IPEの果樹園2018
今週のReview
7/16-21
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Brexitの結末 ・・・イタリア政治の変質 ・・・中国と貿易の未来 ・・・NATOサミット ・・・民主主義と投票 ・・・インド政治の変質
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● Brexitの結末
The
Guardian, Fri 6 Jul 2018
Rudderless and riven by Brexit, the Tories have only one ambition
left
Gary Younge
Brexit国民投票の目的は、EUと何も関係なかった。何十年も続く、保守党内部の心理的な葛藤を鎮める、最新の宗教儀式のようなものだ。
この2年間、われわれの政府は、国民の将来を人質にした党内抗争により、機能マヒしていた。政府は、機能しないような「解決策」を作り出す前に、異常なほどの交渉時間を費やした。彼らはそれをブリュッセルに持っていくだけで、受け入れられないものだと言われるだけだった。
問題は、彼らがウサギを出せないだけではない。そもそも(ウサギを出す)帽子も持っていないのだ。一連の自分を傷つけるような行為により、保守党政治家は幻滅、憤慨、恫喝、道化の間をさまよった。
平均で35%の有権者が支持したこの2年間の作業は、保守党の内紛だけであり、われわれはそれに付随する損害を受けた。保守党にとって、この危機は単にヨーロッパに関するものではなく、党の生存をめぐる危機になった。
今週の初め、イギリス最大の自動車メーカーであるJaguar Land Roverは、もしイギリスが単一市場を抜けるなら投資計画を見直す、と発表した。2週間前には、AirbusがBrexitの懸念から、脱出ボタンを押した、と確認した。最新調査によれば、イギリス主要企業の75%がBrexit交渉を悲観している。
その理由は明らかだ。ドイツの企業であるジーメンスのイギリス経営幹部Jürgen
Maierが、エアバスや他の企業の懸念を引いて、イギリスの交渉姿勢を質したところ、ジョンソンBoris Johnson外相は「バカな経営者め」と応じた。
ジョンソンはアイルランドにも関心がない。南北を分断する国境線が再導入されてもかまわない、という姿勢だ。非公開の保守党内の会合で、先月、ジョンソンは述べた。「国境を定期的に使うような企業は小さいし、数も少ない。尻尾が犬を振り回すとはこのことだ。こんな愚かな話にわれわれの未来の計画が屈服するのは許せない。」
保守党は自分たちが権力を維持することにしか関心がないように見える。彼らの国内政策課題はBrexitにより圧縮された。そして、彼らが合意できるBrexitの計画はない。
彼らがこんなことを続けるなら、唯一、労働党のコービンJeremy
Corbynが首相になる政変の可能性が高まるだろう。保守党は、コービンが国を亡ぼす、と恐れ、それを阻止するためだけに奮闘している。
NYT
July 10, 2018
Boris Johnson Has Ruined Britain
By Jenni Russell
イギリスは混乱の極みにある。それはEU離脱派が創ったものだ。その重要な役割をBoris Johnsonジョンソンが担った。
なぜ離脱派は国民投票で離脱を叫んだのか? ジョンソンも、ゴーブも、離脱する意図はなく、離脱することを望まず、離脱派が勝利するとも考えなかった。だから、国民投票を権力闘争の道具にできたのだ。少数派の、彼らの力を、保守党の主流派に思い知らせるためだった。
当時、ジョンソンはイギリスで最も人気のある、影響力のある政治家だった。彼は、次期首相の確約を得たかった。政権が自分を取り込まなければ、どれほど危険であるか、彼は示すためにEU離脱を唱えた。
ジョンソンも、ゴーブも、離脱派が勝利する可能性がないことによって、何を主張してもよかった。どれほど愚かな主張もできたし、反対する声を無視した。しかし、彼らの通俗的な不正直さは、あまりにも重大な結果をともなった。離脱派が勝利した後の2年間、議会とEUを説得できる具体的な離脱計画を、誰も示せなかったのだ。
保守党の指導者たちは、党が分裂すれば政権を失うことを恐れた。そしてジョンソンたちは、自分たちの誤りを認めて有権者に謝罪するより、掛け金を2倍にした。離脱後の楽観論、事実に反する解決策を振りまいた。EUとの離脱交渉が進むはずはない。
メイがEUとの妥協案を認めたとき、ゴーブは空虚な完全離脱を主張して辞任し、ジョンソンは再び、自分を敵にすることが政権を脅かす、と示すために辞任した。
