IPEの果樹園2018

今週のReview

6/11-16

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EUの危機 ・・・政治的悲観論 ・・・民主主義と代議制議会 ・・・トランプ通商政策の破たん ・・・イタリアのポピュリスト政権 ・・・米朝会談と国際秩序 ・・・富裕層の流出 ・・・アルゼンチンの通貨危機

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


● EUの危機

PS May 29, 2018

How to Save Europe

GEORGE SOROS

EU3つの問題に直面している。難民危機。緊縮政策。Brexitに代表される、領土的な分解。

私は、EUが難民を配置する場合、それが自発的に受け入れられること、また、難民たちがそれに従うかどうかも自発的に決めさせること、を主張してきた。強制的な配分は間違いだ。ヨーロッパの移民政策を実行するべきであり、イタリアなど、地中海諸国に負担を強いるのも間違いだ。

他方で、EUは合法的な移民を受け入れねばならないし、EU内で移動を妨げることも許されない。政治的難民や経済移民を拒む「要塞ヨーロッパ」は間違っているし、実現不可能だ。

ヨーロッパは、アフリカや移民を生み出す他の諸地域に対して、民主的体制への支援を拡大するべきだ。そして、教育や雇用機会を増やすのを助けることだ。それはEUによる「アフリカへのマーシャル・プラン」である。EUは、もっと財規模な財源を債券発行で調達できるし、それを民主的な体制の拡大に使用できる。今のEUは、各地の独裁者と取引して、難民や移民が流出しないように、弾圧強化を依頼している。それは、長期的には、政治難民を増やす。

ドルへの資本回帰が新興諸国の通貨危機を生じつつある。アフリカへの支援は重要だ。財源管理は特別目的会社によって行えば、政府の債務を増やさず、管理も透明になる。

EUの領土的な分解は誰の利益にもならない。イギリスの離脱は、最終的に、議会によって否決されるべきだ。また、イギリスの復帰や他のEU諸国が望むように、政治的統合は多様なスピードで進めるべきである。

The Guardian, Thu 31 May 2018

Macron’s plan to save Europe is compelling – but he’s on his own

Timothy Garton Ash

フランスが戻ってきた。精力的で、明快で、野心的な指導者。ヨーロッパを再び前進させるのに、これほどふさわしい者はいない。政権の揺らぐイタリア、国内分裂の危機があるスペイン、大きな動揺を発するポーランド、離脱寸前のイギリス、ソファーに停滞するドイツではなく、フランスだ。

マクロンは、ヨーロッパを再生する明確なビジョンを示している。フランス国内の改革にも全力で取り組む。ユーロ圏が成長するには、そしてイタリアの危機を解決するには、成長だけでなく、多くの雇用が要る。

マクロンは現実から出発する。ヨーロッパは決して70年間の平和と自由を楽しんだのではない。旧ユーゴスラビアやウクライナを考えよ。われわれは忘却の中で、注意を怠れば、再び戦争に向けた夢遊病者になってしまう。

マクロンは、「ヨーロッパの主権」を唱える。このアイデアは、もちろん、フランス国民戦線のル・ペンや、イギリスのBrexit派に対して、主権という言葉を取り戻すためだ。彼はこの言葉で、われわれの共有された利益と価値を、ナショナリストのポピュリズムから、そしてロシア、中国、気候変動、大量移民、デジタル革命から守るパワー、を意味する。しかし、トランプには言及しなかった。

巨人たちの世界では、ヨーロッパも巨人になるか、あるいは、われわれは分裂し、巨人たちに踏みつぶされることになる。ジャガーノートの前で恐怖にすくんではならない。勇気を持て、ヨーロッパの仲間たちよ。勇気を持って戦え。

問題は、彼だけではできない、ということだ。今はまだ、だれも彼に協力しない。最も緊急の問題はイタリアであり、最も重要な国はドイツだ。イタリアの危機で、中途半端なユーロ圏の内在的問題が表面化している。しかし、メルケルのマクロン演説に対する反応は、形だけの拍手だ。


