IPEの果樹園2018
今週のReview
8/13-25
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貿易と安全保障 ・・・国際秩序を守ることに反対する ・・・習近平の不安 ・・・移民をめぐる誤解 ・・・IT企業の繁栄する社会 ・・・世界貿易体制の改革 ・・・2008年という転換点 ・・・世界の炎暑 ・・・トルコの通貨危機 ・・・インド・パキスタンの分離 ・・・ネオ中世と諸都市の繁栄
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign
Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project
Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 貿易と安全保障
PS Aug 1, 2018
America’s Neville Chamberlain
HAROLD
JAMES
各国が安全保障に不安を感じるときには、しばしば、外国製品への依存を減らし、サプライチェーンを短縮し、国内生産を増やそうとする。しかし、保護主義は安全保障を高めるのか?
トランプ大統領は、貿易戦争を手段として考えている。しかし、歴史は彼の主張に反する。1932年、大蔵大臣であったネヴィル・チェンバリンは、それまでの自由貿易を転換して、新しい保護システム、を宣言した。それは外国との交渉をイギリスに有利にするはずだった。
しかし、実際には彼は第2次世界大戦への道を準備した。保護主義はイギリス経済を弱め、ドイツを強めた。わずか6年で、イギリスはミュンヘン合意のような宥和政策に陥った。
イギリスもフランスも保護主義に転換し、その結果として、チェコスロヴァキアの工業製品やルーマニア、ユーゴスラビアの農産物は西ヨーロッパ市場を失った。彼らはますます経済的、そして政治的に、ナチス・ドイツに依存するしかなくなったのだ。
国際連盟も、通貨介入による引き下げ競争も、現在、トランプが主張し始めていることと共通している。大不況の教訓は明白である。貿易戦争は安全保障を弱めるのだ。
NYT Aug. 1, 2018
Waiting for Caesar
By
Ross Douthat
NYT Aug. 2, 2018
Stop Calling Trump a Populist
By
Paul Krugman
● 国際秩序を守ることに反対する
FP AUGUST 1, 2018
Why I Didn’t Sign Up to Defend the
International Order
BY
STEPHEN M. WALT
先週、NYTに主要な国際関係論の学者たちが連名で広告を出した。“Why We Should Preserve
International Institutions and Order.”
それはトランプ大統領に向けたものだ。私も参加するように招待された。しかし、真剣に検討した末、参加しなかった。
私はかつて2つの同じような広告に参加した。2002年にはイラク侵攻に反対したし、もう1つ、イラン核合意を支持した。
トランプが外交の能力を欠き、アメリカの地位をすでに損ない、将来も損なうことを懸念する気持ちは、署名した人々と共通である。しかし、参加しない次のような理由がある。
1.第2次世界大戦後の国際機関には破滅的な者もあるが、それらを一緒に扱っている。私のようなリアリストは、米ソの2極体制と核兵器の方が、広告が示すいかなる国際機関よりも、大国間の戦争を回避する上で重要であった、と考えている。
2.「リベラルな国際秩序」を理想化する気分は現実認識を間違っている。戦後秩序は、その価値に反する行動や決定を多くともなった。
3.戦後の諸機関は、NATOやWTOのように、現在の問題の原因であった。その意味でも、新しい国際秩序や国際機関がもっと議論されるべきだ。
4.こうした広告には有効性がない。私が参加した2つの広告も、ブッシュ大統領がイラク戦争をはじめ、トランプ大統領がイラン核合意を破棄するのを止めることはできなかった。そもそも大当郎たちは学者の説得など聞かない。
アメリカ国民の多数が既存の国際秩序をアメリカの利益を損なうとトランプのように考えたから、彼は当選したのだ。このような広告でトランプには勝てない。
FP AUGUST
13, 2018
A Playbook
for Taming Donald Trump
BY STEPHEN M. WALT
FP AUGUST
17, 2018
America’s
