IPEの果樹園2018
今週のReview
5/7-12
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貧困層との闘い ・・・北朝鮮の対話と核戦争 ・・・ヨーロッパの弱さ ・・・メルケルの失敗 ・・・軍事力行使の基準 ・・・中国からの展望 ・・・タケダの巨大買収 ・・・AIを制御する ・・・AIと社会・政治革命 ・・・マルクス生誕200年 ・・・マクミランの保守主義 ・・・ワイマールの教訓 ・・・王族の結婚
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 貧困層との闘い
NYT April 26, 2018
Trump’s
War on the Poor
By
Paul Krugman
アメリカはいつも、通常は、最高の知性を持つ者たちによって統治された、というわけではなかった。長い期間を取れば、大統領たちは俗物や愚か者を採用した。しかし私は、ドナルド・トランプを取り巻く者たちが示すほどの嘲弄と悪どさを、かつて見たことがない。
彼らの悪意は広範な分野で示されている。彼らは議会とグルになって富裕層に利益をもたらした。減税も、オバマケアへの攻撃も、そうだった。それは共和党の掲げる大目標、貧困層への戦争だ。
住宅への補助金を削った。食料スタンプの要件として労働時間を大幅に増やした。共和党が支配する州では、低所得者・身体障碍者へのメディケイドについても、必要な労働時間を大幅に増やした。しかし、職場は増えていないから、ますます人々は不可欠な医療サービスも受けられない。
問題は、トランプとその仲間たちが貧困層の暮らしを苦しくしているかどうかではない。それは、言うまでもない。なぜ、貧困層と闘うのか?
金を惜しむからか? そうではない。保守派はいつもセーフティーネットの財源に文句を言うが、それはまじめな話ではない。彼らこそ巨額の減税を得て、財政に大きな穴をあけたのだ。
しかも、セーフティーネットのいくつかは成長を高めるものだ。たとえば、食料スタンプは貧困層の暮らしを役にするだけでなく、長期的に観て、その子供たちの健康状態を改善する。彼らはより生産的で、より多くの税金を支払い、公的給付を必要としなくなるだろう。
貧困対策が「貧困の罠」になっている、という主張は、右派に人気のある意見だ。しかし、食料スタンプやメディケイドの受給資格はむつかしくなって、それを得る者はほとんどいない。確かに、所得検査を要するプログラムで「貧困の罠」が生じうるが、それは多くの者が予想するよりずっと少ない。逆に、給付資格を厳格化するより、緩和することで、「貧困の罠」は緩和できる。しかし、保守派は、そのような選択肢を考慮しない。
貧困層との闘いとは何か? それは、トランプとその仲間たちが心ならずも行っていることではなく、(富裕層に)親切であるためには(貧困層に)残酷であらねばならない、と確信している。彼らは残酷でありたいのだ。
この政権と議会のある種の人々は、まさに、貧困層の苦しみに共感する能力など持っていない。しかし、貧困層との闘いは、白人の低所得層も苦しめる。彼らこそ、トランプに投票したのだ。
●
The Guardian, Fri 27 Apr 2018
India’s abuse of women is the
biggest human rights violation on Earth
Deepa
Narayan
● 北朝鮮の対話と核戦争
The
Guardian, Fri 27 Apr 2018
At this summit, North and South
Korea took a real step towards peace
Mary
Dejevsky
外交における重大な特徴は、政治的意志があれば、事態は急速に変化する、ということだ。
今日、南北、2人の指導者は、板門店で会談し、金正恩がムン・ジェインの手を取り、南へ数歩入った。この融和は続くのか?
