IPEの果樹園2018

今週のReview

7/30-8/4

***************************** 

米ロ首脳会談 ・・・EU離脱交渉 ・・・貿易戦争 ・・・ロボットとスマート政策 ・・・多極化 ・・・インドのモッブ政治 ・・・シュミットの哲学

長いReview

****************************** 

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 米ロ首脳会談

FP JULY 20, 2018

Trump’s ‘Unbridled, Egotistical Narcissism’ Defines White House Summits

BY COLUM LYNCH

アメリカの外交官で最も優れた者の1人であるThomas Pickeringは、トランプとプーチンの首脳会談後、トランプ外交について語った。

・・・アメリカ大統領がこれほど間違った情報により、アメリカの利益と制度を顕著に否定する行動を取った例を、私は思い出せない。全く恐ろしいことだ。

・・・(補佐官をともなわずに、他の指導者と2時間会談すること)は異例である。クリントン政権下の米ロサミットに、何度もモスクワで関わったが、議論はあらかじめ十分に準備されていた。双方の大統領は、何がすでに合意され、何がまだ合意されていないか、どうするべきかの示唆も含めて、知っていた。準備も無しに、エリツィンとクリントンが何かを議論することはあり得たが、きわめて珍しいことだ。

・・・(権力を握るまで)プーチンは100KGBの生粋のスパイとして行動していた。彼は聴き、睨み付け、ほとんど何も話さず、対話の相手として望まない人物だった。

・・・(G7サミット、NATOサミット、米朝サミット、ヘルシンキ・サミットを経て、トランプのサミット外交はどれほどの不利益をもたらしたか?) トランプの抑制を欠いた、エゴに駆られたナルシシズムが、これらサミット外交を動かす主要な要因だった。アメリカの国益はまるで重視されず、棄てられたに等しい。トランプの人気を高めるリアリティーTV番組の道具となった。アメリカの国益ではなく、彼のエゴ、その政治的な成功だけが彼の頭を支配していた。

・・・(彼にどうすることを望むか?) 多くの関心事がある中で、最優先すべきは選挙への介入と核兵器の問題である。

FT July 23, 2018

Revenge on the US is sweet for Vladimir Putin

GIDEON RACHMAN

ワシントンの外交専門家たちの間には、信じられない気分、恐怖、怒りが広がった。しかし、最も深い感覚としては、侮辱された感じである。アメリカ大統領が国際的な舞台で恥をかき、ロシアの大統領がこれを観てニヤニヤと笑っている。

アメリカやイギリスから見て、ロシアは国際法を守らない国家だ。クリミアを併合し、宣戦布告せずにウクライナへ侵攻した。しかし、ロシアの反応は違う。西側の同盟こそイラクやリビアにを規模に攻撃した。ロシアの国境線までNATOを拡大し、直接の脅威を与えた。

ロンドンとワシントンが最も嫌うのは、ロシアがウクライナからUKまで暴力を行使し、それに関して組織的に虚言を述べ続けることだ。ロシアの官僚が示す態度が意味するのは、西側も嘘をついているし、ロシアは攻撃を受けており、虚偽も必要な防衛手段である、ということだ。しかし、ロシアのプーチン関係者が汚職や蓄財に走るのは、彼らがロシアを守る愛国者ではない、と示している。

ロシアの経済が破たんしたのは、西側が介入したからではない。ロシア政府の政策が間違っていたからだ。他方、アメリカの民主主義にも深刻な問題がある。

双方が問題は国内から生じている、と認めることだ。


 EU離脱交渉

PS Jul 23, 2018

From Brexit to Breferendum

ANATOLE KALETSKY

「イギリスはEUを離脱しても、まったく同じ利益を享受できる。」と、はDavid Davis繰り返し述べた。Boris Johnsonはさらに大げさに称賛した。「イギリス人はヨーロッパ中で生活し、働き、研究する完全な自由を保持するだろう。すべてのEU機関に参加し、離脱後のイギリス政府はEUの果樹園から好きな果物だけ食べればよい。」

