IPEの果樹園2018
今週のReview
4/16-21
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貿易戦争とハイテク ・・・ファシズムの再生 ・・・オルバンの非民主主義体制 ・・・シリア空爆の限界 ・・・日本経済の奇跡 ・・・アメリカと中国の国際体制 ・・・民主主義の失敗 ・・・ポスト冷戦の資本主義
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● マクロン
FT April
6, 2018
A home
victory for Emmanuel Macron will resonate across Europe
LAURENCE BOONE
● 未来都市
FT April
6, 2018
For the
vanguard of modern cities, look east
JANAN GANESH
「ブレード・ランナー」の描いた未来都市が現れる場所を、われわれはかつてロサンゼルスと思ったが、もはやそうではない。それはアジアだろう。確かに、ロンドンやニューヨークはグローバリゼーションのシンボルであるが、それは今では引退した富裕層の町である。近代的ではあるが、ポストモダンではない。
むしろ、「ブレード・ランナー」のイメージはシンガポールの輝きとカフカ的な官僚国家の重なり、あるいは、バンコクやクアラルンプールが示す強烈な対照性である。そこには極端さに向かうダイナミズムがある。グローバリゼーションは、ロンドンやニューヨークの実存的な表現ではないのだ。両都市は1970年代にすでに裕福だった。住民たちは貿易や移民、金融の流れを吸収し続けたことで活気づいたかもしれないが、都市がそれらによって形作られたわけではない。
ポストモダン都市は、シンガポールと、そこを入り口として広がる、変容するアジアの世界だ。さらには、恐らく、ラゴスとラテンアメリカの世界だろう。そこで急速な成長と多くの機会が生まれ続けている。
● 貿易戦争とハイテク
PS Apr 6,
2018
The Global
Trade Game
MOHAMED A. EL-ERIAN
米中間の貿易紛争は激しさを増している。エコノミストや市場関係者は、この先どうなるのか、思案している。しかし、経済、政治、社会条件が大きく異なれば、歴史に頼るのはむつかしい。
ゲーム理論が有益な示唆を与えてくれる。関税引き上げ競争が「協力型ゲーム」(より自由で公平な貿易)に向かうのか、あるいは、いっそうの「非協力型ゲーム」(貿易戦争)に向かうのか?
この数十年の貿易拡大は、生産と消費の国際相互依存を深めてきた。サプライチェーンは国内だけでなく国際的にも重要になり、ますます多くの需要が、部分的あるいは全面的に海外で生産された製品によって満たされている。技術革新が、生産者や消費者にとっての障壁を減らし、こうした結びつきがますます容易に増加して、もはや、国境を超える関係と相互依存のスパゲティボールとなっている。
個々の参加者とシステムの両方にとって長期的な健全性を保つには、こうした関係が効果的に機能し、信用できる協力的なアプローチに基づくものでなければならない。
また、国際的な経済相互作用がうまく働くには、それらが公平とみなされねばならない。現在、この点が世界人口の多くの部分に支持されていない。事実上、制約されない経済的(そして金融的)グローバリゼーションが依拠する2つの基本的前提は間違いだった。
第1に、貿易の利益が人口の大部分に自然に行き渡るだろう、という前提だ。第2に、世界貿易に参加する主要な国は、新興経済も含めて、互恵性の原則を受け入れ、関税も非関税障壁も徐々に撤廃するだろう、という前提だ。
これらの前提が過度に楽観的であったため、貿易を支持する政策は維持できなくなっている。既存の通商協定(NAFTAなど)をやり直し、超国家機関を弱める(Brexitなど)、ナショナリスト的なポピュリズムが各地に現れている。
国際経済秩序は協調型のゲームとして機能する必要がある。各参加者は自由で公平な貿易を行い、その約束を守り、協力を促し、監視するメカニズムが存在し、逸脱した場合は効果的に処罰される。現在の貿易紛争は、おそらくこれを破壊するだろう。非協力型のゲームに向かい、参加者は「囚人のジレンマ」に陥る。すなわち、利己的行動が自分も、相手も傷つける。
すべての国が損失を受けるが、的を絞った、一連の政策を採用することで、こうした変化を回避するよう促せるだろう。