● 政治的悲観論

PS May 31, 2018

Overcoming the Politics of Pessimism

PHILIPPE LEGRAIN

西側の政治がこれほど悪化している最大の理由は、有権者たちが将来に対して悲観的になったからである。

悲観主義は経済的な損失を強いられた者たち、次に自分もそうなると恐れる者たちやコミュニティーを苦しめる。ロボット、中国、移民が人々の生活や文化を損なう、西側の人々は世界においても、自分たちの周りでも、特権的地位を失う、と。分配をめぐる対立が深まり、アイデンティティの衝突に圧倒される。西側政治が好転するには、政治家たちが不安の根源に対処することだ。

悲観主義は3つの形を取る。第1に、右派の有権者に多い、受容型の悲観論者だ。システムを変えることは不可能であり、望ましくもない。自分たちの国は衰退していく。衰退をうまく管理することしか政治家にはできない。

2は、中道左派に多い、不安に苦しむ悲観論者だ。未来に悲観的であり、その最悪の部分を緩和することに満足する。彼らは技術革新やグローバリゼーションを恐れ、そのスピードや範囲を制限しようとする。

最後に、憤慨する悲観論者だ。彼らの見方によれば、経済は詐欺だ。政治家は腐敗している。アウトサイダーは危険だ。彼らは衰退を管理するのではなく、現状の破壊を目指す。皆が悪化する中では、他者に多くの苦しみを求める。

悲観論者に共通するのは、有効な解決策が欠けていることだ。リスクを強調し、変革のむつかしさを説くばかりで、行動しないことの問題を観ようとしない。システムからの利益を守りながら、システムを破壊できると考える。西側社会が、欠陥はあっても、繁栄、安全、自由を保障してきた。権威主義的なナショナリズムと経済的ポピュリズムがそれを脅かしている。

相対的な地位が低下するのは避けられないが、経済の機能不全は避けられる。ところが悲観論者が自己実現的な衰退を導く。(ドイツのように)困難な決定を延期し、(トランプやBrexitのように)事態を悪化させる。

フランスのマクロン大統領のように、希望、開放、包摂のメッセージを広めることは可能であり、それが正しい。信頼に足る改革に依拠して、進歩の思想を促進することだ。第1に、生産性を高めて成長をもたらす。投資を刺激し、研究開発、リスク資本、規制の改革を行う。

2に、価値の創造を促し、価値の搾取を攻撃する。開発規制を止めて、投機を抑え、住宅供給を増やす。債務を奨励するような規制を撤廃し、実物経済への投資を促す。競争を促し、独占を解体し、起業を助ける。

3に、政府は働く機会と職場の安定性を保障する。人々が変化を受け入れ、積極的にリスクを取るには、柔軟なスキルを得ること、市民としての生活にふさわしい所得を得られること、信頼できるセーフティーネットがあること、を必要とする。高等教育をすべての者にアクセス可能にし、生涯教育を提供することだ。

実質賃金を引き上げる必要がある。最低賃金、低賃金労働者への減税、福祉国家の現代化。遺産相続や土地保有に課税し、1万ユーロ・ドル・ポンドの資金を若者に賦与してはどうか。社会に参加し、不運を避け、未来に向けて投資する。スウェーデンのように、年金は労働者の数に応じて自動的に調整され、移民労働者を歓迎する。

優れた経済政策は社会的・文化的な病気を治し、悲観論を一掃する。リベラルな政治、進歩的な楽観論を広めることができる。


● 民主主義と代議制議会

PS Jun 1, 2018

America’s Founders vs. Trump

J. BRADFORD DELONG

アレクサンダー・ハミルトンは、アメリカ建国の指導者の1人だが、民主主義に深刻な疑念を抱いていた。「ギリシャとイタリアの小共和国の歴史を読むとき、独裁者と無政府状態との間を永久に変動する状態に、恐怖と嫌悪の感情を持たずにはおれない。」

しかし、ハミルトンは民主主義を称賛するに至った。「権力を分割した部局に配分する。チェック・アンド・バランスを法制化する。正しい行動を取る判事たちに裁判所を委ねる。人民の代表が立法府を治める。」 これらは、共和制の政府がその優秀さを維持し、その欠陥を抑え、回避するための、強力な仕組みである。