しかし、今やその妄想の結果は明らかだ。政府は議会の多数が支持する離脱案を提示することができない。もしこの状況が続けば、イギリスの選択肢は1つしかない。もう一度、国民投票をして、2016年の投票が実行不可能だと認めることだ。

議会はBrexitを阻止する反乱を決意するだろう。リベラル、グリーン、スコットランド国民党は“Exit Brexit”でまとまっている。しかし、Brexit推進派と保守党の多数、さらに労働党指導部も、国民投票の結果を優先している。労働党は議会を解散する機会を狙っているのだ。しかし、保守党は解散を望まない。

2016年の国民投票を翻す投票が必要だ。


 貿易戦争

NYT July 23, 2018

Trump Is Wrong About Trade. So Is Everyone Else.

By Adam Tooze

トランプ大統領はEUを「敵」と呼んだ。それはヨーロッパのエスタブリシュメントたちに衝撃の波を生じた。

トランプの考えを公平に述べるなら、彼がEUを敵と呼ぶのは、EUが貿易に関して何をしているか、その意味で、「悪」である、というわけだ。

ネオリベラリズムが世界経済の統合化を進める中で、人々は国家の「競争力」を重視するようになった。超国家的な生産システムは、ナショナリズムを無効にした。もはやアメリカ人の誇りであるFord自動車を買うとしても、その半分はNAFTAの部品である。

製造業だけでなく、金融も、国境線を消している。2008年のバブルはアメリカの銀行だけでなくヨーロッパの銀行にも広がった。銀行の生き残りを支持するために、アメリカ連銀は、イングランド銀行、ECB、日銀、スイス国立銀行を通じても、流動性を供給した。

これほど大規模な統合化が進みながらも、各国の認識はグローバル化していない。世界経済はワールドカップと同じように、コスモポリタンで、トランスナショナルな、しかし各国別のチームが優勝カップを争う。政策の基本は「国家の競争力」である。

統合化を薦めながら、しかも競争力にこだわり続ける。EUは拡大と進化を、アメリカはNAFTAを実現したとき、1990年代に最も飛躍したのは中国だった。西側と同じグローバリゼーションに参加した中国は、今や欧米よりも、世界成長の主要なエンジンとなっている。だが中国企業が共産党から独立していると思うのは幻想だ。

アメリカと中国に挟まれて、EUは防御に傾いている。しかし、もしリベラルな秩序を回復することを望むなら、EUは競争力に固執する姿勢を止めるべきだ。東地よりも一層の民主主義を彼らは必要としている。トランプの醜い非難をヒントに、自分たちの姿勢にも目を向けることだろう。


 FANG

FT July 20, 2018

How I learnt to love the Fangs

STUART KIRK

Netflixの株価が45ドルから10ドルに急落したことがあった。契約料を引き上げたからだ。今では370ドルだ。

私はかつてFANGの収益について否定的なことを書いてきたが、最近の出来事を観ても、その悲観論が正しいとは証明されなかった。最近は、もっとプラス面を見るようになった。FacebookAmazonGoogleの株価も非常に高い。これらFANGの株価は正しいのか?

FANGsの株価は通常の景気変動に強い。人々は検索することを止めないし、良くも悪くもビデオを観る。


 ロボットとスマート政策

PS Jul 20, 2018

No Robo-Apocalypse

MARK PAUL

新しい金ぴか時代である。富裕な、権力を握る者たちは新技術の利益を独占し、平均的な労働者はますます「機械化の波」を恐れている。

しかし、AIやロボットが人間の職場を失わせるのは避けられない、とするのは間違いだ。歴史的にも、機械化は職場を破壊する以上に多くの職場を生み出した。

新しい金ぴか時代をもたらすのは権力の大きな不均衡である。それは技術革新と利益の分配とをつなぐ長期的な関係を破壊する恐れがある。「余剰人口」が増大することへの不安は理解できる。労働者の将来は、ロボットではなく、われわれが決めるのだ。

データを観ることだ。1947-1973年の戦後ブームで、アメリカ経済の生産性上昇率は年2.7%であったが、2006-2017年にはわずか1.2%である。現在のアメリカにハイテク技術革命など起きていない。長期的な生産性上昇率の停滞、すなわち、技術革新の低迷が続いている。

