IPEの果樹園2018
今週のReview
3/19-24
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新しい共産党宣言 ・・・米朝首脳会談 ・・・福島原発事故の避難民 ・・・ロシアの国外におけるスパイ暗殺 ・・・鉄鋼とアルミニウム製品への関税引き上げ ・・・国家主席の任期制限撤廃 ・・・ティラーソン国務長官解任 ・・・ヨーロッパのポピュリズム ・・・ドル安
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l 新しい共産党宣言
FT March 9, 2018
What would Karl Marx write today?
Rupert
Younger and Frank Partnoy
カール・マルクスの生誕200周年。マルクスとエンゲルスは、今なら何を書くだろうか? おそらく、こんな感じだろう。
「世界には妖怪が徘徊している。アクティビズムという妖怪だ。旧世界の秩序に属するすべての勢力は、この妖怪を滅却する神聖同盟を形成した。・・・今や、アクティビストたちが世界の表に登場して、その見解を表明するときが来た。」
マルクスとエンゲルスは、階級間の分断が拡大し続ける資本主義システムについて書いた。市場が拡大するにつれて、ブルジョアジーはますます力を持ち、バラバラになった労働者たちを蹂躙し続ける。こうしたプロレタリアートが最終的に革命を起こして、資本主義を葬るまで。
企業の経営支援や法律と財務の教授として、われわれは自由な市場型の資本主義を信奉している。現代の共産主義者ではなく、マルクスとエンゲルスの継承者でもない。しかし、19世紀半ばのヨーロッパの住人と同様に、金融危機が招いた悲惨な現実、社会変化の大きな渦、金融資本家たちへの嫌悪、革命的な運動の広がりの中で、われわれは暮らしている。
われわれは、マルクスとエンゲルスが2018年に生きているとしたら書くであろうものを、新しい宣言、“The Activist Manifesto”として書いた。
われわれは、「共産主義」の代わりに「アクティビズム」を唱える。マルクスとエンゲルスは、「法王、ツァー、メッテルニヒ、ギゾー、フランスのラディカルたち、ドイツの秘密警察」などを描いた。われわれは、「企業の富裕層たちthe corporate Haves、エリート、超資産家、共和党や民主党、保守党、労働党のエスタブリシュメント政治家たち、ダヴォスの批評家たち、オンライン・メディアとフェイク・ニュースという増幅装置」を描く。
われわれはマルクスとエンゲルスから経済的不平等への容赦ない批判を継承する。200年経って、その共産主義が信用されなくなった今でも、かつてと同じように、その議論は有効だ。
われわれが共産主義に代えて、宣言を描く核心に据えた思想は、株主アクティビズムである。われわれは、最大級のヘッジファンドに対して、経営幹部たちの慢心を壊し、経営戦略や資本構成の変更を求めてきた。われわれはまた、アクティビストの株主たちに、政治、社会、企業のアクティビズムを結集するよう求めてきた。それはマルクスとエンゲルスの時代に、増大する経済格差、停滞する賃金、生産的な資本の所有者たちが技術進歩の利益を独占する構造を批判したのと同じである。
「持てる者と持たざる者」という対比、それを変えるためにプラグマティストとして彼らは『共産党宣言』を改訂し続けた。
「万国のアクティビストたちは団結せよ! 持たざる者たちが失うものは、鉄鎖以外に何もない。彼らは世界を得るだろう。」
l 米朝首脳会談
FP MARCH 9, 2018
The Trump-Kim Summit Won’t End Well
BY
JEFFREY LEWIS
トランプ大統領が金正恩にあっても、成果が得られるとは限らない。韓国の特使は、「北朝鮮に対する軍事的脅威がなくなり、体制の保障が得られたら」核兵器は必要ないだろう、と金正恩が語った、と伝えた。しかし、北朝鮮の国連大使がWashington Postの記者に送ったe-mailには、そのような中身は何もない。
この2つしか材料はない。トランプ大統領が「北朝鮮の核廃棄」に向けてやる気であるのに比べて、ホワイトハウスは会談に慎重な姿勢を強めている。そして、会談までに北朝鮮が非核化に向けた「具体的ステップ」を取るよう求めている。