こうした改善策は、王制にも共和制にも適用できるし、実際、王制の歴史から生まれたものである。では、なぜ、ハミルトンは王制より共和制を支持したのか? ジェームズ・マディソンがこの点を説明した。マディソンの主張は、「代表制」への支持と、「派閥」への警戒に集約できる。

代表を選出することで、マディソンは、政府が外に目を向け、人々の関心を取り入れ、彼らの知識やアイデアに従うことを期待する。慎重な代表制を通じて、政府は職業化、専門化の利点を享受し、しかも、公衆の関心に従い、社会から新しいアイデアを取り入れることができる。

同時にマディソンは、派閥の偏向を避ける重要性を強調した。それをマディソンは、「他の市民の権利に反して、また、コミュニティーが永久かつ総体として利益を得ることに反して、ある種の情熱や関心を共有する衝動」と定義した。もちろん、王室や貴族は、まさにこうした派閥である。共和制では、マディソンによれば、有権者の多数から支持を得た派閥が統治する。それゆえ共和制の方が、多様な集団と利益を反映し、他の市民の権利を侵害するような共通の利益が支配することは少ないだろう、と。

しかし、問題は、悪意のある「共通利益」を持つ多数派が現れたときだ。アメリカの歴史にはその例がある。南北戦争における人種差別の法律。第2次世界大戦中に日系人を強制収容所に入れたこと。1832年、最高裁判所がチェロキー族に事実上の主権を認めたときも、アンドリュー・ジャクソン大統領はそれを無視し、エスニック・クレンジングを進めた。

他方、ヨーロッパ各地の王朝は、憲法によって認められてからも政治危機を超えて継承されてきた。彼らは権力の集中と社会主義的な独裁制にも、国民投票的なエスニック型専制支配にも向かわなかった。むしろ王制下で、代表制の議会による民主主義を維持した。

アメリカの実験は、まだそのような生存の危機を経ていない。しかし、トランプの登場こそ、マディソンが警告したように、衝突する諸利益を公共の善に従わせる「啓蒙された政治家たち」が常に権力を握るとは限らない、という時代を意味している。


● トランプ通商政策の破たん

FT June 1, 2018

Make America 1929 again

EDWARD LUCE

共和党の上院議員Ben Sasseはうまく言った。「アメリカを再び偉大にする」というのが、「アメリカを再び1929年にする」となってはいけない。

世界のほとんどが、アメリカのビジネス界の多くの人も含めて、ドナルド・トランプの懲罰的な通商政策を懸念している。そこには経済的な根拠はない。彼は政治的な衝動で動いている。金属や自動車の輸入を阻止するのは、アメリカ人の雇用も損なうが、トランプは「忘れられたアメリカ人」のために行動している、と言う。彼らもそれを知っている。たとえ彼らが苦しむものでも、

最大の問題は地政学的なものだ。トランプは国家安全保障を理由に輸入制限を乱発する。通商拡大法の232条は、以前2度だけ行使されたが、トランプは大統領の権限として好んでこれを利用する。彼は自動車にも適用し、大西洋の通商システムを完全に破壊することはできないが、政治的気まぐれが支配するシステムに変えようとしている。

中国に対しても、アメリカは同盟諸国と一緒に、「中国製造2025」をグローバルな投資ルールに従うよう圧力を強めるべきだ。他国も中国政府が技術移転を強要することに不満を持っている。しかしトランプは、協力すべき相手を懲罰的に扱う。他方、中国のZTEに対する制裁措置を、習近平からの譲歩で、さっさと免除してしまう姿勢は、無思慮である。

同盟諸国にも、敵対国にも、貿易戦争を叫ぶのは国際ルールを無視している。それは国内物価を上げ、アメリカ人の雇用を破壊し、アメリカの国際的な影響力を低下させる。WTOを破壊するものだ、という指摘にも耳を貸さない。アメリカはジャッジを出さず、WTOの紛争処理に協力しない。アメリカがジャッジなのだ。

1930年代との比較で、トランプを現在の「スリープウォーカー(夢遊病者)」と呼ぶのは間違っている。彼は何をしているか知っている。グローバルな秩序を脅しているのだ。


