IPEの果樹園2018
今週のReview
6/25-30
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国際秩序の破壊者 ・・・情報革命 ・・・貿易戦争とは何か ・・・米朝首脳会談の成果 ・・・先端技術の競争戦略 ・・・新しい移民政策 ・・・独仏指導とEUの民主主義 ・・・移民家族の引きはがし ・・・イタリアとユーロ危機 ・・・エルドアンの支配 ・・・ポピュリストのナショナリズム
[長いReview]
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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign
Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project
Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 国際秩序の破壊者
NYT June 15, 2018
The Trump
Doctrine Is Winning and the World Is Losing
By Kori Schake
何十年か経って、われわれは2018年6月の第1週に世界史は変わった、と振り返るのかもしれない。リベラルな秩序の終焉。
カナダのサミットで、アメリカのトランプ大統領はカナダ首相を侮辱し、その数日後、世界最悪の抑圧体制に依拠する独裁者、金正恩をほめちぎった。地域の同盟諸国の相談することもなく、彼は韓国から米軍を撤退させたいと繰り返した。
アメリカの同盟国の安全保障に関するこのような無思慮、互恵的な貿易に対する敵意、アメリカの意図的な度率は、これまでにないものだ。これがトランプ政権の外交政策である。まったくあからさまに、自由世界の指導者が、その同盟関係、通商関係、この70年間、アメリカが指導する秩序の特徴であった国際機関の破壊を望んでいる。
同じ考え方を共有する諸国の利益を攻撃的に軽蔑し、民主主義や人権に無関心な、独裁者たちを奨励することが、トランプの築きつつある新しい世界秩序だ。われわれは新しい、恐怖の時代に入ろうとしている。
大統領の考えでは、リベラルな世界秩序というのは騙し合いだ。アメリカはあまりに多くを支払い、仲間たちにだまし取られている。アメリカは同盟関係から抜けて、もっと国内の必要に応じた支出をする、と彼は求める。アメリカ人が世界の変化を恐れ、その指導者たちがその変化を、そして労働者やその家族に対する影響をうまく説明できないとき、彼の主張に共鳴する者が現れる。
成果に大きなばらつきが生じ、機会が失われるほど、既存システムの公平さが疑われる。イラク戦争の大失敗、2008年の金融危機が、こうした失策を犯しながら、その責任を取らない専門家たちの信用を失墜させた。アメリカの同盟諸国は自分たちの手厚い社会保障システムを自慢し、アメリカのシステムを非難するが、自分たちの防衛にはわずかしか支出しない。
こうした彼らの姿勢がトランプの登場とリベラルな秩序の衰退を促した。しかし、それは決してこのシステムを維持することの重要さを損なう理由にならない。
それはどういうシステムであったのか。アメリカは、一揃いのグローバルな規範を、ルールに依拠した国際システムにおいて確立した。すなわち、民主主義の促進、共通の諸価値を守ること、同盟諸国の防衛、自由貿易の促進、力の劣る諸国に発言させることでアメリカのパワーを正当化する制度と行動様式を確立すること。
最期の点は重要だ。アメリカは他国の支持から利益を受けている。アメリカの提供する安全保障があることで、友好諸国の政府は投資を引き寄せ、平和的に成長した。それが協力を促したのだ。このシステムがあることで、アメリカも他国も、共通の安全保障と財・人の自由移動を維持するコストを分担した。
大統領の強い不満にもかかわらず、アメリカが指導するシステムは高価なものではなかった。特に、それ以外の選択肢を考えるとき、それは明らかだ。第2次世界大戦中、アメリカはGDPの40%を軍事に充てた。今では4%に満たない。
もし大統領や彼と同様の批判者が言うように、アメリカが防衛費を削った場合、それはフリーライダーを促すことになるだろう。1991年の冷戦終結後、アメリカ以上にヨーロッパ諸国は防衛費を削った。他国がそれを増やすとしたら、それは防衛費の増額を求めている他の同盟諸国ではなく、アメリカの利益を損なう者、すなわち、中国、ロシア、イスラム国家であった。
第2次世界大戦で激しく戦った兵士たちが獲得したシステムを維持することは、それが崩壊するのを許し、消滅させてから、再建するよりも、はるかに少ない支出でできることだ。
FT June 16, 2018
An
unreliable US leaves the door open to Beijing
EVAN MEDEIROS
NYT June 17, 2018
What Did
the Romans Ever Do for Us?