北朝鮮は20年来の目標であったアメリカ大統領との首脳会談を得た。アメリカは何も得ていないし、恐らく、何も得ないだろう。
しかし、表に現れない理由がある。政府関係者は恐れているのだ。政権のスタッフたちは、大統領の関心をイラン合意から逸らせたい、と考えている。あるいは、スタッフたちは、トランプが北朝鮮に関して正気ではない何かを始めることを恐れている。それゆえ、会談を「炎と怒り」ではなく、チーズバーガーを食べながらの歓談、にしてしまいたい。それは韓国がやってきたことだ。
トランプが、戦術的に、北朝鮮の核保有を認める、という戦略を理解しているとは思えない。「勝利した」とトランプに思わせるような何かをだれもが望んでいる。しかし、北が核を放棄しない、と知ったとき、トランプはどうするのか? 彼の子供じみた楽観が粉砕され、苦い怨嗟に代わる。2019年は2017年よりも、さらに危険であるかもしれない。
トランプは誰かを責めるだろう。それがだれであるか、によってシナリオが変わる。少なくとも、彼が自分を責めることはない。
FP MARCH 15, 2018
Give North Korea All the Prestige It
Wants
BY
STEPHEN M. WALT
作家Dorothy
L. Sayersは短編を書いた。「大人たちも常にすべてを知っているのではない。そんなふりをするとしても。それは「威厳・威信」の問題だ。そのせいでヨーロッパ大陸の多くの戦争が起きた。」
米朝の指導者たちが扱う問題には、両国の利害対立だけでなく、地位、尊厳、エゴが関係している。アメリカにとっては、北の核兵器とミサイル技術が中心問題である。しかし北にとっては、その重要な要素として、認知と威信が問題となる。
事前協議も、北朝鮮の明確な約束もなしに、トランプが金正恩からの招待を受け入れたことで、キムはすでに長年の宿願であったものを手に入れた。世界最強国家の大統領と1対1で会談し、直接に取引することだ。首脳会談は全世界の注目を集めるだろう。
それに対してアメリカが得たものは、何もない。キム対トランプの第1ラウンドは、1対0、である。
アメリカは70年以上も北朝鮮の存在を認知してこなかった。ここに答えがある。できだけ早く、2人の指導者が会えばよい。金正恩は、その父や祖父がしなかった何かを認めるかもしれない。たとえ何も合意しなくても、アメリカ大統領と対等に扱われたことになる。
「威信」とは、他者が何か特別なものを認めることで得られる。国際政治では、ある国の「威信」が過去の実績に結び付くだけでなく、現在のパワーにもなる。それゆえ熱心に国家は威信を求めるのだ。国際社会からの認知と尊敬は、その国の指導者を優れた者に見せ、国内の支持も高まるだろう。何であれ、高い威信を得た国は、他国に対する抑止力を得る。冷戦時代、ワルシャワ条約機構の加盟諸国はオリンピックのメダルを(しばしば不正に)得ようとしたし、アメリカは人類初の月着陸を目指した。
しかし、長期にその国を認知しないことは、効果的な戦術を利用できないだけでなく、自己破壊的な習慣になる。アラブ諸国がイスラエルの存在を認知せず、アメリカが共産党政権の中国やキューバを認知しなかったことがそうだ。それはアメリカの国益を高めず、その国に関する情報収集能力や影響力を失わせた。
対話や認知を長く拒むほど、沈黙を破ることは困難になり、対話を始めるにはより大きな象徴的飛躍が必要になる。これは米朝首脳会談がともなう真の危険である。
大統領には、このギャンブルが価値あるものになる合意を持ち帰らねばならない、という大きな圧力がかかる。会談の席に着くだけでキムは威信を得る。しかし、トランプは、たとえば、彼が一貫して非難してきたイランとの核合意より悪い内容であれば、彼はもてあそばれたと思うだろう。
このとき、トランプの威信が失われる。取引の天才である、という慢心が破られる。彼は何をするだろうか? 過去の戦争がそうだった、と作家は物語に書いた。
l 福島原発事故の避難民
FT March 11, 2018
Fukushima nuclear disaster: did the
evacuation raise the death toll?
