(前半から続く)
● ギリシャとユーロ圏の関係修復
FT June 22, 2018
An agreement on Greek debt that
satisfies both sides
TONY
BARBER
FT June 25, 2018
Greece
wins a fresh chance to go it alone
あまりにも長かった。しかし、8年経って、3つの緊急融資を受けた後、ギリシャはついにユーロ圏の融資計画による拘束から逃れる。救済パッケージは債務返済負担を減らし、当面の展望は明るくなった。欧州委員会は、ユーロ圏の混乱期を脱する、ギリシャ国民も、近代ヨーロッパ史上で最悪の不況を脱する、という楽観論が生じている。
先週、ユーロ圏の財務大臣たちとギリシャ政府は合意に達した。それは、注意深く、すべての関係者が政治的に受け入れ可能なものになっている。今年末から来年に選挙を迎えるギリシャ首相Alexis Tsiprasは、自国をユーロ圏の独裁から解放した、と主張できる。ドイツが率いるユーロ圏の債権諸国・強硬派は、アテネの経営失敗を彼らが支払う、と責めて、債務免除に反対する、という姿勢を転換した。さらに、ギリシャ政府の財政が容易に赤字に流れないよう、救済パッケージには多くの条件を付けている。
合意は、金利だけの返済期間を10年延長した。これによって平均返済期間は40年に延びる。これは、中期的に、ギリシャの債務返済負担を大幅に軽減する。その代わりに、ギリシャは構造改革と制度改革に関する約束を守り、モニタリングを受ける。財政運営の目標は、2022年までに、プライマリー・バランスで3.5%の黒字となる。その後、2060年まで、平均で2.2%の黒字を維持する。
ギリシャ国民は、こうした合意が遅れたことで苦しみ続けた。最初の救済融資は2012年にさかのぼる。多年にわたる緊縮策は深刻な結果をもたらした。公式の失業率はなお20%に達し、きわめて脆弱で、市場における財政資金の調達も難しい。
今後、いくつかの問題が待っている。第1に、救済融資が終わる8月以後に、政府が安定した成長経路を見出し、雇用を増やして、大衆の怒りを鎮静化できるか、である。
第2に、来年1月、国民が特に嫌っている年金改革が導入される。それは債権諸国にとって絶対に譲れない要求だ。ギリシャの政党が国民に犠牲を求める力が試される。
第3に、汚職の蔓延、権力の乱用、法の支配に関する疑念がある。
それでもギリシャ政府の支払い能力に関して、当面の問題は解消された。自分の足で立つことができる。その力が維持されることを望む。
● マルチラテラリズム
PS Jun 22, 2018
Reclaiming Multilateralism
DENNIS
J. SNOWER
YaleGlobal, Thursday, June 28, 2018
West’s
Failure to Reform Threatens World Order
Humphrey Hawksley
● 移民政策のモデル
PS Jun 22, 2018
Confronting the Migrant Threat to the
EU
ANA
PALACIO
NYT June 22, 2018
There’s a Better, Cheaper Way to
Handle Immigration
By
Sonia Nazario
YaleGlobal, Friday, June 22, 2018
The US, Nation of Immigrants, Turns
on Them
Susan
Froetschel
NYT June 22, 2018
When Harsh
Policy on Migrants Wins Votes
By Amelia Lester
トランプ大統領の厳格な移民政策は、彼の選挙キャンペーンで支持者たちに約束したものだ。彼は強硬姿勢で選挙に勝った。それは2001年のオーストラリアの移民危機を思い出させる。いずれも、移民政策の非人間的な管理強化が、選挙の勝利をもたらす例である。
当時のハワードJohn Howard首相は、1996年に起きたオーストラリア最悪の銃撃事件の後、厳格な銃規制法案を通過させた。この勇敢な行動は、その後の大規模な銃撃事件を防いだと言われる。
しかし、ハワードは、その長期政権で、移民に対する厳しい姿勢でも有名であった。非合法移民を拒む公約で、2001年の選挙で勝った。その8月、ハワードは、ノルウェーの貨物船をオーストラリアの海域に入ることがないように、ナイジェリア拒否した。再選のために、非合法移民の急増を促した。大統領にはそうできる。人民元の混乱も懸念される。
ハワードの法案で、オーストラリアの港湾への難民ボートの侵入を防ぎ、難民申請者の処理を太平洋の島Manus,
Nauruで行う政策が維持されてきた。申請者は長期にわたって拘置所に入れられたままで、自殺者が出ている。
FT June 25, 2018
Vanishing
Frontiers: the forces driving Mexico and the United States together, by Andrew
Selee
Review by John Paul Rathbone
