IPEの果樹園2018

今週のReview

5/7-12

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北朝鮮の対話と核戦争 ・・・ヨーロッパの弱さ ・・・メルケルの失敗 ・・・軍事力行使の基準 ・・・タケダの巨大買収 ・・・AIを制御する ・・・AIと社会・政治革命 ・・・マルクス生誕200年 ・・・マクミランの保守主義

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


● 北朝鮮の対話と核戦争

FP APRIL 27, 2018

Pyongyang Is Playing Washington and Seoul

BY MICHAEL J. GREEN

これは、北朝鮮が核兵器とミサイルの発射実験に成功したとき、彼らがすでに考えていたシナリオだ。北朝鮮は、アメリカ本土を核攻撃できることを証明した。そこで、彼らの計画は新しい段階に入ったのだ。すなわち、核保有国として国際的に承認されることだ。そして、アメリカと韓国との同盟関係を破壊する。

南北会談や融和は重要ではない。北朝鮮の目標は、トランプだ。金正恩は、多くのあいまいな約束をするだろう。それらはすべて、これまでと同様、検証できない、逆転可能なものだ。

トランプには、朝鮮戦争を終わらせる歴史的な役割をプレゼントする。もちろん、その条約交渉は完成する必要もないだろう。北朝鮮は、交渉をできるだけ長引かせる。その間に、中国やロシア、韓国の仲間は、制裁や軍事演習が和平交渉を妨げる、と説得するのだ。4国による和平交渉は、強硬派の日本を排除できる。また、アメリカの日本に対する安全保障の約束を脅かす。

アメリカ大統領は、金のかかる在韓米軍を引き上げる口実として、和平協定を利用できる。北朝鮮の最終目標は、完全な核保有国としての地位である。

FP APRIL 30, 2018

Optimism About Korea Will Kill Us All

BY JEFFREY LEWIS

キムの約束は、実際には意味がない。核実験場はすでに使用できないものだ。核実験を行わない、という約束は、すでに彼らが目的を達成したからだ。南北首脳会談の声明は、非核化を具体的な交渉から外して、いつの日か、核兵器がもはや必要なくなるとき、についてあいまいな抱負を述べただけである。

そのときまで、北朝鮮は多くのもっと穏やかな一連の手続きに合意するだろう。それらは良いことである。アメリカの安全保障を改善する。しかし、キムは事実上、北朝鮮が核保有国であるという承認を得るのである。このことは、アメリカ外交がこれまで数十年間も求めていたことを完全に放棄することである。われわれは、核保有した北朝鮮、という事実を受け入れるのだ。

しかし、それが大幅な後退であることから、われわれはそれを正直に認めないだろう。トランプたちはこれを北朝鮮の武装解除に向かう過程として示す。しかし、北朝鮮の指導者たちは決してそのようなことを言ったことがない。驚くことに、この交渉をジョン・ボルトンが応援している。

ボルトンの発言の理由を知ることに意味がある。彼は、北朝鮮が核兵器を完全に放棄する、という希望を広めている。しかも、数か月で。ボルトンはこれを、何度も、「リビア方式」と呼んだ。韓国政府関係者も、トランプ大統領は「遅くとも2021年の任期終了までに、完全な非核化を実現する明確な時間表」を得られないなら、キムに合わないだろう、と述べている。

これは狂気の沙汰である。キムがそのようなことに合意する意図を持つはずがない。また、この数年、北朝鮮に関して書いたものすべてが示すように、ボルトンもそのような合意ができると信じるはずがない。ボルトンが突如としてナイーブになったのではない。彼は天使のふりをして、大統領の期待を高めているのだ。ボルトンは外交に反対して潰そうとせずに、善意の完璧な破壊者を創ろうとしている。リビア・スタイルの降伏を予測することで、キムが提示するもっとはるかに穏やかな妥協案を醜いものに見せるのだ。

これは非常に冷笑的な、そして、危険なゲームである。キムが核兵器を手放さないと分かったとき、何が起きるのか? トランプの性格を考えれば、彼はポンペオを責めて、鍵をボルトンに渡すだろう。北朝鮮の核兵器を廃棄できなければ、そのときはすべての国、すべての人々に苦しい時間が来る、とトランプは警告した。