それでも、産業革命以来、新技術や新しい生産方法が労働市場をかく乱し、労働者は職場を失っている。歴史は、その地域社会や職業、産業に対する影響が短期的には深刻なことを示している。しかも現代の技術革新が懸念されるのは、生産性の上昇と労働者の生活水準との歴史的リンクが1970年代に破壊されたことだ。

技術は社会全体にとって有益であり続けているが、アメリカの不平等は歴史的に高い水準にある。経済成果の分配を決めるのは、それを支配するルールや制度である。もし不平等が拡大したとすれば、それは技術ではなく、公共政策の問題だ。

Robert Skidelskyが言うように、AIやロボットは古くからある問題だ。「もしすべての船を浮かせるのが目標なら、グローバリゼーションやAIを減速することが必要だ。」

なぜ技術革新は労働者の生活水準を高めないのか? ここでアメリカの社会と民主主義が問題になる。雇用と統合化を担当するスウェーデンの大臣は述べた。「職場は消滅するが、われわれは新しい職場に向けて労働者たちを訓練する。われわれは職場を保護しない。労働者たちを守るのだ。」 スウェーデン国民の80%はAIやロボットを恐れない。他方、アメリカ人の72%が職場を破壊されると恐れている。

アメリカでも、1960年代に、国民に広がる機械化への不安を受けて、リンドン・B・ジョンソン大統領は委員会に報告書を作らせた。1966年に発行された報告書は、失業や不平等を強めないように、正しい経済ルールを採用することを求めた。今、アメリカに求められるのはスマートな公共政策である。そのために議論すべき基本的アイデアはある。

1に、完全雇用を実現する。アメリカ連銀は、物価の安定だけでなく、完全雇用をもっと明確に追求し、その権限を確立するべきだ。また、非自発的失業をなくすために、アメリカ政府は雇用保障を行う。労働年齢のすべての成人がこれによって必ず職を得る。まさに、1966年の委員会が求めたものだ。

2に、知的所有権を、技術革新の利益がもっと公平に分配されるように改正する。1970年代から、アメリカは特許や著作権の期限を延長し、政府が許可した独占を効果的に促した。保護期間を短縮するだけでなく、公平な社会の実現のために、現在、経済を歪めている技術革新者のレントを大部分消滅させるべきだ。AIも、デジタル・マーケティングによりレントを得るだけでなく、労働者のケガを減らし、職場を改善し、生活水準向上に利用するべきだ。

他にも、効果的なワーク・シェアリング、高等教育の社会的な負担、労働者の組織化に対する権利強化、などが考えられる。


 多極化する世界秩序

PS Jul 20, 2018

Can Multilateralism Survive?

KEMAL DERVIŞ

世界は、一極型秩序から多極型秩序に向かっている、と言われる。しかし、グローバルなパワーを実際に定量的に語ることはむつかしい。

ある国の国際的な重量を測定する合意された物差し・基準はない。相対的な重量の変化と国際的ルールへの反映を観るために、3つの量が注目される。人口、GDP、軍事力だ。もしこれらの重要さを均等に評価して加算すれば、世界で最も重要な諸国は、アメリカ、中国、EU、日本、インド、ロシア、ブラジル、になる。

もちろん、多くの問題がある。EU1つの国家ではない。3つの量が均等に重要であるとは言えない。とはいえ、議論のための出発点になる。

この量が示す顕著なことは、中国の台頭だ。GDPと軍事費で、そのシェアは大きく増加した(1.7%から15%へ。1.6%から13.8%へ。)。インドも増加したが、もっと小さな程度である。アメリカはGDPと人口で少し減少したが、軍事費では圧倒的な優位を維持している。

われわれは米中2極の秩序に入るだろう。多角主義を維持するためには、米中を含む、主要諸国の支持が必要だ。しかし、今のところ、中国の指導者たちは、中国に好ましいものだけ、多角主義を支持する。EUの内部は分裂状態にある。インドの現在の姿勢はユニラテラリズムに向かっているうえに、その影響力は限られている。