Robin
Harding in Fukushima
「子供たちは言っていた。『放射能で死ぬのは嫌だ。東京へ行こう。東京へ。』」
そこで家族は200キロ離れた東京へ移住した。しかし、それで彼らの本当に深刻な諸問題が始まったのだ。この7年間、苦しい生活環境、資金不足、学校での嫌がらせ、鬱状態、目的の喪失、放射能被爆による死の恐怖、と彼らは闘い続けた。「心理的に、私たちは破滅状態にあった。」
福島の生活はゆっくりと正常に復帰していたが、ますます明らかになったことは、住民の退避こそが、原発事故そのものではなく、災害の最も破壊的な部分である、ということだ。鬱状態、失業、アルコール中毒が地域外に逃れた6万3000人の中で恐ろしい高水準に達している。そのうち、2万9000人しか帰還していない。
l ロシアの国外におけるスパイ暗殺
Bloomberg 2018年3月15日
Putin Isn't Scared Yet, But He
Should Be
By
Leonid Bershidsky
イギリスのメイ首相が、ロシアの二重スパイSergei Skripalに対するソールズベリーでの毒殺未遂事件について、即座に反発したことを、クレムリンの誰も気にしないだろう。しかしメイは、プーチンの政治体制に対する反撃の方針を明らかにした。公表されていないロシアの化学兵器備蓄を処罰する国際的な運動を起こす、というものだ。
イギリスのロシア人に対するプーチンの暗殺攻撃は続いている。たとえ経済制裁や金融システムからの排除が、イギリス自身を傷つけるから実行できないとしても、メイの反撃を無視することはできない。すでにNATOはロシアの化学兵器によるNATO加盟国内での攻撃を重視している。アメリカは、ロシアが約束したシリアの化学兵器廃棄が進んでいない、と非難している。フットボールのワールド・カップも迫っている。
l 多国籍企業・富裕層の納税
NYT MARCH 15, 2018
A Billionaire and a Nurse Shouldn’t
Pay the Same Fine for Speeding
By ALEC SCHIERENBECK
Facebookのザッカーバーグと彼の会社の門番が、自宅に帰る途中でスピード違反を犯した場合、同じ罰金を支払うだろう。ザッカーバーグは瞬きもしないだろうが、門番は違う。
アメリカ中で、1つの違反にはすべて同じ罰金が科される。個人的な所得に関する考慮を、わざわざ禁止する州もある。
しかし、もっとまともな方法がほかの国では採用されている。たとえば、フィンランドやアルゼンチンでは、100年ほどに渡って、罰金を所得に合わせて変える。最もよくあるモデルは、その人物の1日当たり賃金だ。
単一罰金制は、また、処罰の基本的な目標に合致しない。すなわち、応報と抑止である。
l 鉄鋼とアルミニウム製品への関税引き上げ
PS Mar 15, 2018
The Real Reason for Trump’s Steel
and Aluminum Tariffs
MARTIN
FELDSTEIN
鉄鋼とアルミニウム製品に輸入関税を課すことは、中国との貿易紛争に対する強制手段である。アメリカは中国における鉄鋼とアルミニウムの過剰生産力を削減するように求めてきた。しかし、米中間の最も重要な貿易紛争は、鉄鋼とアルミニウムではなく、高度技術の移転だ。この問題では、人民解放軍など、中国の政府機関が高度技術を奪うサイバー犯罪にかかわっていた。2013年に、オバマと習近平の会談でこの問題を取り上げ、アメリカは証拠を示して是正を要求した。
今、起きている高度技術移転は、中国の市場アクセスを利用して、民間企業の「自発的」技術移転を求めるものだ。外国企業への市場開放や中国企業への市場シェア確保は、技術移転にもかかわらず、容易に改善されないことを、アメリカ企業は懸念している。このような中国政府の行動を是正させる手段はない。
鉄鋼とアルミニウム製品の輸入関税は、安全保障を理由とし、同盟諸国を除外することで、中国への強制力になる。
NYT MARCH 15, 2018
Paul Krugman Explains Trade and
Tariffs
Paul
Krugman
トランプ政権が導入する鉄鋼とアルミニウム製品の輸入関税に関して、Paul Krugmanが読者からの疑問に答える。
「1.私が買う小さな消費財はすべてが中国製である。どうしてこうなったのか? どうすべきか?
