(前半から続く)
● ドイツ防衛大臣
FT July 14, 2018
Ursula von der Leyen, Germany’s
unflappable defence minister
Guy
Chazan
● 米中のハイテク企業と安全保障
FT July 15, 2018
Globalised business is a US security
issue
RANA
FOROOHAR
FP JULY 19, 2018
ZTE’s Ties to China’s
Military-Industrial Complex Run Deep
BY
CHRISTOPHER BALDING
● Brexit論争の起源
FT July 15, 2018
One cheer for the Brexit white paper
DAVID
ALLEN GREEN
FT July 16, 2018
Breaking up is hard to do from an EU
stuck in its own tramlines
JONATHAN
FORD
PS Jul 16, 2018
The British History of Brexit
ROBERT
SKIDELSKY
2016年6月23日の国民投票でEU離脱を決めて以来、「Brexit論争」がイギリス政治をバラバラにした。
残留派はキャメロンの無謀さと、国民投票を制御できなかった無能さを責める。より深いレベルでは、大西洋の両岸で起きた農民反乱の一部であった。フランス、ハンガリー、イタリア、ポーランド、オーストリア、そしてアメリカだ。しかし、どちらの説明もイギリスに固有のBrexitの起源をとらえていない。
イギリスは、1940年のヒトラーが支配したヨーロッパに対して、単独で立ち向かった。それは現代史の中でイギリス人が最も誇りにする瞬間だ。EUの42年間で、イギリスは常に不似合いな、ユーロ懐疑派のパートナーだった。UKは1957年のローマ条約に参加せず、UKが停滞する中で、EECが繁栄していたために、1963年、加盟を申請した。しかし、その動機はダイナミックな自由貿易圏に参加することであり、政治ブロックを形成する意図は全くなかった。UK加盟にフランスのドゴール大統領は拒否権を行使したが、イギリスは「アメリカのトロイの木馬である」と疑った。
残留派は都合よく忘れているのだが、1975年のEECを支持する投票結果は、加盟には政治的な意味はない、という嘘を前提した投票だった。1986年、サッチャーは単一市場に参加したし、1992年のマーストリヒト条約では、デンマークとともに、イギリスはユーロに参加しないことを認められた。単一通貨こそ政治同盟への意思を示すものであったが、結局、2008-09年が示したように、共通の政府を持たない通貨圏は機能しない。
メイ首相は、ヨーロッパの市場を得ながら独自に自由貿易協定を結び、ヨーロッパからの移民を制限でき、しかも、ロンドンの金融サービスにヨーロッパの顧客をとどめるような、「アソシエーション」を提唱した。それが成功するとは思えない。つまり、2019年3月に、イギリスは正式な離婚手続きもないまま、EUを離脱するだろう。問題はその結果が、残留派の恐れるような、経済的破滅になるのか、ということだけである。
私は残留派の破滅論に納得していない。財政政策や産業政策だけでなく、イギリスには、未来に向けた自由を得たときこそ、大きな経済活力、発明と満足をもたらす精神があるから。彼らは独立を棄てる気持ちにならないのだ。
私が最も残念であるのは、イギリスは、ヨーロッパがその政治的未来を決定することに対して、支援できる機会を失うだろう、ということだ。今やEUの改革はマクロン1人にかかっている。もし選ぶとしたら、イギリスはトランプではなく、マクロンを支援する方がよい。
FT July 19, 2018
The week the Brexiters lost control
of Brexit
PHILIP
STEPHENS
FT July 19, 2018
The Irish ‘backstop’ offers a key to
unlocking the Brexit impasse
CHRIS
GILES
● 米ロ首脳会談
FT July 15, 2018
The Trump Doctrine — coherent,
radical and wrong
GIDEON
RACHMAN
第2次世界大戦以来、アメリカ外交のエスタブリシュメントには顕著なコンセンサスがあった。アメリカが指導する同盟や安全保障のグローバルなネットワークを支持する、ということだ。また、共和党も民主党も、指導的な人物は自由貿易を推進し民主主義を世界に広めることがアメリカの利益である、という点で一致していた。
