IPEの果樹園2017
今週のReview
12/25-30
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民主主義の危機 ・・・トランプのクリスマス ・・・21世紀の不平等 ・・・減税と政治 ・・・国家安全保障戦略 ・・・ティラーソン ・・・次の債務危機 ・・・グローバリゼーション論争 ・・・国家の形成過程
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
● 民主主義の危機
NYT DEC.
14, 2017
The Glory
of Democracy
David Brooks
1989年、ベルリンの壁が倒れ、共産主義体制も消滅した。リベラルな民主主義が勝利したように見えた。
しかし、その後、すべては悪化した。部族主義や権威主義が広まり、民主主義国の数は減っている。民主主義の劣化はわれわれの国でも大きく進んだ。議会はほとんど機能しない。事実を無視し、基本的な良識を損なう者が大統領である。
われわれは良識を前提して暮らしていたのだ。あまりにも長い間、リベラルな民主主義の価値を前提していたために、それを守ることを忘れてしまった。われわれは習慣としての民主主義派であり、情熱的に、そのシステムを擁護していない。
過去の思想家から、民主主義を擁護する姿勢を学ぼうと思う。最初の作品は、トーマス・マンの“The
Coming Victory of Democracy.” だ。マンは小説家だったが、ナチズムの迫害を逃れてアメリカに来た。
民主主義には1つの真実がある。男性も女性も、個人の尊厳は永久だ。人は神の姿に似せて創られた。正常時には、人間は責任ある存在だ。しかし、人間は野獣のような性格を残している。マンはまさにナチズムから逃れてきたばかりだった。他の生物と異なり、人間は、正義、自由、真実を理解し、追求する。
マンは続けて、民主主義は個々の人間の尊厳を尊重するシステムだ、という。だから民主主義を、何かの手続きや政治システム、多数決の原理とみなし、教えることは、大きな間違いである。
マンは、民主主義の敵は銃を持ったファシストだけではない、という。公共の広場を意図的に損なう誰もが敵である。政治宣伝を流し、デマを広める者たちだ。パンとサーカスを提供し、Tweetし、侮辱し、金を求め、権力を求め、関心を集めるために何でもする者たちだ。
マンは、民主主義が究極において勝利する、と信じている。なぜなら民主主義には生まれ変わる力があるからだ。それは改革である。マンはある言葉を引用する。経済と政治の改革、それによって価値の真の階層を生み出すだろう。資金は生産のために、生産は人間のために、そして人間は理想のためにあるのだ。理想こそが人生に意味を与える、と。
NYT DEC.
15, 2017
Trump in
the Web of Pax Technica
Roger Cohen
FP
DECEMBER 15, 2017
A
Billionaire, a Minority Government, and a Few Communists Walk Into Parliament…
BY EMILY TAMKIN
FP
DECEMBER 15, 2017
Beijing
Can’t Understand Taiwan’s Democracy
BY KEVIN FAN HSU
台湾が単一政党による専制支配体制であったとき、中国は海峡を挟んで冷戦の敵対関係に燃えていた。双方は敵であったが、互いに理解することができた。台湾が民主化されたときも、まだ国民党が支配していたときは、共産主義者たちが長く闘った相手であり、中国は台湾を扱えた。しかし、今、台湾に生まれた精気に富む、参加型の社会は、中国共産党を混乱させ、不安にさせる。
北京が台湾を理解できないのは、Edward
Luttwakが「大国の近視眼」と呼ぶものだろう。状況に関する集団的な無理解が、国際的な現実感覚を失い、他の社会が持つ複雑さを明瞭に理解する力を低下させるのだ。
The
Guardian, Sunday 17 December 2017
The
Guardian view on the 1%: democracy or oligarchy?
Editorial
経済権力が少数の者に独占されると社会はどうなるのか?