2.製造業の職場はすべて、労働条件や環境破壊を無視して、最もコストの安い、賃金の低いところに移転すべきなのか? そうではない、としたら、自由貿易システムはこれを阻止できるか?
3.中国政府は電気自動車産業の育成のために大幅な補助金(価格の3分の1)を消費者に与えている。これは自由貿易において、優れた計画なのか、あるいは、詐欺行為か? 」
Paul
Krugman: ある意味で、それは光学的な幻影である。中国は、低賃金、下請け企業の広範な産業「生態系」を結び付けることで、多くの商品の組み立て部門を支配している。しかし、その価値の多くは他国からきている。例えば、iPhoneは中国製だが、中国が追加する価値はその価格の4%でしかない。
労働条件と環境規制が実施される余地はある。しかし、多くはない。バングラデシュが低賃金と低生産性を反映した世界市場に参加することを、われわれの労働・環境ルールによって拒むなら、彼らは飢えるだろう。
消費者への補助はWTOルールとしてOKだが、生産者への補助は許されない。アメリカは電気自動車の購入に税額控除を適用する。しかし、現実として、中国の電気自動車の多くは外国製にしないはずだ。中国政府はアメリカのような消費への補助を好まない。
「関税は鉄鋼労働者の状況は改善するか? 」
Paul
Krugman: 鉄鋼の雇用は少し増えるが、他の「下流」部門で、例えば自動車で、雇用は減るだろう。その純効果はマイナスであるだろう。
「『アメリカを再び偉大にする』、石炭や鉄鋼に雇用を取り戻す、と言うが、そのような産業復興は可能か? ラスト・ベルトに雇用を回復するのはあまりにも高いコストを要するのか? 」
l 国家主席の任期制限撤廃
NYT MARCH 15, 2018
Welcome to the Era of Presidents for
Life
Ivan
Krastev
血統に拠って王位を得る支配者でないことは、権力を長期に維持することを難しくした。それは権力を失ったときの不安を生じる。
現代の権力者は、民主主義であれ、非民主主義であれ、ますます皇帝のように権力を強めている。彼らは、民主主義かどうかではなく、優れた指導者かどうか、を重視するべきだと考える。腐敗した政治エスタブリシュメントより、強い指導者を求める民衆は多い。
ある時代に、他国に模倣されることで、政治体制のモデルが広まることを、政治学者のKen Jowittは、ヴェルサイユ効果、と呼んだ。17世紀には、ルイ14世のフランス王室とヴェルサイユ宮殿がドイツやロシアに模倣された。19世紀には、イギリスの議会制度とネオゴチックの議事堂を模倣することが政治家たちの願いとなった。第2次世界大戦後、東欧諸国にはスターリン体制とその建築様式が広まった。
冷戦終結は、西側の政治モデルが同じ効果を発揮してきた。選挙や、アメリカ式の憲法を持つことが、若者たちにとってのスマートフォンと同様に、重要になった。
2008年に、プーチンが3期目の大統領を可能にする憲法改正をしなかったのは、大統領が決して宮殿を離れることのない中央アジアの共和国と同じだ、というイメージを嫌ったからだ。政治システムは操作されていたが、非民主的な政府は、それが操作されたものではないことをよろ負うことの重要性を認めていた。
今までは、そうだった。
しかし、中国共産党が憲法を改正し、国家主席の人気を制限する字句を削除した。その影響は中国を超えて広まるだろう。ロシアも、トルコも、同様の権力長期化を図っている。こうした「皇帝の時代」を迎えて、ヨーロッパはその政治的なプロジェクトに打撃を受ける。アメリカもそうだ。アメリカ人たちも中国を見習うように、トランプは望むだろう。アメリカを偉大にするために。
