IPEの果樹園2018

今週のReview

1/15-20

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ビットコイン ・・・イランの反政府デモ ・・・ドイツ外交 ・・・アラブ首長国連邦のコモロ島民 ・・・北京の青空 ・・・貿易の軍事用語 ・・・パキスタンとの関係 ・・・イギリスの植民地主義と罪悪感 ・・・アメリカにも王室が必要 ・・・Brexit,トランプ,ウィンフリー ・・・北朝鮮との核戦争 ・・・国際移民管理体制 ・・・公益事業体の革新 ・・・なぜ日本ではポピュリズムが広まらないか?

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 ビットコイン

NYT JAN. 4, 2018

Rise of Bitcoin Competitor Ripple Creates Wealth to Rival Zuckerberg

By NATHANIEL POPPER

仮想通貨のブームが,一気に,1人の男を世界最富裕層リストに向けて発射した.Chris LarsenRippleの共同創立者の1人である.Rippleトークンの最大保有者であり,その価値は590億ドルに達する.Larsenの資産はForbesの超富裕層リストで第5位のMark ZuckerbergズッカーバーグFacebook CEOを抜いた.

FT January 10, 2018

Kodak’s convenient click into the blockchain

ANDREW HILL

FT January 10, 2018

A bitcoin bubble made in millennial heaven

ROULA KHALAF


 イランの反政府デモ

NYT JAN. 5, 2018

Finding the Way Forward on Iran

Bret Stephens

イランの体制は,民主主義ではない.それはクレプトクラシー(盗賊国家体制)である.そこでは権力者が私腹を肥やすために政府や公的機関,権力を濫用している.特に,イランの最高指導者ハメネイが,推定950億ドルの資金を支配するSetadがその代表である.アメリカは,ハメネイや仲間の支配者たちがイラン国民から奪ったこの富を,暴露すべきだ.Setadに対して制裁を発動することも必要だ.

FT January 6, 2018

Growing dissent adds to Iranian regime’s troubles

Najmeh Bozorgmehr in Tehran

昨年,若者たちは選挙に行った.友人や親せきにも,ロウハニHassan Rouhaniを支持するように説得した.西側との関係改善,経済の回復を約束して,ロウハニは5月に勝利したのだ.

今,テヘランでも,若者たちは連夜のデモに参加している.その要求は,大統領を解任せよ,1979年の革命以来,この国を動かしているイスラム体制を打倒せよ,である.デモ参加者は大学生に限らない.多くの都市や町で,経済に対する不満,不平等について,人々はデモに参加し,訴えている.

若者たちは言う.「イスラム共和国ではなく,イラン共和国を求める.」 しかし,デモのタイミングはロウハニにとって特に苦しいものである.彼は,国内でインフレを鎮静化し,経済を再建しなければならない.しかし,その政策に信用を得られない.彼の最大の成果は,経済改革のために核合意を結んだことだ.しかし,アメリカのトランプ大統領は,イランが中東に影響を拡大し,混乱を煽っていると非難し,核合意を破棄すると脅している.

抗議は激しくなり,すでに20人以上が死亡した.銀行,自動車,警察署,モスクが炎上し,破壊された.騒乱が散発的に継続している.

2018年のデモに特徴的なことは,その多くが労働者であることだ.伝統的に体制の支持者であった都市や町で,多くのデモが起きている.そこには汚職が広がり,不満が多いと推測されている.政府のインフレ抑制,支出削減のために,毎月700万イラン・リヤル(194ドル)以上の稼ぎがある家庭に対し補助金を削減する計画が,怒りを刺激した.他方で,宗教機関への資金供与は増額される.燃料価格の引き上げも予想されている.

デモの群衆は「ロウハニに死を」と叫ぶ.経済は悪化し続けているから.そして「ハメネイに死を」と叫ぶ.彼らはイランがシリアやパレスチナ,レバノンで軍事介入することの意義を疑っている.シリアのアサド政権にイランは60億ドルから100億ドルも支援している.その金はテヘランが必要としているのだ.戦争の犠牲者をイラン国民が受け取っている.シリアで1000人以上が殺された.「シリアを捨てろ.われわれのことを考えろ.」 デモの群衆は叫ぶ.