アメリカ=メキシコ国境の両側で、生活は急速に変化している。大統領に就任して2日後に、ドナルド・トランプはNAFTAの再交渉、あるいは、停止を宣言し、その3日後、「巨大な、美しい壁」の建設を命じた。
トランプ支持者たちは大喜びだ。彼を大統領にしたのは、メキシコ人を「麻薬の運び屋、犯罪者、強姦魔」と呼んだ野蛮な主張であった。しかし、Andrew Seleeは、彼のネイティビストの主張が両国を切り離そうとしても、それは物語の一部でしかない、と主張する。アメリカとメキシコを動かす諸力は、フルスピードで統合化を推進し続けている、と。
誤解されたアメリカ=メキシコ関係は政治家たちの訴えに利用された。メキシコは、グローバリゼーションや影響力低下に関するアメリカ人の不安によって、その標的となってきた。
Seleeはペンシルベニアの小さな町Hazletonに注目する。そこはこの問題群の小さな宇宙となっている。
1世紀前、Hazletonは北欧からの移民を集める磁石であった。アメリカで唯一、チロル風のカトリック教会があることを町は自慢した。しかし、近くの炭鉱が閉鎖されて、町は衰退する。その傾向が止まったのは、1990年代半ば、ビジネスの指導者たちが3つの工業開発区を設け、国際的企業が集まったからだ。アメリカの食品を生産する著名なメキシコ系多国籍企業が集まった。
メキシコ系や他のヒスパニックの移民たちが流入し、経済は再生したが、同時に町は変化した。2006年には住民の3分の1がヒスパニックになり、Hazleton市長が英語を公用語とした。ここはアメリカ移民論争のグランド・ゼロになった。2016年、バラク・オバマを2度支持したHazletonが、トランプの勝利に加わった。
どれほどポピュリスト政治家たちが分断を叫んでも、相互の信頼は統合を推進するダイナミズムを失わない、と著者は確信する。
The Guardian, Tue 26 Jun 2018
What
Europe could learn from the way Africa treats refugees
Alexander Betts
ヨーロッパの移民政策に関しては各国の意見が対立している。アフリカ諸国との協力を強める、という点だけで一致する。しかし、その中身は、国境の警備強化、移民流入の阻止、ヨーロッパからの送還、である。
むしろ、ヨーロッパはアフリカ諸国の移民受け入れ政策からもっと学ぶべきである、と国連高等難民弁務官Filippo Grandiは指摘した。特に、東アフリカの3か国、エチオピア、ケニア、ウガンダがそうだ。
広く称賛されているのは、ウガンダが1990年代に打ち出した「自律戦略」である。難民に働く権利や自由な移動を認めている。独立したときから、ウガンダの難民は人口の少ない地域で土地を与えられ、開発のための手段も提供された。こうした難民は地域社会の利益になっている。最近、南スーダンや今後からの難民が増え、160万人に達しているが、政府はこの方式を支持している。
FT June 26, 2018
Give
refugees a voice and let us shape our own futures
MOHAMMED BADRAN
PS Jun 28, 2018
The Battle
for Germany’s Soul
CARL BILDT
● 法人税率の低下
NYT June 22, 2018
Once Cut,
Corporate Income Taxes Are Hard to Restore
By Robert J. Shiller
トランプの法人税減税は長い傾向の1つでしかない。それが逆転したのは戦争のときしかなかった。
連邦法人税が始まったのは1909年であった。それは利潤の1%という非常に低いものだった。100年以上の間に、それは約50年間上昇し、それから次の50年間低下した。
法人税がピークに達したのは1968年、52.8%であった。2017年の法律で、前年の35%から21%に下がった。
アメリカで近代的な所得税が始まったのは、戦争のせいではなかった。進歩的時代に、富が正当な社会的責任を免れないように、税の徴収が始まった。それは課税の不平等を是正するものだった。
しかし、実際に法人税を引き上げたのは、戦時の、より情緒的な主張であった。
大衆は、戦時の「利潤集め」に憤慨し、政府は税率を引き上げた。
しかし、朝鮮戦争を最後に、こうした戦時の感情は失われ、レーガンとトランプの減税が法人税を引き下げてしまった。戦争がなければ、この趨勢は変えられない。
● AIとロボット
FT June 23, 2018
When robots write the editorials,
all will benefit
FT June 27, 2018
Work in
the age of intelligent machines
MARTIN WOLF
FT June 28, 2018
From
lab-grown burgers to Uber-style banks
Tyler Curtis and Nicola Medicoff
● 独占、技術
FT June 24, 2018
Antitrust
policy is ripe for a rethink
RANA FOROOHAR
PS Jun 27, 2018
Does the
West Want What Technology Wants?