Anxiety of Influence
BY STEPHEN M. WALT
●
FT August 2, 2018
‘No-deal’ Brexit and the sovereignty myth
David
Allen Green
FT August 2, 2018
Seven exhausting arguments against a
second Brexit referendum
Henry
Mance
● 習近平の不安
PS Aug 2, 2018
China’s Summer of Discontent
MINXIN
PEI
国家主席の任期上限を廃止したことで、習近平の権力は絶対的なものに高められた、という議論があった。しかし政治の世界は驚きに満ちており、現在、習近平の権力は最も厳しい局面にある。
特に、最新の悪いニュースはワクチンのデータ不正だ。権力に近い製薬会社が不良品を供給し、中国じゅうで子供たちがこのワクチンを接種した。習の腐敗防止や汚職追放キャンペーンが効果がないことを国民は知ったのだ。
習近平の個人崇拝、カルト集団が政府によって助長されていることも、問題視されている。
また、経済的な不安が高まってきた。今年の初めから株価は14%も下落している。3か月前には急落した株価を買い支えたが、それも続かなかった。人民元は安くなり、GDPの成長率も目標の6.5%を達成できない。
アメリカとの貿易戦争も、ビジネス界の最大の懸念材料だ。それは中国経済が今もアメリカの市場と技術に大きく依存していることを示した。それにもかかわらず習近平は攻撃的な外交政策を展開し、南シナ海などでアメリカと対立し続けている。
間違った方針を採用している、とエリートたちは政府を批判し始めた。たとえ習が、共産党組織、警察や軍隊を掌握し続けるとしても、その評価の悪化は方針に迷いを生じる。
● 移民をめぐる誤解
PS Aug 3, 2018
The Fog of Immigration
STEFANIE
STANTCHEVA
もしフランスが自由の女神像を、今、アメリカに送ろうとすれば、アメリカ人はその精神を受け入れるだろうか? 碑文は言う。「疲れた、貧しい者たちを、私に与えよ。/ あなたが追い回す、自由を熱望する大衆を、私に与えよ。」
移民論争で示されたように、多くのアメリカ人は「黄金のドア」を激しく閉めることを望むと思う。それはヨーロッパでも同じことだ。
しかし、アメリカ人やヨーロッパ人は、移民の規模や性質に関して、ひどく間違った理解に基づいて議論している。どれくらい移民がいるのか? 移民の多くはイスラム教徒か? 移民のせいで、社会保障支出が増大し、財政赤字を悪化させたのか?
移民の多くが、自分たちよりも貧しく、教育を受けておらず、失業しており、より大きく政府の給付に頼って暮らしている、と人々は信じている。しかし、彼らの認識は間違いである。調査したフランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、イギリス、アメリカで、人々は実際の2倍から3倍は移民がいる。と考えていた。人口の10-15%ではなく、30%程度と信じているのだ。
調査に回答したアメリカ生まれの人たちは、イスラム教徒が移民の23%だ、キリスト教徒は40%しかいない、と答えた。実際は、アメリカへの移民の61%がキリスト教徒であり、イスラム教徒は10%であった。
アメリカ人たちは、貧困層の37%は移民だ、と答えた。実際は、12%である。アメリカ人たちは、高校を卒業していない人々の38%は移民だ、と答えた。実際はその半分、17%である。移民たちは財政的な移転を望んでいない。移民が財政赤字の原因である、というデータもない。むしろ移民は経済ダイナミズムを高めている。
間違った認識は現実を変える。こうした認識は特定の人々に見られることも多い。一般に、大学教育を受けていない、極右政党を支持する人々、移民が集中する部門で働く教育水準の低い人々、などだ。
再分配政策に反対していた政治家たちは、移民問題を持ち込むことで、その主張を強めることになると考えている。それはナショナリストやポピュリストの戦略でもある。移民に関する間違った認識を放置すれば、重要な政策で間違った歪みを生じる。
人々の移民認識が間違うのには様々な源泉がある。特に顕著なものとして、メディアが歪んだ情報を流布している。
簡単な答えはないが、労働市場に移民を統合し、平和的な、機能するマルチエスニックな社会を築くことは、政治の務めである。
● チャリティー
PS Aug 3, 2018
Is Charity for the Poor Futile?