シリアでは民主化運動が内戦になった.改革派は民衆と国家とをつなぐことができなかった.イラン改革派の役割は,その1人が言うには,国家に民衆の抗議の重要さを認めさせ,同時に,人々が暴力を選ばないように警告することだった.

しかし街頭を埋めるデモの群衆は,政治のエスタブリッシュメントをすべて攻撃し,叫ぶ.「改革派は聞け.強硬派も聞け.お前たちのゲームは終わった.」 「聖職者たちよ.政治から出ていけ.」

イラン政府は,デモを刺激しているアメリカ,イスラエル,サウジアラビアを非難する.そして政府を支持するデモを組織する.若者たちはソーシャル・メディアを利用する.イラン国民の約半数が30歳以下である.彼らは変化を求めている.

自由な情報の流れはロウハニを権力の座につけた.しかし,若者たち,小さな町の住民は,より高い失業率に苦しみ,差別を意識し,強い不満を持つようになる.デモが起きた町で,失業者は,国民平均の11.7%という失業率より多いだろう.非公式には,失業率は2倍と言われている.若者の失業率は国民平均で公式に24.4%に達する.

構造改革が必要だ,しかし,それには政治システムの内部でコンセンサスがなければならない.強力な,富を支配する個人たちは既得権を手放さず,コンセンサスを妨げる.核合意は人々の希望を高めた.イランが改革されると期待した.ウランの精製(核開発)を中止し,それと交換に国際的な制裁を解除する,と合意したからだ.しかし,実際には,アメリカが銀行封鎖を続けている.テロ活動の資金源になっている,と推論しているからだ.外国企業はイランとの取引に参加しない.

ロウハニは,5月の選挙を核合意への国民投票に変えた.それなしには,彼が約束した経済改革は不可能だ,と訴えた.イラン国民は,もっと資金や技術が流れ込むことを期待したのだ.しかしトランプは,この画期的な合意の検証を拒み,守られていないという.トランプはイランの外交や軍事的関与,ミサイル開発を断ちたいのだ.そのためにデモを刺激するTwitterを流す.「変革の時が来た.」

ロウハニの支持者たちにも,強硬派に大きく妥協した,とロウハニを批判する声がある.大統領は難しいバランスを模索している.もしデモを弾圧すれば,彼を選挙で支持した人々を失うだろう.もしデモを容認すれば,体制の転覆を図るデモに同調した,と強硬派が彼を攻撃するだろう.国家が民衆に広まる社会不安の深刻さを理解し,彼らの意見に聴いて改革を真剣に進めることを,かつて政治犯として投獄された若者は期待する.

PS Jan 9, 2018

The Best Hope for the Iranian People

GEOFFREY HOON

FT January 10, 2018

The latest Iranian protests are different

DAVID GARDNER

FP JANUARY 10, 2018

Iran’s Elites Are Far More Fragile Than They Look

BY SANAM VAKIL


 ドイツ外交

SPIEGEL ONLINE 01/05/2018

The American Void

Time for Germany to Learn to Lead

By Christiane Hoffmann

ワシントンが世界の指導を放棄するとき、ドイツ外交の無邪気な時代も終わる。ベルリンはすぐに難しい選択に直面し、その道徳的な立場を損なうことになるだろう。

この変化を示すメルケルの言葉を2つだけ選ぶとしたら、それは明らかだ。1つは、国内政治に向けたもので、2015年、多数のシリア難民がドイツへの入国を求めたときに述べた。"We can do it."

もう1つは、外交に関する言葉であり、世界を揺るがすような影響を及ぼした。"The times in which we could completely depend on others are, to a certain extent, over," 非公式の、さりげない、ミュンヘンでの発言だった。「他者」としか述べていないが、それがアメリカを意味することは明らかだった。

今でも、アメリカはドイツの最大のパートナーであるし、ドイツ政府はそういう姿勢を好んでおり、NATOの同盟関係も続いている。ただし、いつまで続くのか?

アメリカが70年間も築いてきたリベラルな世界秩序は解体しつつある。アメリカは3つの異なる分野で後退した。すなわち、軍事的、道義的、そして、国際社会の指導者という責任から、後退したのだ。ヨーロッパの安全保障を約束する信頼できる国家ではなくなり、グローバルな政策形成や、自由な西側世界を指導する力も失った。アメリカのいない世界がどうなるのか? ドイツ外交はどうなるのか? 他国も「アメリカ・ファースト」をまねるのか?

