IPEの果樹園2018

今週のReview

4/2-7

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貿易戦争への対応 ・・・ジョン・ボルトン ・・・トランプとアメリカ外交 ・・・Brexitまで1年 ・・・プーチンと亡命ロシア人殺害 ・・・金正恩の北京訪問 ・・・トランプ・ブームの終わり ・・・中間層の空洞化 ・・・中国のガバナンス ・・・イスラム教徒との対話

長いReview

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


● 貿易戦争への対応

FT March 27, 2018

How China can avoid a trade war with the US

MARTIN WOLF

中国はトランプの保護主義に、どのように対応するべきか? その答えは、戦略的に応じよ、だ。

トランプの関税引き上げは、その目的がわかりにくい。中国の先端技術分野における政策を阻止するために、アメリカはさまざまな行動を取っている。

しかし、トランプ自身は、中国がアメリカに対して1000億ドルも貿易黒字を出すことに、2国間で不均衡を減らすべきだ、と主張してきた。そのような主張は間違っているし、実現不可能だ。

楽観論者は、両国の取引で終わる、という。しかし、非案論者は、2大国の交渉が無限に続く、と考える。あるいは、さらに報復の連鎖が続き、敵意を増す、と。

それを決めるのは中国の対応である。アメリカの認識が変化したことを知るべきだ。中国の台頭はアメリカの衰退を意識させる。共産主義者の専制支配は、アメリカの民主主義とイデオロギー的に衝突する。中国の貿易が主たる理由ではないが、アメリカの工業労働者が経験する苦境は「チャイナ・ショック」を広めた。アメリカ政府は、こうした労働者やコミュニティーに十分なセーフティーネットも積極的支援も行わなかった。

かつて、米中間の摩擦は、人民元の為替レートや外貨準備の蓄積、経常収支不均衡の大きさであった。それらは今や解消された。今は、2国間の貿易不均衡、企業買収が米中摩擦になっており、アメリカ企業は、中国政府が技術移転を強制することを嫌っている。

中国は、トランプ政権の不満を次のように扱うべきだ。1.焦点を絞って、正確に、限定的に、報復する。2.正当な不満を緩和し、中国の利益になる国内改革を推進する。技術移転への圧力はWTOルールに反することだ。3.アメリカから液化天然ガスを輸入して不均衡を減らすような、一定の譲歩を行う。ただし、中国が主要な市場となっている商品で、こうした政府介入は好ましくない。4.多角的な協議で議論することを促す。なぜなら、2国間では、大国が互いに譲歩したとみられることを嫌うからだ。

最後に、ヨーロッパを味方にする。ヨーロッパはアメリカと同じ不満を持つが、ルールを尊重する。中国がWTOルールを支持すれば、ヨーロッパは味方になる。これがわれわれの住む、新しい戦略的な競争、の時代である。


● ジョン・ボルトン

FT March 23, 2018

John Bolton completes Trump’s America First goals

EDWARD LUCE

アメリカ外交を嫌う場合、その最悪の顔がボルトンJohn Boltonだ。彼が嫌いな戦争はない、と非難される。平和的な関与など考えることのない、軍事力優先の大統領補佐官だ。強硬派のJesse Helms上院議員も、ハルマゲドンの扉を開ける男、と呼び、George W Bush政権のRichard Painterも、ボルトンを入れたら戦争になる。おそらく、核戦争だ、と述べた。

かつて解任される前のバノンに、イラン核合意を破棄する手順を示し、この数か月の間、繰り返し、北朝鮮を攻撃するように求めた。

トランプ政権は、明らかに、好戦的な新モードに移行した。1.マクマスターやティラーソンは、トランプを「パックス・アメリカーナ」のルールに合わせようとした。ボルトンはNATOを否定する。2.ボルトンはネオコンではない。ネオコンはイラク戦争を民主化推進に変えて失敗した、とボルトンは言う。彼が支持するのはアメリカの利益だけだ。トランプ以前の「アメリカ・ファースト」である。3.ボルトンの国防長官指名で、トランプの政権革命は完成した。何の制約も受けない、むき出しのトランプが解き放たれる。