多くの者が警告している。会談の様子は、心のこもった、歴史的な意味を持つものでも、1990年代の韓国の「太陽政策」に似ている。いったん、両国が核兵器やミサイルの問題で細部を交渉すれば、すべては失敗に終わるだろう。
しかし、関係者はすでに大きな投資を行った。金正恩は、6か月たらず前の、アメリカにミサイルで核攻撃できると自慢したのだ。しかし、非武装地帯でテレビに映った彼は、新しい、冷静な人物のイメージだ。好戦的であるより、老練で、思慮深く見える。
金正恩の劇的な権力確立は、無慈悲な初期を過ぎて、すでに終わったようだ。今や、彼には交渉する余裕がある。キムは、トランプに会うために何でも譲歩する姿勢を明確にした。アメリカ軍が韓国から出て行くことも、会談では求めないだろう。
オバマは、キムの姿勢を半分しか理解しなかった。彼はキムの攻撃的な行動を、(アメリカのステルス爆撃機を恐れた)反応と理解した。トランプは、さらに進んだ。トランプは悪質な挑発合戦を演じた。そして、あえて、キムが望むものを賭けたのだ。すなわち、承認、経緯、直接対話、である。
トランプは、自分の尊厳ある地位にもおよぶ賭けに出たが、それが地域の安全保障を揺るがしている。北朝鮮のキムは終え金兵器、日本の安倍首相はフロリダに行ってトランプと会った。
もし韓国政府が金の意図を正しく理解しているなら、われわれも楽観に賭けてみよう。
The
Guardian, Fri 27 Apr 2018
The Guardian view on inter-Korean
talks: progress – for now
Editorial
NYT
April 27, 2018
How to Understand What’s Happening
in North Korea
By
Nicholas Kristof
NYT
April 27, 2018
Kim Jong-un Sells a Peace Bridge
By
Bret Stephens
FP
APRIL 27, 2018
Pyongyang Is Playing Washington and
Seoul
BY
MICHAEL J. GREEN
これは、北朝鮮が核兵器とミサイルの発射実験に成功したとき、彼らがすでに考えていたシナリオだ。北朝鮮は、アメリカ本土を核攻撃できることを証明した。そこで、彼らの計画は新しい段階に入ったのだ。すなわち、核保有国として国際的に承認されることだ。そして、アメリカと韓国との同盟関係を破壊する。
南北会談や融和は重要ではない。北朝鮮の目標は、トランプだ。金正恩は、多くのあいまいな約束をするだろう。それらはすべて、これまでと同様、検証できない、逆転可能なものだ。
トランプには、朝鮮戦争を終わらせる歴史的な役割をプレゼントする。もちろん、その条約交渉は完成する必要もないだろう。北朝鮮は、交渉をできるだけ長引かせる。その間に、中国やロシア、韓国の仲間は、制裁や軍事演習が和平交渉を妨げる、と説得するのだ。4国による和平交渉は、強硬派の日本を排除できる。また、アメリカの日本に対する安全保障の約束を脅かす。
アメリカ大統領は、金のかかる在韓米軍を引き上げる口実として、和平協定を利用できる。北朝鮮の最終目標は、完全な核保有国としての地位である。
Bloomberg
2018年4月27日
A Nobel Prize for Trump and Kim Is
No Joke
By
Leonid Bershidsky
FT
April 28, 2018
Korean summit breaks ice but falls
short on nuclear issue
Charles
Clover and Song Jung-a in Seoul
Bloomberg
2018年4月28日
Beware the Korean Peace Trap
By
Eli Lake
北朝鮮を疑う者は間違っている。そのように見える。
北朝鮮が言う「非核化」とは、朝鮮半島と日本から米軍による核の傘を取り除くことを意味する。そのような合意は成立しない。本当に決定的な問題は、北朝鮮が核兵器の調査官を入れて透明性を高める水準、北朝鮮が核処理施設を破棄するかどうか、である。
南北で市民間の交流を行うことはあり得ない。北朝鮮には市民組織などない。そのような合意で前進したふりをするのも危険である。むしろ、北朝鮮は韓国においても思想統制や洗脳を深めるだろう。