ドイツにとって、外交の決断から隔離されている時代は終わった、ということだ。近年のドイツは、ヨーロッパで最も繁栄した経済、最大の人口を持つ国として、それにふさわしい責任を取ることに意欲を示してきた。しかし、今まではウクライナでも、ユーロ危機でも、主導的というより、受動的な姿勢を好んだ。

かつて西ドイツの主権は制限されていたし、歴史的な理由から、その立場の慎重さは理解できた。分断国家として、国際政治で役割を果たすには小さすぎた。しかし、将来について考えれば、ドイツは指導する国であるべきだろう。では、どこに向けて? 現在の世界情勢は、ドイツがその望みを明確にするよう求めている。

ドイツのグローバルな禁欲があったから、その外交は諸価値を重視できた。他国がリアル・ポリティークの汚れた側面を扱った。メルケルの難民政策は、人道的な原則をEUの結束より優先したものだ。それはドイツの伝統のもっとも極端な表現だった。価値と利害が対立すれとき、諸価値はプラグマティズムをともなうだろう。ベルリンは困難な決断を強いられる。

われわれはどこまでやれるか? ヨーロッパを防衛したり、中東に平和をもたらしたり、アフリカを安定化する覚悟があるのか?

法の支配、人権、多国間主義、グローバルな合意の尊重は、ドイツの利益を実現するものだ。しかし、それでもドイツ外交の目標としては制限する必要がある。

たとえば、EUとウクライナとの合意は、キエフの主権をEUに引き寄せておくことになる。しかし、ドイツはヨーロッパの利益を実現するために、ウクライナやロシアと戦争するだろうか? また、EUは移動の自由という原則を無条件に受け入れている。その姿勢がイギリスのEU離脱に道を開いたのではなかったか? ドイツは原則が損なわれることを恐れて、妥協のための話し合いを許さなかった。

ほかにもある。カタルーニャの独立をめぐる紛争だ。EUは加盟国の内政問題に干渉しない、という原則をドイツも支持している。しかし、ベルリンもブリュッセルも、もしマドリードとバルセロナが中間の道を見いだすのを助けられるなら、その方がよい。

こうした考察は、われわれが事態を変えるパワーを持たないことを受け入れる必要がある、という意味だ。ドイツは、ロシアで民主主義の発展が、予想される将来に、起こりそうにないという事実を覚悟せねばならない。それでもわれわれは、ロシアやトルコをヨーロッパと結びつける政策を必要とする。中東においては、われわれがロシアとともに、アメリカが抜けた穴を埋めねばならない。そして中国だ。中国の拡大する影響力を、ヨーロッパが制限する政策をドイツは必要とする。

最後に、ポーランドをどうするべきか? ポーランドがEUにとどまること、ポーランドが法の支配という原則を守ること。もし両方を満たすことができないとしたら、東欧諸国をEUにとどめることがドイツの利益である。たとえ彼らがすべての価値を受け入れないとしても。

ドイツは、将来、こうした対立に直面する。われわれはもっと激しい議論を必要とするだろう。それは国民と行われるべきだ。ところが、ドイツ政治は道義的パワーの幻想に注目して、議論している。もしドイツが国際政治を指導するなら、世界に対するリアリストの視点と外交政策を持つべきだ。

SPIEGEL ONLINE 01/08/2018

Germany's Foreign Minister

'We Are Seeing What Happens When the U.S. Pulls Back'

Interview Conducted by Christiane Hoffmann and Klaus Brinkbäumer

NYT JAN. 9, 2018

Europe Listens Anxiously as Germans Talk

By THE EDITORIAL BOARD

NYT JAN. 11, 2018

Is Angela Merkel Done For?

By ALEXANDER GÖRLACH


 アラブ首長国連邦のコモロ島民

NYT JAN. 5, 2018

Who Loses When a Country Puts Citizenship Up for Sale?