アメリカ人ならよくわかるはずだが、狡猾な欺瞞と、抑えられない強いエゴをもつ1人の男が、どれほど国民を破滅に導くものか、Brexitがよく示している。
● イタリア政治の変質
NYT July
7, 2018
This Italian Town Once Welcomed Migrants. Now, It’s a Symbol for
Right-Wing Politics
By Jason Horowitz
警察が銃撃と殺戮を終わらせたとき、最後に、Luca Trainiはファシスト時代の記念碑である階段を登り、イタリア国旗をまとって、ファシスト式に敬礼した。
彼は6人のアフリカから来た移民を銃撃し、傷つけた。ガーナ、マリ、ナイジェリアから来た男たちだ。Macerataは、アドリア海に近い中世の町で、ナイジェリア人の麻薬ディーラーに殺害され、バラバラにされた若いイタリア人女性の復讐である、とTrainiは考えた。彼の考えでは、これは愛国者の行為だった。
しかし、イタリアの指導者たち、リベラル、反ファシストの集まりにとって、これは恐怖の前兆だった。
議会選挙が数週間後に迫っていた。この銃撃戦は、憎悪を煽る選挙戦の最中に起き、移民攻撃、不寛容、ファシズム復活を示唆した。
移民危機が高まったとき、イタリアはEUを熱烈に支持する、進歩派の牙城であった。しかしTrainiの暴力は、移民に対する逆風、極右政治の再現を、グロテスクな形で明確に示した。
ブリュッセルのある見方では、今やイタリアがヨーロッパ最大の実存的な危機なのだ。「1年以内に、統一ヨーロッパがまだ存在しているか、わかるだろう。」 イタリアの新しい内相Matteo Salviniは言った。
Salviniは、Macerataの事件が解き放った怒りを理解し、だれよりもその力を利用した。
今や、リベラルな民主主義はヨーロッパ中で重圧を受けており、イタリア政治はポピュリズムの新しい脅威によって変形しつつある。Salviniのナショナリスト政党the Leagueは、2013年、Macerataで0.3%しか支持されていなかったが、3月には21%に上昇した。
以前のMacerataは、寛容さで有名な町だった。2013年、移民・難民の統合化努力でイタリア中に認められた。カソリックの慈善団体the Caritasが移民たちと協力して活動した。
イタリアの多くの町と同じく、Macerataは2008年の金融危機の後遺症で苦しんだ。2016年には地震の災害も起きた。
ローマの労働者階級出身の18歳の少女Pamela Mastropietroが、ローマ郊外の静かなMacerataの魅力に惹きつけられた。そしてルーマニア人の麻薬ディーラーと付き合い始め、麻薬を打つようになった。
彼女の母親が説得して、ようやく麻薬中毒者治療センターに数週間入院した。しかし、1月29日、彼女はセンターを脱け出し、麻薬を買いにDiaz Gardensへ行った。そこには多くの売人が、その多くは移民が集まっていた。詳細は分からないが、Ms. Mastropietroは29歳のナイジェリア人にたどり着き、殺害・解体された。男は、移民が最も多くイタリアに入った2014年8月26日に、到着した。
少女の殺害はイタリアを恐怖させ、すぐに選挙の論争点になった。選挙戦で、Salviniはすでに世界を移民の麻薬ディーラーが若者たちを麻薬中毒にすると警告していた。今や、彼は突進した。
「この蛆虫はイタリアで何をしていたのか? この男は戦争を逃れてきたのではなく、イタリアに戦争を持ち込んだのだ。」 犯人逮捕の後、Facebookに、Salviniは「左派の手は血で汚れている。次の移民による殺害が待っている。国外追放せよ。追放だ! 監視して、追放せよ!」と書き込んだ。
イタリア人の多くは、若者たちが「失われた世代」になることを憂慮していた。若者の麻薬使用が急速に増えた、と警察は報告した。ヘロン、コカインが復活した。若者たちの不満は5つ星運動の支持に向かったが、それはSalviniの反エスタブリシュメント連合の相手である。
移民が若者から職を奪った、と主張するSalviniは過激な手段を唱える。「マス・クレンジングだ。通りから通り、地区から地区を消毒せよ!」
Salviniは、Facebookに動画を載せた。それは貧しい、高齢のイタリア人がゴミ箱をあさって、食料を探す姿と、イタリアのコメについて文句を言うアフリカからの移民の姿とを対比するものだ。29万4000回のシェアと1000万人の視聴者がいた。
4月25日、ナチの占領が終わったことを記念するイタリアの休日に、数人の退役軍人たちが抵抗運動でなくなった兵士たちに敬礼した。記念式典は終わったが、散会した群衆は、売店で「Pamelaは拷問された」という見出しの新聞を観た。Piazza Vittorio Venetoでは、ボランティアたちが貧しい住民や移民に200人分の食事を提供する。牧師は法皇フランシスの言葉を引用したカードを配っていた。「私たちはみんな移民である。」