南北間の道路や鉄道を開通させる、と合意するのは、反対する余地がないように見える。しかし、それは北の経済的なライフ・ラインを確保することになる。核問題に関する交渉の圧力を弱めるだろう。
NYT
APRIL 29, 2018
Kim Prepared to Cede Nuclear Weapons
if U.S. Pledges Not to Invade
By
CHOE SANG-HUN
FP
APRIL 30, 2018
Trump-Goes-to-Korea Is the New
Nixon-Goes-to-China
BY
LAWRENCE FREEDMAN
強硬なタカ派が思い切った妥協を決断できる、という、よくある指摘について、トランプが金正恩と会談して成功する、と考える者がいるかもしれない。ニクソン大統領が中国との国交を正常化したように。あるいは、ベギンとサダト。レーガンとゴルバチョフ。
しかし、真実を含むとはいえ、これは過度の単純化である。1970年代のニクソンと毛沢東の行動は、地政学によって、より説得的な理解が得られる。
FP
APRIL 30, 2018
Optimism About Korea Will Kill Us
All
BY
JEFFREY LEWIS
キムの約束は、実際には意味がない。核実験場はすでに使用できないものだ。核実験を行わない、という約束は、すでに彼らが目的を達成したからだ。南北首脳会談の声明は、非核化を具体的な交渉から外して、いつの日か、核兵器がもはや必要なくなるとき、についてあいまいな抱負を述べただけである。
そのときまで、北朝鮮は多くのもっと穏やかな一連の手続きに合意するだろう。それらは良いことである。アメリカの安全保障を改善する。しかし、キムは事実上、北朝鮮が核保有国であるという承認を得るのである。このことは、アメリカ外交がこれまで数十年間も求めていたことを完全に放棄することである。われわれは、核保有した北朝鮮、という事実を受け入れるのだ。
しかし、それが大幅な後退であることから、われわれはそれを正直に認めないだろう。トランプたちはこれを北朝鮮の武装解除に向かう過程として示す。しかし、北朝鮮の指導者たちは決してそのようなことを言ったことがない。驚くことに、この交渉をジョン・ボルトンが応援している。
ボルトンの発言の理由を知ることに意味がある。彼は、北朝鮮が核兵器を完全に放棄する、という希望を広めている。しかも、数か月で。ボルトンはこれを、何度も、「リビア方式」と呼んだ。韓国政府関係者も、トランプ大統領は「遅くとも2021年の任期終了までに、完全な非核化を実現する明確な時間表」を得られないなら、キムに合わないだろう、と述べている。
これは狂気の沙汰である。キムがそのようなことに合意する意図を持つはずがない。また、この数年、北朝鮮に関して書いたものすべてが示すように、ボルトンもそのような合意ができると信じるはずがない。ボルトンが突如としてナイーブになったのではない。彼は天使のふりをして、大統領の期待を高めているのだ。ボルトンは外交に反対して潰そうとせずに、善意の完璧な破壊者を創ろうとしている。リビア・スタイルの降伏を予測することで、キムが提示するもっとはるかに穏やかな妥協案を醜いものに見せるのだ。
これは非常に冷笑的な、そして、危険なゲームである。キムが核兵器を手放さないと分かったとき、何が起きるのか? トランプの性格を考えれば、彼はポンペオを責めて、鍵をボルトンに渡すだろう。北朝鮮の核兵器を廃棄できなければ、そのときはすべての国、すべての人々に苦しい時間が来る、とトランプは警告した。
多数の韓国人、日本人、アメリカ人が核戦争のリスクに向き合う。
PS
May 1, 2018
What to Expect From the Trump-Kim
Summit
CHRISTOPHER
R. HILL
YaleGlobal,
Tuesday, May 1, 2018
Korea Summit Dodges Denuclearization
Shim
Jae Hoon
FP
MAY 2, 2018
Korea’s Nuclear Nightmare Hasn’t
Gone Away
BY
JAMES M. ACTON
● ヨーロッパの弱さ
SPIEGEL ONLINE 04/27/2018