まず、中国のように、システムにとって重要な、しかし、十分に開放されていない諸国が、より急速に市場開放し、知的財産に関する国際的な規範に従う。さらに、既存の貿易取極めを現状に合わせる。貿易からあまりにも多くの利益を受けている企業などが社会的に責任ある行動を取る。WTO、IMF、世界銀行など、多国間の監視と和解のメカニズムを強化する。また、G20は、常設の事務局を設置して、その役割を強化する。
協調型ゲームを望む多くの国が、こうした政策を採用することは望ましいだけでなく、可能である。彼らが、公平な貿易のための協調の強固な基礎を作ることで、先進諸国と新興諸国における、世界貿易から排除され、損失を強いられる人々にも、それを緩和する必要な(しかし、十分ではないが)手段となるだろう。
PS Apr 6,
2018
Trade Wars
in a Winner-Take-All World
DANIEL GROS
トランプ大統領は関税を武器に、グローバルな多角的貿易システムを指導するチャンピオンと擁護者から、これを罰する魔人となった。しかし、情緒不安定な1人の政治家が長年にわたって築かれた構造やメカニズムを突然に転覆させる、というのは、根本的な経済変化がなければ難しいだろう。
それはあるのだ。
現在の貿易摩擦は、最初、「旧経済」の鉄鋼部門、特に中国における膨大な過剰生産力の問題であった。2002年に、ジョージ・W・ブッシュ大統領も鉄鋼の輸入製品に高い関税を課した。しかしそれはWTOの紛争処理パネルで否定された。トランプ政権の通商分野に関するタカ派は、それを敗北とみているかもしれないが、多くのエコノミストたちはそうではない。高い関税を止めること、すなわち、アメリカの多くの産業にとって主要投入財である鉄鋼に課税しない方が、究極において、アメリカ経済に良いのである。
しかし、現在の関税は根本的な意味でブッシュの保護関税と異なる。特に、これは通商法301条の下、中国を標的としている。トランプ政権は、外国企業に知的財産を公表するよう中国が強制していることに、強い不満を持っている。これはアメリカのハイテク企業に深刻なダメージを与えている。
たとえば、ソーシャル・ネットワークや検索エンジンの大手は、新市場に参入するコストがゼロである。既存のソフトウェアは数百万人の追加の利用者も容易に対応できる。もしそのような企業が知的財産の公開を強いられたら、彼らのビジネスモデルは破壊され、地元の企業に市場で負けるかもしれない。
これは競争的産業の問題ではない。より競争的な「旧経済」では、企業が海外の新市場に参加するにはコストがかかり、限界的な利潤を制限する。潜在的な輸出業者が他国の市場アクセスを求めるロビー活動は、通常、それほど目立たない。例えば、インドの保護主義はそれほど大きな抵抗を受けていない。
「勝者総取り」の新しいハイテク経済は、中国のような巨大市場が保護され、閉ざされていると、こうした知的財産を持つ勝者になる企業がその莫大な利潤を失ってしまう。それゆえ貿易紛争は非常に激しくなる。他方で、通商政策はレントを奪い合う性格を強め、雇用や消費者の視点が無視される。(競争的市場では、貿易による生産性の向上や質の高い雇用創出が政策担当者たちの優先目標である。) 独占企業のレントは高い株価に反映されている。
貿易戦争は非対称な同盟を形成する。支配的なハイテク企業のすべてが属するアメリカは、中国との戦いで同盟国を得るのに苦労するだろう。ヨーロッパや日本では、主要な知的財産を持つ企業が競争的な産業に属する。彼らにとって、中国の要求は、アメリカほど大きな損失にならない。
さらに、ヨーロッパはアメリカとの同盟を好まない。なぜならヨーロッパのいくつかの国は独占的レントをアメリカと分け合うことを強く求めているからだ。デジタル多国籍企業の利潤に対する課税を強化しつつある。
競争的な旧経済では、巨大な赤字国が貿易戦争の勝者になった。しかし、「勝者総取り」の新経済では、貿易戦争の目的な他の市場を開放することである。だからアメリカは、インターネットの巨大企業の陰で、外交的な攻撃をアレンジしている。他方で、中国とヨーロッパはその独占利潤を奪おうとしている。
これはゼロサム以上に破壊的な戦争だ。グローバルな貿易システムが破壊され、すべての者が損害を受ける。
Bloomberg 2018年4月6日
U.S. Needs
China More Than China Needs the U.S.
