IPEの果樹園2018
今週のReview
4/30-5/5
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トランプと金正恩 ・・・工場労働者 ・・・IT技術革新による失業 ・・・マクロンとデモ隊 ・・・ズッカーバーグの議会証言 ・・・アメリカ政府の貿易論 ・・・インドの女性差別問題 ・・・英王室に赤ちゃん誕生 ・・・民主主義と成長
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● トランプと金正恩
Bloomberg
2018年4月20日
Trump
Is Not Nixon and North Korea Is Not China
By Eli Lake
トランプによる米朝会談の提案受け入れは、1972年の米中会談を再現するものか?
比較するのも理解できるが、これらは全く異なる。確かに、共産主義を嫌うアメリカの指導者が公算主義国家との国交を開くかもしれない会談である。当時、ニクソン大統領を北京で迎えた毛沢東も、深刻な国際的孤立に苦しんでいた。マオ(毛沢東)のように、キムも過酷な集団主義を採用し、国民に悲惨さ、飢餓、死を強いている。
それは似ているが、会談の重要な性格は、全く異なる地政学的条件が決めている。マオの中国は、当時、ソ連との関係が悪化していた。その3年前には、国境をめぐる紛争で、危うく戦争になりかけた。米中の緊張緩和は、それによってソ連をアメリカの関心ある問題で交渉の席に就ける圧力となるかもしれない、とアメリカは考えていた。
中国も同じだった。アメリカと制限付きながら協力を深めれば、それがソ連との関係で均衡を回復する有益な手段になる、と考えたのだ。
キムが直面している問題はまるで違う。まず、キムの支配する国は小国で、貿易やエネルギーを通じて、ほとんど中国だけに依存している。ニクソンの時代、中国とソ連の関係は、2つの大国間関係であった。中国はソ連の従属国家ではなかった。マオは敵国アメリカとの友好を示すことで、共通の敵であるソ連に有利に対処できたが、キムにはそのような余地はない。
キムがアメリカにこうした態度を取ることは非常に困難だ。北朝鮮はヤドカリ国家である。では、キムの今回の行動を説明する論理は何か? なぜ会談を提案したのか?
フーバー研究所のMichael Auslinによれば、2つの理由が考えられる。1つは、不安。もう1つは、自信だ。
キムは、トランプが何をするか、どこまで本気か、わからないことを恐れただろう。アメリカが指導する「最大限の圧力」というキャンペーンは、北朝鮮のハード・カレンシー外貨準備を狙ったものだ。その決定的な限界はまだ突破されていないが、キムは近い将来に限界に達する、と理解したのだ。
他方で、キムはトランプが非核化にこだわっていることを知っている。今や、核実験と弾道ミサイル実験で、キムはアメリカを破壊する能力を示したのだ。キムは、力を持った立場でアメリカと交渉できる、と考えているだろう。過去の交渉にはなかったことだ。交渉を通じて、キムは核保有国としての承認を求めるだろう。
この首脳会談は、ニクソンと毛沢東の会談と同じものにはならない。その後、権威主義的で、近隣諸国を脅かす国家として、中国は強大になった。市場開放、国交正常化による50年間の経済近代化に成功したからだ。
北朝鮮にその可能性はない。会談後も、キムの隷属国家は、革命的変化を回避し、人民が苦しむだろう。
FT April 25, 2018
Kim Jong Un’s new diplomacy: miracle or a mirage?
ROULA KHALAF
なぜこれほど急激に金正恩はそのイメージを変えたのか? 世界最悪の指導者であり、最悪の支配体制であることを宣伝し続けていた北朝鮮は、にわかにソフトなイメージと信頼できる政治指導者を演じている。
それはトランプの威嚇と交渉能力を認めたからか? ホワイトハウスはそう思うのかもしれない。しかし、北朝鮮の歴史を見れば、そうではない。核実験も、米朝会談も、北の基本的な生存戦略である。大きな手を、大胆に実行する。
北の目標は、トランプの自己顕示欲と交渉姿勢を利用して、一時的な成果を与えながら、自分たちを核保有国として認めさせることだ。
● 工場労働者
Bloomberg
2018年4月21日
Billionaire
Bezos and the Warehouse Workers
By Barry Ritholtz
Amazon労働者の給与のメディアンは$28,446である。Amazonは高賃金ハイテク企業なのか? あるいは、低賃金の小売りチェーンなのか?
