前半から続く)


● イタリア政府のユーロ改革

FT May 20, 2018

Italy illustrates the way to liberal democracy’s demise

WOLFGANG MÜNCHAU

今日のポピュリストやナショナリストの台頭を、80年、90年前のナチスやファシストに匹敵すると考えるのは意味がない。しかし、ドイツのワイマール共和国が崩壊した過程と比較することには意味があると思う。

Bloomberg 2018522

Europe's Italian Problem Is Bigger Than Brexit

By Clive Crook

FT May 22, 2018

Italy’s new rulers could shake the euro

MARTIN WOLF

イタリアはギリシャではない。その経済規模は10倍、その公的債務は2.3兆ユーロであり、ギリシャの7倍である。ユーロ圏で最大、世界で4番目に大きい。潰すにも、救済するにも、イタリアは大きすぎる。問題は新政権がその引き金を引くのか、そうなった場合に何が起きるか、である。

これは単なる経済危機ではない。ユーロ圏ができた1997年から2017年の間に、イタリアの1人当たり実質GDP3%増加した。それはギリシャより悪い。イタリア人は移民危機についても勝手にやれと見放されているように感じている。イタリア人の多くはEUに半分しか入っていないと感じる。また、自国のエスタブリシュメントを嫌っている。だから右派と左派のポピュリストが権力を得たのだ。

この混乱にはイタリアにもEUにも責任がある。EUはインフレを達成せず、十分な需要を生んでいない。それは危機後の調整を難しくしている。ドイツはこうした問題を認めない。イタリア人も、イタリアが繁栄し、特に、ドイツと同じ通貨同盟にとどまるには、根本的な経済改革、制度改革が必要であることを認めない。

イタリアの新政権がECBの支持を失ってデフォルトになれば、その損失は甚大である。さらに広範な経済的、政治的衝撃を考慮するなら、イタリアをギリシャのように脅すことはむつかしい。ItalexitGrexitよりはるかに危険な展開である。

この怪物じみた危機を恐れて、イタリア政府は服従するだろうか? そうかもしれない。しかし、イタリア経済が前進する力はすでにない。その債務の返済に対するダメージが、資本や人、企業のイタリアからの逃避として生じるだろう。その場合、再び選挙が行われ、一層の過激な政権が成立するか、国民統合が失われるかもしれない。

長期に及ぶイタリアの危機がこの国に封じ込められるのか? 他国も影響を受けるだろう。たとえば、スペインはECB内の債務を増大させている。ユーロ圏は改革するか、さもなければ消滅する。

イタリアが繁栄を取り戻すまで、その政治も、ヨーロッパにおける位置も安定化しない。どのようなことも起きうるのだ。

FT May 22, 2018

Can the damage from Italy’s populist experiment be limited?

TONY BARBER

NYT May 23, 2018

Italy’s New Government Will Challenge the E.U. at Its Heart

By Steven Erlanger


● ユーロ危機・債務危機

VOX 21 May 2018

Fiscal rules and the role of the Commission

Thomas Wieser

NYT May 21, 2018

What’s the Matter With Europe?

By Paul Krugman

2次世界大戦後の世界で、人道主義的な理想の実現する土地を探すなら、それは西ヨーロッパだった。しかし、今、ヨーロッパは大きな問題に沈んでいる。

ヨーロッパの問題の多くは、1世代前に、単一通貨を採用するという破滅的な決定に由来している。ユーロ誕生は一時的な楽観を生じたが、スペインやギリシャのような国に多くの資本が流入し、その後、バブルは破裂した。アイスランドは自国通貨を切り下げ、急速に競争力を回復したが、ユーロ圏諸国は不況を強いられた。

ヨーロッパの統合プロジェクトは、ハンガリーやポーランドと同じく、民主主義の崩壊を迎えつつある。その意味で、アメリカと同類だ。アメリカにはユーロ危機がないけれど、政治的な正統派とメディアが、共和党の過激化を警告してきた。今、アメリカを支配するのは、ハンガリーの与党Fideszと変わらない。