By Stephen Roach
FT April
7, 2018
History
holds little hope of a winnable trade war
FT April
8, 2018
Trade
disputes reveal the EU’s strategic weakness
WOLFGANG MÜNCHAU
FT April
9, 2018
Donald
Trump trade threats lack credibility
Lawrence Summers
1.グローバリゼーションと貿易はアメリカ経済に深刻な打撃を与えた。特に増大する中国からの製品輸入で労働者たちは苦しんだ。しかし、それは通商条約と関係ない。アメリカ経済が自由化したのは主に1980年代である。その後の貿易協定は他国に自由化を求めるものだった。2001年の中国WTO加盟もそうだ。
2.中国は数年前に比べて経常収支赤字を大幅に減らした。知的財産IPの保護も改善している。
3.合併企業を通じてIPを後悔するよう求める問題はアメリカ企業にとって深刻だ。しかし、それはアメリカ企業のアウトソーシングにとって問題であるが、労働者には関係ない。
4.2国間の紛争はアメリカにとって有効な戦略ではない。むしろ中国には関税を回避することが容易になる。
5.脅迫は信用されていない。
FT April
9, 2018
Donald
Trump is standing up for American interests
PETER NAVARRO(アメリカ大統領顧問)
2001年、中国がWTOに加盟したとき、国際貿易秩序のルールに従うと約束した。しかし中国は公正な貿易に関するあらゆるルールを破って、GDPを1兆3000億ドルから11兆2000億ドルに増やした。
一方、2001年以来、ブッシュ政権・オバマ政権の下で、アメリカ経済は6万以上の工場を失い、数百万人の雇用が製造業で失われた。
アメリカの貿易赤字が膨らむ一方で、中国はアメリカの知的財産を盗み続けており、アメリカ企業に市場アクセスと交換に先端技術を提供するよう強いている。
PS Apr 10,
2018
Can a
Trade War be Averted?
BARRY EICHENGREEN
中国のGDPに対する貿易の比率の方が、アメリカのそれよりも高いから、中国は貿易紛争を避け、世界貿易システムを維持することにより重大な関心を持つだろう。
知的財産を守るのであれば、鉄鋼とアルミニウムへの関税率ではなく、もっと論争に即した対抗策を採るべきだ。
NYT April
10, 2018
How Trump
Misunderstands Trade
By Veronique de Rugy
PS Apr 11,
2018
South
Korea and the End of US Credibility
ANNE O. KRUEGER
米韓同盟は、戦後、最も劇的な成功を収めた関係である。ところがトランプ大統領は、この長期的な関係の経済的・戦略的な利益を放棄する決断をしたようだ。
1950年代、韓国は戦禍によって1人当たり所得が3分の1になり、ハイパーインフレーションに苦しみ、成長率も非常に低かった。しかし、その政権は1960年代に重大な改革を推進し、次の30年間で生活水準を4倍にし、重要な工業国家となって、OECDに加盟した。その成功の多くが、援助への依存から輸出志向の成長に転換したことによるものだった。
2012年3月、アメリカと韓国が結んだ米韓自由貿易協定は、一層の緊密な貿易関係を実現するためのものだった。しかし、トランプ政権が誕生すると、これは「最悪の取引」と非難され、再交渉すべきだ、となった。
NYT APRIL
11, 2018
Economists
Say U.S. Tariffs Are Wrong Move on a Valid Issue
By JIM TANKERSLEY
● ファシズムの再生
NYT April
6, 2018
Will We
Stop Trump Before It’s Too Late?
