(前半から続く)
● 巨大都市と中小都市
NYT DEC. 30,
2017
The
Gambler’s Ruin of Small Cities (Wonkish)
Paul Krugman
巨大都市はますます中小都市を必要としなくなっている。現在経済における地方都市の役割は何か?
かつて、地方の小都市は明らかにすることがあった、彼らは農業に従事し、その他の自然資源に基づく経済活動があった。耕作地や自然資源は分散しており、地方人口も分散して諸都市が点在した。
しかし時とともに、農業が経済に占める重要性は低下した。それとともに地方人口は減少し、都市も衰退した。それにもかかわらず地方の小都市は生き残り、中には工業の中心地となって成長する都市もあった。それは一般に、マーシャルの三位一体である、情報交換、特化した供給業者、特化した技量を持つ労働者の集積、があったからだ。
何によって小都市の産業は発展するのか? 立地や資源は重要だが、多かれ少なかれ、それは偶然に決まる。1つの産業が発展した後、また新しい産業がそれに続く。エリー運河の利益を受けて製粉所が発達したRochesterがそうだ。その後、ドイツからの移民がレンズやガラスの工場を建てた。コダック、その後はゼロックスが発展した。
それは機会に応える幸運を要した。新しい産業が起きて旧産業に代わり、ある都市は成功したが、他の都市は失敗した。巨大な多様化した都市は多くの衰退産業があっても成長できるが、小都市にはできない。それは賭けだった。
これはグローバリゼーションとは関係なく、もっと長期に進行した過程である。小都市が破たんすることの社会的コストは大きく、その活力を維持する地域政策には一定の根拠がある。しかし、この闘いは長期的趨勢に逆らうものだ。現代経済が土地から切り離されたとき以来、地方の小都市は歴史的な衰退過程にあるからだ。
NYT JAN. 1,
2018
Can the
Economy Keep Calm and Carry On?
Paul Krugman
● 殺人ロボット開発
Bloomberg 2017年12月30日
Nobody's
Ready for the Killer Robot
By Tobin Harshaw
● イランの政治
NYT DEC.
30, 2017
How Can
Trump Help Iran’s Protesters? Be Quiet.
By PHILIP GORDON
NYT Jan.
2, 2018
Why Iran
Is Protesting
By AMIR AHMADI ARIAN
これは私が経験した3度目の大衆抗議である。1999年7月、表現の自由を求める学生たちの抗議が広がった。2009年6月、大統領選挙の投票結果をめぐって数え直しを求める声が街頭抗議と緑の革命につながった。どちらも市民の権利を要求し、政府に弾力性と説明責任を求めた。デモはもっぱらテヘランで行われ、大学教育を受けた中産階級の、非暴力的なものだった。
今回は違う。抗議は国中の小規模な宗教的町から強まった。それは政府が体制を支持することが当然とみなす土地だった。大都市での抗議は大きく遅れていた。彼らの要求は、表現の自由でも、女性やマイノリティーの権利でもない。失業問題、インフレ、国富を略奪する者への不満を訴えている。ある女性は、わずか月300ドルで暮らすように、ロウハニ大統領に求める。イラン・イラク戦争の退役軍人は、自分を「忘れられた者たち」とみなしている。高齢の女性は、自分の75歳の夫が長時間働いて生活を維持している、という。「インフレを止めよ。」「略奪者を許すな。」「宗教指導者は政治に口を出すな。」
1979年の革命以来、イラン政治は改革派と原則派に分断されている。1999年、2009年のデモは改革派の支持を得たが、今回は分断を越えたものだ。彼らは、改革派のロウハニも含めて、現状維持につながる誰の支持も求めない。改革派のジャーナリストで亡命中のEbrahim
Nabaviは、デモ参加者たちを「ポテトを食べるモッブ」と軽蔑した。
革命後の数十年と違って、富裕層は富を軽率な形で自慢している。2000年代の最初は、ドバイやトロントに富を隠し、国内では質素に暮らした。富を見せびらかさず、1979年の革命の理想を薄っぺらな膜でごまかした。しかし、若い世代は、富の源泉を気にしない貴族のように振る舞う。貧困層の前で高級車を乗り回し、豊かな生活を写してインスタグラムに載せた。イラン人たちは、体制の支配者家族は世界中の海岸で酒を飲み、ぶらぶらしている写真を観た。他方、自分の娘はスカーフをしていなかったという理由で逮捕され、息子は酒を断ったという理由で投獄されている。