大西洋の両側で民主主義は包囲されている。トランプの悪夢とヨーロッパの苦悩は同時進行の事件だ。

FT May 22, 2018

The eurozone ‘safe asset’ is crucial to banking union

VOX 23 May 2018

A plan to save the euro

Jeffry Frieden

ユーロ危機・債務危機の管理失敗はヨーロッパ統合市場の最悪事態である。行動しないこと、間違った行動、矛盾した政策、政治対立が、管理可能な債務問題を、10年に及ぶ経済停滞と、社会不安、政治的抗議にしてしまった。

独仏の指導的な経済学者たちが示した改革提案は重要だ。しかし、改革が成功するには政治的条件が必要である。ユーロ圏改革の政治経済を考える上で、いくつかの要点を指摘する。

1.ユーロ圏の住民の多くが通貨統合を支持している。・・・しかし、彼らは既存の政治指導者たちが、公平かつ効果的に、改革を実現する気があるのか、能力があるのか、疑っている。

2.危機管理の中心的な失敗は、調整コストの納得できる分配を達成できないことだった。・・・すべての債務危機は、債権者と債務者の間で調整コストもしくは苦痛を分担する対立に集約される。債権者は今すぐに全額返済してほしい。債務者は、債権者に、調整・財政緊縮の社会・政治コストを分担してほしい。そして多くの場合、国内対立が加わる。しかし、ユーロ圏の債務危機では、分担も、債務免除もなかった。

債務国の市民は、不良債権を累積した貸し手にも責任があるから、調整コストをすべて負わされるのは不当だ、と考えた。債権国の市民は、政府の説明が不十分なため、納税者の資金が使われることは間違っている、と感じた。

この危機の最悪の部分は、苦痛の多くは政策によって回避できたことだ。即座に債務を組み替え、債権者である金融機関が債務国と犠牲を分かち合っていたら、10年も経済停滞しなかったし、ユーロ圏の改革は前進し、今のようなポピュリズムの危機もなかっただろう。

3.危機管理の失敗をもたらした主犯は、EUの諸機関ではなく、各国政府である。・・・確かに遅れたが、ECBは重要な役割を果たした。加盟諸国は、何度も、調整コストを他者に転嫁しようとし、よりコストの小さな解決の機会を逸した。主要諸国が頑なに債務危機に対する協力的な戦略を拒んだ。

周辺・債務諸国の市民たちは、緊縮策を強制する機関としてユーロ圏を見ている。債権諸国の市民たちは、南欧への財政移転を強いられる機関、と見ている。将来に向けて、債務国の苦痛を債権国、他の加盟諸国は知らねばならない。また、周辺諸国は経済改革を実行し、多額の融資を利用して借り入れや支出を増やすことに歯止めとなる監視機関を受け入れねばならない。その意味で、ESMの強化が重要だ。

その他、債務の組み替えメカニズム、共通の財源を持つ預金保険、銀行同盟と共通の規制・監視、破たんした銀行への資金棟梁メカニズムも、同じ意味で有効だ。

PS May 24, 2018

The German Rules Trap

ZAKI LAÏDI

VOX 24 May 2018

Make euro area sovereign bonds safe again

Grégory Claeys


● アメリカの通商政策

FT May 21, 2018

US at odds with itself over goals of China trade talks

LUCY HORNBY

NYT May 22, 2018

Why a Trade War With China Isn’t ‘Easy to Win’ (Slightly Wonkish)

By Paul Krugman

FT May 24, 2018

The US will be the loser from Trump’s focus on trade deficits

ROBERT ZOELLICK

トランプは、20年前、アメリカが2国間協定、地域協定を組み合わせて、中国を取り込み、WTOを現代化しようとした試みを、すべて投げ出してしまった。アメリカは戦略的な敗者になる。

NYT May 24, 2018

Where’s Our Big, Beautiful Trade Deal With China?