ドナルド・トランプは、ワシントン・コンセンサスを切り倒した。それはまったく混乱した彼の頭から生じた、というより、内的に一貫した意味を持つ「トランプ・ドクトリン」を示しつつある。4つの原理があるだろう。
1.経済学の優位。・・・アメリカ中西部の「大虐殺」、「錆び付いた工場群」を重視し、経済的に「アメリカを再び偉大にする」。そのために、アメリカとの間で過剰な貿易黒字を出している諸国に注目する。他方で、同盟国と敵国との違いは重要でなくなる。安全保障の観点から伝統的な同盟関係は観直される。
2.国際制度より諸国民を重視。・・・国際制度は、気候変動など、諸問題について、アメリカを「政治的な正しさ」で制約する要塞である。アメリカの市場規模が優位をもたらす、他国民との1対1取引が好ましい。国際機関や「ルールに依拠した国際秩序」を否定する。
3.普遍的な諸価値より、文化と民族の重視。・・・これまでのすべての大統領が支持した人権や民主主義を重視しない。トランプの考える「西側」とは文化や民族を意味する。それを真に脅かしているのは移民であり、移民の管理を求める。
4.影響圏の分割。・・・世界を、アメリカ、ロシア、中国などと、それぞれの地域を含む、非公式な「影響圏」に分割する。クリミアは当然にロシアの一部であり、アメリカのグローバルな同盟関係を信じない。他方、習近平やプーチンのようなストロングマン(強権指導者)との取引を好む。それは対立する企業と市場を分割する企業幹部の取引と同じである。彼らの価値はどうでもよい。
このようなトランプ外交の問題とは、単に根本的な転換であるというだけでない。むしろ危険であり、さらに、道義的な後退を意味する。貿易黒字にだけ注目するアメリカの経済的利益は過度に単純化されている。冷戦終結とその後の世界に、政治的・経済的な自由を拡大した指導的国家としてのアメリカは、もはや存在しない。世界にとって大きな損失である。
The Guardian, Mon 16 Jul 2018
The Guardian view on the Trump-Putin
summit: Russia is the winner
Editorial
FT July 16, 2018
Trump’s five days of diplomatic
carnage
EDWARD
LUCE
ドナルド・トランプとウラジミール・プーチンとが、2時間の2人だけの会談で何を話したのか、われわれにはわからない。しかし、共同記者会見の最後に、アメリカ大統領は「魔女狩りだ」と叫んで部屋を出た。彼の頭には、終始、国内政治しかなかった。
「(ミューラー特別検察官の)報告はわが国にとっての災厄だった」と彼は述べた。他方、クリミアも、イギリス市民の毒殺も語らず、トランプ自身の諜報機関を信用していない。
プーチンがバルト海諸国にハイブリッドな戦争を始めた場合、NATOは加盟国を守るのか? アメリカはもちろん、ドイツやイギリスなどにロシアがサイバー攻撃を強化するのではないか? こうした点で、トランプは不安を残した。
トランプは、ミューラー特別検察官の捜査を敵視している。プーチンが強く否定したことを信用し、アメリカとの合同捜査チームの提案を称えた。
西側同盟の将来は真っ暗だ。
NYT July 16, 2018
Trump and Putin vs. America
By
Thomas L. Friedman
NYT July 16, 2018
An Easy Win for Vladimir Putin
By
Elena Chernenko
FP JULY 17, 2018
Trump’s Treason by Father Complex
BY
JAMES TRAUB
FP JULY 17, 2018
Robert Mueller Is Fighting a War
BY
MARK GALEOTTI
FT July 18, 2018
Trump, Putin and the betrayal of
America
FP JULY 18, 2018
‘Unless They Pay a Price for It,
They’re Going to Keep Doing It.’
BY
COLUMLYNCH
FP JULY 19, 2018
Trump’s Performance in Helsinki
Shouldn’t Have Come as a Surprise
BY
DEREK CHOLLET
FP JULY 19, 2018
How Much Damage Did Trump Cause in
Helsinki?