RICARDO HAUSMANN
ポピュリストたちは技術を軽視し、自分たちの見方を広めることに熱心だ。しかし、それは技術革新を妨げ、社会を貧しくするだろう。技術と社会、経済的な豊かさの関係を、われわれは中国の台頭よりも、もっと心配しなければならない。
● 貿易戦争
FT June 24, 2018
After the
opening trade salvos, the big guns are readying
GAVYN DAVIES
NYT June 25, 2018
The Great
Soybean Conspiracy
By Paul Krugman
トランプ政権は、中国、EU、NAFTAと、同時に3方面の貿易戦争に向かいそうだ。その経済学的な間違いはおぞましい。
それだけではない。内外における政治的な間違いも深刻だ。政府は事態を正しく理解できない。それゆえ、何が起きるか、わかっていない。この政権は、陰謀論を撒き散らす。醜い陰謀論を信じている人物を、わざわざ採用する。
トランプの宣言、「貿易戦争は良いことだ。貿易戦争に勝つのは簡単だ。」は、その間違った予想をくつがえされるだろう。ますます、しっぺ返しの報復が広まり、全面的な貿易戦争を避けるのはむつかしくなる。
アメリカに多くの敗者が生まれる。特に、農業は、生産物の20%を輸出する、輸出依存の部門である。貿易戦争が多くの職場を奪う。他方で、輸入競争部門の雇用が増えるだろう。それは同じ人々ではなく、深刻な混乱を生じる。
アメリカの輸入財の半分以上、中国製品の95%はトランプ関税を強いられるが、中間財や資本財として、アメリカ製造業を効率的にしている。貿易戦争は生産コストを上昇させ、輸出業者以外でも、ビジネスを悪化させる。
国内の犠牲者が政策に反発するのを、政府はどうするだろうか? 「われわれはタフな政策を実行している。いくらかコストを支払うのは当然だろう。」 むしろRoss商務長官は、「反社会的」な投機業者の「利殖行為」について捜査を要求する。そこに反トランプの陰謀論を観る。
誰でも、無実の人々が、悪人にされるのだ。
FT June 26, 2018
Harley-Davidson
workers back Trump despite jobs shift
Patti Waldmeir in Menomonee Falls, Wisconsin
これはポーカーゲームだ。
ハーレー・ダヴィッドソンが工場をアメリカ国外に移転する決定をしたことについて、大統領とEUのどちらを責めるか? と質問されると、労働者たちは、ヨーロッパだけを責める、と強調した。「大統領はアメリカの鉄鋼・アルミニウム産業を救おうとしているだけだ。」
FT June 26, 2018
Honda
faces the real cost of Brexit in a former Spitfire plant
Alex Barker and Peter Campbell in Swindon
SPIEGEL ONLINE 06/26/2018
Interview
with U.S. Economist Larry Summers
'The Very
People Who Voted for Trump Will Suffer'
Interview Conducted By Tim Bartz
元アメリカ財務長官のLarry Summersにインタビューした。
DER SPIEGEL: 貿易戦争が始まるのか?
Summers: 米中とも、ナショナリストや保護主義の傾向が強まっている。しかし、貿易戦争の被害は甚大で、トランプはある時点で、「勝利した」と宣言し、回避するだろう。
DER SPIEGEL: トランプの声明に対する中国の対応は?