多数の韓国人、日本人、アメリカ人が核戦争のリスクに向き合う。


● メルケルの失敗

FP APRIL 27, 2018

The Unbearable Complacency of Angela Merkel

BY PHILIPPE LEGRAIN

今、ドイツはうまくいっているように見える。経済は好調で、失業率は記録的な低さだ。インフレもほとんどない。財政も健全だ。ユーロ圏の危機と難民危機は去った。メルケル首相はようやく連立政権を組んで、ワシントンを訪問した。

しかし、ドイツは思った以上に、はるかに脆弱である。ヨーロッパの輸出大国であるが、それは開放された市場と核の傘の両方で、長い間、アメリカにただ乗りしてきた。どちらも、ワシントンの醜い相手、ドナルド・トランプ大統領によって脅されている。リベラルな国際秩序が崩壊すれば、ドイツはますます将来の繁栄と安全保障をEUに依存しなければならない。

しかしメルケルは、ユーロ圏とEUを長期的に強化するため、短期的な譲歩をする気がない。これは危険な自己満足である。ヨーロッパにとって潜在的な悲劇をもたらす。

ドイツの成長モデルは2つの要素に大きく頼っている。1つは、工業製品、特に、自動車の追加的な改善である。もう1つは、ドイツが自動車生産に特化し、その黒字を、他国が赤字を出して吸収してくれることだ。その両方が危なくなっている。デジタル化が製造業を混乱させているが、ドイツに自動車産業は、電気自動車や自動運転で中国やアメリカに遅れている。「クリーン」なディーゼル自動車は、今や、データ改ざんの恥辱に汚れている。

アメリカはますますドイツの黒字を吸収しなくなるだろう。トランプは、ドイツやEUの対米貿易黒字を許さない。メルケルは、ヨーロッパの他の指導者たちに、経済改革の「宿題をやってくるよう」説くのが好きだ。しかし、彼女自身がドイツの成長を高める改革を10年以上も実行しなかった。投資不足で、橋や港湾が崩れ、大学は資金不足で、インターネットのスピードも驚くほど遅い。

輸出に過度に依存していた中国などの諸国は、金融危機後、黒字を減らしてきた。しかしドイツの経常収支黒字は、3100億ドルで世界最大、GDP8%に達する。危険なまでに外国の需要に頼っているのだ。

ドイツは、経済面だけでなく、安全保障面でも、ますます脆弱になっている。プーチン大統領の威信回復運動はドイツの戸口にまで迫っている。重武装した飛び地、カリーニングラードは、ベルリンから、たった373マイルだ。他方、トランプは、アメリカによる核抑止の安全保障を見直すかもしれない。ドイツは何十年も軍備に十分な投資をしなかった。その防衛予算はGDP1.2%でしかなく、NATOの掲げる2%の負担を大きく割り込んでいる。たとえドイツの歴史的な躊躇を考慮しても、防衛費を惜しむ姿勢は独善的で、ドイツの、そしてヨーロッパの核抑止の考えを拒むことも間違いだ。

ドイツにとって、その繁栄と政治的アイデンティティー、世界に占める地位を決めるEUとユーロ圏とを強化するために、あらゆることをすべきである。Brexitや、イタリアにおけるポピュリストの勝利は、ユーロの欠陥から政治が混乱し、崩壊に至る危険があることを再認識させた。プーチンに近い、極左や極右の政党が、ヨーロッパ各地で支持を広げている。

幸い、フランスの有権者たちはエマニュエル・マクロンを選んだ。彼はこれまでで最も親ドイツ、親EUの大統領だ。彼は、その公約である(ドイツの要求に合致する)、労働法の緩和を含む、経済改革を実施する決意だ。しかし、ユーロ改革についてのマクロンの提案に、メルケルが示すものは、否定 “Nein” だけだ。

ドイツはこの例外的な好機を逃さず、事態を改善するべきだ。ヨーロッパ経済は回復を続け、来年のEU選挙を前に、政治的な推進力を得られる。嵐が来てからより、太陽が輝く間に、改革するべきだ。嵐は地平線の向こうに迫っているのだから。


● 軍事力行使の基準

PS Apr 27, 2018

When May States Use Force?