By Paul Krugman
ローマ帝国は特別だった。それは普通の前工業化経済ではなかった。
ローマは平和と、地域間交易、高度なビジネスと金融システムにより、驚くほど生産的であった。その全体的な生活水準は、恐らく、17世紀のオランダ共和国まで、匹敵するケースがなかった。
ローマは政治面でも注目すべき成果を示した。ローマ人は決してナイスガイではなかった。彼らは奴隷を使役し、しばしば残酷に扱った。帝国の支配に挑戦する者には容赦ない軍事力を行使した。しかし、暴力による脅迫は常に背後に控えたものだった。ローマ帝国は恐怖によって統合されたものではなかったのだ。パックス・ロマーナの大部分は、各地のエリートたちが帝国に協力する意志によって維持されていた。
その秘密は、ローマが駆使した多くのソフトパワーにあった。ローマの魅力、Amphitheaters!
Bathhouses! Wine! Stuffed dormice! そして地方の才能ある人物を中央にひきよせる開放型の帝国システムがあった。そして、繁栄する、相互依存した経済が、ローマの諸価値を採用し、ローマのシステムに助けられた人々に多くの報酬をもたらしたことだ。
言い換えれば、ローマは欲張り過ぎず、システムを長期に維持するために、近視眼的な搾取を抑制したのだ。
パックス・アメリカーナは、第2次世界大戦後、3世代にわたる比較的平和で繁栄した時代をもたらしたが、細部ではローマ帝国と異なっている。われわれはローマ人が想像するよりもはるかに裕福であるし、はるかに節度があった。アメリカはローマ人が怒りに駆られてしたようなことは何もしなかった。
それでも、ローマと同じように、われわれのある種の帝国は、暴力よりも、主としてソフトパワーによって維持されてきた。アメリカは、圧倒的に支配的な経済・軍事大国であったときも、一般に抑制した態度で、同盟諸国を、あからさまに強制するのではなく、われわれのシステムに入るように促した。
それはうまく行ったのだ。しかし、今や野蛮人たちが侵入し、すべてを破壊しようとしている。蛮族は、残念なことだが、アメリカを真に偉大にした諸価値を拒んで、ゲートに立ったのではなく、ゲートの中に、実際、大統領執務室に入ったのだ。彼らはアメリカ生まれである。
NYT June 18, 2018
Fall of
the American Empire
By Paul Krugman
アメリカ政府は、政策として、親から子供たちを引きはがす。そして檻の中に閉じ込めるのだ。アメリカ大統領は自分の仲間が捜査されるのを阻止しようとする。逆に、彼の政敵たちを捜査させる。彼は民主的な同盟諸国を軽蔑する。そして多くの独裁者を称賛する。グローバルな貿易戦争がはじまりそうである。
アメリカとイギリスは、第2次世界大戦が終わったとき、もっと広い領域を支配できた。永久に占領し、傀儡政権を樹立できた。ソ連が東欧であったように。しかし、そうしなかった。われわれは敗北した敵国の回復を助け、われわれと主要な価値を共有する民主的な体制を樹立した。そして彼らはその諸価値を守る同盟国になったのだ。
今、それらがバラバラになっていく。われわれの理想を拒むことは我々を強くしない。われわれは弱くなるだろう。貿易戦争は、たとえいくつか利益を得る産業があるとしても、多数の労働者たちが仕事を失うだろう。
トランプは、われわれを偉大にするのではなく、単なるいじめ、しかし、彼が思うより効果のないいじめが好きな国にする。
NYT June 19, 2018
What Trump
Gets Right About Europe
By Jochen Bittner
NYT June 19, 2018
Trump to
Dictators: Have a Nice Day
By Thomas L. Friedman
FT June 20, 2018
Trump and
Iran — between war and a grand bargain
ROULA KHALAF
シンガポールにおけるドナルド・トランプと金正恩との歴史的会談を観ながら、私は外交のファンタジーを夢想していた。アメリカの指導者が、イランの指導者ハッサン・ローハニと会談するのだ。トランプは何と言うだろうか? 誇張が好きな大統領は、ターバンや衣装をほめ、核問題の知識をほめ、国内政治の手腕をほめるかもしれない。
