IPEの果樹園2018
今週のReview
3/19-24
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新しい共産党宣言 ・・・米朝首脳会談 ・・・福島原発事故の避難民 ・・・ロシアの国外におけるスパイ暗殺 ・・・多国籍企業・富裕層の納税 ・・・鉄鋼とアルミニウム製品への関税引き上げ ・・・国家主席の任期制限撤廃 ・・・ティラーソン国務長官解任 ・・・ヨーロッパのポピュリズム ・・・ドル安
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l 新しい共産党宣言
FT March 9, 2018
What would Karl Marx write today?
Rupert
Younger and Frank Partnoy
カール・マルクスの生誕200周年。マルクスとエンゲルスは、今なら何を書くだろうか? おそらく、こんな感じだろう。
「世界には妖怪が徘徊している。アクティビズムという妖怪だ。旧世界の秩序に属するすべての勢力は、この妖怪を滅却する神聖同盟を形成した。・・・今や、アクティビストたちが世界の表に登場して、その見解を表明するときが来た。」
マルクスとエンゲルスは、階級間の分断が拡大し続ける資本主義システムについて書いた。市場が拡大するにつれて、ブルジョアジーはますます力を持ち、バラバラになった労働者たちを蹂躙し続ける。こうしたプロレタリアートが最終的に革命を起こして、資本主義を葬るまで。
企業の経営支援や法律と財務の教授として、われわれは自由な市場型の資本主義を信奉している。現代の共産主義者ではなく、マルクスとエンゲルスの継承者でもない。しかし、19世紀半ばのヨーロッパの住人と同様に、金融危機が招いた悲惨な現実、社会変化の大きな渦、金融資本家たちへの嫌悪、革命的な運動の広がりの中で、われわれは暮らしている。
われわれは、マルクスとエンゲルスが2018年に生きているとしたら書くであろうものを、新しい宣言、“The Activist Manifesto”として書いた。
われわれは、「共産主義」の代わりに「アクティビズム」を唱える。マルクスとエンゲルスは、「法王、ツァー、メッテルニヒ、ギゾー、フランスのラディカルたち、ドイツの秘密警察」などを描いた。われわれは、「企業の富裕層たちthe corporate Haves、エリート、超資産家、共和党や民主党、保守党、労働党のエスタブリシュメント政治家たち、ダヴォスの批評家たち、オンライン・メディアとフェイク・ニュースという増幅装置」を描く。
われわれはマルクスとエンゲルスから経済的不平等への容赦ない批判を継承する。200年経って、その共産主義が信用されなくなった今でも、かつてと同じように、その議論は有効だ。
われわれが共産主義に代えて、宣言を描く核心に据えた思想は、株主アクティビズムである。われわれは、最大級のヘッジファンドに対して、経営幹部たちの慢心を壊し、経営戦略や資本構成の変更を求めてきた。われわれはまた、アクティビストの株主たちに、政治、社会、企業のアクティビズムを結集するよう求めてきた。それはマルクスとエンゲルスの時代に、増大する経済格差、停滞する賃金、生産的な資本の所有者たちが技術進歩の利益を独占する構造を批判したのと同じである。
「持てる者と持たざる者」という対比、それを変えるためにプラグマティストとして彼らは『共産党宣言』を改訂し続けた。
「万国のアクティビストたちは団結せよ! 持たざる者たちが失うものは、鉄鎖以外に何もない。彼らは世界を得るだろう。」
l 米朝首脳会談
FP MARCH 9, 2018
The Trump-Kim Summit Won’t End Well
BY
JEFFREY LEWIS
トランプ大統領が金正恩にあっても、成果が得られるとは限らない。韓国の特使は、「北朝鮮に対する軍事的脅威がなくなり、体制の保障が得られたら」核兵器は必要ないだろう、と金正恩が語った、と伝えた。しかし、北朝鮮の国連大使がWashington Postの記者に送ったe-mailには、そのような中身は何もない。
