IPEの果樹園2018

今週のReview

5/21-26

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イギリス王室の結婚式 ・・・仮想通貨と中央銀行 ・・・イタリア政府のユーロ改革 ・・・イラン核合意とエルサレム移転 ・・・ハイテク大企業の論争 ・・・3度目のドイツ帝国 ・・・中国の貿易戦争 ・・・中国の人権問題

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


● イギリス王室の結婚式

FT May 16, 2018

Prince Harry and Meghan’s wedding tests Britain’s royal reflexes

FREDERICK STUDEMANN

イギリス王室の結婚式をめぐるいつもの話題が盛りだくさんだ。いつもの登場人物も。熱心な反対論者たちも。イギリスのエリートと庶民との違いがみられる。

今回の特別な点は、イギリス王位継承者の第6位に、離婚歴のある、混血の、アメリカ人、女優が入ることだ。2人はこれまでと異なる結婚式を選んだ。ウェストミンスター大聖堂ではなく、ウィンザー城で。

いずれにせよ、そのセッティングは印象的である。結婚式は王室の変化を表現している。この10年間で、国民の王室に対する態度は大きく変化した。若い世代の参加、92歳のエリザベス女王と、ヨーロッパ史上最長の王位に対する尊敬。1990年代の荒涼とした王室に代わって、再び王室は永遠のイメージを回復し、生き延びるために変身した。

アメリカNetflixのテレビ番組The Crownも影響している。そして、現実世界の大きな不安だ。Brexit後のイギリスにはUK崩壊も懸念されている。しかし王室は、そのUKの憲章の一部となった制度である。皮肉なことに、現実の権力は持たず、それは出生の偶然に支配される。

かつてウォルター・バジョットは「高貴な魔術」と書いた。王室は、特に女王は、永久性を示す。しかし、それがいつまで続くか、次の移行は何か、それはわからない。


● 仮想通貨と中央銀行

VOX 13 May 2018

Cryptocurrencies’ challenge to central banks

Antonio Fatás, Beatrice Weder di Mauro

電子的な貨幣に中央銀行が関心を持つのはなぜか? ゼロ近辺からマイナス金利の政策を模索する中央銀行は、現金への逃避と戦わねばならない。キャッシュレス社会では、金融政策がゼロの壁を無視できるかもしれない。また、現金の匿名性は、脱税や犯罪などに利用されやすい。現金がなければ、こうした行為は非常に難しい。

最近、中央銀行は新しい民間人工貨幣との競争を強いられている。それは貨幣の発行特権を失う危険を意味する。すでに一部の中央銀行は、ドル化のような、よく似た状況に陥っている。中央銀行の選択肢は? 電子通貨を支持する理由は? 反対する理由は何か?

仮想通貨を発行することのリスクは非常に高い。他方で、その効率性改善という利益は大きくない。


● イタリア政府のユーロ改革

FT May 14, 2018

Italy looks for ways out of its eurozone fix

WOLFGANG MÜNCHAU

五星運動と連盟との連立政権が登場しつつある。最近まで、2つの正当ともユーロに強く懐疑的であった。

彼らはギリシャのケースを詳しく研究してきた。彼らは最初からEUの財政ルールを違反しないだろうし、ユーロ圏離脱で脅すこともないだろう。しかし、これは戦術的な後退と観るべきだ。ユーロ圏として、イタリアの問題は何も解決していないし、構造改革は進まないだろう。

選挙戦で、両政党はイタリアの経済・社会政策をラディカルに転換し、移民に関しても強い反対姿勢を約束した。連盟はフラット・タックスを、五星運動はベーシックインカムを主張した。両党とも2011年の年制度改革を元に戻すと主張した。連盟は「ミニBOT」、すなわち、債務を将来の税収で保証し、国債を支払い手段として受け取り可能にする、言い換えれば、パラレル・カレンシー案を主張している。これはユーロ圏を離脱せずに、ユーロ圏の制約を回避する方法の模索だ。