トランプなら、不可能なことも可能になる。彼はアメリカをイラン核合意から離脱させたが、弱い条件の新しい合意に達し、重要な成果と自慢するだろう。
ハメネイが米朝会談から学ぶのは、核の保有したほうがアメリカとの首脳会談は容易だ、ということだろう。
PS Jun 21, 2018
The
Western Crack-Up
JAVIER SOLANA
FP JUNE 21, 2018
Trump’s
America Is the Safest Country in the World
BY STEPHEN M. WALT
● 世界債務
PS Jun 15, 2018
The
Anatomy of Global Debt
HOWARD DAVIES
● 情報革命
PS Jun 15, 2018
Our Infant
Information Revolution
JOSEPH S. NYE
情報革命は新しいことではない。1439年、グーテンベルグの活版印刷術がマスコミュニケーションの時代を拓いた。現在の革命は1960年代のシリコンバレーに始まり、コンピューターの処理速度が数年ごとに倍増するムーアの法則と結びついている。
21世紀の初め、コンピューターのコストは1970年代初めの1000分の1になった。今では、ほぼ、すべての物がインターネットでつながれている。その革命性はスピードにあるが。しかもその変化は情報の移転と保存の費用を極端に低下させた。技術の価格がこれほど急速に下がったので、広く受け入れられ、参入障壁が下がったのだ。
20世紀の半ば、コンピューターと通信革命が、ジョージ・オーウェルの『1984年』に描かれた、中央に管理された社会になることを人々は恐れた。ビッグ・ブラザーの監視システムが個人の自由を無意味にしてしまう、と。
コンピューターの低廉化と小型化は、仲間同士の利用や、新しいグループの形成を容易にする。しかし、この革命はより分散した監視を実現している。数十億人が自主的に、あたかも情報収集基地のように、連続的に互いのプライバシーを侵害する、追跡装置を持ち歩いているのだ。われわれはビッグ・ブラザーを自分たちのポケットに入れている。
このパワーを利用するのは政府だけでなく、非政府の主体でもある。大企業、NPOsから、犯罪者、テロリスト、非公式の集団まで、パワーを駆使するようになる。それは国民国家の終わりを意味しない。地球規模の舞台において、諸政府が最も強力な主体であることは間違いない。しかし、この舞台はさらに混雑し、多くの新しいプレーヤーがソフトパワーをめぐって効果的に競争している。
現代のグローバルな情報社会で、勝利するのは軍事的な手段によってではない。物語が勝利するのだ。矛盾する膨大な情報に圧倒される人々がいる。何が重要な情報か、焦点を絞ることはむつかしい。情報ではなく、注意・注目点こそが希少なのだ。魅力を発揮するソフトパワーが情報戦争の成否を決める、過去の戦争におけるハードパワーにも匹敵する、シャープパワーである。そして評価、他者からの信用こそが重要になる。
公共的な外交の効果は、その支出額ではなく、どれほど多くの人の心に影響を与えるか、によって決まる。それはインタビューや世論調査に測定される。トランプ政権が始まってから、アメリカのソフトパワーは低下した。Tweetがグローバルな影響を及ぼすとしても、信用を失えば、ソフトパワーにならない。ロボット化されたメッセージの影響も、信用や圧倒的な物語を創り出すかどうか、にかかっている。
● プーチンの経済問題
PS Jun 15, 2018
Putin’s
Economic Dilemma
BRIGITTE GRANVILLE, VLADIMIR MAU
● 貿易戦争とは何か
NYT June 15, 2018
Chinese
Tariffs Are Already Hitting Trump Voters
By The Editorial Board
