前半から続く)


● スコットランド

FT June 2, 2018

Scotland builds its economic muscle to fight again for independence

JOHN KAY


● 米朝会談と国際秩序

PS Jun 1, 2018

A North Korean Opportunity for America and China

RICHARD N. HAASS

北朝鮮危機は、ソ連崩壊以来、米中関係で最も好ましいものである。

現代の米中関係は、およそ半世紀前、両国がソ連による脅威を共通に意識したことで始まった。それは古来の教訓を示す典型例であった。「敵の敵は、友である。」

共通の敵が消滅しない限り、この関係は何があっても維持された。しかし、1989年、冷戦が終結し、1992年の初めにはソ連が解体されたのだ。

それにもかかわらず、米中関係は驚くべき生命力を得た。経済的な相互依存である。アメリカ人は相対的に安価な中国製品を大量に買ったし、数億人の中国人が貧しい農村から急速に膨張する都市へ出て職を得る、需要を提供した。

アメリカは、莫大な中国市場の潜在的能力に対して、輸出できると期待した。彼らは、まだ自分たちが生産できないような、先進的な工業製品を求めているだろう。また、多くのアメリカ人は、中国が既存の国際秩序に参加し、主要国として平和的に地位を高めることを望んだ。さらには、政治改革も成長によって前進する、と。こうした計算が、2001年の中国WTO加盟を支持することにつながった。

しかし今、米中関係を支える経済的紐帯は、次第に摩擦の源になってきた。中国の輸出超過がアメリカの何百万人もの職場を失わせる一因となった。中国は約束した改革と市場開放を行わない。国有企業に補助金を出し、市場参入を条件に知的所有権を侵している。また、国境外で、ますます独自の主張を強める中国の姿勢を懸念している。一帯一路や、南シナ海の軍事拠点化だ。

中国国内の政治改革も失望につながった。習近平主席は権力を集中し、憲法の任期制限を削除した。反体制派、市民社会を抑圧し、ウイグルやチベットの少数民族を弾圧している。

こうしたことの中で、北朝鮮問題が米中関係にとって重要になる。北朝鮮が核兵器と長距離ミサイルを開発したことは、中国にとっても、地域の安定性を損なう脅威である。紛争で、地域の貿易が乱されること、多数の難民が流入してくることを、中国は望まない。統一した朝鮮がアメリカの戦略的な軌道に入ることも、日本などが核武装することも望まない。韓国のミサイル防衛システムにも、中国の核抑止力を損なう、と反対している。

アメリカも、北朝鮮がアメリカの都市を核攻撃の射程に収めるのを望まない。そのためにコストのかかる戦争を始める意志もない。

米中は外交による解決を求め、米朝首脳会談が成功することに共通の利益を持つ。中国にとって、それは北朝鮮に対する十分な圧力を行使すること、アメリカにとっては、朝鮮半島の核危機を鎮静化する外交的な結果を受け入れること、を意味する。

北朝鮮危機は、米中協力の重要性を両国民が思い出すという効果がある。世界の2大国が、地域的かつ世界的な意味を持つ問題を解決するために協力するなら、米中関係の新しい時代を築くだけでなく、今世紀の国際政治を決定するだろう。

YaleGlobal, Tuesday, June 5, 2018

Iran and North Korea: Trick or Treat?

François Godement

PS Jun 6, 2018

A Verifiable Path to Nuclear Disarmament

PIET DE KLERK, ROBERT FLOYD

もし金正恩が核兵器の廃棄に同意した場合、世界は彼の非核化をどのように確実に保証できるのか? 世界の核兵器をどのように減らすか合意に達するのは長い道のりかもしれないが、北朝鮮であれ、どこであれ、非核化が交渉の議題に上がるときに備えて、それを考えておくのは早すぎることではない。

この4年近く、核保有・非保有の25カ国が集まって、その枠組み、技術、専門知識を集める国際機関the International Partnership for Nuclear Disarmament VerificationIPNDVがある。その目標は、核兵器のモニタリングと廃棄の検証において、ギャップを埋めることである。

FP JUNE 6, 2018

Meeting With North Korea Is a Win for America

BY MICAH ZENKO

NYT June 6, 2018

Democrats Childishly Resist Trump’s North Korea Efforts

By Nicholas Kristof


● アメリカの民主主義

NYT May 31, 2018

One Reform to Save America

By David Brooks

NYT June 2, 2018

The Californization of America

By Steve Kettmann

FT June 6, 2018

The battle for liberal democracy will be waged in cities

IVO DAALDER

ポピュリズムや民主主義の失敗を懸念する者は、それが都市化によることを重視するべきだ。2050年までに人類の3分の2は都市に住むだろう。すべてのリベラルな社会運動、市民権の主張は、都市から始まった。

どうすれば都市は効果的な決定メカニズムを手に入れることができるか?