PETER
SINGER
● イタリア
FP AUGUST 3, 2018
In Italy, a Right-Wing Spin Doctor
Repents
BY
ANNA MOMIGLIANO
● 中国の結婚できない人口
SPIEGEL ONLINE 08/03/2018
The Matchmakers
China's 200 Million Singles Are a
Big Business
By
Katrin Kuntz
● FDIの国際ルール
PS Aug 3, 2018
Putting FDI on the G20 Agenda
KARL
P. SAUVANT, AXEL BERGER
トランプ大統領の貿易戦争に世界の関心は集まっているが、直接投資に関してはほとんど無視されている。しかし、その額は2017年に1兆4700億ドルに達した。G20が、そのルールを定めるために議論するときだ。
● 金融政策
VOX 04 August 2018
On the prosperity of countries
Linda
Yueh
PS Aug 10, 2018
Why the Bank of England Should
Target Growth
LINDA
YUEH
● IT企業の繁栄する社会
The Guardian, Sun 5 Aug 2018
There’s ingenuity behind Apple’s
great success. But we must guard against its might
Will
Hutton
NYT Aug. 6, 2018
Why Apple Is the Future of
Capitalism
By
Mihir A. Desai
PS Aug 17, 2018
Taming the Tech Monster
GUY
VERHOFSTADT
ジョージ・オーウェル『1984年』やオルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』の描いた世界をFacebookやGoogleは実現した。
Facebookのニュース画面には、利用者が好む政治ニュースしか載らない。それは中世のカソリック教会が利用できる情報を決める権力を保持したのと同じである。Zuckerbergは、事実をチェックする、と言うが、だれが、どのような基準で、チェックするかを決める際に疑問が残る。
デジタル情報企業を国有化する、というのは、問題をさらに悪化させる。トルコや中国がしていることだ。民主主義や政治は存在しなくなる。
かつて、独占企業は解体された。スタンダード・オイルがそうだ。反トラスト法は、コダック、Microsoft、Alcoa、などに適用され、それが経済全体を損なうことはなかった。しかし、1970年代、80年代に形成された、企業の規模ではなく、市場競争による経済効率を目的とする解釈が、Facebookや、Google、Amazonの拡大を守っている。
もっと分散型の、新しいインターネットを築くべきだ。1つのモデルはブロックチェーンである。ビットコインなどについて、その利用には懐疑論も多いが、既存のシステムと比較すれば、そのメリットを生かす公的な整備が望ましい。
政治におけるサイバー操作・干渉を防ぐべきだ。デジタル時代の選挙法を定め、ソーシャル・メディアは政治的な内容の中身に責任を持ち、真偽を見極めてネットワークに載せる。大衆への教育が欠かせない。
● ドイツ
FT August 5, 2018
Germany faces its worst security
dilemma since the 1950s
Constanze
Stelzenmüller
PS Aug 8, 2018
Germany’s Dangerous Nuclear
Flirtation
WOLFGANG
ISCHINGER
● 世界貿易体制の改革
FT August 5, 2018
The WTO has become dysfunctional
Dani
Rodrik
世界貿易体制は、中国のような、明らかに異なるルールでグローバリゼーションに参加する峡谷をどのように扱うべきか?
