IPEの果樹園2018

今週のReview

4/23-28

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米英仏によるシリア空爆 ・・・独仏ハネムーンの終わり ・・・トランプ・ニュー・ディール ・・・インド農民の行進 ・・・トランプ・安倍関係の冷たさ ・・・米中貿易戦争の勝者 ・・・金融危機と経済政策 ・・・ECB総裁にはドイツ人を ・・・AIと失業問題 ・・・米朝会談の実現 ・・・Brexit投票のやり直し ・・・リベリアを忘れないで

[長いReview

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


● 米英仏によるシリア空爆

The Guardian, Fri 13 Apr 2018

There’s no good option in Syria. But there’s a way to make Assad pay

Jonathan Freedland

The Guardian, Fri 13 Apr 2018

An attack on Syria could be disastrous. But the warmongers won’t be told

Owen Jones

イラクやリビアへの軍事介入で起きたことだ。「何かしなければならない!」 と、戦争を主張する者がいた。これを批判するわれわれに、「何かほかに良い策があるのか?」 と、非難した。残酷な惨状を知りながら、無慈悲な者たちとして。サダム・フセインやカダフィをかばう愚か者として。

介入して、どうなったのか? イラクは殺戮の戦場が広がった。無数の死傷者、難民が生まれた。宗派対立が深まり、過激主義が支配し、イスラム国が生まれた。

しかし、戦争を指導した政治家たちは、それを鼓舞した評論家たちとともに、なお立派な地位を保っている。リアリストの強硬派は「リアルな世界」の敬明な居住者なのだ。彼らは屈辱を感じることもなく、テレビに登場し、コラムを書き、中東における次の軍事介入を提唱する。恥じることも、血まみれの過去を問われることもない。

シリアを空爆する主張に根拠はない。空爆でアサドの体制が崩壊することはない。ロシアとの全面戦争に至る大規模な空爆無しに、西側が勝利することはない。象徴的な空爆にとどまるか、7年戦争後の中東の勢力図を変える大規模な戦争を始めるか。その場合、戦争はさらにエスカレートして、犠牲者が急増する。

ドナルド・トランプを恐れ、全体主義のエゴイスト、世界平和への脅威、ムッソリーニとヒトラーの再来、と叫んでいたリベラルたちが、今や空爆を支持して、トランプを称賛している。

シリアは諸外国の軍事介入が入り乱れる国際政治の舞台となってきた。ロシア、湾岸諸国、アメリカ、サウジアラビア、カタール。その資金と兵器は過激派に流れ、殺戮を増やし続けた。介入したことではなく、十分な介入をしなかったことが、しきりに議論される。

イギリスがトランプと軍事同盟を組むことは、戦場の恐怖を増やすだけだ。戦争に頼る政治家や評論家は間違っている。

FT April 13, 2018

This time, sanctions on Russia are having the desired effect

TOM KEATINGE

ロシアの国家機構による「世界的規模の悪行」に対抗して、24人のロシア人オリガーク(産業支配者・大富豪)と関連企業に、先週、アメリカが制裁を科した。

世界最大のアルミニウム生産者の1つ、Rusalと、その親会社、EN+Groupの株価が約50%下落した。株価全体は10%の下落だ。

制裁は、紛争に至らない強制措置として、政策決定者に好まれてきた。UNEU、アメリカは、核開発や人権など、さまざまな問題でイランに制裁を科した。北朝鮮の核開発やミサイル発射に対してもそうだ。

2014年には、ロシアがクリミア半島を併合したこと、ウクライナに侵攻し、ウクライナ東部上空でマレーシア旅客機を撃墜したことに対して制裁を科した。

最近のロシア制裁は、アメリカの対外資産管理局が発表したものだ。その影響は依然と異なり協力である。なぜか?