● インド

FP JUNE 1, 2018

Caught on Camera: India’s Broken Media

BY PAMPOSH RAINA

PS Jun 7, 2018

The Modi-Erdoğan Parallel

SHASHI THAROOR

2人の指導者は非常によく似ている。インドのモディとBJP11年遅れてトルコのエルドアンとAKPが権力を掌握してから独裁化した道をたどっている。


● Brexitとヨーロッパ

The Guardian, Sun 3 Jun 2018

Brexit Britain is an island nation, but it’s never been alone

Will Hutton and Andrew Adonis

Brexitは主張する。EUはイギリスの主権と価値を脅かす政治プロジェクトになった。イギリスは、例外的な歴史、例外的な制度、例外的な運命を持つ例外的な国だ。政治的混乱と流血に向かうヨーロッパ人には、平和を維持するために超国家制度が必要だろう。しかしイギリスの土地では、そのようなものは必要ない。その他、多くのことが、イギリスの特異な優越性によって語られる。

しかし、こうした説明には限界がある。それはイギリスの特異な歴史、ヨーロッパとの違い、イギリス諸島の他の島との違いを誇張している。

マグナカルタも、封建領主の権利をヨーロッパ中で制限する動きの一部であった。産業革命。移民。シェークスピア。王朝こそ、イギリスの制度の中で、最もヨーロッパ的なものだ。イングランドの知識人、政治、外交、宗教、文化生活が、イングランドの孤立と、ヨーロッパのイングランド、という2つの主張に分かれている。

チャーチルは帝国を、イギリスがヨーロッパから切り離せる理由である、と考えたことは1度もない。

NYT June 2, 2018

Younger Britons are happy for Britain to be a ‘vassal state’

Peter Kellner

NYT June 3, 2018

Brexit Britain should be a rule-taker on goods, but not services

Simon Wolfson

The Guardian, Mon 4 Jun 2018

Brexit is unnecessary. We have a plan to build a modern Britain

Will Hutton and Andrew Adonis

Brexit派は多くの問題を正しく指摘するが、その解決策は間違っている。貧困、不平等、低賃金、雇用の不安定性、こうしたことはすべて、EUを離脱しなくても、対処できる。

FT June 5, 2018

Sajid Javid’s opportunity to rethink UK immigration policy


● 富裕層の流出

NYT June 2, 2018

The Millionaires Are Fleeing. Maybe You Should, Too.

By Ruchir Sharma

ある国が経済・政治の難局に向かうと、裕福な人々がしばしば最初に資金を海外の安全な避難所に移転する。富裕層が資金と一緒に移住するわけではないが、実際に彼らが移住し始めると、問題の悪化はさらに明白になる。

2013年以来、南アフリカの研究所New World Wealthは億万長者の移住を調査してきた。そのポートフォリオは多くのことを語っている。世界には100万ドル以上の資産を持つ人々が1500万人いるが、昨年、10万人が居住する国を変えた。

2017年、最大の流出国はトルコ(億万長者の12%が流出)とベネズエラであった。トルコ・リラの価値は暴落している。インドからも多くの流出が起きたが、それは税務当局の過剰な徴税熱によるものであり、イギリスからの流出はBrexitがもたらし不確実さが原因である。

インド、ロシア、トルコが多くの億万長者を失い、カナダ、オーストラリア、ドバイとアラブ首長国連邦が多数を得た。


● 原発政策

FT June 4, 2018

Stake in nuclear plant would be dramatic change of policy for UK

NICK BUTLER


● 西側の敗北

FT June 4, 2018

Has the West Lost It? A Provocation, by Kishore Mahbubani

Review by Joseph Nye


● アマゾン

The Guardian, Tue 5 Jun 2018

The Guardian view on Amazon: not a normal monopoly

Editorial


● アルゼンチンの通貨危機

PS Jun 5, 2018

The Roots of Argentina’s Surprise Crisis

MARTIN GUZMAN, JOSEPH E. STIGLITZ

アルゼンチンの通貨危機が再発したことは多くの者を驚かせた。アルゼンチンは多くのマクロ経済問題を抱えていたが、2015年、Mauricio Macriマクリが大統領に就任してから、その改革を推進していたからだ。

政府の新しいアプローチは、財政赤字を徐々に減らすこと、野心的なインフレ目標を取り入れること、によって成り立っていた。市場はそれを歓迎し、政府が持続的な高成長に向かう必要な改革を行った、という見方が政府によって広められた。しかし、期待されていたような、直接投資の流入は起きなかった。