By Scott Paul

FP MAY 24, 2018

Trump Dials Up the Trade War to 11

BY KEITH JOHNSON

FT May 25, 2018

Donald Trump’s tariffs hold new potential for destruction


● フィリピンと中国

PS May 21, 2018

The Philippines’ Chinese Invaders

ANNE-MARIE SLAUGHTER, PURPLE ROMERO

ドゥテルテ大統領が2017年に北京を訪問して「独自の外交」を宣言してから、中国企業の投資が増えた。ドゥテルテとその支持者にとって、中国がいたるところでインフラ整備をするのは良いことだ。ミンダナオ島のマラウィ再建にも中国の巨大建設会社が入っている。

しかし、中国の資金を中国の条件で受け入れることは、かつてアメリカがそうしたように、経済帝国主義という批判を招く。住民たちはナショナリストの旗を掲げるだろう。


● 暗号通貨の革命

PS May 21, 2018

The Old Allure of New Money

ROBERT J. SHILLER

仮想通貨・暗号通貨の革命は2009年にビットコインが発行されて始まった。今では200近い暗号通貨が存在し、世界中で数百万人が熱狂している。

覚えておくべきだが、新しい通貨の発明には長い歴史がある。その多くが、少なくとも、しばらくは熱狂を生んだ。

新しい通貨を創るとは、社会がある考えに公認の印を与え、その実現を促す、という意味だ。エコノミストのAshoka Modyはその著書(Euro Tragedy: A Drama in Nine Acts)で、1992年にヨーロッパ通貨を創るということに公認が与えられたのは、1つの「集団思考」であった、と述べている。その確信は、単一通貨が存在することによってのみ、諸国は緊密な政治的包摂を受け入れるだろう、という民衆の精神に体現されたものだ、と。

新通貨の思想は革命論の領域に入る。1827年、Josiah Warnerは「労働切符」により、労働時間を単位に商品を販売する店“Cincinnati Time Store”を開いた。新通貨は労働者階級の重要さを示す宣言であり、1930年まで続いた。

20年後に、オーウェンRobert Owenはロンドンに国民労働交換所the National Equitable Labour Exchangeを開設した。1930年代の大不況において、コロンビア大学と連携する革新運動Technocracyが、金で保証されたドルに代えて、エネルギーで測った貨幣ergを提案した。

先端科学を利用した新貨幣計画は、その後も続いた。それは現在の暗号通貨に至る。暗号通貨の新規発行(ICO)は証券規制を免れている。それは通貨でも証券でもないからだ。暗号通貨への投資は、まったくの新思考に対する賭けである。

こうした通貨の革新は、独特な科学技術の話をともない、根本的に、社会革命を目指すものである。暗号通貨とは、企業家的な世界市民のある種の共同体であり、彼らは、不平等と戦争の長い歴史を持つ諸政府を超越した存在であることを願う。

過去にもそうであったように、暗号通貨の魅力は神秘性によって与えられる。コンピューター・サイエンスの専門家以外には、それがどのように機能しているのかわからない。その排他的な神秘性がオウラを生じ、革命的情熱を満たすのだ。

VOX 21 May 2018

Bitcoin, Vollgeld, and popular views of money

Beat Weber

PS May 23, 2018

Why Reinvent the Monetary Wheel?

ROBERT SKIDELSKY

不況期には常に通貨制度改革がブームとなる。2008-2009年の経済崩壊もその例外ではなかった。既存の金融秩序に対する過激な改革が試みられる。

量的緩和がF.D.ルーズベルトのニューディールを始めるときに試みたことを覚えている者は少ない。金本位制のアメリカで、財務省は金価格を引き上げて、債務に苦しむ農民たちの購買力を強めようとした。

暗号通貨が登場したのも同様の背景である。「ピア・ツウ・ピアの電子貨幣システム」の目的は経済的病に対する金融的な治療であった。銀行、すなわち、病気に冒された仲介業を経由せずに、暗号通貨で投資し、貯蓄し、取引できる。それはコントローラーから見えない。

ビットコインの動機には、投機、麻薬取引、マネー・ロンダリングなど、さまざまだが、貨幣に関するフリードリッヒ・ハイエクの夢もあった。1970年代半ばのインフレ高進に際して、ハイエクは民間の競争的な貨幣発行を提案したのだ。政府の貨幣発行独占と国民的貨幣制度をやめて、自由競争に置き換える。政府は健全な通貨を発行することができない、と。

