前半から続く)


 トランプの秩序破壊

FT July 2, 2018

Donald Trump is doing Europe a favour

GIDEON RACHMAN

FP JULY 2, 2018

The EU and NATO and Trump — Oh My!

BY STEPHEN M. WALT

FT July 4, 2018

Donald Trump’s war on the liberal world order

MARTIN WOLF

1855年から58年、1859年から65年にイギリス首相となったパーマストン卿は、世界大国の頂点において外交方針を語った。われわれは永遠の同盟国も、永遠の敵も、持たない。われわれの国益こそが永遠であり不滅である。われわれの外交はそれに従う、と。

ドナルド・トランプはパーマストン型の指導者だ、と、先週、アメリカ国務省の元高官は語った。しかし、トランプはパーマストンではないし、21世紀は19世紀ではない。トランプの取引外交には破滅のリスクがある。

2次世界大戦後のアメリカは異なる見解を取った。互いを疑い、ナショナリズムに染まった、大国同士のポジション争いが、2度の世界大戦に至った。この惨禍を前にして、いかなる合理的な利益もなかった。世界は国際関係に関する啓蒙を必要としていた。

新しい見解は3つの要素からなる。12度の大戦がアメリカを孤立主義から離脱させた。アメリカは安定化を促す大国になる。2.アメリカは、価値を共有する永遠の同盟関係を構築する。3.国際合意の組み合わせが、最初はもっぱら経済から、その後は気候変動にまで至る、予測可能なリベラルな世界経済をもたらし、グローバルな課題への解決能力を形成する。アメリカの政策担当者たちは、その中で、アメリカの合理的な国益を実現できる、と考えた。

アメリカは大きな失敗も犯した。何より、軍事介入を過信した。しかし、パックス・アメリカーナは総じて成功した。世界貿易の回復はかつてないグローバルな繁栄をもたらした。西側の政治・経済的成功が、ソ連の共産主義に勝利した。中国は台頭したが、アメリカと同盟諸国の経済的・軍事的優位は維持されている。

しかしトランプは同盟諸国に嫌がらせをする。あからさまに嘲弄する。その貿易戦争も、根拠や成果は疑わしい。Gavyn Daviesが注意したように、報復の連鎖は長く続くだろう。その不確実さを考えると、グローバリゼーションを逆転するコストは非常に大きい。通商と安全保障の分離が崩壊する、とAdam Posenは注目する。軍事紛争がエスカレートするだろう。

トランプが再選される可能性はある。アメリカ国民は、ヨーロッパが安全保障でアメリカにただ乗りし、中国は世界貿易において不当に優遇され、国際秩序を悪用している、という主張を広く受け入れるようになった。トランプが去った後も、トランプ主義は残るだろう。

PS Jul 4, 2018

America the Loser

J. BRADFORD DELONG

ドナルド・トランプ大統領は、20172月、Harley-Davidsonの経営幹部と組合代表をホワイトハウスに招いて会談した。彼は、「アメリカで生産してくれたこと」に感謝し、彼の下で、このアメリカを代表するオートバイ企業がさらに繁栄するだろう、と予言した。

1年でそれはどうなったか。最近、Harley-Davidsonは、トランプの課した鉄鋼・アルミニウム関税に対してEUが導入する報復関税を回避するため、生産を一部海外に移転する、と発表した。トランプはTwitterに書いた。「驚いた。Harley-Davidsonが最初に白旗を掲げる企業とは。」

その後もトランプはTweetを重ねる。「今年の初めに、Harley-Davidsonはカンサス・シティの工場をタイに移転すると言った。」「関税戦争は言い訳でしかない。」 しかし、それは事実ではなかった。Harley-Davidsonはカンサス・シティの工場を閉鎖したとき、ペンシルベニアのヨークに移転する、と言ったのだ。

トランプは脅迫した。「大幅な税金を支払うことなしには、Harley-Davidsonがアメリカで販売できないぞ。」 これも事実ではない。Harley-Davidsonは海外工場からEUに輸出するのだ。トランプは最後に宣告した。「Harley-Davidsonは他国で生産できないぞ。決してさせない。」 彼は企業も、その労働者も破壊してやる、と約束する。「奴らは降伏した。奴らは抜けた。オーラの消えた企業だ。かつてない重税を課してやる。」

言うまでもなく、これは異常だ。法の支配など全く無視している。まるでヘンリー8世の時代にもどったようだ。衝動的で、狂った王様に、超富裕層、追従者、ごますり、お世辞が取り巻いていた。彼らの繁栄は王様がいる限り続く。