● 中国と貿易の未来
PS Jul
9, 2018
Trade Barriers Will Not Stop China’s Rise
ADAIR TURNER
貿易は3つの理由で起きる。1.資源がある。2.賃金に差がある。しかし、豊かな諸国の間では、3.特化や、製造業における規模の経済、研究開発、ブランドなどだ。
貿易のつながりがあるところで、突然、関税を引き上げれば、深刻な混乱が生じる。しかし長期的には、1人当たり所得の等しい大陸間の貿易は、思われているほど、その繁栄に重大な影響を及ぼさない。
巨大な経済圏は規模の経済と複雑な統合されたサプライ・チェーンを持つ。それでも企業間の競争を維持することが重要だ。人口500万人のアイルランドなら、すべての財を自給すると所得水準が大きく低下するだろう。しかし、人口14億人の中国はほとんどすべての規模の経済を発揮できる。インド、アメリカ、EUもそうだ。
グローバルな貿易や投資は、知識・技術・ベストプラクティスの移転を実現する。産業スパイの問題は一部でしかなく、大規模な移転が自動的に、合法かつ必然的に生じる。アメリカ企業は優れた技術や知的財産のレントを失ったこと、また安全保障のタカ派は地政学的な技術優位の喪失を嘆く。しかし、それはもはや手遅れだ。中国の台頭は、アメリカが障壁を設けても、自律的に実現する。たとえ1980年代、90年代に、経済開放より、アメリカ企業の中国投資を禁止していた場合でも、中国の台頭は、遅れただけで、阻止できなかった。
この点でインドやアフリカ諸国など、より貧しい発展途上国は、中国と異なり、貿易障壁や豊かな国の機械化によって、輸出指向工業化の機会を失う脅威にさらされるだろう。
● NATOサミット
FT
July 8, 2018
Trump is a threat to EU security and prosperity
WOLFGANG MÜNCHAU
ユーロ圏の将来や難民危機の解決と同じく、しかし、短期的には最も重要なEUの課題は、ドナルド・トランプである。
アメリカ大統領は、EUの軍事的安全保障と経済的繁栄に対する、明確かつ現在の脅威である。EUの目標は、トランプの宥和ではない。EUの弱点を解消することだ。すなわち、自律的回復力の欠如。
2つの優先目標がある。1つは、防衛費の増額。もう1つは、ユーロ圏の巨大な経常収支黒字である。ドイツはその両方で主要な役割を果たす。しかし問題は、EU全体の解決を目指すことだ。
NYT July
9, 2018
The Finlandization of the United States
By Roger Cohen
2つのサミットを前に、トランプは明らかに、アメリカ人を「だましてきた」NATOの同盟諸国といるより、「素晴らしい」ロシアの指導者、プーチン大統領といる方が快適に見える。
トランプの問題が単に重商主義であるなら、管理できるし、解決できるかもしれない。しかし、そうではない。トランプは、そのイデオロギーとして、プーチンの専制支配体制や民主主義の見せかけを共有する。トランプは、メルケルなど、西側のリベラル民主主義に敵対し、プーチンの側にあるのだ。トランプは、非リベラルの、拡大する権威主義的国際運動に加盟料金を支払っている会員に等しい。
トランプによるアメリカのフィンランド化はほぼ完成した。冷戦下のフィンランドは、中立を維持して、ソ連が反対することはしなかった。トランプは明らかにプーチンに偏っているが、アメリカ内部の名誉ある勢力が、国務省やペンタゴンでトランプに反対している。
マドリードから美しいセゴビアまで旅行したとき、週末に首都を離れるスペイン人たちで道路は混雑していた。私はスペインの豊かさに瞠目した。40年前、独裁体制下にあったスペインがどれほど貧しかったか。これこそEUの成果である。民主主義的な安定性と繁栄をもたらすことが磁力となって、EUには5億人以上が集まった。だからアメリカは、常に、EUを支持してきたのだ。
最近、トランプに会ったヨーロッパの人間は衝撃を受けた。ヨーロッパを保護してくれと頼みながら、アメリカの製品を十分に買わないヨーロッパの同盟諸国に対して、トランプが示す嫌悪に。また、トランプの考えでは、ようやく正しい反移民政策を採用する、排外主義的なイタリアの新政権に対して、トランプが示す称賛に。
ヨーロッパの同盟諸国は確信したはずだ。いかなる同盟関係が依拠する信頼も、トランプが破壊した。ヨーロッパは自立して、トランプの価値を排除しなければならない。