これらを実行すれば、もちろん、EUのルールに違反する。しかし、新政権が目標を達成する方法はある。第1に、選挙公約を薄めることだ。第2に、政策の実行を遅らせることだ。前者は有権者と、後者はEUと、政府は対立することになる。

ユニバーサル・ベーシックインカムの主張を、アクティブな労働市場政策に転換する、という話を聞いた。原則として、これは良いことだろう。イタリアには労働市場政策がない。しかし、それは政治的に難しい。有権者には福祉の給付を約束していたのに、実際は職業訓練の切符を渡すことになる。

フラット・タックス案を、2つか3つの税率にした階段上の税制に変えることで薄めることはできる。もし景気が回復するなら、有権者は受け入れるかもしれない。しかし、イタリアの景気回復は、ユーロ圏が低成長で、財政政策の引き締めを求められているときには、不可能だ。

この政権とEUとの対立は、3つの点で争われる。財政政策、ミニBOT、移民である。


● イラン核合意とエルサレム移転

NYT May 15, 2018

Trump’s Dream Come True: Trashing Obama and Iran in One Move

By Thomas L. Friedman

トランプは、イランに対する強硬姿勢を取り、イランの悪行に注意を向け、その核合意を改善しようとした。そうであれば、オバマの取引の良い点を認め、その限界を改良するために、ヨーロッパ諸国と協力する必要があっただろう。

しかしトランプは、最大限の要求をし、橋を焼き払って、ドイツ、フランス、イギリスとも反目し、イランの穏健派を弱らせた。トランプはこの複雑な、多次元に及ぶテヘランとの対立を、アメリカだけで解決できると主張する。

それはどうか? ストリッパーとの和解にも手こずる大統領が、またホワイトハウスからの情報漏えいを阻むこともできないのに、イランと対決し、北朝鮮と交渉し、中国と、ヨーロッパと、そしてメキシコとも貿易戦争をすることが可能だとは思えない。

オバマは8年間の任期が終わるころ、中東の指導者たちすべてを信用できなくなっていた。オバマの中東政策はミニマリストであった。すなわち、最大の脅威を抑えるために、シンプルに行動する。それが、ドイツ、フランス、イギリス、中国、ロシアを加え、最も危険な兵器、核兵器を、最も危険な相手、イランの手から遠ざける合意であった。

オバマは、イランが世界に統合され、穏健派の体制になるだろう、と願ったが、それは実現しなかった。イランは、核兵器の水準までウラン濃縮を15年間行わない制約を受け入れ、それと交換に、経済制裁の緩和を得たのだ。IAEAによれば、この2年間イランは合意を守っている。

対照的に、トランプのチームはマキシマリストである。すなわち、イランの弾道ミサイルを制限し、スンニ派への帝国的な拡大を逆転し、ウラン濃縮を決して行わないと受け入れさせ、可能なら、その体制を転換させる。

しかし、イスラム体制が崩壊した後のイランを、だれが支配するのか? アラブの春の教訓とは、専制国家が崩壊した後、ほとんどの国で、それに代わるのは民主体制ではなく、無政府状態と独裁制である、ということだ。8000万人のイランがシリアのような状態になれば、それは中東全体を不安定化し、ヨーロッパに多くの難民が向かうだろう。

イランがアラブ世界で影響力を拡大したのは、トランプたちが言うような核合意による制裁解除で得た資金を使ったからではない。スンニ派の諸国家が弱体化し、内紛を続けていたからだ。それは権力の真空を生んで、シーア派の軍事勢力が拡大した。彼らが行っていることはエスニック・クレンジングである。

トランプがイランを追い出すと主張するのは良い。しかし、そのための戦略はない。合意を離脱するより、ヨーロッパ諸国に対して、合意にとどまるための3つの条件を提示すべきだろう。すなわち、1.ウラン濃縮の制限を15年から25年に延長する。2.イランがヨーロッパもしくはアメリカに到達する弾道ミサイルを開発すれば、制裁を強化する。3.アメリカとヨーロッパは、シリア、イラク、レバノンにおけるイランの「占領」を、外交的な焦点とする。