l ティラーソン国務長官解任
FT March 14, 2018
Appointing Pompeo brings Trump’s
America First policy closer
EDWARD
LUCE
そして1人だけが残った。マティス国防長官を除いて、トランプはすべての閣僚を解任した。ティラーソンの姿勢は、反グローバリストのトランプの本能と衝突した。後任に指名されたポンペオは、大統領の反外交姿勢と一致する。
ティラーソンが犯した最大の罪は、トランプを「バカ」と呼んだことだ。ある会合で、大統領が、アメリカの核兵器を10倍に増やすべきだ、と述べたことをリークした。それはトランプの神聖な就業規則を2つ破った。第1に、忠誠さを欠く。彼の知能指数を疑うことはタブーである。第2に、重要問題で繰り返し彼と衝突した。
FT March 15, 2018
Regime change leaves hawks ascendant
in US foreign policy
Katrina
Manson in Washington
マイク・ポンペオの指名は、イラン、北朝鮮、ロシアに関してアメリカ外交が重要な決定を必要とする時期に、ポピュリストのタカ派的な方針を強めるだろう。
元CIA長官として、ポンペオはイランと北朝鮮における体制転換の利益を説いてきたが、全員者のティラーソンに比べて、より強硬な姿勢を取るだろう。
l ヨーロッパのポピュリズム
FP MARCH 14, 2018
Italy Is the West’s Future
BY
MATTHEW GOODWIN
イタリアの選挙結果は、古典的な政治パターンの再現、すなわち、反政府のアウトサイダーが成功し、インサイダーを打倒して、反エスタブリッシュメントのポピュリズムが政治的カオスを広める、というイタリア政治の伝統が維持されている、ということなのか?
むしろ、これはより深い変化の兆候ではないか? ポピュリスト政党が台頭した変化の背景は、今後のヨーロッパを知るために重要だ。
第1に、ヨーロッパ政党政治における右傾化は、世界金融危機以前から起きていた。主要政党が、1980年以来、リベラルな政策を捨てて、より権威主義的な見解に変わったのだ。
それは1980年代に移民やEU統合をポピュリストたちが攻撃し始めたことに一致する。ヨーロッパの右傾化とは、社会民主主義の崩壊と同時に進んだ。イタリアだけでなく、ヨーロッパの社会民主主義政党はすべて、大きな危機の渦中にある。その勝利どころか、存亡が問われている。
Adam Przeworski が Capitalism and Social Democracyを出版してから30年以上が経った。彼は、社会民主主義のジレンマを、労働者の党でありながら、そのイデオロギーや支持基盤を失い、それを埋めるために他の集団と同盟することで支持を拡大しなければならない、という選挙力学に見た。第2に、こうした中道左派の同盟戦略こそ、移民、EU統合、難民危機、のような論争に弱かった。
ラディカル左派の台頭が、スペイン、ドイツ、イギリスに見られる。しかし、彼らを支持するのは高等教育を受けた中産階級のリベラル派だ。各国のポピュリストたちが狙う支持層は労働者であった。それは金融危機以前から示されていた。フランスでマクロンが勝利したことは祝福されたが、労働者こそ、唯一、マリーヌ・ル・ペンにより大きな支持を与えた集団である。