GARETH EVANS

国連安保理の承認を得ない、1999年のNATOによるコソボへの軍事介入以来、論争は少なくとも3点を国際合意とした。第1に、合法性と正当性は違う、ということだ。テクニカルには違法であっても、正当な軍事力の行使はある。また、世界が政党とみなさないような、テクニカルには合法のケースもある。

2に、合法性は国連憲章によって、それのみが、決定できる。第3に、正当性のための慎重な基準がある。それは国際条約に成文化されたルールではないが、広範に、非公式な承認が得られている。

合法性とは、国連憲章が定める2つのケースしか認められない。1つは、自衛のための軍事力行使である。もう1つは、安保理の承認である。攻撃が迫っているという圧倒的な証拠があれば、先制攻撃も正当化される。しかし、予防的な攻撃は認められない。

軍事的な強制が正当化されるケースについて、国際的な論争には、正当性の5つの基準が広く認められる。すなわち、1.脅威の深刻さ。2.軍事力行使の目的の正当性。3.他のすべての選択肢を尽くした、最後の手段として。4.驚異の大きさに比例的な軍事力行使として。5.事態を改善すると期待される場合のみ。

こうした基準が、時とともに、安保理や他の政策決定者に、体系的に適用されることが望ましい。

それは、害悪のバランスをリアリスティックに計算していることになる。1999年に東チモールで暴力が広がったときも、インドネシアに対する軍事介入は考えられなかった。強い国際圧力を受けて、インドネシア政府が受け入れを認めてから、外部の平和維持部隊が入った。また、1991年のイラク侵攻は、クウェートを解放するために、国連安保理が承認した。しかし、2003年はそうではなかった。

テクニカルには合法的な軍事力行使も、正当でないという論争が続くこともある。シリアについてもそうだ。合法性と正当性とは、異なる方向の論争であるから、観方によって対立し、安保理では拒否権が行使される。

このジレンマを解消する単純な答えはない。しかし、合法性のない軍事力の行使については、その正当性が最も厳しく問われるのであり、刑事裁判における「情状酌量の嘆願」に似ている。たとえば、後部座席で妻が出産してしまった場合、運転する夫は法を無視するとしても許容されるべきかもしれない、と。それは非常に特別なケースであり、道義性により支持され、習慣的に行われることはあり得ない。


● タケダの巨大買収

FT April 30, 2018

Why Japan Inc is gambling on M&A growth

Kana Inagaki and Leo Lewis in Tokyo

26億ドルでブリジストンがアメリカのタイヤ・メーカーFirestoneを買収した。日本の経済が変わった、とわかった。それから30年経って、25倍の規模の企業買収が起きた。タケダ薬品がShireに買収を提案したのだ。

日本企業は海外市場に向かう。それは高齢化によって国内市場が失われていくことを知っているからだ。経営幹部は買収を決断する。

経営に関する法改正で、株主の力が強まった。経営者たちは利益を、高い株価収益率を求められ、説明しなければならない。経営者にも、新しい世代が育っている。また、銀行部門は利益の確保があまりにも難しい。M6Aへの融資は非常に魅力的な機会である。

アベノミクスや日銀の資金供給によって、これが最後の拡大のチャンスかもしれない。しかし、それ自体、モラル・ハザードを生む懸念もある。


● AIによる独占を制御する

NYT May 1, 2018

The Real Villain Behind Our New Gilded Age

By Eric Posner and Glen Weyl

これがわれわれの新しい金ぴか時代である。市場の力やグローバリゼーションのせいではない。真の犯人は、旧金ぴか時代を生きた人々におなじみのものだ。それは、市場支配力、独占である。

当時、大独占資本は、ロックフェラーのスタンダード・オイル、砂糖トラスト、金融資本、鉄道資本であったが、その力によって政治や経済を腐敗させた。市場支配力が成長を低下させ、不平等を拡大する、と知って、指導者たちは反トラストと労働者の保護を法律にした。

現代、市場支配力は新しい形を取っているが、解決策は同じだ。21世紀の反トラスト法、労働者保護法を整備することである。

ロナルド・レーガンとマーガレット・サッチャーは「サプライサイド経済学」の指導者であったが、その基本的前提は間違いだった。それは、政府が契約と所有権を守ることに専念すれば、市場が最もうまく作用する、というものだ。200年前に、アダム・スミスがすでに書いていた。利益を得る最も容易な方法は、コストを下げるのでも、革新するのでもなく、共謀して競争しないことだ。市場支配力によって、価格を引き上げ、賃金を下げる。

確かにそれは、今では違法である。しかし、新しい形の市場支配力、独占利潤が存在する。

1に、人々は、1970年代から、BlackRockVanguardのような機関投資家に資金を委ねた。それは次第に市場競争を失わせ、価格引き上げと投資の抑制による利潤をもたらした。