むしろ、2017年の債務に依存した成長の後、アルゼンチンは2016年にスタグフレーションを味わった。輸入が増えただけで、輸出は伸びなかった。経常収支赤字はGDP4.6%に達し、新しいアプローチを疑わしいものにした。

数週間前に、期待は失われ、資本逃避が起きた。5月の3週間だけで、ペソはドルに対して19%も下落した。改革がもたらしたのは短期の債券投資であった。その責任の多くはアルゼンチンの中央銀行にある。インフレ目標を達成できず、高金利は投機的な資本流入につながった。

アルゼンチン中央銀行は、マネタリー・ベースの増大を債券(LEBACS)発行により大規模に不胎化した。ここにはトレード・オフがあった。(危険な債券発行による)不胎化を抑えていたら、インフレ圧力が高まっただろう。それにもかかわらず、インフレと財政赤字を抑える慎重なアプローチが望ましかった。

危機後、アルゼンチンは顕著な兆候を示した。1.中央銀行の外貨準備が1か月で10%も減った。2LEBACSの金利が40%に上昇した。3.政府がIMFのスタンバイ融資を求めると公表した。

マクリのアプローチは持続的な成長経路に経済を乗せることができなかった。債務危機を避けるために国際投資家に頼っている。金融政策は転換を避けられない。財政赤字を減らすより早くインフレを抑えることは間違いだった。財政再建のために好調な大豆輸出に増税することも正しくない。

PS Jun 6, 2018

Are Emerging Markets the Canary in the Financial Coal Mine?

KENNETH ROGOFF

アルゼンチンとトルコの為替レートや債務の危機は局地的な現象で、それ以上の広がりはないのか? あるいは、それは好調なグローバル債務市場の中に潜む脆弱性を示すものか?

FT June 8, 2018

Watch the Fed’s balance sheet, not interest rates

GILLIAN TETT

インド準備銀行の総裁がアメリカ連銀に警告した。金融政策を正常化する過程は、金利だけでなく、世界の流動性を減少させ、新興市場の債務危機、さらには世界金融市場の危機を誘発する、と。特に、トランプの減税がアメリカ財政を大幅な赤字にするとき、債券発行と流動性の減少はさらに強められる。

しかし、アメリカ連銀の総裁はそれを聞かないようだ。


● メルケル

FT June 5, 2018

Angela Merkel stretches out a hand to her neighbours

CONSTANZE STELZENMÜLLER

メルケル首相はようやく長い沈黙を破ってマクロン大統領の呼びかけに応えた。

メルケルは、フランスだけでなく南欧諸国に対して経済支援を拡大する、と述べた。それは技術革新を受け入れるだけでなく、国内の連立相手である社会民主党や、将来の連立政権を考えて、緑の党にも配慮したものだ。

メルケルは統合の拡大や進化を求めず、改革の深化を呼びかけたマクロンと異なり、新しいヨーロッパのコンセンサスを形成する機会をつかもうとする。2017年の選挙戦で述べたように、ヨーロッパは、中国の台頭とトランプの時代に、自分たちの手で運命を切り拓く必要がある。

しかし、欧州連邦主義者や小国のナショナリストたちは同意しないだろう。

SPIEGEL ONLINE 06/05/2018

Apocalypse Angie

Merkel's Dark View of the World We Live In

By René Pfister

FP JUNE 5, 2018

Macron Is French for Obama

BY JAMES TRAUB

PS Jun 7, 2018

Donald Trump, Italy and the threat to Germany

PHILIP STEPHENS

NYT June 7, 2018

Who Will Lead Europe Now?

By Sylvie Kauffmann


● G7の破たん

FT June 7, 2018

Multilateralism without American leadership

NYT June 7, 2018

Group of 7 Looks for Relevance as It Gathers in Canada

By Jack Ewing

FP JUNE 7, 2018

Bullies Don’t Win at Diplomacy

BY STEPHEN M. WALT

各国は多数の国と共存しているから、さまざまな手段を駆使して、仲間や敵を説得し、自国の利益を実現する必要がある。効果的な外交とは、それゆえ、他国の選好を正しく理解し、自分たちの行動に彼らがどのような反応をするか考慮したものでなければならない。