経済モデルが収れんすることを前提にWTOは成立した。しかし、それは起きないだろう。経済の多様性を反映したルールに変えるべきだ。
確かに国営企業や政治的介入は多大のコストをもたらすだろう。しかし、EUの共通農業政策も同じである。中国も、他国が独自の社会・経済戦略を創る権利を認めねばならない。貿易が国内の労働基準、財政システム、先端技術への投資を脅かすとき、豊かな先進諸国も、輸入や海外投資より、これらを重視することができる。
WTOは、経済モデルの多様性を権利として認めなければ、機能しない。
PS Aug 6, 2018
Europe’s Trade Coup
DANIEL
GROS
FP AUGUST 6, 2018
You Live in Robert Lighthizer’s
World Now
BY
QUINN SLOBODIAN
先月、ドナルド・トランプ大統領の通商代表であるライトハイザーRobert Lighthizerが議会で質問された。彼は、政権の他の多くの閣僚と違い、何を達成したいか、その方法についても知っている。
ライトハイザーは、自分の貿易に関する思想を、トランプ大統領も共有している、と述べた。長年ワシントンの住人として、政治のことを知っており、彼の経済思想がアメリカの今後を決めるだろう。彼は、それを「保護主義」と呼ぶことに反対した。アメリカの政策を、自給自足やグローバルマーケットからの撤退に向かうとみなすのは間違いだ。
彼は開かれた市場や自由貿易を好む。それは単純に、比較優位を支持する「経済学」によるものだ。しかし、標準的な自由貿易論とは異なり、ライトハイザーは、それを達成するために政治的な武器を使用する。「最恵国条項」やWTOの多国間のアプローチを彼は信用しない。むしろ2国間交渉で、より低い関税率を達成する、と言う。
それゆえ、ライトハイザーの単独行動主義は、自国産業を保護するためのものではない。彼は国際競争を支持し、強化することを求める。矛盾しているようだが、貿易戦争はより自由な貿易をもたらすのだ。
ライトハイザーは、実際には、中国の国家資本主義が市場を支配することに反撃したいのだ。そのためにアメリカは中国の攻撃スタイルをまねて、ある意味で、より国家資本主義的になる。それゆえ今の貿易戦争を、1930年代と比較するのではなく、1980年代から理解するべきだ。彼は日米投資協議の議長を務め、日本の鉄鋼輸入に関する交渉を指導した。
ライトハイザーに関して、当時、エコノミストのバグワティJagdish Bhagwatiは、レーガン政権の「攻撃的ユニラテラリズム」を批判し、その筆頭に挙げた。バグワティは、こうした姿勢を、工業製品の支配力を失ったアメリカの「巨人萎縮症」と呼んだ。しかし、それが外国市場を開放する効果を認めていた。その「互恵性」の主張は、19世紀のイギリスにおける「公正貿易」論にさかのぼる。
WTOは、中国がますます西側の国と同じ行動を示すようになる、単なるエキゾチックなカナダになる、と前提している。しかし、ライトハイザーは文化的に観てそれを否定する。
中国がアメリカの技術的な優位を奪ったのは、「強制的な技術移転」によるものだ、とライトハイザーは考える。国家資本主義、非経済的な技術の取得、サイバー攻撃による略奪、である。そこで彼は、中国がそのやり方を変えるまで、関税を道具として使う。
ハワイの最も若い民主党上院議員Brian Schatzが、先月の公聴会でライトハイザーに質問した。「中国とのチキンゲームで、彼らは50年、100年を考えている。われわれは、民主制の結果として、2年間の見解を問われる。」 この違いが、関税という手段では構造的な貿易不均衡を解消するのを不毛な戦略にしている。Schatzは問う。「あなたは非民主的な方針を目指すのか?」 「彼らは永久に待つことができるのに、われわれにはその余裕が全くない。」
それに答えることはなかった。アメリカの利益を損ない、中国の莫大な富をもたらしたものが、国家資本主義である、とライトハイザーは考えている。しかも、民主的意志決定に反するとしても、国家間の競争はますますそれを必要としている。
ライトハイザーの思想は、「歴史の終わり」の別の収れんを意味するものである。
FP AUGUST 8, 2018
China Doesn’t Want to Play by the
World’s Rules
BY
ABIGAIL GRACE
