(前半から続く)
● 北朝鮮との核戦争
FT January
8, 2018
Time to
step off the nuclear tightrope
Beatrice Fihn(executive director of the International Campaign to Abolish Nuclear
Weapons, winner of the 2017 Nobel Peace Prize)
北朝鮮とアメリカの核戦争をめぐる言葉の応酬で、1つだけ良いことがある。それは冷戦終結以降、人々がほとんど忘れていた、人類の絶滅を思い出すことだ。
核兵器は歴史の遺物ではない。何千発、何万発もの核弾頭がわれわれを狙っている。数分以内に発射できる形で、核武装を維持する政治・軍事システムが続いている。こうした条件のまま生きることを受け入れるのは間違いだ。核戦争の脅威は本物である。それが起きていないのは、慎重な指導者のおかげではなく、単なる幸運である。いずれ、幸運は尽きる。
アインシュタインと共同で反核宣言を書いたラッセルBertrand
Russellはそこに記した。「あなたが張り詰めたロープの上を10分間も歩けると思うのは理由があるのかもしれない。しかし、何の事故にも遭わずに200年間も歩き続けると思うなら、それは間違いだ。」
世界の多くの地点で、人類滅亡の1万5000もの標的を狙っている。それらは軍事施設ではない。都市を壊滅し、市民を無差別に殺戮する。それは現代の軍事的必要に応じないし、戦争法にも反する。北陽線が核武装することを抑止したわけでもない。核兵器は戦略的な優位をもたらさない。単に、核武装を刺激するだけである。
私は解決策を知っている。北朝鮮についても、その他の場合でも。すべての核兵器を禁止し、全廃することだ。現実的ではない、と言うのか? 7月には122か国が国連の新しい核兵器禁止条約に参加した。われわれは新しい国際規範を創ったのだ。そこでは核兵器がパワーではなく、恥辱である。
化学兵器も、生物兵器も、地雷も、クラスター爆弾も、禁止することは不可能だ、と言われた。しかし、われわれは禁止した。アメリカ、ロシア、中国は、地雷やクラスター爆弾御禁止条約に参加しなかった。しかし、彼らも政策を変えたのだ。その使用は受け入れられないものとなったから。
たとえ北朝鮮のような国家が核を保有していなくても、テロリストが核兵器を盗み、基地を攻撃するかもしれない。ハッカーが核の管理システムをハイジャックするかもしれない。核兵器が存在する限り、それは使用されるだろう。
NYT JAN.
8, 2018
Can South
Korea Avoid Getting Played by the North?
By NICHOLAS EBERSTADT
FP JANUARY
8, 2018
It’s Time
to Bomb North Korea
BY EDWARD LUTTWAK
北朝鮮の核・ミサイル実験を空爆によって阻止することには、反対する理由があるが、一般に考えられるほど強い理由ではない。
北朝鮮による報復があるとしても、アメリカの安全保障政策を妨げるものではない。ソウルとその周辺をミサイル攻撃することに対して、その影響を緩和する方法はある。韓国政府は首都機能を移転するべきだったし、シェルターの整備を急ぐべきだった。また、イスラエルとアメリカが生産するIron
Domeを輸入することで、ミサイルの95%を阻止できるだろう。
北朝鮮の核施設は多くないし、規模も小さい。その防空システムは旧式で、空爆を妨げるものではない。
唯一、重要な理由は、中国の影響が強まる可能性だ。中国はすでに、石油の禁輸を含む制裁に参加しており、北朝鮮体制の保護を主張していない。北朝鮮が不安定化して、アメリカ軍が中国との国境に接近することを中国は好まないだろうが、韓国は北との統一コストを支払う意志がない。韓国政府は、むしろアメリカに依存することを抑えるため中国に接近するだろう。
インド、イスラエル、パキスタンも核兵器を保有している。しかし、政治的混乱や戦争を経験しても、こうした諸国は核の使用に言及していない。北朝鮮の行動は全く異なる。
手遅れになる前に、アメリカは行動すべきだ。
FT January
9, 2018
Trump and
North Korea: the perils of a pre-emptive strike
Demetri Sevastopulo in Washington
アメリカのトランプ政権内部では北朝鮮に対する軍事行動が選択肢として現実に検討されている。それは熱核戦争になるのか? アメリカはまだ、それを経験したことがない。まだ北朝鮮はアメリカに対する核攻撃ミサイルを完成していない、と軍事関係者は考えている。
それゆえに「予防戦争」の可能性を強く主張するかもしれない。北朝鮮を限定的な形で軍事攻撃し、血を流させることで、交渉へ引き出すのだ。すでに確認されている核施設やミサイル基地を1度きりの攻撃で破壊する。それに続いて、大統領による警告と、それ以上の攻撃はないことが公表される。