From Paris with Love
Inside Macron's Bromance with Trump
By
Julia Amalia Heyer
FT April 28, 2018
Flattering Donald Trump reaps scant
reward for Macron and Merkel
JEREMY
SHAPIRO
フランスのマクロンは、あからさまにトランプの歓心を買ってきた。ドイツのメルケルは、同じ方針だが、トランプのような男には、より難しかった。しかし、2人は協力して、アメリカとの関係を重視し、トランプの政策を変えたいと関係構築を願った。
これは効果のない戦略だ。アメリカの政官界でトランプに取り入った者が、その後、解任された。また、彼にお世辞を述べることは、自分たちを弱くしてしまい、交渉を難しくする。
これまでも、ヨーロッパの指導者たちはアメリカ大統領を歓待した。それは安全保障における依存を意識するからだ。しかし、NATOの協力関係を維持することはむつかしくなっている。ヨーロッパは共通通貨を持ち、共通の安全保障を持つことだ。友達同士の記念撮影など、やめるべきだ。
FT April 28, 2018
May, Macron and lessons of Trump
diplomacy
FT April 30, 2018
Donald Trump’s trade war with Europe
looks inevitable
WOLFGANG
MÜNCHAU
Bloomberg 2018年5月1日
Trump May Go Too Far in Alienating
Europe
By
Leonid Bershidsky
FP MAY 2, 2018
Europe Has No Clue How to Handle an
American Bully
BY
STEPHEN M. WALT
もしトランプがイラン核合意を破棄すれば、それは単にトランプの典型的な大失策であるとか、イスラエル・ロビーとサウジアラビア、湾岸アラブ諸国の強硬派がアメリカ外交に対する影響力を示す証拠であるとともに、ヨーロッパの戦略的な弱さを示す新しい兆候である。ヨーロッパの指導者たちは、集団として、アメリカに対抗することも、重要な問題についてアメリカの考えを変えることもできない。
イラン核合意、もしくは正式名The Joint Comprehensive Plan of
Actionは、ヨーロッパ諸国、ロシア、中国によって支持されている、その理由は、彼らがナイーブだからではない。それに代わる合意がもっと悪いものだからであり、この合意によりイラン国内の強硬派が抑えられているからだ。もし包囲を破棄すれば、金正恩が示したように、イランも核武装に向かい、それを阻止するため、アメリカは新しい中東の戦争を始めるだろう。
ところが、トランプの考えを変えるためにフランスのマクロンが訪米し、ドイツのメルケルもそれに数日後れてトランプと会談し、イギリスのメイ首相も電話会談した、その姿勢は、トランプにお世辞を並べて、ご機嫌取りに終始することだった。
その結果は逆である。トランプはイラン核合意を破棄することに、ますます自信を強めただろう。
● メルケルの失敗
SPIEGEL
ONLINE 04/27/2018
The Macron Dilemma
Why Merkel Must Act on Paris'
Eurozone Reform Proposals
A
DER SPIEGEL Editorial by Michael Sauga
新しい政権の下で、独仏の協力がEU改革を推進する、という希望はすでに失われている。
メルケル首相は、いつも、危険な選択をするより、何も選択しないことを良いとみなしてきた。彼女はしばしばそれで成功した。しかし、こんどは間違いだ。決定的な改革の機会が失われるからだ。
次のユーロ危機は避けられず、共通通貨は生き残れないだろう。
FP APRIL 27, 2018
The Unbearable Complacency of Angela
Merkel
BY
PHILIPPE LEGRAIN
今、ドイツはうまくいっているように見える。経済は好調で、失業率は記録的な低さだ。インフレもほとんどない。財政も健全だ。ユーロ圏の危機と難民危機は去った。メルケル首相はようやく連立政権を組んで、ワシントンを訪問した。