少数のグローバル・エリートが大きな繁栄を享受している一方、彼らの下にある大衆は、さまざまな割合で、後方に取り残されている。先週、70か国以上から100人以上の研究者が協力して画期的な報告書World
Inequality Reportを出した。1980-2016年、世界の1%の最富裕層が世界所得の27%を得た。中国の経済的興隆は、確かに数億人を貧困から脱出させたが、上位1%が占める富の分配は15%から30%へと2倍になった。インドやロシアに見られる富の極端な集中は、かつての王朝やツァーの時代を再現したように見える。報告書は警告する。2030年までこの傾向が続けば、たった250人が世界の富の1.5%を得るだろう、と。
西側において、この40年間の支配的イデオロギーは、民営化、規制緩和、そして最近は、財政緊縮であった。それは有権者の集団的な権力を制限するルールとなった。その結果、より大きな利潤や配当、より低い所得税となり、国民所得のますます大きな割合が最富裕層に分配された。富を永久に作り出し、贅沢に支出する、という文化が根付いた。しかし、それはほぼすべてのものを犠牲にしてきた。グローバリゼーションは、北米とヨーロッパの中下層に属する人々にとって、賃金を高めなかったのだ。こうした政策が毒素を政治に流した。反エスタブリシュメントの諸政党は、今や、1930年代以来最高の支持を得ている。主要政党は過激化し、あるいは、衰滅した。
市民たちの嘆きは正当であり、解決される必要がある。しかし彼らが得たのは、しばしば、最悪のものだった。イギリスでは、システムへの反感がご都合主義者に利用され、Brexitをもたらしたが、それは労働者の権利を薄めれば好景気が来るというごまかしであった。アメリカでは、白人労働者たちの怒りを刺激したドナルド・トランプが、0.1%の最富裕層のために、自国をタックス・ヘイブンにする税制改革を支持している。反動的なナショナリストたちが語る革命とは、プルートクラットの現状維持でしかない。同じ不幸な結末を革新派のグローバリズムにも見る。エマニュエル・マクロンはフランスのビジネスにではなく賃金に増税したがっているが、それは移動が困難な労働者より移動が容易な富の生産者を優遇するためだ。
アメリカの最高裁判事であったブランダイスはかつて述べた。「われわれは、民主主義を実現するか、少数の富裕層に富を集中させるだろう。その両方はできない。」
政治家たちはもっと公平な解決を推進するべきだ。累進的な税制や、タックス・ヘイブンに富を隠すことができないようなグローバルな金融登録制度。市民にふさわしい医療、教育、福祉の実現に向けた財政支出の増額。現代生活はガバナンスへのコンセンサスに依拠するが、それは壊れやすい。富裕層はふさわしい税金を支払うべきだ。
FP
DECEMBER 19, 2017
Buckle Up
for Year 2 of Trump
BY MAX BOOT
FP
DECEMBER 20, 2017
Populism
Is a Problem. Elitist Technocrats Aren’t the Solution.
BY SHERI BERMAN
PS Dec 21,
2017
Trumpism
Down Under
CHRIS PATTEN
● トランプのクリスマス
FT
December 15, 2017
The
economist’s guide to a happy Christmas
TIM HARFORD
NYT DEC.
15, 2017
Have a
Very Merry War on Christmas
By
AMY SULLIVAN
アメリカのエヴァンゲルカリズム(福音主義)に属する牧師たちが、ドナルド・トランプを称えている。「神が選挙において介在し、ドナルド・トランプを大統領に就かせた。」
トランプやアラバマ州のムーアのような、ナショナリスティックで、人種を憎悪する、不安を高める政治が、熱狂的なエヴァンゲルカリズムの焦点をなっている。ジャーナリストたちは、宗教が政治に及ぼす影響にばかり注目してきた。しかし、宗教そのもの変化、その緊張状態を正しく知るべきだ。エヴァンゲリカルたちは、その信仰にもかかわらず、悪しきトランプを支持するのではない。信仰するがゆえに、トランプを支持するのだ。
たとえば、クリスマス戦争だ。Fox Newsはクリスマスを十字軍に変えた。それは教会から世俗の世界に、クリスマス・ナショナリズムを広め、宗教戦争を復活させる。
NYT DEC.