しかし、権力のピラミッドで頂点にある人々は、1979年の革命に参加した。シャーが革命派の声に耳を貸したときが、その体制の終わりの始まりだった。アラブの春でもそうだ。チュニジア、エジプトはデモ参加者を宥和しようとして権力を失った。他方、反対派の存在も認めなかったシリアのアサドは生き延びている。
イランは多くの動乱を生き延びた。政府は今回を生き延びるかもしれない。しかし、大都市のエリートが政府に反対するとき、頼ることのできた地方からの支持はもうない。
FP JANUARY
2, 2018
Iranians
Are Mad as Hell About Their Foreign Policy
BY DENNIS ROSS
イランの革命政権は拡大主義を採ってきたが、その代償を大規模デモとして目にしている。
Bloomberg 2018年1月2日
Democracy
in Iran? The Demographics Say Yes
By Leonid Bershidsky
Bloomberg 2018年1月2日
The West
Can Help Iranians Take Back Their Country
By Eli Lake
FT January
3, 2018
Iran’s
disillusioned youth spare no one in display of anger
Najmeh Bozorgmehr in Tehran
FT January
3, 2018
Tehran
would be wise to listen to the protesters
2017年はリベラルな民主主義が内外において強い圧力を受けた。しかし、新年の最初に、専制支配者も同様に脆弱なことをわれわれは知る。イラン国民は、政府が海外の冒険主義的な試みに資源を費やし、国内の経済発展を軽視する姿勢に、飽き飽きしている。
2015年の核合意は、イラン国民に制裁解除と貿易の再開を期待させた。しかし、それは進んでいない。インフレは低下し、数年の不況の後に景気回復が起きて、イラン原油の輸出も再開された。しかし、投資や雇用の伸びはアメリカの新政権が決めた新しい制裁によって妨げられ、アメリカは核合意に関しても破棄する可能性がある。
抗議活動は権力闘争に利用される。イスラム共和体制を守るには強権が必要だ、と信じている者は経済変化を体制転換につながると恐れる。他方、改革派は長期の体制を維持するためにシステムの改革を主張する。抗議の広がりは、強硬派がロウハニの改革を非難する理由になる。経済改革は神権政治を脅かし、革命防衛隊の支配、特権、ビジネスを奪う。
アメリカのトランプ大統領はイランを敵視し、デモ参加者に支援のTweetをする。イスラエルの政治家にもそのような支持を表明する者がいる。しかし、それは賢明ではない。外部勢力の介入は強硬派が武力弾圧する口実になり、ロウハニをさらに苦しくする。
EUは、アメリカの好戦的な姿勢に同調せず、イランへの関与を支持し、その漸進的な改革を促すべきだ。
FP JANUARY
3, 2018
Trump Can
Help Iran’s Protesters By Rejecting His Own Iran Policies
BY SUZANNE MALONEY
● AI,ロボット,グローバリゼーション
NYT Jan. 1,
2018
A.I. and
Big Data Could Power a New War on Poverty
By ELISABETH A. MASON
ビッグデータやAIが職場を失わせるという不安に対して、われわれはもっと積極的に問題解決に活用することを考えるべきだ。ビッグデータとAIは貧困を解消し、経済の安定性を高めることができる。
第1に、AIによって職を失う恐れのある労働者に、中産階級にふさわしい他の職場を見つけることができる。また、将来、必要となる職場に合わせて、技能や職業訓練を実施できる。
第2に、生徒たちに対して、異なるやり方、異なるスピードで教育できる。
第3に、政府の社会給付に依存する人々に対して、イデオロギーによる対立を廃して、プログラムの改善や、無駄の解消ができる。
歴史的に、われわれは、社会管理やジョブ・マッチングが指令経済につながると恐れて、手を付けなかった。しかし、その姿勢を改めるときだ。AIや新技術は社会の前進を促し、カオスや社会崩壊をもたらすものではない。
PS Jan 2,
2018
Does Trade
Fuel Inequality?