他方で、Bezosの給与は$81,840であり、その他、セキュリティーや旅費を含めて、支払い額は168万ドルである。その額と、被雇用者給与のメディアンとの対比は、59対1である。他企業のCEOに比べて、彼の給与額は大きくない。Bezosは、推定額1290億ドルという、世界1の資産家であるが、それは主にAmazonの株式保有である。企業内のトップと被雇用者の保有資産額を対比する必要がある。しかし、それは容易に計測できない。1000億対1でも、ありうるだろう。
Amazonはハイテク企業と、旧来の製品販売業と、両方の性格を持っている。倉庫や店舗、配送が必要なのだ。最新技術とロジスティクスに依拠するが、膨大な物流設備と人員にも投資し続けている。昨年、Amazonの雇用者数は50万人を超えた。Alphabet
Inc.'s (Google) は80,000人、Apple Inc.が100,000人、Facebook. Inc.が 25,000人である。
Appleの平均給与は$100,733であった。そこにはAppleストアの販売員を含む。しかし、その製品の主な生産委託先である台湾企業FoxConn Technology Co.の労働者などは含まない。Googleには販売のための労働者はおらず、被雇用者の平均給与は$190,854。 Facebookは $203,894である。
NYT
APRIL 21, 2018
The
Real Cost of Cheap Shirts
Photographs by Daniel Rodrigues
Text by Cláudia Brandão
Mosammot Bulbuliはバングラデシュの数百万人の労働者の1人である。彼らが世界に衣服を供給している。
彼女は、5年前に崩落したRana Plazaで働いていた労働者の1人でもある。1100人以上が死亡し、2000人以上が負傷した事故だ。
数週間後、世界の主要リテイラーは、労働安全基準に関する合意を、地方の組合と結んだ。しかし、それは工場の中だけだ。工場の外、Savar工業地区にも、グローバルなサプライチェーンには深刻な環境汚染が生じている。Savarの湿地帯は有毒な廃棄物に埋まっている。運河や通りには蚊が繁殖し、病気が広がっている。
工場では、しばしば、法定年齢以下の子供たちが働いている。雇用主は、もし彼らを使用できないなら、シャツの値段を上げねばならない、という。
● IT技術革新による失業
PS
Apr 20, 2018
Who
Cares About Big Tech’s Displaced Workers?
MORDECAI KURZ
IT技術革新は、企業に独占的な利潤をもたらし、不当に抑圧された労働条件を広めている。19世紀末にスタンダード・オイルを分割したように、公共政策がこれを是正する必要がある。
新しい税制、規制、特許、労働市場が求められる。しかし、左派寄りのシリコンバレーでも、大企業の人々はリバタリアンの思想に深く染まっており、そのような公共政策を否定している。「創造的破壊」は神が彼らに与えた権利である。政府は彼らに課税すべきでないし、技術革新の敗者に補償すべきでもない、と。
しかし、現在の労働条件は、まさに政治的・経済的に観て、持続可能ではない。
IT技術は企業の独占力を高めてきた。企業が技術革新によって独占を形成できたのは、特許や知的財産が保障されているからだ。これは非合法な共謀や価格のつり上げと区別しなければならない。しかし、独占企業の利潤は増大し、株価を上昇させた。IT企業は、アメリカの政治と経済を変貌させたのだ。
技術の変化と国際貿易によって生じた人的なコストは、特に、大学卒業資格のない、労働者の60%が負ったコストが大きな関心を集めている。アメリカの労働文化や家族生活に深刻な影響を及ぼした。健康状態の悪化は深刻だ。経営者は、特に下層の労働者から権限を奪うような方針を採用してきた。ITの利用で増大する短期契約労働者がそうだ。IT技術革新は、労働者の尊厳や安定雇用ではなく、絶望をもたらしている。
理想的には、技術革新による利益を、課税によって補償政策のための財源・基金とするべきである。しかし、こうした利益の確定は困難であり、同時に、消費者はそうした革新から多くの利益を受けている。