BY
WILL INBODEN
FP JULY 19, 2018
Why Russia Will Regret Helsinki
BY
JEREMY SHAPIRO
● 保護主義の源を断つ
FT July 15, 2018
China can bear more trade pain than
America
WEIJIAN
SHAN
PS Jul 17, 2018
How to Protect Workers Without Trade
Tariffs
ROBERT
J. SHILLER
ある調査Washington Post/Schar Schoolによれば、回答者のわずか39%しかトランプ大統領の外国に対する関税引き上げを支持せず、56%は反対だった。
しかし、39%とはいえ、なぜ彼らはトランプを支持したのか? 1776年のスミスの『国富論』は自由貿易を支持する主張を明確に行った。Jeffrey Frankel and David Romerによれば、より自由な貿易を行っている国はより高い経済成長を実現しており、この因果関係は逆ではない。
なぜ多くの国民がトランプの貿易戦争を支持するのか?
それは、ときに自由貿易と結びつく職場の不確実さから、また、損失を強いられた者が抱く不正義の感覚から生じる。多くの人々は慈善やほどこしを嫌う。アメリカの有権者たちは、トランプの「アメリカを再び偉大にする」によく反応し、オバマの「富を広く行き渡らせる」には反応しない。
政治学者のJohn Ruggieは、第2次世界大戦後の多角主義と自由貿易の関係を「埋め込まれた自由主義の妥協」と呼んだ。国際機関と低関税率とは、市民の経済生活を安定化するために政府が積極的に介入する場合だけ、政治的に支持されたのだ。
Dani
Rodrikもその主張を支持した。彼は、経済の開放度とGDPに占める政府支出の割合はプラスの巣間関係を示す、ということを発見した。貿易を多く行う国は小さな政府を持つのではなく、むしろ大きな政府を支持している。
政府の消費支出の総額が、多くの国で行われている一時的な失業保険や、アメリカのような貿易調整支援制度Trade Adjustment
Assistanceよりも重要である。私は著書で、所得の長期的なロスに対して就労や訓練を基礎に民間で保険をかける制度“livelihood insurance”を推奨した。
貿易によるリスクに保険原理が適用しにくいのは、それを政府が行うと、再分配政策に見えるからだ。特に、低関税率と自由貿易が維持されるリスクは長期的に続く。たとえば、外国との競争に直面して閉鎖された製鉄所の労働者たちは、永久に失業したように見える。こうした労働者たちを何十年も政府が生活支援することは不可能だ。
グローバリゼーションによって、人々は長期的な生活条件が一層リスクの高いものになると感じている。彼らをみじめな思いにすることなく、グローバル市場のリスクに対して彼らに保険を掛ける必要がある。
幸い、敗者に対する慈善とは思われない形で、政府がある種の再分配を行うことは可能である。たとえば、公教育や医療保険に税金を投入することだ。その支援は誰でも利用できるし、愛国的な姿勢に見える。あるいは、外国貿易が理由で失業した者の損失をカバーする保険に補助金を出す。どのように提供するかは民間の保険会社が競争する。
トランプの貿易戦争は悲劇である。しかし、それによって自由貿易が人々にもたらすリスクを重視し、保険メカニズムを適用してそれを緩和することに成功するなら、良い結果を生じうる。
FT July 18, 2018
A measured cheer for the EU-Japan
trade deal
● Netfixのインド進出
FT July 15, 2018
India: Netflix takes a gamble on its
next 100m subscribers
Kiran
Stacey in New Delhi
● 貿易戦争と金融政策
FT July 16, 2018
Trade wars may make the Fed less
hawkish
GAVYN
DAVIES
● フランスの優勝と国内改革
NYT July 16, 2018
Can Macron Do for the Banlieues What
the Banlieues Have Done for Soccer?