By MADELEINE ALBRIGHT
1945年4月28日、今から78年前、イタリア人たちは元独裁者、ムッソリーニの死体を、ミラノのガソリンスタンドの横でさかさまにぶら下げた。その2日後、アドルフ・ヒトラーは、戦争によって破壊されたベルリンの地下壕において自殺した。ファシズムは死んだ。そのように見えた。
甦ることがないように、戦争とホロコーストを生き延びた人々は力を合わせて、国連を設立し、国際金融機関を形成し、世界人権宣言による法の支配を強化した。ベルリンの壁が崩壊し、中央ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアでも、独裁は終わり、民主的な政府が広まるように見えた。自由が実現した、と。
しかし今、われわれは新しい時代にいる。テロと、宗派対立と、脆弱な国境線、悪辣なソーシャル・メディア、野心的な人々の冷笑主義、こうした中にあって、民主主義の旗が高く掲げられるのか、その答えはもはや明らかではない。ファシズムは、第2次世界大戦の終結以来、かつてないほど深刻な脅威としてよみがえっている。
アメリカの指導力が求められている。しかしトランプは、グローバルな話し合いの席で、アメリカの積極的な発言力を着実に低下させ続けた。トランプは重要な国際条約から離脱し、国際機関を侮辱し、国務省の資源と役割を奪った。自由な社会を守らず、独裁者たちに助けとなるような行動を取った。アメリカはもはや人権や市民的自由を擁護するために彼らを批判しない。
われわれは何をなすべきか? 第1に、真実を守ること。たとえば、自由な新聞はアメリカ国民の敵ではない。われわれの守護者である。第2に、だれも、大統領であっても、法に従わねばならない、という原則を厳格に実行する。第3に、われわれ一人一人が、民主的な過程を力づけることに参加すべきだ。選挙に参加し、意見が異なる人々にも敬意を払い、その声を聴き、支援する候補者のために活動し、「何をしても無駄だ」という冷笑的な言葉に負けてはならない。
私は80歳を超えたが、今でも、学ぶ権利を要求する若者たちが、薄いジャケットも着ずに集まってくるのを観ると励まされる。
偉大さとは、われわれのホテルのロビーに使われた大理石の多さではないし、ソビエト式の軍事パレードをすることでもない。アメリカの最高の姿が示されるのは、さまざまな背景を持つ人々が協力して権利を守り、すべての者の生活を改善するために行動するときだ。それが世界の人々に希望を与えるモデルとなる。政治家は、たとえ大統領でも、この理想を汚してはならない。
NYT April
6, 2018
Bolton’s
Illegal War Plan for North Korea
By Scott D. Sagan and Allen S. Weiner
FP APRIL
9, 2018
John
Bolton Can’t Be Contained
BY MICAH ZENKO
● オルバンの非民主主義体制
NYT April
6, 2018
How
Democracy Became the Enemy
By Roger Cohen
ハンガリーは、領土と自由を失う恐怖の20世紀を経験した。しかし今、ブダペストはダニューブ川のほとりで素敵な街となり、傷が癒されたように見える。大通りには市電が走り、ドイツ製の自動車が渋滞している。かつて作家が「誘拐された西側」と呼んだ都市は、第2次世界大戦後のソビエト帝国から、西側の家族にもどってきたのだ。
あるいは、そう見えるだけだ。あなたはハンガリー出身のアメリカ人となったユダヤ人のポスターを観る。彼の手は野党の政治家たちを包み込む。
問題の男はジョージ・ソロスだ。億万長者の投資家で、慈善活動家。彼はオルバン首相とその湯は政党Fideszによって敵に選ばれた。彼らが憎むすべての性格を併せ持つ人物として。すなわち、国際投機、民族の否定、キリスト教の否定、大量移民の促進。
「脅威は西側から来る。」 とオルバンは述べた。このハンガリー首相は、独立した司法を弱め、メディアを隷属させ、移民を悪の源泉とみなし、仲間のエリートだけで資本主義を育て、忠誠心を高めた。歴史の記憶を捜査して、民族の犠牲とヒロイズムの物語を創る。「人民の意志」という名目で、憲法を改正した。
秘密警察はない。深夜にだれも消えたりしない。外国資本も歓迎だ。しかし、ハンガリーは自由だ、と言えない。オルバンとカチンスキーの緊密な新型ハイブリッド体制だ。彼らはともに、西側のような自由を求める若者たちと闘っている。