By ATOSSA ARAXIA ABRAHAMIAN

コモロ諸島は東アフリカの小さな国で、輝く砂浜がある。巨大な活火山のために、人口は80万人を切っている。15万人のコロモ島民が、かつて島を統治したのはフランスであったため、パリ都市圏に住む。さらにコモロのパスポートを持つ4万人がアラブ首長国連邦(UAE)に住む。

しかしUAEに住むコモロ島民は自分たちの国の言葉を話せない。彼らは身体的にも、文化的にも、島民と似ていない。彼らは島で生まれたのではなく、島を見たこともない。事実、最近まで、彼らは国籍がなく、bidoonであった。

Bidoonとは、アラビア語の“without”を意味し、主に家族と離れて暮らす者のことだ。その土地の部族に属さず、人口に数えられない。その土地の文字が読めず、エスニックが異なり、行政にアクセスできない。

UAEbidoonを真の国民とみなさない。彼らに国籍を与えることは、国民と同じ潤沢な社会福祉を得ることを意味するだろう。9年前に、その解決策としてUAE政府は、コモロ政府に多額の資金を与え、彼らにパスポートを発行させた。その額は、小さな島国に対しては破格のもの、1人のパスポート当たり4000ユーロ、2008年以降、総額2億ユーロと推定される。それはコモロのGDP3分の1にあたる。

当初、UAEは仲介者を通じて資金を与え、島のインフラ整備などに支出することを考えた。しかし、開発計画は期待外れであったため、資金をコモロ中央銀行に直接に移転し、アブダビ内務省がこの口座を管理している。

最近、アブダビのコモロ大使館は、8歳以下の子供、830人にコモロ国籍を与える、と内務省に手紙を書いた。これは表面的には、すべての関係者に利益がある。国籍のない者がパスポートを得て、暮らし、働き、旅行できる。貧しいコモロ島民は資金を得る。UAEは無国籍者を減らす。国連難民局は、世界の無国籍者1000万人を2024年までに解消するキャンペーンを進めているのだから。

しかしそれは、実際、悪辣な過程で進んでいる。UAEは国際条約に従わず、住民への市民的自由や政治的権利を否定している。無国籍からコモロ市民となっても、彼らは生涯、外国市民と分類される。UAEは資金を出すだけでなく、コモロ政府のパスポート発行を助け、住民に運転免許証や学校への入学を拒むと脅して、応募することを強いている。

バヌアツやマルタのように、最近、多くの小国がパスポートを売っている。しかし、その買い手は世界の富裕層だ。彼らが旅行や銀行口座を処理するのに便利だから。コモロの場合、USEが国籍を与えないために貧しい国に金を払っている。グローバリゼーションが、パスポートが必ずしもその人のことを、住む場所を、帰属するコミュニティーを示していない状況を創っている。

パナマ文書やパラダイス・ペイパーが示したように、富裕層は国民国家システムの割れ目を利用して、自分が住む土地の社会的な、そして財政的な責任を無視した、ボーダーレスな暮らしを楽しむのに都合のよい法的資格のショッピングをしている。また権威主義的な政府は、住民への基本的人権を満たす義務から逃れるために、コモロ島の主権を借りている。

ミャンマーでは特に、ロヒンギャ難民が人口スワップにさらされている。軍部がロヒンギャを襲撃し、65万人のロヒンギャ難民がバングラデシュのキャンプに流入した。バングラデシュ政府は難民を長期に受け入れる気はないが、ミャンマー政府にも、その一部の帰還を認めても、彼らに完全な市民権を許す政治的意志がない。ロヒンギャが外国のパスポートを強いられても不思議はない。

国際社会は、難民とその次世代が直面する現実を知らねばならない。


 北京の青空

NYT JAN. 5, 2018

A Chinese Empire Reborn

By EDWARD WONG

Bloomberg 201815

China Hasn't Won the Pacific (Unless You Think It Has)

By Hal Brands

PS Jan 8, 2018

China’s Green Opportunity

ADAIR TURNER

北京を訪問する多くの人は,スモッグではなく青空を観て,うれしい驚きを経験する.それはある意味で,汚染する工場を首都から他の都市へ移転させ,とくには代替システムがまだ設置されなくても,石炭を使う暖房システムを廃止してしまう,という強権的な政策が実行されたからだ.しかし同時に,中国政府が,グリーン・エコノミーは生活の質を改善するだけでなく,技術や政治の指導力を高める大きな機会であると理解しつつあることを意味する.

FP JANUARY 8, 2018

China’s War on Poverty Could Hurt the Poor Most

BY EUGENE K. CHOW


 イスラエル

NYT JAN. 5, 2018

Israel Digs a Grave for the Two-State Solution

By THE EDITORIAL BOARD


 貿易の軍事用語

FP JANUARY 5, 2018

Will Global Trade Survive 2018?