現実的な解決策は、企業が支払う配当やキャピタルゲインへの課税である。それらは独占利潤から生じているからだ。累進的な所得税やキャピタルゲイン税が望ましい。また、補償政策で労働文化は変わらない。職場のストレスを解消するさまざまな制度が重要だ。新しい、民間部門の労働組合を促進する議論が必要だ。
● マクロンとデモ隊
NYT
April 23, 2018
Macron
Meets His Moment of Truth
By Sylvie Kauffmann
人々は1968年5月の革命を思い出している。そのとき抗議活動はソルボンヌ大学の1人の学生から始まった。政府と学生との衝突に、労働者たちが加わった。数週間で、ゼネストがフランス全土をマヒさせ、ド・ゴール将軍に抗議した。将軍はその打撃から回復することなく、翌年の国民投票で敗北し、引退した。
今も、フランスには多くの不満があふれている。鉄道労働者たち、エアフランスのパイロットたち、弁護士たち、病院や介護ホームのスタッフたち、年金生活者たち、エコロジストたち、自動車を運転する人たち。そして、もちろん大学の学生たちだ。
マクロンはテレビ・インタビューで、かつて1968年の革命に参加したジャーナリストから質問を受けた。「あなたは1968年の弾圧を再現したいのか?」 大統領はその喩えを否定した。今は「闘争が集結している」のではなく、「多くの不満が凝固している。」
それは正しい。2018年は1968年ではない。
1968年5月、フランスは5%の成長を実現し、国民は若かった。学生は少なく、多くがブルジョアの子どもたちであった。工場労働者がもっと多く、労働組合が強かった。最大の組合C.G.T.は共産党と緊密な関係にあり、投票の20%を支配した。5月革命は、二十歳のベビーブーマーたちが、第2次世界対戦とアルジェリア戦争で形成された、ド・ゴール主義者のエスタブリシュメント、その保守的な権力に対抗する革命であった。彼らの自由に向けた爆発は、レイモン・アロンの言う、「情緒的錯覚」であった。
21世紀のフランスは、一層、深くヨーロッパに統合され、他の18か国と通貨を共有している。世界経済危機からようやく抜け出したが、グローバリゼーションが職場を破壊し、労働組合は弱体で、分断されている。失業率は9%に達し、高等教育機関は民主化され、移民が社会構造を変えた。共産党や社会党、そのイデオロギーは壊滅した。2017年の大統領選挙第1回投票で、票の半数は、ポピュリスト、反エスタブリシュメントの候補者たちが得た。フランス社会がこれほど分断されたことはかつてなかった。
マクロンは富裕層への増税を中止したが、「富裕層の大統領」と呼ばれることを嫌う。「富裕層は大統領を必要としない。彼らは自分でうまく管理する」と反論した。自分は「国民すべてのための大統領」である、と。彼の改革に反対する怒りの声を聴いて、彼は述べた。「フランスという家の土台が崩れている。これを再建する必要がある。」
事態は50年前よりも複雑だ。2018年のストライキでは、福祉国家の黄金時代が終わり、規制緩和を脅威とみなし、ド・ゴールを聖なる偶像とする。マクロンは彼らに、世界が変わったと告げるが、彼がエコロジストや学生を扱うやり方は、ド・ゴール主義の再現だ。5月革命の著名な学生指導者の1人が、今はマクロンの支持者である。
マクロンが改革に失敗すれば、その代償は非常に大きい。
● ズッカーバーグの議会証言
FT
April 23, 2018
Regulating
Facebook merely nips at the edge of a bigger problem
RANA FOROOHAR
ズッカーバーグMark Zuckerbergの議会証言が注目を集めたが、Faangs(Facebook, Amazon,
Apple, Netflix and Google)の規制をめぐる議論は矮小化されている。
アメリカの政治家たちがソーシャル・メディアのプラットフォームに、政治的な広告のソースを公開し、セックスのオンライン仲介に責任を地球することは良いことだろう。しかし、ハイテク大企業の及ぼす経済・政治・社会問題について解決できるのか?