アイオワでは、毎年、農家が40~50トンの豚を育てる。メキシコからの鉄鋼とアルミニウムに対してトランプ大統領が課した関税は、すでに豚の生産者たちに5億6000万ドルのコストを強いている。どうしてそんなことがわかるのか? メキシコはすでにアメリカの豚肉に20%の関税を含む、報復措置を示した。その予告だけで、豚の価格が急落したからだ。
中西部における大豆農家は、アメリカの大豆の4分の1を買う中国がトランプ政権の声明に対抗して、彼らの作物を標的にすることを心配している。トランプは、1000項目以上の「産業的に重要な技術」に500億ドルの関税を課すだろう、と予告した。2国間の貿易は「長期にわたって、きわめて不公平」であった、とアメリカ大統領は声明で述べた。もし中国が報復すれば、アメリカはさらに関税を課す項目を追加するという。中国の商務大臣は同様の措置を告げた。アメリカ中部は一斉にため息をつく。
アメリカ5大湖の周辺諸州では、伝統的な鉄鋼生産者がトランプ政権の関税で利益を受ける。しかし、鉄鋼の利用者には全く別の話だ。関税が発表されてから、鉄鋼生産者たちは、もはや安価な輸入品との競争を恐れることなく、価格を引き上げ始めた。
特に奇妙なことだが、トランプはカナダにこだわって、その怒りをトルドー首相にぶつけた。しかし、2017年のアメリカとカナダの間で財・サービス貿易がどうなっていたか、見ればよい。アメリカは84億ドルの黒字である。カナダは、他のどの国よりも多く、240億ドルもアメリカの農産物を買っている。
確かに酪農製品では、カナダが規制によって農家を支援している。しかし、補助金は出していない。アメリカでは、酪農家が非常に苦しんでいる。価格は生産コストを下回っているが、その理由は、一つには、需要が減っているのに農家が家畜を維持していることだ。しかしトランプは、自分たちの農業政策の失敗をカナダのせいにしている。
中立の研究機関が試算したところ、鉄鋼関税だけでも、失われる雇用は40万人に達するだろう。USスチールはイリノイ州で2つの高炉再開を祝福するかもしれないが、それは800人の雇用が増えるだけで、他の分野で7500人が雇用を失う。
こうした現実を、貿易赤字にこだわる大統領は何も認めない。「なぜ私が、アメリカ合衆国大統領として、こうした諸国が何十年もしてきたように、巨大な貿易黒字を出すことを許すだろうか? われわれの家族、労働者、納税者は、これほど大きな、不公正な価格を支払っているのに。」 トランプはTweetした。
しかし、ノーベル経済学賞を受賞したエコノミストたちが説明するように、貿易赤字はそれだけで良いとも悪いとも言えない。アメリカ市民は、競争的な価格でメキシコ製品、日本車、カナダの鉄鋼を買うことで利益を得ている。外国は彼らの製品を売って得た資金を、アメリカの株式、債券、産業に投資する。アメリカのドルは、輸出品を高価にし過ぎない程度に、強いままである。日本は2011年まで30年連続で貿易黒字を出した。それでも日本経済の停滞を免れなかった。
通商条約は再交渉できる。例えば中国だ。経済が変化し、市民の必要も変化する。アメリカ経済もかつて製造業に依拠していたが、今はサービス輸出の方がもっと重要だ。トランプにはそれがわからない。彼はまだピッツバーグが鉄鋼都市である世界に生きている。だが、1960年代と違い、ピッツバーグは鉄鋼よりも、高度なロボットを輸出している。
貿易戦争の脅し、近隣諸国や同盟国への侮辱、それらはわれわれの経済を変えることなく、単に損なうだけだ。
NYT June 17, 2018
Thinking
About a Trade War (Very Wonkish)
By Paul Krugman
かなり最近まで、私は本当に貿易戦争が起きると思っていなかった。私は、これが歌舞伎のプレイだと思った。すなわち、アメリカの主要貿易相手国は見せかけの譲歩を行い、それはトランプの支持者に利益をもたらし、トランプが勝利を宣言するのだが、貿易はこれまで同様に続く。
それは、トランプが助言を受け入れる、というわけではない。そうではなく、それだけ多くの資金が妥協を求めるからだ。大企業は、開放型の通商システムが、すなわち、国境を超えて広がる付加価値チェーンが恒久的な環境に固定されるだろう、という前提で数兆ドルを投資している。貿易戦争はその投資すべてを混乱させる。私は、大企業がそのメッセージをトランプ大統領に届けると思ったし、少なくとも議会の共和党に届くし、彼らには政策に関する裁量の余地がある、と思ったからだ。