PS Aug 10, 2018
Globalization with Chinese
Characteristics
BARRY
EICHENGREEN
中国の目指す国際秩序は、第2次世界大戦後の国際秩序に比べて、多国間のルールより、2国間・地域内の合意を重視するだろう。
PS Aug 14, 2018
Protectionism for Liberals
ROBERT
SKIDELSKY
リベラルの人々にとって、財とサービスの自由貿易、資本と労働の自由移動は、リベラルな政治と切り離せない。トランプの「アメリカ第一」という保護主義は、その間違った政治と一体化している。
しかし、保護貿易に対する頑なな拒否ほどリベラルの政治を破壊する主張はないだろう。結局、「非リベラルな民主主義」が台頭したのは、無慈悲なグローバリゼーションの結果として、西側の労働者たちが苦しんだ(絶対的、相対的な)損失によってである。
アダム・スミスが述べたように、絶対的な優位による貿易は自然に生じる。それはもともと自国で生産できないようなものを貿易しているからだ。しかし、リカードの比較優位による貿易はそうではない。すべてにおいて優位を持たない国でも、最も劣位が小さな財の生産に特化することで福祉が改善する。
比較優位の理論は貿易の利益が可能な範囲を大きく広げた。それはまた、小さな優位しか持たない産業が輸入によって破壊される範囲も広げた。仮定では、資源がより効率的に配分されることで、「長期的に」成長が高まる。
しかし、リカードは同時に、「生産要素」すなわち土地、資本、労働力がその国に本来からあり、世界中を移動しない、と考えていた。この「慎重さ」の障壁が失われた結果、現代では、資本が流出し、雇用が失われること、技術が移転され、生産拠点が海外に移転されることで、職場の消滅をもたらしている。
エコノミストのThomas Palleyは、生産の海外移転をグローバリゼーションの顕著な性質として指摘する。工場は「艀(はしけ)」のように、低コストを利用するため、諸国の間を流動する。それを促す法的な整備が進んでいる。Palleyは、それが国内の労働者を弱め、利潤を増やすための、多国籍企業の巧妙な政策である、と考える。
アメリカ経済学会の大御所であり、ストルパー=サミュエルロン定理に名を示すPaul Samuelsonも、もし中国のような諸国が西側の技術と低賃金とを組み合わせるなら、貿易は西側の賃金を低下させる、と認めた。確かに西側の消費財は安くなるかもしれないが、賃金の低下を補うものではないだろう。
2016年、The
Economistは、グローバリゼーションの「短期的なコスト・ベネフィット」が「教科書が前提する以上に均衡している」と認めた。言い換えれば、1991年から2013年に、世界の製品輸出に示す中国のシェアは2.3%から18.8%に上昇し、アメリカ製造業のいくつかの分野が消滅したのだ。
グローバリゼーションの損失を認めるエコノミストたちも、その答えが保護主義だという主張には反対する。しかし、対案はない。もっと生産的な分野で雇用されるような職業訓練を助けると言うが、アメリカのラストベルトにとどまる人々は低生産性の低賃金職にしか移れない。
リベラル派がトランプの政治を攻撃するのはもちろん正しい。しかし、対案もなしに、その保護主義を批判するのは控えるべきだ。
FP AUGUST
15, 2018
Xi Jinping
Thought Is Facing a Harsh Reality Check
BY JULIAN GEWIRTZ
● 民主主義
FT August 6, 2018
There is no need to panic: ‘fake
news’ will ultimately lose
Gideon
Rachman
The Guardian, Tue 7 Aug 2018
American democracy is in crisis, and
not just because of Trump
Simon
Tisdall
● トランプ
PS Aug 7, 2018
No to Academic Normalization of
Trump
DANI
RODRIK
NYT AUG. 15, 2018
A FREE PRESS NEEDS YOU
By
The Editorial Board
NYT Aug. 17, 2018