第3に、わずか数年前、2009年に創設された「5つ星運動」がイタリア選挙で最大の票を得たように、ヨーロッパ政治の支持層はかつてない水準の浮動性を示す、ということだ。この運動への支持は、若者、失業者、貧困に苦しむ南部で高かった。選挙ごとに支持政党は大きく入れ替わり、もはやベビー・ブーム世代が見たような、強力な政治同盟は失われた。
浮動票は、1970年代から増え始め、1990年代に加速した。金融危機とその後の大不況が刺激になったからだ。イタリアと同様、ヨーロッパの政党システムはまだ容易に安定しないだろう。
l ドル安
PS Mar 14, 2018
The Dollar’s Doldrums
BARRY
EICHENGREEN
なぜドル安か? 2017年1月から2018年1月までの1年間で、ドルの実効為替レートは8%も下落した。
私の予想は、減税、金利水準の正常化に従い、財政拡大、金融引き締めであった。それはレーガン=ボルカー時代のドル高につながる、と。
税制の変更はアメリカ企業に利潤の本国送金を促すだろう。それゆえドル高を強める。関税は輸入財のコストを引き上げ、需要を国内財に振り替える。その結果は、完全雇用に近い国内経済がその効果を抑えるための為替レートの実質増価を求め、インフレや、もっとありそうなのは、ドル高がさらに強めることだ。
しかし、市場はこのロジックを1年以上も拒んできた。
経済評論家たちは、過去の為替レート変動を説明することにたけている。もっともよく聞く説明は、トランプが公約を果たしていないことだ。輸入に対する広範な課税、NAFTAの見直し、1兆ドルのインフラ投資。いずれも実現しない。
しかし、大幅減税は成立した。連銀も金利を引き上げた。利潤の本国送金を促す税制改革も実行した。
ドル高よりもインフレによって、ロジックは実現したのか? この説明では、連銀の金融引き締めが遅れていることになる。それは正しいのかもしれないが、まだそうなっていない。
ほかにも、少なくとも17の説明がドル安にはあるけれど、彼らが見逃している最も重要な説明がある。それは、トランプのもたらす不確実さだ。
投資家たちは政策の影響を全く予測できないのだ。なぜなら政策はある方向を示すが、突然、反対方向に変わるから。巨額のインフラ投資は小さくなった。TPPからの離脱は、もしかすると再加入になる。ムニューシン財務長官は強いドル政策を放棄する様子であったが、また掲げている。不確実さが日常的に支配する。
不確実さほど投資家が嫌うものはない。特に、避難所としての通貨保有を望む投資家にとって、これは致命的だ。投資家たちは、ドルが安定している、という理由だけでなく、アメリカの安全保障上の絶対優位と、世界で最も深く、最も流動的な金融市場を持つ、という理由で、危機のときにドルを買った。
しかし今、その大統領はNATOを信頼せず、意識してかどうか、その敵であるプーチンが新たらしい兵器を自慢するのを促した。トランプは、連邦政府の閉鎖に賛同し、財務省証券を通じた金融市場への流動性供給を嫌っている。
ホワイトハウスが混乱すれば、ドルはさらに安くなるだろう。3月1日は示唆的である。トランプは鉄鋼とアルミニウムの関税引き上げを発表し、株価は下落したが、そのときドルは強くなった。不確実さの支配は続く。
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The Economist March 3rd 2018
What the West got wrong
Autonomous vehicles: Who
is behind the wheel?