しかし、ドイツは思った以上に、はるかに脆弱である。ヨーロッパの輸出大国であるが、それは開放された市場と核の傘の両方で、長い間、アメリカにただ乗りしてきた。どちらも、ワシントンの醜い相手、ドナルド・トランプ大統領によって脅されている。リベラルな国際秩序が崩壊すれば、ドイツはますます将来の繁栄と安全保障をEUに依存しなければならない。
しかしメルケルは、ユーロ圏とEUを長期的に強化するため、短期的な譲歩をする気がない。これは危険な自己満足である。ヨーロッパにとって潜在的な悲劇をもたらす。
ドイツの成長モデルは2つの要素に大きく頼っている。1つは、工業製品、特に、自動車の追加的な改善である。もう1つは、ドイツが自動車生産に特化し、その黒字を、他国が赤字を出して吸収してくれることだ。その両方が危なくなっている。デジタル化が製造業を混乱させているが、ドイツに自動車産業は、電気自動車や自動運転で中国やアメリカに遅れている。「クリーン」なディーゼル自動車は、今や、データ改ざんの恥辱に汚れている。
アメリカはますますドイツの黒字を吸収しなくなるだろう。トランプは、ドイツやEUの対米貿易黒字を許さない。メルケルは、ヨーロッパの他の指導者たちに、経済改革の「宿題をやってくるよう」説くのが好きだ。しかし、彼女自身がドイツの成長を高める改革を10年以上も実行しなかった。投資不足で、橋や港湾が崩れ、大学は資金不足で、インターネットのスピードも驚くほど遅い。
輸出に過度に依存していた中国などの諸国は、金融危機後、黒字を減らしてきた。しかしドイツの経常収支黒字は、3100億ドルで世界最大、GDPの8%に達する。危険なまでに外国の需要に頼っているのだ。
ドイツは、経済面だけでなく、安全保障面でも、ますます脆弱になっている。プーチン大統領の威信回復運動はドイツの戸口にまで迫っている。重武装した飛び地、カリーニングラードは、ベルリンから、たった373マイルだ。他方、トランプは、アメリカによる核抑止の安全保障を見直すかもしれない。ドイツは何十年も軍備に十分な投資をしなかった。その防衛予算はGDPの1.2%でしかなく、NATOの掲げる2%の負担を大きく割り込んでいる。たとえドイツの歴史的な躊躇を考慮しても、防衛費を惜しむ姿勢は独善的で、ドイツの、そしてヨーロッパの核抑止の考えを拒むことも間違いだ。
ドイツにとって、その繁栄と政治的アイデンティティー、世界に占める地位を決めるEUとユーロ圏とを強化するために、あらゆることをすべきである。Brexitや、イタリアにおけるポピュリストの勝利は、ユーロの欠陥から政治が混乱し、崩壊に至る危険があることを再認識させた。プーチンに近い、極左や極右の政党が、ヨーロッパ各地で支持を広げている。
幸い、フランスの有権者たちはエマニュエル・マクロンを選んだ。彼はこれまでで最も親ドイツ、親EUの大統領だ。彼は、その公約である(ドイツの要求に合致する)、労働法の緩和を含む、経済改革を実施する決意だ。しかし、ユーロ改革についてのマクロンの提案に、メルケルが示すものは、否定 “Nein” だけだ。
ドイツはこの例外的な好機を逃さず、事態を改善するべきだ。ヨーロッパ経済は回復を続け、来年のEU選挙を前に、政治的な推進力を得られる。嵐が来てからより、太陽が輝く間に、改革するべきだ。嵐は地平線の向こうに迫っているのだから。
FT
April 30, 2018
The strange isolation of Emmanuel
Macron
GIDEON
RACHMAN
● 政治と経済改革
PS
Apr 27, 2018
Overcoming Democratic Myopia
DAMBISA MOYO
経済改革を進めるのはむつかしい。それは、政治家が短期的な政策しか考えていないからだ。景気循環よりも、政治家の任期は短い。それは民主主義の機能を低下させている。
ある調査によれば、G20の政治指導者たちの在任期間は平均で3.7年しかなく、記録的に短くなっている(1946年には6年だった)。また、財政赤字が問題を悪化させている。政府は、教育やインフラになかなか投資できない。
長期的思考を促すために、EUのような政策基準を設け、政治家の任期を延長し、候補者に十分な経験と知識を求めることだろう。
● 軍事力行使の基準
PS Apr 27, 2018
When May States Use Force?