中国の台頭にもかかわらず、アメリカは世界経済の、特に、ドル建て国債取引で支配的国家だ。世界貿易の半分、外貨準備の3分の2がドルである。これまでのアメリカ政府は、その利害と信念に反する行動をだれかが取った場合、ドルを「武器」として処罰した。

ロシアは1998年の債務危機から回復して以来、銀行と企業がグローバリゼーションから大きな利益を得てきた。特に、資源採取部門では、グローバルな需要の増大と、ロンドン、香港、ニューヨークにおける株式上場によって、利益を上げたのだ。

ロシアが、こうしたグローバル・サプライ・チェーンとグローバル金融に統合されたことで、その脆弱性が増した。

アメリカは最近も、国境を越えた強制力を発揮した。HSBC, Standard Chartered、その他に対して制裁金を課し、BNP Paribasには89億ドルもの巨額の制裁を支払わせた。ドルは、アメリカの法執行手段となっている。しばしば批判されるが、アメリカ市場とドルにアクセスしたい銀行は、これを逃れることができない。

今週、ロンドンで、アメリカ財務次官は、新しいリストに挙げた個人や企業と取引するイギリスの金融機関に対して、その関係を清算しなければ報いを受ける、と警告した。

SPIEGEL ONLINE 04/13/2018

Donald Trump's War Games

Why Intervening in Syria Is the Wrong Move

A DER SPIEGEL Editorial by Christiane Hoffmann

今週、トランプ大統領がTweetして、アメリカがもうすぐシリアを攻撃する、と警告した。しかし、これを、第1次世界大戦や、イラク侵攻の初めのシグナルと同様、歴史家が研究することはなさそうだ。おそらく、プーチン大統領はこの挑発を無視するだろう。

トランプは何も説明しない。そして、またTweetした。戦争の警告だ。それは、まるで新しいビデオゲームを楽しむような調子で発信される。"Nice and new and 'smart!'"

トランプの予測不可能さは計算されたものだ、という者もいる。それはナンセンスだ。全体に一貫性のあるもの理由はない。破壊と破滅に向かう。

今回の違いは、トランプに同盟者がいることだ。フランス、イギリス、サウジアラビア、イスラエル。彼らは、シリア・ロシア・イランと敵対する。

掛け金は多い。同時に、西側はもはやシリア内戦の結末に何の影響力も持たない。銃撃が終わった後、何が行われるか、われわれには決められない。数日前に、トランプはシリアから米軍を撤退させる、と公表した。ワシントンも、ヨーロッパも、中東に関する戦略がない。メッセージを送るだけだ。

戦争犯罪は罰せられない。ロシアは軍事介入で利益を得た。今や、西側の介入は、むしろプーチンの地位を高めている。クレムリンは、「Twitter外交に参加しない」と述べた。

メルケルは空爆に参加しなかった。それは正しい決断だが、難しいものだ。なぜならドイツは世界やEUにおけるさらに大きな責任を担っているからだ。あるいは、フランスのように、トランプのように、シリア介入への参加とイラン核合意の維持を取引するべきか。

SPIEGEL ONLINE 04/13/2018

'Get Ready Russia'

Donald Trump Risks a World War in Syria

By DER SPIEGEL Staff

NYT APRIL 13, 2018

Trump’s Syria Strikes Show What’s Wrong With U.S. Foreign Policy

By Emma Ashford

NYT APRIL 13, 2018

A Coordinated Attack on Syria

By The Editorial Board

FT April 14, 2018

The danger of repeating past mistakes in Syria

MARY KALDOR

シリアにおける住民の苦しみに同情する声は少ない。ボスニアの戦争では、ヨーロッパ中から、さらにそれを超えて、人々が食料や衣類を集めた。救援物資の輸送トラックを走らせ、避難所を求めるキャンペーンが行われ、戦争犯罪に対する裁判、人道支援の回廊が設けられ、難民たちは歓迎された。

なぜ同じ共感を示さないのか? 軍事介入の拡大を恐れるからだ。

人道的介入という考え方は、ジェノサイドやエスニック・クレンジング、人権の大規模な蹂躙行為について、住民を保護するというもので、1990年代、バルカン半島やアフリカの戦場で示された。特に、広く関心を集めたルワンダ内戦であった。

2005年、国連総会で、住民を保護する責任、が正式に議決された。しかし、シリア内戦における惨状を緩和するために、人道的介入も、保護する責任も、圧力とはなっていない。

その理由は、この20年間の経験にある。アフガニスタンとイラクにおける戦争は、人道的介入ではなく、古典的な地政学的戦争であった。西側の利益を追求し、住民の利益を守った戦争ではない。英米の指導者は、人道的理由やテロを強調したが。