Summers: 譲歩を示すことが、将来の同様の脅迫を助長することを懸念するだろう。中国のアメリカに報復する多くの手段がある。
DER SPIEGEL: アメリカの債券を売却するか?
Summers: それは中国自身の利益を損なう。また、ドルに代わるユーロが信頼されていないから、金融市場の混乱はドルを強くする。
DER SPIEGEL: アメリカの大企業は、なぜトランプ政権に反対しないのか?
Summers: すでに政権を支えるCEOsは諮問委員会を辞任している。ビジネス界は、中国からの報復や中国のEUと日本企業への優遇策で、アメリカ企業が市場を失うと懸念している。
DER SPIEGEL: トランプの減税で企業は大きな利益を得た。
Summers: しかし、ビジネス界の強く望むTPP、NAFTA、TTIPをトランプは破壊した。
DER SPIEGEL: 政権から自由貿易論者は去った。ナヴァロはどうか?
Summers: ナヴァロが正しいと思うエコノミストは1人もいないだろう。トランプに投票した有権者たちは、貿易赤字の増大、財政赤字によって、大きな損失を強いられるだろう。
DER SPIEGEL: アメリカ経済は好調のようだが?
Summers: それは持続的な政策によるものではない。
● インドの選挙
FT June 25, 2018
India:
Narendra Modi hunts for more economic ‘firepower’
Amy Kazmin in New Delhi
モディNarendra Modi首相は、商売やビジネスに関わる者たちから強い支持を受けて、政権に就いた。国民会議派の政策が機能せず、人々は失望していた。モディは、単独政権で、ビジネスのために大胆な改革を実行し、高い成長率を実現する、と期待された。
2018年の第1四半期は、年成長率に直して7.7%を達成した。しかし、その期待があまりに高い水準であっため、また、中国に並ぶ経済力を目標としていたから、来年の選挙に向けて、モディと与党BJPが勝利することは容易でない状況だ。
成長率を高めるには、さまざまな改革が必要であった。モディは、高額紙幣の廃止と、新しい税制の導入を優先して実現した。しかし、高額紙幣の非貨幣化は、その影響もコストも、マイナス面が大きかった。新税制に関しても、彼の支持基盤である小ビジネスの不満が強く、大幅な適用免除を打ち出した。
インドの債務累積問題は成長の制約要因であった。銀行の健全化にはなお数年を要するだろう。モディは政府機関を活性化したが、国際競争力や労働集約的な輸出産業の成長は観られなかった。原油価格の上昇、貿易戦争、金融市場の不安定化、など、世界経済環境がますます悪化する中で、インドの財政や経常収支は脆弱さを示している。
● サイバー戦争
FT June 25, 2018
We are
entering the twilight zone of cyber warfare
JOHN THORNHILL
● 米中首脳会談の評価
FP JUNE 25, 2018
Total
Denuclearization Is an Unattainable Goal. Here’s How to Reduce the North Korean
Threat.
BY SIEGFRIED S. HECKER, ELLIOT A. SERBIN, ROBERT L. CARLIN
FP JUNE 26, 2018
With North
Korea, Good Intentions Aren’t Enough
BY ROBERT A. MANNING
アメリカのポンペオ国務長官が北朝鮮の金正恩と2度の直接会談を経て、少なくとも5回の板門店会談を行った後で、わずか391語のあいまいな声明が、非核化も、新しい米朝関係と、朝鮮半島の「平和体制」を確立した後で行われるというのは、どういう意味なのか?