EUは、2012年から2016年だけでも、約900億ユーロをポーランドの近代化のために資金援助した。NATOとEUに加盟し、ハンガリーも1999年と2004年にそうしたが、普通のヨーロッパ国家として、安全保障を得たわけだ。市場経済と法の支配が新しい関係を固めるはずだった。これらの目標が、困難な構造転換を通じて、達成された。
ポーランドもハンガリーも、西ヨーロッパから見れば夢のような、4.6%の成長を昨年達成した。しかし、彼らはこの30年間をどう考えているのか? 民族のイメージ、英雄たち、殉教者、すべてが犠牲になった。代わりに得たのは、ショッピング・モールとドイツ製の自動車だ。燃え尽きた世代は改革に疲れた。かつては灰色の共産主義体制と比較した。今は、ロンドンやベルリンの繁栄と比較する。
「1989年、われわれは皆、国から離散した難民となった。」と、ワルシャワの社会学者は言う。資本主義は、いわば、違う国だった。市場とリベラルな民主主義が必然的に一緒にあるものなのか、だれも問わなかった。それは間違いだ、とわかったのだ。
The
Guardian, Sun 8 Apr 2018
The
Guardian view on Hungary’s election: Europe faces a grassroots fight
Editorial
FT April
9, 2018
Authoritarians
on the rotten fringes imperil European values
GIDEON RACHMAN
民主主義と法の支配を誇りにしてきたEUで、反民主的な政治が周辺部に広がっている。もしこれに対処できなければ、腐食は中枢部に及ぶだろう。
最も顕著な危険人物はハンガリーのオルバンだ。彼は選挙に大勝して、ふたたび政権を得た。スロヴァキア、マルタ、チェコ共和国もそうだ。チェコの首相Andrej
Babisは億万長者で、その国の主要新聞社2つを所有する。またブルガリアは、順番に従いEU議長となっているが、組織犯罪が蔓延している。
オルバンが他のケースと異なるのは、全体主義的な悪役を演じて好まれているからだ。イスラム教徒の移民を攻撃して国際的な悪名をはせ、右派ポピュリストのファンクラブを得た。オルバンがEUにとって脅威であるのは、彼の政府がメディアや大学、裁判所、NGOを支配するやり方である。
私は、EU内で民主主義と法の支配が脅かされていることがBrexitを支持する理由になる、とは思わない。EU単一市場と関税同盟を出ることはイギリスの利益を自ら損なう行為だ。さらに重要なことは、EUを破壊すればヨーロッパ全体に民主主義の見通しが暗くなるだろう。
SPIEGEL
ONLINE 04/09/2018
Hungarian
Elections
What
Orbán's Third Win Could Mean for Europe
By Keno Verseck
Bloomberg 2018年4月9日
Europe
Must Learn to Work With Its Autocrats
By Leonid Bershidsky
FT April
12, 2018
Orban’s
populism prospers by challenging EU taboos
ADAM LEBOR
FP APRIL
12, 2018
Viktor
Orban Is Just Getting Started
BY ZSELYKE CSAKY
● キューバ
FT April
8, 2018
Cuba after
the Castros: escaping a long shadow
John Paul Rathbone in Havana
● Brexitと議会投票
FT April
8, 2018
Elected
representatives will do the right thing on Brexit
NICK CLEGG
議会の緊張は高まっている。下院の論争は最後の投票に向けた乱闘である。多くの議員たちは何かが起きるのを待っている。何かが起きて、有権者の多くがBrexitを支持したことを後悔するのではないか? 経済的なダメージが一気に明らかになるとか、合意される内容の詳細に人々が考え方を転換するとか。
しかし、現実は厳しい。多くの間違った宣伝が明らかになったが、有権者たちの姿勢はそれほど変わっていない。反Brexitグループの宣伝は成功していない。
党議拘束を外して、議員1人1人がその良心に従い投票するべきだ、と主著したジョン・メージャーは正しい。議員たちは正しいことをなすべきだ。
● ギリシャとトルコの戦争
NYT April
8, 2018
Trash-Talking
Toward Conflict?