コソボとリビアの戦争は、明らかに、こうした考え方が実行された最初のケースであった。それは部分的には成功した。しかし、どちらのケースでも、主要な介入の手段は、直接に住民たちを保護するのではなく、空爆であった。それはまさに住民たちの命をリスクにさらしたのだ。こうした軍事介入は地上の武装勢力を強め、コソボ政府を完全な機能不全にしたし、リビアでは長期にわたる暴力状態を生んだ。

人道的介入と、古典的な軍事行動との違いを、正しく評価しなかったことは重大である。人道的介入でも軍事力を使用するだろうが、その目的は住民を保護し、命を救うことだ。敵を敗退させるのではない。それゆえ、異なる手段を必要とする。人道的介入とは、むしろ治安維持や法の執行に近い。

ボスニアでは、その手段が開発された。安全地帯、戦争犯罪者の捜査と逮捕、人権の国際監視、飛行禁止空域。軍人だけでなく、警察、医療関係者、支援団体、地雷除去チーム、などが参加した。国連を通じた国際的な権限の付与は重要である。

ロシアが国連安保理で拒否権を行使することは問題だ。国際世論を高める必要がある。また、地上では、住民たちによる限定された地区の停戦合意が多く結ばれた。こうした停戦は体制側によって容易に破られる。国連の圧力が欠かせない。

効果のない、有害な軍事介入に代わる手段とは、暴力を終わらせるシリア住民への、強い、国際的支持である。

NYT APRIL 14, 2018

With Eye on Issues at Home, May and Macron Back Trump on Syria Strikes

By ALISSA J. RUBIN and STEPHEN CASTLE

FP APRIL 14, 2018

The New Cold War Is Boiling Over in Syria

BY DMITRI TRENIN

YaleGlobal, Tuesday, April 14, 2018

Hegemonic Designs in the Middle East Clash

Ehsan Ahrari

The Guardian, Sun 15 Apr 2018

Diplomacy, and not bombing, is the way to end Syria’s agony

Jeremy Corbyn

FT April 15, 2018

One-off strikes do little to clarify US Syria strategy

DAVID GARDNER

空爆の直前、トランプ大統領は米軍がシリアから撤退すると表明していた。それは、西側との同盟関係を持つ5か国(Turkey, Iraq, Jordan, Lebanon and Israel)と国境を接しているシリアが、その将来の体制をどうするのか、その中身をロシアとイランに委ねる、という意味だ。

FT April 15, 2018

MPs must face the human cost of conflict in Syria

ALISON MCGOVERN

Bloomberg 2018415

Syria War's Game Theory Is Too Complex to Predict

By Tyler Cowen

NYT April 15, 2018

The Real Next War in Syria: Iran vs. Israel

By Thomas L. Friedman

イスラエルとイランは、今や一触即発の状態にあり、その戦争はアメリカやロシアを巻き込まずにはおかないだろう。

FT April 16, 2018

Putin support for Assad paints Russia into a dangerous corner

Kathrin Hille in Moscow

FT April 16, 2018

The realities of Syria’s war remain unchanged by western strikes

GIDEON RACHMAN

FP APRIL 16, 2018

America’s First Reality TV War

BY MICAH ZENKO

FP APRIL 16, 2018

Trump’s Syria Strategy Makes Perfect Sense

BY AARON STEIN

アメリカの目標をすべて実現する唯一の戦略とは、外交による転換、ロシアとの協力である。すなわち、シリアによる化学兵器の使用禁止と製造禁止。イスラム国の掃討。アメリカの中東における軍事的関与を減らす。

FP APRIL 16, 2018

Trump’s Passive-Aggressive Syria Policy Risks Creating More Mayhem in the Middle East

BY BRIAN KATULIS, DANIEL BENAIM

Bloomberg 2018416

Why Germany Didn't Join the Syria Strikes

By Leonid Bershidsky

NYT April 17, 2018

A Way Forward in Syria

By Susan E. Rice

アメリカはシリアにおいて、その戦略的目標を明確にし、それらを厳格に追求する必要がある。

アメリカの選択できる政策は、さらに悪いことに、一層、制約された、効果のないものになっている。英仏と協力して空爆したのは、必要な、計算されたメッセージをアサドに届けるものだった。文明世界は化学兵器の使用を認めない、と。しかし、抑止効果はわずかであろう。アメリカはアサド体制を脅かさない、とわかるからだ。

危険なことに、シリア内戦は、今や、大国の間の戦争に変わりつつある。イスラエルとイランの戦争。アメリカとイラン・ロシアの戦争。トルコと、アメリカが支援するクルドとの戦争。