15, 2017
The
Deserving Rich and the Deserving Poor
Timothy Egan
Bloomberg 2017年12月15日
Thank
Goodness for Donald Trump
By
Pankaj Mishra
ドナルド・トランプの就任1年目は、そのでたらめな発言が異彩を放った。アメリカのTweeter隊長として、いくつもの大陸が彼の早朝の挨拶に心を奪われた。彼には抑制も礼節もなかった。その点で、トランプはオバマと対照的である。
オバマは多くの不快な現実を、その礼節によって隠し続けた。しかし遅かれ早かれ、われわれはそれと直面しなければならなかっただろう。トランプはこの現実を直撃した。そして、希望的に見れば、進歩主義の新時代を告げたのだ。
1つ言えることは、アメリカ最初の黒人大統領は、「人種差別のない」時代をもたらしたわけではないことだった。トランプがホワイトハウスに現れたことで、白人至上主義者たちはもはやその姿勢を隠さなくなった。
フェミニストたちの運動が成果を上げたかどうかも、オバマが去った今、明らかではない。気候変動に関して、ブッシュ政権が京都議定書を拒んだダメージのいくらかをオバマは回復したが、トランプがパリ協定から離脱し、気候変動は科学ではない、と主張する人物をEPAのトップに任命した。
トランプが当選したことは、グローバリゼーションの満ち潮がすべてのボートを浮上させなかったことを示した。富は少数者に集中したのだ。規制されない市場がうまく機能しないことを、2008年の金融危機が確信させた。1982年にドナルド・レーガンが述べたような「市場の魔法」を、政治家やビジネスマンに劣らず、信奉した多くのジャーナリストたちがいた。しかし再び、不平等を非難することに左派寄りのエコノミストたちは熱中している。
最も重要なことは、感情が爆発する1人の男が核の発射ボタンのそばで、「世界が未だ見たこともないような炎と怒り」を届けてやる、と約束したことだ。
トランプのTwitterは時間を凍結するように見える。しかし実際は、時間が流出し、トランプのソーシャルメディアを越えて、その成果をもたらすだろう。彼は跳躍する破壊者であり、衰退の最前線で社会・政治・経済システムの虚像をはぎ取るのだ。
トランプがいることで、そのあまりにも不適格な人物を見た市民たちは団結し、システムの改革に向かうだろう。保護主義のような、あまりにも危険な経済対策を見て、今週初め、サマーズが述べたように、新しい経済基盤を人々は切望する。
自己満足は、近代世界の成果が壊れやすいものであることを忘れさせた。民主主義、女性やマイノリティーの権利、醜悪な偏見の追放、それらは闘い取られたものだった。
トランプの歴史的役割とは、われわれの思想と行動を刺激することだ。この覚醒をもたらすことに対して、われわれは第45代大統領に感謝する。
The
Guardian, Tue 19 Dec ‘17
We need
the darkest Christmas stories. These are dark times
Stephanie Merritt
NYT DEC.
20, 2017
What to
Get Theresa May for Christmas
Kenan Malik
The
Guardian, Thu 21 Dec ‘17
Homelessness
is now the public face of this Tory era
Polly Toynbee
The
Guardian, Thu 21 Dec ‘17
A very
merry Muslim Christmas: the slogan for ‘good’ Muslims
Shaista
Aziz
● ハイテク大企業
FT
December 15, 2017
Big Tech
and telecoms face sudden fundamental shift
RANA FOROOHAR
● メルケル時代の終わり
SPIEGEL
ONLINE 12/15/2017
End of an
Era
Surveying
the Ruins of Merkelism
A DER SPIEGEL Editorial by Dirk Kurbjuweit
メルケルの時代は安定性への熱望によって特徴づけられる。しかし、それはドイツに現在の不安定さをもたらした。メルケル主義から脱するときだ。彼女が成果を上げた前提は失われた。それは強いコンセンサスと強いメルケルだった。
SPIEGEL
ONLINE 12/15/2017
Country
without a Government
Merkel's
Difficult Road to a Coalition
By DER SPIEGEL Staff
FT
December 18, 2017
Why the
Germans are right about economics
GIDEON RACHMAN
● 21世紀の不平等
PS Dec 15,
2017
Inequality