2に、企業は市場支配力を労働者に対して行使するようになった。労働者たちは他に雇用主を見いだせず、低賃金で働くか、失業して生活保護に頼った。

3に、インターネットの普及で、ハイテク大企業、Google, Facebookなどは利用者のネットワークにおける巨大な支配力を得た。利用データをほぼ独占し、法外な利益を得ている。

1世紀前には、独占企業の分割、カルテルの禁止、企業買収の阻止が焦点だった。新しいアプローチが必要だ。機関投資家を再編する。労働市場に対する支配力を考慮する。ハイテクの独占に警戒し、革新的企業の買収を阻止する。

そして、人々がもっと独占の危険を意識する必要がある。


● AIと社会・政治革命

PS May 3, 2018

The Politics of Machine-Learning Algorithms

MARK MACCARTHY

紀元前1200年ころ、中国の殷王朝では、日常生活や祭式に用いる、多数の巨大な青銅器を生産するため、工場システムが発展していた。大量生産システムの例として、多くの作業に分かれた労働者集団を、正確な秩序に従って動かす、複雑な計画が必要であった。

こうした初期の計画された作業システムが中国社会の形成に重要な役割を果たした、と考える研究者もいる。人々は官僚制的な構造を受け入れ、階層的な秩序を重視する心理を持ち、これが物事を実現する唯一の正しいやり方だ、という信念を持った。

産業の工場システムがヨーロッパに導入された19世紀に、フリードリヒ・エンゲルスのような、資本主義の激しい批判家も、大量生産が集権化された秩序を必要とすることを知っていた。資本主義でも、社会主義でも。20世紀のL.ウィナーは、原子爆弾も、「本来的に、政治的な産物である」と考えた。なぜなら「その致命的な重要性ゆえに、権限を集中し、厳格に階層的な命令系統を要求する」からである。

こうした思考は現代もさらに突き進む。学習するアルゴリズムを備えた機械がそうだ。彼らは人間の行動を模倣し、すでに労働現場で重要な役割を担っている。その結果、人間の任務が再定義されていく。その効率改善は多くのデータに依拠することで得られる。その条件は、人間の行動を記録し、利用できることだ。それは個人のプライヴァシーと対立する。

コミュニティーのメンバーに関する情報を公共的な利用に供するシステムは、社会学者Amitai Etzioniのような、社会規範を重視する共同体論者に似ている。しかし、アルゴリズムは社会規範に関心がない。

こうした技術変化は、個人主義者たちを意図しない共同体論者に変換すると同時に、アルゴリズムの評価に依拠するメリトクラシーの文化を信奉させる。人々は、こうした非人間的手段による階層化に従うのだ。それは、すでにクレジット・カードの利用者が信用評価されているのと同じである。

しかし、技術は宿命ではない。アルゴリズムがわれわれを変形する前に、われわれが彼らを変形する。人間生活の触れられたくない分野にはプライヴァシー・ネットを張る。データの有害な利用から人々を守る。他の重要な価値、すなわち、公平性、説明責任、透明性、をアルゴリズムの正確さとバランスさせるように求める。それはわれわれのパワーに委ねられている。

もしわれわれがアルゴリズムの自然法則にしたがえば、メリトクラシーと共同体文化は避けられない。その結果、われわれの民主的制度や政治構造が根本的に変容する。すでに中国についてDaniel A. Bell and Zhang Weiweiが警告した。中国では、集団的決定が市民の明示的な合意によらず、人々は政府に反対する権利をわずかしか持たず、特に、政府による監視について、反対する力がない。

現在のビジネスと消費の文化が向かうのは、個人主義やリベラルな民主主義の歴史ではなく、中国社会の伝統に近い姿だろう。


● マルクス生誕200

PS May 1, 2018

Is Marx Still Relevant?