By
Antony J. Blinken
ワールド・カップ、ロシア大会の優勝によって、19歳のKylian
Mbappéがマクロンの改革に力となるだろう。アルジェリア人の母とカメルーン人の父を持つMbappéは、23人中の16人が最近フランスに着いた移民家族の1人である。
マクロンは、フランス国内の郊外に集中的に見られる移民の子孫たちが苦しむ状態を改善するだろう。彼は国内の郊外に対する大規模な公共投資とさまざまなプログラムを実施する。フランスの各分野で、未来のMbappéを育て、活力を高めるだろう。
NYT July 17, 2018
The Hidden (and Not So Hidden) Politics
of the 2018 World Cup
By
Tony Karon
FP JULY 17, 2018
A Black Korean in Pyongyang
BY
STEVEN DENNEY, ANDRAY ABRAHAMIAN
● ロシアの天然ガス
FT July 17, 2018
How Russian gas became Europe’s most
divisive commodity
Tobias
Buck in Lubmin
● ドイツの老人介護士
SPIEGEL ONLINE July 17, 2018
Germany's Acute Nursing Shortage
My Nurse Named Mohamed
By
Christoph Titz
老人の介護士が不足するドイツで、チュニジアから来た23歳のモハメドMohamed
Ali Nefziが働いている。年金生活者の施設は海外に、そして最近はアフリカにも、労働者を求めている。ドイツ語の学習と試験を受け、航空券は施設が負担する。トリプル・ウィン計画だ。
FT July 19, 2018
Germany asks difficult questions in
the EU migration debate
FREDERICK
STUDEMANN
● Googleの罰金
FT July 18, 2018
What EU’s record fine will mean for
Google
Rochelle
Toplensky in Brussels
FT July 19, 2018
Europe is right to stand up to
Google’s power
The Guardian, Thu 19 Jul 2018
The Guardian view on Google’s
mammoth fine: tackling big tech
Editorial
AndroidやChromeのようなソフトウェアは、それ自体で利益を上げる目的で作られていない。人々を関連するアプリや情報に引き込むための道具、支援型エコシステムである。
特定企業が無制限なパワーを持つことは阻止するべきだ。
FT July 19, 2018
The Chinese Communist party
entangles big tech
Louise
Lucas in Hong Kong
市場を基礎にした改革が進んで40年を経ても、共産党は経済の管制高地を国家が支配することに高い優先度を維持している。金融、エネルギー、メディアである。
巨大な民間企業が現れたとき、共産党はしばしばこうした企業の幹部たちを、党の社会管理に対する挑戦ではないか、という疑いの目で見た。
しかし、デジタル大企業の背後には常に政府があり、共産党との関係は親密だ。
● 移民とナショナリズム
PS Jul 18, 2018
Nationalism, Immigration, and
Economic Success
JASON
FURMAN
経済成長にとって移民はプラスである。特に、日本のように、高齢化や人口減少で労働力が減少する豊かな諸国では、移民労働者を受け入れることが経済成長を高め、活性化に役立つ。他方で、文化的な変容を恐れる人々はナショナリズムやポピュリスト政治家の声に反応する。
その意味で、貿易や移民をプラスの要因として理解できるかどうかが成長の維持には重要である。
PS Jul 19, 2018
Rewriting Europe’s Narrative
SHLOMO
BEN-AMI
● トランプ経済の悪循環
PS Jul 18, 2018
Trump May Kill the Global Recovery
NOURIEL
ROUBINI
トランプ政権の好況期における財政刺激策は、好循環から悪循環に移るだろう。今やスタグフレーション期の金融引き締めが迫っている。トランプのもたらす不確実性、そして、貿易戦争のサプライ・サイド・ショックが民間企業や投資家の心理を変えるだろう。
FT July 20, 2018
European banks still have
post-crisis repairs to do
GILLIAN
TETT
● アフリカの躍進
FT July 19, 2018
Reasons to be optimistic about
Africa’s future
DAVID
PILLING
アフリカは宿命論を打ち破って、貧困を脱し、人々の繁栄を実現しつつある。かつて、アジアでもそうだった。貧困を支配するのは土地でも文化でもない。アフリカの人口は10億人から世紀末には40億人に増える。世界貿易は、大西洋、太平洋、そしてインド洋へ広がり、貧困からの脱出を人に途にもたらす。
FT July 20, 2018
An old movie is playing in emerging
markets
● 中国の金融政策
PS Jul 19, 2018
China’s Currency Catch-22
PAOLA
SUBACCHI
トランプは、人民元が介入によって低く維持されている、と非難した。しかし、トランプ政権が貿易戦争を続ける限り、中国は人民元の管理を続けるしかないだろう。
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The Economist July 7th 2018
How India
fails its women
Tech wars:
FAANGs BATs
Indian women:
A job of her own
Immigration to
Japan: Hidden masses
Banyan: Divide
and kill
Donald Trump’s
trade war: Patriotic ketchup
The world if
(コメント) インドの女性差別、貧困層の社会的な排除、疎外、群衆による自衛と殺害をめぐる記事に驚きます。
ハイテク大企業のグローバル陣地戦が、名に見えにくい形で、激しい闘いを続けています。その対照にあるのは、ますますアメリカ製品を買いたくなくなったカナダ人消費者の、ソーシャル・メディアによる不買運動です。今はまだカナダの貿易収支に大きな影響がみられるわけではない、と言いますが。
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IPEの想像力 7/23/18
原始の部族的憎悪と群衆を煽る政治家、工場に並ぶ縫製ロボット、UberやAlibaba、ネット情報、ネットバンクの混在する世界に、政治経済秩序をもたらすものは何か?