in the Twenty-First Century
KAUSHIK
BASU
オーデンは、その詩“September 1, 1939”において、世界の賢明に望むのは、多くの深刻な問題に取り組むことであり、その中でも、最も深刻で、長期的に最悪の、生存を脅かす問題は、経済的な不平等である、と書いた。
右派はしばしば不平等を正当化するだけでなく、重労働や勤勉さの報酬としてふさわしい、また貧困は怠惰への懲罰だ、と主張する。これはもちろん神話である。貧困が広がる中で過度の富裕化を支持する何らの道義的な根拠もない。
しかし、このことは、いかなる不平等も正当ではない、ということを意味しない。人々が富を求める強さは違うし、異なる報酬は人々が学び、働き、発明する動機付けになる。それらは成長全般を促し、貧困を減らすだろう。
しかし、ある点を越えれば、不平等は反対の効果を強めるのであり、われわれは大幅にその点を越えている。多くの人々が過度の不平等が、道義的にも、経済的にも、受け入れられないものだと認めている。
豊かな者がそれに反対するのは偽善ではない。富を得た者がそれを一方的に放棄しないことが、より公平な社会を好ましいと感じること、そのものを、損なわない。議会共和党とドナルド・トランプが推進する税制改革を批判する富裕層もいる。
現在の不平等な分配構造だけでなく、より公平な社会に向けた青写真を示すことが重要だ。その焦点は、利潤のシェアを拡大することであるに違いない。成長にとって決定的に重要な市場の動機付けを、窒息させたり、集中したりすることなく、利潤をシェアするのだ。
その第1歩は、その国のすべての住民が経済利潤の一定割合を得る権利を持つことだ。特に今、国民所得に占める賃金の割合は減っており、利潤や地代の割合が増えている。技術進歩がその傾向を強めているのだ。
利潤シェアのもう1つの側面は、独占と競争に関する問題だ。現代のデジタル技術は、規模の収益が非常に大きい。例えば、同じ商品を1000社が作って競争することはできない。より効率的には、1000社が同じ商品のさまざまな部品を作ることである。自動車会社は多くの部品を組み立てているように。
伝統的な反トラスト法、競争政策は、アメリカで1890年のシャーマン法に始まったが、そのような効率的システムを妨げている。しかし、もし企業の株式が広くシェアされるなら、生産の独占が所得の独占を必ずしも意味しないだろう。反独占を、企業の株式保有を分散化させる法規制に代えるべきだ。
こうしたアイデアはまだ十分に試されていない。しかし、危機を繰り返し、社会的結束と民主主義が脅かされているとき、不平等の解消を急がねばならない。
FT
December 19, 2017
Inequality
is a threat to our democracies
MARTIN WOLF
アメリカ、カナダ、ヨーロッパで、1980-2016年の実質所得の増加分を、上位1%が28%得て、下半分の50%が得たのはわずか9%だった。しかし、諸国間の違いは重要だ。西欧では、上位1%が得たものと下位51%が得たものは同じだった。北米では、上位1%が得たものと下位88%が得たものが同じだった。
最近発行されたWorld
Inequality Report 2018は、諸国家間の格差が収斂し、国内の格差が拡大するという概観を与えてくれる。しかし、それはどこでも同じように起きていない。「1980年以降、所得の不平等は北米とアジアで急速に拡大し、ヨーロッパでは緩やかに拡大し、中東、サブサハラ・アフリカ、ブラジルでは極度に高い水準で安定していた。」 第2次世界大戦後、上位1%の得る部分は、西側全般で、戦前の水準と比べて相対的に低かった。しかし、その後、英語圏の諸国で、特にアメリカで、この比率は急上昇し、フランス、ドイツ、イタリアでは少ししか上昇しなかった。
古代社会の研究者であるWalter
Scheidelは
The Great Levelerという本を書いているが、その中で、農耕(と農業国家)の発明以降、経済が生み出す余剰のすべてを奪い取ることにエリートたちは驚くほど成功した、と述べている。略奪を制限するのは、生産者が生き延びる、ということだった。注目すべきことに、ローマ帝国でも、ビザンチン帝国でも、絶望的なほど貧しい農業社会がこの限界に達した。権力は富をもたらし、富は権力をもたらす。何がこのプロセスを止めるのか? この本によれば、それは破滅の4騎士である。戦争、革命、疫病、飢饉。
確かに国家は軍事的な動員に依存していたから、人々が富を得ることもあった。しかし、全体として、前近代の社会における不平等の大きさには、しばしば、言葉を失う。
20世紀にも、ロシアや中国におけるような革命、2度の世界大戦は、不平等を劇的に減らした。しかし、革命後の体制は弱体化し(あるいは崩壊し)、戦争の切迫感は薄れて、旧い農業社会の略奪パターンが再現された。莫大な富を有する新しいエリートが、政治権力を得て、それを自分たちの目的に使用した。
つまり、何らかの破局が起きない限り、われわれは不平等を拡大させ続けるだろう、という意味だ。世界規模の熱核戦争が起きるなら、世界は平等化するだろう。しかし、それは政策ではない。