選挙がすべてを解消してくれる。私たちはそう信じたい。しかし、選挙区の変更(ゲリマンダリング)、投票率の低下、さらに、ソーシャル・メディアやケーブルテレビによる不安を煽る情報の流布、偽情報、最悪の本能を刺激するキャンペーンが行われるだろう。

11月の中間選挙結果にかかわらず、アメリカの世紀は2016118日に終わった。その日、アメリカは世界を指導する超大国ではなくなった。平和と繁栄、人権を世界で守護するキンドルバーガー的な覇権の時代は終わり、多くのトランプ主義者がそれを信用することは2度とない。

FT July 5, 2018

Donald Trump has sounded America’s global retreat

PHILIP STEPHENS


 ギリシャの太陽発電

FT July 2, 2018

The potential power of the Greek sun

NICK BUTLER


 ドイツの危機

SPIEGEL ONLINE 07/02/2018

Crisis in Berlin

The End of German Politics As We Know It

An Editorial by Alexander Neubacher

FT July 3, 2018

German refugee compromise ignores underlying issues

WOLFGANG MÜNCHAU

NYT July 3, 2018

Germany’s Europe-Shaking Political Crisis Over Migrants, Explained

By Max Fisher and Katrin Bennhold

2次的な移民に関して、メルケル首相と内相のHorst Seehoferとが衝突した。それは連立政権の崩壊の危機を示している。そして、EU内の人の移動を制限する意味で、メルケルの考え方とEUの基本原理を否定することにつながる。

NYT July 3, 2018

The Political Earthquake About to Hit Germany

By Alexander Görlach

FT July 5, 2018

Angela Merkel is losing the support of Germany’s business leaders

FREDERICK STUDEMANN

NYT July 5, 2018

Why Merkel Must Go

By Bret Stephens

ヨーロッパは移民・難民政策であまりにも寛大な方針を採ったが、その統合や同課においては混乱を極めた。ヨーロッパの指導者たちは「持続可能な発展」という議論を長く続けてきたが、実際の経済はもっぱら低成長と高失業を続けている。世界政治でヨーロッパの威信を誇っているが、ロシアや中東に対しての戦略的な弱さが目立っており、軍事的にはアメリカにますます依存している。

EUの民主主義は常に損なわれてきた。2005年に、フランスとオランダはヨーロッパ憲法の提案を拒んだ。その後の妥協案も、2008年、アイルランドが拒否した。ブリュッセルや各国の種等において官僚や政治家たちがしていることは、人々の怨嗟を強めている。債務危機、難民危機、パリの劇場におけるテロ、そして、Brexitが起きた。

ついにヨーロッパの危機にベルリンにまで達する。成長は遅いが、失業率は歴史的な低水準だ。難民はもはや大挙してドイツに来ない。しかし、5月、Horst Seehofer内相がメルケルと衝突した。他のEU加盟国に入った難民がドイツに来るのを拒むことについて、意見が対立している。内相は、ドイツの犯罪や若者の暴力が減ったことを称賛する報告書を出したばかりであるが。

これは保守的なCSUが以前からメルケルのCDUに対して、特にその寛大な移民・難民政策を攻撃してきたことの繰り返しである。2人御政治家の妥協は、連立政権を守りだけであり、決して和解したわけではない。より保守的なCSUは、強硬派のAfDに支持層を奪われることを強く懸念している。AfDに刺激となるような、メルケルの姿勢は容認できないものだ。ヨーロッパ各地で、メルケルが難民を受け入れてから、一気にポピュリスト政治家たちの支持が高まっている。

一部の者は、いまだにメルケルをヨーロッパの改革を指導する唯一の指導者と称賛する。しかし、逆である。メルケルはEUの破壊者であり、もはや政権を去るべきだ。


 グローバリゼーション

PS Jul 2, 2018

How Can We Retain the Benefits of Globalization?

KOICHI HAMADA

グローバリゼーションはなぜ逆転したのか?