この2つしか材料はない。トランプ大統領が「北朝鮮の核廃棄」に向けてやる気であるのに比べて、ホワイトハウスは会談に慎重な姿勢を強めている。そして、会談までに北朝鮮が非核化に向けた「具体的ステップ」を取るよう求めている。
北朝鮮は20年来の目標であったアメリカ大統領との首脳会談を得た。アメリカは何も得ていないし、恐らく、何も得ないだろう。
しかし、表に現れない理由がある。政府関係者は恐れているのだ。政権のスタッフたちは、大統領の関心をイラン合意から逸らせたい、と考えている。あるいは、スタッフたちは、トランプが北朝鮮に関して正気ではない何かを始めることを恐れている。それゆえ、会談を「炎と怒り」ではなく、チーズバーガーを食べながらの歓談、にしてしまいたい。それは韓国がやってきたことだ。
トランプが、戦術的に、北朝鮮の核保有を認める、という戦略を理解しているとは思えない。「勝利した」とトランプに思わせるような何かをだれもが望んでいる。しかし、北が核を放棄しない、と知ったとき、トランプはどうするのか? 彼の子供じみた楽観が粉砕され、苦い怨嗟に代わる。2019年は2017年よりも、さらに危険であるかもしれない。
トランプは誰かを責めるだろう。それがだれであるか、によってシナリオが変わる。少なくとも、彼が自分を責めることはない。
NYT MARCH 10, 2018
Can North Korea Trust Us?
Ross
Douthat
FT March 12, 2018
Donald Trump’s diplomatic turn to N
Korea deserves acclaim
NICHOLAS
BURNS
アジアにおける軍事衝突の危険を冒すより、外交的な対話を選択することは正しい。しかし、北朝鮮は核を放棄する気などない。北朝鮮は強い立場に経っている。トランプはそれを認めることになるだろう。アメリカ大統領との会談を実現することは、北朝鮮の姿勢を容認することを意味する。
外交的な戦略を強化するには、アメリカ政府は韓国、日本、中国との連携を求めるべきだ。グローバルな制裁を維持すること、北に対する習近平の警告を引き出すべきだ。アメリカは鉄鋼とアルミニウムに関する保護関税を取り下げ、韓国への協力姿勢を示すべきだ。
PS Mar 12, 2018
Could the Trump-Kim Summit Succeed?
RAMESH
THAKUR
FP MARCH 12, 2018
Three Serious Problems With a
Trump-Kim Meeting
BY
MICHAEL J. GREEN
Bloomberg 2018年3月13日
The U.S. Has Bigger Problems in Asia
Than North Korea
By
James Stavridis
YaleGlobal, Tuesday, March 13, 2018
Is Trump Being Played in Kim’s
Survival Game?
Shim
Jae Hoon
Bloomberg 2018年3月13日
Game Theory Scowls at Trump-North
Korea Talks
By
Tyler Cowen
トランプは、何をやっても成功しないような、チェスの「ジグザグ」ポジションに入っている。
エコノミストは、米朝会談を考えるために、ゲーム論を使うだろう。ゲーム論は、一連の戦略が最後にどこへ向かうのか、を示し、そこからさかのぼって、現在の選択を理解する。理論は、北朝鮮に関して、彼らがアメリカの主要都市を狙う大陸間弾道弾を得るまで数年しかない、ということから出発する。アメリカと韓国は、首脳会談で何かを得る必要があるし、北朝鮮は交渉力を強めている。
北への予防的攻撃が必要だ、と考えるかもしれないが、私は反対だ。その反応は、戦争に向かう予測できない多くの可能性を生じるからだ。アメリカが非核化を要求しても、キムは受け入れない。トランプは攻撃を命じるだろう。