BY ROBERT A. MANNING

FT January 9, 2018

The weaponisation of the language of trade

REBECCA HARDING

貿易を語る言葉が兵器のようになってしまった。トランプ大統領は1月の一般教書演説を準備しているが、そこで中国の不公正な慣行に対する「攻撃的な通商措置」を示すと予想される。

北京は長い間、トランプの好戦的主張の標的であった。

われわれは貿易相手国としてではなく、敵について語る。すべてのものの機会ではなく、国益について語る。国境の開放や国民国家の終わりではなく、保護主義や壁について語る。

歴史を通じて貿易と外交とは緊密に結びついてきたが、現在の危険な傾向は、その壊れやすい経済と政治の均衡状態が、極端に政治に向けて傾いていることだ。貿易戦争が、国益を守る政策手段であるとともに、外交目的を達成する手段にもなっている。Brexitや北朝鮮を観ればよい。


 「炎と怒り」

The Guardian, Fri 5 Jan ‘18

Fire and Fury confirms our worst fears – about the Republicans

Jonathan Freedland

 

Michael Wolffの新著Fire and Furyはトランプ政権の実態を暴露した。その最側近や家族でも、トランプが大統領にふさわしい人物でないことを認めている。しかし、共和党はこの大統領を支持し続けるのか? 共和党員たちは何度も、彼が代わるだろう、と言い続けた。しかし、それは間違いだ。彼は何も変わっていない。

共和党の反応は、この本を非難するより、バノンの没落を歓迎するものだった。そして、どれほどその能力が疑われても、共和党がトランプの大統領としての地位を停止する憲法修正条項に同意することはないようだ。

FP JANUARY 8, 2018

If You Thought 2017 Was Bad, Just Wait for 2018

BY HAL BRANDS


 パキスタンとの関係

NYT JAN. 5, 2018

Pakistan, the Endlessly Troublesome Ally

By THE EDITORIAL BOARD

アメリカは、地域の過激派と戦うために同盟者となる国に援助を与えたり脅迫したりすべきなのか? あるいは、その関係や資金提供を制限し、さらには彼らと過激主義者との喚起衛を理由に厳しい条件を付けるべきなのか?

木曜日、トランプ政権はパキスタンへの軍事援助、毎年約13億ドルを凍結する、と発表した。それは16年間で何度も行われた制限措置の最新の発表だった。しかしトランプがこの動きを管理する真剣な計画を立てているとは思えない。

アフガニスタンにおけるアメリカの軍事攻撃のほとんどすべてがパキスタンの空軍基地から行われている。ほとんどの物資がパキスタンの道路と鉄道で供給される。パキスタンはまた中国の緊密な同盟国でもある。中国はすでに巨額のインフラ投資を行い、アメリカとの関係を犠牲にして、インドと対抗している強硬派は、中国と関係を強化している。

アメリカが1990年代にパキスタンへの援助を停止したのは、パキスタンが核実験を行い、軍事クーデタを起こした後だった。それによって生じた不信感は、その後も決して解消しなかった。しかし、2001年の911が起きてから、その関係は一夜で転換した。アメリカはパキスタンに立場を選択するように求めた。アルカイダやアフガニスタンのタリバンと戦うのか? そして、パキスタンとの国境に近い無法地帯を避難所としているパキスタンの過激派とも戦うのか?  パキスタンはアメリカの要求を受け入れて、援助を得た。

その後、パキスタンは二重のゲームを行ってきた。アメリカの資金を受け入れる一方で、アフガニスタンとカシミールにおける彼らの利益を守ったのだ。

トランプ大統領はパキスタンとの関係を断つことができない。パキスタンは重要な情報を得るために必要であり、世界で最も急速に核兵器を増やしている国だ。外交的手段を考えるべきだろう。たとえば、トランプが得た新しい友人であるサウジアラビアやUAEの指導者たちに、過激派への資金提供を断つように求めてはどうか?