2国間でアメリカに有利な結果だけを求め、威嚇・嫌がらせを繰り返すトランプ政権の外交は、大統領が司会するリアリティーTVのようには行かない。


● 日本

PS Jun 7, 2018

Japan’s literature of loneliness depicts solitude as a noble state

LEO LEWIS

FT June 7, 2018

The US is wrong to obsess about its trade deficit with Japan

HIROAKI NAKANISHI


● 中国のエネルギー

PS Jun 7, 2018

China eyes role as world’s power supplier

James Kynge in London and Lucy Hornby in Beijing


● 民主主義とNGOs

FP JUNE 7, 2018

Democracies Need a Little Help From Their Friends

BY RONALD R. KREBS, JAMES RON

FP JUNE 7, 2018

The Real Reason the Middle East Hates NGOs

BY STEVEN A. COOK

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The Economist May 26th 2018

The affair

Truth and technology: Cinema, not vérité

Business under Trump: A boom like on other

Indian politics: Two-day wonder

Fertility treatment in Japan: A corked tube

Taiwan’s president: Hurry up

(コメント) トランプがアメリカ経済の成長を自慢することは、ある程度、正しいのか? 減税、規制緩和、公共投資、アメリカ企業は強気になって、投資が活発に行われている。そういう話をどこまで以前と同じように楽観できるか、検討しています。

フェイク・ニュースから進化したフェイク映像の時代は、ますます真実が見分けられなくなります。インド政治の変化、日本の不妊治療(効果がないうえに、補助金を得て、危険かつ高価)、何より、私は台湾の大統領に同情します。

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IPEの想像力 6/4/18

・・・「無意味なサミット」。はっきりと、そのように書く新聞もあります。

・・・「朝鮮半島の完全な非核化」と「北朝鮮の体制保障」。これはトランプが「歴史的なサミット」を得るため、キムの条件を丸呑みしたにすぎません。

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米朝会談の記者会見でも、トランプ大統領は巨額の貿易不均衡を正すべきだ、と黒字諸国を延々と非難しました。

保護主義に反対する合意文書をまとめたカナダのトルドー首相は、トランプ大統領の気分を害し、アメリカの政権幹部に「地獄に落ちろ」とまで罵倒されます。カナダ国民に向けて小国の自負を示したことが、生意気だ、弱虫だ、という超大国・感覚を刺激したのかもしれません。

同じ大統領が、金正恩は信頼できる、と言うのを聞くと、まだ政治ショーの続きなのだ、と思います。トランプは、戦争になっても、非核化を合意しても、その費用は日本と韓国が出す、と主張します。どちらになるか、彼にもわからないように見えます。

日本にとっては、核弾頭やウラン濃縮プラントを廃棄することも、中短距離ミサイルや生物・化学兵器、通常兵力も、すべて包括的な軍縮交渉として韓国とともに担って行くことです。

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北朝鮮は中国です。それが共産主義体制を自称するから、という意味ではなく、体制を保証し、戦争ではなく経済成長に正当性の根拠を求めれば、豊かになるため国際ルールに従います。

中国、韓国、ベトナム、シンガポール。いずれも北朝鮮にはモデルとなる国です。

もしこの首脳会談が成功であるとしたら、10年後に、その後の完全な非核化、世界市場への開放と経済改革、そして、人権、法の支配、市民的な価値、国際ルールが実現するでしょう。民主的な選挙と国際的役割を果たす、民主化の波がアジアに現れます。

トランプのアジア離脱は、G2型の積極的な秩序再編です。朝鮮半島を縦断し、さらに日本、ロシア・シベリア、中国を鉄道で統合する計画が実現するかもしれません。G2の専横を阻止するため、地域機構が模索されます。

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アメリカの課題は逆転しました。金正恩は、この先、権力を維持できるのか? 独裁者が国を離れるのは危険なことです。外国にいるとき権力を失い、そのまま亡命する、あるいは、帰国して飛行機を降りたところで殺害される、という事件も、独裁者の最後として珍しくないと思います。

シンガポールの夜景を楽しみ、トランプ大投票と会談する姿は、恐怖と殺戮による支配の終わりを望まない者たちに、侮られる瞬間でしょう。

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「拉致家族問題」が日本にとって最も重要だ、と安倍首相は繰り返し断言します。それは、本当に彼の力で解決できると思っているのでしょうか? 日本にとって最も重要な目標でしょうか? 私は、こうした取り上げ方は間違った政治ショーだ、と思います。

「朝鮮戦争の終結」を宣言するはずではなかったか? 朝鮮戦争も、日本の植民地支配も、北朝鮮の現在の姿と切り離せない問題です。日本の指導者は、新しい平和的な秩序の中で、初めて拉致問題は解決できる、と訴えるべきです。

トランプの米朝会談には、彼がG7を破壊したほどの重要な中身が、どこにもないのです。

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シンガポールの繁栄する景観、夜景を楽しむ金正恩の姿が、トランプとの記念撮影以上に、北朝鮮のエリートたちを説得する優れた材料であったと思います。

トランプが、この先も、国際秩序を改変し続けるのか? 米朝首脳会談の大観衆は、アメリカの暴走に対して、G6+1/G2を生きる私たちが対抗力を準備すること、小国の指導者たちが問いかける真実に立ち返ることに気づきます。

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