JEFFREY FRANKEL
所得分配の不平等化とグローバリゼーションは同時に進んだ。しかし、グローバリゼーションを不平等の原因とするのは間違いだ。
Xavier Sala-i-Martinが指摘したように、不平等はすべての国で増大しており、国家間の不平等は減少している。特に、中国とインドのように、発展途上諸国の成功が重要だった。其れには多くの要因が関係しているが、アジアの成長に果たした貿易の重要性は明らかだ。
トランプ大統領のようなゼロサムの貿易論は、アダム・スミスとデイヴィッド・リカードが否定したものだ。ただし、スミス=リカードの貿易論は国内の分配問題に応えなかった。
その点では、HO-SS(the
Heckscher-Ohlin-Stolper-Samuelson)モデルによる労働者と物的・金融的・人的資本の所有者との区別が有益だ。国際貿易は豊富な生産要素の所有者に利益を、希少な生産要素の所有者に損失をもたらす。
その後、1980年から、貿易論の革命が起きた。Paul
Krugman and Elhanan Helpmanが、不完全競争や収穫逓増を貿易論に取り込んだ。グローバリゼーションへの批判は、自由貿易に関する伝統的支持を否定する動きと並行して起きた。それは、むしろ、HO-SSの予測が実現したものであった。
10年を経て、発展途上諸国の国内でも不平等が拡大している。BRICSがそうだ。技術変化は、ますます熟練労働者への需要を強めているが、その供給は遅れている。勝者がすべてを得るような傾向が強まり、再分配政策は否定されている。
グローバリゼーションを否定することではなく、もっと政策による不平等の解消を目指すべきだ。
PS Jan 3,
2018
To Resist
the Robots, Invest in People
STEPHEN GROFF
● 社会契約
FT January
2, 2018
A better
deal between business and society
資本主義は新しい社会契約を必要としている。
19世紀に、技術と経営の革命が工業化する世界を席巻し、セーフティネットと社会福祉が築かれた。それは1世紀以上も続いた。
21世紀において、ビジネスへの信頼が問われている。新しい懸念が、金融危機後の不安、起業重役たちの過剰な報酬、職場の海外いてに対する怒りに加わった。すなわち、機械化への不安、課税回避や脱税、地域のコミュニティから乖離した多国籍企業、技術の圧倒的なパワー、ギグ・エコノミーの雇用主と労働者との不均衡。
株価の高騰を観て、すべては良好だ、と言うのは間違いだ。低金利にもかかわらず、長期の成長を産むような投資は見られない。英米の失業率は低いが、多くの新しい職場は不安定だ。政治家は介入をさかんに議論するが、事態を悪化させるだろう。国有化まで主張している。
企業は競争を重視し、既存の大企業を優遇してはならない。その行動は、倫理や公正さに基づかねばならない。
● 西側世界の終わり
FT January
2, 2018
The new
world disorder and the fracturing of the west
MARTIN WOLF
われわれは終着点に着いた。西側主導のグローバリゼーションや、冷戦終結後の「一極世界」が、終わったのだ。これは1年前に述べたことだ。問題は、第2次世界大戦後、アメリカが築いたリベラルな秩序は、グローバリゼーションの逆転や戦争に向かうのか、あるいは、新しい協力を実現するのか、である。
世界の政治で最も重要な事件は、中国で習近平が指導力を確立したことだ。中国の軍事支出は、アメリカに対する相対的な規模を急速に引き上げている。世界生産に占める高所得諸国のシェアは20%も低下した。
2017年は専制体制が広まった。この趨勢は今年も続くのか?
第1に、西側のイデオロギーは分裂した。第2に、民主主義や自由な世界市場に関する西側の理想は、発展途上諸国だけでなく、高所得諸国でも支持されなくなった。第3に、世界経済や、安全保障を含むコモンズの管理は、新興市場、特に中国との協力にかかっている。
最後に、アメリカと中国との軍事衝突のリスクは現実に高まるだろう。
NYT JAN.
3, 2018
Is the
Trans-Atlantic Relationship Dead?