しかし、こうした政治的考察は、数か月前に比べて強力ではなくなっている。Gary Cohnが去り、議会の共和党員は大統領に逆らうことを恐れている。トランプの思い付きだけで通商政策を決めるのは、だれも貿易論を教えないからだ。Peter Navarroが、本人はそう思わないようだが、貿易論を理解していないことは明らかだ。
また、トランプ外交が世界に憤懣を巻き起こした。今や、だれもトランプに勝利のメンツを与える気はないし、そんなことをすれば彼らが有権者に処罰されるだろう。
こうして貿易戦争は起きることも可能な状況となった。問題は、そのような貿易戦争か? ということだ。1.関税率はどこまで上がるか? 2.世界貿易はどこまで縮小するか? 3.そのコストはどれくらいか?
貿易理論の基本的な均衡モデルが示す答えは、1.30-60%。2.貿易の削減は大幅になる、たとえば、世界貿易の70%が減少する。3.世界GDPの落ち込みは2-3%でしかない。
世界GDPに占める世界貿易の率、関税率の上昇、輸入額の減少、を考慮すれば、世界GDPの落ち込みはそれほど大きくない。これに比べて、世界金融危機後の不況で、世界GDPは、潜在的なGDPから6%少なかった。
しかし、貿易戦争の深刻な影響は、アメリカ各地の雇用や生産システムが再編される過程で、大きな混乱と失業が生じることだ。「チャイナ・ショック」で起きたことが逆転するのである。
FT June 18, 2018
Donald
Trump’s trade tirades show his mastery of the message
RANA FOROOHAR
NYT June 20, 2018
Why the
U.S. Should Drop All Tariffs
By Veronique de Rugy
● バルカンの平和
FP JUNE 15, 2018
Alexis
Tsipras Deserves the Nobel Peace Prize
BY EDWARD P. JOSEPH
NYT June 18, 2018
In the
Balkans, a Chance to Stabilize Europe
By George Soros and Alexander Soros
● 米朝首脳会談の成果
PS Jun 16, 2018
The
Singapore Summit’s Uncertain Legacy
RICHARD N. HAASS
シンガポールの米朝首脳会談は、わずかな声明文しか残さなかった。たった391語だ。それは非核化の詳しい内容がなく、弾道ミサイルなど、関連する問題にも触れていない。
全てはレーガン大統領の名言「信頼せよ、しかし、検証せよ。」を逆立ちさせたように見える。「検証するな。しかし、信頼せよ。」
トランプの成果は、むしろ非核化を難しくしたことだろう。このまま交渉も、圧力も、成功しない。そして、キムが彼の信頼に応えなかった、という理由で、即時の非核化を求める。
そして、ボルトンの軍事的強硬策に代わる。
YaleGlobal, Tuesday, June 19, 2018
Illusion
of Security From Singapore
Shim Jae Hoon
「朝鮮半島の非核化」に合意した2人は、約束を守らない点で著しい。世界は9番目の核保有国を得た、ということだ。韓国と日本は懸念を深めただろう。
NYT June 19, 2018
Beyond
Trump’s Korea Fantasies
By The Editorial Board
まあ、簡単だったな。
会談の後、あの幻想的な高揚感で、トランプは言った。北朝鮮は「もはや核の脅威ではなくなった」、と。北朝鮮が今も60発ほどの核爆弾を保有し、弾道ミサイルや、プルトニウムの生産設備、ウラン濃縮工場を持っていることを気にするな。
しかし、非核化は1回の会談で済む話ではない。北朝鮮の核の脅威を取り除く交渉は、熟慮と政治的勇気、何より時間を要する。