By Nikos Konstandaras
● シリア空爆の限界
The
Guardian, Mon 9 Apr 2018
After
Douma, the west’s response to Syria’s regime must be military
Simon Tisdall
イギリスとその同盟諸国は一致して、シリア市民を意のままに殺戮するアサドの力を削ぐために、軍事行動を起こすべきだ。中東の軍事介入が果てしない戦争になることを恐れて、何もしないと決める前に、考えてみるべきだ。2011年以来、アサド体制に対して起きた蜂起は内戦状態に向かい、それを回避する方策は何も成功しなかった。犠牲者の数は50万人に近くなる間、国連は停戦や戦闘停止、地域交渉、国民会合を試みた。そのすべてが失敗した。
数百万人の市民が内戦を逃れ、あるいは戦場に閉じ込められた。EUやその他の国が難民割当を提案し、安全地地帯の設置を求め、人道支援の回廊、飛行禁止空域、エスカレーションを避ける地帯を主張した。しかし何1つとして流血と惨状を止めることはできなかった。アサド体制は続いている。次は、反政府派が支配するイドリブ県を狙っている。
過去にもアサドは非合法な化学兵器を使ったが、中でも最悪のケースは、2013年に1700人が死んだ東Ghoutaにおけるサリン攻撃であった。しかしアメリカは、バラク・オバマがレッド・ラインと呼んだこと(化学兵器の使用禁止)を強制できなかった。
オバマにとって、シリアはその任期の汚点となった。ビル・クリントンがルワンダによって傷を残したのと同じだ。
同盟による軍事攻撃は、たとえ遅くても、行われないより良かった。それは将来の蛮行を回避させ、無辜の人々の命を救う。どこであれ、普遍的な人権や国際秩序、国際法に対する信念を腐食する邪悪な毒素を中和するだろう。
The
Guardian, Mon 9 Apr 2018
Only
Assad’s victory will end Syria’s civil war. The west can do nothing
Simon Jenkins
西側がシリアにおいて取りうる選択肢は、事態を悪化させるかどうか、である。いかに立派な見栄えの、素晴らしい言葉、断続的な爆撃を行っても、この内戦でアサド政府側が勝利するのを止めることはできないだろう。2011年以来、西側が反政府側に与えた援助のすべてが、この国の苦しみを長引かせた、ということが今や明らかになった。7年前、西側の諜報機関とメディアが、アサドは失脚するだろう、と述べたが、それは間違いだった。
外部からの非難にもかかわらず、アサドは先週も反政府勢力が支配するDoumaで毒ガスを使った。昨年、毒ガスの使用後に、アメリカが59発のミサイルをシリアの空軍基地に撃ち込んだが、その効果はゼロであった。アサド体制は生存を賭けて戦っているのであり、非難も気にしないし、国際条約に従う気もない。また彼らの支援者であるロシアとイランも、冷淡な外交姿勢を変えない。
1997年の化学兵器禁止条約は、戦場における殺害に「受け入れることのできる」形態を定義する点で前進した。その欠陥は、貧しい小国が化学兵器を大量に保有していることだ。彼らは、その塩素ガスやサリンと、NATOのクラスター爆弾、白リンとを区別しない。窒息する子供たちをテレビは映すが、高度な爆発力を持つミサイルが細片に砕いた遺体を、われわれは観ていない。
非人道的なことが戦争における市民の殺害にはある。ダマスカス郊外の市街地を標的とした爆撃は特に忌まわしい。しかし、そのすべての非難を西側も受けるべきだ。昨夏のモスルをめぐる空爆戦で、推定8000人以上の市民が殺害されたが、その多くはイラク、アメリカ、イギリスのミサイルによるものだった。市街戦に市民の犠牲はつきものだ、とイギリスのRupert