現代の緊密に結合した世界においては、市場と経済活動を統治するルールと制度を、われわれはこれまで以上に必要としている。アメリカの姿勢が現在のような時期は、部門ごとの、地域ごとの協力が、それに代わるだろう。しかし、アメリカの重要性を反映して、グローバル化とデジタル化に対応したグローバル・ガバナンスを再びアメリカが指導するべきだ。


 インドのモッブ政治

NYT July 20, 2018

A Minister Feting a Lynch Mob? India Recoils in Disgust

By Jeffrey Gettleman and Hari Kumar

Jayant Sinhaはボストンのバスケットボール・チームCelticsファンで、ハーヴァード大学の卒業生だ。McKinseyに勤めていた。インドに生まれたが、アメリカで育ち、ボストン界隈で富と成功を得た。アメリカの友人たちによれば、彼は政治的に穏健で、進歩的ですらあった。

その後、Sinhaはインドに帰る。

コンサルタント会社の経営陣が着るスーツはやめて、インドの伝統的なクルタに換えた。ヒンドゥー右派政党の議員として議会に参加し、モディ政権の閣僚になった。

今月、彼は、ムスリムの男性をリンチで死に至らせた罪に問われる8人の殺人犯を歓待した。Sinhaが男たちに花輪をかける姿は、インド中で、政治が宗派対立や過激主義に毒されていることのシンボルになった。

インドは群衆によるリンチの時代になった。多数の人々が群衆によって、時代に飽き足らない若者たちによって、殺害されてきた。彼らは攻撃した人物の頭を踏みつけて、一緒に写真を撮り、仲間同士で交換する。ソーシャル・メディアで、瞬時にだれを殺すべきか、情報を流す。

Sinhaは、今では、囚人たちに花輪を賭けたことを、恐ろしいと感じている。「極端に分裂した社会では、こうしたことが火花となる。」「2度とこうしたことはしないだろう。」

何十年間も、インドの政治は中道左派の国民会議派が支配してきた。しかし、4年前、インドの政治的景観は一変した。ヒンドゥー至上主義から生まれたBJPが大勝して、党首のナレンドラ・モディは首相の地位に就いた。インド経済に高い成長を実現するために、アメリカで成功したファンド・マネージャーのSinhaをモディは選んだ。

Sinhaの出身地はニューデリーの500マイル東にある、貧しい、問題を抱えた、保守的なHazaribaghである。炭鉱があり、毛沢東派の反政府派がおり、土地を奪うギャングがいる。インドの多くの土地がそうであるように、Hazaribaghも多数派のヒンドゥーと少数派のムスリムが対立を深めながら暮らす。ヒンドゥーの人々は自警団、特に、牛の守護者たち、を認めている。

Sinhaの選挙区で、そうした自警団の1つがムスリム商人のAlimuddin Ansariを襲撃し、リンチにして、警察が介入したが、その後、死亡した。彼が牛肉を運んでいた、というのだ。群衆はAnsariをバンから引きずり出し、暴行した。

公職を引退した人々の団体はSinhaに辞任するよう求めている。彼は実質的に「マイノリティーを殺害する者にライセンスを与えた」と非難する。


 シュミットの哲学

FT July 22, 2018

Donald Trump and Vladimir Putin want to create a new world order

ANNE-MARIE SLAUGHTER

トランプとプーチンの「国賊サミット」と新聞は書く。冷戦期のアメリカ人にとって、ロシアはあらかに敵だった。しかし、われわれは想像力を修正するべきなのか。トランプとプーチンが描く世界秩序を真剣に考えるときだろう。

ヘルシンキで、2人の誇大妄想・筋肉誇示男性が会談した。彼らは現代の深刻な怒り、恨み、秩序正しい、予測可能な、家父長的過去という想像物へのノスタルジアを満たす。この失われた時代において、男は家族や国民の長であり、筋肉誇示がタフさを示す。女性は服従し、装飾であり、白人は非白人よりも優越している。子供たちは明確に認められた文化の範囲内で部族結婚する。