ヨーロッパ諸国はこの条件に飛びつくだろう。それは西側の統一を守り、イランの脅威を抑え、国内の穏健派を強化する。

何と残念なことか。われわれは最も親密な同盟諸国と連帯することなく、イランと取引する彼らの企業を制裁すると脅している。

FT May 16, 2018

Donald Trump is playing with matches in the Middle East

EDWARD LUCE

アメリカのエルサレムへの大使館移転は、一見、計算された挑発であるかのようだ。ドナルド・トランプ大統領は最も近い肉親であるイヴァンカとクシュナーを派遣した。パレスチナ人が故郷を失った70周年の抗議を行っていることには、言及しなかった。

同じ日、イスラエル軍は数十人のデモ参加者を殺害し、数千人を負傷させた。他方、ペンス副大統領は、不可能ともいえる戦いで、敵を撃退した聖書の巨人ダヴィデにたとえて、トランプを称賛した。

しかし、トランプたちの異常さは、デザインされたものではなく、怠慢によるものだ。彼がアラブ主義者たちの憎悪を煽るために行動したのであれば、それはこの上なくうまくいった。彼は自分の名前をどこにでも付けるし、行動計画に忠実だ。

しかし、大使館移転は、トランプの交渉による解決策を葬った。パレスチナ人はテーブルにもはや就かないだろう。アラブの親しい指導者たちも対応に苦しむ。彼らはイスラエルの生存権を容認する姿勢に近づいていた。なぜ、外交ではなく、戦争を望む必要があるか?

情勢は急速に悪化している。ジョージ・W・ブッシュでさえ、アメリカがイラクで戦争を選択するのに、アラブ人の反応を心配した。しかしトランプはアラブの王室を気遣うだけだ。彼らはトランプがシーア派とスンニ派の紛争で、自分たちの側であることに満足している。

歴史を学ぶ学生は、ヨーロッパのカトリックとプロテスタントが対立した「30年戦争」を思い出すだろう。中東はその再現であり、アメリカの国益はこの地域が大国によって支配されるのを防ぐことだ。他の大統領なら、アメリカは「オフショア・バランシング」を目指したはずだ。それは地域の少数派を助けて、均衡を維持すること、すなわち、今ならイランを助けることを意味する。トランプは逆だ。

イラン核合意からの離脱は、アメリカをスンニ派陣営に加え、レフェリーの役目をロシアのプーチンに与えたことを意味する。

中東和平は忍耐のいる外交だ。イスラエルは、ユダヤ人が生存の危機を経験した歴史に由来する特別な使命を負っている。他方、パレスチナ人はその過程で故郷を失った。彼らの要求はオークションで売買できるものではない。その相いれない立場を知ることから、公平な仲介が始まる。世界はトランプの2国家案を待っている。

トランプは選挙中の約束を実行した。アメリカ大使館のエルサレム移転。イラン核合意からの離脱。その通り。しかし、彼は肝心の約束を果たせるのか? 「私だけが解決できる。」


● ドル高とデフォルト

PS May 14, 2018

Managing the Risks of a Rising Dollar

MOHAMED A. EL-ERIAN

アメリカの金融政策は、主要な中央銀行の金利正常化の動きもあって、金利上昇が予測される。2017年は、アメリカからヨーロッパの成長回復へ、また、高い成長を示す他の地域へ資本が流出していた。

しかし、この数か月はアメリカの成長率が高くなって、その差は逆転した。ヨーロッパや新興市場への資本流出が減って、すでに逆転する者もあらわれた。そのリスクを抑える十分な政策手段はある。それを個別の政府も、国際協調においても、採用するべきだ。実際、ドル高はグローバルな均衡回復を促すものである。ただし、アルゼンチンが示したように、新興市場は苦しむ。