しかし、多くの元政府首脳は懐疑的である。アメリカの攻撃がそのような限定的なもので終わるとは思えない。James
Stavridis(former
Nato supreme allied commander and now dean of the Fletcher School at Tufts
University)は、その場合、核戦争になる可能性を10%とみている。いかなる軍事攻撃も、数万の犠牲者を出すし、200万から300万人が死亡することもあるだろう。
Dennis Blair(a retired admiral who in his former role as head of the US Pacific
Command)は朝鮮半島の軍事計画を担当していた。アメリカの軍事的選択肢は3つあるだろう。1.北朝鮮の挑発に対応する攻撃。たとえば、日本や韓国にサイバー攻撃やミサイル攻撃が行われる。2.金正恩が攻撃は無駄だと思うほど、強い軍事的圧力をかける。同時に3つの空母を動かしたことがある。1994年、彼が指揮したとき、毎日、戦争計画を練り直し、攻撃目標が確認された。3.予防的戦争として、ミサイル基地を破壊すること、あるいは、北朝鮮のすべての軍事力を破壊することまで含むかもしれない。
しかし、北朝鮮の核を廃棄させるにはアメリカが地上軍を派遣しなければならないだろう。
トランプは大規模な戦争を起こす気がない。金正恩の考えはわからない。諜報・分析手段がほとんどない。体制と生命の危機を覚悟したとき、彼がどうするか、予測できない。核武装の最終目標がわからない。アメリカとの交渉か、朝鮮半島の支配か。カダフィの末路に関しては金正恩が意識しているはずだ。
トランプ大統領の好戦的な主張に、韓国の世論や大統領は反発している。韓国には独自の反米感情がある。
FP JANUARY
9, 2018
Kim Jong
Un and Moon Jae-in Are the Negotiators Korea Needs
BY S. NATHAN PARK
FP JANUARY
9, 2018
What’s a
Nuclear Hotline Good For Anyway?
BY JEREMI SURI
FP JANUARY
9, 2018
‘Much Bigger’ Buttons Have Nothing to Do With Deterrence
BY PAUL D. MILLER
FP JANUARY
10, 2018
It Is Not
Time to Bomb North Korea
BY RUBEN GALLEGO, TED LIEU
Edward Luttwakの主張は間違いだ。北朝鮮に軍事攻撃を行うことほど破滅的な選択肢はないし、それこそアメリカの国益を損なう。
その犠牲は大きく、数日中に30万人が死亡する、アメリカ議会の調査は推定した。また、限定的な行動は一気に核戦争に進むだろう。
FT January
11, 2018
Dialogue
spurs possible easing of Korean tensions
GIDEON RACHMAN
● ユーロ圏の銀行同盟
FT January
8, 2018
Banking
union is not enough to save the eurozone
Euclid Tsakalotos
● マクロンとメルケル
FT January
8, 2018
Emmanuel
Macron can succeed where others have failed
NICOLAS COLIN
FT January
11, 2018
Now Angela
Merkel steps into Emmanuel Macron’s shadow
PHILIP STEPHENS
● トランプ税制
PS Jan 8,
2018
Saving
America from Trump’s Tax Reform
LAURA TYSON, LENNY MENDONCA
● 技術と労働
VOX 08
January 2018
On three
canonical responses to labour saving technical change
Ravi Kanbur
● 国際伝染病
NYT JAN. 8,
2018
We’re Not
Ready for a Flu Pandemic
By
MICHAEL T. OSTERHOLM and MARK OLSHAKER
FP JANUARY
9, 2018
The Only
Force That Can Beat Climate Change Is the U.S. Army
BY ANATOL LIEVEN
PS Jan 11,
2018
A
Bangladeshi Prescription for Cholera
AZHARUL ISLAM KHAN