Anna Sauerbrey
PS Jan 4,
2018
Europe
Between Trump and Xi
ZAKI LAÏDI
● インフレのない世界
PS Jan 2,
2018
Why Low
Inflation Is No Surprise
J. BRADFORD DELONG
なぜインフレは起きないのか? しかし、インフレに関するすべての理論は間違っている。自然失業率は正確に測定できないし、フィリップ曲線の傾斜も安定しない。
それにもかかわらずインフレを恐れるのは、それが聴き手の望む話だから。
● 国際通貨の地政学
VOX 02
January 2018
Mars or
Mercury? The geopolitics of international currency choice
Barry Eichengreen, Arnaud Mehl, Livia Chiţu
国際通貨の選択は何によって決まるのか? 一方は、国際通貨としての利便性で説明する。他方は、地政学的な関心、アメリカに安全保障を依存していることが重要とみなす。
ドイツ、日本、サウジアラビアは、中国、ロシア、フランスよりも、核の傘や安全保障をアメリカに頼っており、この要因を考慮することで外貨準備に多くのドルが選択されていることも説明できる。逆に、アメリカが国際安全保障や国際的な役割を放棄し、アメリカ第1の姿勢を取るなら、ドル建の外貨準備は大幅に減少するだろう。それはアメリカの長期金利を上昇させる。
また、中国は人民元の国際化に積極的になっており、ユーロ圏が安全保障や防衛に関す得る合意を形成することは、国際通貨の選択に影響する。
● 北朝鮮
The
Guardian, Wed 3 Jan ‘18
Ignore
North Korea’s bombast. Its actions tell a more hopeful story
Mary Dejevsky
NYT JAN. 3,
2018
Koreans
Turn Down the Volume
By
THE EDITORIAL BOARD
NYT JAN.
3, 2018
A United
Front Against North Korea
By ROBERT S. LITWAK
北朝鮮はまだアメリカ本土を核攻撃できる能力を得ていない。したがって、外交の余地がある。しかし、その時間は短い。
● 日本株式会社
FT January
3, 2018
Japan Inc:
a corporate culture on trial after scandals
Peter Wells and Leo Lewis in Tokyo
● ヨーロッパの政治
PS Jan 3,
2018
Can
Movement Politics Renew European Democracy?
JAN-WERNER MUELLER
ヨーロッパの政治を変えるのは、新しい若手指導者によるカリスマを重視した運動だ。フランスのMacron’s
La République En Marche! オーストリアのSebastian Kurzとその“The
Sebastian Kurz list – The New People’s Party”はそれを示している。
ヨーロッパでは、人々が政党を自分たちの利益を実現するだけで、権力闘争の手段とみている。発展途上諸国では、政党は権益を握る組織、腐敗の源とみなされている。特に、若い有権者たちは、伝統的な政党と働くことを好まない。政党は官僚的で、退屈だ、と。
ヨーロッパの最近の政治的革新は、ヒエラルキー的な組織を排除した、街頭の抗議活動や大衆集会から生じている。たとえば、スペインのPodemos、イタリアのFive Star
Movement (M5S)、がそうだ。しかし皮肉なことに、水平的な組織や参加型の民主主義を唱えながら、カリスマ的指導者に権力を集中している。
指導者の役割は、シングル・イシューの社会運動がそうであるが、運動のダイナミズムや目的を意識させることだ。こうした新しい政治運動が重要であるとしたら、それは既存政党が示さない選択肢を、特に2大政党制によって政治システムを長期政権が独占していることに不満を感じる市民・有権者に、より多くの選択肢を示すからである。
PS Jan 3,
2018
The Roots
of Western Tribalism
SAMI MAHROUM
FT January
4, 2018
Greece
risks complacency as its bailout cycle winds down
TONY BARBER
PS Jan 4,
2018
The
Bunga-Bunga Party Returns to Italy
BILL EMMOTT
3月4日に行われるイタリア総選挙の結果、最大の勝者になるのはベルルスコーニSilvio
Berlusconiであろう。3度首相を務めながら、そのスキャンダルにまみれた経歴で悪名高い82歳の怪物が、ポピュリスト政党Five Star
Movement (M5S)に対抗して政界をまとめる役割に返り咲くのだ。
● ベーシックインカム実験
SPIEGEL
ONLINE 01/04/2018
Free Money
By Patrick Witte (Text) and Kirsten Milhahn
(Photos and Videos)
アメリカの団体が、ケニアの村で、数年に及ぶ実験を行っている。村人たちは、何の条件も付けられずに、毎月、一定の額を受け取るのだ。開発援助に関する新しい考え方である。
● トルコの難民受け入れ
PS Jan 4,
2018
Supporting
Turkey’s Refugee Response
ARYEH NEIER
国内で民主的な価値を否定するエルドアン政権だが、シリア難民の大規模な流入には十分に応えている。
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The Economist December 23rd 2017
Our country of the year:
Formidable nation
Sex and inequality: The
peril of polygamy
Indian foreign policy:
The two sides of the mountain
(コメント) 体調不良です.The
Economistの選ぶ優れた国は,韓国とフランスです.韓国は,中国とアメリカに挟まれたまま北朝鮮の核兵器による脅しを受けながら破滅を回避したからです.他方,フランスはマクロンが登場して,最も改革が困難な国に改革の希望をよみがえらせたからです.