それゆえアメリカは、その利害を明確にして、軍事行動が拡大していくのを避けねばならない。イラクの教訓とは、イスラム国の掃討が主要目標であり、体制転換は目標としない、ということだ。それは内戦の外交的解決を追求するが、トランプ政権は外交の資本を欠いている。

アメリカの視点でもっともましなアプローチとは、1.現在の米軍の関与を維持すること。現地のパートナーとともに、開放された地域で効果的なガバナンスを築き、それを維持する。なるほど、それは少なくとも地域レベルの国家建設に関与するものだが、地域を見捨てることはテロリストに領土を与えるに等しい。

2.アサド体制を軍事的に解体することはない。アメリカは、ロシアとの直接の戦闘を避け、イスラエルとイラン・ヒズボラとの戦闘が及ぼすリスクを抑え、トルコと、シリア領内のクルド人との戦闘を鎮静化するべきだ。アメリカは同盟する勢力を、堅く、巧妙に、支援せねばならない。

3.豊富な人道支援を、国内で苦しむシリア人、近隣諸国に行う。難民受入れの停止を直ちにやめる。

4.紛争の交渉による解決を再開する。アメリカは軍事的テコを持たないが、外交における力がある。シリアが再生するには、国民が選んだ政府を必要とする。ロシア、イラン、アサドを交渉に引き出す、2つのカードがある。1つは、シリアの北部・東部を抑えるクルド人の重要性。もう1つは、ヨーロッパや湾岸諸国とともに、シリア再建や難民帰還を実現するための財源だ。ロシアとイランにはない。

アメリカは、停戦後の自由かつ公平な選挙を支援の条件にする。

FP APRIL 17, 2018

Has Trump Become a Realist?

BY STEPHEN M. WALT

ドナルド・トランプがリアリストになったのか? 「オフショア・バランシング」を実践し始めた?

2次世界大戦後、アメリカの指導者たちは、中東の戦略的な重要性が高まったことを認めた。しかしアメリカは、中東の石油を守るために、この地域を植民地化したり、米軍を大規模に駐留させたりすることはなかった。そうではなく、アメリカはイギリスに依存し(1960年代後半まで)、域内の勢力均衡を維持するために現地の諸勢力を頼り、また、ソ連が過度に影響力を強めることも阻んだ。

最初の湾岸戦争の後、こうしたオフショア・バランシングをアメリカが棄て、「二重封じ込め」や「中東の民主化」を唱えた。それは911と、その後のイラク戦争における大失策につながった。

トランプは、再びその方針を転換した。リアリストたちは、トランプ外交を称賛するべきなのか?

彼の発言は確かに転換する意図を示していた。しかし、重要な点は、中東における無際限の戦争に関わるアメリカの姿勢を変えることができるか、である。そして、彼が、「オフショア・バランシング」に必要な外交術(地域の勢力均衡を柔軟に維持する精妙さ)を理解し、実践できるか?

地域の大国が示す利害関係・世界観を支持することは、「オフショア・バランシング」ではない。現在の同盟国に無条件の支持を与えることも、間違いだ。なぜなら、それはアメリカが将来の事態を管理する能力を制限してしまうから。また、そのような無批判な立場は、同盟国に過大なリスクを取らせ、その窮状を救うアメリカに負担を強いるからだ。

アメリカが真に「オフショア・バランシング」を実践するなら、中東のすべての国をビジネスライクな外交関係でとらえ、いかなる国の行動計画や国益にも、アメリカが保障を与えたり、無視したり、してはならない。それは、アメリカが西半球にあるという特権的な地位である。アメリカは友好国とも(現時点における)敵国とも、緊密に意見交換し、自分たちの見解を伝え、また彼らの意見を聞く機会を持つべきだ。

こうして誰とも対話することで、敵国に、彼らが正しくカードを切ればアメリカの支持を得られる、と教え、また友好国にも、アメリカの支持を前提に行動することが間違いだ、と教えるのだ。トランプには、その知識も、技量も、高度な戦略を立てる巧みさもない。