この意味で、ロシアにおけるプーチン支持者とアメリカにおけるトランプ支持者とはイデオロギー的な同盟者である。彼らは「自由な新聞」や「法の秩序」を嫌う。手なずけられたメディアや権力者に忠誠を示す判事たちを好む。彼らは中身よりも見せかけを優先し、伝統やナショナリズム、エスニックの純粋さによって支配を正当化する。

権威主義的な家父長制のイデオロギーは、加速の問題や国家の対外行動にいかなる制約も受け入れない。トランプとプーチンは何でも許される国家主権の時代に戻ることを支持する。国際機関や超国家主体を解体し、「偉大な大国」による多極政治を目指す。そこでは同盟関係も取引でしかない。

国際秩序への反対は、突然、スパイ小説から現れたのではない。共和党の極右は何十年も国連の危険な性格を誇張してきた。トランプは彼らの主張を正当なものにしただけである。また2017年の調査では、共和党員の半数以上がロシアとの関係改善を指示した。彼らは「アメリカ第一主義者」なのだ。イギリス、ハンガリー、フランス、イスラエル、各地に自国第一を叫ぶナショナリストたちがいる。彼らの望みは19世紀型のルールだ。

なぜそれが悪いのか? 第2次世界大戦後の秩序は70年を経た。ソビエト連邦は70年続いた。そして崩壊した。ロシアが残った。EUも崩壊するかもしれない。ヨーロッパの諸国が残るだろう。NATOも崩壊するかもしれない。

われわれは既存秩序を守るだけでは不十分だ。国家や非国家の諸制度を守る積極的な構想を示さねばならない。それに参加する者を制約する以上に、大きな力を与え、諸問題を一緒に解決できることを示すべきだ。

PS Jul 23, 2018

Trumpism and the Philosophy of World Order

MARK S. WEINER

NATOサミットとプーチンとの会談が示した大失策。トランプ個人を責めることは、たとえその多くは正しくとも、もっと深い問題をみていない。

トランプの行動、その世界観を説明する哲学が存在する。それは、ドイツの法哲学者、カール・シュミットだ。シュミットは近代のリベラリズムを根底から批判した。

その核心は、リベラリズムの普遍的な意欲に対する嫌悪だ。リベラルは個人の諸権利を政治コミュニティーの中心に置く。そして原理的に、それらの諸権利はすべての者に及ぶ。アメリカというのは、いわば、思想なのだ。

シュミットに言わせれば、このような考え方は内外に破滅をもたらす。国内では、「人民」についてのリベラルの概念には排除する者がない。しかし、もし「われわれ」が誰でも含めるとしたら、リベラルな国家は内側から私的な利益集団に占拠され、外側から外国人たちに侵食されるだろう。

リベラルな外交も、シュミットは批判する。排除しない、諸権利を基礎にした外交の原則は、リベラルな諸価値に従わない諸国に対する内政干渉を強いるだろう。また、リベラルな国家が国際紛争に関わるとき、彼らは敵国を単なる競争者ではなく、「絶対的な敵」とみなす。それは全体戦争、永久戦争のレシピとなる。

規範や普遍性ではなく、シュミットは土地に根差す政治的アイデンティティの理論を提唱する。土地は、トランプが政治家になる前から称賛してきた原理であろう。

政治コミュニティーが形成されるのは、ある集団が自分たちの共有する文化的な絆を意識し、命を懸けてそれらを守るべきだと信じるときである。こうした主権の文化的な基礎は、究極的には、明確な地理に起源をもつ。もしくは人民の居住である。

シュミットによれば、法の哲学的前提とは、コミュニティーの「ノモス」である。すなわち、その地理から生じるそれ自体の意識なのだ。それに対して、リベラルは、国民を何よりも法的な誓約とみなす。

トランプの行動や政策は、シュミットの見解と一致する。アメリカの南の境界線に壁を築く。それは「愛」によって求められた政策なのだ。シュミットは、世界をモンロー宣言の拡大とみなす。偉大な諸国がその影響圏を確保する。そして相互に敬意を払うのだ。

トランプとプーチンが並んでアメリカの諜報機関を見下すのは、シュミットの思想から当然だ。トランプが去った後も、その思想は残る。

******************************** 

The Economist July 14th 2018

American democracy’s built-in bias

Reforming the welfare state: Back to basic liberalism

Electricity in the developing world: Light-bulb moment

Agriculture in India: Slim pickings

America’s democrats: Where to now?