The Economist July
7th 2018には、インドの記事が載っています。1つは女性が家庭に押し込められ、仕事に就けないこと。あるいは、24時間、レイプの危険にさらされて生きていることです。もう1つは、アイデンティティ政治とも関係する、群衆による殺人です。
近年の成長の結果として、逆に、インド人女性の雇用率が減っています。家庭から女性が出ることは、よほど生活に困っている場合だけ、という感覚だからです。広大な縫製工場に列をなす女工たちの姿が、成長を始める貧しい諸国には必ず見られました。インドは違います。
また記事によると、友達2人が、ゴアの海岸からアッサム州北東部の故郷まで、インドの田舎町をバイクで旅する途中、悲劇に遭いました。棍棒や金属の棒を持った村人たちに取り囲まれ、「子供の誘拐犯」とみなされて、襲われたのです。
怒りに駆られた群衆が人を殺害する事件が多発している、と言います。なぜ群衆が、全く無実の人を殺害するのか? 記事はその理由をいくつか挙げています。
1.ソーシャル・メディアの普及。携帯電話が普及し、WhatAppでうわさが瞬時に広がる。
2.多くの子どもが誘拐され、売られている。その数が大幅に増えた。むしろ事実としてインド社会にあった、底辺社会の子どもを誘拐するビジネスが、最近、さらに増加したことが重要です。子供の無い家庭、奴隷労働として、あるいは、Sexビジネスへ、売られていくと指摘します。
3.貧しい人々にとって、警察や裁判所は機能しない。自分たちを守ってくれない、と感じている。彼らは富裕層のために動くだけで、貧しい者は自衛するしかない。その不安と恐怖から、群衆は暴走します。
4.社会の分断状態、異なる社会集団に対する疑い。宗教、カースト、言語、さまざまなマイノリティが、経済の移動性を高めた結果として、田舎に現れ、あるいは、都市に集まります。互いに異質な人々が、憎悪(暴力・殺害)を正当化する条件となっています。
5.アッサムの特殊な事情。インドでも特に多様な住民を抱え、そのことが政治をアイデンティティによって刺激し、毒素をばらまいている、と述べます。有権者登録も進まず、国境管理もずさんで、識字率は低く、文書管理ができていない土地です。イスラム教徒が多数を占め、最近、バングラデシュから移住してきた者がいます。
6.アイデンティティ政治の展開。アッサム州政府は、ゆるやかな、民衆に支持された、法的な制裁によるエスニック・クレンジングを進めている、と記事は紹介します。しかし、同じような難民の差別化を合法化する中央政府と軋轢を生じています。なぜなら、中央政府はヒンドゥーやシークを難民として受け入れても、ムスリムは拒むからです。アッサムのムスリム・タカ派から見れば、バングラデシュから来るヒンドゥー難民は「侵略者」です。
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ムンバイに行くため、元ゼミ生と話していると、ムンバイは都市ではなく、巨大な田舎です、と彼が言いました。都市cityという言葉には、文明化されたcivilized空間、市民的な秩序の支配、という意味があるでしょう。インドはまだ、たとえ巨大な「都市urban」でも、そのほとんどを支配するのは田舎countryなのです。
A.O.ハーシュマンが、(私には、よく理解できなかった)不思議な古典において、情念が理性によって秩序を与えることを描いたと思います。それは、ヨーロッパ近代の人々が、なぜ戦争や殺戮ではなく、金儲けに関心を向けたのか、歴史的な転換として重視した研究でした。
もしインドが、都市と成長の過程で民主的な統治を実現できるなら、世界も統治できるのではないか。
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