財、労働、資本のグローバルな移動は経済全体にとって有益である。比較優位による自由貿易、多様性とダイナミズムを刺激する移民、貧困解消につながる移民送金、雇用創出、京急開発、歳入増、競争促進をもたらす直接投資。

しかし、その利益は平等に分配されず、利益を損なわれる集団も存在する。エコノミストは税制を通じた再分配を支持するが、それは政治的に非常に難しい。多くのポピュリストは、人々の不安や不満に対して単純な説明を提供し、簡単に解決できると主張する。しかし、ラスト・ベルトの失業者について、技術変化の影響を考慮せず、貿易赤字や移民を攻撃するだけでは、雇用が増えることはない。

グローバリゼーションや国際協力を破壊するユニラテラリズムや権威主義に向かうのではなく、バランスの取れた政策が必要だ。炭素価格、トービン税、賃金引き上げ、など。それは平等だけでなく、将来のより良い経済、より良い社会をもたらす。


 アメリカの社会保障

PS Jul 2, 2018

Global Aging and Fiscal Solvency

MARTIN FELDSTEIN

高齢化による年金、医療費の負担を、政府はどのように負担するべきか?

アメリカは、その財源が枯渇する危機に直面する。そこで、法律によって売上税を導入し、その税収を「社会保障基金」として公債に投資することだ。国民は、生涯の売上税による基金を基準として67歳から年金をもらう。年金額を減らして62歳から、あるいは、年金額を増やして72歳からもらえる選択肢を用意する。


 ハイテク大企業

PS Jul 2, 2018

Big Tech Is a Big Problem

KENNETH ROGOFF


 アメリカ政治の再生

NYT July 2, 2018

America Has Gone Off the Rails. Steven Brill Sees Ways to Get It Back on Track.

By Daniel W. Drezner

NYT July 3, 2018

Where American Politics Can Still Work: From the Bottom Up

By Thomas L. Friedman

先週、私は工業世界で主要政党が崩壊していると書いた。今日、私は機能している政治単位について書く。独立記念日に楽観的でありたいなら、政治を上からではなく、下から見るべきだ。

こんな考えがはやっている。われわれは2つの海岸線で分けられている。その間に広がるのは、多様で、多元的で、近代化し、グローバル化しているアメリカだ。アメリカ人はますます薬に依存し、トランプ大統領を支持し、1950年の世界を取り戻す。

それは間違いだ。われわれの国は都市とコミュニティによって細分されている。「適応連携複合体」と私が呼ぶものだ。それは底辺から形成される。

ランカスター・カウンティを観ればよい。1997年、コミュニティの指導者たちがthe Hourglassを設立した。主要な雇用主であったArmstrong World Industriesが衰退し、人々は新しい取り組みに躊躇していた。ランカスターは、犯罪の多発するゴーストタウンだった。

市民たちは決断した。「われわれには時間がない。」 州政府も、連邦政府を、われわれを助けには来てくれない。Armstrongに代わる企業を探すことが解決策ではない。党派的な政治を投げ捨てることだ。ビジネス指導者、教育者、社会慈善家、社会起業家、地方自治体が集まって、適応連携複合体を形成する。企業家精神を発揮し、町をよみがえらせるために必要な妥協は何でもする。

アメリカ各地にそのような試みがあった。その最も成功した例がHourglassである。その使命を、「信頼できる情報、革新的なアイデアと発見の源泉となること、それによって関係者、政治家、有権者を助け、コミュニティを前進させる優れた決断を促すこと」と定めている。

ランカスターとその広域圏は、アメリカの縮図である。人口は6万人。40%が白人、40%がラティーノ。ラティーノの両親の多くはチキン加工に集まったプエルトリコ人である。15%はアフリカ系アメリカ人。その他はアジア系と、アフガニスタン、ネパール、イラク、シリア、世界中から集まった移民・難民である。町は白人の郊外に囲まれ、その先にはアーミッシュとメノナイトMennoniteの農民が暮らす田舎がある。カウンティの全人口は60万人である。

現代世界で成功するには、「自分たちが何になりたいか」をコミュニティが決断しなければならない。だれもそれを止めないし、だれもあなたの代わりにしてくれない。コミュニティを再生する事業の指導者たちは、政治的な分割を超えた、非常に長期の視野を持たねばならない。

NYT July 3, 2018

Forget The Parades. Protest This Fourth of July.

By Holly Jackson

PS Jul 4, 2018

Populism’s Corrupt Core

JAMES A. GOLDSTON

NYT July 3, 2018

Forget The Parades. Protest This Fourth of July.

By Holly Jackson


 移民政策論争

FP JULY 2, 2018

Spain Rescued a Ship. It Won’t Rescue Europe.