(コメント) アメリカの民主主義が機能しなくなっています。それは共和党支持者がますます地方を代表し、民主党支持者がますます都市部を代表する傾向に示されている、と記事は指摘します。そして、共和党がそのイデオロギーや基本姿勢を示すことに対して、民主党はそれが難しくなった、と。なぜなら、民主党は、さまざまな少数派の権利を支持し、虹の連合を組織したからです。

アメリカの民主主義や豊かな国の福祉国家に関して、見直しが進むことは、インドに行く前に良い準備運動になりました。

****************************** 

IPEの想像力 7/30/18

教室や食堂で、学生と話し合いました。

****

・・・マスコミの言っていることは正しいか? 政権を支持する新聞と反対する新聞とでは、国会の紛糾を伝えてもまったく説明が違う。

「良識ある」人々がトランプを批判しても、その支持者たちは聞く耳を持たない。互いに異なるメディアや情報源を信頼し、議論がかみ合わない。まともに議論することも無くなる。

こうして調べたり、教室で議論して、考えても、無駄ではないか。

・・・確かに、1人で何を変えるということもできない。そうかもしれないが、知識を得て、考えることは決して無駄ではない。

政治家たちは聴衆の反応を気にしている。人々が政治家の主張に耳を傾け、注意していると思えば、彼らは真剣に考え、準備し、行動するだろう。

教室でも、熱心に聴いてくれる学生は少ない。たとえば最前列の数人とか、教室の中の数人が点在するだけだ。もし教室の4割が熱心に講義を聴いてノートを取っていたら、教師は大いに恐怖し、準備に励むだろう。

****

なぜ学生たちの成績は「首長竜」のような姿になったのか?

おそらく、偏りのない知性と優れた公平な教育が行われたなら、成績は正規分布になるべきでしょう。しかし、ほんの一部分しか60点以上を取れない。

しかし、いつからか成績分布は2つの山を持つようになったのか、と思います。そして次第に、下の山だけになって行きました。

全体として、下の方(たとえば10点から40点まで)に山があり、高得点(80点以上)の少数派がわずかにいます。それは5%ほどでしょう。

なぜこうなったのか?

・大学進学率が高くなった。大講義は、繁華街の中を歩くような雰囲気になった。

・受験生が減るのに、「有名」大学は学生数を増やした。広告宣伝やブランド価値により、受験生を集めた。

・政府が、「学力低下」「国際競争力」「ノーベル賞」「教育改革」などと称して、大学間競争を奨励した。そして文化系学部を極端に軽視した。

・大学の設備や講義は、若者向けのサービス産業の一部になった。

・学生自治会が消滅した。学生たちが学ぶことについて積極的に要求し、定義することはなくなった。サービスの消費者として、提供者を選択する。

・学費が上がり、奨学金制度が失われ、学生たちは確実な単位取得とアルバイト、就職活動を重視するようになった。

****

母の参詣にお供して、梅田を歩くとき、『ビッグイシュー』を買いました。「夏、大人の自由研究」です。あいにく大水害の時期と重なり、記事を楽しむには重苦しい現実のニュースが続いていましたが。

私は、「川でサップを漕ぐ」と「奈良・十津川盆踊り」が気に入りました。以前、ニューヨークのハドソン川をカヤックで下る記事を読んだことがあります。川面と同じ高さから自然や生き物を感じ、都市の景観を味わってみたい、と思いました。

そうか、大阪市内にもあるんだな。

奈良・十津川村の盆踊りも、できたら行ってみたいな、と思いました。奈良と言っても、とっても遠い。どうしてこんな田舎に住む人がいるのだろう、と子供に訊かれたのを思い出します。

****

大学教育が、理想や社会改革の熱意を持たなくなったとき、社会や政治に深刻な影響を生じます。

大学がどうなっていくのか、常に考え、模索し続けることでしょう。とても貴重な時期を、若者たちが有意義に過ごさない限り、おそらく文明は衰退し、荒廃するのです。

******************************