The Guardian, Wed 18 Apr 2018

The taboo on chemical weapons has lasted a century – it must be preserved

Peter Beaumont

FT April 18, 2018

Assad of Syria has learnt never to compromise — or to fear the west

ROULA KHALAF

PS Apr 19, 2018

Missile Strikes Are Not a Syria Strategy

RICHARD N. HAASS


● 独仏ハネムーンの終わり

FT April 13, 2018

Emmanuel Macron faces challenges in France and abroad

TONY BARBER

FT April 15, 2018

Germany is frustrating Emmanuel Macron’s grand ambitions

WOLFGANG MÜNCHAU

フランスとドイツのハネムーンは終わった。年初には、メルケルと社民党のシュルツがマクロンとユーロ圏改革についての重要な対話を行うことに合意した。しかし、シュルツが投手の地位を失うと、社民党は改革に関心を持たなくなった。社民党が財務大臣のポストを得たが、特に預金保険改革に懐疑的である。

キリスト教民主同盟CDUとその姉妹等であるCSUは、マクロンのユーロ改革のすべてに対して反対である。金融機関救済のためのESM、ユーロ圏単一財政、そして預金保険も、イタリアの銀行が不良債権を自分で解決するまでは、反対だ。

ギリシャに対する債務免除も望まない。

この拒否に加えて、マクロンにとって傷に塩を塗られることだが、フランスがシリアに対して行った軍事介入に、ドイツは参加しなかった。

これからフランスが受け取るメッセージは、国民戦線のマリーヌ・ル・ペンが示した立場そのものだろう。通貨同盟においてフランスの意見は通らない。地政学的な危機に対応するならイギリスの方が頼りになる、と。

ヨーロッパ統合に向けたマクロンの情熱は、フランスとドイツの政治的現実を変えるものではない。独仏はもはや自然な同盟相手ではないのだ。フランスと違って、ドイツでは親ヨーロッパ政党は衰退している。

ユーロ改革は不可能なのか? そうは思わない。

今は戦術的な後退をするときだ。単一の安全資産、あるいはユーロ債市場の創設、政府と銀行との法的・政治的な分離、といった改革を唱えても、成功しない。

ユーロ圏の北ヨーロッパ諸国が、その大規模な持続的経常収支黒字を、優位としてではなく、脆弱性とみなすときに、改革を推進できる。生存の危機を味わって初めて、ドイツ、オランダなど、ユーロ圏北部も譲歩するだろう。

SPIEGEL ONLINE 04/16/2018

En Marche One Year On

How Macron's Movement Is Transforming French Politics

By Julia Amalia Heyer

NYT April 18, 2018

Macron, at the Barricades, Warns of Rising Nationalism in Europe

By The Editorial Board

FT April 19, 2018

Emmanuel Macron is the rightful heir to the spirit of 1968

PHILIP STEPHENS


● トランプ・ニュー・ディール

NYT April 13, 2018

The Dream of a Republican New Deal

By Geoffrey Kabaservice

議会の共和党員たちは集まっている。トランプ大統領に対する反対を受けて、2018年の中間選挙で民主党候補者が大量に当選し、共和党の多数支配を一掃してしまうかもしれない、と恐れているからだ。

多くの共和党議員はトランプと距離を措くことでこの波をかわそうとしたのだろう。しかし、それはむつかしい。トランプの支持率はまだ非常に高いからだ。議員たちにはそれに代わる戦術がある。人気のない共和党のドグマに制約されなかった2016年のトランプの選挙公約を、彼らも採用することだ。彼らはトランプ・ニュー・ディールを提唱することもできるだろう。

共和党は白人労働者階級の党になっている。共和党員の10人中6人は、大学を卒業していない白人である。しかし、共和党は彼らの抱える困難を緩和するためにほとんど何もしていない。すなわち、経済停滞、薬物中毒、家族の崩壊、労働市場からの離脱、「絶望による自殺」などだ。こうした問題は、地方や非都市部で共和党に大量に投票する「取り残された人々」に最も多く見られる。

トランプはその理由もよく知っていた。共和党が減税ばかり主張するのは、そのような政策が聖域化しているからだ。財源は枯渇し、高齢者や、経済の不確実さに苦しむ白人労働者がますます依存する、公共サービスを削減している。保守的な州でさえ、こうした反政府のドグマは支持されなくなっている。白人労働者たちは公共部門を破壊するのではなく、守りたいのだ。

政党は、支持者のために、彼らの具体的な利益を実現しなければならない。政治家たちは、有権者の必要や願いに対応する必要がある。彼らの不安や憎しみを煽るだけではいけない。