なぜトランプはプーチンの傘下に入るのか? トランプはプーチンの軍事的威嚇が好きだ。ロシアは貿易でアメリカへの黒字を利用しない。ロシアは反NATO、反EUである。2人ともその理由は同じだ。同盟を解体する方が、弱小なヨーロッパ諸国を容易に威嚇できるから。
1945年以来、ヨーロッパの平和は、他国に住む自国のマイノリティーを、たとえば、ウクライナのロシア人を、戦争や分離独立に利用しない、という原則を受け入れてきた。しかしプーチンは2度、ウクライナ東部とクリミアで、これを破った。しかし、トランプはこれに承諾のウィンクをして見せる。
● 民主主義と投票
FT
July 10, 2018
Take more care with referendums — democracy depends on it
MEG RUSSELL
EU離脱をめぐる国民投票から2年経った。その決定に参加したかどうかにかかわらず、国民投票は底辺から頂点まで、この国を分断したことが明らかになった。
特に、国民投票の危険性は、「人民」の見解を、イギリス民主主義の中心に築かれた伝統的な制度である議会と対立させることだ。それはわれわれの民主主義に対する信頼を損なう潜在能力がある。
国民投票に関する独立委員会(the Constitution Unit at
University College London)がこの点について専門家の意見をまとめた報告書を発表した。
国民投票が優れた役割を果たすのは、「成文化されない」イギリス憲法だが、その修正に関わる重大な政治的決定を確立するために行われるときだ。北アイルランドの和平合意the Good Friday Agreementの承認や、スコットランド議会を設置するときがそうだった。
EUに関する2016年の国民投票では、政府が官僚によるシナリオの作製を禁止した。そのため、有権者はBrexitに関する異なる選択肢が明確に何を意味するのかわからなかった。議会は、互いを攻撃し、「裏切り」と叫んだ。今や内閣が分裂しつつある。
多国には国民投票の長い経験があるが、特に、憲法改正がそうだった。国民投票は、それが国民に問われる前に、議会によって修正案が承認された。しかし、それでもイタリアのレンツィ首相がそうであったように、政府への信任投票となる恐れがある。
独立委員会の提言で最も重要な点は、議会が修正の細部に関する承認を経た後で、国民投票を行うべきだ、ということだ。
国民投票の結果がこれらの提案と大きく異なるときは、2度目の国民投票があらかじめ計画されている。政府が提案する修正に、国民投票が反対し、代案の細部が示されない「脅迫型の投票」を防ぐことが重要だ。
国民投票は、他のやり方で、全体としての民主主義過程にうまく統合化できる。委員会は事前の慎重な準備や諮問を重視する。最近、堕胎や同性婚について、アイルランドが行った国民投票は、包括的で、丁寧な、市民会議を開いたし、人々に質問し、思慮深い、バランスの取れた討論を促した。
委員会はまた、より良い規制、例えば、有権者が選挙運動のオリジナル資料に、オンラインも含めて、どこでアクセスできるか明確にすることを求める。国民投票が成功するには、段階ごとの有権者の参加、良質の情報提供、投票による結果の明確な説明など、長い準備過程が要る。
● トランプ関税の評価
PS Jul
10, 2018
How To Avoid a Trade War
DANI RODRIK
トランプの保護主義が労働者の利益になるとは思えない。しかし、その結末を考えるためには、他国のインセンティブを観なければならない。貿易戦争となるのは、他国が報復し、エスカレートするからだ。しかし、そうしない、と考える理由がある。
原点となった1930年代の経験では、各国が世界不況に陥り、大規模な失業や政策対応の不足によって大不況に落ち込んだ。景気循環を抑える財政政策の考え方はまだなかった。金本位制は金融政策を、無益どころか、有害にしていた
そのような条件では保護主義を採用することには理由があった。しかし、今は違う。トランプの保護主義を支持することはないが、かといって単純に、報復することが好ましい、と考える国もない。ヨーロッパも中国も、その国内経済状態から、保護主義を支持する理由はない。また、アメリカの保護主義の影響を緩和する手段もある。
トランプが勝手に自分たちの経済的利益を損なうというなら、それを無視して、自国経済に最適な政策をすればよい。所得や雇用、国民の福祉が重要であり、貿易そのものではない。
FT
July 11, 2018
Donald Trump creates chaos with his tariffs trade war
MARTIN WOLF
カオスを創り出すトランプを説得し、交渉するのは難しい。彼が何を求めているのか、わからないからだ。これは異常である。