日ごとに、パックス・アメリカーナは消滅する。


● トランプとアメリカ外交

FP MARCH 23, 2018

Welcome to the Dick Cheney Administration

BY STEPHEN M. WALT

ボルトンの指名は、アメリカを戦争に導く、裏庭に避難壕を掘るべきだ、といった意見があふれるだろう。しかしボルトンは、アメリカの外交専門家たちのサークルに生きる1人である。

選挙戦で、アメリカを無意味な戦争に巻き込んだ無責任な専門家たちを追放する、とトランプが示した、ある意味で正当な主張を実行したのか? 違う。ボルトンの指名は、「アメリカ・ファースト」ではない。すなわち、アメリカの海外における軍事負担を減らし、戦略的な地位の改善、アメリカを安全で豊かにするような政策に限定する、という姿勢に転換したわけではない。

最近の3Bolton, Pompeo, and Haspelの指名は、むしろ「チェイニー主義」の復活である。それは、脅威を誇張し、外交努力を省き、同盟国は重荷であると考え、国際機関を軽蔑し、アメリカには何でもできる軍事力がある、と信じている。外交政策の問題は、すべて軍事的に解決できる、と。

それは、うまくいったではないか? トランプがそれをまねるのも不思議ではない。

これはボルトンという個人の問題ではない。アメリカ外交のエスタブリシュメントが問題なのだ。イラク戦争のような大失策を犯しても、彼らは何も悔いていない。彼らが責任を取ることもなかった。ワシントンDCには、ボルトンだけでなく、多くの専門家が北朝鮮やイランとの戦争を主張している。

ボルトンが心配だ、と言うなら、この戦争中毒の外交をいつまでも改めない国のことをもっと心配するべきだ。このシステムがある限り、われわれは何度でも間違いを犯す。


● Brexitまで1

The Guardian, Wed 28 Mar 2018

The Guardian view on Brexit: now is the time to change course

Editorial

イギリスがEUを正式に離脱するまで、残り1年となった。

議会の多数は正式な離脱交渉を開始すると決議したが、それは国民投票に示されたBrexitを実行するためであった。しかし、メイ首相の示すBrexitを議会が何でも承認するという意味ではない。国益や「人民の意志」を逆転させる、と、Brexit批判を無視するのは間違いだ。民主主義は多数派の意見に従うが、多数派内の対立を調整し、人々が離脱を選んだ動機を解きほぐさねばならない。また、48%という巨大な「少数派」を無視することも許されない。

メイは、内閣にも十分に相談せず、強硬離脱案を示した。それが総選挙で否決され、DUPとの連立で生き延びた。しかし、30年に及ぶ内紛を経て成立した北アイルランドの和平は脆く、維持しなければならないから、Brexitでもハードな国境線を受け入れない。

EUを離れたイギリスは、どのような形でも、経済的に見て悪化する。Brexitはイギリスの国際的地位を引き下げ、攻撃的なナショナリズムの時代に、EUを離脱することは、その防壁を失うことだ。

しかし、何百万もの国民が変心したという十分な証拠もなく、国民投票の結果を逆転することはできない。残留派は、離脱派の判断や意見は無価値であるとか、彼らが騙された愚か者やレイシストである、と主張することが、社会的・政治的に重大な影響を及ぼすことを軽視してはならない。

2008年の金融危機以後、制度への信頼は失われ、支配階級に対する怨嗟が渦巻いていた。UKは深刻な分断状態にあり、民主主義的・平等主義的な価値が損なわれている。

ユーロ懐疑派のイデオロギーがどこから来るか、知るべきだ。それはイギリス社会や政界の右派である。多くの離脱票が裕福な街の保守派、南部の満足したベビーブーマーから生じた。Brexitが、持たざる者の不満を表す叛乱だった、というのは誇張である。

他方、残留派には一貫したEU支持論がない。ここにパラドックスがある。多くの人々が信頼しなくなった政治システムを作り変えるために、EUを拒否するだけでは、彼らが直面したさまざまな問題を解決できない、ということだ。しかもBrexitによって経済福祉が悪化し、その最も厳しい結果を強いられるのは離脱を選んだ人々だ。EUを非難するのは、慢性病の間違った処方箋である。その病根は、サッチャー主義の脱工業化と、賃金に及ぼすグローバリゼーションの効果を抑えられず、まともな公共サービスも欠いたことだ。

複雑な合意形成の時間はない。シンプルな将来の関係を示す大まかな合意が、Brexit推進派によって創られるだろう。細部は政府が決める。これは主権の回復や、約束された民主主義の活性化などではない。忍び足の右傾化革命だ。