Trump Is Not a King
By
Tim Weiner
● 世界政治
PS Aug 7, 2018
Global Politics for a Globalized
Economy
KEMAL
DERVIŞ, CAROLINE CONROY
グローバリゼーションの結果、21世紀には、世界経済を政治的に組織する枠組みとして、国民国家は重要でなくなる。
これに対してトランプのアメリカは、「勝手にする」ネオ・ナショナリズムであり、超国家的な制度を解体することを望んでいる。他方、EUはその逆だ。
● 日本の長寿社会
FT August 8, 2018
Japan begins to embrace the 100-year
life
Leo
Lewis in Tokyo
● 2008年という転換点
PS Aug 8, 2018
The Turning Point of 2008
ADAM
TOOZE
10年前の今週、ロシアの戦車はグルジアに侵入し、首都のトビリシまで数時間のところで停まった。コーカサスにおける短い戦争は、冷戦後の10年近く続いた西側のヨーロッパにおける覇権を終わらせた。
2008年8月、ヨーロッパの外交官たちは戦争を回避するために集まった。しかし、数週間で、世界金融危機が起き、世界の関心を集めるようになった。ワシントン、ロンドン、パリ、ベルリン、モスクワが銀行の破たんを心配し、軍事的エスカレーションは緊急課題ではなくなった。一見、グルジアの戦争と世界金融危機は関係がないように見える。しかし、それは対立をもたらした深部の潮流を無視するものだ。
共産主義体制後のヨーロッパを西側が吸収する作業は、単なるベルベット革命ではなかった。ブッシュ政権のラムズフェルド国防長官が「新しいヨーロッパ」と呼んだ、NATOとEUに新規に加わった諸国は、莫大なドルの流入によって動いていた。アメリカの住宅バブルと同様に、ヨーロッパの銀行はイギリス、アイルランド、スペインでも大規模なバブルを生じた。その最も極端な不動産価格のインフレがNATOの東のフロンティア、バルチック諸国で起きた。
ロシアとの安全保障が懸念されたために、脱共産主義国家は繁栄に取り残された。2000年代の初め、ウクライナやグルジアは、NATOにもEUにも入れず、カラー革命のもたらした「キャッチアップ」の期待は満たされなかった。
他方、プーチンのロシアもグローバリゼーションの大きな利益を得ていた。主に、中国が刺激した新興経済のブームが、原油価格を上昇させたからだ。
2008年にウクライナがNATO加盟を申請したとき、それはロシアの介入を刺激しなかった。しかし、グルジア戦争がきっかけとなって、ウクライナの政治家たちは3つに分裂した。西側と同盟するか、ロシアと同盟するか、両者のバランスを取るか。その対立は金融危機の衝撃によって過熱した。
旧ソ連圏ほど、世界金融危機の影響が厳しかったところはない。グローバルな融資は圧縮されて、最も弱い借り手が最初に見捨てられたからだ。世界最大の石油・天然ガス輸出国であるロシアは、最大の被害を受けた国の1つであった。しかし、1990年代の金融危機を経験して、プーチンはロシアを巨額のドル準備で守るべきだと考えた。それが金融危機を乗り切る助けとなった。
実際、その衝撃は東中欧で政治を分裂させた。バルチック諸国はユーロ圏への加盟方針を堅持した。ハンガリーでは諸政党が信用を失い、オルバン首相が非リベラルな体制に向かう機会を得た。政治的に脆弱で、経済的にも弱いウクライナは、グルジア戦争と世界金融危機のダブルパンチであった。
2008年8月の教訓を世界は学ぶだろう。資本主義は危機を繰り返す。そして、グローバルな成長は必然的に安定した一極世界をもたらすわけではない。むしろ、多極化が進み、外交的、地政学的な和解の努力がなければ、それは紛争へのレシピとなる。
● 世界の炎暑
NYT Aug. 8, 2018
The Earth Ablaze
By
Don J. Melnick, Mary C. Pearl and Mark A. Cochrane
世界の炎暑は持続的でかつ破滅的である。森林火災の増発は、今後ますます悪化する気候変動の、1つの側面である。
● トルコの通貨危機
NYT Aug. 10, 2018
Erdogan: How Turkey Sees the Crisis
With the U.S.