トランプは選挙で、崩壊しつつあるアメリカのインフラを再建する、と約束した。道路、学校、病院、その他の市民施設を含む。それらは保守派が削減したものだ。

トランプ・ニュー・ディールは、労働者階級に津代億支持される要素を含む。すなわち、社会保障や医療保険を全国民の権利にすること、しっかりした賃金補助、潤沢な育児減税、高度技能のための職業訓練プログラム、である。

それはトランプの文化的なポピュリズムを広めつつ、しかも労働者階級に支持されるトランプ・ニュー・ディールを唱えることを意味する。今の民主党は、トランプを攻撃するあまり、この変化を受け入れないだろう。しかし長期的に観て、アメリカの主要政党は支持基盤を入れ替えた歴史がある。

こうした形の共和党再生は、決して夢ではない。


● いねむり税

NYT April 13, 2018

Tax Dollars for Napping

By Timothy Egan


● インド農民の行進

NYT April 13, 2018

In India, Farmers Face a Terrifying Crisis

By P. Sainath

36日、約4万人の貧しい農民たち、土地を持たない小作農たちが、その多くは内陸部の貧窮に苦しむ先住部族であるが、112マイル離れたNashikからMumbaiに向けて行進した。農民たちの洪水が高速道路を埋めたことで、国民の関心はようやく集まり、インドに起きている20年もの農業危機で何千万人もが苦しむ問題に、焦点が当たった。

行進する多くの農民たちは靴も履かず、はだしであった。

商業の中心都市Mumbaiは彼らを暖かく迎え入れた。中産階級の被雇用者や労働者たちは、彼らの多くも貧しいが、行進に食料や水を差しだした。こうした共感や連帯の行動は、インド政府やエリートたちが農村の深まる窮状に示す冷淡さと、鋭い対照を示している。企業が支配するインドのテレビ局や新聞は、ほとんど貧困層を無視しているのだが、驚いて、この尊厳ある行進を報道するために集まった。

地方のインドに広がる不満は、過去20年間に政策がもたらした不平等に対して起きている。農村の5人家族が得る収入は、2013年に、月平均99ドルであった。Forbesの億万長者リストでは、インド人の数が2011年の55人から、2018年に121人に増加した。彼らの純資産合計額は、雑誌によれば、4401億ドルであり、インドのGDPの約22%に等しい。

Forbes長者番付リストで世界第4位の国であるが、国連のHuman Development Indexでは131位である。

10年以上前に、インドで最も尊敬される農学者M. S. Swaminathanがトップに就任し、調査報告書を議会に提出した。しかし、その報告書と提言に関する真剣な議論は、インド議会でまだ行われていない。

NYT April 16, 2018

Modi’s Long Silence as Women in India Are Attacked

By The Editorial Board

NYT April 17, 2018

What the Rape and Murder of a Child Reveals About Modi’s India

By Mitali Saran


● トランプ・安倍関係の冷たさ

FP APRIL 13, 2018

Can a Weekend at Mar-a-Lago Rescue the Trump-Abe Relationship?

BY EMILY TAMKIN, DAN DE LUCE

安倍はトランプが大統領に当選して最初に会った外国の指導者であった。彼のトランプとの関係は他国の外交にも参考にされていた。しかし、2人の間で個人的な親密さを築くことが、北朝鮮との突然の首脳会談や、アメリカの関税引き上げにおいては、日本に有利に働くわけではない、とわかった。

フロリダを訪問した後、北朝鮮の核実験とミサイル危機では、日本とアメリカの優先的な情報交換があった。しかし、今はそうではない。アメリカ、日本、韓国は一致した姿勢を示すべきだが、北朝鮮の首脳会談は、3国の同盟関係を崩し、恐らく日本を朝鮮半島に関する階段から外しただろう。トランプは会談受け入れを日本に知らせなかったと思われる。

日本に対する関税引き上げも併せて、トランプは日米関係を軽視し、急速に冷却している。

FT April 18, 2018

Trump’s short-sighted mistreatment of Japan

NYT APRIL 18, 2018

Japan Fears Being Sidelined by Trump on Trade and North Korea

By MOTOKO RICH

FT April 20, 2018

Japan’s ageing population milestone intensifies investor focus

LEO LEWIS


● 米中貿易戦争の勝者

FP APRIL 13, 2018

Why China Will Win the Trade War

BY PHILIPPE LEGRAIN

トランプ大統領は、アメリカが中国との間にばく大な貿易赤字、3370億ドル、を生じていることから、貿易戦争に勝つのは確実だ、と思っているようだ。しかし、彼の計算が示すより、経済的、政治的に観て、北京の立場はもっと強い。