● イタリアのポピュリスト政権

PS Jun 1, 2018

Italy’s Slow-Motion Euro Train Wreck

NOURIEL ROUBINI, BRUNELLO ROSA

ポピュリストの、ユーロ懐疑派が政権を組む可能性に対して、金融市場は反応した。イタリアの株価が下落し、特に銀行株が売られた。それはカントリー・リスクを示す。イタリアが新しいグローバル金融危機の引き金となるかもしれない。特に、もしユーロ離脱問題が選挙を事実上の国民投票に変えてしまう場合。

イタリアの根本的なジレンマは、ユーロ圏内にとどまるか、経済・政治・制度の主権を取り戻すか、である。イタリアは、1992年に離脱したERM1996年復帰してから、通貨主権をECBに与えた。しかし、それと交換に得た低インフレと低コストの借り入れを、イタリア人はうまく利用してこなかった。

特に、周期的な切下げによってイタリア経済システムの非効率性を修正し、競争力を得た中小企業にとって、為替レートを失ったことは深刻である。非効率性の理由はよく知られている。労働市場の硬直性、研究開発投資の少なさ、汚職と脱税、司法や官僚制の機能不全。しかし、イタリアの政治家たちは外からの制約を口実にして、改革を怠ってきた。

イタリアには、ユーロ圏に属することで、ドイツから、また欧州委員会やECBから来る要請と、首相と閣僚がイタリア国民に対して負う責任とがある。これらは一致することが前提だが、一致しない場合は問題である。ユーロ圏であることの優位を生かせず、1人当たりGDP1998年に比べて減少している。ギリシャでさえ、2009年以降の不況にもかかわらず、1998年よりプラスである。

ドイツなどの「中枢」が、イタリアなどの「周辺」から、労働や資本を奪ったのか、イタリアがルールを守らず、改革を怠ったのか。もはやその論争は手遅れだろう。イタリア人は自国の経済停滞をユーロのせいだと信じている。もしイタリア人がユーロ圏残留と離脱の選択を問われたら、ギリシャと同様に、取り付けや破たん、混乱を恐れて残留を選ぶだろう。しかし、デフレが続くなら、残留の長期的なコストがイタリア人に離脱を求めさせる。

Brexit推進派と同様、イタリア人は自分たちの力だけで世界に出て成功する自信がある。実際、イタリアの北部には大規模な工業部門があり、世界中に輸出する能力がある。だから通貨が安くなることは有利である、と考えるかもしれない。すでに起きつつあるように、イタリア産業が外国に買収されてしまう前に、ユーロ圏から離脱するべきだ、と。

もしイタリアが離脱すれば、その直接のコストは、価値の下がった貨幣に変わることで、預金者が支払う。銀行ホリデーや資本規制を含めて、金融危機になれば、コストはさらに大きくなる。イタリア有権者はそれを知って慎重に考えるだろうが、目をつぶって飛び降りるかもしれない。

The Guardian, Wed 6 Jun 2018

The best thing Germany could do for Europe is quit the single currency – but it won’t

Larry Elliott

たとえ衰退は明らかであっても、ソ連the Soviet Unionは崩壊しなかった。第2次世界大戦を勝利したシステムが経済を破たんさせたことを、支持者たちは認めなかったからだ。

同じことはthe European Unionについても言える。熱心な支持者にとって、EUは、高い成長率、進歩的な諸価値、サッチャリズムとの闘い、政治統合への前身、を意味している。しかし、現実はそうではない。

ソ連のゴルバチョフ時代と同様、EUにもラディカルな改革を叫ぶ者たちがいる。UKにおける左派的なEU残留派は、EU改革においてUKの改革が重要な役割を果たし、Brexit支持者たちを説得できる、と主張する。ゴードン・ブラウンのBrexit批判がそうだ。すなわち、低賃金、不確実さ、移民、NHS(国民医療保険)を解決する。

EUには、どのような選択肢があるのか? 第1に、マクロンが主張するアメリカ型統合だ。それは、ドイツも含めて、EU内で支持されていない。第2は、イタリアが唱えるユーロ圏からの離脱だ。しかし、金融市場によって金利が高騰するから、実行できないだろう。第3は、財政緊縮ルールの緩和である。新自由主義的な調整を放棄し、移民に関しても「アフリカへのマーシャル・プラン」を採用する。