楽観的であるのを許す3つの理由がある。1.われわれの貧困は相対的な意味であり、絶対的な生存ギリギリではない。2.すべての国が高度な、増大する不平等に向かっているのではない。3.各国は、もし望むなら、不平等を緩和する多くの政策手段を持っている。しかし、アメリカとドイツでは、それを利用する程度が大きく異なる。
重要な問題は、不平等に向かう圧力が増しているか、そして、それを抑える意欲が一般に衰退しているか、である。前者に関しては楽観的になれないが、後者に関して、社会の調和と物質的な豊かさが、富裕層にその豊かさを分かち合う用意がある、と期待する理由はあった。にもかかわらず、20世紀前半の戦争、工業化と大衆争議にともなう平等主義が衰滅すると、個人主義がさらに強まり、エリートたちは自分のために何でも奪うと強く決意した。
それは社会平和のためだけでなく、19世紀、20世紀の高所得国に現れた普通選挙による安定した民主主義にとって、悪夢である。1つの可能な展開は、現代アメリカが示すような、「プルートクラットのポピュリズム」である。そして、アメリカこそ、前世紀の混乱にも、リベラルな民主主義が生き延びた国であったことを思い出すべきだ。
未来は、安定したプルートクラシーの世界ではない。それは大衆を分断し、従属させ続ける。それに代わるのは独裁者の出現であろう。独裁者は、エリートに対する偽物の反抗によって権力を握る。
FP
DECEMBER 19, 2017
The United
States of America Is Decadent and Depraved
BY JAMES TRAUB
YaleGlobal,
Thursday, December 21, 2017
Growing
Inequality Dulls India’s Sheen
Riaz Hassan
● 気候変動
NYT DEC.
15, 2017
Cashing
Out From the Climate Casino
By
BILL McKIBBEN
PS Dec 20,
2017
A Climate
Cure Worse than the Disease
BJØRN LOMBORG
● 減税と政治
NYT DEC.
15, 2017
What’s
Stifling Pay Raises Is Also Curbing Economic Growth
By
RYAN AVENT
Bloomberg 2017年12月15日
This Tax
Bill Is a Trillion-Dollar Blunder
By
Michael R. Bloomberg
先月、Wall Street Journalの編集者が部屋に集まったCEOたちに質問した。減税案が通れば投資を増やすか? 手を挙げた者はわずかだった。出席していたトランプ大統領の経済顧問Gary Cohnは、「どうして他の連中は手を上げないんだ?」と尋ねたそうだ。
わたしならこう答える。「われわれは金を必要としていない。」
企業は記録的な余剰資金を持っているからだ。2.3兆ドルに近い。その額は2009年に不況が終わってから増え続けて、2001年に比べて倍増している。
CEOたちは「経済をジャンプ・スタートさせる」減税を待っていない。減税が大幅に高い賃金や成長をもたらす、というのは共和党議員たちの妄想だ。彼らは企業幹部やエコノミストたちの意見を聞かなかった。いつものように、政治を最優先するのだ。
財務省は、100名以上の専門スタッフが減税の効果を分析するために「24時間働いている」、と主張した。しかし、財務省が公表したのは政治目的に偏った1枚の文書だった。経済的には愚行である。アメリカが直面する重要な諸課題に何も応えず、むしろ悪化させる。
すなわち、公立学校で必要なスキルを学べない。老朽化したインフラがアメリカの競争力を損なっている。賃金は停滞し、不平等が増大している。ベビーブーマー世代が退職するのに、財政赤字が増大している。
減税法案がもたらす主要な成果とは、学校や学生から資金を奪い取る。インフラ投資の能力を失わせる。実質賃金が上昇することもないまま、医療保険の支払いを増やす。防衛その他の歳出を減らさずに、高齢者医療や社会保障の歳出を抑制できなくする。つまり、財政赤字の爆発だ。
何のために? 企業が必要としない大幅減税を与え、最上位の法人率を下げ、富裕層が資産を貯めこむために。
はっきり言っておくが、税制改革で歳入を減らさない形なら、私は35%の法人税を下げることに賛成だ。現在の法人税は他国より高く、しかも企業によって大きな違いがある。それは不公平で、非効率だ。抜け穴をふさぎ、利潤の海外送金を止めるべきだ。
大統領が共和党の減税案を推進するチアリーダーとなってはいけない。経済的に観て弁解の余地もないほどの大失策である。それを知りながら共和党議員は法案を支持すべきでない。
NYT DEC.
18, 2017
How
Republicans Learned to Sell Tax Cuts for the Rich
By
ISAAC MARTIN
NYT DEC.