しかし、ビットコインは何にもかかわらずに発行されるが、その量的な限界が存在する。それゆえ、金本位制と同じ問題に直面する。成長する経済や人口に応じて貨幣が供給できない。また、インフレを防ぐ保証もない。中央銀行による派兵供給と商業銀行システムへの介入、という以外に、人類社会が発見したより良い方法はない。


● 中国と香港・台湾

NYT May 21, 2018

China Has a Vast Influence Machine, and You Don’t Even Know It

By Yi-Zheng Lian

FP MAY 22, 2018

Beijing’s Threats Against Taiwan Are Deadly Serious

BY DEREK GROSSMAN


● 資本と労働

NYT MAY 21, 2018

Is Capital or Labor Winning at Your Favorite

By NEIL IRWIN


● トランプとポピュリズム

FP MAY 21, 2018

How to Steal an Election in Broad Daylight

BY NIC CHEESEMAN, BRIAN KLAAS

FT May 23, 2018

Social media can help fight corruption one ‘like’ at a time

ANNE-MARIE SLAUGHTER

FT May 23, 2018

Graduating in Donald Trump’s age of illiberal democracy

ROULA KHALAF

トランプの時代、オルタナティブ・ファクト、フェイク・ニュースの時代に、大学を卒業するとは、どういう意味か? コロンビア大学のボリンジャーLee Bollinger学長は、その式辞において、ほとんど大統領に関する問題を、その名前に言及することなく、語った。

・・・大学で学んだことを生かす最大の仕事とは、非寛容な態度に向かう生来の性向に対する歯止めとなること、だれとでも共有できる、批判的な真実を見出すことである。

最も強力な演説は、トランプに解任されたティラーソン前国務長官がthe Virginia Military Instituteで行ったものだった。

・・・もし指導者たちが真実を隠そうとするなら、人民であるわれわれが事実に依拠しないオルタナティブ・ファクトを受け入れるなら、アメリカ市民はその自由を否定する途上にあるのだ。・・・これは、ロシア、中国、北朝鮮の社会が経験していることである。

NYT May 24, 2018

Mourning My White Husband in the Age of Trump

By Erin Aubry Kaplan

NYT May 24, 2018

President Trump Is a Very Political Animal

By Thomas B. Edsall


● 人口減少とポピュリズム

NYT May 22, 2018

As Population Growth Slows, Populism Surges

By Philip Auerswald and Joon Yun

「普通の人々」とエリートや「他者」とを敵対させる政治運動として、概ね、定義されるポピュリズムがヨーロッパとアメリカを席巻する時代は、経済成長と人口増加がともに減速した時代であった。それは今日、西側とアジアの工業諸国にも広まっている。

世界のほとんどの地域で経済成長と人口増加は低下している。アメリカも例外ではない。それは、グローバルな都市化やデジタル化とともに、政治経済秩序を翻しつつある。「再びアメリカを偉大にする」というスローガンは、どこの国にも当てはまる、大都市のインテリに対する「普通の人々」の経済的・文化的地位を回復する訴えだ。

人口減少と経済停滞を日本の話としてよく聞くが、それは日本や少数の東欧諸国に限った問題ではない。イラン、ブラジル、など、新興市場でも、また、インドや中国でも出生率の急速な低下が起きている。アフリカ諸国だけが、今後、数十年は人口が大幅に増えるだろう。

地方の若者たちはますます都市に移住し、それは都市と地方との年齢、そして態度にも、大きな差を生じた。投票結果はそれを示している。発達した先進工業諸国は、2つの競争する政治運動に圧倒されている。1つは、人口稠密な、連携する諸都市の、現実的必要に応じた政治運動である。もう1つの運動は、地方の人々にとって、やはり必要な、諸価値に訴えるものだ。すなわち、自律、自給、直近のコミュニティーや場所を愛する態度である。

アメリカでは、大都市の住民八民主党に、小都市や地方の住民は共和党に、投票した。Brexit投票では、ロンドン、マンチェスターなど、イングランド大都市部の選挙区の84%がEU残留を支持し、地方の選挙区の87%が離脱を支持した。