GARETH
EVANS
アメリカ、イギリス、フランスが、最近、シリアの軍事施設に加えたミサイルによる空爆は、政府の化学兵器使用に対する反応であった。それは、主権国家に対する軍事力の行使は、いつ正当化できるか、という問題を提起した。
個別のケースで多くの論争が常に起きるだろうが、政策担当者やその顧問たちの間では、軍事力の適切な行使に関して、国際的な合意が存在する。この合意の範囲と限界を明確にすることで、シリアのケースや将来の論争に向けた基礎を示せるだろう。
国連安保理の承認を得ない、1999年のNATOによるコソボへの軍事介入以来、論争は少なくとも3点を国際合意とした。第1に、合法性と正当性は違う、ということだ。テクニカルには違法であっても、正当な軍事力の行使はある。また、世界が政党とみなさないような、テクニカルには合法のケースもある。
第2に、合法性は国連憲章によって、それのみが、決定できる。第3に、正当性のための慎重な基準がある。それは国際条約に成文化されたルールではないが、広範に、非公式な承認が得られている。
合法性とは、国連憲章が定める2つのケースしか認められない。1つは、自衛のための軍事力行使である。もう1つは、安保理の承認である。攻撃が迫っているという圧倒的な証拠があれば、先制攻撃も正当化される。しかし、予防的な攻撃は認められない。
軍事的な強制が正当化されるケースについて、国際的な論争には、正当性の5つの基準が広く認められる。すなわち、1.脅威の深刻さ。2.軍事力行使の目的の正当性。3.他のすべての選択肢を尽くした、最後の手段として。4.驚異の大きさに比例的な軍事力行使として。5.事態を改善すると期待される場合のみ。
こうした基準が、時とともに、安保理や他の政策決定者に、体系的に適用されることが望ましい。
2011年のリビアへの軍事介入は、その目標が反政府の市民を虐殺から守ることから、カダフィ体制の転換に変わったことで論争となった。逆に、2003-2004年、ダルフールの虐殺には軍事介入しなかったことが論争となった。
また、シエラレオネやコートジボワールには人道に反する罪を理由に介入したが、チェチェンや、チベット、新疆には軍事介入していない。大国に対する軍事介入は大規模な戦争になる危険がある。それは、介入によって抑えることができると仮定される結果よりも、はるかに大きな犠牲者を生むだろう。
それは、害悪のバランスをリアリスティックに計算していることになる。1999年に東チモールで暴力が広がったときも、インドネシアに対する軍事介入は考えられなかった。強い国際圧力を受けて、インドネシア政府が受け入れを認めてから、外部の平和維持部隊が入った。また、1991年のイラク侵攻は、クウェートを解放するために、国連安保理が承認した。しかし、2003年はそうではなかった。
テクニカルには合法的な軍事力行使も、正当でないという論争が続くこともある。シリアについてもそうだ。合法性と正当性とは、異なる方向の論争であるから、観方によって対立し、安保理では拒否権が行使される。
このジレンマを解消する単純な答えはない。しかし、合法性のない軍事力の行使については、その正当性が最も厳しく問われるのであり、刑事裁判における「情状酌量の嘆願」に似ている。たとえば、後部座席で妻が出産してしまった場合、運転する夫は法を無視するとしても許容されるべきかもしれない、と。それは非常に特別なケースであり、道義性により支持され、習慣的に行われることはあり得ない。
アメリカ、イギリス、フランスがシリアを爆撃したことは、アサド体制の広める恐怖に対する比例的な対抗策だった。しかし、化学兵器使用の国際調査が終わってから、軍事力行使を決めた方が、グローバルな支持を広げただろう。
● ウィンドラッシュ
The Guardian, Sun 29 Apr 2018
Britain’s hostile environment has
been a century in the making
Nadifa
Mohamed
The Guardian, Mon 30 Apr 2018
The Windrush scandal shows Britain
desperately needs a migration museum
Sophie
Henderson
● 関税同盟も要らない
FT April 29, 2018
Britain must leave the customs union