脅迫や買収は、これまでも行われてきた。すべてが失敗に終わった。現在、交渉力を高めた北朝鮮は、一層多くの報酬を求めるだろう。合意を守らせるためには、履行しないことが好ましくないと思わせるほどの多額の支払いを要する。それは、トランプにとって「世紀の取引」という成果にできても、確かな見返りもない取引に議会が同意しない。
買収シナリオは、別の問題を生じる。核武装する可能性のある多国が、米朝合意を観察しているからだ。トルコ、サウジアラビア、ベトナムなど、多くの国が核保有を目指し、あるいは、関心を惹くことを望むだろう。
アメリカは何をやってもうまく行かない。最善の可能性は、中国を動かすことだ。しかし、北の非核化を求める強い制裁と同時に、中国が米韓同盟を拒むよう韓国に求めるとしたら、それも受け入れがたい。
PS Mar 15, 2018
Misdiagnosing Kim Jong-un
JOHN
C. HULSMAN
FP MARCH 15, 2018
Mike Pompeo Will Be North Korea’s
Trump-Whisperer
BY
DOV ZAKHEIM
FP MARCH 15, 2018
Give North Korea All the Prestige It
Wants
BY
STEPHEN M. WALT
作家Dorothy
L. Sayersは短編を書いた。「大人たちも常にすべてを知っているのではない。そんなふりをするとしても。それは「威厳・威信」の問題だ。そのせいでヨーロッパ大陸の多くの戦争が起きた。」
米朝の指導者たちが扱う問題には、両国の利害対立だけでなく、地位、尊厳、エゴが関係している。アメリカにとっては、北の核兵器とミサイル技術が中心問題である。しかし北にとっては、その重要な要素として、認知と威信が問題となる。
事前協議も、北朝鮮の明確な約束もなしに、トランプが金正恩からの招待を受け入れたことで、キムはすでに長年の宿願であったものを手に入れた。世界最強国家の大統領と1対1で会談し、直接に取引することだ。首脳会談は全世界の注目を集めるだろう。
それに対してアメリカが得たものは、何もない。キム対トランプの第1ラウンドは、1対0、である。
アメリカは70年以上も北朝鮮の存在を認知してこなかった。ここに答えがある。できだけ早く、2人の指導者が会えばよい。金正恩は、その父や祖父がしなかった何かを認めるかもしれない。たとえ何も合意しなくても、アメリカ大統領と対等に扱われたことになる。
「威信」とは、他者が何か特別なものを認めることで得られる。国際政治では、ある国の「威信」が過去の実績に結び付くだけでなく、現在のパワーにもなる。それゆえ熱心に国家は威信を求めるのだ。国際社会からの認知と尊敬は、その国の指導者を優れた者に見せ、国内の支持も高まるだろう。何であれ、高い威信を得た国は、他国に対する抑止力を得る。冷戦時代、ワルシャワ条約機構の加盟諸国はオリンピックのメダルを(しばしば不正に)得ようとしたし、アメリカは人類初の月着陸を目指した。
しかし、長期にその国を認知しないことは、効果的な戦術を利用できないだけでなく、自己破壊的な習慣になる。アラブ諸国がイスラエルの存在を認知せず、アメリカが共産党政権の中国やキューバを認知しなかったことがそうだ。それはアメリカの国益を高めず、その国に関する情報収集能力や影響力を失わせた。
対話や認知を長く拒むほど、沈黙を破ることは困難になり、対話を始めるにはより大きな象徴的飛躍が必要になる。これは米朝首脳会談がともなう真の危険である。
大統領には、このギャンブルが価値あるものになる合意を持ち帰らねばならない、という大きな圧力がかかる。会談の席に着くだけでキムは威信を得る。しかし、トランプは、たとえば、彼が一貫して非難してきたイランとの核合意より悪い内容であれば、彼はもてあそばれたと思うだろう。
このとき、トランプの威信が失われる。取引の天才である、という慢心が破られる。彼は何をするだろうか? 過去の戦争がそうだった、と作家は物語に書いた。
l 福島原発事故の避難民
FT March 11, 2018
Fukushima nuclear disaster: did the
evacuation raise the death toll?