PETER SINGER

1949年に毛沢東の共産主義者たちが中国の内戦に勝利してから、40年後にベルリンの壁が崩壊するまで、カール・マルクスの歴史的意義は大きかった。人類の10人中4人がマルクス主義者を自称する政府の下に暮らし、多くの国でマルクス主義が左派の支配的思想になり、右派の政策はしばしばマルクス主義に対抗するために示された。

マルクスの評価は大きく損なわれた。それは、マルクス主義を標榜する体制が虐殺に関わったからだ。しかし、マルクス自身がそうした犯罪を支持した証拠はない。共産主義体制が崩壊したのは、ソ連圏や毛沢東の中国が、資本主義体制下の多くの人々が示す生活水準に等しい生活を提供できなかったからだ。

これはマルクスの共産主義像が間違っていたからではない。なぜならマルクスは共産主義社会を決して描かなかったから。マルクスの欠陥は、人間の本質に関して、である。彼はそれを「社会関係の集まり」とみなした。それゆえ、新しい社会の人々は、資本主義下の人々と非常に異なっているだろう、と。

異なる経済システムの下では人間性が異なるというのは、ヘーゲルの歴史哲学の応用だった。ヘーゲルによれば、歴史は人間精神の解放であったが、マルクスは「観念論」の説明を「唯物論」に転換した。歴史の原動力は、物質的な要求を満たすことであり、その解放とは階級闘争によって実現する。

マルクスは考えた。労働者たちが生産手段を集団的に所有するなら、「協調的な富があふれ出す。」 それは非常に豊富であるから、もはや分配問題は存在しないだろう、と。だから彼は、富の分配に関する細部を書く必要がないと考えた。

しかし、生産手段の私的所有を廃止したソ連や中国でも、人々が共有の富を信じることなく、自分たちの権力、特権、奢侈を追求した。それが明確に示したのは、皮肉なことに、私的な富の方が、集団的な富よりも豊富に生み出される、ということだった。中国経済が急速に成長したのは、毛沢東の下ではなく、私的企業を許したケ小平の下であった。

中国経済はもはやマルクスと関係ない。それでもマルクスの知的な影響は残っている。彼の歴史的唯物論は、その毒素を取り除いて、人間社会のダイナミズムを理解するわれわれの知識になっている。それは、碾き臼が封建領主をもたらし、製鉄所が資本主義社会をもたらす、という粗野ものではない。

思想、宗教、政治制度は、われわれが必要を満たす手段、その周りにわれわれが築く社会構造、それらが生み出す金融的利益から、独立したものではない。これはわざわざ書くまでもない、当たり前のことである、と思うだろう。われわれは皆、その見解を自分のものと思っているからだ。その意味で、今や、われわれすべてがマルクス主義者である。


● マクミランの保守主義

FT May 4, 2018

Tories pay for forgetting Macmillan’s courageous pragmatism

MARTIN WOLF

マクミランHarold Macmillanは、最も過小評価されているイギリス首相である。そして、今では失われた、賞賛すべき保守主義を体現していた。現代の保守党はあまりにも破壊的である。マクミランの保守主義とは、勇気あるプラグマティズムであった。

1957-63年に首相であった時期、2つの戦略的な決定を行った。保守党を説得して、帝国主義を放棄し、EEC(ヨーロッパ経済共同体)を受け入れるように変えたのだ。これが保守主義の精神だ。変化に飛び込むことなく、そうすることが必要なときは、変化を受け入れる。

1960年、マクミランは南アフリカで有名な演説をした。「アフリカ大陸には変化の風が吹いている。われわれが好むかどうかに関係なく、国民意識の成長は政治的事実である。われわれはそれを事実として受け入れ、政策もそれを考慮しなければならない。」 多くの保守派は帝国を失う現実に和解できなかった。しかし、マクミランは、それが不可避であると認めた。チャーチルなら、それを守るために不毛な戦争をしただろう。

1961年、マクミランはその一歩を踏み出した。EECへの加盟申請だ。内閣は3つの理由で俺に合意した。戦後イギリスの沈滞した経済活動を刺激する。足元に巨大な統一市場ができるとき締め出されることを防ぐ。帝国の偉大さも、産業の指導力もない、ヨーロッパ沖の島になって、政治的な周縁に追い込まれることを阻む。

マクミランの指導の下で、保守党は大胆な一歩を踏み出した。他方、労働党は深い分裂に陥った。保守党こそが、イギリスの位置に起きた根本的な変化を受け入れて、冷静かつプラグマティックに決断したのだ。

イギリスは長く、敵対的な指導者による統一ヨーロッパが現れることを阻止するために闘った。今、それは友好的で、平和な、統一ヨーロッパである。イギリスは孤立して商業帝国を築く、という世界が消滅したのだ。イギリスは、その一部となった、ヨーロッパ大陸の運命と切り離せない。1961年以来の大きな変化にもかかわらず、このことは変わらない。

彼の申請を拒否したのは、フランスのド・ゴール大統領だった。「その本性、構造、状況において、イギリスは大陸諸国と全く異なっている」、と。

マクミランは世界におけるイギリスの位置を受け入れるプラグマティストだった。しかしド・ゴールは、当時、真実を述べた以上に正しかった。Brexitで、孤立性がマクミランの常識を破った。

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The Economist April 21st 2018

What has become of the Republican Party?