これは多くの交渉の始まりに過ぎない。トランプ大統領が金正恩を同意させたことは素晴らしい成果である。しかし、それが実行されるまでには、単なる指導者の善意だけでは不十分だ。また、トランプ大統領の2国間交渉は、北東アジアの枠組みを何も示さず、他のアクターたちにとって新しい地域関係に向けたフリー・フォールの競争状態を創り出した。
中国も、韓国も、ロシアも、そして、ようやく姿勢を転換した日本も、彼らが描く地域の姿は互いに異なっている。何より、キムの意図が重要だ。キムは「ケ小平の瞬間」を迎えたのか? 軍事ではなく、経済成果を、権力の正当性として目指すのか。また、体制崩壊をともなった「ゴルバチョフの瞬間」を超えたのか? それを試すには、まず国際機関が北朝鮮と加盟交渉を進めてみることだ。
トランプには朝鮮半島外交がない。主要なアクターは、再び6か国協議の枠組みを使って、目標達成のメカニズムにするべきだろう。
FP JUNE 26, 2018
Experts
Question Wisdom of Canceling U.S. Exercises with South Korea, As Mattis Makes
It Official
BY LARA SELIGMAN
FP JUNE 28, 2018
How North
Korea Could Go From Hermit Kingdom to Factory Hub
BY ELIAS GROLL
シンガポールの米中首脳会談は、2人の指導者が長年の懸案を解決し、世界で最も孤立した国を開放する、という希望をもたらした。
それは幻想ではない。韓国の研究機関Samsung Securitiesが報告書を出した。サミットの成功と経済制裁解除を予想して、外国資本が北朝鮮に殺到し、ヤドカリ国家を、経済繁栄に向けた決死の国に変えるだろう、と結論する。
「韓国がその富と工業化のノウハウを、北朝鮮の人的資源・自然資源に組み合わせれば、両国民の経済は長期的な大飛躍を実現する。」
そのために克服すべき障害物は多い。しかし、世界最大の経済圏に挟まれた有利な位置を生かせるだろう。アメリカは「完全、かつ、検証可能な、不可逆的な核軍備の削減」を求めるが、北朝鮮は「完全、かつ、検証可能な、不可逆的な繁栄」を求める。
しかし、ケソン工業団地の再開はその手始めでしかない。北朝鮮が製造業のハブになるには、根本的な改革が必要である。William Brownの分析によれば、それは通貨・金融システム、所有権、そして「国家指定価格、市場価格、賃金、金利、為替レートに存在する巨大なギャップを橋渡しする単一の価格システム」を含む。
● 債権者と債務者
FT June 26, 2018
How the debtor/creditor
relationship opens itself up to abuse
DANIEL DAVIES
● 中国の戦略
PS Jun 26, 2018
Is China’s
Innovation Strategy An Unfair Trade Policy?
SHANG-JIN WEI
PS Jun 27, 2018
Trump’s
Weak Case Against China
YU YONGDING
FP JUNE 27, 2018
The Belt
and Road Bubble Is Starting to Burst
BY DAVID G. LANDRY
NYT June 28, 2018
The Coming
Tech Battle With China
By Ruchir Sharma
中国政府は、インターネット世界を切り分け、自国のブランド、自国のルール、自国の文化を守って、プライバシーを認めない、というつもりだろう。しかし、その本当の野心は、このパラレルな宇宙を、インターネットだけでなく、技術の世界にも実現したのだ。
グローバルな貿易戦争の新しい危険な前線が現れる。技術保護主義である。
トランプ大統領は、こうしたハイテク貿易戦争の指導者ではない。彼は旧産業・ラストベルトの衰退を逆転させる政治運動で成功した。しかし、その国の技術こそは、長期的に、世界の経済覇権を決定する力がある。
大統領の中国に対する保護主義は、大統領自身よりも広く支持されている。確かに、19世紀のアメリカもイギリスの技術をコピーし、日本はアメリカの技術をコピーした。しかし、中国政府のやり方はその規模も組織もまったく異なる。
北京は、Googleなど、直接に禁止したし、ほかにも厳しい規制を強いて、中国企業に売却するように仕向けた。中国は自国企業のインターネット独占を創り出し、莫大な国内市場で十分な儲けを与えてから、それを攻撃的な海外市場の獲得に利用させた。
インターネット企業の市場評価額で、世界上位の20社中、11社はアメリカ企業、9社は中国であるが、中国は急速に拡大しており、5年前は2社でしかなかった。
トランプ政権は中国企業への制裁や、次の金融技術と人工知能で、アメリカ企業の技術輸出を管理し、アメリカからの中国投資も監視している。またEUの個人情報保護に関する新しい規制は、ハイテク大企業だけでなく、中国の情報監視国家にも反対するものだ。
しかし、世界は中国のやり方を次々に模倣し始めている。ロシアやブラジルは、インターネット企業がサーバーを国内に置くよう求めている。また、カタール、イラン、UAEは、WhatsAppのような、外国企業のインターネットサービスを禁止している。
世界には、技術保護主義による無数の分断が生じつつある。
● 政治制度の溶解
NYT June 26, 2018
Why Are So
Many Political Parties Blowing Up? (Part 1)
By Thomas L. Friedman
工業化された世界のすべての諸国で、一斉に、主要な政党が静かに爆発した。アメリカ、イギリス、イタリア、フランス、ドイツ。その理由は? ・・・気候変動だ。政治や社会、技術が依拠するエコシステム全体が変化しつつある。「無秩序の世界」から人々は流出し、「秩序ある世界」に向かっている。
NYT June 27, 2018
Why Do We
Value Country Folk More Than City People?