Robin
Harding in Fukushima
「子供たちは言ってた。『放射能で死ぬのは嫌だ。東京へ行こう。東京へ。』」
そこで家族は200キロ離れた東京へ移住した。しかし、それで彼らの本当に深刻な諸問題が始まったのだ。この7年間、苦しい生活環境、資金不足、学校での嫌がらせ、鬱状態、目的の喪失、放射能被爆による死の恐怖、と彼らは闘い続けた。「心理的に、私たちは破滅状態にあった。」
福島の生活はゆっくりと正常に復帰していたが、ますます明らかになったことは、住民の退避こそが、原発事故そのものではなく、災害の最も破壊的な部分である、ということだ。鬱状態、失業、アルコール中毒が地域外に逃れた6万3000人の中で恐ろしい高水準に達している。そのうち、2万9000人しか帰還していない。
l ロシアの国外におけるスパイ暗殺
SPIEGEL ONLINE 03/11/2018
The Putin System
How Russia's Eternal President Has
Changed His Country
By
Christian Esch
FP MARCH 12, 2018
I Knew the Cold War. This Is No Cold
War.
BY
STEPHEN M. WALT
FT March 13, 2018
How the UK might take action over
Skripal attack
GIDEON
RACHMAN
FT March 15, 2018
Hard-headed deterrence is the
antidote to Putin’s poison
PHILIP
STEPHENS
NYT MARCH 15, 2018
Hitting Putin Where It Hurts
By MISHA GLENNY
Bloomberg 2018年3月15日
Putin Isn't Scared Yet, But He
Should Be
By
Leonid Bershidsky
イギリスのメイ首相が、ロシアの二重スパイSergei Skripalに対するソールズベリーでの毒殺未遂事件について、即座に反発したことを、クレムリンの誰も気にしないだろう。しかしメイは、プーチンの政治体制に対する反撃の方針を明らかにした。公表されていないロシアの化学兵器備蓄を処罰する国際的な運動を起こす、というものだ。
イギリスのロシア人に対するプーチンの暗殺攻撃は続いている。たとえ経済制裁や金融システムからの排除が、イギリス自身を傷つけるから実行できないとしても、メイの反撃を無視することはできない。すでにNATOはロシアの化学兵器によるNATO加盟国内での攻撃を重視している。アメリカは、ロシアが約束したシリアの化学兵器廃棄が進んでいない、と非難している。フットボールのワールド・カップも迫っている。
The Guardian, Fri 16 Mar 2018
This is how to curb Putin: stop
welcoming Russian kleptocrats
Margaret
Hodge
The Guardian, Fri 16 Mar 2018
After the Skripal attack, talk of
war only plays into Vladimir Putin’s hands
Simon
Jenkins
FT March 16, 2018
Britain plays for high stakes in its
face-off with Russia
TONY
BARBER
NYT MARCH 16, 2018
What Makes Putin So Popular at Home?
His Reputation Abroad
By ELENA CHERNENKO
Bloomberg
2018年3月17日
Putin Has Committed Russia to a Risky Gamble
By Leonid Bershidsky
l 核融合
The Guardian, Mon 12 Mar 2018
The Guardian view on nuclear fusion:
a moment of truth
Editorial
l 多国籍企業・富裕層の納税
FT March 12, 2018
Multinationals pay lower taxes than
a decade ago
Rochelle
Toplensky in Brussels
FT March 13, 2018
Breaking the dilemma on global
corporation tax
NYT MARCH 15, 2018
A Billionaire and a Nurse Shouldn’t
Pay the Same Fine for Speeding
By ALEC SCHIERENBECK
Facebookのザッカーバーグと彼の会社の門番が、自宅に帰る途中でスピード違反を犯した場合、同じ罰金を支払うだろう。ザッカーバーグは瞬きもしないだろうが、門番は違う。
アメリカ中で、1つの違反にはすべて同じ罰金が科される。個人的な所得に関する考慮を、わざわざ禁止する州もある。
しかし、もっとまともな方法がほかの国では採用されている。たとえば、フィンランドやアルゼンチンでは、100年ほどに渡って、罰金を所得に合わせて変える。最もよくあるモデルは、その人物の1日当たり賃金だ。
単一罰金制は、また、処罰の基本的な目標に合致しない。すなわち、応報と抑止である。
The Guardian, Fri 16 Mar 2018
The corporate media ignores the rise
of oligarchy. The rest of us shouldn't
Bernie
Sanders
メディアは貧しい人々に関する報道を行わない。
(後半へ続く)