社会の競合する諸利益と要求を仲裁し、混沌とした、しばしば矛盾する「人民の意志」を法制化するのは、議会である。民主主義とポピュリズムとの違いは、安定した制度に依拠する政府と群衆支配との違いだ。ユーロ懐疑派の主張にもかかわらず、主権は議会にある。


● プーチンと亡命ロシア人殺害

FT March 28, 2018

Russia and the west’s moral bankruptcy

EDWARD LUCE

ロシアは西側民主主義に対抗している、とよく言われる。しかし、それは誤解である。ロシアは、ウラジミール・プーチンとその寡頭制のサークルの利益に従って動いている国だ。その体制は、他国に育ちつつあるクレプトクラシー(略奪支配体制)のモデルなのだ。

プーチンの略奪システムは、西側の道義的な失敗、その黙認によって支配を広げている。特に、アメリカとイギリスだ。多くの西側民主主義国家と異なり、米英は匿名の所有権を認めている。民主主義諸国は、法的に、誰が企業や不動産の所有から利益を得ているか、知らせるように要請する。しかし、米英は違うのだ。財務省によれば、およそ3000億ドルの資金洗浄がアメリカで行われている。イギリスとその国際金融センターでは、約1250億ドルだ。

その最大の割合を占めるのがロシア人だろう。Anders Aslundによれば、プーチンの個人資産は500億〜2000億ドルと推定される。その低い方の額でさえ、国連加盟諸国の多くのGDPを超えている。

西側がロシアの外交官130人を追放した。しかし、これは何もしないよりずっといいが、伝統的な追放合戦で危機の幻想を広めるだけで、プーチンの利益にしかならない。UKにおける今月の神経ガスによる暗殺未遂事件には、プーチンの署名が余りにも強く残されていた。

この10年間、少なくとも14件のロシア人の死について十分な捜査が行われなかった。2013年、亡命ロシア人Boris Berezovskyの死は「自殺」として処理された。2014年、内通者であったAlexander Perepilichnyの死も「自然死」とされた。メイが内務大臣であった6年間、彼女は捜査の情報公開を安全保障上の理由で拒んだこともある。

国外追放は何も変えないだろう。ロンドンの不動産取引の最大の担い手はロシア人と推定される。ロンドンの銀行、不動産会社、高級サービス業界は、ロシア・マネーで潤っている。

ロシアの経済規模はイタリアより小さい。ロシアの軍隊は壊れている。ロシアの支配者は恐怖からすべてを手放そうとしない。プーチンがもっとも恐れるのは、情報公開である。


● 金正恩の北京訪問

FT March 29, 2018

Trump, Xi and how to play poker with Pyongyang

PHILIP STEPHENS

北朝鮮の金正恩は、おそらく、満足しているだろう。遅れた、2500万の国民を野蛮に弾圧する体制が、世界で最強の2国から関心を集めている。

国際社会はキムの北京訪問を歓迎する。その対案は戦争であるだろうから。数か月前に、トランプが炎と怒りを降らして北の核開発計画を破壊すると約束した。他方で、北京は、反逆する同盟国の隣人を抑える気がないか、それができなかった。

今や、真の外交が始まるのか? 冬のオリンピックは韓国との緊張関係を緩和した。金正恩がトランプと会談したいという提案は、アメリカの情勢分析を変化させ、軍事攻撃を延期させた。北京訪問は、それまで核開発計画を止めるように要求し、それを無視する金正恩を排除してきた北京が、その姿勢を変えねばならない、と感じたことを示している。

国営新華社通信は、「今年は朝鮮半島情勢を変える年になると約束されていたが、北朝鮮がこの方向で大きく努力したことに、われわれは感謝する。」という習主席の挨拶を伝えた。数年にわたり、国連による北朝鮮制裁決議を支持した、と北京に激怒したキムが訪中したことに、このへりくだった言葉がある。習はもはや、実質的に、皇帝以外の何物でもないが、キムがトランプに会う以上、この問題でわき役にとどまることは許されないからだ。

キムが、朝鮮半島を非核化したい、というとき、それは、韓国にアメリカ軍がいる限り、北が核保有する権利を持つ、という意味だ。アメリカ大統領のだれもそんな約束をしない。しかし、もし交渉が決裂したら、それを多くのアメリカにおけるアジア外交専門家たちは願っているだろうが、その責任はアメリカにある、というわけだ。