China and the West: Not
the partner you were looking for
Politics in Afghanistan: Power-shedding
Constitutional change:
Under the cover
The car business: Last
lap of luxury
Tax and the dollar:
Green-back
(コメント) 中国が国際秩序に参加することは、ニクソンの国交回復、さらにWTO加盟によって、西側もようやく選択した道です。それは思い描いたものではないというより、中国自身のさまざまな問題を自分たちのやり方で解決してきた結果ではないでしょうか? そして今、中国の貿易から投資、外交における発言力が、西側の前提した秩序を侵食し始めているわけです。
アメリカの変調、EUの混乱、それに加えて、日本自身の諸問題の積み重ねが解決される中で、外交政策の大きな見直しが必要になる、と思います。
ドイツの自動車産業、アフガニスタン政府の苦悩、ドル安をめぐる解釈、が興味深いです。
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IPEの想像力 3/19/18
政治は支配、政治は希望。政治制度の調整は世界を震撼させる革命と同じです。
軍備の増強、南シナ海の基地建設、一帯一路イニシアチブ、西側に対抗する価値や国家システムの提示、グローバル・サプライ・チェーンや国内市場の重商主義的利用、習近平への権力集中、習思想の共産党・国家による採用、国家主席の任期を制限する憲法の条文削除、外国における中国人留学生の思想チェック、外国のメディアや政治家への資金供与、など。
最近の中国の変化を、欧米や日本は懸念します。The
Economistは、かつて国務副長官であったロバート・ゼーリックが、中国に向けて行った2005年の演説を引用しています。彼は、中国が「責任あるステークホルダー」として、アメリカとともに国際システムを支えてほしい、と訴えたのです。
なぜなら、国際システムが中国を強くし、繁栄をもたらすから。世界は中国の台頭を見守り、中国がその影響力をどのように行使するのかに注目している、と。彼は「非常に穏やかな、隠れた脅迫」も行った。
「ストライキ、地方における汚職への抗議活動、犯罪の増加を指摘し、ゼーリックは助言した。『閉じた政治が中国社会を永久に特徴づけることはありえない。それは持続不可能なのだ。経済が成長するにつれて、生活が豊かになる中国人はその将来に関するより大きな発言力を求めるだろう。それは政治改革への圧力となるのだ。』」
村落や町の単位で選挙が導入されていることを、ゼーリックは次第に民主化が広まる兆候として期待した。しかし、それは間違いであった、と記事は現状を評価します。中国は西側のモデルに近づくことをやめました。
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アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領は、強い政治圧力を感じています。最近の自爆テロでは、市民が105人も犠牲となった。大統領はこれを「9・11」と呼んだ。しかし、政府にはテロを止める力がない。ガニは今も、北部の軍閥と協力するのを拒んでいる。
ガニはアフガニスタン政府を立て直したいと願っている。そもそも2014年の大統領選挙で、もう1人の候補者Abdullah Abdullahと拮抗し、内戦を避けるためにアメリカが「権力の分かち合いPower-sharing
Agreement」を仲介した。ガニは、コロンビア大学の人類学博士号を持つ学者であり、破たん国家再建についての共著がある。世界銀行に勤め、アフガニスタン暫定政権に参加するために帰国した。
しかし政治情勢は、今も、混沌としているようです。2人の権力者が政府内部で対立や拒否を繰り返し、しかも経済の悪化とタリバンの攻勢が強まっています。ガニは自身の理論に従い、経済の安定化、近隣のイラン、ウズベキスタン、トルクメニスタンと貿易ルートを開き、近代的な官僚を増やしました。ガニは、タリバンに交渉を呼びかけ、犠牲者を減らそうとします。もし彼らが停戦に合意し、憲法に従うなら、彼らを政党として認定し、選挙に参加することを促します。タリバンはアメリカとの交渉を要求しただけで、ガニの呼びかけには答えていません。
そもそも有力な個人ではなく、政党による比例代表制の選挙により、政治権力の制度化を目指しています。しかし、北部の軍閥支配者を解任することができないように、ガニの構想は、なお、庶民の暮らしを改善することができないのです。
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