● 国際移民管理体制
NYT JAN. 8,
2018
A
Counterproductive Approach to a Broken Immigration System
By
MICHAEL SHIFTER and BEN RADERSTORF
NYT JAN. 9,
2018
Don’t
Deport the Salvadorans
By
THE EDITORIAL BOARD
The
Guardian,Thu
11 Jan ‘18
Migration
can benefit the world. This is how we at the UN plan to help
António Guterres(secretary
general of the United Nations)
移民の管理は、われわれの時代の国際協力に向けた最大の挑戦である。移民は経済成長を助け、不平等を減らし、多様な社会を結びつける。しかし、それはまた政治的緊張や人間的な悲劇の源泉ともなる。移民の多数派合法的に働き、暮らしている。しかし、絶望的な状況にある移民たちは、命の危険を冒して他国に入り、犯罪者や奴隷のように扱われる。
人口圧力や気候変動は、今後も、脆弱な社会からの移民を増やすだろう。グローバル・コミュニティーは選択を迫られる。移民を繁栄と国際的連帯の源泉とするのか? あるいは、人道に反した扱い、社会的衝突の源泉とするのか?
今年、多くの政府が国連に集まって、移民に関するグローバル・コンパクトを交渉する。それは正式の条約ではないし、諸国を拘束するものでもないが、移民がわれわれの国民のために役立つことを示す共通のビジョンを示すものだ。
第1に、移民の相互利益を認め、それを強化すること。第2に、諸国は移民を管理し、移民を保護する法律を整備すること。第3に、弱い立場にある移民や難民を保護する国際法を整備し、国際協力を強めること。
YaleGlobal,
Thursday, January 11, 2018
Heroes of
the Republic: Filipinos Abroad
Barry Mirkin
● 公益事業体の革新
The Guardian, Tue 9 Jan ‘18
We can
undo privatisation. And it won’t cost us a penny
Will Hutton
イギリス有権者の4分の3が、鉄道、ガス、水道の再国有化を望んでいる。公有制が再び支持を高めている。
Thames Waterは、民間株式保有性の、最悪の例の1つだ。莫大な債務を築き、過剰は配当を支払って、税金を免れるためにルクセンブルクの持ち株会社を利用した。BTのハイスピード・ブロードバンド投資もそうだ。
しかし、コービンの再国有化案では、再国有化により国家債務の増大がGDPの10%に達する。また、大蔵省の予算として借入に制限を受ける。そのため、積極的な投資はできなくなるだろう。
新しい企業の形態、公益企業体the
public benefit company (PBC)を考えるべきだ。その経営では、私的利益よりも、公益を重視する。その設立では、政府に非専門家の経営理事を指名する権利を与える。彼らの役割は、PBCが交易を重視しているか監視することだ。直接、消費者グループと関連した理事が入ることもありうる。
PBCの株式は民間保有されているから、借入は国家債務ではない。株主の投票や配当についての権利はそのまま残っている。その目的は、国有企業と民間企業の最善の組み合わせた形態を創り出すことだ。
FT January
12, 2018
Re-nationalising
utilities is the wrong answer to a real question
MARTIN WOLF
公共事業と基幹サービスの所有と支配を、それを利用し、そこで働く者たちの手に取り戻す、と、コービン労働党の影の蔵相であるJohn
McDonnellは主張する。もし労働党が次の選挙で勝利すれば、1980年代以降、マーガレット・サッチャーが始めた民営化の多くは逆転されるだろう。それはうまく行くのか? 一言でいうなら、Noである。
われわれの中には、国有企業がどのようなものか、記憶している者がいる。それは決して、利用者の手に委ねられていなかった。閣僚と公務員が支配し、慢性的に過剰な職員を雇用し、過度に政治介入された。投資が不足したり、投資の決定がお粗末だったりした。利用者を無差別に扱った。私もその利用者だった。こうした企業形態は、機能しなかったから、すたれたのだ。
もちろん、民営化も万能薬ではない。自然独占、安全性、技術革新と投資のサイクル、など、民営化された事業を規制する理由はある。しかし、鉄道で明らかなように、民営化は成功だった。
再国有化はサービスの改善ではなく、混乱と時間の無駄につながる。コービンは、再国有化ではなく、規制改革を行うべきだ。
● なぜ日本ではポピュリズムが広まらないか?