キムがアメリカとの対話で求めることは、北を完全な核保有国として認めることだ。アメリカの専門家たちは、太平洋を越えて核弾頭を運べるミサイルの開発に北がどこまで近づいたか、意見が分かれている。しかし、数年ではなく、数か月だろう、と考え始めている。

韓国は、南北首脳会談をセットできたことで、戦争の危機は去った、と感じている。平壌とおそらく北京も、ワシントンは騙されたと気づくだろうが、東アジアを軍事的に作り変える熱意を失うだろう、と考えている。対話は、封じ込めに代わるだろう。世界は今やトランプ後の外交を形成しつつある。北朝鮮もそうだ。

楽観論者は、トランプと習近平がすべての強いカードを出し合うポーカーゲームを考えている。その場合、勝つのはキムだ。ゲームの力学を変えるには、金正恩の手を知ることだ。

ここで明らかなことは、解決が何よりも米朝の合意に依拠しなければならない、ということだ。米朝ともキムが核を放棄することを求めている。トランプは軍事力を保持し、平壌は北京にエネルギーと食糧の供給を頼っている。北京は北の崩壊を恐れ、キムの核保有より、アメリカの影響力が中国国境まで迫ることを嫌う。こうして、キムは権力の座にとどまるのだ。

これを解きほぐす道があるとすれば、それは北朝鮮の領土を保証する米中合意だ。考えるのも恐ろしいことだが、北の体制を保障する。朝鮮戦争を終える和平条約に署名することだろう。キムがそれを拒めないような形で、米中が共同提案する。


● トランプ・ブームの終わり

NYT MARCH 23, 2018

The Trump Boom Is Making It Harder to See the Next Recession

By ROBERT J. SHILLER

トランプ・ブームがいつ終わるのか、エコノミストは予測できない。特に、トランプは大衆心理に影響を与え、自分の言ったことに合わせてデータを変えてしまう。

景気変動も、地球温暖化も、彼の直感に合わない。トランプはそれを否定し、説明しない。「ガッツで行け!」と、彼は2007年の本で書いた。「ビジネスでも人生でも、大きく考えろ。相手のケツを蹴とばすのだ。」

経済は永遠に拡大する、と前提している。平均すれば、5年に1度は不況になった、という事実を忘れさせる。しかし、1854年以来、アメリカには33回の景気後退があった。すでに前の景気後退から102か月が経っている。

貿易戦争を始めることで不況になるのか、もっと普通に、不況が起きて、アニマル・スピリッツと大衆心理は間接的な要因にとどまるのか、わからない。エコノミストは何が起きるか知らないが、安心しなさい。次の不況は必ず来る。


● 中間層の空洞化

PS Mar 26, 2018

Saving the Shrinking Middle

MOHAMED A. EL-ERIAN

多くの人が自分は中産階級だとみなした時代があった。社会的に、政治的に、そしてビジネスにおいても、それは好ましい、安定的な、望むべき成果につながった。中産階級は社会のアンカーとなり、中規模の企業が繁栄することで社会の活力と回復が促された。中間層は個人としても集団としても、福祉の水準を示すものだった。

しかし近年は、中間層が安定性を欠き、予測しがたい、捉えがたいものになった。経済、政治、ビジネス、資産管理、さらにスポーツでも、その重要性はますます維持不可能になっている。

技術変化と、解き放たれたグローバリゼーションの潜在的な分配効果を政策が十分に抑制しなかったことが重なって、次第に、世界中の中間層が空洞化してしまった。既成政党が依拠する政治的中道は失われ、政治は怒りを刺激するものに変わった。分極化と分断化が進むと、2大政党制で政策を実現するのは非常に困難だ。

この傾向は、専門的な意見や規制制度に対する人々の信頼を失わせている。そして、より極端な党は、エスタブリシュメント批判が優勢になる。中産層はビジネスにおいても目にしない、不安定な存在になった。金融部門がそうだ。高度な規制と法令順守のコストに縛られて、ますます中規模の金融機関は生き残ることができなくなっている。

しかし、中産層の消滅は不可避なのか? 1つの好ましくない状態から他のもっと好ましくない状態へジャンプする、「複数均衡」の世界で生きるのか? あるいは、自然な中間層が回復し、責任ある政策が中道の健全さを回復するのか?