18, 2017
Passing
Through to Corruption
Paul Krugman
PS Dec 19,
2017
Another
Look at Tax Reform and Economic Growth
MICHAEL J. BOSKIN
NYT DEC.
19, 2017
The
Workers Paradise
David Brooks
The
Guardian, Wed 20 Dec ‘17
Trump may
celebrate his tax giveaway – but politically it could cost him dear
Jonathan Freedland
NYT DEC.
20, 2017
The Tax
Bill Shows the G.O.P.’s Contempt for Democracy
By
WILL WILKINSON
税制改革に関する公聴会や論争を何1つ開かずに,大急ぎで法案を承認した.上院の共和党議員たちはつまらない計算ミスを犯し,間違いを削ったり,手書きで1つの節を書き直したりして,だれもその全文を読む間もないまま投票を強いた.
このいい加減な怠慢さと再分配に反対する姿勢とが結びついていることは,見逃されやすい.リバタリアンの発想には,右派のイデオロギー的なDNAとして,「富をもたらす者」から「富を奪う者」への再分配を嫌う,という姿勢がある.民主主義を,搾取を合法化し,不正義をもたらすエンジンである,と考える.
民主主義と所有権の尊重とが本来的に対立するという考え方は,民主主義と同じように古くからある.なぜなら貧困層は富を所有する富裕層よりも数が多いからだ.そんな風に主張する.もし彼らが投票できたら,貧困層は投票箱を使って富を奪い去るだろう,と.
再分配的な民主主義に対する敵意は,アメリカの右派のイデオロギーにおいて中核をなし,ヨーロッパの保守政党が喜んで受け入れている福祉国家政策を,共和党員の道徳に反する受け入れられないものにした.しかし,民主主義は所有権と矛盾しない.リベラルな民主的国家は歴史における比較的最近の発明である.専制支配から民主主義への転換をもっとも的確に説明するのが,民主的な政治参加によって所有権を守る,という点である.
包括的な民主主義こそが,再分配を容易にして所有権を損なうどころか,すべての者に法的な権利を保障することで,エリートが支配する国家による「組織された略奪」を制限する.民主主義は,基本的権利の平等さを確立することにより,中産階級や下層を再分配から保護するものだ.そうすることで,だれもが資本家になれる.民主主義は,自由企業を絞め殺すことはないし,才能ある人々を解放し,人民を圧政や搾取から守る.
究極において,エリートによる略奪から庶民を守るものこそ,民主的諸制度や法の支配なのだ.しかし共和党の多数派は,あたかも自由が課税からの自由でしかなく,民主主義はそれを邪魔するかのように,基本的な民主的規範を破壊し続けている.
● サーカシビリ
NYT DEC.
15, 2017
How I Went
From the Governor’s Office to a Jail Cell
By MIKHEIL SAAKASHVILI
ハプスブルクの時代以降,私は国家指導者から,国家を失った最初の1人となるだろう.なぜこうなったのか,説明したい.私はグルジアの大統領であった.
● 国家安全保障戦略
FP
DECEMBER 15, 2017
Combatting
Chinese Economic Coercion in the NSS
BY
MICHAEL ALLEN
中国の強硬な姿勢には経済的な影響力の増大が背景にある.一帯一路OBOR戦略に対抗して,アメリカは主要な諸国がアメリカとの関与を弱めるのを阻止しなければならない.それがトランプ政権の国家安全保障戦略NSSのテーマである.
Bloomberg 2017年12月16日
Must-Reads
of 2017: Escaping the Thucydides Trap
By Hal Brands
NYT DEC.
18, 2017
Trump’s
National Security Plan Warns of ‘Great Power Competition’ With Russia and China
By
MARK LANDLER and DAVID E. SANGER
月曜日,ドナルド・トランプ大統領が,アメリカは中国とロシアという2大国からの激化する競争に直面している,と宣言した.彼らはアメリカの影響力,価値,富に挑戦している,と.
しかし,冷戦の雰囲気をともなう新しい国家安全保障戦略を示しながら,ロシアによる大統領選挙への介入には何も触れない.トランプがしたのは,日曜日にロシアのプーチン大統領から感謝の電話があった,という話だ.CIAからの情報でセント・ペテルスブルグにおけるテロ攻撃を未然に防いだ,というのだ.
閣僚や軍人を含む聴衆を前に,大統領は選挙運動のような演説をした.メキシコとの南部国境に壁を築け,株価上昇は自分の手柄だ,失業者が減って,減税もするぞ.今やアメリカが国際舞台を仕切っている.