ヨーロッパのプライヴァシー規制General Data
Protection Regulationはさらに先を行くが、それでも巨大な氷山の一角でしかない。独占問題、新しい税制や教育システム、リベラルな民主主義の信用低下、などは、単なる技術問題ではなく、生存の危機である。
理想的な世界であれば、物質的な経済から非物質的な経済への移行は、デジタル所有権、取引規制、市民的自由、などの根本的な再考に向かうだろう。政策決定者たちは、広範な分野で専門家たちとの率直な対話を経て、デジタル経済の成長をもたらす枠組みをもたらす規律を描くだろう。
しかし、現実の世界では、ハイテク大企業に向けた大衆の怒りと、得点を稼ごうとする政治家たちとの思惑で、2008年の金融危機後に見たような規制に向かうだろう。
迷路と既得権が議会の通路を埋めて、新しい法律の複雑なシチューが出来上がる。
あらゆる分野で企業はAIに大きな期待を寄せているが、その性能を決めるデータはFaangsが握っている。データが新しい石油となっているとき、ヨーロッパの規制は大企業に対する市民のデータ権利を守るが、同時に、それはプライヴァシーと経済競争力との難しいバランスに直面する。
われわれがその正しいバランスを知るには、まだ時間がかかるだろう。
● アメリカ政府の貿易論
FT
April 23, 2018
Targeting
specific trade deficits is a game of whack-a-mole
MAURICE OBSTFELD
アメリカの指導者はその貿易赤字を減らすよう求めている。しかし、貿易赤字を損失と考えること、貿易黒字を利益と同一視することは、間違いだ。
たとえば、貿易赤字は、成長をもたらす長期投資の結果であるかもしれない。また、貿易黒字は利益ではない。特に、2国間で赤字(黒字)を減らすよう求めることは、アメリカの国内の所得を超える支出が変わらなければ、さらに貿易赤字を他国との関係で生み出し、経済効率を悪化させるだけである。
多国間のアプローチ、ルールに依拠した紛争処理が望ましい。
● インドの女性差別問題
FT
April 23, 2018
Indian
women pay the price as politicians stoke communal hate
AMY KAZMIN
2012年12月、20歳の学生がデリーのバスでギャングたちにレイプされた。内臓の傷に苦しんだ末、彼女は2週間後に死んだ。事件後、インド人は悲しみと怒りによって団結し、公共の場所で女性の安全が確保できていないことに強く抗議した。政府は強姦罪を厳格化した。
今年、インドは再び凶悪な強姦事件に震撼した。その犠牲者は、北部Jammu地方、半遊牧部族出身の、8歳の少女である。警察によれば、彼女は麻薬を打たれ、1週間近くも、寺院で何度もレイプされ、その後、殺害されて森に棄てられた。
この犯罪は、宗教やコミュニティーによって、インド社会を分断してしまった。少女はイスラム教徒で、強姦と殺人を問われている者たちはヒンズー教徒である。警察は、この襲撃には、イスラム教徒や遊牧民をヒンズー地区から追い出す、という意図があった、と言う。地元のヒンズー教徒たちは、告発されている男たちが「はめられた」と擁護している。
与党BJPの指導者たちには、こうした事件を、宗教対立として選挙に利用する者がいる。女性の安全、社会進出を唱えて選挙戦に勝利したモディは、今、首相となっている。彼は女性のために何をしているのか?