FT January
9, 2018
Yokosuka:
a Japanese port in the line of fire
LEO LEWIS
PS Jan 10,
2018
Why Is
Japan Populist-Free?
IAN BURUMA
右派のポピュリズムが,ヨーロッパ,アメリカ,インド,東南アジアの一部まで席巻しているが,これまでのところ,日本はこれに侵されていない.日本には,文化的,政治的なエリートに対する大衆にたまった怨嗟を爆発させるGeert
Wilders, Marine Le Pen, Donald Trump, Narendra Modi, or Rodrigo Duterteのような政治家がいない.なぜか?
安倍晋三はトランプと息が合う.2人の間で,「私が朝日新聞をうまく手なずけたように,あなたもニューヨークタイムズを手なずければよい」と,安倍がトランプに冗談を言ったそうだ.
しかし,デマゴーグたちが,外国人,コスモポリタン,知識人,リベラル派に対する大衆の怨嗟を掻き立てるには,金融,文化,教育における顕著な不平等がなければならない.日本の1930年代にはそれがあった.しかし,今はない.現代の日本は,確かに欠陥もあるだろうが,ヨーロッパ,アメリカ,インド,東南アジアに比べて,平等主義が支配的である.日本では,最も裕福な人々が控えめな行動をとり,中産階級のための国家運営が支配的である.
デパートの店員たちは,商品に美しい包装を施すことに,本物のプライドを感じているようだ.また,制服を着た中年の男性が,銀行に入ってきた顧客に笑顔でお辞儀する姿を想像してみることだ.それは全くの表面的な儀礼のように見える.こうした職務を満たすから大きな満足を与えている,と思うのは無邪気すぎるだろう.しかし,人々は感じるはずだ.自分たちはつつましいけれど,この場所を得て,この社会に必要な役割を果たしている,と.
同時に,日本の経済は,開発された諸国の中で,最も保護されており,グローバル化が抑えられている.日本政府は,さまざまな理由で,西側に広まったレーガン=サッチャーの新自由主義を制限した.その1つとして,効率性を犠牲にしても雇用の安定性を守り,労働者のプライドを維持した.
サッチャリズムは,おそらく,イギリス経済をより効率的にしたが,労働組合や労働者階級の文化を守る様々な制度を破壊した.政府はまた,苦しい職場に務める人々のプライドの源泉を捨て去ったのだ.しかし,効率性はコミュニティーの心を生まない.エリートたちは良い教育を受け,才能のある人々かもしれないが,彼らはグローバル経済を利用し,繁栄している.漂流する労働者たちの不満は,こうしたエリートに向かう.
自分の富を自慢し,成功を自慢し,天才を自慢する,ナルシストの億万長者を大統領に選ぶような人々がアメリカに多くいたことは,その皮肉な結果である.同じようなことは,日本で起きない.その理由をよく考えることで,われわれは重要なことを学ぶだろう.
● 景気回復と金融政策
FT January
9, 2018
The world
economy hums as politics sours
MARTIN WOLF
PS Jan 10,
2018
Ready or
Not for the Next Recession?