トランプ政権は安全保障を理由に輸入財に関税を課し、中国からの輸入にも関税を課した。中国が報復したことに対して、さらに関税品目を拡大する。それに対しても中国は報復する。こうしてアメリカは、中国からの輸入の約3分の1、8000億ドルに達すると予告した。
安全保障、中国の産業政策、強制的な技術移転、とトランプ政権はその目的を説明した。しかし、その説明は愚劣であり、交渉しても無駄であり、もっと国際協調するべき問題だ。ところが、トランプは西側諸国にも関税を課す。
完全雇用状態のある国が貿易赤字を減らす有効な方法は、不況にすることだ。トランプはそれを望まない。他国はどのように対応するべきか? もし報復するしかトランプの失策を説得できないのであれば、報復するべきだ。そして、アメリカ以外の国は協力する。
しかし、最も望ましいのは、トランプ政権が望むと称する、完全な関税撤廃を支持することだろう。
● インド政治の変質
FP
JULY 10, 2018
India’s Secularists Have an Authoritarianism Problem
BY ALEX TRAUB
西ベンガル州のBirbhumは、人口350万の貧しい地方である。その政治は、選挙によって多数の支持を争わないムスリムの指導者と、ヒンドゥー・ナショナリズムを広めるBJPとの間で、激しい暴力を含む、権力闘争となっている。
ベンガルの政治は長く左派によって支配された。しかし、インド共産党The
Communist Party of India (Marxist):CPI(M)が、次第に、草の根のラディカルな行動主義から自分たちの権力追及に変化した。左派フラントthe Left Frontという連携を共産党が指導し、選挙を暴力的に支配した。2006-2007年には暴力が頂点に達し、地方警察や共産党員が、政府による産業開発の土地収用に抗議した農民を、少なくとも14人、殺害した。Trinamoolの創設者Mamata Banerjeeは共産党の不正義と戦った指導者である。
しかし、Trinamoolが権力を握ると、同じような絶対主義支配に陥り、暴力を行使し始めた。対立候補は、7歳の息子に銃を向けて脅されたり、Trinamoolの支持者たちから殺害の脅迫を受けたり、BJPだけでも52人の支持者が殺された、という恐るべき話が多くある。
Trinamool に対抗できる選択肢として、BJPの理論的指導者たちは、先住民族をBJPの支持基盤に取り込むチャンスと見ている。Birbhumのムスリムたちは、左派フロントからTrinamoolの支持へ向かったが、それ以外の選択肢がなかった。しかし、政党のあまりに深刻な腐敗について、急速に、失望が広がっている。
ムスリムは再び共産党を支持することも試みたが、共産党は彼らを守る資金もマンパワーも持たなかった、と農民の1人Jiaul Ansariは語った。命の危険と、政治的基盤を求め、ムスリムたちは驚くべき決断をした。BJPに合流したのだ。
しかし、西ベンガルのムスリムMohammed Afrazulの物語がある。Afrazulは、BJPが支配するRajasthanで働いていたが、ヒンドゥーの女性と恋に落ち、それを理由にヒンドゥー過激派たちは彼を殺害した。その殺害を映像として流した。
こうした凶悪なヒンドゥー・ナショナリズムがインドに広がり、西ベンガルにも及んでいる。ヒンドゥー過激派の暴力に対する対抗こそ、Trinamoolの権力を正当化する最大の根拠である。西ベンガルの政教分離主義という理想が伝統としての力を失い、選挙は権力者の策謀に変わり、熱狂的な攻撃、戦争を叫ぶ声が勝利しつつある。
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The Economist June 30th 2018
The tech giant everyone is watching
The war in Syria: The new Palestinians
China’s university entrance exam: The gaokao
grind
Netfixonomics: The television will be
revolutionised
Immigration policy: When good men do nothing
Fixing the internet: The ins and outs
(コメント) インターネットとハイテク企業に関する考察があります。どちらも面白いですが、物足りませんでした。NetfixがFAANGSの中で、消費者から支持される、新しい優位に向かうモデルなのでしょうか?