By Will Wilkinson
田舎から都市への人口移動は、移民とともに、人々の投票行動を明確に示している。
● ユーロ改革
FT June 27, 2018
Should
Merkel embrace Macron’s vision for eurozone reform?
Isabelle Mateos y Lago and Hans-Werner Sinn
メルケルはマクロンのユーロ改革案を支持するべきか?
Isabelle Mateos y Lago ・・・Yes
ユーロ圏は、競争力の差を為替レートで統制できず、近畿循環が異なるのに十分な財政政策が取れないために、加盟諸国間の拡散を強めている。ドイツがそのルールを変えるか、イタリアがユーロ圏を離脱するしかない。
ユーロ圏を維持するために、ドイツは改革を支持するべきだ。
Hans-Werner Sinn ・・・No
市場の統合と競争を支持するだけで、改革を避けるための財政支援をしてはならない。共通の預金保険も、アメリカの経験が示すように、ドイツの銀行をカジノに変えてしまう。ケインズ主義がもたらしたブームは、バブルを生んだだけだった。
アメリカの経験から学ぶべきは、各州が予算を均衡させ、治安・安全保障と国境管理、その他の公共財に集中すべきだ、ということである。
SPIEGEL ONLINE 06/27/2018
Italian
Interior Minister Salvini
'Within a
Year, We'll See if a United Europe Still Exists'
Interview Conducted By Walter Mayr
SPIEGEL ONLINE 06/27/2018
'We Cannot
Be Stopped'
Merkel's
Toughest Adversary in Europe
By Walter Mayr
FT June 28, 2018
Eurozone
reform: solving the Franco-German puzzle
Anne-Sylvaine Chassany in Paris and Guy Chazan in Berlin
● Brexitの嘘
FT June 29, 2018
The
irremediable folly of a ‘no deal’ Brexit
MARTIN WOLF
● リビア
FT June 29, 2018
The world
must stand up for the rule of law in Libya
MUSTAFA SANALLA
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The Economist June 16th 2018
Kim Jong Won
Politics: How
democracy dies
Russia: Free
Oleg Sentsov
The Singapore
summit: Enough to make a Rodman cry
Geopolitics:
Democracy’s retreat
(コメント) 米朝首脳会談に関する記事が、バランスの取れた評価を示します。これは不動産開発の取引だったのか? 核兵器はどうなったのか? 米韓合同軍事演習を中止して、何を得たのか? アジアの同盟諸国、韓国と日本はそれぞれに異なった評価と動きをし始める。中国だけが利益を得たのか? そして、もし金正恩の時間稼ぎでしかないと分かったとき、次の激しい言葉の応酬は、軍事衝突を避けられるのか?
