞でタクシーがなかなか来なかったのかもしれません。それでもMummbai Centralまで、2倍から3倍を請求されたと思います。

軍人(のような警官)たち?が警備する、廃墟のような巨大な建物から出ると、蒸し暑い空気に包まれました。なかなか来ないタクシーを数人の乗客たちが待っています。ともかく乗れたタクシーを喜び、私は空港からの都市部へ向かう街の眺めを楽しみました。

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ムンバイ(ボンベイ)の都市交通を担うのは、鉄道、バス、オートリキシャー、タクシー、メトロ、です。旅行者の多くはタクシーを使うのでしょう。しかし、タクシーは、ドライバーが英語を解さない場合が多く、しかも、価格が必ずしもよくわからないので使いにくいのです。メーターはありますが、何かと理由を付けて、交渉によって変わるようです。

私はどんな街でも公共交通機関が好きです。人々の暮らしや空気を感じることができる、と思うからです。ムンバイでもそうでした。現地で研究に励む久保田さんに教えてもらって、何とか鉄道の乗り方を学びました。バスは、どこで降りてよいのかわかりません。それに、ムンバイの町では、あまり見なかったように思います。

電光掲示板に、行先、発車時間?SSlow各駅停車/FFast快速、などと表示されますが、それは容易に理解できません。行先が1文字に略記され(たとえば、Cが南端のChurchgate、あるいは、Vは北の駅Virarを意味します)、3通りほどの言語で表示されますが、英語表記はなかなか出てきません。英語を使用する人が少ないのですから、当然ですが。プラットフォームに降りてからも、時間通りに来るわけではない列車を、他の乗客に尋ねたり、磁石で確認したり、また、すいた乗り口を探してウロウロしなければなりません。

チケットは、スマートカードで発行することを久保田さんに教わりました。画面の地図を使って、行き先を指定し、途中に乗り換えがあれば経路も指定し、セカンドクラスか、変更してファーストクラスにするか、決めます。列車には3つの路線があります。ウェスト、セントラル、イーストです。大体、この基本を理解してから乗れるようになりました。

・・・いや、まだですね。たとえば、セカンドクラスでは時間によって乗客が非常に多い。そもそも扉は閉まらず、乗客があふれたまま開けっ放しで走ります。そして、駅が近づくと降りる人は戸口に集まってくる。減速し、停車するころには、人々が降り始めるのです。というのも、乗る人々が殺到して来て降りることができなくなるからです。もたもたしていると後ろの人に押し出されます。

まだ動いているのですから、進行方向に向けて降りて、走りながら、ようやく減速します。しかも、戸口に集まってくる人をかき分けて、突き抜けねばなりません。ときには、乗る人と降りる人に挟まれて衝突し、潰されそうになります。

夕方、セカンドクラスで乗ったとき、どこかの駅で、やたらにテンションの高い人々が集団で乗り込んできました。彼らは大きな声で話し、笑い、荷物を頭上で手渡しして、次々に中へ押し込み、空いた棚に載せ、柵の隙間にも押し込みました。そのとき私たちは座っていたのですが、頭の上を行き交う荷物や垂れ下がる紐を、隣のインド人男性は気にすることもなく、友人との会話に首を振っていました(インド人は、上下にうなずくのではなく、首を左右に揺らすのです)。

男たちの哄笑はさらに興奮度を増し、ときには手拍子入りで歌い始めました。それが、極度にすし詰めの車内で、です。私たちは降りることをあきらめ、乗客が減る北の駅まで、乗っているしかありませんでした。

ファーストで乗ろう、と久保田さんと話したのですが、その後も、やはり混んでいるときのほかはセカンドで乗りました。車両には、TのファーストクラスとUのセカンドクラスがあります。女性専用の乗降口も絵でわかるようになっています。インドの街中や駅で、女性は少ないのですが、彼女たちはほとんどここに乗るため集まります。

ファーストの運賃はセカンドの5倍から10倍以上もします。セカンドで5とか10ルピー(10円、20円)のところがファーストなら70とか130ルピー(100円、200円)になるのです。ファーストクラスが空いているのは当然です。それだけの所得があるビジネスマンや専門職の人が多いと思います。

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インドの街を歩いて、何を考えていたか? ・・・人が多い。・・・高層ビルとスラムが混在する。・・・もしこのギャップを市場による富の追究によって解消することができれば、すばらしい成長の機会があふれているのではないか?

欧米でも、日本でも、さまざまな社会集団が、さまざまな地域と社会的障壁によって分断され、暴力や信仰・偏見によって、安全な生活圏を確保しようとしていたのではないか? インドが今も保持する社会集団の差別的構造は、次に飛躍する大きな潜在能力を持つように思います。

外国企業がインドのビジネスに参入し、人々を雇用するとき、また、インドの底辺から起きる新興企業が外国市場に輸出するとき、インドの成長が群島のように広がって人々の意識や社会政治構造を変え始める瞬間を、私は目撃するのかもしれない、と思ったのです。

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街中の通りにも、何度か白い牛がいて、ヤギもいました。路上には多くの犬がいて、犬たちは人と同じような態度(?)で寝転んだり、歩き回ったりしています。人が来ても、犬は逃げません。人は人でしかなく、犬にも自分たちの場所がある、という感じです。駅でも、食堂でも、大きな犬が入り込んで、悠然と横たわります。

貧しい人間は路上で暮らし、子供たちは(貧困地区の)道路に、そのまま、糞尿を排泄します。単なる路上で、別に、隅によって排泄するわけでもありません。そうなると、牛、ヤギ、貧しい人の区別は、次第にあいまいなものになってきます。スラムの住居は、1部屋に5人とか、それ以上が一緒に暮らし、トイレや風呂はありません。共用のトイレ、あるいは、公設のトイレを大人たちは使うようです。

5歳くらいの子供が、服をまくって小さなしりを出し、道路の真ん中で排便する様子を観るのは、ショッキングなことです。通りの店の前、階段の隅で、とても小さな赤ん坊にミルクを飲ませる痩せた父親を観るのも。ベンチに横たわって眠る(汚れた?)女性を観るのも。

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しかも、それは決して彼らが貧しさに苦しんでいる、悲しんでいるからではありません。貧しい地区では、細かい商店や露店がぎっしり並んで、食べ物や衣服を売っていました。当然、それらはとても安いのです。

むしろ、社会的な限度を超える大きな格差が、平然と、1つの町に並置されていることこそが、衝撃的です。

彼や彼女が豊かな人々の暮らしをどう思っているのか、私には想像できませんでした。少なくとも、宿命を呪うことや、支配されていることに恨みを持つことで納得するわけではないでしょう。法律や民主主義はどうなっているのか? 暴力的な形で不満が爆発する、それを弾圧する警察や軍隊が秩序を守る、そのバランスがいつも問われているのか?

子供たちは元気に遊び、スラムからリュックを背負って学校に通う姿も観ました。学校は(その制服が示すように、「近代的な」国民を創り出す学校であるなら)、おそらく、こうした生活の在り方を変える1つの試みでしょう。親たちは子供に、どのような未来を望んでいるのか?

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