— and not look back
Anne-Marie
Trevelyan
● 中国からの展望
FT April 29, 2018
Xi Jinping’s economic dream team
must be allowed to succeed
ESWAR
PRASAD
習近平は、2期目のスローガンを、市場開放と改革、経済自由化として示した。共産党の全国大会で権力を確立した習近平は、有能かつ改革志向の、経済のドリーム・チームを集めた。金融政策、為替レート、金融部門の改革だ。
中国は、その成長を持続するために、金融部門の累積債務を処理しなければならない。銀行のインセンティブを変えることだ。国有企業の改革を進め、過剰生産設備に融資するより、サービス経済に向けた中小企業への融資をもっと増やすべきだ。
社会・政治的安定性を維持するための改革ではなく、もっと大胆になるべきだ。
FT May 1, 2018
A US trade war could propel China to
hasten reforms at home
KEYU
JIN
FT May 1, 2018
Small regional banks are weak links
in China’s financial system
Brandon
Emmerich and Alex Campbell
FT May 2, 2018
How the Beijing elite sees the world
MARTIN
WOLF
精華大学が主催した外国の学者、ジャーナリストと、政府関係者との対話に参加した。それはこの25年間の中国訪問で、最も率直なものだった。その対話は7つの命題にまとめられる。
1.中国は非常に分割された社会であり、中央の強いルールが必要だ。中国共産党がそれを与えている。
2.西側モデルは信用を失った。中国特有のモデルを発展させることが正しい。
3.中国は世界支配を望まない。国内問題の方が大きく、重要である。
4.中国はアメリカに攻撃されている。
5.アメリカの目標は矛盾している。一貫性がない。
6.中国はこの攻撃に負けない。アメリカ企業は中国経済に深く関与し、依存している。
7.中国はアメリカのグローバルな軍事的支配に挑戦しないが、西太平洋は別である。今年は、両国の関係が協力に向かうか、対立に向かうか、試す年になる。朝鮮半島では協力が、貿易紛争では対立が示されている。
● ホモサピエンス以外
FT April 29, 2018
How do we know that humans are
earth’s first advanced race?
ANJANA
AHUJA
ホモサピエンスが沼地に最初の足跡を残したのは、まだ新しい。人類はおよそ30万年前に現れ、その工業力の存在は300年にも満たない。太陽の周りをまわるこの惑星の、われわれは遅れてきた存在である。これほどの時間があったのだから、われわれの前に文明が発展して、その後、何位も痕跡を残さないまま消滅したのかもしれない、と考える者がいる。
恐竜の存在も、約2億5000万年前に現れて、6500万年前に絶滅した。わずか数千種類の種族であった。ホモサピエンスが、突然、消滅したら、この短い、われわれの種族と文明が、わずか100万年後の化石にも残っていないかもしれない。
Gavin Schmidt and Adam Frankが、その考えをthe International Journal of
Astrobiologyに発表し、彼らの仮説が研究されている。
● タケダの巨大買収
FT April 30, 2018
Why Japan Inc is gambling on M&A
growth
Kana
Inagaki and Leo Lewis in Tokyo
26億ドルでブリジストンがアメリカのタイヤ・メーカーFirestoneを買収した。日本の経済が変わった、とわかった。それから30年経って、25倍の規模の企業買収が起きた。タケダ薬品がShireに買収を提案したのだ。
日本企業は海外市場に向かう。それは高齢化によって国内市場が失われていくことを知っているからだ。経営幹部は買収を決断する。
経営に関する法改正で、株主の力が強まった。経営者たちは利益を、高い株価収益率を求められ、説明しなければならない。経営者にも、新しい世代が育っている。また、銀行部門は利益の確保があまりにも難しい。M6Aへの融資は非常に魅力的な機会である。