BARRY EICHENGREEN
天気の良い日に屋根の雨漏りを修繕するべきだ.アメリカ経済は,まさに景気がよい.しかし,次の危機を免れる準備はあるのか? 明らかに,Noである.
VOX 10
January 2018
Tight
monetary policy is not the answer to weak productivity growth
Maurice Obstfeld, Romain Duval
生産性の上昇が停滞している.これは金融危機の前にもあった.今,政策担当者たちにとっては,金融危機の影響を脱するだけでなく,技術革新,教育,構造改革という形で,それを実現することが課題である.
PS Jan 11,
2018
The Danger
in Today’s Good Economic News
KEMAL DERVIŞ, ZIA QURESHI
PS Jan 11,
2018
Good Times
at Last?
JIM O'NEILL
Bloomberg 2018年1月11日
Why We
Have to Talk About a Bubble
By Jean-Michel Paul
FT January
12, 2018
Watch the
bond market, not equities
GILLIAN TETT
● ロシア政治
SPIEGEL
ONLINE 01/09/2018
The
Navalny Challenge
Behind the
Scenes of Russia's Imitated Democracy
By Christian Esch
NYT JAN.
11, 2018
Reviving
Old Lies to Unite a New Russia
By MICHAEL KHODARKOVSKY
Bloomberg 2018年1月11日
Why
Russians Are Choosing Malta Over Putin
By Leonid Bershidsky
Bloomberg 2018年1月12日
The Do's
and Don'ts of Fighting Russian Interference
By Leonid Bershidsky
● 経済ポピュリズム
PS Jan 9,
2018
In Defense
of Economic Populism
DANI RODRIK
ポピュリズムは政治的には容認できない主張だが,経済的には正しい場合もある.経済政策決定の主権をめぐる正当な評価をしなければならない.
● サブサハラ・アフリカ
VOX 09
January 2018
Social
structure and conflict in sub-Saharan Africa
Jacob Moscona, Nathan Nunn, James Robinson
● イランとサウジの若者
NYT JAN.
9, 2018
Iranian
and Saudi Youth Try to Bury 1979
Thomas L. Friedman
● 経済成長
FT January
10, 2018
Traditional
growth measures give a false account of economic health
DAVID PILLING
● ポーランドへの対応
NYT JAN.
10, 2018
The Battle
Line for Western Values Runs Through Poland
By
CHARLES A. KUPCHAN
● メキシコの大統領選挙
NYT JAN.
10, 2018
A Perfect
Storm Is Coming to Mexico
By
JORGE G. CASTAÑEDA
● エジプトと海底油田
FT January
11, 2018
The
opportunity that Levantine gas provides
● イエメン戦争
FT January
11, 2018
Yemen:
Trapped in crossfire of regional power struggle
Nasser al-Sakkaf in Hodeida and Andrew
England in Manama
● マレーシアのマハティール復活
NYT JAN.
11, 2018
Why
Malaysia’s Opposition Picked an Old Foe as Its New Leader
By
CHIN-HUAT WONG
● エチオピアの分断
FP JANUARY
11, 2018
Ethiopia
Is Falling Apart
BY MOHAMMED ADEMO, JEFFREY SMITH
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The Economist December 23rd 2017
Urban development:
Welcome to “nuclear-power town”
Nationalism: Vladimir’s
choice
Brexpats: iAdios, amigos!
Free exchange: Have
yourself a dismal Christmas
Women in economics:
Inefficient equilibrium
(コメント) 特集号の後半です.中国では中堅都市を何かの特産品でアピールさせる分散型成長戦略を採用しました.「原発」もその1つである,ということです.
ナショナリズムの特集記事に注目しました.しかし,私の読みが浅かったかもしれません.ドイツ帝その誕生の瞬間として,プロシア軍の優位に対して,フランス革命を守る義勇兵を鼓舞するためにナショナリズムを唱えた,と紹介されています.それは国家の正当性や権力の見直しを含む物でした.しかも国民はすべて異なっており,国民国家による統治を求めるのです.