統計は、中国の脆弱性を過大に示している。財の貿易に限れば、昨年、アメリカが中国から輸入した額は5060億ドルだった(中国がアメリカから輸入した額は1310億ドル)。しかし、アメリカは中国に380億ドルのサービスを、輸入した以上に輸出している。2国間では最大だ。中国がアメリカに輸出する財は、典型的には中国で組み立てられた財であり、多くの外国製の部品を含んでいる。例えば、アメリカ企業が生産した部品だ。

AppleiPhoneを例にすれば、中国における組み立ては、iPhone Xの製造コスト370ドルのわずか3-6%であるにすぎない。そして999ドルの小売価格との差は、Appleやアメリカの小売店のマージンだ。

OECDによれば、中国がアメリカに輸出するコンピューター、電気・光学製品の、部品の約半分は外国製である。もし関税がこうした中国の輸出品を4分の1減らしても、中国が直接受ける影響は65億ドルであり、中国GDPのおよそ0.05%である。年成長率が6.5%で成長する経済にとって、わずかなものだ。

アメリカは、トランプが思う以上に、貿易戦争に対してもっとずっと脆弱である。トランプがiPhoneに対する関税を上げた場合の、消費者の反発を考えるべきだ。アメリカ企業の多くが生産を中国に外注している。彼らは特に脆弱だ。貿易戦争は、中国からの部品を使うアメリカにある製造業のグローバルな競争力を損なう。トランプの関税は、そのような部品を含んでいる。

逆に、中国による報復関税は、標的を絞っている。第1に、民間航空機の輸出だ。発表後に、ボーイングの株価が下落した。中国に航空機を売るボーイング社は、関税に応じて販売価格を下げるかもしれない。中国にはボーイングに代わる供給者があるからだ。ヨーロッパのエアバス社だ。

2に、アメリカの大豆輸出額は128億ドルだ。中国は、アメリカの大豆輸出の半分以上を占めている。貿易戦争の話だけでも、アメリカ農家は打撃を受けている。大豆価格が急落したのだ。この場合も、中国には信頼できる代替供給者がある。ブラジルだ。

また、中国政府は、その輸出が減少しても、ダメージを吸収する政策を取ることができる。アメリカのように、中央銀行は独立していない。だから人民銀行は、必要なら、金利を下げて国内需要を刺激できる。国有銀行も、同様に信用を増やす。中國政府の財政状態は、アメリカよりもずっと健全だ。貿易戦争で損なわれた産業に対して、補償することができる。

最後に、中国政府は、貿易戦争の政治的ダメージを、トランプ政権よりも容易に吸収できる。トランプが中国を罵倒するたびに、アメリカの株価は下落した。トランプ大統領はダウ平均株価を自分の支持率のように扱っている。アメリカ政府は、株式市場を安心させるために、貿易摩擦の交渉による解決を強いられるだろう。11月に中間選挙が迫っている共和党議員たちにとって、この問題は特に政治的に影響する。中国はこうした選挙区の製品に報復関税を予告している。

何より、トランプには戦略がない。中国に市場開放や知的財産保護を求めるなら、国際的な同盟を組むことが効果的である。昨年は、アメリカがこの点でEUや日本と協力した。しかし、今やトランプは日本やEUも関税で脅している。アメリカ単独で中国を脅迫するやり方は、むしろ中国に、貿易戦争に反対する、という国際政治上の優位を与えている。

トランプ政権の稚拙さに比べて、洗練された、辛抱強い、活力ある中国の外交術は、トランプに見かけ上の譲歩を与えて、win-winの解決を促すだろう。たとえば、アメリカから液化天然ガスをもっと購入することだ。トランプは勝利を宣言できる。

中国には利用できる十分な時間がある。有権者が議会に民主党議員を送れば、トランプの力は殺がれる。2020年にはトランプを追い出すことができる。他方、習近平は再選を心配することもない。

FT April 15, 2018

Nafta: Why the US car industry is trapped in Trump’s trade crossfire

Shawn Donnan in San Antonio, Texas


(後半へ続く)