● 中国のガバナンス

NYT MARCH 27, 2018

The Orphans of China’s Economic Miracle

By LIJIA ZHANG

5年から7年へ飛び級した13歳の少女Huang Kailongは、輝く未来を約束されていた。しかし、その後、彼女は失踪する。両親への手紙には、その理由が書かれていた。私は愛されていない、と。

彼女は中国で最も開発の遅れた貴州省の美しい村、Jidaoで育った。両親は出稼ぎに出て、1歳のとき、彼女は叔母の家にいた。その後も、1年に4か月の出稼ぎに両親が行くと、いろいろな親戚の家を頼った。

1月、世界のソーシャル・メディアは、8歳の少年Wang Fumanの風に焼かれた顔に驚いた。彼は雲南省の離村で祖父母と暮らし、毎日、学校まで約3マイルを歩いて通う。ある朝、彼は頭全体に霜が覆った姿で教室にいた。その写真を教師がインターネットに載せて、世界に広まった。多くの中国人の子供たちが、両親から離れて田舎に住んでいることを世界は知ったのだ。

この30年間、28000万人の中国人が、仕事を求めて田舎から繁栄する都市に出た。それは人類史上でも最大の移住であった。しかし、家族の将来を長期的に豊かにするためであったが、その子供たちは田舎に残された。家族と一緒に住む者もいたが、ときには子供たちを守る者がいなかった。


● イスラム教徒との対話

NYT March 29, 2018

The Wrong Way for Germany to Debate Islam

By Jochen Bittner

食事に誘ったら、ラマダンだから、とシリアから来たイスラム教徒の友人に断られた。私は、もし北極圏であれば、日が暮れるまで食事できないラマダンで餓死するよ、と言って笑った。ムハンマドも、ダマスカスの日没でよい、と認めるのではないか? と言って、さらに笑わせた。しかし、彼はコーランの言葉にはそう書かれていないから、という理由で拒んだ。

私は、複雑な気持ちだった。友人は冗談を楽しむし、イスラム教徒がラマダンで貧者の苦しみに共感することに私も敬意を払う。しかし、彼が宗教的な規律を信じて疑わない姿勢にとまどった。

これはドイツが直面している難問だ。新しい内務大臣Horst Seehoferは、「イスラムはドイツに帰属しない。」と発言した。彼は保守的なキリスト教社会同盟CSUの議長だ。

ドイツの、概ね世俗的な、リベラルな伝統や文化と、イスラム教徒たちの、世俗の法律より宗教的規範を上位に置く文化とは、顕著な緊張状態にある。問題は、私たちがこの状態を一連の失敗として理解することだ。すなわち、第1に、労働力不足をトルコからの移民労働者「ゲスト・アルバイター」に頼った保守派の失敗、第2に、価値を問題にせず、すべての外国人を受け入れた左派の失敗、第3に、イスラム教徒と、多元主義の世俗的民主主義とを和解させなかった、すべての党派の失敗、である。

しかし、ドイツには多くのイスラム教徒が住んでおり、イスラム教徒の中にも、宗教的なドグマや、コーランの字句に過度にこだわる姿勢、反西側の教育、を批判する声はある。しかし、彼らは少数派で、多数のドイツ人イスラム教徒から敵意を受けている。

彼らもドイツ市民である。過去の失敗を責めるより、イスラム教徒の市民について、2つのことを理解すべきだ。市民であるとは、何よりも、市民の価値観や法律を重視すべきこと、また、世俗的な多数派は、その例外である、保守派のイスラム教徒をどのように受け入れるか、学ぶ必要があること。

確かに、歴史的理由から、ドイツ人はこうした姿勢を好まない。しかし、ポピュリストではない多くのドイツ人が、多元主義の社会に生きる条件を説明することを、恐れてはならない。

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The Economist March 17th 2018

The battle of digital supremacy

The attempted murder of Sergei Skripal: A poisoned relationship

Energy: Electric dreams

North Korea and America: The summit of all fears

Venezuela’s “crypt-currency”: A sunny place for a shady currency

Bagehot: Globaloney

Assassinations: Dealing in death

Central-bank digital currency: Proceed with caution

Free exchange: Faction and friction

(コメント) ほかにも、日本の土地・住宅が市場としてうまく機能していない、という2つの記事があります。いろいろ並べましたが、いずれも私はポイントをつかみきれなかったようです。