● ハイテク大企業の論争

FT May 18, 2018

Tech lessons from Amazon’s battle in Seattle

GILLIAN TETT

Facebookが利用者のデータを正しく扱っていない、と論争される中で、Amazonアマゾンもシアトルで政治論争を刺激した。それはわずかな額である。しかし、投資家たちは、驚異的な成功がもたらした彼らの課題を知るために、注意しておくべきだ。

ホームレスの問題を解消するために、シアトル市は新しい課税を導入した。2000万ドル以上の売上げがある、市で活動する企業に、被雇用者1人当たり500ドルだ。

しかし、スターバックスやアマゾンは不満を示した。特に、アマゾンは強く抵抗し、シアトル中心部の拡張計画を中止した。今週、シアトル市は275ドルに引き下げた。4500万ドルほどの歳入を得る。

アマゾンのような企業にとって、4500万ドルは「はした金」である。アマゾンはシアトル地域に4万人を雇用し、16億ドルの純収益を4半期ごとに上げている。他方、誰もがシアトル市のホームレス問題や、その薬中毒への影響を認めている。ホームレスの多くが住む場所はアマゾンのオフィスにも近い。州が所得税と資産税を禁止しているから、シアトル市の増収策は限られている。

しかしアマゾンの最高経営責任者ベゾスは、「新しい課税に非常に失望した」と不満を隠さない。その声明は、要するに、「シアトル市から撤退するぞ」と脅迫したのだ。

ここには3つの問題が示されている。第1に、アメリカのデジタル大企業は、驚くほどに「外部性」を考慮しないことだ。自分たちが生み出す政治的・社会的生態系がどのようなコストを生じているのか、無関心だ。1つの理由は、シアトル市の左派的な政府が非効率である、と嫌っているからだ。また、アマゾンは、あまりにも急速に拡大し、また、極端に利潤だけを追求してきたからだ。地方政治やハイテクブームがもたらす社会の分断を知ろうとしない。

2に、政策担当者とハイテク指導者は、その経済活動を地理的に分散する方法を見いだすべきだ。Googleがデータ・センターを分散する動きは始まっている。しかし、アマゾンが「分散化」と称して、第2本社の立地を大っぴらなコンテストにした。その結果は、ハイテク大企業にますます有利な条件を示す都市間の競争になった。アマゾンはさらに多くの税金を免除されるだろう。

3に、諸都市はデジタル経済の成長を、賢明に、かつ効果的に、利用する方法を学ぶべきだ。デジタル革命が物的な立地を拡散するという楽観は、間違いであった。技術革新はますます都市部に集中している。それはボトルネックを生じ、住宅価格の高騰をもたらして、億万長者たちのオフィスや住宅のそばにホームレスの集まる場所が生まれる。解決に向けて、公共政策によるインフラの整備が必要だ。

ハイテク大企業の大成功と、富と権力の極端な不平等は、解決策を求めている。その意味で、シアトルとシリコンバレーは、その体温計である。


● 3度目のドイツ帝国

PS May 15, 2018

Germany’s Great European Heist

ADAM TOOZE, SHAHIN VALLÉE

2つの呪文がドイツのユーロ圏統合を導いている。すなわち、責任と管理は結びついていなければならない(法的権限無しにリスクを持ち合うことはしない)。ユーロ圏の諸国でリスクをプールする前に、過去のリスクは清算されねばならない。これら2つの呪文は2010年以降のすべての議論で繰り返された。それは銀行同盟がなかなか進まない主な理由でもある。

一見、その主張はもっともに思える。しかし、その意味をよく知るために、同じロジックを他の政策に当てはめてみよう。すなわち、安全保障・防衛問題だ。

もしフランスが、一層の防衛協力について絶対に必要な条件は、ドイツがその防衛費を即座に増やすだけでなく、この数十年間でドイツが防衛支出を抑えてきたすべての累積額を清算することだ、と主張したら、どうだろうか?