さらい2つの要素が交渉を難しくしている。1つは、北朝鮮がすでに核兵器を保有したこと。もう1つは、核施設の場所がわからず、検証が困難であること。トランプ自身がイラン核合意を否定したために、合意の困難さを増しただろう。
では真に積極的な合意とはどういうものか? 扱う範囲、短期目標、長期目標、制裁解除と利益、議会の承認。
PS Jun 20, 2018
The Despot
and the Diplomat
CHRISTOPHER R. HILL
FP JUNE 21, 2018
Kim Jong
Un Gets to Sit at the Cool Table Now
BY STACIE E. GODDARD, DANIEL NEXON
FP JUNE 21, 2018
Singapore
Was John Bolton’s Worst Nightmare
BY JOHN HANNAH
YaleGlobal, Thursday, June 21, 2018
Trump, Kim
and the China Factor
Lowell Dittmer
● インドのジャーナリストたち
FP JUNE 16, 2018
Nobody’s
Protecting India’s Bravest Journalists
BY RANA AYYUB
インドのジャーナリストたちはオンラインのヘイト行為に苦しんでいる。私のNYTへの投降後、国連人権高等弁務官事務所はインド政府に対して、ジャーナリストたちを保護するように求めた。
私が人権問題として国連の関心を引くことは楽しいことではないが、権利の蹂躙、殺害の脅迫により、私は衝撃を受け、生命の危機を感じた。NYTに投稿したのは他に選択肢がなかったからだ。
ジャーナリストとして、またコラムニストとして、私は犯罪捜査、インドのマイノリティに対する迫害、社会正義を多く扱ってきた。私は本を書いたが、それはNarendra Modi首相とAmit Shahとの汚れた関係を扱う内容だ。
社会的地位のあるイスラム教徒のジャーナリストとして、私に対する攻撃は特に悪意あるものであった。私が書いたという虚偽の言葉、「インドとインド人を憎悪している」、がTweetで広まった。子供を強姦することを私が支持するようなTweetをした、という嘘が広められた。オンラインのモッブが私に暴論を浴びせ、レイプするぞ、殺してやる、と脅迫した。彼らは私に電話してきて、イスラム教徒に出くわした愛国なインド人と称し、荷物をまとめてパキスタンへ送れ、と命じた。
NYT June 17, 2018
Deadly
Tensions Rise as India’s Water Supply Runs Dangerously Low
By Maria Abi-Habib and Hari Kumar
インド各地で水不足が起きている。特に、北部の村では観光産業が旅行者の数を増やして、ますます、シーズン中の水不足を悪化させた。インドの水供給システムは何十年も前の植民地時代のままである。
FT June 18, 2018
India’s
north-south fissures deepen over national budgeting
AMY KAZMIN
FP JUNE 21, 2018
India Is
the Latest Front in Trump’s Endless Trade War
BY SREERAM CHAULIA
● 先端技術の競争戦略
FT June 17, 2018
China is
winning the global tech race
MICHAEL MORITZ
PS Jun 18, 2018
Avoiding
the Sino-American Technology Trap
LAURA TYSON
中国は野心的な「中国製造2025」を掲げて、先端技術産業におけるグローバルな指導権を握る目標を示した。それは、現在の指導力を発揮するアメリカ産業と直接に厳しい競争を意味する。
中国は通商上の競争だけでなく、軍事的、地政学的にアメリカと対抗し、より大きなパワーを得ようとしている。中国はその目標をさまざまな手段で追求する。知的財産、技術移転の要請、輸出管理、規制によるハラスメント。