● 英王室に赤ちゃん誕生
FP
APRIL 24, 2018
The
Royal Baby Is Lucky He Wasn’t Born in America
BY LAURIE GARRETT
4月23日、ケンブリッジ公爵夫人は、ロンドン、セントメアリー病院リンド病棟で、第3子を出産した。彼女とウィリアム王子を24時間体制で看護する小隊をともなう、1日当たり8900ドルの豪華な部屋で生んだ、とThe
Economistは伝えた。
西ヨーロッパとカナダのほとんどの両親は、リンド病棟ではないが、王室の出産と変わらない十分な看護を受けて、健康な出産をしている。両親は看護や出産御費用を支払わないが、その出産や幼児の死亡リスクは低い。
対照的に、アメリカは西側で最悪の妊婦と出産の状態を示している。平均的なアメリカ人女性は、飾りも設備もわずかしかない、騒がしい病院で出産し、その費用は平均1万2290ドルである。もし帝王切開をするなら1万6907ドル、緊急に搬送されて出産する場合、費用は3万ドル以上に跳ね上がる。
アメリカの乳幼児死亡率は、2017年、1000件中の6.1であり、日本の3倍も高い率である。これはOECD諸国の中で最悪の国に属する。アメリカは、豊かな諸国の中で、妊産婦の死亡率が圧倒的に高い。
アメリカ国民は、この状態に多額の費用を支払っている。2016年、アメリカが医療サービスに支払った額は3兆3000億ドル、GDPのほぼ18%であった。医療サービスに関して、それはヨーロッパと同じ水準であり、すべての関連する支出では2倍近い。医療ケアの支払いが高くなるほど、医療保険の支払いも高く、雇用主の支払いも高く、被雇用者の間接的な支払額も高くなっている。
オバマケアによって医療保険契約ができない人は減ったが、共和党はそれを変更し、900万人が契約から外れるかも知れない。たとえ、いわゆるフル医療保険を契約している人でも、深刻な疾病では多額の自己負担が必要だ。ある教師は息子の癌治療に100万ドルかかった、という。
今や多くのアメリカ人が医療の支払いをクラウド・ファンディングに頼っている。そのための特別サイトYouCaring、GoFundMeがある。アメリカは物乞いの国である。全く見知らぬ人に慈善を乞う。その人は施す人を選択する。そのような資金を得られない場合、その人は死ぬ。金髪で2歳のバレリーナの少女は、ブラックパンサーの服を着た10歳の黒人少年よりも多くの資金を得る。そして彼も、50歳の銃撃の犠牲者や、糖尿病で死に向かっている高齢のラテン系女性より、多くの資金を得ている。
それはまるで1950年代のテレビ番組「1日だけ女王」のようだ。冷蔵庫、洗濯機、食器、作業着を必要とする女性たちが、スタジオで聴衆のチョイスを求めて競い合う。しかし、正しい医療保険システムはそうではないはずだ。
ウィリアム王子は、推定4000万ドルの所得があり、祖母から10億ドルの不動産を継承する。彼は8900ドルで素晴らしい出産のための看護を受けられる。残念だが、アメリカでその額を支払える若い夫婦は少ない。20-24歳の平均年収は2万7300ドルしかない。
● 民主主義と成長
FP APRIL 26, 2018
Why
Democracy Doesn’t Deliver
BY DAMBISA MOYO
アメリカ人の19%しか、政府は正しいことをする、と信じていない。他方、発展途上諸国の市民たちは、権威主義的指導者を民主的な政治家より信頼できる、と考えている。世界中で、ますます多くの人々が、民主的政府は効果的な行動を取れない、と疑っている。
この問題の根本にあるのは、短期的偏向(近視眼的な政治)である。それは現代の民主主義国家で、政治とビジネスに深く浸透している。
民主主義が機能するとき、経済成長と基本的な自由が保障される。それは他の政治システムでは実現できないことだ。民主主義の短期的偏向を是正する根本的な改革が必要である。
1.政権が代わっても、いったん法制化された政策には強くコミットする。政策の不確実性が成長を損なっている。
2.政治献金を厳しく規制して、富裕層の政治的影響力を制限する。
3.政治家の質を高めるため、民間部門の指導者の給与や成果に応じたボーナスに匹敵する報酬を支払う。
4.政治家の任期を長くする。
5.同時に、多選を禁止する。
6.政治家になるための要件を厳しくする。候補者たちは、政治以外の領域で働いた経験を持たねばならず、それはビジネスに限らない。
7.競争的な候補者のいない、「無風」の選挙区を減らす。政治家による選挙区変更を禁止する。
8.有権者は、彼らが選出した政治家の決定に究極的な責任を負うことを認める。
アメリカ人は他国の選挙制度から学ぶ必要がある。投票率の高い諸国は、投票を法によって強制している(Australia, Singapore, Belgium, and
Liechtenstein)。少額の罰金でも効果がある。また、選挙区が小さいと富裕層の利益に偏りやすい。広い選挙区で強制投票制度を採用すれば、より効果的な経済政策が実現する。
有権者たちは、短期的な利益と、それが将来の経済成長に及ぼす影響を、学ぶ必要がある。個人の好みにより情報を得るだけでなく、質の高いメディアが重要である。
こうした改革は、単にBrexitやトランプの当選によって刺激されたもの、グローバリゼーションの逆転を求めるものではない。リベラルな民主主義が長期的成長をもたらすために必要だ。
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The Economist April
14th 2018
Cool Germany
Facebook: Unmarked
War crimes in Syria: The duty to deter
Brexit and the economy: Brittle Britain
Puerto Rico: After the hurricane
Investment in Vietnam: Phone home
The new Germans
Free exchange: Root and branch
(コメント) ドイツは変わった。多様で、開放的で、より気さくな人々、国際的な指導力を発揮し、将来について積極的に討論する議会。多様な意見を吸収して民主主義が活性化した。本当に?