21世紀のグローバリゼーションに対しては,トランプより,カナダでしょうか? 核兵器も加わって,国民国家間の均衡で平和を維持する,という前提条件は失われたようです.固有の文化を尊重しながら,しかも,多文化社会を受け入れること.
クリスマスは経済学に反省を求めています.その功利的,個人主義的な,合理性の解釈は,社会的条件を無視している,と.また,経済学部にはなぜ女性の教授が少ないのか? 女性を排除した経済学は,どのような偏りを生じたのか?
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IPEの想像力 1/15/18
2年のゼミでは,なぜ日本の国連安保理改革は失敗したのか,と話し合い,3年のゼミでは,ワールド・ピース・ゲームのすごろく=人生ゲームを作ろうとしています.卒業研究を書く学生は,それぞれのテーマでIPEを考えたことでしょう.
IPEの講義を聴いてくれた学生たちが,未来に,グローバル・ガバナンスを樹立する自分たちの力を信じて,この複雑で,見通しの立たない,しばしば醜悪な現実を生き抜く,たくましい希望を得てくれるだろうか? 自分たちの能力を高め,豊かな機会を与えてくれる,歴史的な統治形態を各地の人々が見いだす,歴史的瞬間に,彼らは立ち会うだろうか?
そういう希望を与えられない講義に終始したことに,そうではない,と願う部分を拾い集めて,少しは埋め合わせたい・・・ と思いました.
グローバル・ガバナンスとして,私は<国際レジーム>を想定しました.歴史的に,覇権国による国際秩序の確立(その多くは大戦争の結果)は,より集団的な,平和的調整過程に変わっていくでしょう.さまざまな問題に応じて,主要諸国が,企業・市民団体も加えて,新しいルールに向けて協議すること,協議における主要国の説得力,独立・常設の監視機関と情報収集,定期的な相互評価の積み重ねが,一定の<規範>を形成する,と考えます.
3つの議論を紹介しました.第1に,ジョン・アイケンベリーです.圧倒的な軍事力が,大戦争に勝利したことが,戦後の秩序を確立するのではない.パワーを持つ国は,新しい秩序において自らパワーを制限し,その優位を制度化するとともに,パワーの行使に関するルールを示します.
第2に,公共財の供給を<文明(圏)>と見るマーチン・ウルフです.農業革命に続く帝国の形成,帝国の崩壊が生み出す軍事的地方支配に代わって,産業革命と民主主義の時代がさまざまな公共財を供給し,維持しました.グローバル化し,多極化した<文明圏>を維持する集団的試みが,われわれに求められています.
第3に,アメリカやEUがグローバル・ガバナンスを形成した過程に注目したジェフリー・フリーデンです.新しい法的強制力は,市場の拡大と外部性の強まり,組織された利益集団の形成に沿って,起こりました.ただし,市場に媒介された分配をめぐる効果は不均等であり,パワーの正当性と財源・発言力の独占は,問題を偏った形でガバナンスに反映する,と指摘します.
だから未来に希望はあるのか? その答えは決まっていない,と思います.
私の答えは,IPEの果樹園が紹介する,現実の政治・経済・社会・文化をめぐる錯綜した関係・力学と,この講義が整理した「基本的なステップ」とがどのように結びつくか,常にそれを考えることです.イラクの反政府デモを考え,トランプ政権による通商政策の軍事化,イギリス労働党の目指す新しい国有化と公益事業体,ドイツ外交の価値とリアリズム,植民地支配をめぐる罪悪感,ビットコインの投機に加わる人々や政府,ロシア,サウジアラビア,エジプト,イエメン,メキシコ,ポーランド,マレーシア,エチオピア,あるいは,安倍首相とトランプ大統領の間で交わされた悪質なジョークに,驚き,恐れることです.
それは,噴煙と雷鳴に覆われた,強烈な火山島をめぐる何千キロものGreat
Raceだと思って間違いないでしょう.各チームは,数千メートルの火山をいくつも超えて,あなたの命を載せて走り続けています.
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