NYT May 16, 2018

The Fall of the German Empire

By Ross Douthat

近代におけるドイツの最初の帝国は、1871年、ビスマルクによってヴェルサイユ宮殿で生まれ、1918年、西部戦線で死んだ。2番目のドイツ帝国は、併合と電撃戦の快進撃によって生まれ、恐怖の7年間を生きた後、ヒトラーと彼のカルト集団が死んだとき、一緒に滅んだ。

3番目のドイツ帝国は、全く異なる生き物である。軍港主義も人種的な神父主義も否定して、3世代にわたる緩やかな、苦労を重ねて、ときには他の諸国、旧敵であるフランス人の協力の下、築かれた。ソフトに、間接的に、暗黙に、ドイツは大陸全体を支配し、強制力が必要なときも、軍事的、人種的な攻撃ではなく、財政規律の形で、それを行う。

しかし、このシステムは多くの意味で帝国的である。半主権国民国家の集まる、多人種、多宗教の混合物を、厳密には民主的といえない権威を駆使して、ベルリンやブリュッセルが動かしている。このようにEUを観るとき、それは世界市民的なリベラルのプロジェクトであるとともに、ドイツ帝国でもある。

ヨーロッパ各地に広がる反EUの感情は、ポピュリストがリベラルな民主主義を攻撃している、と見なすだけでは間違った対応を続けるだろう。1989年、彼らが得たのは、リベラルな民主主義である前に、彼ら自身の主権を持つ国民国家であった。彼らは帝国からの解放に歓喜したのだ。それに代わるEUの支配が、財政危機において、また難民危機において、ドイツ帝国の性格を顕著に示したとき、彼らはこれに反発した。

ベルリンとブリュッセルは、共通通貨、人口と経済の不均衡、民主主義の赤字、といった問題を、抽象的なリベラルのプロジェクトに訴えて解くことはできないだろう。彼らは、ある意味で、より意識的に帝国の支配に取り組むべきだ。すなわち、この複雑なシステムは、容易にヨーロッパ合衆国に向けて進化せず、ドイツ人の帝国ではなく、より穏健で、自己批判的な、非利己的エリートによってのみ効果的に統治できる。


● 中国の貿易戦争

PS May 15, 2018

America’s Collision Course With China

KISHORE MAHBUBANI

米中関係は、世界で最も重要な2国間関係である。しかしそれは、パラドックス、誤解、不信によって歪められ、不確実性と深刻な不安定性の源となっている。だれにとっても利益にならない貿易戦争が起きるだろう。

アメリカのトランプ大統領は貿易不均衡を誤解している。経済学者の多くが同意しているように、これは中国の詐欺的行為によるのではなく、主にアメリカの財政赤字とドルの国際準備通貨という役割から生じている。

しかし、トランプの貿易アプローチはアメリカ人の多くの人に支持されている。その原因は、アメリカ人の対中国意識が、この数年で大きく変わったことだ。中国の経済規模が、十年以内にアメリカを抜くことは明白になっている。アメリカ人は、もしそのとき中国が民主的国家でないなら、共存することを好まないのだ。

中国指導部は、アメリカも同様に、長期的な、合理的判断に従う、と思ってはならない。アメリカが政治的に分極化し、単純なイデオロギーによって支配され、高度に有害で、まったく的外れな紛争をもたらすということを、考慮するべきだろう。

FP MAY 16, 2018

On China’s New Silk Road, Democracy Pays A Toll

BY RICHARD FONTAINE, DANIEL KLIMAN

大国間競争が復活した。中国の一帯一路イニシアティブは、単に、経済学で観た重商主義アプローチではない。それは債務依存を広め、「チャイナ・ファースト」の開発を推進し、グッド・ガバナンスや人権を破壊する、重大な非リベラル・アプローチである。