By Recep
Tayyip Erdogan
NYT Aug. 10, 2018
Turkey’s Downward Spiral
By
The Editorial Board
FT AUGUST 14, 2018
Financial tremors threaten Recep
Tayyip Erdogan’s hold on Turkey
David
Gardner
安価な外国融資の大規模流入に依存した建設と消費による経済ブームは、すでに過熱状態であった。今回の危機は、エルドアンがトランプと衝突したことによる。双方の間には多くの問題が重なってきた。
エルドアンには明白な選択肢があるけれど、それはどれも彼の好むものではない。インフレに対して金利を上げることにも、むしろインフレになる、と反対する。もちろん、それはブームを壊すことで都市の住民が反対することを恐れているのだ。
IMFに頼るのは主権を損なう。アメリカにあやまる必要がある。そんなことをしたらメンツがつぶれる。彼は今も戦闘的な姿勢を続けている。
トルコの友人たちが苦境から救い出してくれるとは思えない。ロシアにとっては、ウクライナ侵攻に関する制裁を解除することが最優先だ。中国はトランプとの貿易戦争を終わらせたい。アラブ諸国で唯一残っているカタールは、サウジの禁輸措置に直面しており、手いっぱいだ。
エルドアンは、世紀転換期の金融危機で権力を得た。
PS Aug 14, 2018
The Turkish Emerging Market Timebomb
JIM
O'NEILL
トルコの通貨・金融危機は、新興市場の教科書的な例である。1990年代から、そのようなケースを飽きるほど見てきた。
トルコは大幅な経常収支赤字を続け、好戦的な指導者は、彼のポピュリスト的政策が持続可能ではないことを理解せず、ますます、外国投資家(と国内の富裕層からの投資)に依存するようになっていた。
市場は、長い間、トルコが通貨危機に向かうことを予想していた。そして今、危機がついに訪れて、そのコストを支払うのはトルコの国民だろう。金融政策を引き締め、外国からの借り入れを減らし、全面的な景気悪化に向かうことで、国内貯蓄が時間をかけて埋め合わせるのを待つのである。
エルドアン大統領の指導力は、問題を複雑にするとともに、一定の解決に向けたレバレッジともなる。エルドアンは憲法を改正し、権力を集中した。アメリカのトランプ大統領と口論し、ロシアのミサイル防衛システムの導入を契約した。
これは危険なことだ。特にアメリカ政府が、レーガン型の財政赤字拡大と、それによって連銀に金融引き締めを急ぐ必要性を感じさせているときだから。新興市場は海外借入が枯渇するだろう。エルドアンの非正統的な政策は放棄されると思う。
しかし、危機を超えてトルコの成長を観る必要がある。若者の人口比率が高く、将来の潜在成長力を期待できる。ヨーロッパ、中東、中央アジアをつなぐ、トルコの地政学的な位置は、多くの近隣諸国に安定化のための協力を合意させる。しかし、プーチンのロシアと関係を深め、NATOを離脱するようなことは間違いだ。ロシアがエルドアンの赤字を補う力はない。
カタールでは無理だが、中国は支援を与えるだろうか? それも、ギリシャのケースを観れば、金融危機による有利な投資機会を中国企業が得るだけの話であろう。
つまり、トルコ経済を救済するのは伝統的な西側との関係強化、すなわち、アメリカとEUである。トランプにとって、トルコの経済危機から始まる世界経済の悪化や、急激なドル高は、彼の国内的な目標をとん挫させるものだ。もしエルドアンが望めば、トランプは「取引」に応じるだろう。
同様にヨーロッパの大銀行も、特にぜい弱な銀行にとって、トルコに対する巨額の融資が懸念される。難民危機の影響も続いており、トルコの経済危機はEU内の一層深刻な不安定化に向かうレシピとなる。
その過激な演説にもかかわらず、エルドアンが孤立主義や西側との対決姿勢を棄てるなら、多くの投資家がリラをもっと買っておけばよかった、と思うようになるだろう。
PS Aug 15, 2018
The West Must Face Reality in Turkey
RICHARD
N. HAASS
NYT Aug. 15, 2018
Worried About Turkey’s Economic