こうした改革案を阻むのはドイツの強い反対であり、そのEU観である。最善の選択肢は、ドイツがユーロ圏を離脱することだ。そして北欧諸国と小さなグループを形成する。この新しいユーロ圏は、悪いイメージを一掃し、大幅なユーロ高によってEU内の不均衡を解消し、ドイツの本来の通貨同盟を実現する。ヨーロッパ統合と「マルチ・スピード」案も、実行できるだろう。

しかし、これはマクロンの統合案が幻想であることを意味する。現在の単一通貨において、ドイツだけが利益を受けている国だ。そして、フランスを排除するハード・マルク型の新ユーロ圏を拒否している。

もしヨーロッパの指導者たちが時間をユーロ誕生前に戻せるなら、これこそ実行するべき通貨統合だ。そして、もしEUが機能していれば、イギリスはBrexitを選択しなかっただろう。


● 米朝会談と国際秩序

PS Jun 1, 2018

A North Korean Opportunity for America and China

RICHARD N. HAASS

北朝鮮危機は、ソ連崩壊以来、米中関係で最も好ましいものである。

現代の米中関係は、およそ半世紀前、両国がソ連による脅威を共通に意識したことで始まった。それは古来の教訓を示す典型例であった。「敵の敵は、友である。」

共通の敵が消滅しない限り、この関係は何があっても維持された。しかし、1989年、冷戦が終結し、1992年の初めにはソ連が解体されたのだ。

それにもかかわらず、米中関係は驚くべき生命力を得た。経済的な相互依存である。アメリカ人は相対的に安価な中国製品を大量に買ったし、数億人の中国人が貧しい農村から急速に膨張する都市へ出て職を得る、需要を提供した。

アメリカは、莫大な中国市場の潜在的能力に対して、輸出できると期待した。彼らは、まだ自分たちが生産できないような、先進的な工業製品を求めているだろう。また、多くのアメリカ人は、中国が既存の国際秩序に参加し、主要国として平和的に地位を高めることを望んだ。さらには、政治改革も成長によって前進する、と。こうした計算が、2001年の中国WTO加盟を支持することにつながった。

しかし今、米中関係を支える経済的紐帯は、次第に摩擦の源になってきた。中国の輸出超過がアメリカの何百万人もの職場を失わせる一因となった。中国は約束した改革と市場開放を行わない。国有企業に補助金を出し、市場参入を条件に知的所有権を侵している。また、国境外で、ますます独自の主張を強める中国の姿勢を懸念している。一帯一路や、南シナ海の軍事拠点化だ。

中国国内の政治改革も失望につながった。習近平主席は権力を集中し、憲法の任期制限を削除した。反体制派、市民社会を抑圧し、ウイグルやチベットの少数民族を弾圧している。

こうしたことの中で、北朝鮮問題が米中関係にとって重要になる。北朝鮮が核兵器と長距離ミサイルを開発したことは、中国にとっても、地域の安定性を損なう脅威である。紛争で、地域の貿易が乱されること、多数の難民が流入してくることを、中国は望まない。統一した朝鮮がアメリカの戦略的な軌道に入ることも、日本などが核武装することも望まない。韓国のミサイル防衛システムにも、中国の核抑止力を損なう、と反対している。

アメリカも、北朝鮮がアメリカの都市を核攻撃の射程に収めるのを望まない。そのためにコストのかかる戦争を始める意志もない。

米中は外交による解決を求め、米朝首脳会談が成功することに共通の利益を持つ。中国にとって、それは北朝鮮に対する十分な圧力を行使すること、アメリカにとっては、朝鮮半島の核危機を鎮静化する外交的な結果を受け入れること、を意味する。

北朝鮮危機は、米中協力の重要性を両国民が思い出すという効果がある。世界の2大国が、地域的かつ世界的な意味を持つ問題を解決するために協力するなら、米中関係の新しい時代を築くだけでなく、今世紀の国際政治を決定するだろう。