世界で強権的な指導者が復活していることを、どう考えたらよいのか? 「民主主義の死」を誇張してはいけない。しかし、その再生を支持するには、もっと改善しなければならないことが多くある。
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IPEの想像力 7/2/18
実家で、朝日新聞を取り始めました。それまでは読売でしたが、記事が面白くない。外交や国際関係についても、政府を支持する学者が書いていることも多く、あまり面白くないと思いました。
ようやく契約期間が終わったので朝日に変えると、読売の配達所から、社員が洗剤を持ってわざわざ来てくれました。何か問題がありましたか? ・・・記事が面白くなかった、と私は答えました。安倍首相がこれほど我慢ならない答弁を繰り返すことに、読売の記事は何も切り込まない。安倍さんにはあきれたが、悪いけれど、読売も取りたくない、と。
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近所の医者に行くと、待合室に『ナショナル・ジオグラフィック』という面白いアメリカの写真雑誌があります。日本語版です。それは地理学のような、人類学のような、探検家や植民の時代から引き継がれた、境界線を越える帝国のサイエンス、という不思議な中身です。映像がとても印象的です。私が購読しているThe
Economistも、少し似た雰囲気があります。
朝日新聞が発行しているGLOBEという週刊の別刷りは、この2つを合わせたような感覚で、読みたいな、と思っていました。とても面白いのです。
日系ブラジル人の斎藤俊男さんの話。・・・ その年譜が示すように、斎藤さんは1967年にブラジルで生まれました。州立大学を卒業し、体育の先生になった、とあります。
しかし、出稼ぎで日本に来る。1990年、日本の出入国管理法が改正され、日系3世まで就労が認められるようになったから。この改正には、バブルで労働力不足になった日本の企業が、ひどくこじつけた(?)労働力の輸入を始めた、と感じています。しかし、彼にとってはチャンスでした。「親の祖国を観たかった。」
斎藤さんは岐阜県や埼玉県の自動車部品工場で働きました。日系ブラジル人は、仲介業者を通じて仕事を見つけました。日本語がうまくなり、面倒見が良い斎藤さんに、仲介業をビジネスにしたらよい、という助言があったそうです。妻と必死に働いて、27歳で起業します。おそらく、起業を目指す背景には、日系人の出稼ぎ労働者に対する差別もあっただろうと思います。
子持ちの日系人が職を得にくいことに対して、斎藤さんは、日系人がポルトガル語で子供を世話する保育所を会社の中に設けました。安価な労働力と斎藤さんの魅力で、派遣先企業が大きく増えたそうです。
しかし、まだまだこの人の冒険は続きました。2008年のリーマン・ショックで受注が激減します。日系人社員のために建てたアパートの負債が3億円。毎月の返済額は300万円以上もした。斎藤さんは、自殺して保険金で返済できないか、とまで考えます。しかし、妻と3人の子供、残った社員とその家族を支えねばならない、と彼は考えます。
税金が払えない相談をするために町役場に向かう途中、斎藤さんは放棄された畑を見ます。そして、これからは農業だ、と考えます。後継者がいない農地を集めて、自分が社員たちと耕そう、と決意したのです。自動車を手放し、農機具を買って、賛同してくれた社員と、銀行からの融資も得ました。「給料は払えない。パートナーとしてやってくれ。利益は平等に分ける。」
すごいな。おもしろい。まるで近代初期の冒険商人です。植木屋が倒産した後の、2000平方メートルの土地を借りて、手作業で開墾し、土づくり、肥料や栽培技術は農家に教えてもらったそうです。それでもなかなか利益が出ません。もっと安定した価格で売れる野菜を探し、長ネギを栽培します。百貨店や高級スーパーに販路を拡大し、ブランド「葱王」を売りました。
斎藤さんは、50歳でこのビジネスを仲間に譲ってしまいます。「会社は社長のものじゃない。従業員のものだから。」 そして、日系ブラジル人の教育に取り組みます。いじめられたり、中退したりする子供が多いから。「英語、ポルトガル語、日本語ができる、世界で暮らせる人を」「日本の将来を担う子供たちを育てる。」
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GLOBEの記事をさらに読みました。死んだペットを10万ドルで復元する韓国のクローンビジネス。・・・JICAが日本の円借款112億円を投じたエルサルバドルの失敗したコンテナ港開発。・・・インテルが1.7兆円で買収した自動運転技術を開発したイスラエル軍の天才たち。・・・
安倍政権も終わるでしょう。彼が1つの時代をどのように変えたのか、歴史として総括されるのは先の話です。少なくとも、世界中が変化する中で、大国政治の怪しげな神話と日米軍事・政治同盟の強化を外皮とした日本の時代は、民主主義をたくましく生きる、もっと多くの挑戦する若い世代を求めています。
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