Problems? China’s Could Be Worse
By Ruchir
Sharma
強権的指導者の例に従い、トルコのエルドアン大統領は自国の金融危機を、裏切り者や外国勢力のせいにする。
多くの新興市場が過大な支出と対外借入への依存によって金融危機に対する脆弱性を高めているが、トルコはその中でも顕著なケースであった。エルドアンが2002年に権力を握る前でもそうだ。しかし、彼の政策は、金利を極端に引き下げ、債務、赤字、インフレを加速させて、事態を悪化させただけだった。裕福なトルコ人の多くは次の危機が起きると予想し、その前に脱出を試みてきた。今や外国投資家がそれに加わった。この数日、トルコ・リラの価値は急落している。
トルコの危機は自ら作り出したもので、だれかが経済戦争を仕掛けた、というのはエルドアンの妄想である。しかし、急速なドル高に関する指摘は正しい。発展途上諸国の経済はドル高によって破壊された、という歴史があるからだ。
新興市場の通貨危機の前に、多くの場合、アメリカ連銀が金融を引き締め、ドル高が起きた。トルコのような発展途上諸国は、債務の返済が困難になって、外国投資家たちは逃げ始めた。
問題は、トルコの通貨危機が、1997年のタイ・バーツのように、世界経済危機の引き金になるか、である。トルコ・リラの下落は他の発展途上諸国にも影響するが、トルコのような二重の問題、対外債務依存と、政府のインフレ的な拡大策、を抱える国は少ない。
しかし、さらに深刻な別の問題が存在する。それは、ドル高が世界第2の経済規模を持つ国、中国の金融・経済危機につながる可能性だ。
ドル高に対する中国の問題はトルコと異なる。輸入超過でドルの借入に頼るトルコのような問題は中国にない。しかし、2008年の世界金融危機後、中国政府は成長を維持するために融資を増やした。過去10年間の世界の債務増の半分以上が、中国国内で生じた。今や中国にはアメリカ以上の貨幣が供給されており、彼らはより有利な投資先を探している。
つまり、中国には深刻な資本逃避のリスクがあるのだ。アメリカ連銀が金利を引き上げつつある。中国は資本逃避を阻止するために管理を強化したが、それは長期的には無効になる。人々が規制を回避する方法を見出すからだ。
アメリカの金利が上昇しても、中国は金融緩和を続け、人民元の価値が下落する。それは資本逃避をますます刺激する。中国政府は、人民元の価値を高めてドル高の魅力を削ぐことができる。しかし、それは金融引き締めと、すでに減速しつつある中国の成長を、過大な債務返済の負担でさらに減速させるだろう。
アメリカが世界経済に占める比率は、2001年の32%から、23%に低下した。しかし、世界の中央銀行が保有する外貨準備にアメリカ・ドルが占める割合は60%以上もあり、中国は人民元をドルに代わる外貨準備にする野心を持っている。
危機はトルコから中国へ、トランプの貿易戦争から通貨戦争へと、展開するかもしれない。アメリカにとって人民元の価値が下がって中国の輸出を増やすことは決して望まないだろうが、この数日、中国は人民元の下落を防ごうとしている。
中国の選択はむつかしい。ドル高が資本逃避を増やす中で、人民元の価値を維持する政策は成長を減速することになる。北京が低利融資を拡大し続けたのは、アメリカの金融政策が極度に緩和し、ドル安が続いたからだ。今や、アメリカの金利は上昇する。
世界経済の行方は、中国の選択にかかっている。
FT AUGUST 16, 2018
Erdogan and Trump battle it out in
the lira blame game
Katie
Martin
PS Aug 16, 2018
Can Turkey Rewrite the
Crisis-Management Rules?
MOHAMED
A. EL-ERIAN
SPIEGEL ONLINE 08/17/2018
Hot Heads
Erdogan-Trump Tiff Endangers Turkish
Economy and NATO
By
Tim Bartz, Maximilian Popp and Christian Reiermann
FT August 18, 2018
Turkey: the perils of Erdogan’s
power grab
Laura
Pitel in Istanbul
(後半に続く)