デジタル時代の覇権戦争はどうなるのか? 貿易戦争のほんとうの意味は? また、化石燃料からいよいよ離脱する時期が来たのでしょうか? これも新しい覇権戦争の色を帯びます。イギリスにおける亡命ロシア人の殺害に関して、あるいは、イスラエル、アメリカをはじめ、世界中で行われている外国領土における敵対勢力の暗殺について。

暗号通貨・仮想通貨の中央銀行との関係も、なるほど、そうなるのか、というわけにはなっていません。自由貿易を支持する勢力が、グローバリゼーションを推進する結果として、いつの間にか、新しい保護主義の政治同盟を形成してしまう?

ただ1つだけ、よくわかるのは、グローバル・ブリテンを標榜するイギリス政府とBrexit推進派たちの中身の無さです。

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IPEの想像力 4/2/18

中朝首脳会談が非公式に行われました。まるで封印列車です。

冷戦構造の崩壊は東の第2幕を開けたのでしょうか?

ベルリンの壁が崩壊したとき、ロシアの国内改革も同時に進み、旧体制の崩壊が迫っていました。崩壊後は、ドイツが東西再統一を目指し、サッチャーの強い反対にもかかわらず、アメリカのブッシュ・シニアは統一を支持し、EUの一部として支持する、という政治的合意に向かいました。

アジアの冷戦構造が溶解するとしても、西側の崩壊に比べて、東側の崩壊は全く意味が異なります。北朝鮮の体制を温存したまま、アジア・太平洋における米中核管理体制に向かうのでしょうか? それは、もちろん戦争よりも優れた解決策です。

あるいは、日本が積極的に関与する、核抑止・廃棄を目指す体制の多角化・制度化に向かうのでしょうか? その両方が進むように思います。

NHK日曜討論を観ていると、興梠一郎氏は、中国の優先目標は冷戦構造の維持だ、と明確に述べていました。朝鮮半島の戦争に再び人民解放軍が介入しなければならないことは困るが、北朝鮮が崩壊してアメリカ軍が中国国境まで迫ることも困る。どちらも好まない。北朝鮮を残すことが望ましい、と。

自国にミサイルが届くことを憂慮する姿は、アメリカが地域外のバランサーである、ということを感じます。自分の支持を高め、中間選挙を乗り切ることしか考えないトランプは、貿易障壁と軍事衝突を望むのか?

しかし、米軍基地がグアムに引き上げた場合、アジアの安全保障を担う私たちに、その能力(装備、人員、意志・合意形成メカニズム)はあるのでしょうか?

イギリスで多くの亡命ロシア人を暗殺した、と批判されているプーチンは、朝鮮半島についてどう考えているのか? 西側を牽制するため、ウクライナ東部に紛争地帯を凍結し、中国を恐れ、シベリア開発に日本の政府・企業、その資金を呼び込むことが有効だ、と考えているのでしょうか? ここでも地域紛争を刺激してから凍結して、外交のカードとして温存する?

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中短距離ミサイルを保持し、数十個の核弾頭も保持した北朝鮮が残り、尖閣諸島の紛争(そして、竹島、北方4島)を凍結したまま、アメリカとの貿易摩擦が続いても、中国主導の貿易・投資体制には最後まで参加しない。

しかし、やはり重要な決断は金正恩が下すべきものです。50年後、独裁者として体制を維持した末に、老人の衰弱と体制崩壊の不安を抱えた金正恩は、どのような回想録を書くのか? あのとき、経済改革と南北融和を確実に進めておくべきだった、と。それは、日本と中国を変えただろう。

核武装・抑止の時代は終わった。大国間政治・軍事的均衡の時代も終わった。日本の活気ある経済と高度な安全保障体制を支える、技術と外交の成果が、多角的貿易決済網とともに、世界の紛争・隣接地帯で採用される時代に向かいます。

中国指導部が1000年の歴史から観るという姿勢を堅持するなら、北朝鮮を積極的な開発モデルとして中国の経済圏に組み込み、同時に、台湾、日本をも包括する、世界の貿易・投資システムに向かう平和の一歩とみなすでしょう。

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