膨張する、持続不可能な債務がもたらす結果は明白だ。例えばスリランカは、2017年の政府歳入の95%が債務返済に占められた。ほかにも8か国(Djibouti, the Maldives, Laos, Montenegro, Mongolia, Tajikistan, Kyrgyzstan, and Pakistan)が一帯一路の深刻な債務リスクを抱えている。

中国政府が支援する巨額融資には、政治的な条件が付いてくる。長期的に中国の支援に依存し、外交政策はその影響を受ける。中国は情報インフラとその技術を広めているが、それは非民主的な政府が反政府勢力を抑圧する北京の監視体制を広めることを意味する。言論の自由を抑圧することに抗議する声明をEUが国連人権会議で出せなかったのは、中国からの大規模投資を受けたギリシャが反対したからだ。


● 中国の人権問題

PS May 15, 2018

Putting Tibet Back on the Agenda

DHONDUP WANGCHEN

2008年の夏のオリンピックが契機となって、中国の人権問題が改善されるのではないか、と期待された。しかし、その後も中国は、世界で最も非リベラルな国の1つである。エスニック・マイノリティは標的とされ、体制を批判する者は投獄され、改革の約束は無意味であった。

NYT May 15, 2018

What Really Happens in China’s ‘Re-education’ Camps

By Rian Thum

たった1年で50万人ものエスニック集団が再教育を受けるというのは、どういうことか? 国家はそれを「教育による改造」と呼ぶ。数万人の人々が、有刺鉄線に囲まれた、新しい思想管理キャンプに封鎖される。爆弾防壁、強化ドア、守衛ルーム。

ウイグル族は、漢民族より、文化的、言語的にトルコ人に近い。多くのウイグル人がイスラム教徒である。中国の高圧的な支配に対して、抗議するものもあり、通常は平和的に行われるが、ときには政府役人や、例外的に市民への攻撃が起きた。国家に、それに対してイスラムへの恐怖心を広め、イスラム教徒の日常の伝統も、宗教的「過激派」の表明とみなす。

新疆政府当局はウイグル人の習慣を改造する政策を強化してきた。地方政府の式典や歌はエスニック・マイノリティに中国共産党への忠誠を求め、強制的な再教育や、イスラムが禁じているような踊りを強要する。ある地区では、治安機関が住民を定期的にリスク評価している。

ウイグル人は介入国家の下で長く暮らしてきたが、新しい共産党地区委員長が2016年後半にチベットから来て、その手段が強化された。地元の警察署長は新しい拘束者数の割当てを満たすのに苦労していた、と言う。

キャンプは懲罰だけでなく、脅迫の道具である。拘束されたものは正式に訴追されることがなく、判決もない。拘束期間はわからない。この不確かさ、拘束の恣意性が、住民全体に恐怖を広めている。何万もの家族が引き裂かれ、文化のすべてが犯罪とみなされている。

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The Economist May th 2018

Disarmageddon

French Universities: Non-selective nonsense

Global security: A farewell to arms control

Internal migrants: The better generation

Bello: The crisis of Argentine gradualism

Demography and its consequences: Small isn’t beautiful

Schumpeter: Attack of the drones

Banks in Japan: Silver service

(コメント) 日本と関連する記事として、人口減少と銀行の競争圧力を読みました。特別な驚きはありませんが、銀行はやはり大変です。デフレの時代、利益を出す見通しは立つのか? ハイテクのスマホによるデジタル・バンキングに対抗できるのか? 過剰なスタッフ、過剰な店舗、過剰な給与、再編成の難しさ。

しかし、メインの記事は核兵器の抑制と廃絶に向けた国際体制です。核拡散を防止し、相互確証破壊を成り立たせてきた条件は失われつつある、と指摘します。レジームとしての正当性は高まるどころか、弱められてきました。誤解や誤算、核拡散のエスカレーションで、使用されるリスクは高まります。

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IPEの想像力 5/21/18

母の家で読売新聞を読んでいると、台湾について「蔡政権2年 内鬱外患」という記事がありました。(一部改変)