アベノミクスや日銀の資金供給によって、これが最後の拡大のチャンスかもしれない。しかし、それ自体、モラル・ハザードを生む懸念もある。
FT May 1, 2018
Japan’s extreme manhunt reveals
police have time on their hands
LEO
LEWIS
FT May 2, 2018
Japan’s regulators battle over more
than just a banking merger
LEO
LEWIS
FT May 3, 2018
Summit offers chance for closer
Japan-China economic ties
LEO
LEWIS
● AIによる独占を制御する
FT April 30, 2018
Europe bets its data law will lead
to tech supremacy
JOHN
THORNHILL
NYT May 1, 2018
The Real Villain Behind Our New
Gilded Age
By
Eric Posner and Glen Weyl
かつてコメディアンのChris Rockが言った。「もし貧しい人たちが、富裕層がどれほど豊かであるかを知ったら、暴動が起きるだろう。」 しかし、世界中にポピュリストの叛乱が起きても、それは暴動ではないだろう。彼らはその政府に幻滅し、しかも、リベラルな民主主義に幻滅しているからだ。
過去20年間、アメリカの成長率は20世紀半ばの半分に落ちた。最上位1%の富裕層が所得に占める割合は1970年代からほぼ倍増した。他方、すべての労働者が手にする所得の割合は10%ほど減少した。
これがわれわれの新しい金ぴか時代である。市場の力やグローバリゼーションのせいではない。真の犯人は、旧金ぴか時代を生きた人々におなじみのものだ。それは、市場支配力、独占である。
当時、大独占資本は、ロックフェラーのスタンダード・オイル、砂糖トラスト、金融資本、鉄道資本であったが、その力によって政治や経済を腐敗させた。市場支配力が成長を低下させ、不平等を拡大する、と知って、指導者たちは反トラストと労働者の保護を法律にした。
現代、市場支配力は新しい形を取っているが、解決策は同じだ。21世紀の反トラスト法、労働者保護法を整備することである。
ロナルド・レーガンとマーガレット・サッチャーは「サプライサイド経済学」の指導者であったが、その基本的前提は間違いだった。それは、政府が契約と所有権を守ることに専念すれば、市場が最もうまく作用する、というものだ。200年前に、アダム・スミスがすでに書いていた。利益を得る最も容易な方法は、コストを下げるのでも、革新するのでもなく、共謀して競争しないことだ。市場支配力によって、価格を引き上げ、賃金を下げる。
確かにそれは、今では違法である。しかし、新しい形の市場支配力、独占利潤が存在する。
第1に、人々は、1970年代から、BlackRockやVanguardのような機関投資家に資金を委ねた。それは次第に市場競争を失わせ、価格引き上げと投資の抑制による利潤をもたらした。
第2に、企業は市場支配力を労働者に対して行使するようになった。労働者たちは他に雇用主を見いだせず、低賃金で働くか、失業して生活保護に頼った。
第3に、インターネットの普及で、ハイテク大企業、Google, Facebookなどは利用者のネットワークにおける巨大な支配力を得た。利用データをほぼ独占し、法外な利益を得ている。
1世紀前には、独占企業の分割、カルテルの禁止、企業買収の阻止が焦点だった。新しいアプローチが必要だ。機関投資家を再編する。労働市場に対する支配力を考慮する。ハイテクの独占に警戒し、革新的企業の買収を阻止する。
そして、人々がもっと独占の危険を意識する必要がある。
FT May 1, 2018
The AI arms race: China and US
compete to dominate big data
Louise
Lucas in Hangzhou and Richard Waters in San Francisco
NYT May 2, 2018
Why Silicon Valley Must Go to War
By
Christopher M. Kirchhoff
(後半へ続く)