BY GONZALO FANJUL

PS Jul 3, 2018

How to Resolve Europe’s Political Crisis Over Migration

GUY VERHOFSTADT

PS Jul 5, 2018

Smart Immigration for Europe

SAMI MAHROUM

移民たちは生活水準の引き上げを望んでいる。ヨーロッパ移民の目的は、単純化すれば、働くことだ。もし自国で十分な雇用があれば、彼らは移民しない。その意味で、移民問題は職場の交換である。

経済民がその必要とする職場に一致させるよう、一定のメカニズムを導入するべきだ。難民送還の受入れと非合法な移民労働者への許可とをリンクしたEU・トルコ間の難民交換協定、スイスの国境地帯で外国人の労働を認める「G許可」は、制度的な革新の例である。

NYT July 5, 2018

For Europe, Cutting the Flow of Migrants Challenges Basic Ideals

By Steven Erlanger and Katrin Bennhold


 トルコ

FP JULY 2, 2018

Get Ready for a More Aggressive Turkey

BY SINAN ULGEN


 職場・雇用保障

FT July 3, 2018

A jobs guarantee — progressives’ latest big idea

LAWRENCE SUMMERS

職場を保障することが、革新的アイデアとして注目されている。多くの研究が職を失うことの損失を示している。またアメリカでは、柔軟な労働市場にもかかわらず、25歳から54歳の人口で雇用されている、もしくは職を探している人口の割合が、過去20年間、低下してきた、こうした趨勢が、アメリカにおいて技術変化や貿易に対する反発を強めている。

しかし、進歩的勢力が職の保障を支持するとき、その内容は実行性を考慮した条件を満たすべきだ。主要な観点として、1.財政・賃金への影響、2.何をするために雇用するか、3.マクロ経済的な影響、がある。

1人時給15ドルで400万人に職場の保障をすれば、財源として必要な額を、労働者1人当たり6万ドルと推定する。それは連邦予算の4分の1を超える8400億ドルになるだろう。もし民間部門で雇用されたまま低賃金労働者を補助すれば、その費用を抑えられる。ただし、低賃金労働者に依存している零細企業やレストランが負担を強いられる。

職場を保障した労働者がすることとして、インフラ投資や高齢者の介護に大きな需要がある。政府の直接雇用ではなく、契約を介して行えば、サービス部門の再編や効率性改善につながる。

財政赤字や賃金上昇をもたらすやり方では、インフレ圧力を強め、連銀の金利引き上げを強めるだろう。それは職場の保障によるメリットの多くを失わせる。財政の均衡や雇用の転換を重視すれば、メリットを残せるだろう。

FT July 3, 2018

Lex in depth: Why WeWork does not deserve a $20bn price tag

Elaine Moore in London and Eric Platt in New York

NYT July 5, 2018

More on a Job Guarantee (Wonkish)

By Paul Krugman

職場を保障するより、目標に合わせた政策の方が望ましい。


 タックスヘイブン

NYT July 3, 2018

If Ronaldo Can’t Beat Uruguay, the Least He Can Do Is Pay Taxes

By Gabriel Zucman

ワールドカップのポルトガル・スペイン戦があった日、レアルマドリードでプレーするロナルドは、2011年から2014年に1470万ユーロ(1710万ドル)の課税を回避していたことを認めた。その額は、スペインの小学校教師800人の年間給与、あるいは、1000人の乳がん患者の年間治療費に等しい。

ロナルドだけではない。2017年、アルゼンチンのライオネル・メッシも、FCバルセロナのプレーヤーだが、同じ罪で21か月の禁固刑の判決を受けた(その代わりに、250万ドルの罰金を支払った)。

スペイン当局は、選手たちが肖像権からの所得を課税回避したことで告発した。多くのプロスポーツ選手が、その権利をタックスヘイブンのシェルカンパニーに移してしまった。全世界では、莫大な税収が失われている。

パナマ文書やパラダイス文書が示すように、課税回避は富裕層、プロ選手、不労所得者の間に広まっている。なぜか? 彼らが邪悪な性格であるとか、その行為がもたらす結果を知らないからではない。グローバルな課税回避ビジネスにより勧誘されたからだ。

あなたはスイスの銀行からマイアミのゴルフ大会や、パリの展示会に招待されただろうか? 私もそんな経験はないが、世界の超富裕層たちは、アメリカでも、フランスでも、世界のどこに住んでいても、定期的に招待を受けている。法律事務所や仲介業者がシェルカンパニーを通じて、オフショアバンクの口座、信託、基金を売る。それによって資産とそこから生じる所得を課税から切り離すのだ。