FT January 8, 2018

Trump takes aim at Pakistan’s duplicity

NYT JAN. 9, 2018

How Not to Engage With Pakistan

By RICHARD G. OLSON


 イギリスの植民地主義と罪悪感

The Guardian, Sat 6 Jan ‘18

The sun may never set on British misconceptions about our empire

Ian Jack

Oxford1人のドンが、イギリス国民は植民地主義に関する罪悪感を持つべきでない、と求めている。

われわれは帝国について学校でどのように学んだのか? 教師たちはそのことを語りたがらなかった。1950年代までに、イギリスの栄光ある征服や植民地支配のもたらした利益を強調することは、もはや支持されなくなっていた。単に道徳的な理由だけではない。血によって獲得したものは今や失われていた。その過程は平和的なことも、そうでないこともあった。イギリス人は、公平さの響きを込めてCommonwealthと呼んでいたが。国民的な衰退は、教室での楽しい話題ではなかった。

こうして帝国の歴史を教えなかったことは、現在の国民感情にかなり影響しているだろうが、正確に知ることはむつかしい。2年前、セシル・ローズ像を撤去すべきか、を問うYouGovの調査によれば、43%のイギリス人が「イギリス帝国は良いことだった」と答え、悪いことだったと答えたのはわずか19%であった。さらに、44%は「イギリスの植民地主義の歴史を誇りにすべきだ」と答え、19%が後悔すると答えた。Oxfordにあるセシル・ローズ像を撤去すべきと考えたのは11%だけだった。

植民地主義の評価をめぐる論争で、アメリカの政治学者Bruce Gilley“The case for colonialism”を発表した。掲載をめぐっては、雑誌Third World Quarterlyの編集委員会から大量辞任を引き起こした。植民地主義の道徳的な非難に反対し、学術的な方法で、植民地支配のバランス・シートを作るべきだ、とNigel Biggarは主張する。しかし、歴史的な事実の選択には人によって大きな違いがみられる。

Biggarは「もしローズ像を倒すなら、チャーチル像も倒さねばならない。彼らの帝国や人種に関する見解はほとんど違わない。」という。 チャーチルはインド人を心底嫌っていた。1945年、チャーチルは、ヒンドゥー教徒は滅びる運命を、その繁殖の速さによって免れてきた不潔な種族だ、と私設秘書に語った。チャーチルの態度が1943年のベンガル大飢饉を助長した、という主張もある。彼はインド植民省からの助言を無視し、飢饉の犠牲者は200万から300万人に達した。

歴史家たちは、帝国の道徳的な批判を再定義するより、過去に何があったのかを研究するべきだろう。

FT January 10, 2018

Brexit will allow the UK to value its countryside again

ROSS MURRAY

Bloomberg 2018110

Europe Has Completely Turned the Tables on Brexit

By Leonid Bershidsky

The GuardianThu 11 Jan ‘18

No deal is a disaster. The government must tell us the truth about Brexit

Sadiq Khan


 アメリカにも王室が必要

NYT JAN. 6, 2018

What’s the Cure for Ailing Nations? More Kings and Queens, Monarchists Say

By LESLIE WAYNE

ロシアの文豪トルストイの遠い親戚であるNikolai Tolstoy伯爵は、病めるアメリカに対する完璧な治療法を知っている、という。アメリカには王室が必要なのだ、と。

王室のもたらす王様や女王たち、その装飾の華々しさは、政治的混乱に陥った超大国にとって薬になるだけでなく、世界全体にとっての安定剤にもなる。

82歳のトルストイ伯爵は、イギリスとロシアの国籍を持ち、著述家で保守政治家、the International Monarchist Leagueの指導者でもある。この運動の中心的な主張は、王室のある国は安定しており、繁栄する、ということだ。王室は国民を統合し、強力なシンボルになる。王室は政治を超えた存在だ。

Mauro F. Guillén the Wharton School at the University of Pennsylvania、経営学教授)は、他の政体に比べて王制が優れていることを示す、頑健で数量的に有意義な証拠がある、という。王制は衰退しているどころか、世界中で支持されている。王制は、その安定性がしばしば経済にも利益をもたらし、所有権の保護や、選挙を経た政権がその権限を乱用するのを防ぐ。

歴史の本には、もちろん、弾圧や富の収奪、腐敗のシンボルとなった多くの例が描かれている。しかし、彼らが主張しているのは、Belgium, Britain, Denmark, Japan, the Netherlands, Norway and Spainのような立憲君主制だ。