その中でも一貫したテーマが、移民に比べて、地元生まれの人口が減少している、という問題だ。人口減少を認めながら、唯一、日本だけがポピュリストの影響を免れているようだが、それは厳しい移民政策を取っているからだろう。インターネットで距離が消滅し、AIが普及する時代に、人口の密度が政治を支配している。

この社会政治変化の最先端にある国はどこか? 日本より15年も前から人口が減少し始め、地方の民衆「ナロード」と都市のインテリゲンチャとの闘いを暴力的な時代の政治的本質とみなした指導者、プーチンの支配する国、ロシアである。


● マレーシアとトルコ

FT May 23, 2018

Malaysia: the obstacles to dismantling the old regime

Ben Bland in Kuala Lumpur

PS May 23, 2018

Can Multiparty Democracy Work in Multiethnic Malaysia?

WONG CHIN-HUAT

FP MAY 23, 2018

Erdogan’s Flying Carpet

BY BORZOU DARAGAHI

空港、橋梁、豪華なショッピングモール、そしてモスク、進行中の巨大建設計画は、エルドアン主義が信仰心だけでなく、トルコと地域の歴史をまたぐ偉大な指導者として君臨することを意味する。

FT May 24, 2018

A wise autocrat knows what he does not control

エルドアンは、グローバルな金融市場に逆らうことも無益さを学ぶしかない。賢明な指導者なら、政策を変更する。

FT May 24, 2018

The world’s strongmen have their problems too

PHILIP STEPHENS

「民主主義は死んだ?」 そんな論説は流行に過ぎない。「歴史の終わり」を覚えているか?

ポピュリズムの蔓延、強権指導者の増加は、民主主義者が厳しい時代になったことを意味する。しかし、専制国家にはそれ自体の欠陥と苦しみがある。プーチンも、エルドアンも、習近平も、彼らが思い通りに現実を支配し、未来を決定できる、わけではない。


● 北極圏

FT May 24, 2018

The fight to own Antarctica

Leslie Hook in London and Benedict Mander in Buenos Aires


● 民主党の政策綱領

PS May 24, 2018

An Economic Platform for US Democrats

JEFFREY FRANKEL

もし民主党がホワイトハウスを取り戻したとき、何をすればよいのか? 政策綱領が必要だ。2度とトランプのようなものを有権者が支持しないように、グローバリゼーションと技術変化の利益を享受できない、取り残されるという不満を、政策によって解消できるだろうか?

幸い、経済学がその政策を示してくれる。

1.国民医療保険制度。2.インフラ投資。3.教育。4.金融規制。レバレッジを抑え、自己資本比率を高める。5.共和党が行った富裕層への減税を取りやめ、また不動産税を、財源として使い、低所得の労働者を助ける。6.鉄鋼・アルミニウムへの関税を撤廃。7.技術変化による失業者に対する「賃金保険」。8.財政移転・再分配の財源は、10年間で1.5兆ドルの減税廃止と炭素税で得る。


● プーチンのシリア和平

FP MAY 24, 2018

Putin’s Endgame in Syria Has Arrived

BY JONATHAN SPYER

******************************** 

The Economist May 12th 2018

The $100 billion bet

The woes of Argentina: Tango tantrum

SftBank’s Vision Fund: The Son kingdom

The South China Sea: Making mischief

Guaranteeing employment: Make work can’t work

Rent control: The wrong remedy

Russia: Six more years

Charlemagne: What do European want?

Bagehot: The forgotten citizen

Markets and society: Sale of the century

(コメント) 孫正義の1000億ドルものファンドが何をするのか? その影響に関して特集しています。技術革新と新興企業をうながすファンドの役割があるとしても、特別な成功の秘訣はない、と思います。市場の機能に対して、これほど巨大な投資・投機に概ね否定的な評価です。

面白いのは、ヨーロッパとイギリスの選挙による代議制を見直す考察です。貴族制よりクジ引き制を導入し、大学卒業資格を持たない有権者の声をもっと聴け、というのは重要です。

****************************** 

IPEの想像力 5/28/18

それは、驚くほど簡明な表現でした。アメリカが(北朝鮮を破壊・制圧する)軍事行動を起こすとき、日本と韓国が財政負担を引き受ける、とトランプ大統領は金正恩に明言したのです。・・・誰がそんな約束をしたのか?