トランプ政権は通商法301条による審査を行い、中国の通商・産業政策をアメリカ並びに国際法の違反と認めた。中国の多くの輸出品に25%の関税を課す。それは即座に中国による報復関税を通知された。
中国との技術・貿易に関して、政府が安全保障を懸念するのは正しい。しかし、関税はその答えではない。中国製品に関税を課しても、そのような重商主義的政策はむしろ生産的ではない。それほど現代のグローバル・サプライチェーンは重要である。
トランプ政権は、多くの外国企業の中国における生産拠点に制裁することになる。アメリカやその他の非中国企業の投資が損失を強いられる。さらに、中国からアメリカが輸入するコンピューターや電気製品の85%、電子機器や部品の63%、非電子機械の5%には、アメリカなど、外国企業による高付加価値の投入財や設備が使用されている。つまり、トランプの関税は、中国でグローバル・サプライチェーンを利用するアメリカ企業を苦しめるのだ。
どうすればよいのか? 超党派の委員会PCASTが特別報告でいくつかの答えを出した。それはオバマ政権の諮問に答えて、半導体とアメリカの安全保障、国際競争力について述べたものだ。超党派のビジネス、アカデミックの指導者たちは、アメリカが同盟諸国と協力して、国際法の遵守を求め、中国にWTOの求める義務を果たし、また、中国に対する輸出規制や自国への投資を管理するべきだ、と提案した。EU、日本、韓国、台湾は半導体のグローバル・サプライチェーンで重要な役割を担っている。
PCASTの報告書は、アメリカが、先端技術産業を築く中国の産業政策を止めることはできない、と認める。また、中国の研究開発や技術産業への補助金はゼロサムではなく、アメリカの消費者の利益にもなる、と指摘する。アメリカの政策が求めるのは、中国がWTOルールに従い、補助金を他国に通知し、知的財産を奪うようなゼロサム戦術を禁じることだ。
PCASTは、アメリカが独自の産業政策を採用することも提案した。中国の挑戦にアメリカ半導体産業が応えるには、アメリカ企業の技術革新を維持、支援することである。
米中のハイテク産業が「ツキディデスの罠」に陥るのを防ぐには、より洗練された、国際協力を組織する政策が必要だ。
FT June 19, 2018
Donald
Trump has a point about China’s technology abuses
GEORGE MAGNUS
FT June 20, 2018
SoftBank:
inside the ‘Wild West’ $100bn fund shaking up the tech world
Arash Massoudi in London and Kana Inagaki and Leo Lewis in Tokyo
● 新しい移民政策
FT June 17, 2018
Tantalising
glimpse of an EU compromise on freedom of movement
NICK CLEGG
2005年4月、フランス北部のMaubeuge町長が、率直な発言で知られるオランダの前EU委員Frits Bolkesteinに配管工のリストを送った。Bolkesteinは論争になったEU指令の筆者であったからだ。その指令は、美容師からスキーの教官まで、地元のサービス業を競争に開放するよう求めた。記者会見で彼は、自宅があるMaubeugeでは休日に配管工のサービスが受けられず、「ポーランド人の配管工」が来るのを楽しみにしている、と語ったのだ。
彼のコメントはフランス中で怒りを生んだ。「ポーランド人の配管工」が賃金や労働基準に及ぼす影響に関する論争は、EUのすべての低賃金部門に関して、それ以来、続いている。
さまざまなEU加盟諸国が、人に自由移動に関する一時的な差し止めを求めている。ベルギーは失業中の何千人ものEU市民を追放した。ドイツでも、働きたければ、EU市民は居住者カードを必要とする。このカードはさまざまな理由で取り上げられ、自主的にドイツを離れるか、強制退去を求められる。再入国は自動的に否定される。フランスでは、町や地方の政府によっては、EU法に反して、公共の場でフランス語の使用を強制している。