PS Jun 6, 2018

A Verifiable Path to Nuclear Disarmament

PIET DE KLERK, ROBERT FLOYD

もし金正恩が核兵器の廃棄に同意した場合、世界は彼の非核化をどのように確実に保証できるのか? 世界の核兵器をどのように減らすか合意に達するのは長い道のりかもしれないが、北朝鮮であれ、どこであれ、非核化が交渉の議題に上がるときに備えて、それを考えておくのは早すぎることではない。

この4年近く、核保有・非保有の25カ国が集まって、その枠組み、技術、専門知識を集める国際機関the International Partnership for Nuclear Disarmament VerificationIPNDVがある。その目標は、核兵器のモニタリングと廃棄の検証において、ギャップを埋めることである。


● 富裕層の流出

NYT June 2, 2018

The Millionaires Are Fleeing. Maybe You Should, Too.

By Ruchir Sharma

ある国が経済・政治の難局に向かうと、裕福な人々がしばしば最初に資金を海外の安全な避難所に移転する。富裕層が資金と一緒に移住するわけではないが、実際に彼らが移住し始めると、問題の悪化はさらに明白になる。

2013年以来、南アフリカの研究所New World Wealthは億万長者の移住を調査してきた。そのポートフォリオは多くのことを語っている。世界には100万ドル以上の資産を持つ人々が1500万人いるが、昨年、10万人が居住する国を変えた。

2017年、最大の流出国はトルコ(億万長者の12%が流出)とベネズエラであった。トルコ・リラの価値は暴落している。インドからも多くの流出が起きたが、それは税務当局の過剰な徴税熱によるものであり、イギリスからの流出はBrexitがもたらし不確実さが原因である。

インド、ロシア、トルコが多くの億万長者を失い、カナダ、オーストラリア、ドバイとアラブ首長国連邦が多数を得た。


● アルゼンチンの通貨危機

PS Jun 5, 2018

The Roots of Argentina’s Surprise Crisis

MARTIN GUZMAN, JOSEPH E. STIGLITZ

アルゼンチンの通貨危機が再発したことは多くの者を驚かせた。アルゼンチンは多くのマクロ経済問題を抱えていたが、2015年、Mauricio Macriマクリが大統領に就任してから、その改革を推進していたからだ。

政府の新しいアプローチは、財政赤字を徐々に減らすこと、野心的なインフレ目標を取り入れること、によって成り立っていた。市場はそれを歓迎し、政府が持続的な高成長に向かう必要な改革を行った、という見方が政府によって広められた。しかし、期待されていたような、直接投資の流入は起きなかった。

むしろ、2017年の債務に依存した成長の後、アルゼンチンは2016年にスタグフレーションを味わった。輸入が増えただけで、輸出は伸びなかった。経常収支赤字はGDP4.6%に達し、新しいアプローチを疑わしいものにした。

数週間前に、期待は失われ、資本逃避が起きた。5月の3週間だけで、ペソはドルに対して19%も下落した。改革がもたらしたのは短期の債券投資であった。その責任の多くはアルゼンチンの中央銀行にある。インフレ目標を達成できず、高金利は投機的な資本流入につながった。

アルゼンチン中央銀行は、マネタリー・ベースの増大を債券(LEBACS)発行により大規模に不胎化した。ここにはトレード・オフがあった。(危険な債券発行による)不胎化を抑えていたら、インフレ圧力が高まっただろう。それにもかかわらず、インフレと財政赤字を抑える慎重なアプローチが望ましかった。

危機後、アルゼンチンは顕著な兆候を示した。1.中央銀行の外貨準備が1か月で10%も減った。2LEBACSの金利が40%に上昇した。3.政府がIMFのスタンバイ融資を求めると公表した。

マクリのアプローチは持続的な成長経路に経済を乗せることができなかった。債務危機を避けるために国際投資家に頼っている。金融政策は転換を避けられない。財政赤字を減らすより早くインフレを抑えることは間違いだった。財政再建のために好調な大豆輸出に増税することも正しくない。

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The Economist May 26th 2018

The affair

Truth and technology: Cinema, not vérité

Business under Trump: A boom like on other

Indian politics: Two-day wonder

Fertility treatment in Japan: A corked tube

Taiwan’s president: Hurry up

(コメント) トランプがアメリカ経済の成長を自慢することは、ある程度、正しいのか? 減税、規制緩和、公共投資、アメリカ企業は強気になって、投資が活発に行われている。そういう話をどこまで以前と同じように楽観できるか、検討しています。