「王室には、スタイル、神話、エートスがある。」と、伯爵は言う。「大統領は入れ替わるが、王室には連続性がある。それは歴史の感覚だ。」


 Brexit,トランプ,ウィンフリー

FT January 8, 2018

Donald Trump and Brexit are no longer identical twins

GIDEON RACHMAN

Brexitとトランプは永久に歴史的な事件として結び付けて議論されるだろう。ヨーロッパの主流政治家たちは、この2つを敵視してきた。

しかし、トランプとBrexitとは双子ではない、とわかってきた。トランプは大統領に期待される行動を毎日のように破っている。他方、メイは慎重に正しい政治姿勢を示そうとする。確かに首相は、EU離脱が「グローバル・ブリテン」の未来を拓く機会である、と主張する。しかし、それはルールに依拠したリベラルな国際秩序に依拠しており、これに対して、トランプは国連もWTOも攻撃する。

一連の問題を通じて明らかなのは、イギリスがアメリカよりもEUと多くの点で同じ立場を取ることだ。Brexit強硬派には、いまだに、英語を話す「」アングロサクソン世界」の中心に英米を描く者もいる。しかし、そのような熱狂を共有しない保守政治家たちは、ポピュリスト運動の本質を見誤った。

Brexit後の政治論争は、基本的に伝統的な議論を引き継ぐものだ。他方、トランプのホワイトハウスはますますTVのリアリティー・ショーになっている。

FT January 10, 2018

The temptation of Oprah Winfrey

EDWARD LUCE

ウィンフリーOprah Winfreyが大統領になることを、なぜそれほど多くのアメリカ人が望むのかは容易にわかる。ウィンフリーは、トランプではないものすべてである。

トランプと違って、ウィンフリーは証明書付きの億万長者だ。彼女は聴き手の共感を呼び、本気で慈善活動を行っている。トランプのような恵まれた過程を持たず、彼女は自力で成功した。しかし、2人には共通した欠点がある。それは、政治の経験がないセレブであることだ。

有名人を侮辱するつもりはない。アメリカがセレブを創り出した。しかし、またアメリカは現代の民主主義も創った。問題は、セレブ文化が政治を圧倒することだ。それは政府を苦しめる。政治が人気投票であるなら、ウィンフリーは勝つだろう。しかし、彼女の経歴には、労働が将来どうなるか、中国の台頭にどう対応するか、示すものはない。ウィンフリー政権ができれば、それは彼女のブランドを破壊するだけだ。

アメリカの統治の安定性が問われている。アメリカ憲法は群衆による支配を排除するようにデザインされた。まさに、トランプのような男が権力を握れないように、憲法が創られたのだ。アメリカは民主主義のモデルというより、立憲共和制として生まれた。そこには大きな違いがある。建国の父たちはデマゴーグを恐れた。

ウィンフリーの台頭は、アメリカがもはや政治を真剣に扱わない国になったことを示す。もしトランプを倒すために、セレブにはセレブで対抗するなら、公務という考え方は消滅する。ロナルド・レーガンは俳優であったが、カリフォルニアの知事に2度選ばれたし、政治的な指導的地位を経験した。そして、妥協の技術を学んだのだ。政治では、混乱した結果を得るために政治的資本を費やす。セレブは、自分のブランドを守るだけだ。

かつて西側の民主主義は、教会と国家との間に壁を築いた。今、われわれはエンターテインメントと政治の間に壁を必要としている。

もしウィンフリーが立候補すれば、その最初の犠牲となるのは民主党だ。第2の犠牲者はウィンフリーである。トランプの政治マシーンは、彼女の経歴を汚すことを、執拗に追求するはずだ。トランプが勝利するかもしれない。またウィンフリーが勝利しても、その戦いはアメリカ政治を支配する文化戦争になる。それはゼロサムであり、たとえ勝利しても、それは敗北である。

ウィンフリーがもっとも輝いたのは、2008年の選挙で、オバマを早くから支持したことだ。ニューハンプシャーでウィンフリーが“You are the one,”とオバマに語ったとき、衝撃が走った。今、ウィンフリーが聞くべきは、経験のある民主党議員ペロッシNancy Pelosiの助言である。賛否あるだろうが、自分の仕事に励め、と。

NYT JAN. 10, 2018

Trump’s Threat to Democracy

Nicholas Kristof


(後半へ続く)