このようなビジネスの関係者はそれを合法だと主張するが、多くの場合、課税回避の目的で行われており、違法である。

なぜわれわれはロナルドの所得や課税回避を懸念するのか? それは、社会がグローバリゼーションに適応できていないことを示すからだ。

過去30年間、グローバリゼーションの勝者は所得を急激に増大させてきた。しかし、彼らへの税率は、上昇するどころか、むしろ劇的に減少した。1930年から1980年まで、アメリカの所得税の最高限界税率は、平均、78%であったが、今では、37%である。これは経済的にも政治的にも持続可能ではない。

われわれは、成功した者に課税することは不可能だし、非生産的だ、と言われる。このような議論は、プロスポーツ選手が示すように、間違っている。

課税回避を阻止するため、政府は仲介業者に厳しい制裁を科すべきだ。長期の禁固刑や莫大な罰金を科していたら、ロナルドやメッシはやらなかっただろう。あまりに高額の所得は選手たちを社会的に好ましくないものにする。アメリカのプロスポーツでは、N.F.L.が給与の上限を、N.B.A.が高額の課税を求めている。

ヨーロッパ・サッカーはわれわれ社会の進む1つの道を示している。プロスポーツは経済の一部であり、不平等とは選択である。政策によって拡大することも、縮小することも可能だ。

FT July 4, 2018

It is a mystery why bankers earn so much

JOHN GAPPER

FT July 6, 2018

The EU is losing its battle against money laundering


 日中関係の改善

FP JULY 3, 2018

Japan’s China Deals Are Pure Pragmatism

BY J. BERKSHIRE MILLER

ドナルド・トランプ大統領の外交政策は日本を中国との和解に向かわせるのではないか、と予想する意見がある。しかし、それはないだろう。安倍政権に限らず、日本政府にとってアジアにアメリカの関与を維持することが戦略的な選択であり、中国との関係改善はプラグマティズムでしかない。東アジアには多くの戦略的対立が残っており、アメリカとの関係は欠かせないからだ。


 スラム

FP JULY 3, 2018

The New Frontlines Are in the Slums

BY ANTÔNIO SAMPAIO


 アメリカの暴力

FT July 4, 2018

Violence on television stokes fears in America’s divided society

MICHAEL GOLDFARB


 債券市場

FT July 5, 2018

China faces a tough test stabilising the renminbi

FT July 6, 2018

Summer bond markets low on liquidity could trigger volatility

GILLIAN TETT


 AIと地政学

FT July 5, 2018

The AI arms race: the tech fear behind Donald Trump’s trade war with China

Shawn Donnan in Washington

インキュベーターは、米中という2大経済圏の間で始まった21世紀の技術戦争における、グランドゼロになるだろう。シリコンバレーやボストンの企業家たちに支援を提供するZhongguancun Development Groupは、北京の技術開発特区に拠点を持ち、北京政府の所有である。ZDGの事業は、中国の政府資本によるアメリカ新興企業の買収であり、アメリカの政治家たちが党派を超えた懸念を強めている。「中国は、アメリカ産業の未来を狙っている。」

AI開発は、ますます地政学的な競争の中心になっている。

PS Jul 5, 2018

Is Cyber the Perfect Weapon?

JOSEPH S. NYE

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The Economist June 23rd 2018

The Saudi revolution begins

Turkey: Time to go

Immigration: Separation anxiety

Andrés Manuel López Obrador: Mexico’s answer to Donald Trump

Banyan: A Chinese lake

Urbanization: A tale of 19 mega-cities

(コメント) サウジアラビアもトルコも、改革の可能性と独裁的な権力者の危険な挑戦を、西側の国際秩序が制御不能な時代になっていることを懸念する内容です。イラク戦争や世界金融危機だけでなく、EUの多重危機、Brexitとトランプの秩序破壊は、とどまるところを知らず、新しい秩序への触媒となる各地の模索を収拾する新しい人類学や地政学に関心が向かうのでしょう。

中国の壮大な権力者の抗争は、南シナ海を湖とし、巨大都市圏を政策的に配置する、地球規模の大実験に至ったようです。

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IPEの想像力 7/9/18

インドでも、グローバリゼーションと成長の加速が見られました。反市場・反資本主義的な権力エリートに従ってきた貧しい旧植民地が、冷戦の終焉とIMF融資を契機に、貿易・資本移動の自由化へ転換したのだろうか。それはグローバル・エリートと貧富の格差をもたらし、形だけでも続いてきた民主主義の不安定化が増幅したのではないか。

世界最大の民主主義国家、インドこそ、Brexitとトランプの時代の条件をすべて備えた、ポピュリストたちの楽園ではなかったか? なぜインドで「民主主義」が機能したのか?