しかし,NSSは描く.「世紀初めの現象は消えて,大国間競争が再現した.」 中国とロシアは「経済を自由から,公平さから遠ざけ,軍事力を増強し,情報やデータを管理して,社会を抑圧し,その影響力を拡大している.」
アメリカは過去20年間の政策を見直すべきだ.「対抗する国に関与し,国際制度やグローバルな交易に取り込むことで,彼らを善良なアクター,信頼できるパートナーに変えようとしてきた.」しかし,NSS文書は言う.「その諸前提は間違いだと分かった.」
オバマの戦略では,同盟諸国や経済的パートナーとの協力が強調された.しかし,「アメリカ・ファースト」のトランプはそれから離脱した.オバマは核兵器の重要性を下げようとした.しかしトランプは核兵器による抑止を,アメリカおよび同盟諸国と友好諸国の平和と安全を守る基礎とした.
中国は「戦略的なパートナー」(クリントン政権)ではなく「戦略的な競争相手」になった.国防総省の文書と矛盾して,気候変動は脅威ではない.新しいサイバー兵器や攻撃を強調しながら,ロシアが行った2016年選挙への介入が,再び,次の選挙でも行われる脅威に関しては,その中身を解明もせず,沈黙している.
FP
DECEMBER 18, 2017
The NSS
and the China Challenge
BY MIKE GREEN
FP
DECEMBER 18, 2017
Does
Trump’s National Security Strategy Have a Values Deficit?
BY DANIEL TWINING
FP
DECEMBER 18, 2017
Trump’s
National Security Strategy Deserves to Be Ignored
BY
MICAH ZENKO
アメリカの最大の脅威は内側にある.トランプ大統領は,それ以前の者と同様に,このことを理解しない.
FP
DECEMBER 18, 2017
Five
Takeaways From Trump’s National Security Strategy
BY
PETER FEAVER
ブッシュやオバマに比べて1年以内のNSS発表は成果である.
レーガン以来の外交の4つの柱が採用された.アメリカ人民と領土を守る.繁栄を促す.力による平和を実現する.アメリカの利益と価値を前進させる.
トランプをめぐる反エスタブリッシュメントと伝統的保守強硬派との対立を超えて融合し,「アメリカ・ファースト」という言葉の意味をより無害なものにした.
NYT DEC.
19, 2017
Trump’s
National Security Strategy Is a Farce
Roger Cohen
FP
DECEMBER 19, 2017
How to
Grade Trump’s National Security Strategy on a Curve
BY
KORI SCHAKE
これは喜劇だ.トランプは真っ赤な肉を投げ込み,閣僚たちが破滅を阻止するために殺到する.
北朝鮮,イラン,イスラエルとパレスチナ,シリア,サウジアラビアとカタール,トランプ政権はどこにも顔を出す.ティラーソンが先週述べたように,外交において「勝利」はない.それは驚かない.しかし,これは国家安全保障戦略ではない.
FP
DECEMBER 19, 2017
Two Cheers
for Trump’s National Security Strategy
BY DOV ZAKHEIM
Bloomberg 2017年12月20日
Maybe the
Free World Doesn't Need a Leader
By Leonid Bershidsky
NYT DEC.
20, 2017
Susan
Rice: When America No Longer Is a Global Force for Good
By
SUSAN E. RICE
トランプ大統領のNSSは,敵対する諸国家と膨れ上がる脅威によって特徴づけられた,暗黒の,補トンでディストピア的な,「極度に危険な」世界を描き出している.アメリカの政治,軍事,技術,経済における優位はほとんど言及されず,指導力を発揮して繁栄,自由,安全保障を高める,という原則は見られない.
アメリカの勝利とは他国を犠牲にすることである.共通の善も,国際的コミュニティーも,普遍的価値もない.アメリカは「善を支えるグローバルな勢力」(オバマ)ではなく,「丘の上に輝く家」(レーガン)でもない.新戦略はゼロサム世界を信奉する.それはトランプの,ナショナリスティックで,白か黒しかない,「アメリカ・ファースト」戦略だ.
アメリカの強さは,その軍事力や経済力だけでなく,理想の力であった.困難な時代にアメリカが道義を捨てることは,ライヴァルたちを強化し,自分たちを弱めるだけだ.
(後半へ続く)