Jones大将は述べるが、アサドも同意するだろう。
NYT April
9, 2018
In Syria,
Trump Faces the Limits of Bluster
By The Editorial Board
FP APRIL
9, 2018
Macron
Needs to Attack Syria
BY BENJAMIN HADDAD
FP APRIL
9, 2018
For a
Second Strike on Syria, Trump Will Have to Go Big
BY RHYS DUBIN, DAN DE LUCE
FT April
10, 2018
Syria must
not be allowed to normalise the use of chemical weapons
DAVID GARDNER
Bloomberg 2018年4月10日
Trump's
More Likely to Pay a 'Big Price' Than Assad
By Hal Brands
ドナルド・トランプは、化学兵器を使用したと言われるシリアの指導者アサドが「高い代償」を支払うことになるだろう、と約束した。
残念だが、シリア内戦のコースを良い方向に変えるアメリカの能力は、アサドに「高い代償」を支払わせることがないまま、この数年、減少してきた。さらに、トランプは、アメリカに残されたわずかなテコも消去することにしたようだ。
かつてヘンリー・キッシンジャーが述べたように、「政策決定の悲劇的な点は、行動の選択肢が多くあるとき、行動に必要な知識が最も少なく、知識が最大のときは、しばしば、選択肢が消滅していることだ。」
今思えば、アサドに対してアメリカが決定的な介入を行うとしたら、それは2012年か13年であっただろう。当時は、反政府派が軍事的なイニシアティブを持っていたし、過激派が反アサド勢力をまだ支配しておらず、ロシアやイランの軍事的な関与も小さかった。
アメリカが強く押せば、アサド政権は崩壊したか、少なくとも彼を交渉による体制移行に同意させただろう。しかし、あの時点では、紛争の被害を放置することの道義的、地政学的な深刻さは、まだ徐々に注目されていたに過ぎなかった。また、西側が介入しなくても、アサドは退陣するように見えた。
オバマ政権の終盤には、アメリカの強い介入なしにアサドが去ることはないし、非介入の恐るべき結果が明らかになっていた。しかし、その状況で、すでに戦況は反政府勢力に不利であったし、ますます過激派が指導するようになっていた。イランと、その後はロシアも軍事介入を行い、アメリカの行動の自由派、むしろ紛争を激化させるコストによって制約される形となった。
もしトランプが本気でアサドに「高い代償」を支払わせるとしたら、戦略的な状況を変える形の介入をすることになるだろう。例えば、アメリカは大規模な、持続的な空爆を行い、シリアの軍事的資産、アサドの権力の象徴を破壊することだ。それは(化学兵器の使用に応じた)「比例的な」報復ではない。アサドとその支援者であるロシアに対する十分な危険を意味する軍事力の行使である。その攻撃は、まだ存在する少数の穏健な反政府勢力に対する支援を再開し、強化すること、また、シリア市民たちに安全地帯を設ける、という野心的な試みと並行して行われる。
しかし、そうすれば、これまで介入を停滞させた困難と危険がふりかかる。アメリカはシリアに本格的な軍事的関与を行う意志を持ち、ロシアやイランとの軍事的対立がエスカレーションするリスクを冒し、他方で、国防総省は中東から東欧や東アジアに軍事力の重心を移そうとしているのだ。しかも、こうしたことをしても成功する見込みはせいぜい不確実なものだということを知っている。
(後半へ続く)