そんな私の印象は、次第に、崩れ始めました。

インドは不思議です。住民の間でエスニシティや文化、宗教、特に言語が大きく異なることは、国家統合を危うくするはずです。市場統合=社会的分業に参加することで豊かになることが共通の市民意識、市民的な法律のもたらす秩序に向かうとすれば、逆に、インドが示す極端な貧富の差やカースト制、女性・マイノリティへの差別は、法的秩序も危うくするはずです。

インドは、民主主義や、ナショナリズム、国家主権、市場自由化=グローバリゼーション、帝国を考える原点であると思います。主権国家や自由貿易体制が、常に、さまざまな政治経済モデルの答えではない、と示すだけでなく、それでも、民主主義が持つ可能性を考える原点となる。グローバリゼーションというカオスの原点。

「国家と国家システムへの信頼が揺らいでいる。」(長崎暢子)

1857-59年、インド大反乱(セポイの乱)。「そこにはヒンドゥーの生活文化やムスリムの宗教規律を脅かすものへの危機感が目覚め、やがては共通の文化をもつインドの諸階層の人々の広範な共感を呼び起こしていった。」「インドを一つの国家=共同体として多民族性、多宗教性のなかでイメージすることを容易にした。」(長崎暢子) 帝国的な支配者、イギリスとの戦いによって生まれるインドの人々の共同体。「民族的単位」のなかに含まれる、ヒンドゥーとムスリムの協調、女性の指導者、などのイメージ。

「為政者にとっても、宗教やカースト、そしてエスニシティや地域などさまざまなアイデンティティが存在するインドで、そのようなアイデンティティを基盤とする分裂的政治を起こさせないためにも、つまり、国家の統合を維持するためにも、人々の信頼をつなぎとめるだけの社会経済発展が必要であった。」(近藤則夫)

独立後、半世紀のインド政治をどのように理解すればよいのか。「インドにおける国家運営の基本モチーフは、独立の堅持、国民統合の達成、開発の促進という3点に集約できる。」(堀本武功)

なぜインドは民主主義が可能なのか? 独立運動を、非暴力の大衆運動として組織した国民会議派の成果、そして、帝国主義が残した軍・警察と官僚制に依拠した議会制民主主義を継承したことが、インドの政治を「非西欧型社会の中にあって、複数政党による競争政治を続けてきた例外的存在」にした、と考えます。

経済的不平等を是正する、また、欧米資本に対抗する経済ナショナリズムとして、インドは「社会主義カード」を駆使しました。しかし、経済的成果が乏しい中、会議派が示した第2のカードが「ヒンドゥー・ナショナリズム」でした。しかし、それは憲法が定める国家理念としての政教分離主義から外れる動きです。多宗教国家としてのインドの国民統合を危うくする会議派の生き残り戦略でした。その選択が、会議派の国民統合という役割を終わらせた、と見ます。

19846月、シク教本部寺院の武力解放。シク護衛兵によるインディラ・ガンディー首相の暗殺。北部インドを中心にシク教徒に対する暴動。首都ニューデリーで約1000人を超えるシク教徒の殺害。こうした騒乱は、エリート政治からマス政治へ、地方分権へ、脱冷戦へ、インドの政治軸をシフトさせる地殻変動とともに生じました。

BJPによるヒンドゥー・ナショナリズムの影響と、特に各州における「後進カースト・不可触民の政治化」(堀本武功)とが拮抗する形で、インドの多元的な民主主義は活性化し続けている、ということに驚きます。会議派がきった最後のカードこそ「自由化」であり、その後の政権もこれを継承します。

「しかし、経済成長加速の原動力を親市場主義的な経済政策の採用に求める見解は、強い批判にさらされている。」(柳沢悠)

なぜ成長率は高まったのか? 1990年代の自由化以前に高まった成長率を、「19世紀末以来の長期の農業生産の発展過程」、「20世紀初頭から始まる、村落社会の社会経済的な支配構造の変容」、「下層民を含めた農村社会が工業品やサービスの市場として発展」した、と考えます。それは、「独立以降の全面的な保護関税制度や国家主導の国民経済建設の戦略のもとで」産業構造を高度化し、自給できる体制を構築していたから、自由化の利益を実現できたのです(柳沢悠)。

インドのことを調べる中で、それは中国と比較されることが多いけれど、むしろアメリカと、EUと、あるいは、メキシコと比較する必要があるのか、と思い始めました。

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