移民政策に関してイギリスとEUの立場が敵対する、というのは神話である。ここにはイギリス政府が妥協を得られる余地がある。
SPIEGEL ONLINE 06/19/2018
Migration
Headache
Inside the
Coalition Battle That Could Topple Merkel
By DER SPIEGEL Staff
PS Jun 19, 2018
Europe’s
Left Turns Right on Immigration
MICHAEL BRÖNING
ヨーロッパの既存の左派政党が消滅の危機に瀕している。この2年足らずで、フランス、オランダ、ドイツ、イタリアの選挙において、社会民主政党が大幅に議席を減らした。左派政党の衰退にはいくつかの要因がある。しかし最大の理由は、有権者がますます移民を恐れ、その点で、左派政党の姿勢を信用しなくなったことだ。
右派政党、ポピュリスト運動は、移民と難民危機について、巧妙にブルーカラー労働者の不安を煽った。伝統的な左派政党は、事実上、何もチェックしないで、移民の入国を許すだろう、と有権者に思わせたのだ。これに対して、中道左派は、彼らの伝統的な強さを生かし、ポピュリストの挑戦を退けようとした。論争を彼らの得意な分野、失業、不平等、社会正義、に導いたのだ。
しかし、選挙結果が明確に示したのは、有権者の懸念はもっぱら移民であり、たとえ正当な主張でも、平等ではない、ということだった。こうしていくつかの国で、中道左派政党の移民政策は転換し始めた。
ドイツ社会民主党の論争は党を分裂させた。オーストリアでは、移民支持ではなく、統合支持に変えた。デンマークの社会民主党も、「正義と現実性」を唱えた。「難民受け入れセンター」をヨーロッパの外に設けて審査する。こうしてデンマークへの移民流入は減る。同時に、国連との協力を拡大し、アフリカのための「マーシャル・プラン」を行い、移民たちが自国にとどまって開発に参加することを促す。スウェーデンでは、難民申請者で認められなかった者への社会給付を止める。
こうした変更には批判が高まっている。社会民主党は有権者の姿勢の変化に対応しなければならないが、同時に、移民を抑える政策が人種差別や外国人排斥を意味する中身であってはならない。あまりに急激な転換は、中道左派にとって自己破壊的である。極右の自国民優先という姿勢をまねただけになってしまう。それは社会にとって非生産的で、自分たちの進歩的な諸価値を裏切り、コスモポリタンな支持者を見捨てるものだ。
ヨーロッパの中道左派勢力は、バランスを取る必要がある。国内・国際連帯と、効果的な移民の規制、統合化の推進、大規模な人道上の惨禍を緩和する努力。求められるアプローチは、過剰なレトリックを避け、現実的で、前向きな、道義的に支持される解決策を示すものだ。それはポピュリスト的ではないが、ポピュラーなものにする必要がある。
Bloomberg 2018年6月19日
Europe and
the U.S. Could Make Migration Manageable
By Leonid Bershidsky
NYT June 21, 2018
Our Real
Immigration Problem
By Bret Stephens
● 新興市場とアメリカの金利
FT June 18, 2018
EM crisis
clashes with Fed hawkishness
GAVYN DAVIES
● 汚職の世界化
FT June 18, 2018
Corruption
thrives in a globalised world
GIDEON RACHMAN
BRICSという言葉を覚えていますか? それが現れたのは、2001年、ゴールドマンサックスが、世界で最もダイナミックな新興市場を表現する略語をほしかったからだ。それらの国に共通する者があるのか、いつも疑わしかった。
今はBRICSが共有するものを見つけた。汚職だ。
政府の承認する開発プロジェクトとその契約に関して、巨額の賄賂が広まった。
(後半へ続く)