一夫多妻制という社会制度が,これほど暴力的であるというのも驚きでした.そして,ヒマラヤという世界最高の防壁をはさんで,インドと中国が平和に生きてこられた時代は終わったことも,世界の枠組みを変える衝撃です.
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IPEの想像力 1/8/18
GIDEON RACHMANが、中東ではなくアジアに、特に、朝鮮半島に最大の地政学上のリスクがある、と述べているのを知りました。2018年が終わるとき、イギリスから見れば、日本は、中東の混乱に生き延びるイスラエル、あるいは、レバノンやヨルダンのような存在に近いかもしれません。
The Economistのクリスマス・年始合併号で、一夫多妻制が社会の安定性を破壊し、戦争状態を悪化させる、という記事に悪い予感がしました。それは,日本でも若者の貧困が結婚を難しくしている,と聞くからです。そして,中国の男女比率が大きくことなり,近隣諸国から若い女性を略取するビジネスのことを読んだからです。
記事が取り上げている南スーダンでは,結婚の40%が1人の男性に複数の女性が妻となるポリガミーPolygamyである,といいます.裕福な者は多くの妻を持つべきであり,それは社会的に尊敬される,とアメリカでIT技術を学び,帰国した若い男性は説明します.そして,彼もこの国の水準では裕福な男であり,この習慣に従うのです.
なぜポリガミーが広まったのか? その理由として,記事は,激しい内戦を挙げます.部族間の対立があり,政治家たちは強欲で,制度が脆弱な上に,石油の富があったから,内戦が繰り返されたわけです.暴力によってのみ,富と女性を奪い取ることは正当化された,と人々は考えます.
しかし,記事のポイントはそこになく,むしろ,それが逆転した形で真実に近い,というわけです.1人の男が1人の女を追加して妻にするたびに,1人の男が結婚できなくなります.ポリガミーが認められた社会こそ,暴力を助長し,内戦をより頻発させる,残虐な殺害によってしか正当化されない秩序を温存してしまう,と.
ポリガミーこそ,「アラブの春」が急激に広まったこと,ボコハラムやイスラム国のような原理主義がナイジェリア,イラク,シリアに広がったこと,インドネシアやハイチで不安定化しやすい地域,を説明するものだ,と指摘します.Foreign
Policyが示すFragile
Indexの上位20か国で,ほとんどの国にポリガミーが存在する,というのは驚きです.
他方,妻を得るためには多額の金品が要求され,それがますます妻となる女のインフレーションと低年齢化を進めた,というのは,現代の市場が支配する近代社会にもあてはまりそうです.記事は,富裕層が自動車を買っても,それ以外の人々がさまざまな他の財を購入する機会は奪われない.だからポリガミーは特別に破壊的だ,と書きます.私はそう思いません.
超富裕層のリゾートが,ますます気象になる美しい自然を私的に所有するとしたら,その醜さは激しい反発を呼ぶでしょう。中国本土で制約される富裕層の暮らしを,外国や香港で実現したときに生じる変貌,ツーリズムによって破壊されてきた諸外国の苦痛は,今や日本の地方にも現れていると思います。
豊かな諸国で、一夫一婦制を法律が強制し、政府が所得再分配を行うからこそ、社会を組織する原理として,労働倫理や勤勉さ,発明・発見,開拓の精神,社会的な合意や契約の尊重,民主主義や人権が重要になったわけです.妻を得られないと知った若者たちが,他国を征服することでもなければ,多くの妻を囲い込んでいる富裕層やエリートたちを殺戮するには,小さなきっかけがあれば十分だ,と思います.
そして貧しい、一夫多妻制を奨励する政府が,軍事的な強国になるかもしれません。その国の支配層は、国際的な無法国家としてサイバー空間の違法行為を許し、関連企業や犯罪集団を世界中から集めるかもしれません。トランプの減税・タックスヘイブン国家、ロシア、北朝鮮、中国の核兵器とサイバー部隊、政治経済的なポリガミー秩序に対抗する基礎となるのは,核武装より,女性解放です.
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