シリア内戦の過程が新しい「パレスチナ難民」を生む、という問題提起に驚きます。
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IPEの想像力 7/16/18
インターネット世界に秩序を築く必要があります。リアルな世界の秩序は、急速に、インターネットとの接続に依存し、全く異なる秩序に転換し始めているからです。
インターネットにつながった途端、歴史的・政治的な障壁は崩れ出し、市場を介して富と権力が波打つように集中し、集積するように見えます。ワールド・カップの出場選手たちは、世界の視聴者をさらに多く獲得し、そのプレー次第で次の契約金額を何桁も変えたでしょう。それはFAANGSの利益や資本額にも起きるのです。
貿易戦争は、貿易収支の黒字や赤字とは全く違う意味で、「正しい戦争」になるのかもしれません。トランプ政権が、中国の先端技術支配を狙った産業政策について、アメリカ企業の保護や介入、制裁措置で抑え込もうとしています。グローバリゼーションは、一方で、関税や規制、税制の違いから生じる煩瑣な手続きが必要ない、統一経済圏に至り、他方では、貿易戦争の背後で、グローバルな産業構造を動かすハイテク技術のスタンダードを確立する、陣地戦に向かうのか?
前者において、アメリカや日本の企業はそれぞれの巨大経済圏に拠点を得たいと願うでしょう。そして後者では、スタンダードの異なる技術に依拠するハイテク大企業と権力者たちが、市場も政治も支配するように思います。ハイテク地代を権力者に収める、権威主義的王朝支配です。
The Economistの特集記事 “Fixing the internet:
The ins and outs” を読みました。私が知りたいテーマ(独占禁止法、特許法、知的財産、インフラ・公共財、税制・相続、社会保障、資本市場、など)と異なる内容でしたが、もちろん、どこかでクロスするのでしょう。
The Economistは、インターネットが創生期の人々が夢見た、権力や富の「分散化」ではなく、むしろGoogle, Amazon, Facebook,
Tencentなど、集中を強めていることに注目します。20年前に、地球の秩序を改善できる、と唱えた「インターネット革命」は失敗したのか?
確かに、素晴らしい成果です。通信能力は高まり、利用料金は下落し、パソコンから携帯通信機器により、名目的には無料のサービスを提供しつつ、利用者を爆発的に増大させました。しかし、そこに現れるのは醜い姿です。グローバルな巨大企業が多くの商店や企業を一掃し、情報の流れを支配して、ゆがみを生じ、情報の集積から莫大な利益を上げ、閉ざされた、偏った集団が過激な主張を支持し、テロ集団から独裁者までがインターネットを愛用します。
ネット世界の独立とフロンティア拡大、旧世界秩序の解体は、アメリカ独立革命のように、新しい連邦国家の樹立を求めているのでしょうか?
The Economistは、その初期の理想を破棄するのではなく、関係者たちは3つのモデルを考えている、と紹介します。すなわち、ジェファーソン型の大企業解体、ハミルトン型の国家改造、そして、双方を合わせた規制とその調整です。
ハイテク大企業が市場における他の企業活動の生存、市民生活の自由を奪うことは、阻止しなければなりません。集権的な体制が情報を操作し、市民を監視するシステムによって民主主義も失われつつあります。経済も政治も、分散することです。
しかし、企業分割を含む独占禁止法は、良い結果をもたらさない、とアメリカに始まる多くの諸国でハイテク大企業の拡大が許されました。実際、AT&Tの独占を開放し、IBMの支配からソフトウェアを分離し、MicrosoftからGoogleが飛躍したように、かつて政府は競争を促すことに成功したわけです。ハイテク大企業に対抗する国家の能力を高める必要があります。
FAANGSは、アメリカやその統一経済圏の資本家から見て、正しい世界を意味するとしても、市民的な理想に反しています。基本的な技術や特許は、もっと規則的に公開し、新規参入や新サービスによるアイデアの競争を促すべきでしょう。そして、株式市場に頼らず、普及のための長期投資を促します。Netfixに関する記事は、その可能性と限界を論じています。
アメリカ企業の利潤追求にも、中国政府の権力強化にも、私は従いたくありません。インターネットとコンピューターの能力が飛躍的に改善する中で、国家に分割された世界と異なる世界、情報をめぐるグローバルな市民社会的秩序の未来を構想することです。
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