Artificial intelligence: The Kamprad test

America’s Republicans: How the elephant got its Trump

Censorship: No laughing matter

Driving: One country, three systems

Refugees: Yearning to be free? Bad luck

Enoch Powell, race and migration: Fifty years down-river

Integration refugees: Making them welcome

(コメント) 難民・移民に関する記事が多く載っています。欧米の政治がこの問題によって深く変形しつつあることがわかります。政治がますます分裂状態や機能不全を示すことで、移民や難民を攻撃する声と重なるからでしょう。また、インターネットやAIを使った監視・宣伝が政治を変容することで、国民すべてが、移民のような不安を感じる世界になるかもしれません。

中国の都市は自動車が増えるのを抑制するために、くじ引きやオークションを行っている、ということです。しかし、くじ引きの「公平性」は汚職・買収を誘発することによって損なわれ、オークションの「合理性」は、貧富の格差をあからさまに示すことで憎まれます。

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IPEの想像力 5/7/18

たまたま目にした「地球タクシー」は香港でした。ドライバーは、植民地時代と比べて、今の方が「不自由」だと感じています。香港を統治する者は、大した警備も付けていなかった。すぐ隣にいて話すことができるほど。しかし、今は違う。

返還された香港が、まるで以前の植民地支配を懐かしむような、不思議な話です。それは、犯罪組織が支配する九龍城砦のスラムが「自由」で、返還後、再開発されて、昔の面影は「観光資源」に変わったようなものかもしれません。しかし、香港住民が雨傘革命の後、何かを失ったと感じるとしたら、それはやはり「自由」なのでしょう。今や、香港は中国からの投資と政治支配による「新しい植民地」です。

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マルクス生誕200年を記念して、トリーアの町には中国政府から巨大な彫像が贈られた、とニュースは伝えています。

マルクス主義が政治思想や経済学を揺さぶった時代は、もう再現されないでしょう。しかし、なぜ歴史に大きな影響を及ぼしたのか、その政治経済的条件を理解できる時期が来たわけです。

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移民・難民たちが人為的な境界線を越えて移住・避難できることは、領土や境界、私有財産に縛られた私たちの側の問題を先鋭に示す形で神経症的な論争を喚起します。すべてはそもそも私たちの社会が生み出した悪徳や悪弊なのだ、と思います。

もし誰もが自由に土地を耕し、自由に職を得て、自由に学び、自由に自分の意見を表明できるなら、この世界に移民や難民などいるでしょうか? 彼や彼女は、どこにいても人として当たり前のことを求め、働いて暮らすことを認められると思います。

難民の統合化について、The Economistが紹介します。ウガンダの南西部の村は、スーダンからの難民を受け入れ、彼らに土地を貸し与えて、耕作することを許しました。地元の長老は、それが中央政府から見放された彼らの選択だった、と語ります。新しい学校や医院ができ、道路ができることを願います。自分たちの子どもにも職場が得られるだろう、と。

もし社会の最上層の人々も、最下層の人々と、その衣食住に関して、大きな違いがないのであれば、例えば、8倍以内の差に制限されているなら、もっと自由に職場や社会的地位を変わっていけると思います。

他のヨーロッパ諸国に比べて、ドイツでは、難民の統合化が成功しています。それはドイツが労働市場を改革して、移民たち、低賃金労働者の入りやすい建設分野を解放しているからだ、と記事は指摘します。フランスのような移民が集中する郊外都市はなく、アメリカのように豊かな白人が都市中心部から逃げ出す再分離も起きていません。

Paul Collierらは、豊かな諸国がもっと難民を受け入れ、雇用するべきだ、と考えます。犯罪や異文化を恐れて、豊かな国がドアを閉ざすなら、十分な投資を得られない土地では、Paul Romerが唱えるチャーター・シティを建設するかもしれません。

自由で、平等な社会を築く。それをマルクス主義と呼ぶ時代もあったわけです。これからも、人々の理想は形を変えながら、政治的、社会的な格差や境界線、隔離や分断を乗り越える要求、連帯の運動として、世界中に現れます。

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