メディア批判、フェイク・ニュースとオルタナティブ・ファクト、強権指導者の姿勢や交際術を学んだ安倍首相は、ロシアのプーチン大統領、アメリカのトランプ大統領と、真の友人であることを自慢します。

****

通貨制度の改革論は、経済危機や社会の混乱が極端な破壊活動を経て、次の合意を形成する過程と一緒に情熱的に語られることの1つだ、と読みました。世界大恐慌と第2次世界大戦を経て、ようやく金本位制に変わるブレトンウッズ体制は成立したのです。

ビットコインなど、さまざまな仮想通貨の構想が熱気を帯びるのも、政府や中央銀行、金融専門家に対する不信と、先端技術への期待が混じり合った、ユートピアへの招待です。

****

リベラルな民主主義が深刻な問題に陥っているとき、通貨制度とともに、選挙制度の改革も必要だと思います。

戦争状態が続くアフガニスタンでは、アメリカが支援するような選挙に参加することを、タリバンが阻んでいる、とニュースが伝えています。投票所や候補者がテロの対象になったり、有権者登録をする村人の家族が脅迫を受けるとしたら、とても選挙などできません。むしろ長老を集めて意見を聞き、村人からさまざまな分野の知識・経験を集めるような政策諮問会議を各地で開くよう、制度を工夫することでしょう。それは「先進国」でも、選挙区や任期に縛られない「民主主義」を模索するものです。

「選挙」が、何か、得体のしれない政治運動に変わってしまう予感がします。

各地で街頭演説までする自民党の総裁選挙が、事実上の首相選びであるとしたら、私たちの民主主義はわずかな自民党員によって、しかも、それを取りまとめる者たちによって、動かされている、と言えるでしょう。それは有権者を差別化した、代表制の代表制、ロシアや中国の寡頭政治です。

同様に、戦後のEUや国際連合を民主的に活性化する試みを想います。ユーロ危機を長引かせたもの、ポピュリズムの台頭を用意した条件は、重要な意味で、この民主主義の制度的な破たんでした。むしろ村の運動会のように、政党やイデオロギーを超えてチームを作り、解決策を競わせてはどうでしょうか。

私たちは、何のために、だれがふさわしいと考えて、投票すべきか、わからなくなっています。「ヨーロッパ人は何を望むのか?」というThe Economistの記事が、その試み “Citizens’ Panel” を紹介しています。ふつうのヨーロッパ市民が100人ほど集まって、EUが選択すべて政策の優先順位をリストにします。彼らは、概ねEUの人口学的な分布を反映しています。フィンランドのソーシャルワーカーが、ギリシャの旅行代理店員、ルーマニアの建設業者、マルタの主婦と肩を並べます。

ユーロ改革に、なぜ合意できないのか? トランプやプーチン、エルドアン、安倍は、なぜ権力にしがみつくのか? もっと柔軟な権力のプールと、それを行使する透明な仕組み、市民の共感を得られる政策が実現するための制度改革を、たとえば、イギリスの「貴族院the House of Lords」に加えて「クジ引き議員たちthe House of Lots」を提案する記事に見ます。

あるいは、女性の地位や皇室に関する論争でしょうか。

アメリカ人の俳優で、離婚歴がある、混血男性と、日本の天皇の娘が結婚するとしたら、私たちは皇居の前で談笑し、日米の親密な関係がさらに深まると信じて、皇族や政治家たちがそれを祝福するのでしょうか? あるいは、Brexitとトランプの時代に、日本の政治混乱も加わるのか?

政治はタフで、柔軟であるべきです。米朝会談を恐れず、日本国民の長期的な利益、アジアや世界の秩序構築を目指す、十分な議論を事実に基づき尽くす私たちの議会に、私は権力を委ねます

******************************