・・・経済は好調でも、支持率が低迷している。輸出は好調でも、GDP7割を占めるサービス業は必ずしも恩恵を受けていない。残業の制限や、軍人・公務員・教員の年金改革、国民党独裁時代の十院弾圧事件を究明する法律制定、とガバナンスの改革に成果を上げながら、それに反対するデモが頻発する。野党・国民党と支持者は、社会の分断を進めたと批判する。

・・・蔡英文氏は、台湾独立も、中台統一も否定し、現状維持を掲げた。しかし、これに納得しない中国は圧力を強め、2年間で3か国が台湾との国交を断った。外国企業にも、台湾ではなく「中国台湾」という表記に変更するよう強制する。アメリカのトランプ政権は、政府高官の相互訪問を認める台湾旅行法を成立させた。しかし、中国との貿易戦争に、台湾を「交渉カード」として利用するだけではないか、という不安がある。

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NYTは、チベットやウイグルで中国政府が行う弾圧、監視、拘束などを、厳しく批判する声を載せています。ロイターの「コラム:中国ウイグル族を苦しめる現代版『悪夢の監視社会』」」もあります。

中国は国内政治秩序の安定性を最優先にする、というコメントを何度も見聞きしました。それは、いずれの国でも言えることですが、幾分、ユニークな中身があります。

たとえば、中国の地図を観ると、その周囲にはチベットがあり、台湾があり、新疆ウイグルがあります。ロシア、日本、インドがあり、中央アジアを超えて、イランなど、イスラム世界に繋がります。

高い成長を続けてきたことは称賛されますが、The Economistの記事にもあるように、地方から都市へ出てきた労働者たちの労苦は報われていません。彼らは特別な戸籍管理によって、都市の居住を制限され、住宅や公共サービスの利用を拒まれます。ますます高騰する住宅費用を支払えず、都市政策でにわかに退去を強いられても抵抗できません。経済成長のパターンがサービス分野に転換する中で、彼らの職場は失われ、しかも子供たちは満足な教育を受けていません。一人っ子政策の影響で、男女の比率が大きくゆがみ、結婚することもできないのです。

中国も、内鬱外観と言えるでしょう。そして、北朝鮮危機、アメリカとの貿易戦争。

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中国は、貿易や投資において大きな影響力を得ました。自分たちが望む国際関係を選択するパワーがあります。しかし、中国が恐れる社会不安の源は、都市の底辺労働者であり、都市や農村で教育や医療サービスを欠く状態の人々、特に子どもたちでしょう。

台湾が中国との戦争を望むことはないでしょう。中国の経済封鎖や、制裁と奨励策を用いた台湾企業の引き抜きにも耐えるしかありません。香港や台湾の希望は、独立を望むというより、平和を維持することです。中国の政治がより自由で、人々の声に耳を傾ける、大幅な自治や地方への権限移譲に応じる、改革の時代を待っているのです。

中国が、より民主的で柔軟な連邦制を、香港や台湾とともに支持するなら、チベットやウイグルでも、アジアの自治や統合の模索として支持されると思います。

イラン核合意を離脱するより、さらに強い地域協定を目指して、EUに交渉を呼びかけるべきだ、というトマス・フリードマンの論説に、私たちは共鳴するでしょう。北朝鮮も、チベットも、台湾も、日本は同様の構想を支持し、中国の指導者たちと対話するときです。

先進諸国は、常に、世界に大きな影響を与えてきました。ポピュリズム、反移民・反イスラム、ハイテク大企業、民主主義のあり方が問われています。貿易や投資を通じて、特に、通貨・金融市場や、グローバル・サプライチェーン、情報通信企業の投資、技術移転を通じて、中国が世界の政治改革を率先する時代になるのです。

中国が国内の社会的安定性とダイナミズムを発見する時代を、底辺労働者、台湾、私たちは待ちます。弾圧でもなく、冷戦でもなく、平和と秩序を。

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