フェイク・ニュースから進化したフェイク映像の時代は、ますます真実が見分けられなくなります。インド政治の変化、日本の不妊治療(効果がないうえに、補助金を得て、危険かつ高価)、何より、私は台湾の大統領に同情します。

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IPEの想像力 6/4/18

・・・「無意味なサミット」。はっきりと、そのように書く新聞もあります。

・・・「朝鮮半島の完全な非核化」と「北朝鮮の体制保障」。これはトランプが「歴史的なサミット」を得るため、キムの条件を丸呑みしたにすぎません。

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米朝会談の記者会見でも、トランプ大統領は巨額の貿易不均衡を正すべきだ、と黒字諸国を延々と非難しました。

保護主義に反対する合意文書をまとめたカナダのトルドー首相は、トランプ大統領の気分を害し、アメリカの政権幹部に「地獄に落ちろ」とまで罵倒されます。カナダ国民に向けて小国の自負を示したことが、生意気だ、弱虫だ、という超大国・感覚を刺激したのかもしれません。

同じ大統領が、金正恩は信頼できる、と言うのを聞くと、まだ政治ショーの続きなのだ、と思います。トランプは、戦争になっても、非核化を合意しても、その費用は日本と韓国が出す、と主張します。どちらになるか、彼にもわからないように見えます。

日本にとっては、核弾頭やウラン濃縮プラントを廃棄することも、中短距離ミサイルや生物・化学兵器、通常兵力も、すべて包括的な軍縮交渉として韓国とともに担って行くことです。

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北朝鮮は中国です。それが共産主義体制を自称するから、という意味ではなく、体制を保証し、戦争ではなく経済成長に正当性の根拠を求めれば、豊かになるため国際ルールに従います。

中国、韓国、ベトナム、シンガポール。いずれも北朝鮮にはモデルとなる国です。

もしこの首脳会談が成功であるとしたら、10年後に、その後の完全な非核化、世界市場への開放と経済改革、そして、人権、法の支配、市民的な価値、国際ルールが実現するでしょう。民主的な選挙と国際的役割を果たす、民主化の波がアジアに現れます。

トランプのアジア離脱は、G2型の積極的な秩序再編です。朝鮮半島を縦断し、さらに日本、ロシア・シベリア、中国を鉄道で統合する計画が実現するかもしれません。G2の専横を阻止するため、地域機構が模索されます。

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アメリカの課題は逆転しました。金正恩は、この先、権力を維持できるのか? 独裁者が国を離れるのは危険なことです。外国にいるとき権力を失い、そのまま亡命する、あるいは、帰国して飛行機を降りたところで殺害される、という事件も、独裁者の最後として珍しくないと思います。

シンガポールの夜景を楽しみ、トランプ大統領と会談する姿は、恐怖と殺戮による支配の終わりを望まない者たちに、侮られる瞬間でしょう。

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「拉致家族問題」が日本にとって最も重要だ、と安倍首相は繰り返し断言します。それは、本当に彼の力で解決できると思っているのでしょうか? 日本にとって最も重要な目標でしょうか? 私は、こうした取り上げ方は間違った政治ショーだ、と思います。

「朝鮮戦争の終結」を宣言するはずではなかったか? 朝鮮戦争も、日本の植民地支配も、北朝鮮の現在の姿と切り離せない問題です。日本の指導者は、新しい平和的な秩序の中で、初めて拉致問題は解決できる、と訴えるべきです。

トランプの米朝会談には、彼がG7を破壊したほどの重要な中身が、どこにもないのです。

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シンガポールの繁栄する景観、夜景を楽しむ金正恩の姿が、トランプとの記念撮影以上に、北朝鮮のエリートたちを説得する優れた材料であったと思います。

トランプが、この先も、国際秩序を改変し続けるのか? 米朝首脳会談の大観衆は、アメリカの暴走に対して、G6+1/G2を生きる私たちが対抗力を準備すること、小国の指導者たちが問いかける真実に立ち返ることに気づきます。

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