プエルトリコのハリケーン後に関して、アメリカ市民でありながら議会に議席を持たない。それを読むとき、東北の被災地や、ユーロ圏におけるギリシャ、中央政府から分断されたシリアやイラクの地域、あるいは、世界から孤立する北朝鮮のことを想います。
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IPEの想像力 4/30/18
政治(という圧力・力学)、そしてガバナンスは、いたるところに存在します。こんな風に思いました。「国家は政治の容器、人は影。」 それは古代の魔術に近いものです。
The Economistのロシアに関する特集記事は、「ゴルバチョフの孫たち」でした。プーチンが4度目の大統領に就任したことで、彼を支える官僚、彼に反対するNGO、あるいは、新興企業家も、ゴルバチョフが未来を託した冷戦後のロシア世代です。
The Economistのドイツに関する特集記事は、「メルケルの子どもたち」です。ドイツは、いろいろな意味で変わりました。東西統一によって財政赤字が増え、「ヨーロッパの病人」と呼ばれるほど経済も衰退した後、シュレーダー首相は改革に成功しました。しかし、特に、メルケルが決断した難民受け入れは、人口8400万人のドイツに、2年間で120万人を受け入れたのです。
安定性を重視する、保守的な、平等主義的な、「社会的市場経済」の国であるドイツが、どれほど変わったか、特集記事は興味深く描いています。もちろん、ドイツは変わったはずです。東西再統合を経て、東ドイツの経済改革、ユーロの導入や東欧のEU新加盟諸国と新しい経済関係ができたからです。ドイツはEUの3大危機(ウクライナ、ユーロ、難民)に真正面から向き合い、その姿勢を問われ続けました。極右の政党やAfDのような反EUの政党も議会に登場しています。
しかし、これらがドイツを内向的な、鬱屈した政治に閉じ込めたのではなく、予想外に、素晴らしい姿を実現している、と知りました。メルケルの積極的な改革で女性が社会進出し、若者たちの新しいビジネスが起き、トルコからの移民の子供たちがドイツを愛する国民に加わって、ドイツのイメージを刷新しています。
では、安倍首相が日本の政治や精神を変えた後、この時代を生きる彼の子供たち、孫たちは、どのような日本の姿を目指すのでしょうか?
もしECBとユーロ圏を守るためにEU改革が進むとしたら、それはドイツ人のECB総裁によってである、という。同様に、日本の憲法改正と自衛隊の活動を厳格に法制化するのは立憲民主党の政権によってです。自民党が分裂し、安倍コネクションと右派、維新その他は合流すること、また自民党リベラル派は、立憲民主党と選挙協力することで、日本の政治にも新しい柔軟性とダイナミズムが生まれます。
・・・「国家は政治の容器、人は影。」
日本も、女性の進出を制度化し、移民・難民の受け入れを行い、Dambisa Moyoが提唱した改革を取り入れます。政治家の任期を伸ばし、政治以外の経験を求め、多選は禁止します。投票を義務化し、罰金を科します。政治献金を厳しく規制し、透明化します。メディアの社会的役割を重視し、有権者への教育を積極的に行います。日本の問題に近い外国のケースを挙げて、論争を喚起します。
基本原則に従うなら、米朝会談は合意可能です。北朝鮮は、安全保障と経済支援を求めており、アメリカ(と韓国、日本、国際社会)は、核武装を諦め、国際的なルールに従うことを求めています。北朝鮮は、いつでも合意を破棄でき、それに対する制裁は、北の経済統合や国際秩序への依存が少ない段階では、効果がないのです。
合意を保証するのは、未来の繁栄を分かち合う制度です。中国、ロシア、日本も参加する安全保障の枠組みを前提とした、経済援助・貿易・投資の増大です。
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